ほしぞloveログ

天体観測始めました。

カテゴリ:赤道儀・経緯台・三脚 > CGX-L

Twitterでおののきさんももやすがガイド鏡に言及されていて、タカsiさんが0.5秒ガイドに助けられているとコメント、更におののきさんがCGXが暴れることがある時に(速いガイドが)効果があると言っています。



私もCGX-Lでの赤経側で発振のように周期的に揺れが出る傾向があり、ガイド鏡のサンプリングレートを0.2秒にすると軽減したことがあります。



原因はある程度推測していたのですが、いまいち自信がなくそのときはブログ記事を一旦書いて、削除した覚えがあります。でもおののきさんも同じように、ガイドを速くしたら暴れを抑えられると書いているので、同じ現象かはわかりませんが、可能性の一つとして書いておこうと思います。


発振のメカニズム

今回の周期的に揺れが大きくなる現象が、推測する「発振」だとして話を進めると、制御の言葉で言う「位相遅れ」というのを理解しなくてはいけません。制御に詳しい方や、回路などに詳しい方はこの時点ですでにピンときているかもしれません。

まず何か揺れているもの、例えば振り子を考えてみましょう。紐にぶら下げた質量、何でもいいですがここではすぐ横にあるMacのバッテリーで代用しましょう(本来は振り子ではありません(笑)。もし同じように試す場合は目的外使用ですので自己責任でお願いします。)

ケーブルにつられたバッテリーは、持っている根本の揺れに依存して、常に揺れています。特に振り子の長さだけによって決まる共振周波数あたりでは、揺れは増幅され大きく揺れます。

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その揺れを抑えるために、あるセンサー(ここでは「目」)を用いてその揺れを観測し、揺れを抑えるようにアクチュエーター(ここでは空いている方の手の「指」)を用いてバッテリー本体に力を加えます。バッテリーが大きく揺れている時、目でその揺れを見て、その揺れが収まるように指で突いて力を加えてやり、それを何度かすることで徐々に揺れの振幅を小さくすることが可能です。

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力を加えるタイミングに注目してみましょう。揺れを抑えるためには、「振り子が指に迫ってくる」時に力を加えているはずです。もしこのタイミングが遅れて「振り子が指から離れていく」時に力を加えると、揺れは収まるどころかどんどん大きくなっていくはずです。これが「発振」です。


位相余裕と発振

もう少し考えます。この振り子の大きな共振周波数あたりでの揺れは、ある振幅と位相をもって揺れています。位相というのは1周期で360度となるような時間的なタイミングを表します。振り子が指から最も離れて、方向が反転する瞬間の位相を0度とします。振り子が指に迫ってきて、最も近づいて方向がさらに反転する瞬間が位相180度です。振り子の揺れを止めるためには、位相が180度になる手前で力を加える必要があります。位相が180度を超えて力を加えると「発振」するということです。この時の「180度になるどれくらい前」に力を加えているかというのを「位相余裕」と呼びます。通常位相余裕は数10度は欲しくて、0度に近づくほど発振に近くなります。

ここまでは共振周波数付近のみでの説明でしたが、実際は大きな揺れではないですが、振り子は共振周波数以上でも以下でも揺れています。常に速い細かい揺れがあるとかを想像してください。目でこの揺れを見るのは難しいかもしれませんが、それこそ望遠鏡などで拡大して見てやれば小さな揺れも見えますね。これらの速い揺れもやはり抑えてやりたいわけです。でも速い揺れに対しては反応も早くなくてはダメで、その反応が遅れると「位相余裕」がなくなっていきます。速い揺れに対して遅い力で抑えようとしても、反応が遅いために「位相余裕」がなくなり揺れが増幅される、これが「発振」です。


