ほしぞloveログ

天体観測始めました。

カテゴリ:鏡筒 > SCA260

前回の記事で今年5月に撮影した南天の天体を処理しましたが、今回はさらに前の4月の撮影結果になります。


春の銀河

私は春の銀河はあまり得意ではありません。SCA260の1300mmの焦点距離と、ASI294MM Proの画角だと、少し広くて銀河の細かい構造に迫力があまり出ないからです。それでも今回は、一度撮影してみたかったヘルクレス座銀河団に挑戦してみました。

銀河団といえばおとめ座銀河団が有名で、以前撮影しています。範囲もヘルクレス座銀河団よりも遥かに広く、焦点距離420mmのε130Dとフルサイズのカメラでもまだ収まりきりません



今回のヘルクレス銀河団の場合、もっと小さい領域に小さい銀河が集まっていて、一部を拡大して細かい銀河を見ることになるので、分解能が勝負となり、きちんと撮影しようとするとかなり手強いです。

撮影はもうかなり前で記憶の彼方なのですが、その時の様子は当時文章にして残してあったので、ほぼそのままの形でブログ記事として使いました。その時のことを読んでて、赤道儀の反転を失敗したのも思い出しました。ことなきを得たのですが、冷や汗ものでした。

時期的には4月初めに撮影したM104の次で、4月中頃になります。LRGB合成の予定で、3晩にわたって撮影し、Lだけで6時間以上、RGBがそれぞれ約1時間と、合計9時間以上になっています。画像処理の途中で思ったのが、思ったより色が出ないので、もう少しRGBをの枚数を増やしても良かったのかもしれません。

M104のときには画像処理にかなり時間をかけてしまったのも、今回のヘルクレス座銀河団の画像処理が遅れてしまった理由の一つです。実は画像処理は4月の時点で一度パッとやっていたのですが、気に入らなかったので改めて一からやり直しでした。それから約半年後になりますが、今回新たに書いた記事は主に画像処理についての部分です。


撮影時のトラブル1: 赤道儀の反転失敗

今回の撮影ですが、夜中の2時半頃に子午線反転があります。この時間夜中に起きているときついこともあり、NINAの自動反転機能で乗り切ろうとしました。ただし、自動反転は以前痛い思いをしたことがある



ので、ある程度の対策をしてました。

数十cm程度の短いUSBケーブルとDC電源ケーブルをカメラ側に取り付け、カメラの周りにケーブルタイで固定して、引っ張られた時に必ずケーブルの長手方向にのみ力がかかるようにして、引っ張って抜けるようにしておいたのです。

IMG_9265
青いUSBケーブルとDCジャックケーブルが宙ぶらりんになっています。
引っ張られて抜けてしまっていましたが、
このおかげで機材の破損はありませんでした。

今回はこれが功を奏しました。朝起きて撮影結果を見ると、PHD2が途中で止まっていて、カメラが認識されないと出ています。撮影画像のタイムスタンプもちょうど反転時刻くらいまでで、その後は撮影されていません。これはまずい!と直ぐに外に出てみてみると、どうやら赤緯体がクルッと一回転しているような状態で、ケーブルが首に巻かれているような状態になっていました。

それでも想定通り、短いケーブルのところでUSBもDC電源も共に抜けていて、ことなきを得ました。こんな風に首を巻いた状態は初めてでしたが、赤緯体が初期位置からほぼ真反対に向いた状態での撮影になるのでこんなことが起きたのかもしれません。南天の高いところの天体は少し注意が必要かもしれません。今のところはっきりとした原因は不明ですが、とにかく機材が壊れなくて何よりでした。


撮影時のトラブル2: バッテリー

手持ちのバッテリーの一つが、気温が低いと変な振る舞いを見せることが確実となってきました。以前開田高原に行ったときには低温警告が出たのですが、警告は出なくても、温度が低いと電圧降下が激しいようです。

まず、気温が低い時は最初は使えるのですが、途中で電池の消耗が早いと自ら誤認識してしまうようです。一晩持つことはなく、夜中気温が低くなってくると止まってしまいます。こうなると、電源を入れようとボタンを押しても何も反応がないのですが、充電しようとしてACアダプターに繋ぐと何故か一瞬(秒単位)で100%になります。温度がまだ低いうちにACアダプターを外すとまた直ぐにダウンしてしまうのですが、しばらく待って温度が少し上がってからACアダプターを抜いても100%を保ったままになります。充電し切れているとはとても思えない短時間で100%になるので、何か表示がおかしいかです。

季節が進み気温が上がってくると、一晩持つようになってきます。撮影が終わって朝チェックすると、気温によって0%と出る時と、数十%残る時があります。0%となっているときにACアダプターに繋ぐと、これもなぜか一瞬で100%に戻りますが、一晩使っているので明らかに電力が多く残っているとは思えず、充電時の表示が何かおかしいと思われます。一方、数十%とか残っている時は、すぐに100%にはならずに、数十%が徐々に増えて、でも直ぐに(1分くらい?)で99%とかになります。温度が上がってきて徐々に振る舞いがまともなものに近づいてくる印象ですが、まだ春くらいの温度だと信用できません。一応100%充電されていると表示されていようが、そのまま充電を続けて半日くらい放っておきますが、次回使うときは今のところ問題なく使えています。

他のバッテリーを5台ほど使ってきましたが、同じような状況で同時に使っても、今のところこの一台のみがこのような変な振る舞いをします。たまたまこの個体だけなのか、興味がありますが、Amazonのレビューとかみても低温関連のことはあまり書いてないので、よくわかりません。Amazonの同機種のレビューを見ると、低温以外でもよく似たトラブルはたくさん報告されていて、途中から充電できなくなったとか、保証期間を過ぎると修理もできないとかの投稿がたくさんあります。大手のものだから数が出ているからというのもあるのかもしれません。

今回のようなことがあると改めて思うのですが、大型のバッテリーを買って1台で運用するようなことは、撮影失敗のリスクを考えるとちょっと怖いと思ってしまいます。私は1万円からせいぜい2万円までの機種で抑えていて、そのクラスの数を揃えるという戦略です。トラブルの時はすぐに交換して、冗長性で回避できることと、不具合時の1台あたりの金額的なダメージを防ぐのが目的です。低温時には問題があるこのバッテリーも、その後暑い夏には普通に使うことができたので、冬場は他のバッテリーを使えば良く、長い目で見たらそこまでダメージはないです。


画像処理

撮影直後の画像処理では銀河がのっぺりと絵のようになってしまい、やる気を無くしてしまいました。反省して、今回はRAW画像の選択からやり直しです。

まず、前回画像処理した自分の画像と、Astrobinのヘラクレス銀河団でよく写っているものを見比べてみました。のっぺりは仕方ないとして、パッとわかる決定的な違いは微恒星の数です。例えばAstrobinのImage of the day (IOD) に選ばれた画像と自分の画像で、同じ領域を切り出してPixInsightのSubframeSelectorで認識できる星の数を比べてみると、IODの方が約1.5倍の星の数になりました。実際の画像を見ても、細かい星があるかないかでかなり違って見えて、1.5倍というのはちょうど納得できるくらいの数字です。

1回目の画像処理ではFWHMが5以下、星の数が250以上という閾値を設けてRAWのL画像を振り分けました。その場合、376枚中、147枚が採用されました。できるだけ小さな星を救おうとしたために、悪い画像を切り捨てたつもりですが、かなりの枚数を捨てていることになります。今回、2回目の画像処理はFWHMが7以下、星の数が150以上と条件を緩め、採用枚数を376枚中、274枚としました。

まずこれで微恒星の数が変わるかです。ここでいう微恒星の数というのは、M104の時に散々議論したBXTで認識される小さな星の数ということです。


結果はというと、M104の時とほぼ同じで、
  • 1回目の、枚数を絞ったFWHMが小さい方が、出来上がりの恒星の大きさは小さい。
  • この場合、背景ノイズが大きい。
  • ノイズに埋もれた淡い微恒星を救いきれない。
でも、落としてしまう微恒星の数は大したことはなく、IODの画像で見えている微恒星からみたらまだ全然少ないままなので、誤差の範囲です。

一方2回目では、
  • FWHMは大きくても枚数が多い方が背景のノイズは明らかに小さくなる。
  • S/N測定でもいい結果出ている。
  • かつ残る恒星の数も多少増える。
  • 恒星の大きさが少し大きくなる。
といいことが多いのので、今回は枚数を増やしたもので処理することにしました。不利な点として、恒星が少し大きくなるのはBXTでどうにでもなると考え、今回は重要視しなかったです。もしBXT無の場合は、判断が変わるかもしれません。


