ほしぞloveログ

天体観測始めました。

カテゴリ:観測・撮影 > ナローバンド

今回はクワガタ星雲のナローバンド撮影です。私自身ナローバンドはまだよくわからないことが多くて、これまでも結構迷走していました。今回ハッブルパレットについて考えてみて、やっと納得できてきました。


撮影

11月20日からの晴れの日の数日間、自宅の庭でε130Dを使って撮影しています。午前0時くらいを境に一晩に前半、後半で2対象、同じものを何日か続けての撮影です。この前のスパゲティ星雲も、今回の記事のクワガタ星雲もその内の一つです。他にもダイオウイカさんや、イルカさんなどが未処理で残ってますが、ダイオウイカさんは露光時間が全然時間が足りていなくて、イルカさんはOIIIはいいのですがHαが強風で全滅だったのでさらに撮り直しです。



平日なので撮影を開始したらあとは寝てしまいます。NINAの自動導入とプレートソルブで放っておいても勝手に対象に向けてくれますし、EAFでピント合わせもしてくれます。天気さえ良ければ、しかもナローなら月夜でも撮影できます。

今回のクワガタさんはスパゲティ星雲が上がってくるまでの前半の、全て月が出ている時間帯での撮影です。そのためナローバンド撮影としましたが、実際どこまで写るのでしょうか?

クワガタ星雲はSh2-157という番号がついています。HαがメインなのでAOO撮影で処理されている場合が多いようですが、SAOでのハッブルパレットで撮影されることも多いようです。今回はせっかくなので象の鼻星雲以来のSIIも撮影しました。今回の結果を見る限りナローバンドなら、月などでかなり明るい状況でも十分炙り出せるようです。




ハッブルパレットの理由

俗にハッブルパレットと呼ばれる画像を見てみると、オレンジと濃い青に寄っているものが主流に見えます。ハッブル望遠鏡オリジナルの創造の柱の場合はまだ緑が残っていますが、JWST(James Webb Space Telescope)の画像になると、さらにオレンジ青ベースが顕著になり、緑が消えていく方向のようです。

この手の色を出すには、これまでの経験上SAO(SIIをred、Hαをgreen、OIIIをblue)で1:1:1で合成をして、PixInsightのSCNRでGreenを1.0で抜いてやると、かなり近い色になります。このことを少し考えてみます。 

まず、 SII、Hα、OIIIの中で一番明るいのはHαです。これを最終的に一番出ていないgreenに持っていくのは一見無駄なように思えますが、SCNRの働きを考えると理にかなっているようです。SCNRは「緑の天体というものが実在しないために、画像から緑を除去する」というような説明をされることが多いようです。

そこで、SCNRの定義を探したのですが、いまいち見つかりません。プロテクションの定義はすぐに見つかるのですが、 これはGをどう置き換えるかについてのみの記述で、RとBをどう置き換えているかの記述がどこにも見当たりません。SCNR変換後のRとBを見てみると、両方とも明らかに変換前よりも明るくなっているので、元のG成分がRとBに行っているのは確実です。SCNRは、もう少し正確には余分なG成分をRとBに割り振ると考えた方がよさそうです。

SCNRでGを抜いた画像は以下のようになります。赤とか青にならずに白くなっている部分も多いので、Gを全く無くしているというよりは、RGBのバランスが取れるようにGをRとBに配分したと考えてよさそうです。
Image68_ABE_SCNR_ABE

試しに、PixelMathで
  • R: A*0.33+O*1
  • G: A*0.33
  • B: A*0.33+O*1
として変換してみた画像が以下になります。
Image71_ABE_PM_ABE

恒星の赤ハロがSCNRとPixelMathのなぜこんなに違うのか理由はわかりませんが、星雲自体の色の傾向は正しそうです。念の為StarNet2で背景だけ分離してみます。上がSCNR、下がPixelMathです。まだ少し赤系が違うところはありますが、大まかにはオレンジと青で傾向はあっていそうです。
Image68_ABE_SCNR_ABE_SN2

Image71_ABE_PM_ABE_SN2_CT_HT

途中、StarNet2が消えていたのに気づいたので再インストールしました。再インストール方法はこのページの中くらいを見てください。 PixInsightをアップデートした際か、BXT2をインストールした際に消えてしまったのかと思いますが、MacのM1ですが、今の所StarNet2の再インストールで、問題なくBXT2とAI2もAI4も共存できています。