赤道儀のガイド制御ループでの遅延

さて、これらのことを今回の赤道儀の周期的な揺れに置き換えてみましょう。まず、センサーはガイド鏡のCMOSカメラで、対象はガイド鏡で見たガイド星の位置になります。アクチュエーターは赤道儀についているモーターです。位相を遅らせる原因はさまざまなものがあります。
  1. まず、カメラで星を見てPCに取り込むまでに時間がかかります。時間の遅延になるので位相余裕を食います。
  2. カメラの画像から星の位置を計算をするのに時間がかかります。ここでも位相余裕を食います。
  3. その位置をもとに、どうフィードバックフィルターを設計して赤道儀に返すか(PHD2のパラメータ調整に相当)ですが、フィルターの設定度合いによって遅延が起きます。
  4. モーターは信号が来て初めて動くので、そこでも当然遅延が発生します。
  5. モーターが動いても、実際の赤道儀が反応するまでには有限の時間が必要なので、ここでも遅延が発生します。
これら遅延の全てが位相を食っていき、位相余裕が0度より多く残っていれば発進を防ぐことができ、揺れを抑えるという制御は成立します。


では何が原因か?

こうやってみると遅延だらけですが、この中で今回重要なのは、センサーから星の位置を特定するまでの遅延と、赤道儀のメカ的な遅延です。

まず、PHD2でのガイドのタイミングを0.5秒とか、0.2秒とか速くしたということは、カメラからの読み取りのサンプリングレート速くし、情報を速く取り入れるということに相当します。遅延が少なくなるので、位相余裕が食われにくくなります。

ではなぜCGXやCGX-L特有で揺れが問題になるのか?一つは大きくて重い赤道儀だからというのがあると思います。赤緯体よりは赤経体の方が(赤緯体自身も含むので)重いはずです。揺れなので慣性モーメントで議論すべきですが、当然赤経体の慣性モーメントも大きいです。慣性モーメントが大きいということは、外力に対して反応が遅いということを意味しているため、ガイド信号に対する応答も遅く、遅延の原因になり、位相余裕を食います。その他にCGXやCGX-L特有でメカ的に何かロスなどがあり、遅延を発生しているという可能性もあるかもしれません。

いずれにせよ、大きく重い赤道儀を駆動する場合、発振は起きやすいということは定性的にはそれほど間違ってはいないでしょう。


解決策の例

では解決策はというと、
  1. 応答を速くすることができる場所でできるだけ速くする。今回はカメラの取り込みのレートを、1秒とかから0.5秒や0.2秒と、2倍から5倍くらい速くしたこと。
  2. もう一つは、制御全体のゲインを下げることです。これはPHD2の「Agressiveness」を下げるとかでしょうか?結局トータルのゲインは赤道儀自身の応答(周波数で測った伝達関数)を含むので、PHD2の一つのパラメータだけで調整できるものでもありません。いずれにせよ、制御が効いている周波数帯域で位相余裕が残っていればいいわけですから、制御帯域を狭め位相余裕が残っている遅い周波数帯だけで制御するというセンスです
こう考えると、CGXやCGX-Lは高周波の応答が悪い何らかの理由があるのではという推測も出てきます。

とまあ、対処療法的にはいくつか解決策も考えることができるので、他にもアイデアがあれば試していきたいと思います。ただし、あくまでこの揺れが「発振」によるものだとしてですが。


少し冷静に、発振でない可能性も

あと、ここまで書いたことは古典制御の範囲で「線形性」を仮定しています。モーターを使った制御の場合は線形性は保証されません。モーター制御の話は詳しくないので、もしかしたら全然勘違いしたことを書いている可能性もあります。その場合はゴメンなさい。

今回議論した、「制御の位相余裕がないことによる発振」ではない可能性としては、何か周期的な機械的な歪みがあることが考えられますが、調べてみるとCGX-Lによくある現象の様です。系統的に何かCGX、CGX-Lにメカ的に問題がある可能性はありますが、状況によって大きく変わるというのはメカものというよりは、制御系と考えた方がスッキリします。


まとめ

制御についてこのブログで扱ったことは今回が初めてかと思います。

ガイド制御ループの位相遅れが原因の、位相余裕の無さによる発振と考えるとかなりすっきりすると思いますが、まだ他のCGX系特有の別の理由の可能性もあり得ます。私のところでもすでに何度か再現していて、そこそこ再現性はありそうなので、もう少しじっくり見ていきたいと思います。

今回の話は古典制御のさわりみたいなものですが、理解しておくと望遠鏡にも色々役立つことは多いと思います。もし興味がある人がたくさんいるなろ、Zoomとかで勉強会を開くとかもいいのかもしれません。結構マニアックな話になると思いますが、そんな人いますかね?