次に今回の画像処理でやり直したことは、drizzleの有無です。今回は最初drizzle無しで処理しましたが、小さい銀河が多数あるので、改めて比較するとdrizzle x2の方が有利そうです。
comp1
左がdrizzle x2で、右がdrizzle無し。
わかりにくい場合はクリックして拡大してみてください。

そのため、2度目の処理はdrizzle x2を使いました。

本当はM104の時のように、撮影時からASI294MMのbin1にしてもよかったのですが、撮影時から画像サイズが大きくなり、画像処理の負担も大きくなり、かなりきついです。フラットなども合わせると、ディスク容量も平気で数100GBを使用してしまいます。bin2のdrizzleのx2なら、最後のインテグレーションで増えるだけなので、全然許容範囲です。drizzle x2にBXTをかけるとかなり解像度が出ることがわかっているので、これでbin1に迫れるといいのですが。

ただし今回は、露光時間をこれまでの自分の標準の5分から1分に短くしました。恒星が飽和するのをできるだけ避けるためです。そのため撮影枚数はこれまでの5倍と多くなるので、その分ディスク容量を食います。

4月の最初の画像処理でのっぺりとしてしまった原因もわかりました。ストレッチ時のGHSの使い方が原因でした。GHSは最初にSP (Symmetric Point)を選ぶのですが、SPに0以外の値を入れてしまうと銀河の中の淡い部分が明るくなりがちで、どうも階調が取れません。今回だけなのかもしれませんが、SPは0にして、当然LP保護も0になりますが、HPの保護は明るいところをあまり明るくしないように適当に0.5とかにしました。あとの残りのパラメータはStretch FactorとLocal Intensityだけなので、これで銀河の暗いところから明るいところまで階調ができるだけ残るようにストレッチとLPを調整しました。どちらも大きくしすぎないことがコツみたいですが、まだあまりよくわかっていない部分もあるので、もう少し経験が必要みたいです。

さらにその後、GHS以外にもいくつか試したのですが、今回は背景の淡い構造を出す必要はないこと、飽和しないことという条件で、結局もっとシンプルなMaskedStretchとしました。結果を見ると、もう少し彩度を出しても良かったので、ArcsinhStretchでもよかったのかもしれません。

そこからの最後の仕上げはかなり苦労して、結局5回くらいやり直しました。Astrobinを見ていると、銀河も恒星も色彩豊かで、一つの銀河内でオレンジから青白まで出ているものもあるのですが、自分の画像だとなかなかそこまで出ないです。RGBの撮影時間が短いので色情報がノイジーなこともあるのかと思います。もう少し手はあるのかもしれませんが、キリがないのでできる範囲でまとめました。まだ少し不満が残っているので、微恒星の写りも含めていつかリベンジしたいです。


結果

今回画像処理した結果を示します。drizzle x2だと画像が大きくなりすぎてアップロードできなかったので、ブログ用に少しだけ(75%くらい)解像度を落としています。

Image15_cut_low
  • 撮影日: 2024年4月13日1時35分-4時8分、4月13日22時17分-14日2時32分、4月14日22時26分-15日3時27分
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: SHARP STAR製 SCA260(f1300mm)
  • フィルター: ZWO社のLRGBフィルター
  • 赤道儀: Celestron CGX-L
  • カメラ: ZWO ASI294MM Pro (-10℃)
  • ガイド:  f120mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: NINA、Gain 120で露光時間1分でL: 274枚、R: 57枚、G: 54枚、B: 60枚、総露光時間445分 =7時間25分
  • Dark: Gain 120で露光時間1分が64枚
  • Flat, Darkflat: Gain 120でLRGB: それぞれ128枚
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop

画角が少し広いので、一部銀河団の中心部を切り取った画像も載せておきます。銀河をできるだけ取り込むために、縦型に切り出した後、90度回転させています。これぞ「銀河団」という感じです。
Image15_cut_small_rot

特に拡大図の方をみると、4月ののっぺり画像処理から比べたら、輝度の階調を残し、色調もある程度確保することができたと思います。BXTの効果も絶大で、drizzle x2と合わさって、銀河の細部もよく出ていますし、恒星の肥大も抑えられています。

見る距離や拡大率にもよると思いますが、小さな銀河なので離れた時見てもある程度はっきり見えるように、もう少し輝度や彩度を出してもいい気もします。その一方、あまり派手でないこのくらいがいいのかとも思えます。まだ自分の中で銀河にあまりはっきりとした基準がないので、今後しばらく試行錯誤かと思います。

上で議論したように、M104の時と同じでBXTで認識できない微恒星を取りこぼしてしまっているので、あるところより暗い恒星が全く見えなくなるという、あからさまな閾値ができてしまっています。BXTで小さな銀河と恒星の見分けが本当にできているか、StarNetで恒星と背景を分離するときに、銀河をうまく背景に分離できているかどうかは、まだ多少疑問が残ります。私は趣味と割り切っているのであまり気にしていませんが、気にする人は気になるかもしれません。ただし、同じクオリティーをBXTなどなしで出そうとすると、鏡筒の大口径化、赤道儀の大型化、シンチレーションのいい撮影地の選択、更なる長時間撮影など、敷居がはるかにはるかに上がります。簡単に同程度の効果をソフト的に実現するBXTやStarNetは、やはりすごいと言わざるを得ません。

最後に、恒例のアノテーションです。

Image15_cut_Annotated

確かにそこそこ銀河の数はありますが、おとめ座銀河団の時アノテーション画像ほどではなく、面積も数もやはりもう少し小ぢんまりとした印象です。


まとめ

長く処理されずに残っていたヘルクレス座銀河団も、やっとブログ記事にたどりつきました。細部をいかに出すかで、おとめ座銀河団の時はε130Dで最初から焦点距離が短かったのであまり気にしなかったのですが、今回は焦点距離1300mmなので、かなり細かい描写でシンチレーションとかも効いてくるはずです。処理してみると、思ったよりはるかに手強かったです。

HDDの中身を見ても未処理画像も、だいぶん底が尽きてきました。残っているのは中途半端に撮影したものとかで、今後処理する気になるかどうかもよくわからないものばかりです。なんとか救ってやりたいものもあるのですが、もう2年前に撮影したものとかもあるので、撮り直したほうが早いかもしれません。

撮影にも画像処理にも時間がかかるようになっています。もっと気楽に済ませたいという思いもあります。この場合はSWAgTiとかを活用すればいいのでしょうか。でも大口径のものと比べてしまい、満足できるのかどうかはまた別問題になるのかと思います。

さて、次はここしばらく何日か撮影している網状星雲です。もう諦めて画像処理を進めるか、さらに撮影枚数を増やすか。いや、全然気楽な方向に行ってないですね...。


久しぶりのブログ更新になります。皆様いかがお過ごしでしでしょうか?ゴールデンウィークは天気も良く、特に後半は新月期に入り絶好の星見日和だったのかと思います?

私はというと、あいにくGW中に体調を壊してしまい、前回の小ネタ記事を書いて以降ほぼ何もできない日が続きました。やっと体力も少し回復してきて、今もこの記事は病院の中で書いています。と言っても今回のM104の撮影はずっと前に終わらせていましたし、画像処理もブログ記事ある程度まで終えていたので、少し仕上げたくらいであまり無理はしないようにしています。

せっかくの長期休暇の新月期、暑くもなく寒くもなく、大きな太陽黒点と低緯度オーロラを横目にと、数々の絶好のチャンスを逃してしまい残念でなりません。その不満を払拭すべく、少しづつですが再開していきたいと思います。


三たびM104、でも本当は4度目

M104は分解能ベンチマークのような役割もあり、これまで何度か撮影しています。最初は2021年4月にVISACで。中心部を拡大すると、まだまだ無理やり解像度を出している感があります。


次は2022年8月、SCA260を手に入れてからより大きな口径で違いを見ました。


ただ、SCA260は焦点距離が1300mmとそこまで長くないので、M104は小ぢんまりと写ります。そのためこの時は
  1. バローなどなしでbin1の場合
  2. 2倍のPowerMATEを使ってbin2の場合
で比較しました。1素子あたりの明るさと画角は同じになるようにして比較したということです。違いはFOV(全体の視野角)と、bit depthになります。結果としては、恒星は2の2倍でbin2方が良かったですが、銀河本体は1の方がビミョーに良かったです。でも有意な差はほとんどなくて、結局1のほうがバローの挿入などの余分な操作がなく埃などが入る余地が少ないので、今後は1でいくという結論になりました。あと、この時はまだRGB合成のみで、L画像は撮っていませんでした。

