SWATに取り付ける極軸微動ユニットを新しく導入しました。
SWAgTiで極軸を三脚の足を伸び縮みさせたり、水平方向にちょーっとだけズラしているのを見て、気の毒に思ってくれたのか、先日の「星もと」に参加した際に、Unitecさんが貸してくれました。SWAgTiを応援してくれている意味もあるのかと思います。しばらく使ってていいとのことなので、撮影にどんどん使っていこうと思います。
まず取り付けですが、SWATだと専用プレートを使うと取り外しが楽になります。底面と同じ大きさのプレートはネジ2本で取り付けることができて、そのまま極軸微動ユニットのクランプで挟むことができます。 これまでは毎回SWAT本体をクルクル回転させて三脚のネジに止めていたので、これだけも楽になります。
SWATを取り付ける向きを迷いました。最初SWATが真ん中に来るようにと思って取り付けたら、Unitecさん曰く反対に取り付けてしまっているとのことです。SWATの重心をわざと南側にずらすことで、鏡筒を取り付けたときに重心位置が、ちょうど三脚中心の真上に来るように設計しているとのことです。
試してみると、鏡筒取り付け後はかなり安定していて、どちらかに倒れ込むような感じは全然なかったので、安心して使うことができそうです。
なかなか天気がよくならずに試せなかったのですが、10月初めに短時間ですが少し晴れた時があったので、実際に極軸調整を試してみました。
まず最初にSharpCapの極軸合わせ機能を走らせます。ここでSharpCapの指示に従って極軸調整を進めていくのですが、この微動ユニットは可動部分のガタがほとんど無いので、一方向のネジを締めるときに他方が動くようなことがほぼありません。また、可動方向の動きも粘度があるような物凄く安定した動きで、速い揺れやガタが全くないし、ネジを回した分だけピッタリ動き、余分に動くこともネジを離したら戻るようなこともなく、相当な好印象です。このネジを触っただけでも、可動部とネジを相当作り込んでいると思いました。
極軸微動ユニットでの極軸調整は、これまでの三脚の脚を動かしての苦労がなんだったんだというくらい安定で簡単でした。特にネジの精度がいいので、拍子抜けするくらいの手数でものすごい精度で合わせることができました。0.5分角(30秒角)以下くらいならすぐに達成できて、SharpCapの評価でも、簡単にExcellentになります。
写真では5秒角とか、とんでもないレベルの数字まで調整できてしまいます。でもこの数字に本当に意味があるかどうかは、次に書いてある手法で評価されることになります。
SharpCapで極軸調整は90度赤経を回転させることで、回転させる前と回転した後の画像内の星の位置の違いから、極軸とのずれを計算します。私は一度極軸調整をしてから、逆方向に90赤経を回転戻す際に、ついでに必ず二度目の極軸調整をします。
位置違いで二度極軸調整をすることで、かなりの情報を得ることがわかります。三脚や赤道儀、鏡筒支持部などが弱いと、赤経体を動かしたときに全体にたわみが発生したりして、二度目の極軸調整の計算の際に大きくズレた値がでます。ズレの値は脆弱なシステムだと数分角から、酷いと10分角を超えることもあります。10分角もあると長時間露光でかなりの量でズレていくので、その分ガイドに負担がいったり、ガイド鏡自身がたわんでいる場合などは、大きくドリフトすることがあります。
頑丈なシステムだと、二度目の極軸調整でのズレは1分角程度に抑えることができます。これまで2度極軸調整を繰り返したことがない方は、一度自分のシステムで試してみるといいかと思います。いつも使っているシステムがどれくらい安定なのかを示す、一つの指標になるかと思います。
このズレは、三脚や赤道儀毎にある程度決まるようで、同じシステムの場合、毎回同じようなズレの値を示します。私はCelestronの赤道儀を3台使っているのですが、3台ともそれぞれ毎回同じような値を示します。ズレの大きさはやはり小>中>大の順になります。この「機器ごとに同じ値を毎回示す」ことは次のように、もう一つの有益な情報をもたらしてくれます。
例えば、2度目の極軸調整でいつものズレの値より大きなずれが出た場合は、何かおかしいことがある場合がほとんどです。明らかに大きなズレが出たときに改めてチェックすると、大抵どこかネジが緩んでいるのが見つかるので、その後の撮影時のトラブルに遭う確率を、かなり減らすことができます。
さてなぜこんな話をしたかというと、SWAT用の極軸微動ユニットを使って、1度目の極軸調整は上で書いた通り10秒角以下のすごい値にできますが、その後、90度回転させる2度目の極軸調整をしたら、ズレが大きく出でしまったからです。何度か試しましたが、毎回2分角から4分角程度のズレが出ました。最初これが三脚を含めた今回のシステムの限界かと思ったのですが、ズレの値があまり安定せず、毎回違います。