 

 


今回は赤道儀をCGX-Lに変えてからの初の撮影になります。


まずは結果から

CGX-Lを三つ子銀河でテストしました。

「M65、M66、NGC3628: 三つ子銀河」
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  • 撮影日: 2022年3月27日22時33分-3月28日1時56分、3月29日21時50分-3月30日2時35分
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: SHARP STAR製 SCA260(f1300mm)
  • フィルター: 無し
  • 赤道儀: Celestron CGEM II
  • カメラ: ZWO ASI2400MC Pro (-10℃)
  • ガイド:  f120mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: NINA、Gain 150、露光時間10分、34枚で総露光時間5時間40分
  • Dark: Gain 150、露光時間10分、64枚
  • Flat, Darkflat: Gain 150、露光時間 0.01秒、128枚
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC

銀河の細部と浮遊感、NGC3628のヒゲとM66の周りのモヤ、微恒星の数、恒星の点像と自然な具合など、個人的にはかなり満足しています。いろんなことが実を結んだ結果だと思います。三つ子銀河は3500万光年離れているそうです。この画像を見ていると、光が3500万年も旅して地球に届いたのかと、改めて実感します。

Annotationを見ると、かなり小さいPCG銀河もたくさんあることが分かりますが、恒星と区別できて銀河とわかるものが多いです。これもまた面白いです。

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改善の理由

一番大きなのは、頑丈な赤道儀を手に入れることができたおかげです。昨年末にSCA260がきてから約半年、CGEM IIとともにいろいろ苦労しましたが、新しいCGX-Lでとうとう揺れの少ない撮影を実現することができました。SCA260はカメラなども入れると15kgを超える重量級の鏡筒になってきます。耐荷重18kgのCGEM IIならなんとかなると思っていましたが、最近のM100M101などの系外銀河撮影すると、揺れの影響で細部が再現できないことを実感するようになってきました。

ASI2400MC Proはお借りしたものですが、フルサイズでピクセルサイズ5.94μm、SNR1sが0.11lx(実はこれほとんど情報がありません。やっとここで見つけました。)とかなりの高感度です。

画像処理もこれまでの経験が成果として出ている気がします。特にここ最近で始めたdeconvolutionは今回細部を出すのに効果がありましたし、今回ノイズ処理に関する処理をほとんどしなかったために、ずっと悩んでいたノイズ除去の時に背景に出てくる大きな構造のモヤモヤもありません。これも私的には高ポイントです。


撮影

3月初めに借りたASI2400MC Proですが、天気があまり良くなくて、なかなか試すことができませんでした。その返却期限が4月末なので、なんとか成果を出さなくてはと思いと、CGX-Lを早く試したいというのでちょうどいい機会でした。

撮影日は3月末。以前の報告で撮影時のことは少し書いていて、露光時間はテストをしてみると10分でも4隅まで点像を保ちます。



もちろん揺れて伸びる場合もあるのですが、かなりの率で点像になるので十分実用範囲です。それよりもまだ不思議なのは、天頂に近づくと突然流れ出すのです。赤道儀を反転すると流れるのは無くなります。これはこの時だけでなく、これ以降も同様の状況で繰り返し起きています。何らかのたわみなのかと思いますが、むしろ水平に近い方がたわみの変化率は大きい気がするので、少し腑に落ちません。今のところオフアキの視野が(安価なものなので)狭く星の数が確保できずに実用的でないですが、いずれきちんとしたオフアキに移行することなると思います。