その後、2023年5月にL画像だけ撮影していて、明らかに解像度が上がっていることまで確認したのですが、同時期にRGBを撮影する機会がなかったのでそのままお蔵入りにしてしまいました。2022年のRGB画像と合成しても良かったのですが、いまいち盛り上がらずに2024年を迎えてしまって、このままではさすがにダメだと思い、今回やっとLもRGBも一緒に撮影するに至りました。


NINAが重い

今回の撮影の少し前、3月18日にNINAの3.0が正式に公開されました。ただしちょっと重いみたいです。3.0にしてから撮影画像の保存にすごく時間がかかるようになりました。1枚撮影すると保存だけで毎回1分以上かかり、保存中は撮影は進まないので、かなりの時間ロスになります。

現在はStick PCで撮影し、micro SDに保存しているのです結構非力です。最初ディスクの書き込み速度を疑いました。でも撮影したファイル単体のコピペとかだと全然速く終わります。そこで、タスクマネージャーで撮影中の様子を見てみたら、NINAがものすごくCPUパワーを食っていて、かなりの時間100%になるようです。仕方ないので、以前の2.2に戻したら、ほぼタイムロス無しで連続で撮影できるようになりました。単にソフトが肥大したのか、それとも何か負荷が増えるようなバグっぽいものなのか、3.0がさらにアップデートされたらちょくちょくチェックしてみたいと思います。


今回の撮影

今回の撮影での大きな違いは、
  • 前回まではRGB撮影だけだが、今回はL画像を撮っているところ
  • 露光時間をこれまでの5分から1分にしたこと
です。L画像は実際の解像度向上に大きく貢献することになるかと思います。露光時間に関しては、SCA260+ASI294MM Proの場合gain120で露光時間5分だと、かなりの恒星がサチってしまうことに気づきました。特に、明るいL画像は深刻です。

下の画像は昨年5分で撮影したL画像を反転させています。bin1での撮影なのでそもそも12bit = 4096階調しかありません。ここでは階調の99%以上(4055/4096)になってしまっているところを黒くしています。

2023-05-11_20-58-14_M 104_LIGHT_L_-10.00C_300.00s_G120_0004
結構な数の星と、なんと画面真ん中の銀河中心までサチってしまっています。これはいけませんね。

下は今回露光時間を1分にしたもので、他の条件はほぼ同じです。だいぶマシになっていますが、それでもまだ飽和を避けることはできていません。少なくとも銀河中心は問題ないです。
2024-04-01_22-25-41_M 104_L_-10.00C_60.00s_0013

さらに露光時間を変えるにあたり、以下の2つのことを考えましたが、処理後の画像を見比べた限り違いはわからなかったです。
  1. 自宅撮影に限っていうとスカイノイズが圧倒的に支配的になります。露光時間を短くすると、読み出しノイズの効きが大きくなってくるのですが、露光時間を1分にしたくらいではまだまだ読み出しノイズは全然効かないくらいです。
  2. 淡い部分の階調がADCの暗い側にシフトするので、階調が出にくくなる心配もありましたが、まだ全然余裕があるようです。
LRGB画像は今後1分でいいと思います。ナローに関しては輝度が10分の1以下になるので、露光時間5分をキープするか、ダイナミックレンジがそこまで必要なければgainを上げてもいいかと思います。


画像処理 

WBPPでLRGBそれぞれインテグレートまでします。その後、すぐにRGBを合成して、カラーにしてからABEとDBEでフラット化をかけました。それぞれの色でフラット化してもいいのですが、カラーでやっても独立して働くので効果は同じはずで、1度で済むので手間を省いているだけです。

銀河で自宅撮影なので、背景のIFNなどは気する必要はなく、RGB画像もL画像も、気軽に簡単にフラット化してしまいます。だいこもんさんのブログ記事(元情報はUTOさんだそうです)によると、M104の周りにも相当淡い構造(更に大元がここ)があるようなので、試しに去年撮った5分露光画像も含めてL画像をかなり頑張って炙り出しましたが、私のところではその片鱗さえ全く見えませんでした。大顧問さんはチリで30時間露光して見えたとのことなので、自宅のような光害環境ではここまで淡いのは全然無理なのかと思います。なので、今回は背景は気にしないで、とにかく目的のM104本体の内部の細部構造がどこまで見えるかに全力を傾けます。

この内部構造、シンチレーションに強度に依存するようです。L画像は二日にわたって撮影していますが、二日目の画像は全然ダメで使うかどうか迷いました。1日目だけのもの133枚と、1日目133枚+2日目の中でもマシなもの56/103枚を使ったものを比較しましたが、見た目では違いがわからなかったので2日目のも入れたもので処理を進めました。

L画像はABEの2次、DBE、BXTをかけていますが、この時点でかなりの解像度が出ていて期待が持てそうです。
Light_BIN_1_8288x5644_60s_L_drizzle_1x_ABE4_DBE_BXTc_BXT_BXT03


LRGB合成

RGBとLをどう合成するかはいまだに迷います。過去に何度が議論しています。LRGB合成を初めて試したのは2022年10月のまゆ星雲です。この時わかったのは、L画像を合成したときに色がかなり出なくなるのですが、見えなくなっているだけで色情報としては十分残っているということでした。でもLとRGBをどのタイミングで合成すべきか、どういった比率で合成すべきかなどはまだまだ謎のままでした。


その後、この2つの過程でLRGB合成の経験的な方法はある程度確立したのかと思います。



そしてこのページである程度の理屈も含めて結論が出ています。


久しぶりのLRGB合成になるのでかなり忘れていることもあり、今回改めて読み直しましたが、今見てもかなり有用な議論です。当時のniwaさん、botchさん、だいこもんさんに感謝です。

今回まずは様子見で、PIのLRGBCombinationを使ってL画像を指定してRGB画像放り込んでみると、カラーノイズが結構目立ちました。RGBの撮影時間が短いので当然なのかもしれません。そこでLab分解してaとb画像にぼかしをかけてみました。以前うまくいった方法なのですが、今回はカラーノイズに対してほとんど効果が見られませんでした。カラーノイズ対策ができないのならa、b画像で何かする価値はほとんどなくなってしまいます。カラーノイズは後で対策できることと、奇をてらう方法はできるだけ避けたいこともあり、今回は素直にLRGBCombinationを使う方法を探ります。

未だ残っている一番の疑問は、LとRGBの混合比率です。これまでわかっていることは、
  • LRGBCombination処理はリニアでやらずにノンリニアでやること。ノンリニアとはフルストレッチしてからということ。
  • でもフルストレッチは厳しすぎる制限で、多少のストレッチでも大丈夫そうなこと。
  • リニアで処理すると、恒星内部に明るい飽和の飛びができ、後からどうしようもなくなること。
  • 飽和の飛びはL画像がRGB画像より暗い場合にできたが、L画像を明るくすると無くなること。

まず思っている疑問は、リニア段階での処理では本当にダメなのかということです。リニアはノンリニアの特別な場合と考えることができ、ノンリニアでいいのならリニアでも当然大丈夫だと思うからです。今のところ確認できている弊害は、
  • 恒星の飛び
だけです。

結論だけ言うと、今回リニア段階でLRGBCombinationを試しましたが、いずれも恒星の飛びは確認できませんでした。ただしこの結果は、LとRGBの明るさの違い(混ぜる比率)に依存しそうなので、その比率を変えて幾つか試しました。試したのはLRGBCombinationのCannel Weightsを変えることです。これらは相対的な比だけで決まり、例え全部を0.1とかにしても、処理後の画像の全体の明るさは変わらないことは以前確認しています。試したのは以下の4種類です。
  1. L : R : G : B = 0.1 : 1 : 1 : 1
  2. L : R : G : B = 1 : 1 : 1 : 1
  3. L : R : G : B = 1 : 0.1 : 0.1 : 0.1
  4. L : R : G : B = 1 : 0.01 : 0.01 : 0.01
いずれの場合も上で書いたように飛びは出なかったので、とりあえず今回は少なくともリニア段階でLRGB合成したとしても確認できるような問題は起きなかったと言えます。

その一方、できた画像の解像度には明確な差が出ました。下の画像になりますが、左から順に上の1,2,3,4となります。
comp

注意すべきは2, 3, 4で、Lの比率が高いとLRGBCombination直後はほとんど色がなく、一見モノクロのように見えることです。でも色情報はきちんとのこっているので、ここで心配する必要はありません。CurveTranformationで右のSの彩度を選んで曲線をΓの字になるくらいにして彩度を上げてやると確認できます。上の画像はそのように彩度を上げたもので比較しています。