ハッブルパレット、もしくはJWST画像の2極の色の「オレンジ」はRとGが混ざった「黄色」と「R」を混ぜたものと考えると、反対側の「濃い青」はBとGが混ざった「Cyan(明るい水色)」と「B」を混ぜたものと考えることができます。こう考えると、一番明るいHαをSAOとして最初Gに置いてやって、そのHαを余すことなくRにもBにも配分して、しかもカラーバランスが取れるようにGにも残すというやり方は、一番情報の多いHαを余すことなく使っているという点において、かなり理に適っているといえるのかと思います。ところで、Rを消すように最初HαをRに置くこともできますし、Bを消すように最初HαをBに置くこともできるはずです。ハッブルパレットが「Gを消す」方向としているのは、やはり緑の天体は基本存在しないということなのでしょうか。

あ、当然ですが本物のハッブル望遠鏡は我々アマチュアが使うフィルターとは全然別のフィルターを使っています。ですが、コンセプトとしてはそこまで間違っていない気はしますし、少なくとも我々アマチュア天文の範囲では上のように考えてハッブルパレットをまねるのは、持てるリソースを最大限利用するという観点からはそれほどおかしいことではないのかと思います。

さて、これまでずーっといまいち納得できなくて迷走してきた3波ナローバンド合成ですが、

今回の検証で自分的には色々納得ができてきたので、今後はSAOで合成して、SCNRで緑を抜くという方向で進め、撮影もどんどんしていきたいと思います。PixelMathの方は恒星の色がうまく出なかったので、ここからはSCNRの方を標準とします。


バブル星雲、でも小さい!

画像処理中に気づいたのですが、下の方の真ん中少し右のところに、なんとバブル星雲が入っているではありませんか!

ただし、さすがにε130Dの焦点距離430mmだとかなり小さいです。今回bin2で撮っていたので、解像度的には少し不利です。そのため、Drizzleのx2で処理し直して、そこにBXTをかけてみました。BXTは新しいAI4も検証したのですが、これは別記事で書きたいと思います。以前の検証で、Bin2でもDrizzleなどで解像度を増し、そこにBXTをかけることで、BXTのまだ残っている余地を引き出すようなことができることがわかっています。BXT2のAI4バージョンでの効果はまだわからないので、少し試してみました。

comp

左がdrizzle x1、右がdrizzle x2にそれぞれBXT2のAI4をかけたものになります。ただし、左のdrizzle x1は元画像が小さいので、Photoshopで同じ大きさにしたときに再サンプリングされていますので、意図せずして解像度が上がっています。それでもこの程度です。これだけ見てもdrizzle x2にBTX2でも解像度をさらに引き出しているように見えます。


画像処理と結果

画像処理ですが、ハッブルパレットの検証に時間がかかったこと以外は、それ以降特に困ることはありませんでした。淡いモクモクを引き出すためにABEなどを使ってのフラット化に気をつけて処理し、途中BXTを注意深くかけ細部を出します。今回は色を出すために ArcsinhStretchでストレッチして、あとは仕上げでPhotoshopにひきわたしてさらに彩度を上げていくだけです。結果は以下のようになりました。

「Sh2-157: クワガタ星雲」
Image13_rot_cut
  • 撮影日: 2023年11月21日19時5分-21時22分、11月22日18時27分-22時5分
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: TAKAHASHI製 ε130D(f430mm、F3.3)
  • フィルター: Baader:Hα 6.5nm、OIII 10nm、SII6.5nm、
  • 赤道儀: Celestron CGEM II
  • カメラ: ZWO ASI6200MM Pro (-10℃)
  • ガイド:  f120mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: NINA、bin2、Gain 100、露光時間5分、Hα: 28枚、OIII: 24枚、SII: 23枚の計75枚で総露光時間6時間15分
  • Dark: Gain 100、露光時間5分、温度-10℃、117枚
  • Flat, Darkflat: Gain100、露光時間 Hα: 1秒、OIII: 1秒、SII: 1秒で全て64枚
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC

今回もっとオレンジと濃い青になるかと思ったのですが、思ったより緑成分も残っていますし、オレンジもどちらかというと金色に近く、また濃い青もシアンに近い青になりました。これはSII成分やOIII成分が比較的強かったからなのでしょうか?色バランスはもう少し場数を踏む必要がありそうです。

淡い部分については、月明かりといえどさすがナローバンド撮影、かなり出ているかと思います。クワガタという名前ですが、牙が2本以上あるように見えてあまりクワガタっぽくならないところが残念です。星雲本体だけでなく、周りにもたくさんのHαが広がっていて、非常に面白い領域かと思います。

下部の真ん中より少し左に、マジェンタの小さな天体が見えています。最初これ何か失敗したのかと思ったのですが、どうも本当に存在している天体のようです。拡大してみると、マジェンタとシアン色に分かれているのですが、これはSIIとOIII画像にのみ存在していて、Hαでは何も見えていないことに起因するみたいです。でもなんの天体か調べても全然分かりませんでした。もしかしたら撮影ミスの可能性もまだあるのですが、どなたか同じ領域を撮影した方とかいらっしゃいますでしょうか?