あとは特にトラブルもなく、撮影は2日にわたっていますが、普通に撮影は終わりました。


画像処理

画像処理に使えたのは55枚中、34枚でした。流れたものや明るくなってしまったものなどを除き、最初使えると判断したものが36枚、途中PixInsightで2枚弾かれました。

画像処理をするにあたり、PixInsightでスタックしてまず驚きました。この時点ですでに、ものすごく精細に出ています。

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スタック直後の画像をオートストレッチしたもの。

ところが、背景がかなり乱れていることもわかりました。フラットフレームはいつも通り明るい壁を写したのですが、これでは補正しきれなかったようです。周辺減光はまだいいのですが、妙な迷光があります。左上と右下に太い線のようなもの、真ん中に円形の光芒です。今のところまだ原因は不明です。円形の光芒は以前調べた通りフォーカサーの可能性があります。撮影時、結構周りが明るかったからです。このため、周辺部は仕上げ用にはクロップしています。クロップした上でも、これらの除去に少し苦労しましたが、後の画像処理は普段と比べてもはるかに楽なものでした。よく言う「素材がいいと画像処理が楽」というやつでしょうか。

揺れが小さいこと、さらにシーイングもよかったのかと思いますが、とにかくシャープなので、シャープ系の画像処理をほとんど必要としません。四隅を見ても、ほぼ完璧な点像です。

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シャープさ改善関して使ったのはdeconvolutionのみで、銀河の細部がかなり出るなど、これもかなりうまく行きました。deconvolutionに関しては、3回目の使用になってやっと色々とパラメータを調整できる余裕が出てきました。重要だったのはWaveletによるノイズリダクションで、うまくそろえてやらないと背景のノイズを逆に増やしてしまいます。マスクである程度回避できますが、銀河の周りと背景の境はマスクではどうにもなりませんでした。

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銀河内部の解像度が上がっているのはわかりますが、
銀河周辺にボツボツができてしまっています。

これを直すためにWaveletのパラメータをいじる必要がありました。
 
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銀河周りのボツボツが、かなり軽減されているのがわかると思います。

しかも今回は、deconvolutionできちんと恒星が小さくシャープになることが確認できました。これは初めてのことでしたが、やはり素材によってうまく処理できるものなのでしょうか?

露光時間も6時間分とそこそこあるので、背景ノイズもほとんど困ることはなく、こちらもノイズ系の画像処理はしていません。

あと、恒星の色がかなりきちんと出て、輝いて見えるのもうまくいきました。私的にはここまでうまく出たのは初めてだと思います。やはりこちらもシャープさが効いているのかと思います。


比較

最終的な結果は改めて上を見ていただくとして、前回の贅沢電視観望の記事で同じ三つ子銀河を見たものから処理したのはとは、流石に雲泥の差があります。

さらに、以前TSA-120で撮影した三つ子銀河と比べてみます。当時はうまく撮れたと思っていて、タカsiさんからもコメントをいただいていました。でもさすがに今回のは全然違います。細部はそこそこ出てたと思いますが、一番の違いは微恒星の数です。

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撮影時の数字を比較しても歴然とした差があります。TSA-120とSCA260を比較すると、口径が260mmで2倍強なので明るさで4倍以上、露光時間が5分から10分で2倍なので、1枚あたりで計8−9倍情報があります。焦点距離はTSA120の方が900mmで1300mmのSCA260より明るいので(1300/900)^2 = 2.1倍違い、トータル露光時間は3時間と今回の6時間で2倍有利なので焦点距離の違いとほぼ相殺、ピクセルサイズが294MCの4.63μmと2400MCの5.94μmで1.6倍有利。こう考えると、1ピクセルに入る光子で15倍くらい違いがあります。さすがにこれだけ違うと結果も違ってきて当然で、ここら辺が特に暗い微恒星の数、銀河の細部に効いてくるのかと思います。
 
