今回の記事は、2022年5月28日の飛騨コスモス天文台の観望会の後に撮影したIC1396の画像処理です。
ゴールデンウィークにASI2400MC Proで青い馬星雲を撮影しましたが、5月中は借りていて良いということになり、もうワンショット何か撮影できればと思っていました。
せっかくのフルサイズのカラーカメラなので、飛騨コスモス天文台の利点を生かした北の暗い空で、フィルターなしでどこまで出るのかを、できるだけ広角で大きな天体で試してみたいというのが第一です。いろいろ考えて、IC1396:象の鼻星雲(Elephant's Trunk Nebula)をターゲットとしました。ケフェウス座にあるかなり大きな星雲で、北アメリカ星雲より大きいくらいです。
実はこの前後に、象の鼻の部分をSCA260で拡大して撮影しています。こちらはナローバンドフィルターを使って撮影しているので、比較が楽しそうという理由もあります。
機材はFS-60CBとCGEM IIで、青い馬星雲を撮った時と同じです。カメラもASI2400MC Proなので同じものですが、露光時間とゲインも同じにしました。設定も含めて全く同じにしたのはダークやフラット、フラットダークフレームを使い回しするためです。NINAだとまた撮影時にカメラを認識でトラブりそうなので、今回は最初からSharpCapを使っての撮影です。それでも認識させるまでに何度か接続し直しをしました。青い馬星雲の撮影時と同じように、ディザーをしていないので縞ノイズがでる可能性があります。青い馬ではとりあえず出ていないようだったので大丈夫かともいますが、おそらく今回の方が淡いので少し心配です。
あと、青い馬星雲を撮影した時はバックフォーカスを合わせる手段がなくて、現地でFC76用のマルチフラットナーのリングを使って適当にマルチフラットナーからセンサーまでの距離合わせましたが、今回はZWO製のフルサイズクラスのCanon EFマウント用のアダプターを使い、さらに足りないフィルターホイール分の11mmを別途M54のアダプターを使い、1mm単位でバックフォーカスを合わせることができました。比較すると、青い馬星雲のときの四隅を見ると相当ずれていたのがわかります。
今回の四隅は下のようにかなりマシになりました。でもよく見ると、左より右側が流れています。カメラのスケアリング調整が必要なのでしょうか?アダプターをいくつも使っているので、微妙にずれた可能性もあります。
撮影は3分露光で全部で45枚、合計2時間15分の撮影時間なので、大して長くはないです。撮影はかなり安定していて、45枚全てを画像処理に回すことができました。気になるのは人工衛星で、45枚中11枚に軌跡が入り込んでいます。ひどいのは3分で3つの線が入っています。そんなのが2枚ありました。
撮影はもう先々週のことになるのですが、これが一番新しい素材で、他に4月から未処理の画像が大量に溜まっています。それでもカメラを返す必要があるので、こちらを先に処理することにしました。
PixInsightが5月18日にアップデートされて1.8.9-1となりました。StarNet V2だけは相変わらず手動インストールが必要でした。
新しいこととしては、WBPPで途中経過を示すスクリーンが出るようになりました。これを見ていると、Local Normarizationに一番時間をかけていることがわかります。馬頭星雲の画像処理の時にLocal Normarizationの有り無しでかなり差が出たので、時間はかかっても今後もオンのままで行こうと思います。
スタック直後の画像をオートストレッチしたものがこちら。結構淡いですが、まあなんとかなるでしょう。
あと、フラットフレームが室内での壁撮影だったこともあり、1次の傾きがあるかもしれなないため、ABEの1次で補正しました。実際上の画像は右側が暗いです。Deconvolutionは試しましたが、ほとんど効果がなさそうで適用せず。その後ストレッチして、少し星がうるさかったのでEZ StarReductionのみかけました。後はPhotoshopに渡して仕上げです。
オレンジ色のガーネットスターが綺麗です。わずか2時間ちょっとの露光としてはかなり淡いところまで出たのかと思います。自宅富山では得られないような暗い北の空なのでそもそも有利なのですが、カメラの性能のおかげというのもかなりあるのかと思います。画像処理に関しては以前同じカメラで撮った三つ子銀河と青い馬星雲と同じような感想で、とても素直で、露光時間が短いにも関わらず手間がかかりません。やっぱり素直にASI2400MC Proはかなりいいカメラだと思います。