これは何度か試して原因がわかりました。以前、大阪迷人会の極軸微動雲台を試験したことがありますが、そこに付いていたような「別のネジを別方向から締めることで、これ以上可動方向に動かないように固定するような機構」がないのです。そのため、このSWAT用の極軸微動ユニットを使うときには、押しネジを両側から十分に押した状態にしてやる必要があるようです。
具体的には、SharpCapの1度目の極軸調整の時に、一方向のネジを締めながらある程度いい位置になってきたら、反対側のネジをそこそこ固く締めてしまいます。最後の微調整は、この状態で両側のネジを最後に締め込むような形でいい値に近づけていくと、これ以上ズレることはなくなるようです。具体的には2度目極軸調整時のズレが、最大でも1分角以下、典型的には0.5分角程度になりました。何度か試しても再現性があったので、ここら辺が今回のシステムの安定度と言えると思いますが、これはかなり優秀な値で、大型赤道儀のCGX-Lと同等か、ヘタをするともう少しいいくらいです。
ポタ赤の安定度としてはもう十分すぎるくらいなので、これ以降の使い勝手や安定度などの評価は、実際の撮影で試したいと思います。
今回使用させて頂いているSWAT用極時微動ユニットは、調整時のネジの操作のしやすさや可動部の安定性に関しては特筆すべきレベルで、極軸調整をとても素早くスムーズに、精度良く済ますことができます。ただし、押しネジの両側からの挟み込みを十分にすることが重要で、挟み込みをきちんとすると相当な安定度を実現できることがわかりました。
その際の安定度の評価では、極軸調整を90度行って90度戻すというように二度繰り返すことで、定量的に評価できることを示しました。
押しネジを十分に締めるということは今回のSWAT用だけの話ではなく、赤道儀一般にも言えることだと思いますので、長時間露光になるとドリフトなどで、どうしても安定しないという場合は、一度押しネジを両側から締めることに気を付けてみるといいかと思います。
SWAgTiで極軸を三脚の足を伸び縮みさせたり、水平方向にちょーっとだけズラしているのを見て、気の毒に思ってくれたのか、先日の「星もと」に参加した際に、Unitecさんが貸してくれました。SWAgTiを応援してくれている意味もあるのかと思います。しばらく使ってていいとのことなので、撮影にどんどん使っていこうと思います。
専用プレート
まず取り付けですが、SWATだと専用プレートを使うと取り外しが楽になります。底面と同じ大きさのプレートはネジ2本で取り付けることができて、そのまま極軸微動ユニットのクランプで挟むことができます。 これまでは毎回SWAT本体をクルクル回転させて三脚のネジに止めていたので、これだけも楽になります。
SWATを取り付ける向きを迷いました。最初SWATが真ん中に来るようにと思って取り付けたら、Unitecさん曰く反対に取り付けてしまっているとのことです。SWATの重心をわざと南側にずらすことで、鏡筒を取り付けたときに重心位置が、ちょうど三脚中心の真上に来るように設計しているとのことです。
試してみると、鏡筒取り付け後はかなり安定していて、どちらかに倒れ込むような感じは全然なかったので、安心して使うことができそうです。
実際に使ってみて
なかなか天気がよくならずに試せなかったのですが、10月初めに短時間ですが少し晴れた時があったので、実際に極軸調整を試してみました。
まず最初にSharpCapの極軸合わせ機能を走らせます。ここでSharpCapの指示に従って極軸調整を進めていくのですが、この微動ユニットは可動部分のガタがほとんど無いので、一方向のネジを締めるときに他方が動くようなことがほぼありません。また、可動方向の動きも粘度があるような物凄く安定した動きで、速い揺れやガタが全くないし、ネジを回した分だけピッタリ動き、余分に動くこともネジを離したら戻るようなこともなく、相当な好印象です。このネジを触っただけでも、可動部とネジを相当作り込んでいると思いました。
極軸微動ユニットでの極軸調整は、これまでの三脚の脚を動かしての苦労がなんだったんだというくらい安定で簡単でした。特にネジの精度がいいので、拍子抜けするくらいの手数でものすごい精度で合わせることができました。0.5分角(30秒角)以下くらいならすぐに達成できて、SharpCapの評価でも、簡単にExcellentになります。
こんな値まで調整できます。ネジの操作具合がなかなりいです。