NINAで自動導入した際にSh2-157で指定すると、左牙の根元の明るい部分が中心になるようです。そのため、画角として星雲本体が少し上に行き過ぎている印象を受けます。もう少し下に移動してもよかったかもしれません。drizzleで2倍の解像度になっていて分解能だけは十分にあるので、下の画像のようにクワガタ星雲本体が中心となるようにトリミングしてみました。「クワガタ星雲」とあらわにいう場合はこちらの方がいいのかもしれません。
Image13_trim1

ついでにいつものアノテーションです。他のシャープレス天体もたくさん写っていますね。Sh2-152,  153, 156, 158, 159, 162, 163くらいでしょうか。Sh2-157は確かに牙の根元の明るい部分を指すようなので、Sh2-157がクワガタ星雲というよりは、Sh2-157の周りにクワガタ星雲があると言った方がいいのでしょうか?英語だとLobster claw nebulaと言うそうですが、StellariumでもSh2-157がLobster claw nebulaそのものと出ています。
Image13_rot_cut_Annotated

うーん、この左下のマジェンタの天体、アノテーションでも出てきません。何なのでしょうか?ゴミとかと判明するまでは撮れたものなので残しておくことにします。

あと、上部真ん中より左のバブル星雲部分を切り出して、もう少し見えやすくなるように処理しました。
Image13_bubble_cut

まだ拡大できますが、下くらいが限界でしょうか。
Image13_bubble_cut_small

これがどれくらいの領域かというと、下の画像の緑枠で囲ってあるくらいの場所です。
Image13_trim_frame

こんな小さなエリアですが、今回はε130Dの分解能と、Drizzle x2、BXTが相まって、チートクラスの解像度になっています。焦点距離430mmでここまで出るのでびっくりです。でもこれもいつか長焦点で撮ってみたいので、リベンジ案件としておきたいと思います。


まとめ

久しぶりのSAO合成でしたが、やっとハッブルパレットも納得できてきたこともあり、ちょっとおもしろくなってきました。でもまだ色合いが違う気がしていてい、むしろ以前の象の鼻星雲の時の方がよりハッブルパレットに近い気がしています。

それでもかなり淡いところまで出たので、結構満足です。あとクワガタ星雲でメジャーなAOOも時間があればやっておきたいと思いますが、これはまた別の記事に。


日記

最近忙しくて、休前日とか休日にしか画像処理やブログ書きの時間を取ることができません。未処理の画像がまだ溜まっていますし、途中になっているノイズ解析とかもあります。やりたいことは溜まっているので、ブログ記事のネタには困っていませんが、記事自体が最近長くなっているのでもっとシンプルに速く書けないかとも思っています。天気はしばらくあまり期待できなのいので、残っているネタをひとつづつ片づけていこうと思っています。

他にも物書きが溜まっていたり、正月は再び北陸のどこかのスターバックスで天文密会が予定されていたりで、年末年始の休みも予定でいっぱいになりそうです。

最近機材欲は減っている気がします。ε130Dが調子が良さそうなので、しばらくはこのまま続けて、飽きてきたらまたSCA260に戻るのかと思います。現状が430mmでフルサイズ、1300mmでフォーサーズの2種がメインで、ちょっと間が空いていてその中間がないので、もしかしたら手持ちのBKP200を撮影に持ち出すかもしれません。焦点距離800mmとちょうど中間くらいで、F4と明るいので効率よく撮影できそうです。撮影できるまでに時間はかかるかもしれませんが、コマコレはあるのでそこそこの画像にはなるはずです。コマコレがあってもやはり周辺では乱れると思いますが、BXT2の威力がかなりすごいので、その効果込みだと十分実用レベルになる気がします。


3波ナローバンドの作例も3つ目になります。今回はケフェウス座IC1396の中にあるVdB142: 「象の鼻星雲」になります。

IC1396

IC1396といえば、以前撮影して記事にしています。6月初めの記事で、撮影したのが5月28日の夜です。



大きな星雲なので焦点距離370mmのFS-60CBに、フルサイズのCMOSカメラASI2400MCで撮影しています。Annotationしていなかった(当時うまくできなくて、今回Alignment algorithmをpolygonsで試したらできました)ようなので、ここで示しておきます。

ABE_PCC_ASx5_HT_starreduction_SCNR3a_tw_Annotated

今回の象の鼻星雲はこの中にあり、ちょっとわかりいくいですが、右側から中心に向かって伸びています。画像の中のVdB142と書いてあるところが先端になります。今回の象の鼻星雲の撮影日は5月31日の夜で、実は上のIC1396を撮影してからすぐに撮っていますが、画像処理は随分とかかってしまいました。