4つの画像を見る限り、カラーノイズ、彩度に関しては明確な有利不利は確認できませんでした。最も大きな違いは分解能で、Lが一定以上の明るさがないとRGBが持つ低い分解能のままで制限されてしまうということです。わかりにくい場合は上の画像をクリックして拡大して比べて見てください。明確に違いがわかります。LとRGBの比が0.1:1や1:1ならばL分解能が十分生きてこなくて、1:0.1ならば十分、1:0.01にしてももう変化がないことがわかります。以前M106で試した時は1:0.25とかにして分解能が出たので、今回も再現性があり、ある程度L画像の明るさを保たないとダメだという結果を改めて確認できたことになります。

というわけで、今後もLRGBCombinationでシンプルに、Cannel WeightsだけLをある程度大きくしてLRGB合成をすればいいということにします。


結果

結果です。とりあえずはクロップして本体をある程度の大きさにしたものを完成とします。

「M104: ソンブレロ銀河」
Image07_middle
  • 撮影日: 2024年4月1日22時3分-4月2日2時41分、4月10日20時27分-4月11日3時18分
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: SHARP STAR製 SCA260(f1300mm)
  • フィルター: 無し
  • 赤道儀: Celestron CGX-L
  • カメラ: ZWO ASI294MM Pro (-10℃)
  • ガイド:  f120mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: NINA、Gain 120で露光時間1分でL: 189枚、R: 59枚、G: 51枚、B: 64枚、総露光時間363分 =6時間3分
  • Dark: Gain 120で露光時間1分が204枚
  • Flat, Darkflat: Gain 120で露光時間 LRGB: 0.01秒でそれぞれ128枚
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop

まず目的の銀河本体内部の構造ですが、結構出たといっていいかと思います。これはひとえにシンチレーションが良かったからと言うのが今回の結論です。BXTの効果も大きいかもしれませんが、シンチレーション自身が良かったのがまず第一だと思います。色は下に載せたハッブル画像に近くしました。

クロップ前の全体像になります。
Image07_low

恒例のAnnotationです。
Image07_low_Annotated

銀河っぽいシミがいくつかあると思ったのですが、候補に入らないものがいくつかあります。単に画像処理でなにか失敗してるのか、はたまたまだカタログ不足なのでしょうか?


ハッブルとの比較

恐れ多くもハッブルと比べてみます。

まず今回撮影し画像を5度時計回りに回転させ、次のハッブル画像と同じような画角に切り出したものです。
Image07_rot5_Hubble

次がハッブル望遠鏡が2003年に発表したM104です。
STScI-01EVT8YHAGM2WGQTV3DGKRFZ7Q

もちろん分解能には全然差はあって追いつけっこないですし、恒星に至っては大きさも微恒星の写りも全く違います。でもなんかちょっと比べてみようと思うくらいにはなったのかなと思って、自己満足しています。


まとめ

足掛け2年にわたって悶々としていたM104にやっと決着がつきました。2022年の結果がこれなので、大きな進歩だと思います。
final

ソフトは変わりましたが機材は同じです。今回L画像を撮影したのは大きな違いですが、やはりそのL画像のシンチレーションの影響が一番大きいと思います。撮影時のHFRを見るとシンチレーションの評価になりそうなので、いい日かどうかを定量的に評価しながらL画像を撮影すべきなのかカラー画像を撮影すべきなのかを決めることなどができそうです。そこらへんの補足記事を次に書こうと思っています。

今回健康を害すると何もできなくなってしまうことを実感しました。まだ今後も長年続けていきたい趣味なので、少し体に気をつけて、無理をせずに楽しみながらやっていけたらと思います。

画像処理も溜まっています。ダイオウイカは昨年10月くらいから残ってますし、ヘラクレス銀河団、さらに南天がいくつか残っています。これらも焦らずに進めていきたいと思います。


2023/10/12、久しぶりに新月期で晴れです。平日なのであまり無理をしたくないのですが、せっかくなので撮影を敢行しました。


久しぶりの撮影

実は前日の10月11日も晴れていたのですが、ε130Dの光軸調整で時間を潰してしまい、何の成果もありませんでした。実際光軸調整も大したことはできず、せっかくの晴れでもったいないです。なんとか撮影の成果だけは残そうと思い、SCA260+ASI294MM Proで簡単な撮影をしました。この日の撮影は、前半がM27、後半がM45です。でも結局撮影が忙しくて、せっかくε130Dを出してセットアップまでしたのに、光軸調整はやっぱりできないんですよね。平日に二つのことは厳しいです。

今回M27にした理由ですが、5月にHα画像を写していました。その後続けてOIIIも撮ったはずなんです。でも撮影後に確認したら、実際に撮影していたのはB...。AOO撮影のはずなのに、Aの次はBと思い込んでしまったようです。今回はそのリベンジで、OIIIの撮影です。でもここでも痛恨のミス。縦横を合わせ損なって90度ずれてしまい、使えるのは重なる正方形の部分だけとなってしまいました。

前回M27を撮影したのは2年前のTSA120を使ってです。2021年9月になります。この時が、そこそこセンサー面積があるモノクロカメラを使った初のナローバンド撮影で、まだフィルターホイールも持っていなかったので、手でフィルターを付け替えてのAOO撮影でした。本体周りの羽の部分を出したくてOを重点的に出そうとしました。羽はそこそこ写ったのですが、意外にAが出なくて、Aのリベンジが課題だったことを覚えています。



それでもこの時のM27には結構満足していて、もうしばらく撮ることはないなと思っていましたが、2年経つとアラも見えてきますし、SCA260でさらに光量が稼げるとか、BXTが台頭してきたとかで、状況も大分変わってきています。高度も高く、夏を中心に一年のうちのかなりの期間撮影が可能なので、ベンチマークがわりに再びM27を撮影しようとここしばらく思っていて、やっと実現できたというわけです。


撮影

SCA260での撮影は久しぶりです。少しづつ思い出しながらのセットアップになりますが、それでもほとんどトラブルもなく、比較的順調に撮影開始となりました。一つだけミスがあって、StickPCを使っているのですが、SCA260+ASI294MM Proで使っているStickPCと、ε130D+ASI6200MM Proで使っているStickPCが入れ替わっていて、気づかずにカメラの設定やフィルターごとのEAFのピント位置とかの設定でファイルを上書きしてしまいました。気づいたのはプレートソルブがどうしてもできなくて、ε130Dの焦点距離の400mmが入っていた時でした。でも面倒なのでそのままStickPC交換せずに使い続けたのですが、色々不具合が出てきて、すぐに交換すればいいと後から後悔しました。
M27
撮影中のNINAの画面。ガイドも順調です。

撮影は順調に続き、OIII画像が溜まっていきます。23時位になるとM27が隣の家の屋根にかかってしまい、次に考えたのが、ずっとやってみたかったモザイク撮影です。以前拡大撮影したM45: プレアデス星団が次のターゲットですが、これは別の記事で書きたいと思います。


追加撮影

OIIIの撮影直後は5月に撮影したHαと合わせて仕上げてしまおうと思っていましたが、縦横の間違いが悔しかったので、結局10月17日にHαを、OIIIと同じ方向にして撮影し直してしまいました。こうなってくるとOIIIもHαももう少し追加したくなり、18日にも追加撮影して、5分露光でHαが44枚、OIIIも44枚で、合計88枚、総露光時間440分で7時間20分となりました。17日から18日にかけては庭に望遠鏡を出しっぱなしにしていたので、すぐに撮影に入ることができ、18時台から撮影を開始できています。


フラットでトラブル

久しぶりの撮影なので、フラットを撮り直しています。フラット撮影は、昼間に明るい部屋で白い壁を映しています。ところが、今回条件を一緒にしようとして「冷却して」撮影したのは失敗でした。結露が起こってしまったことに後から気づき、結局常温で全て撮影し直しです。DARKFLATも温度を合わせるため、こちらも全部取り直しです。
2023-10-14_14-00-20_M 27_2x2_FLAT_R_-10.00C_0.01s_G120_0000
フラット撮影中にオートストレッチして、こんな風に真ん中にシミのような大きな模様ができていたら、結露しています。拡大すると、おかしな黒い点々が見えたりします。

普段はフラットは昼間に部屋が明るい時に撮っていましたが、雲があると明るさがバラバラになるのでダメですね。今回は早く画像処理を始めたかったため、暗くなってから部屋のライトをつけて撮影しました。でもこれ、もしかしたらダメなのかもしれません。特にHαですが、微妙にフラット補正が合わずにムラになってしまいました。