今回、周りの淡い部分を出すために全体を明るくしているため、右側から伸びる象の鼻のところをうまく出すことができませんでした。ここは結構明るい部分なので、そこにある暗黒体は潰れてしまいがちで、もっと輝度を落とすと出てくるのですが、それだと全体が暗くなってしまいます。この部分はSCA260で撮影したナローでリベンジかと思います。
あと、どうしてもSolverがうまくいかなかったため、今回Annotationは無しです。ストレッチ前の画像ではきちんとできるので、ストレッチの過程で星がうまく検出できない何かが起きているようです。それでも最高で98%まで検出できていると出てくるので、後少し何かが違うだけだと思うのですが...。別画像でSolverをかけてその情報を他の画像に移す用法もある気がするのですが、ちょっとわかってません。
それにしてもカラーカメラは楽でいいですね。分解能を求めるような系外銀河とかでなければ、もうカラーで十分な気がします。特に短焦点の広角はそこまで分解能必要ないですし、フルサイズの方がより大きなエリアを見ることができるので、このカメラはベストに近い選択の気がします。もう一つ上にASI6200MC Proがありますが、逆にこちらはピクセルサイズが小さくなり画像サイズが大きくなるので、感度的には2400の方がいいのと、画像サイズ的に使い勝手がいいのかもしれません。でも6200の16bitは少し気になるし、モノクロと合わせてLとRGBの2つで撮るとかの応用も効くので、こういった活用なら6200はかなり魅力です。
とまあ、お借りしたカメラをもとに感想を言っているだけなので気楽なものですが、今回も含めてこれだけ出るのなら、値段さえ許すなら本当に今の6Dを置き換えたいです。でも中古の6Dが4-5台分、どうしても考えてしまいます。
今回を含めて、このASI2400MC Proで「三つ子銀河」「青い馬星雲」「IC1396」と3つの作品を仕上げました。これだけの高性能のカメラを使わせていただく機会を与えていただき、感謝しています。自分としてはどれもこれまでにない仕上がりとなり、心置きなく返却できます。いや、かなり後ろ髪をひかれます...。もうちょっと使いたい...。できれば欲しい...。
IC1396を選んだ理由
ゴールデンウィークにASI2400MC Proで青い馬星雲を撮影しましたが、5月中は借りていて良いということになり、もうワンショット何か撮影できればと思っていました。
せっかくのフルサイズのカラーカメラなので、飛騨コスモス天文台の利点を生かした北の暗い空で、フィルターなしでどこまで出るのかを、できるだけ広角で大きな天体で試してみたいというのが第一です。いろいろ考えて、IC1396:象の鼻星雲(Elephant's Trunk Nebula)をターゲットとしました。ケフェウス座にあるかなり大きな星雲で、北アメリカ星雲より大きいくらいです。
実はこの前後に、象の鼻の部分をSCA260で拡大して撮影しています。こちらはナローバンドフィルターを使って撮影しているので、比較が楽しそうという理由もあります。
機材はFS-60CBとCGEM IIで、青い馬星雲を撮った時と同じです。カメラもASI2400MC Proなので同じものですが、露光時間とゲインも同じにしました。設定も含めて全く同じにしたのはダークやフラット、フラットダークフレームを使い回しするためです。NINAだとまた撮影時にカメラを認識でトラブりそうなので、今回は最初からSharpCapを使っての撮影です。それでも認識させるまでに何度か接続し直しをしました。青い馬星雲の撮影時と同じように、ディザーをしていないので縞ノイズがでる可能性があります。青い馬ではとりあえず出ていないようだったので大丈夫かともいますが、おそらく今回の方が淡いので少し心配です。
あと、青い馬星雲を撮影した時はバックフォーカスを合わせる手段がなくて、現地でFC76用のマルチフラットナーのリングを使って適当にマルチフラットナーからセンサーまでの距離合わせましたが、今回はZWO製のフルサイズクラスのCanon EFマウント用のアダプターを使い、さらに足りないフィルターホイール分の11mmを別途M54のアダプターを使い、1mm単位でバックフォーカスを合わせることができました。比較すると、青い馬星雲のときの四隅を見ると相当ずれていたのがわかります。
今回の四隅は下のようにかなりマシになりました。でもよく見ると、左より右側が流れています。カメラのスケアリング調整が必要なのでしょうか?アダプターをいくつも使っているので、微妙にずれた可能性もあります。