SAO合成

前回までにM17: オメガ星雲NGC6888:三日月星雲とナローバンドを試してきましたが、いずれもまだ手法を探っている状態で、しかも三日月星雲はSIIにほとんど何も写らないことを撮影後に理解し、かなり迷走状態でした。



今回の象の鼻星雲はナローバンドでの作例も豊富で、満を辞してのSAO合成となります。1枚あたりの露光時間はこれまでの10分から5分にしています。10分だとそこそこ長くて採択率も少し下がります。また、星像が肥大しがちなのが気になっていました。私はあまり恒星の処理が得意でないので、もう少し短い方がいいと思い、今回半分の長さにしてみました。微恒星の数が減るかもしれませんが、結果を見る限り5分の方が星像は綺麗に出るようです。

実際の撮影は、夜の前半にSCA260+ASI294MM ProでM82を撮り、その後設定はまるっきりそのままに夜中から象の鼻星雲に移って撮影を続けます。平日の自宅なので撮影開始で寝てしまい、朝に片付けです。

採択/撮影枚数はHα:10/10枚、OIII:9/10枚、SII:9/10枚で、総露光時間は2時間20分と大した長さではありません。結果を見ても少しノイジーなので、もう少し撮り増しして撮影時間を伸ばしてもよかったかもしれません。実際次の日に撮影したのですが、風が強く7枚撮った時点で撤収、後から見てもブレブレで使い物にならなくて、結局画像処理には最初に撮った日の分だけを使っています。

スタック後のHα、OIII、SIIをオートストレッチしたものをそれぞれ見比べてみましょう。

masterLight_BIN-2_4144x2822_EXPOSURE-300.00s_FILTER-A_Mono

masterLight_BIN-2_4144x2822_EXPOSURE-300.00s_FILTER-O_Mono
OIII

masterLight_BIN-2_4144x2822_EXPOSURE-300.00s_FILTER-S_Mono
SII

SIIは相変わらず淡いですが、それでも明らかに模様が見えています。今回はやっと期待ができそうなので、迷わずにSAO合成一本で行きます。


画像処理

まずは普通にRGBにSII 、Hα、OIIIを1:1:1で割り当てます。すると、強いHαを割り当てた緑がやはり主になってしまうので、のんたさんがM17の時のコメントでアドバイスしてくれたように、PixInsightのSCNRで緑のノイズをAmplitude1.0で除いてやります。そうすると淡いですが青とオレンジが残り、ハッブルパレットのような色調になりました。

こうなれば、あとは彩度を出していくだけで、特に色バランスをいじることなく青とオレンジの対比が綺麗な仕上がりにすることができました。

特に今回の画像処理は相当シンプルで、DBEはおろかABEもしていなくて、定番のPCCやクロップもしていません。一応全部試した上で、ない方がいいという判断です。その代わりDeconvolutionとEZ star reductionをかけて細部を出しています。マスクはStarNetのV2で恒星を分離したものだけを使いましたが、その他星雲マスクなどは使っていません(というか、全面モクモクしているので使えませんでした)。ストレッチは主にArcSinhStretchで、恒星の芯を出したくて最後にHistgramTransformationを使っています。

その後はPhotoshopに渡しましたが、彩度出しが主で、他に大したことはしていません。結果です。

Image05_SCNR_ASx4_HT_SR_bg4_low
  • 撮影日: 2022年6月1日0時29分-3時2分
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: SHARP STAR製 SCA260(f1300mm)
  • フィルター: Baader:Hα 6.5nm、OIII 6.5nm、Optlong: SII 6.5nm
  • 赤道儀: Celestron CGX-L
  • カメラ: ZWO ASI294MM Pro (-10℃)
  • ガイド:  f120mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: NINA、Gain 120、露光時間5分、Hα: 10枚、OIII: 9枚、SII: 9枚の計28枚で総露光時間2時間20分
  • Dark: Gain 120、露光時間5分、温度-10℃、32枚
  • Flat, Darkflat: Gain120、露光時間 Hα、OIII、SII、それぞれ20秒、16枚
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC
SAOならではで、Twitterで初期出しした時より少し派手目の色使いとしています。露光時間が短くまだノイジーなのは否めませんが、構造もかなり細かく出ていて、この露光時間と自宅での撮影でここまで出るは、さすがナローバントといったところでしょうか、自分的にはかなり満足です。


Annotationです。
Image05_SCNR_ASx4_HT_SR_bg4_Annotated


忍者星雲

画像処理が一段落して一度Twitterに投稿したときに、海外の方からNinjaに見えるとの感想がありました。私は色使いが忍者かと思ったのですが、形が似ているというのです。