以前記事に書いたことがあるのですが、ナローバンド系はフラットファイルそのものがどうしてもムラムラになってしまいます。



当時、センサー自身のムラではないかと予測したのですが、その後ZWO自身がこのムラはセンサーの特徴だと言及しているページを見つけました。



当時このページの存在は知らなかったのですが、後からやはり推測は正しかったと分かりました。でもいずれにせよ、このムラはフラット補正で解決できましたし、ZWOの説明でも同様のことが書いてあります。

でも今回は、フラット補正をしてもどうしても、ムラの形が残ってしまいました。まず、今回撮影したフラット画像のうちの1枚です。ナローバンド特有の大きなムラ構造が出ています。
masterFlat_BIN-2_4144x2822_FILTER-A_mono

次に、AOO合成した直後の画像です。上のフラット画像と比べてみると、ムラの形がよく似ていて、暗いところが赤くなってしまっているのがわかると思います。
Image11_ABE

まだ未検証ですが、部屋の明かりを使ったのが悪かった気がしています。明かりとしては、蛍光灯と電球を合わせたのですが、それぞれ波長が違っていて、違った種類の光源が複数方向から来ているので、複雑な形の輝度勾配ができてしまっていた可能性があります。もし時間が取れるなら、再度晴れた日の明るい部屋の中で自然光を光源に、再度撮影してみたいと思います。あ、多分ですが、晴れた日にの薄明時に鏡筒を空に向けるのが一番いいのかとは思いますが、時間が限られるので、壁での方法を確立しておきたいということです。

今回問題だったフラットのムラはHα、OIIIともにDBEを細かくかけることで、なんとか見える程度にすることができました。


ダークの撮影

あと、今回ついでにダークも久しぶりに撮影しました。ダーク系を撮るのも昼間は注意が必要です。カーテンを閉めてできるだけ部屋を暗くするのはもちろんですが、鏡筒や特にフォーカサー部などにきちんと暗幕(タオルとか、服とか)をかけて撮影しないと、完全にダークになりません。今回は二度に分けてダークを撮りましたが、最初の暗幕が甘くて、十分暗くなりませんでした。
IMG_8668
こんな風に望遠鏡をくるんで、さらに部屋を暗くしてダークを撮影してます。


最新版PixInsightと、Mac M1でのStarNet

私は画像処理にMacのM1を使っているのですが、最近PixInsightを1.8.9-2にアップデートしたら、StarNet V2が使えなくなりました。その後StarNet V2もアップデートされ、最新バージョンのPIでも使えるようになったということでしたが、再インストールの方法を忘れてしまい少し手間取りました。Niwaさんのページやその参照元のCloudy Nithtsに解説があるのですが、自分の環境とは微妙に違っていて、そのままではうまく動きません。うまく動いた方法を書いておきます。

まず、ダウンロードページに行って、



をダウンロードします。その後、ファイルを解凍します。
  1. StarNet2_weights.pbとStarNet2-pxm.dylibは/Applications/PixInsight/bin/にコピーします。
  2. libtensorflow.2.dylibとlibtensorflow_framework.2.dylibはApplications/PixInsight/PixInsight.app/Contents/Frameworks/にコピーします。PixInsight.appの中身は、PixInsight.appを右クリックして「パッケージの中身を表示」を選ぶとアクセスすることができます。
  3. 以下のコマンドを、一つ一つコピペしてターミナルから実行します。
  • sudo chown root:admin           /Applications/PixInsight/bin/StarNet2_weights.pb
  • sudo chmod 644                  /Applications/PixInsight/bin/StarNet2_weights.pb

  • sudo chown root:admin      /Applications/PixInsight/bin/StarNet2-pxm.dylib
  • sudo chmod 755             /Applications/PixInsight/bin/StarNet2-pxm.dylib

  • sudo rm -f             /Applications/PixInsight/bin/libtensorflow*
  • sudo chown root:admin  /Applications/PixInsight/PixInsight.app/Contents/Frameworks/libtensorflow*
  • sudo chmod 755         /Applications/PixInsight/PixInsight.app/Contents/Frameworks/libtensorflow*

あとはREADME.txtに書いてある通りに、
  • PI上でPROCESSES=>Modules=>Install Modulesで'Search'を押すと、StarNetが出てきます。
  • その後他のボタンは何も押さずに'Install'を押します。
  • うまくいくとStarNet2がPROCESSES-><Etc>もしくはPRECESSES-><All Processes>に出てくるはずです。
怖かったのは、マニュアルに「ちゃんと手順を踏んでやってもサーチでStarNetが出てこない場合は、AVXに対応してないから仕方ないとか、心を折るような記述があることです。でもM1のMacでPIの最新版で、確実にStarNet V2をインストールできたので、諦めずに正しい手順でやってみてください。


結果

画像処理に関しては、あとはほとんど問題はありませんでした。ナローなので、色決めに一意の解はなく、SPCCも恒星の色を合わせるように設定したので、星雲の色は自由度があります。他の画像を見ていてもM27の色は様々で迷いますが、前回TSA120で出した色が比較的好みなので、今回も近い色としました。

画像処理の結果が下のようになります。
masterLight_BIN_2_300_AOO_SPCC_BXT_DBE_MS_MS_BG2_cut_X3
  • 撮影日: 2023年10月12日20時59分-22時52分、10月17日20時34分-23時29分、10月18日18時18分-22時35分、
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: SHARP STAR製 SCA260 (f1300mm)
  • フィルター: Baader Hα, OIII
  • 赤道儀: Celestron CGX-L
  • カメラ: ZWO ASI294MM Pro (-10℃)
  • ガイド:  f120mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: NINA、Gain 120、露光時間5分、Hα:44枚、OIII:44枚の計88枚で総露光時間7時間20分
  • Dark: Gain 120、露光時間5分、温度-10℃、42枚
  • Flat, Darkflat: Gain120、露光時間 Hα, OIII:10秒、128枚
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC

ちなみに、2年前に撮ったTSA120の画像が以下になります。
Image09_DBE2_stretched7_cut_crop_b


比較と評価

2年前と今回を比較してみます。
  • 最初のスタック画像を見ていると、微恒星に関してはどうも前回のTSA120の方がより出ている気がしました。これまで同じ対象でTSA120とSCA260を比べて、SCA260が負けたことはないので、意外な結果でした。原因はシンチレーションくらいしか考えらないです。もう夏の気候は終わってしまったので、揺れは大きくなっているのかもしれません。それでもBXTをかけて改善する余地があったので、結果としては今回の方が微恒星は数も鋭さも出ています。
  • 狙いの本体外側の蝶の羽の部分は、今回の方が明るい鏡筒で露光時間も倍以上と長いため、明らかに綺麗に出ています。羽の部分はOIIIの青よりも、Hαの赤の方がやはり淡いようで、前回よりも出てはいますが、フラットムラのこともあり、まだ露光時間を伸ばすか、このレベルの淡さになってくると自宅よりはさらに暗いところに行ったほうが効率がいいのかと思います。ここ最近の記事で、明るいところと暗い所のスカイノイズの影響が数値で定量的に出るようになってきたので、いずれこの淡さならこの場所に行くべきというようなことが言えるようになるのかと思います。
  • 中心部の微細構造は、口径とBXTの効果で圧倒的に今回の方がいいです。ただし、淡い羽部分の分解能との差がありすぎるので、多少なりともバランスを取るために、あえて少し分解能を落としてあります。
今回のM27、羽の部分、中心部分の分解能、微恒星の鋭さ、背景のノイズなど、ほぼ全てを2年前の結果を上回っていて、自己記録更新です。あえていうなら、透明度みたいなのだけは以前の方が良かったように思いますが、これは画像処理に依っていて、まだ私も確信を持って(少なくとも見かけの透明度さえも)透明度をコントロールできていないので、偶然によってしまっています。それ以外はトータルとしてはかなり満足しています。


まとめ

久しぶりのSCA260での本気撮影でしたが、かなり満足な結果でした。自宅庭撮りで、M27の羽がここまで出るのなら、十分なのかと思います。その一方、これ以上出すのは撮影時間がかかりすぎることなどから難しく、暗いところに行く必要があると思います。次のシーズンに飛騨コスモスでしょうか?