数字上ではこれだけの違いがありますが、これをきちんと画像として反映させるのには、赤道儀とのバランスというものがとても重要だと、今回思い知らされました。


まとめ

SCA260が来て約半年、やっとここまで出ました。鏡筒と赤道儀の相性はやはり大切です。カメラは今後またASI294MMProに戻ります。モノクロなのでさらに分解能が出せるのか、もう少し探ります。あと、画像処理ではM51とM104が残っています。だんだん初夏の星座になりつつあり、もう銀河まつりも終盤を迎えると思いますが、もう少しこのセットアップで撮りたいと思います。


 

 



CGEM IIの限界

SCA260を耐荷重ギリギリのCGEM IIに載せた時の振動問題。いろいろ対策はしてきましたが、この間ちょっと小さめのM100を撮影してみると、どうしても揺れが目立ってしまい、やはり限界を感じてきました。M100の画像処理はまた別記事にするとして、これまで作例として出してきたM33馬頭星雲など、ある程度画面いっぱいに広がるものは多少のごまかしが効きます。でもNGC253とか、もっと小さな銀河を目指そうとすると1分露光くらいが限界で、それ以上ではどうしても揺れが目立ってきてしまいます。


サイトロン本社にて

今後の長期的なことも考えて、もっと頑丈な赤道儀、例えばEQ8を念頭に色々考えていました。そんな折、CP+の収録でサイトロン本社に立ち寄る機会があって、昨年購入させて頂いたSCA260の結果共々、振動のこととを話していると「EQ8でいいのがありますよ」という話になったわけです。実際に展示してあったEQ8Rを触らせてもらいましたが、ちょうどSCA260が搭載されていて、触ってみても揺れそうな気配が全然なく、もう羨ましい限りでした。でも内情はというとサイトロン訪問の数日前に雪道で車で事故を起こしてしまい、車を買い替えなくてはならなくなり、妻からは「しばらく天文機材禁止」とのお達しが出てしまっていたのです。なのでEQ8などしばらくは夢のまた夢です。

そんな恥ずかしい話をしていると「CGX-Lはどうですか?」という話になりました。皆さんご存知の通り、サイトロンは長い間セレストロンの代理店でした。その当時の展示品の一つか何かで、以前から故障していて使えるかどうかもわからないものだそうです。ジャンクとして自分で直して使うのなら格安で譲ってくれるというのです。

少しだけ動かしてもらうと、何やらエラーは出ていますが、モーターは一応回転します。エラーをスキップして初期アラインメントを試しても何か動きはします。聞くと「エンコーダーを交換したり色々やってみたが、それでも直らないのでもう使う予定はない」とのこと。「物としては大きく場所もとっているので、もし自分で直してみる気があるなら...」ということなので、速攻で「やってみます」と返事をしました。そもそも、自作で大型のイギリス型の赤道儀でも作るしかないかと思っていたくらいです。動けばラッキー、ダメでも基本構造はそのまま使えるでしょうという目論見です。


どデカい箱が到着!

その後何度かやりとりをし、保証も修理もサポートもできないけれどという約束で、本当に格安で送ってもらうことになり、待つこと数週間。3月26日の土曜日の朝、とうとう自宅に届きました。配送のお兄ちゃんは力もありそうでしたが、それでも流石に大変そうなくらい大きな段ボール箱なので、一緒に手伝いながら家の中へ運びます。大きな箱が2つと、小さくて重い箱がひとつ。赤道儀、三脚、ウェイトでしょうか。

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靴と一緒に撮りましたが、そのとんでもない大きさがわかるかと思います。

一番大きな箱から開けてみます。
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どうやら三脚のようです。それにしてもでかい。これまでのAVXやCGEM IIのものと違い、内側に開き具合を制限するフレームが付いているのと、3本の脚をまとめるベルトのようなものが付いています。

広げて玄関に置いてみます。
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脚の太さは5cmから7cmに変わっただけとのことですが、とてつもなくゴツく見えます。