頭巾を被った片目の忍者が立っていて、右腕が下に伸びていて、腕の先に刀を下向きに持っているとのこと。

だめですね、一度そう見えると本当にずっとそう見えてしまいます。しかも雲隠れする直前の忍者に見えてきました。その後、彼と色について少しやりとりしました。忍者の服の色って黒だけでなく、濃紺だったり、濃い柿の色だったりするんですよね。これがハッブルパレットの青とオレンジの対比に結構ぴったりだと思ったのです。もちろん自然の色ではないので、忍者の服の色と言うには強引かもしれませんが、ここまでくると他の方の写真の色違いのを見ても、もう忍者にしか見えなくなってしまいました。

彼がいうには「Ninja Nebula」と言った方がいいのではとのことですが、私は「象の鼻星雲」という名前を尊重しています。でも忍者にも見えてしまうので、別名で忍者星雲もいいかなと思えてきました。

皆さんどうでしょうか(笑)?


まとめ

今回やっと青とオレンジのハッブルパレットっぽいのが綺麗に出たのが嬉しかったです。過去のSAO2作品ではどうしても納得できなかったのですが、やっとSAO合成の面白さを味わうことができてきたかと思います。忍者に見えるのも面白いです。

とりあえずナローバンドの撮影ストックはここまで。あとはDSOはRGBでM81とM82が残っていて、天の川関連がもう少し残っています。全然晴れないので、焦らずゆっくり進めていこうと思います。



ナローバンドをもう少し試してみる

ゴールデンウィーク後、しばらく晴れていたので自宅での撮影を続けていました。夜中から過ぎからのNGC6888三日月星雲でナローバンド撮影です。前回の記事がM17のナローバンドだったので、こちら方面をもう少し掘り下げるために、他に待っている未処理画像もありますが、三日月星雲を先に処理します。





三日月星雲

三日月星雲は2年ほど前、CBPを試す一環でTSA120とASI294MC Proで、自宅で撮影しています。カラーで手軽だったのですが、背景の青いところはモヤッとしか出なくて悔しかったことを覚えています。でも青いのが出てるのはほとんどナロー撮影で、カラーで青が出ただけでもましで、いつかナローで撮影したいと思っていました。





撮影

カメラはASI294MM Pro、ゲインは120、露光時間は10分と、これまでのSCA260での撮影での標準的な設定です。なのでダークはこれまでの使い回し、フラットもM17で撮影したもの使い回しで済むので楽なものです。

何で対象を三日月星雲にしたかはあまり覚えていません。多分ですが、
  • その頃は前半はM81やM82を撮影していて、条件的に後半の夜中に上に昇ってくるもの。
  • 画角的に1300mmの焦点距離に合うもの。
  • 5枚用だったフィルターホイールを新調して8枚装着できるようになり。
  • やっとOIIIとSIIが入れ替えなしに撮影できるようになったので、やはりナローを試したかったこと。
  • 自宅なので明るい北側でないこと。
くらいでしょうか。今思うと、ナローなので多少明るくても、月が出ていてもあまり関係なかったかもしれません。むしろ新月に向かうような時期だったので、RGBとかブロードの方がにしておいた方がもったいなくなかったかもしれません。でも0時過ぎからのついでの撮影みたいな気分だったので、まあよしとします。

記録を見ると撮影は自宅で3日に渡っています。どれも前半の撮影(M82)を終えた0時過ぎからで、平日か次の日仕事の日曜なので、セットアップだけして寝てしまっていたはずです。


画像処理

撮影枚数と処理に回した枚数はHα:12/15枚、OIII: 13/15枚、SII: 13/15枚なので、10分露光としては十分な採択率です。合計6時間20分になります。

Hα、OIII、SIIの順でスタック済みのものを見てみます。

A

O

S

今回はそれぞれ2時間強と露光時間もかけているので、横シマのノイズが見えることはありません。それでもSIIの淡いこと淡いこと。これだと実際にはほとんど効かないですね。どうしたらいいものなのか?