ε130Dの光軸調整がなかなかはかどっていないので、しばらくはSCA260での撮影も継続していこうと思います。


自宅でのDSO撮影はいつ以来でしょうか?と思ってブログ記事を確認すると、10月25日とあるのでなんと5ヶ月ぶりです。その間に開田高原で撮影したり、月食で大量に撮影したりとかはしてましたし、富山の冬場は天気が悪いとか色々言い訳はあるのですが、これはいかんですね。しかももう春で、銀河の季節です。西の空の冬の星雲を撮るか迷いましたが、長時間露光はもう無理と諦め、今回はりょうけん座にあるM106です。


M106

M106は渦巻銀河の分類で、中心に明るい核を持つセイファート銀河にも分類されます。ハッブル分類では渦巻銀河はSb型と言われているようですが、Wikipediaを見るとSAB(s)bcという型だそうです。日本のWikipediaのハッブル分類のページではここまで説明がなかったので、英語版のWikipediaまで見てみるともう少し詳しい説明が載っていました。


SABは渦巻銀河と棒状銀河の中間、(s)はリングがないこと、最後のabcで巻き込み具合を表しaが最も強く巻き込み、b、cとなるにつれ弱くなっていきます。

まとめると、M106は渦巻きと棒状銀河の真ん中くらいで、巻き込みは少なく、リングもない銀河となるので、確かに撮影した形を見るとその通りになります。


撮影準備

3月19日の日曜、月齢27日の新月期で快晴です。その前の数日も結構晴れていたのですが、実際には風がかなり吹いていて望遠鏡を出すのを躊躇していました。この日はほぼ無風に近くて、久しぶりに望遠鏡を出します。ターゲットはSCA260で写しやすいもの。本当はすばるとかでモザイク撮影をねらってたりもしていたのですが、ちょっと季節的に遅くなってしまったので、春ということで銀河。しかもSCA260の焦点距離1300mmでも見栄えのする、そこそこ大きいM106です。

最近のM106の撮影ポイントは、いかに中心部から噴き出るジェットが見えるかということみたいです。このジェット、X線領域がメインで、Hαでも写るのですがかなり淡くなるようです。自宅の明るい北の空でも銀河本体はそこそこ写ることはわかってきましたが、M81で味わったようにまだまだ淡いところは厳しいことがわかっています。ただ、今回のジェットはナローバンドになるので、そこまで光害の影響は受けないはずです。光害地でのナローバンドの淡いところがうまく出てくれるかどうか、ここが勝負どころでしょうか。

夜少し用事が残っていたので、撮影準備は19時半頃からでした。撮影を開始できたのが20時半くらいです。この季節天文薄明終了が19時半頃なので、1時間遅れでの撮影開始です。


トラブル

久しぶりのセッティングですが、実は冬の間にも何度か撮影しようとしてセッティングはしている(天気はすぐに悪くなるのでフル撮影は毎回諦めました)ので大きなトラブルないと思っていたのですが、4日に渡って撮影を続けると細かいことがいくつかありました。

まず初日、Ankerのリン酸鉄バッテリーの残量が0になっていたことです。いつも使ったあとは必ず満充電するので、本来はまだ残量が十分残っているはずです。開田高原でも極低温だといち早く動かなくなるとか、保護回路がしっかりしているのか、その分待機電力が大きいのか、他に使っているほぼノーブランドのバッテリーに比べて使い勝手がイマイチな印象です。さらに撮影3日目、撮影中かなり早くに残量が0%になってしまったのですが、充電を開始するとすぐに70%くらいに復帰しました。そこまで低音ではなかったので電圧降下のようなことはあまりないと思うのですが、電圧読み取り回路がイマイチなのかもしれません。少なくとも他に同時に使ったバッテリーではこんな症状は出なかったですし、これまでも出たことがありません。Ankerはちょっと割高で期待していたのですが、自分の中で少しづつ評価が下がってきています。今はまだ印象だけの状態ですが、一度自分でバッテリーテストベンチをやるべきかもしれません。

撮影2日目になぜか突然カメラが撮影用のStick PCで認識されなくなりました。USBケーブルを抜き差ししても、交換しても、PCの電源を入れ直してもダメでした。USB端子は2つあり、一つはUSB3でカメラなど、もう一つの端子はUSB2で赤道儀のハンドコントローラに繋がっています。結局どうやって解決したかというと、このUSB3とUSB2を入れ替えたところでやっと全て認識されました。初めてのことで、原因も解決策がこれで正しいのかもよくわかりませんが、いつか再発するかもしれないのでメモがわりにここに書いておきます。

撮影3日目、赤道儀反転時にウェイトがガクンとバーの端まで落ちてしまいました。ウェイトのネジをきちんと固く閉めていなかったことが原因です。もともとバーの端近くで止まっていたので、移動距離は5cmほどですがそこそこのショックがあり、カメラなどずれていないか心配でチェックに時間がかかってしまいました。実は同様のトラブルは過去も含めると2度目なので、ネジ止めは毎回再チェックするくらいきちんと止めるべきだと反省しました。


撮影1日目

撮影自身は極めて順調。RGBを5分x10枚づつ撮影し、あとはLとHαに全てをかけます。0時半頃に天頂越えで赤道儀を反転します。これまでの何度かの自動反転でのケーブル引っ張り事件の経験から、反転はその場で見ながらやることにしています。次の日は月曜で平日なので、このまま放っておいて朝まで寝ることにしました。

あ、もう一つトラブルを思い出しました。朝まだ寝ているときに、妻から「車のドア開きっぱなしだよ!」と叩き起こされました。どうやらウェイトを取り出しすときにドアを開けた後、閉め忘れてしまったようです。車には大したものは入っていないのでそんなに心配はないのですが、虫が住みつくとかは避けたいので今後は注意です。

月曜も晴れそうなので、セットアップはそのまま残して夜に備えることにしました。


撮影2日目

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3月20日、2日目の月曜夜は前日のセットアップが残っていて時間的にも余裕があり、薄明終了を待って19時25分に撮影開始したのですが、雲が少し残っていてガイドもすぐに見失ってしまうくらいでした。一旦撮影は諦めて仮眠を取ることにします。23時頃に起きてもまだ少し雲は残ってましたが、SCWによると0時頃から晴れる予報。少し待っていると予報から少し遅れて0時半頃から完全に晴れてきました。

実は待っている間に1日目の撮影画像を少し処理していました。RGBは各50分程度ですが、色はまあまあ出そうです。Lは1時間半ですが、そこそこの分解能も出ます。問題はHαで、5分露光gain120だとかなり暗くてノイジーです。そのためでしょうか、PixInsightのregistrationで3分の1くらいはねられてしまいました。sensitivity設定を0.5から0.25にすることで3枚以外は救うことができましたが、やはり横シマのバンディングノイズのようなものが見えるので、もう少し明るくしたいです。gainを増やしてもいいのですが、ゲインを変えてしまうとフラット画像を使いまわせなくなります。フラット画像は同じゲインが大原則で、フラット撮影時の露光時間を変えて明るさ調整をするので、ライトフレームはゲインさえあっていれば同じフラット画像を使うことができます。一方ダークは露光時間10分のものは以前撮影しているのでそれを使うことができるはずです。

というわけで、Hαのみ10分露光にすることにしました。リードノイズ的には得しますが、ダークノイズ的には時間と比例のはずなので損も得もしないはずです。この決断が正しかったかどうかは処理してからの判断でしょう。


5分露光?10分露光?

2日目の撮影を終えた時点で再度画像処理をします。Hαの比較ですが、10分露光の方が5分露光よりも明らかに解像度が悪いことがわかりました。露光時間が長いために揺れをより積分してしまったか、そもそもシーイングが良くなかったかだと思います。そのため、2日目の画像は、何枚か撮ったB画像以外全て使わないことにしました。


撮影3日目

3月22日の3日目は45枚x5分=3時間45分撮ったのですが、途中で雲が出て中断したりしながら朝まで撮影を続けました。でも結局、他の日に比べてあまりに透明度が悪く、S/Nが悪そうだったので、全て使わないことにしました。


撮影4日目

少し空いて3月28日、月齢6.7日で上弦の月近くなってしまっているので、この日はかなり遅くまで月が出ています。月が出ている間はHα画像を、月が沈んでからはL画像を撮影します。でも平日であまり遅くまで続けると次の日に影響があるので、月が沈む少し前に早めの0時前に赤道儀を反転し、その後はL画像撮影にしました。


画像処理

4日間の撮影でしたが、中二日の画像はほぼ全滅なので、実質は2日間の撮影です。全部で約22時間5分撮影して、そのうち15時間10分を画像処理に回すことができました。

画像処理はいつもの通りPiInsightでWBPPです。LRGBAとマスターライト画像がそろうので、まずは重みを全てのチャンネルで0.25にしてLRGB合成をします。その後も基本通り、ABE、DBE、SPCCなどを施し、BXTの後にMaskedStretchをかけました。