もう一つの大きな箱の赤道儀も出してみます。
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テーブルの上に置いてみましたが、隣のMacBook Proと比べてもその大きさがわかるかと思います。ただ、持ち運びに関しては取っ手が上下についていてバランスよくしっかりつかむことができるので、実際の重さと比べても幾分楽になります。また、このようにテーブルの上にまっすぐ置くことができるのもありがたくて、メンテナンスが楽になります。普通は赤道儀の下は平ではなく、メンテナンスで稼働させようとすると結局三脚の上に乗せる必要があったりします。

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細かく工夫されているのは、水平調整のネジの先端が丸くなっていることでしょうか。
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CGEMIIの水平調整ネジも先端はある程度加工していますが平な部分がわかります。一方、CGX-Lのほうは完全に球面になっています。

三脚と赤道儀を取り出した空箱ですが、うまく入れ込むと赤道儀の大きな箱と中身、ウェイトの小さい箱がちょうど丸々三脚の箱の中に入ります。赤道儀の二重箱の外側の箱は入らないので畳んで上に置くなどする必要がありますが、かなりコンパクトになります。

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と言っても、一つでもまだ大きいことには違いありません。

さて、赤道儀を実際に三脚に載せてみます。赤道儀の固定は横三方向から付属のM8ネジで止めることになります。その際、手で回すだけではガタついてしまうので、毎回六角レンチで締める必要があり、ちょっと手間です。
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こうやって3台並べると、今回のCGX-Lがあからさまに大きいことがよく分かります。3台同じメーカーで並べると壮観で、さながら展示場みたいでしょうか(笑)。その後、まだ繋がっていないハンドコントローラーと、電源ケーブルを電源と繋ぎ、動作確認となります。


動作チェック

ここからは賭けになります。動けば以前のPSTジャンクみたいに超ラッキー、動かなければ大きな置き物にもなり兼ねません。

まず電源を入れると、早速エラーメッセージが。写真はDecですが、何度か試すと、RAの時もあります。
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これをそのまま進めると、DECの回転が始まり、矢印ボタンで止めたりしない限り、ずーっと動き続けます。RAの時も同様で、何かしない限りは止まりません。どうもこの機能、電源を入れたら自動的にホームポジションに移動するという、CGX以上で搭載されている目玉の機能のようです。この機能があるために、赤経も赤緯も初期位置を示す三角マークとかが見当たりません。自動でホームポジション状態になるので、そのようなマークは必要ないということみたいです。

とりあえずBackボタンでスキップできるようなので、何度かBackボタンとEnterを押して次に進みます。するとCGEM IIの初期画面と同じになります。ここからさらに進め、(昼間の確認なのでまだ確実ではないですが)ベテルギウスで初期アラインメントを取ってみると、どうやらそれらしい方向を向くようです。その後、耳を澄ますとジーッという音がしているので、追尾も一応動いているようです。

この時点でエラーが出るのはエンコーダに問題があるのではと推測しました。そこで、Stellariumで赤道儀と接続して信号がどう出ているのかチェックしてみることに。初期アラインメントで赤道儀はすでにベテルギウスらしい方向を向いています。この状態でStellariumを赤道儀に接続すると、なんとStellarium上では既にベテルギウスにいると指し示しているではないですか!これは明らかにエンコーダーは生きていることを示しています。ここから考えるに、どうもエンコーダの故障とかではなく、CGX以上では初期位置確認のセンサーが独立にあって、今回はこれがなんらかの理由で働いていないようです。

言い換えると、エンコーダも動いているので、最初のホームポジションへ行くのさえ手動でやってしまえば、あとはガイドやプレートソルブさえも動くかもしれません!