とりあえず処理は簡単なAOOから始めます。目的は背景の青を出すことですが、OIIIはその目的を託すくらい十分に撮れていることがわかりました。

「NGC6888: 三日月星雲」
Image11_ABE1_PCC_ABE4_cropped2_mod
  • 撮影日: 2022年5月25日1時8分-2時59分、26日0時33分-2時56分、30日0時37分-3時0分
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: SHARP STAR製 SCA260(f1300mm)
  • フィルター: Baader:Hα 6.5nm、OIII 6.5nm、Optlong: SII 6.5nm
  • 赤道儀: Celestron CGX-L
  • カメラ: ZWO ASI294MM Pro (-10℃)
  • ガイド:  f120mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: NINA、Gain 120、露光時間10分、Hα: 12枚、OIII: 13枚、SII: 13枚の計38枚で総露光時間6時間20分
  • Dark: Gain 120、露光時間10分、温度-10℃、32枚
  • Flat, Darkflat: Gain120、露光時間 Hα、OIII、SII、それぞれ20秒、16枚
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC

さすがAOOです。脳味噌みたいなシワシワも、CBPでは出なかった背景の青も、形がきちんとわかります。

恒例のAnnotationです。

Image11_ABE1_PCC_ABE4_cropped2_mod_Annotated

ちなみに、2年前の画像がこれ

masterLight_ABE_PCC_STR_SNP10_cut

この時は本体の背景の青が全然はっきりしていなくて、ぼかしてごまかしています。なので今回は自己ベストと言っていいかと思います。

でも実は今回、画像処理で相当てこずっていて、1週間くらいの間に4回やり直して、やっとトータルで前の結果を超えたと思えました。決め手は休日の楽しみのコメダ珈琲。この日も朝昼ごはんでカツカリーサンドです。お腹一杯になりました。
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写真を見てもわかりますが、久しぶりに落ち着きながら画像処理ができました。今回のポイントはマスクをいかに上手く作るかでした。三日月星雲は星雲本体と背景で出したい分解能が大きく違いますし、各色で色の淡さも大きく違います。焦ってやってはダメですね。1週間くらい悩んでたのが、コメダに来てやっと解決しました。


3波での完全迷走状態

一方、3波合成は相当な迷走に入ります。試しただけでも
  1. SAO
  2. Sが淡いので、SAOのRにおいてAを5割としたもの
  3. OSA
  4. OSA reverse(あぷらなーとさん記事参照)
  5. AOOで見栄えがいいので、その逆のOAA
  6. AOOのRとGにSを3割としたもの
  7. オレンジを狙って、AOOのGにおいてAを2割入れたもの
  8. Yellowを狙って、AOOのGにおいてAを5割入れたもの
  9. 上の8にさらにSを使おうと思ってRとBにおいてSを3割入れたもの
  10. AOOをベースにGにおいてAを2割入れて、RにおいてSを3割加えたもの
などです。でも結局のところはSに特徴がないので何をやってもダメで、AOOが一番ましという結論で、お盆休みの中の丸一日をかけましたが、ほぼ徒労に終わりました。

一応ですが、それでも特徴的な画像を上げておきます。合成後にオートストレッチしただけなので画像処理らしいことは何もていない状態です。

1. SAO
Image10_ABE_cropped_HT

3. OSA
Image07

4. OSA reverse(あぷらなーとさん記事参照)
Image06

5. AOOで見栄えがいいので、その逆のOAA
Image04


8. Yellowを狙って、AOOのGにおいてAを5割入れたもの
Image08

一見良さげに見えるのもあるのですが、実質SIIがほとんどなにも効いていなくてHαとOIII2つのバリエーションになっています。


一応3波で仕上げてみる

結局選んだのが、SAOをベースとすること。ただしSIIがあまりに弱いので、RにHαを混ぜS:A = 0.8:0.2とし、その代わりにGにSIIを混ぜA:S = 0.8:0.2としました。それでもまだ色の比率が厳しいので、ストレッチの際にRとBを強調しています。青とオレンジの対比を示したかったのですが、ここらへんが限界で、結局はM17で試した過程とよく似ています。

20220809_NGC6888_SCA260_SAO_ASI294MMPro_CGXL2

まだまだですね。皆さんかなり工夫しているのかと思います。


あぷらなーとさんのreverseをPIで

今回の唯一の成果ですが、PixInsightでもあぷらなーとさんが提唱するreverseのやり方はわかりました。RGBの代わりにCMYに割り当てればいいのですが、例えばHαをYellowに割り当てたければRとGに50%づつ割り当てればいいというわけです。なのでOSA reversはPixel Mathを利用して

PixelMath


  • R: A*0.5+S*0.5
  • G: A*0.5+O*0.5
  • B: O*0.5+S*0.5

などとしてやればいいようです。今回は簡単に指示するために、AとかOとかSはファイル名をそのようにして保存しました。


まとめ

露光時間をかけたにもかかわらず、SIIがここまで何も出ないのは予想外でした。そのためAOOで仕上げたのですが、こちらは目的の背景にある青ははっきり出たので良しとします。

ハッブルとか見ると本当に青とオレンジのコントラストの対比が綺麗です。これやっぱり違う波長を使っているのでしょうか?ナローはもう少し研究の余地ありです。でも次のナロー画像処理は象の鼻。こちらはSAOとかの作例も多いので、SIIに特徴があるのかと期待しています。