写真では5秒角とか、とんでもないレベルの数字まで調整できてしまいます。でもこの数字に本当に意味があるかどうかは、次に書いてある手法で評価されることになります。
極軸調整を2度繰り返して異常を検知
SharpCapで極軸調整は90度赤経を回転させることで、回転させる前と回転した後の画像内の星の位置の違いから、極軸とのずれを計算します。私は一度極軸調整をしてから、逆方向に90赤経を回転戻す際に、ついでに必ず二度目の極軸調整をします。
位置違いで二度極軸調整をすることで、かなりの情報を得ることがわかります。三脚や赤道儀、鏡筒支持部などが弱いと、赤経体を動かしたときに全体にたわみが発生したりして、二度目の極軸調整の計算の際に大きくズレた値がでます。ズレの値は脆弱なシステムだと数分角から、酷いと10分角を超えることもあります。10分角もあると長時間露光でかなりの量でズレていくので、その分ガイドに負担がいったり、ガイド鏡自身がたわんでいる場合などは、大きくドリフトすることがあります。
頑丈なシステムだと、二度目の極軸調整でのズレは1分角程度に抑えることができます。これまで2度極軸調整を繰り返したことがない方は、一度自分のシステムで試してみるといいかと思います。いつも使っているシステムがどれくらい安定なのかを示す、一つの指標になるかと思います。
このズレは、三脚や赤道儀毎にある程度決まるようで、同じシステムの場合、毎回同じようなズレの値を示します。私はCelestronの赤道儀を3台使っているのですが、3台ともそれぞれ毎回同じような値を示します。ズレの大きさはやはり小>中>大の順になります。この「機器ごとに同じ値を毎回示す」ことは次のように、もう一つの有益な情報をもたらしてくれます。
例えば、2度目の極軸調整でいつものズレの値より大きなずれが出た場合は、何かおかしいことがある場合がほとんどです。明らかに大きなズレが出たときに改めてチェックすると、大抵どこかネジが緩んでいるのが見つかるので、その後の撮影時のトラブルに遭う確率を、かなり減らすことができます。
SWAT用極軸微動ユニットで2度極軸調整をすると
さてなぜこんな話をしたかというと、SWAT用の極軸微動ユニットを使って、1度目の極軸調整は上で書いた通り10秒角以下のすごい値にできますが、その後、90度回転させる2度目の極軸調整をしたら、ズレが大きく出でしまったからです。何度か試しましたが、毎回2分角から4分角程度のズレが出ました。最初これが三脚を含めた今回のシステムの限界かと思ったのですが、ズレの値があまり安定せず、毎回違います。
2度目の極軸調整時のずれ。かなり大きく出ています。
これは何度か試して原因がわかりました。以前、大阪迷人会の極軸微動雲台を試験したことがありますが、そこに付いていたような「別のネジを別方向から締めることで、これ以上可動方向に動かないように固定するような機構」がないのです。そのため、このSWAT用の極軸微動ユニットを使うときには、押しネジを両側から十分に押した状態にしてやる必要があるようです。
具体的には、SharpCapの1度目の極軸調整の時に、一方向のネジを締めながらある程度いい位置になってきたら、反対側のネジをそこそこ固く締めてしまいます。最後の微調整は、この状態で両側のネジを最後に締め込むような形でいい値に近づけていくと、これ以上ズレることはなくなるようです。具体的には2度目極軸調整時のズレが、最大でも1分角以下、典型的には0.5分角程度になりました。何度か試しても再現性があったので、ここら辺が今回のシステムの安定度と言えると思いますが、これはかなり優秀な値で、大型赤道儀のCGX-Lと同等か、ヘタをするともう少しいいくらいです。
押しネジを両側きちんと閉めた場合の、2度目の極軸調整の典型的なズレ。
相当安定な値です。
相当安定な値です。
ポタ赤の安定度としてはもう十分すぎるくらいなので、これ以降の使い勝手や安定度などの評価は、実際の撮影で試したいと思います。
まとめ
今回使用させて頂いているSWAT用極時微動ユニットは、調整時のネジの操作のしやすさや可動部の安定性に関しては特筆すべきレベルで、極軸調整をとても素早くスムーズに、精度良く済ますことができます。ただし、押しネジの両側からの挟み込みを十分にすることが重要で、挟み込みをきちんとすると相当な安定度を実現できることがわかりました。
その際の安定度の評価では、極軸調整を90度行って90度戻すというように二度繰り返すことで、定量的に評価できることを示しました。
押しネジを十分に締めるということは今回のSWAT用だけの話ではなく、赤道儀一般にも言えることだと思いますので、長時間露光になるとドリフトなどで、どうしても安定しないという場合は、一度押しネジを両側から締めることに気を付けてみるといいかと思います。