撮影は3分露光で全部で45枚、合計2時間15分の撮影時間なので、大して長くはないです。撮影はかなり安定していて、45枚全てを画像処理に回すことができました。気になるのは人工衛星で、45枚中11枚に軌跡が入り込んでいます。ひどいのは3分で3つの線が入っています。そんなのが2枚ありました。
撮影はもう先々週のことになるのですが、これが一番新しい素材で、他に4月から未処理の画像が大量に溜まっています。それでもカメラを返す必要があるので、こちらを先に処理することにしました。
画像処理
PixInsightが5月18日にアップデートされて1.8.9-1となりました。StarNet V2だけは相変わらず手動インストールが必要でした。
新しいこととしては、WBPPで途中経過を示すスクリーンが出るようになりました。これを見ていると、Local Normarizationに一番時間をかけていることがわかります。馬頭星雲の画像処理の時にLocal Normarizationの有り無しでかなり差が出たので、時間はかかっても今後もオンのままで行こうと思います。
スタック直後の画像をオートストレッチしたものがこちら。結構淡いですが、まあなんとかなるでしょう。
あと、フラットフレームが室内での壁撮影だったこともあり、1次の傾きがあるかもしれなないため、ABEの1次で補正しました。実際上の画像は右側が暗いです。Deconvolutionは試しましたが、ほとんど効果がなさそうで適用せず。その後ストレッチして、少し星がうるさかったのでEZ StarReductionのみかけました。後はPhotoshopに渡して仕上げです。
結果
「IC1396: ケフェウス座散光星雲」
- 撮影日: 2022年5月29日0時57分-3時13分
- 撮影場所: 岐阜県飛騨市
- 鏡筒: TAKAHASHI FS-60CB+マルチフラットナー(f370mm)
- フィルター: なし
- 赤道儀: Celestron CGEM II
- カメラ: ZWO ASI2400MC Pro (-10℃)
- ガイド: f50mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイド
- 撮影: SharpCap、Gain 150、露光時間3分x45枚で総露光時間2時間15分
- Dark: Gain 150、露光時間3分、64枚
- Flat, Darkflat: Gain 150、露光時間 0.1秒、64枚
- 画像処理: PixInsight、Photoshop CC
今回、周りの淡い部分を出すために全体を明るくしているため、右側から伸びる象の鼻のところをうまく出すことができませんでした。ここは結構明るい部分なので、そこにある暗黒体は潰れてしまいがちで、もっと輝度を落とすと出てくるのですが、それだと全体が暗くなってしまいます。この部分はSCA260で撮影したナローでリベンジかと思います。
あと、どうしてもSolverがうまくいかなかったため、今回Annotationは無しです。ストレッチ前の画像ではきちんとできるので、ストレッチの過程で星がうまく検出できない何かが起きているようです。それでも最高で98%まで検出できていると出てくるので、後少し何かが違うだけだと思うのですが...。別画像でSolverをかけてその情報を他の画像に移す用法もある気がするのですが、ちょっとわかってません。
まとめ
それにしてもカラーカメラは楽でいいですね。分解能を求めるような系外銀河とかでなければ、もうカラーで十分な気がします。特に短焦点の広角はそこまで分解能必要ないですし、フルサイズの方がより大きなエリアを見ることができるので、このカメラはベストに近い選択の気がします。もう一つ上にASI6200MC Proがありますが、逆にこちらはピクセルサイズが小さくなり画像サイズが大きくなるので、感度的には2400の方がいいのと、画像サイズ的に使い勝手がいいのかもしれません。でも6200の16bitは少し気になるし、モノクロと合わせてLとRGBの2つで撮るとかの応用も効くので、こういった活用なら6200はかなり魅力です。
とまあ、お借りしたカメラをもとに感想を言っているだけなので気楽なものですが、今回も含めてこれだけ出るのなら、値段さえ許すなら本当に今の6Dを置き換えたいです。でも中古の6Dが4-5台分、どうしても考えてしまいます。
今回を含めて、このASI2400MC Proで「三つ子銀河」「青い馬星雲」「IC1396」と3つの作品を仕上げました。これだけの高性能のカメラを使わせていただく機会を与えていただき、感謝しています。自分としてはどれもこれまでにない仕上がりとなり、心置きなく返却できます。いや、かなり後ろ髪をひかれます...。もうちょっと使いたい...。できれば欲しい...。