ゴールデンウィーク最終日に撮影したM17オメガ星雲です。



牛岳でSCA260でアンテナ銀河撮影してたのですが、夜中過ぎには西の空に傾くので、その後何を撮影しようかと迷って、画角的にちょうど良さそうなM17にしました。しかもちょうどフィルターホイールを8枚のものに新調したばかりだったので、ここは3波でのナローバンド撮影に初挑戦してみました。


感慨深いM17

M17は実は星を始めてからM27と一緒に一番最初に撮影した星雲で、これもやはり牛岳でした。



ブログを読み返すと、既にこの当時から星雲に色がつかないことに文句を言っています。自分自身よほど不満だったのかと思います。

BKP800とAVXと天体改造のX5での撮影でしたが、その当時は赤道儀でうまく導入することもままならず、導入は県天のK会長にやってもらったものです。2分露光の1枚撮りで、何枚か撮影したものから一番流れていない1枚を抜き出し、GIMPで画像処理したものです。もちろん今見るとツッコミどころは満載なのですが、最初にとれた星雲で、M17なんて存在さえよく知らなくて、きれいに色が出て、ものすごく嬉しかった覚えがあります。今思い出しても、当時のワクワク感は蘇ってきて、ずーっとこの延長でやっているんだなあと、改めて今このブログを書きながら思いました。

さてここから6年でどれくらい進化したのか、比べるのが楽しみです。


一枚撮りでの画像

今回の撮影の様子ですが、当時の記事を見てもあまり大したことは書いてないですね。今覚えているのは、アンテナ銀河が西に沈んで何を撮影するかをその場でかなり迷ったことです。M17なら画角がSCA260とASI294MM Proで、(フラットは後で撮ろうと思ったので)カメラを回転させなくてもなんとかなりそうなのと、あーそう言えばM17ってホントに一番最初に撮影してから今まで撮ったことなかったなと意識してました。

さらにその日は青い馬星雲も同時撮影していて、ちょうどセッティングが落ち着いた頃で、アンテナ銀河と合わせると1日で3つ目の天体の撮影になります。1日に3天体というのはあまりないのと、初3波ナローなのでまあ失敗してもいいやと半分ダメ元です。試し撮りのHαの時点でかなり明いと判断し、3分露光としました。しかもかなり眠かった覚えがあるので、NINAでHα、OIII、SIIの順にセットして走らせてすぐに寝てしまったはずです。途中目を覚ましてHαとOIIIは確認して、おお、かなりはっきり出てる!と思った記憶はあります。そこから完全に熟睡してしまい、次に目が覚めたら周りはすっかり明るくなってました。SIIはそこで初めて確認して、そう言えばHαとOIIIはBaaderで、SIIがOptolongだったのをそこで思い出し、もしかしたらピントズレてたかもと反省しました。

改めてそれぞれ見てみます。順にHα、OIII、SIIです。全て3分露光、ゲインはASI294MM Proの美味しい所の120で、比較的暗い牛岳での7nmの波長幅のフィルターです。

2022-05-06_01-27-53_M 17_LIGHT_A_-10.00C_180.00s_G120_0001

2022-05-06_01-43-41_M 17_LIGHT_O_-10.00C_180.00s_G120_0001

2022-05-06_01-59-25_M 17_LIGHT_S_-10.00C_180.00s_G120_0001

明るさとしては、まあ当たり前ですがSIIが一番暗く、オートストレッチしたときの背景に横線がたくさん入るレベルで、明らかに露光もしくはゲインが足りていなかったと思われます。

改めて見てみると、Hα画像の星雲部の一番明るい部分でも10%を切る程度で、しかもこちらの背景にも多少横線が入っています。こう考えると、Hαでさえももう3倍くらい明るくしても良かったかもしれません。今回ナローバンドで3分露光だったので、いつものRGBでの10分露光よりも明るくしても良かったくらいです。

できるならHα、OIII、SIIで露光時間とゲインは同じにしておきたいので、明るいところと暗いところがきちんとADCに配分されるようにどう調整したらいいのか、今後の課題かと思います。実はこの後まだNGC6888三日月星雲とIC1369の象の鼻のナローバンドの画像処理が待っていて、それぞれ10分露光と3分露光で試しているので、ある程度の知見は出るかと思います。

ピントに関してですが、SII画像のピントはもっとひどいかと思っていました。多少ずれているようにも見えますが、まあなんとか許容範囲でしょうか。でもこれはEAFでオフセットをきちんと調整した方が良さそうです。こちらも今後の課題です。