RGBは枚数はそれぞれ10枚程度とたいしたことないですが、色は出そうです。処理の途中で思ったのですが、周辺部の淡いところの解像度が全然足りません。

Hα画像もLRGBと同様にストレッチまで終えます。Hα画像は恒星と分離して背景のみ使います。Hαは5時間45分ぶんあるので、そこそこの長さです。でもこの露光時間の長さが本当に最終画像にどこまで効いてくるかはちょっと疑問です。そもそもHαをLRGBにどう加算すればいいのか、まだ自分の中でうまく確立できていません。今回はHαから恒星を取り除き、もしかしたら今回は撮影したHαの情報を全然使い切れていないかもしれません。

あとはLRGB画像とHα画像をPhotoshopに渡して仕上げです。合成方法はHα画像をRGBモードに変換して、レベル補正で緑成分と青成分を少なくなるようにします。赤成分のみになったものをLRGB画像に比較(明)で合成しています。こうすることでHαの度合いを、様子を見ながら自由に調整することができるようになります。


結果

結果は以下のようになりました。まずは中心部がよく見えるように、クロップしたものです。ジェット狙いだと考えると、ある意味これが完成画像でしょうか。

Image05_ABE_DBE_SPCC_DBE_BXT_MS4_cut_crop_small

    クロップしていない全体像です。下にNGC4248も入っているので、こちらも見応えがあります。
    Image05_ABE_DBE_SPCC_DBE_BXT_MS4_cut
    • 撮影日: 2023年3月19日20時48分-20日4時46分、20日19時25分-23時19分、28日19時51分-29日4時38分、
    • 撮影場所: 富山県富山市自宅
    • 鏡筒: SHARP STAR製 SCA260(f1300mm)
    • フィルター: Baader RGBHα
    • 赤道儀: Celestron CGX-L
    • カメラ: ZWO ASI294MM Pro (-10℃)
    • ガイド:  f120mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
    • 撮影: NINA、Gain 120、露光時間5分、L:80枚、R:10枚、G:10枚、B:14枚、Hα:69枚の計183枚で総露光時間15時間15分
    • Dark: Gain 120、露光時間5分、温度-10℃、32枚
    • Flat, Darkflat: Gain120、露光時間 L:0.001秒、128枚、RGB:0.01秒、128枚、Hα:20秒、17枚(dark flatは32枚)
    • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC

    反省です。
    • 狙いのジェットは一応は出たのかと思います。
    • BXTの威力もあり、中心部の解像度はそこそこ満足です。
    • 周辺部のディスクの淡いところがノイジーで、解像度がイマイチです。
    • Lをもっと撮った方がいいかもしれませんが、ここらへんが明るい庭撮りの限界なのかもしれません。
    • 光条線が全然キリッとしていません。これまで光条線が出た方が珍しいくらいで、まだ全然方法を確立できていません。もしかしたら、微妙な画像の回転が影響しているのでしょうか?

    追記: 昨晩このブログの記事をほぼ書き終えてから、改めて完成画像とマスターL画像と比べてみると、完成画像では淡いところが相当欠落していることが判明しました。明るい恒星もひしゃげていることに気づきました。さらには銀河中心が飛んでしまっていることも気づいてしまいました。原因がわかってきたので、再度画像処理をやり直すことにします。


    まとめ

    おそらく自宅撮影で、ジェットも含めてこのレベルまで見えるなら十分なのかと思います。一旦画像処理まで完成と思っても、細かくみていくと全然満足できなくなります。しかもやっと記事を書き終えたと思って、落ち着いて見てみるとアラがどんどん見え始めます。キリがないです。

    というわけで、再度画像処理を一に近いところからやり直しています。今回の記事と合わせると長すぎてまとめ切れないので、一旦ここで止めて再処理については次の記事で書きたいと思います。



    今回はSCA260で、最近マイブームのお気楽撮影でない、長時間かけて真面目に撮影した方です。と言っても、自宅庭撮りなのは同じですが。

    ターゲットに決めたのはアイリス星雲です。アイリス星雲は1年ほど前、飛騨コスモス天文台でTSA120と6Dを使い、ゴースト星雲と共に少し広角で撮影したことがあります。


    暗い空で環境的には良かったのですが、露光時間が2時間程度と短く、ノイジーであまり解像度も出なくて、リベンジ案件となっていたものでした。今回は自宅ながら、十分な露光時間をかけることができました。淡い分子雲なども多い領域ですが、どこまで出たのでしょうか?


    撮影は20日ほど置いて2回

    撮影は、10月1日(土)と10月20日(木)の2日に渡りました。初日の10月1日の撮影ですが、そのころ晴れが続いていて前日からのまゆ星雲の撮影のセットアップが残っていたのでとても楽でした。赤道儀を出しっぱなしにしたことは何度かありましたが、今回初めて鏡筒も含めて昼間もそのまま残っていたため、撮影準備から開始まで10分ほどしかかかりませんでした。万が一の雨のために昼間にカバーだけはかけていましたが、カバーをとって極軸を取ることもなくいきなり導入できます。ドームがあるといつもこれくらい楽なのかと、ちょっとドーム環境が羨ましくなりました。いつかはドームですかね。

    IMG_0051


    シンチレーションの違い

    10月1日に撮ったものが、シンチレーションが格別良かったせいか、相当な分解能が出ています。でも撮影枚数が少なかったので、やっと晴れた10月20日に撮り増ししました。この日も決してシンチレーションは悪くなかったのですが、改めて比べると10月1日のシンチレーションの良さが際立ちました。10月20日のL画像よりも、10月1日のRGBの方が恒星など鋭かったくらいです。

    comp
    画像は左が10月1日のインテグレート済みのL画像、右が10月20日のぶんです。左が5分で6枚、右が5分で32枚と枚数が違うので、右の20日のほうが当然滑らかです。ですが恒星に関しては、特に2つ接近しているものなどを見るとよくわかりますが、左の方が鋭く分離度よく写っています。

    恒星は10月1日の分だけ、背景は全部使うとかで、うまく合成しようと思いましたが、結局全て混ぜて使うことにしました。全部混ぜてしまうと、恒星の鋭さは10月1日のみのものと(有意な差はありましたが)差はそこまで大きくなく、背景は全部混ぜた方が明らかに良かったので、今回は変なごまかしをしない全部混ぜの方を採用することにしました。


    ルーチン化されてきた画像処理

    画像処理はPIのWBPPに関しては、最近は簡単なルーチンワークになっています。接眼部を取り外さないようにしてホコリの混入を限りなくなくすようにすることで、フラットを使い回せるようにしているのが一番の理由です。

    WBPPのその後の処理もかなり楽になっています。LRGBは経験した回数は少ないのですが、今回はもうRGB画像とか作らずに、RとGとBとLのそれぞれの画像から直接LRGB合成してしまっています。その際、まゆ星雲の処理の時も経験したように、Weightを全部1にすることが大事なようです。特にLを小さくしてしまうと、例えば全部0.25とかにしても、Lの細部が生きないことが今回もわかりました。(ただし全部1にすると、恒星が飽和することがあるので、その場合は後でそれなりの処置が必要となります。今回は最後の方でPhotoshopで少しごまかしています。)

    Lが効いていると細部は出ますが、逆に色は出ないので、LRGB直後にCurvedTransfomationで色出しをします。私の場合、PIで色を出しすぎるとPSで彩度を出しすぎる傾向があるので、色出しはそこそこで抑えるようにしました。

    その後、背景のほぼ全面に星雲があるので、DBEを使わずにABEの1次と2次をかけるのみとしました。これでフラット使い回しの影響もほぼ回避できます。これまではRGB合成やLRGB合成する前にABEなどかけてましたが、最近は合成後にABEや必要ならDBEをしています。そもそもABEもDBEもカラー画像で使えるものなので、手間を省くと言うのがいちばんの理由です。今のところは合成前と合成後での適用で、差は大きくは出なさそうなので、何か問題が発覚するまでは、しばらくは合成後にフラット化しすることで手順を減らす方向でいきたいと思います。

    その後のDeconvolutioinやEZ Star Reductionなどは背景の淡い諧調にに影響を与えることが多いので、今回も使わないことにしました。ストレッチはMaskedStretchのみで、恒星をできるだけ飽和から守ることに重点を置いています。