トラブルシューティングの一例

ここで一旦動作確認を終えて、電源を入れ直しエラーについてもう少し把握することにします。まず、ハンディーコントローラーに問題がないか試します。

同じメーカーの機器を使い続けることの利点の一つが、共通の部品を使えることです。今回は、コントローラーが計3つあるので、CGEM IIのものとAdvanced VXのものに順に交換してみました。コントローラーによってはなぜか赤緯モーターが回らないことがありましたが、エラーメッセージはどのコントローラーでも出るので、コントローラーが原因とは考えにくく、CGX-L本体からエラーが発生している可能性が高いという結論を出すことができます。

何度か電源を入れると、たまにCGX-Lと認識されずに、機種がわからないか、オリジナルのGTとして認識されることがありました。この時はCGX-Lのバージョンなども不明と出てしまうようです。これは電源を入れ直すことでCGX-Lと認識されたのと、頻発するようではないので、まあ放っておくことにしました。

さて、こういった時のトラブルの際の解決方法の例ですが、まずは表示を日本語から英語にします。出てきたエラーメッセージをGoogleなどで検索すると、日本語のページでは引っかかりませんでしたが、海外には同じような状況になっている人が何人かいるようです。その中で、Cloudy Nightsにドライバーのアップデートで解決したというのがまず見つかりました。そのため、CelestronのFirmware Managerを使いハンドコントローラーとCGX-Lのドライバーを最新のものにアップデートします。

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この時少し失敗して、もともとどのバージョンが入っていたか確認するのを忘れてしまいましたが、とにかく繋がっている機器(今回の場合はハンドコントローラーとCGX-L)のファームを最新のものに置き換えてくれるようです。アップデートが終わると、更新された様子が表示されます。
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ただしこれ、ハンドコントローラーで確認すると違う数字が出るのですが、まあ気にしないでおきましょう。
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少なくともFirmware Managerで出てきたバージョンはCloudy Nightsで示されたものより新しいので、大丈夫でしょう。

さてこれで再度電源を入れ直します。結果はというと、やはりまだ同じエラーメッセージが出ます。念のため工場設定に初期化することなどもやってみましたが、それでもダメです。

どうもファームのせいではなさそうと判断し、もう少し探ります。すると、ケーブルが抜けているのが原因だったという投稿がCloudy Nightsに見つかりました。構造的にケーブルがねじれて抜けるか切れるかする可能性があるとのことです。さらにそのリンク先を辿っていくと、CGXの全バラ写真が大量に投稿されているページに行き着きます。CGXとCGX-Lは三脚の違いが主なので、このページはかなり助かります。

どうやら一部分解してケーブルのチェックをすることで何とかなりそうな目処がついてきました。実際の分解は次回時間がある時にやるとして、この時点で天気が良さそうなので外に出して実際に設置してみて、できれば撮影まで試してみることにしました。


外に出してみる

まず移動ですが、少なくともCGEM IIのように赤道儀と三脚を一度に運ぶことは到底できません。重さもそうですが、大きすぎて赤道儀があると三脚を掴むところまで手が届きません。運ぶときは3つのネジを六角レンチで緩めて一旦外し、別々に運んでまた組み上げてネジを締める必要があります。両手で持てる2つの取っ手がついていることと、赤道儀の下面が平らなので、そこら辺に置くことができるので、運搬に関しては思ったより苦にはなりません。

その上にSCA260を載せてみました。これまでのCGEM IIよりもかなり位置が高くなるのですが、鏡筒にも取っ手をつけているのと、同時に下側のアルミプレートの先端を持つと斜めに傾けながら持ち上げることができるので、そこまで無理することなく赤道儀に取り付けることができます。標準で10kgのウェイトが付属しているのですが、かなり端の方に固定するとこのウェイト一つでバランスを取ることができました。また、鏡筒を載せた状態で脚の一本を持ち上げ、水平を撮るために脚を伸ばしたりすることもできました。とりあえず、思ったより持ち運びと設置は大変ではなく、遠征に持って行くのも無理ではないなとの感想です。

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SCA260を乗せた後に、実際に突っついて揺らしてみました。明らかに揺れが小さいです。全く揺れないわけではないのですが、共振周波数が高くて揺れがすぐに収束します。もしうまく動いてくれるならですが、これは期待できそうです