    あとはPhotoshopに引き渡して、分子雲などを強調します。結果は以下のようになります。


    結果

    「C4, NGC7023: アイリス星雲」
    Image19_ABE_ABE_crop_PCC_CT_CT_MS7_cut3
    • 撮影日: 2022年10月1日20時50分-2日0時9分、10月20日19時12分-21日0時39分
    • 撮影場所: 富山県富山市自宅
    • 鏡筒: SHARP STAR製 SCA260(f1300mm)
    • フィルター: Baader RGB
    • 赤道儀: Celestron CGX-L
    • カメラ: ZWO ASI294MM Pro (-10℃)
    • ガイド:  f120mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
    • 撮影: NINA、Gain 120、露光時間5分、L: 38枚、R: 14枚、G: 14枚、B: 17枚の計76枚で総露光時間6時間20分
    • Dark: Gain 120、露光時間5分、温度-10℃、32枚
    • Flat, Darkflat: Gain120、露光時間 L: 0.001秒、128枚、RGB: 0.01秒、128枚
    • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC
    実はこの画像、2度目の画像処理になります。1度目は金曜夜中に2時間くらいかけて寝る前にTwitterにアップしましたが、朝改めて見てみたら、処理のしすぎでコテコテになってしまっていたと思い直し、土曜に一からやり直しました。今度はもっと処理をシンプルにし、細部を残すところは残し、淡いところはノイズをなくすように。苦手な恒星も、おかしく見えないように少し気を使ってみました。まだ光条線が弱いとか、輝きが足りないとかありますが、多少マシになってきている気はしています。

    青いところはかなり満足です。色もみずみずしい青になりましたし、細部も含めて自宅でここまで出たのは、十分リベンジした甲斐があったと言うものです。周りの分子雲もまあまあでしょうか。アイリス星雲はケフェウス座にあるので北の方角になります。自宅からだと富山の街明かりが北にあり、どうしても不利な方向になりますが、やっと淡いところを出すコツがわかってきた気がしています。一つはやはり長時間露光と、もう一つはそれでも淡くてノイジーなので、PI画像処理の時から暗い方の諧調をできるだけ壊さないように残し、PSでもその諧調をできるだけ残しながら、ノイズ処理もしつつ、拡大していくことかと思います。

    あまり見せたくないですが、1回目の画像処理の結果も載せておきます。今見ると、細部は出ていないし、分子雲はかなりのっぺりしています。あ、でも青の色合いはこっちの方が良かったかもしれません。
    Image19_ABE_ABE_crop_PCC_CT_CT_MS6_cut2

    恒例のAnnotationです。
    Image19_ABE_ABE_crop_PCC_CT_CT_MS7_cut3_Annotated

    分子雲が多いせいか、思ったよりシンプルですね。


    分解能比較

    1年前に撮影した時と、分解能について少し検討したいと思います。どれくらい違うか、焦点距離とピクセルサイズで考えてみます。
    1. まず鏡筒が焦点距離900mmのTSA120と1300mmのSCA260で、1.4倍。
    2. ピクセルサイズが6Dの6.3umとASI294MM Proの4.3umで1.5倍。
    3. ただし今回はモノクロなのでさらに2倍。
    ざっくり一辺で1.4x1.5x2=4.2倍なので、面積だと前回の1ピクセルを約18ピクセルで表現していることになります。

    ちなみに、前回のTSA120で撮影したものを同じ画角で切り取ってみるとこれくらいになります。
    TSA120

    比べると改めてわかりますが、やはり検討分くらいの分解能は出ていることがわかります。


    まとめ

    SCA260での撮影が面白くて、最近こればかりです。なんでかというと、フィルターホイールとか、EAFとか、いろいろ揃ってこなれてきたので、楽で楽しいからです。画像処理も、露光時間3分でゲイン120と固定にしているのと、フラットが再利用できるようになってきたとかで、ライトフレームだけ撮影してそのままPIに放り込むだけでLRGBSAOのどれもがインテグレートまでできてしまいます。そのため、撮影してすぐにWBPPまで処理というルーチンワークがうまくできています。逆に、何ヶ月か前のフラットが合っていなくて、なかなか処理する気になれないものが、未だにいくつか処理が残ってしまっています。

    平日でも自宅なので晴れたら撮影だけ開始して、放っておいて寝てしまっています。ただ、あまり処理する画像が多くなりすぎると、画像処理にかける時間が取れなくなってしまうので、一対象に数日かけて長時間で撮るようにしています。最近は5-10時間くらいですが、もう少し晴れる日が多ければ10時間越えくらいを平均にしたいと思っています。

    いずれにせよ、自宅で明るい北の空も含めて、淡いところまで含めてそこそこ撮れるようになってきたので、しばらくは無理に遠征に出ることなしに、未撮影の天体を中心に数を増やすことを続けたいと思います。


    前回のM45に引き続き、SCA260でのお気楽拡大撮影の第2弾、今回はC49: ばら星雲の中心部です。

     


    2度目の拡大撮影

    2022/10/20の木曜、実は前日の水曜から天気が良かったのですが水曜は疲れ果てていて泣く泣く寝てしまいました。反省して、この日は早めにセッティングです。今回のターゲットのバラ星雲中心部ですが、前回の拡大撮影同様に、通常撮影の後の余り時間で撮影しています。今回は月が出るまでメインでアイリス星雲を撮影していて、その後に撮影を開始しています。

    実際の撮影を始めたのは午前1時過ぎ。5分露光で月の影響があまり無いうちにBGRの順で、その後ナローでOASの順で撮影します。撮影枚数は各フィルターにつき4-6枚、6種類なので合計約3時間です。天文薄明開始前の午前4時過ぎ頃に撮影終了予定ですが、平日ということもあり、撮影が始まると1枚だけ確認しあとはベッドに入って寝てしまったので、結果がどうなったかはわかりません。

    画像処理のために確認すると、風のせいでしょうか何枚かはぶれたりしていますが、ほとんどはよく撮れています。20日ほど前に撮影したフラット画像にホコリの跡があり使えないことがわかったので、休日の土曜日にフラットとフラットダークを撮り直します。今回は外が雨になりそうだったので、部屋の中の白い壁を使って、外の光と蛍光灯の光を壁に当てて撮影しました。


    画像処理

    土日を使って画像処理です。RGBの他にAOOを試したのですが、OIIIが暗くてイマイチでした。SAOも試しましたが、こちらもOIIIとSIIが暗いせいで採用する気になれませんでした。結局、RGBのLをHαで置き換えて細部を出すことにしました。もう月が出ている時間でしたが、Hαは流石にコントラスよく撮れています。

    今回少し工夫した(インチキした?)のはRGB合成をした時点でStarNetで背景と恒星を分離し、Hαも同様に単独でStarNetで背景と恒星を分離し、背景だけでRGBのLをHαで置き換え、恒星はRGBのみのものを使い、後で背景と恒星を合成しました。理由はHαの恒星が小さすぎて、恒星込みでLを置き換えると恒星の形も色も全然バランスが取れないからです。まあお気楽撮影なので、画像処理もあまりこだわらずに好きなようにやってみるかという方針です。

    結果は以下のようになります。

    「C49: ばら星雲中心部」
    Image97_RGB_ABE_ABE_PCC_bg_ARGB3 _cut
    • 撮影日: 2022年10月21日1時26分-4時00分
    • 撮影場所: 富山県富山市自宅
    • 鏡筒: SHARP STAR製 SCA260(f1300mm)
    • フィルター: Baader RGB、Hα
    • 赤道儀: Celestron CGX-L
    • カメラ: ZWO ASI294MM Pro (-10℃)
    • ガイド:  f120mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
    • 撮影: NINA、Gain 120、露光時間5分、RGBHαそれぞれ4枚の計16枚で総露光時間1時間20分
    • Dark: Gain 120、露光時間5分、温度-10℃、32枚
    • Flat, Darkflat: Gain120、露光時間 RGB:0.05秒、Hα:1秒で、それぞれ128枚
    • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC
    Hαが効いているせいもあり、ものすごい構造が出ています。恒星に関してはまだシャープさが十分でないと思います。鏡筒の性能なのか、シンチレーションなのか、画像処理が不十分なのか、

    月が出ている自宅での撮影で、各色20分
    、合計露光時間わずか1時間20分。口径26cmの大口径ということもあるかとは思いますが、メイン撮影の後のお気楽撮影でここまででるわけです。明るい天体ならもうこれで十分いい気がしてきました。

    ちなみに下が画像処理5分で仕上げたSAOです。SIIがどうしようもなく、ノイズ処理をかなりきつめにしてもこれくらいです。Sの淡いところはほとんど階調が飛んでしまっています。
    Image07



    まとめ

    お気楽拡大撮影、あくまでついでの撮影なので労力に対するパフォーマンスがめっちゃいいです。メインの撮影画像より気軽に処理できるので、仕上がるまでも速いです。

    次は燃える木を狙おうと思ってます。アルニタクが画面内に入ってくるので、新しくしたBaaderのSIIフィルターでゴーストが出なくなるかどうか検証する予定です。


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