極軸調整

暗くなってきたので、次はガイド鏡を取り付けてのSharpCapでの極軸調整です。ほとんどの過程は問題なかったのですが、最後に固定ネジを締めると角度がずれてしまうことがわかりました。垂直は2つのネジを手で締めて固定、水平は4つのネジを六角レンチで締めて固定します。この時、最後の最後のキュっと締めるときにどうしてもずれてしまいます。そのため、そこそこ極軸が合ってきたらある程度ネジを締めてしまい、最後はあまりきつく締めすぎないようにそこそこ固定することで、ズレを抑えて極軸を合った状態に保ちました。


実際に天体を入れてみる

その後、あらかじめ赤経赤緯ともにホームポジション付近に固定してから、赤道儀の電源を入れます。昼間に試したようにポジションエラーをスキップして、あとはこれまでのCGEM IIと同様にワンスターアラインメントでベテルギウスを導入、自動追尾といきます。少なくともみている限り特に問題はないようです!

ハンドコントローラーのUSB端子とPCを接続して、SharpCapでプレートソルブも試しましたが、全く問題なく赤道儀に信号を返して位置補正までしてくれました!

また、PHD2を使ってオートガイドも試してみました。ここで一つ問題発覚です。どうも赤経方向に周期的に揺れが出ます。
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上の写真のグラフの横軸は全部で400秒ですが、左から真ん中にかけてに10秒くらいの周期で大きな揺れが出ているのがわかると思います。(追記: その後調べましたが、CGXでちょくちょくこの現象出てくるようです。赤経のみで赤緯での報告は見つかりませんでした。なにか根本的に理由があるのかもしれません。)その結果として、右の同心円グラフでみても横方向に大きな幅が出ているのがわかります。その時の撮影画像が下になりますが、やはり一方向に伸びているのがわかります。この方向は赤経方向に一致します。

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ここで露光時間を1秒から0.2秒することで周期的な揺れを抑えることができました。上のPHD2の画面の途中で変えたので、グラフの半分くらいから右側で周期的な揺れが減った様子がわかるかと思います。

その後、いくつか設定を変えて続けてみたのが下の写真になります。露光時間以外もいじっているのがわかるかと思います。
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結果として、同心円でみても縦横のバランスが取れた状態になったことがわかります。


フルサイズでの四隅の状態

その後カメラにフルサイズセンサーの借り物のASI2400MCを使い、バラ星雲を導入し撮影まで試してみました。揺れの影響を見るために、3分、5分、10分と撮影しました。

3分露光。
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5分露光。
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10分露光。
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なんと、驚くことに10分でも4隅までほぼ真円を保っています。思わずヤッターと叫んでしまいました。これはもう十分すぎるほど満足な結果です。これまでの苦労が何だったのかというくらいです。でもだんだん改善されていく様子はものすごく楽しかったですし、またこれまでの苦労があったからこそ、このありがたみが実感できるのかと思います。

もう少し見てみます。3分と10分を比べると、3分の方が星像が鋭いこともわかります。これはシンチレーションなども合わせた揺れが積分されたため、長い時間の露光の方が大きくなってしまったのかと思われます。


いよいよオフアキを本格稼働か

その後、もう一つ気づいたことがありました。上で喜んだ後、三つ子銀河を導入し、実際に長時間撮影を試み何枚か撮影していると、途中から複数枚にまたがって斜めに大きく流れはじめたことに気づきました。

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_2022_03_27_23_25_02_M_66_LIGHT__10_00C_600_00s_G150_mosaic

このフレームの少し前に子午線を越えてしまっていて、それが原因なのかわかりませんが、PHD2で見ても流れていないので、何らかのたわみが発生し始めたのかと思います。赤道儀を反転したらこの流れは無くなりました。今のところはっきりとした原因は不明ですが、もしたわみだとしたらいよいよオフアキの出番となります。


今後

とりあえず今回はここまで。初期ホームポジションの移動以外はすでに実用的にも問題なく、十分振動が抑えられてかなり満足なのですが、やはりきっちり直したいので、次は分解してエラーメッセージが出なくなるか試してみます。








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