Integration

次に、インテグレートした後の画像を見てみます。同じくHα、OIII、SIIの順です。枚数はそれぞれ5枚、6枚、7枚です。

masterLight_BIN-2_4144x2822_EXPOSURE-180.00s_FILTER-A_Mono

masterLight_BIN-2_4144x2822_EXPOSURE-180.00s_FILTER-O_Mono

masterLight_BIN-2_4144x2822_EXPOSURE-180.00s_FILTER-S_Mono

当たり前ですが、1枚の時よりもより細部が表現されています。アンプグローはもう見えないと言っていいでしょう。ダーク補正がうまくいっている証拠です。Hαは横縞はほとんど分からなくなりましたが、OIIIはごくわずか、SIIはまだ多少目立ちます。PIでLinearPattarnSubtractionとかCanonBandingRedutionとか試したのですが、ごくわずか軽減できたくらいで、明るさバランスが狂うなどの弊害もあったので、横縞はそのまま残してあります。これは撮影時の明るさをもう少し増やしてやることと、撮影枚数を増やすことでも解決できそうなので、大きな問題ではないでしょう。


いろんな合成法

さてここから合成です。一般的にはSII(S)をRに、Hα(A)をGに、OIII(O)をBに当てはめるSAO(海外ではSHOというらしいです)が一般的のようで、これはハッブル望遠鏡が想像の柱で使った配色が元のようです。

でもよくわかっていないので、とりあえず3枚のモノクロ画像をRGBに全部当てはめてみます。その種類は3!=3x2x1=6通りあるはずです。条件はPIのChannelCombnationでRGBを選び、それぞれの色にそれぞれの画像を入れ、その後ScreenTransferFunctionの各色のリンク無しでオートストレッチをし、HistgramTransformationで固定します。リンク無しなので、背景がバランスの取れたグレーに近くなります。

1. まずは明るい順のAOS:
AOS

2. 後ろ二つをひっくり返したASO:
ASO

3. 次に、明るいのを真ん中のGに置いたSAOでハッブルパレット:
SAO

3: 前と後ろをひっくり返してOAS:
OAS


5. Aを最後に持ってきたOSA:
OSA

6. 前と真ん中を入れ替えたSOA:
SOA

ふむふむ、こうやってみるとよく分かりますね。一番明るいHαを入れた色(RGB)がベースの色となります。上2つが赤がベース、真ん中2つが緑がベース、最後2つが青がベースということです。

ちょっと面白いのが、3、5、1がCyan、Magenta、Yelllowがベースに見えることです。明るい方からHα、OIIIなのですが、この二つが混ざる時の色でCMYっぽくなるということですね。

ただ、こうやって見てしまうと、ベースの色の印象が強すぎていまいち面白味がないように思えてしまいます。あぷらなーとさんはさらにCMYにAOSをそれぞれ当てはめて「リバース」というパレットを提唱していますが、Stella Imageだとそれが簡単にできるみたいです。



PixInsightはいろいろ調べたけどCMYへの配色は簡単にできそうにはないので、今回は諦めます。というか、そもそもベースが6つもある時点ですでに発散気味で、リバース法も加えて12個もあると、私的にはとてもじゃないけれど扱いきれません。こういう時は一番標準のSAOで試してみるのが良さそうで、3を出発点とします。


SAOでの画像処理

さて、ハッブルが撮影した想像の柱を見ると全然緑っぽくなく、むしろ青と黄色(オレンジ)の対比がとても綺麗です。今回撮影したM17はHαが主体なので、ハッブルみたく近づけるために、カラーバランスを大きく変え、赤と、特に青を相当持ち上げます。ただし背景はグレーに近い色を保つために、ブラックレベルを随時変更します。

SAO_dim

問題は赤。Redに割り当てたSIIが一番暗くノイジー、かつ少しピントがずれているので、
  1. どうしてもノイズが目立ってしまうこと
  2. 赤ハロが出てしまう
などが問題になります。

まず2の赤ハロから対処します。最初、上記画像にPI上でのR画像のみにEZ Star Reductionをかけたのですが、そのまま画像処理を進めていくと、R画像の明るい恒星の周りに大きな窪みができてしまいました。

drop

この原因を辿っていくと、EZ Star Reductionで、さらにはSIIのフィルターが問題である可能性が出てきました。SIIのみOptolongを使っているのですが、どうも明るい恒星だと周りにゴーストが出てしまうようです。

masterLight_BIN-2_4144x2822_EXPOSURE-180.00s_FILTER-S_Mono_cut

BaaderではHαもOIIIも見る限りこのようなゴーストは出ていません。
masterLight_BIN-2_4144x2822_EXPOSURE-180.00s_FILTER-A_Mono_cut
masterLight_BIN-2_4144x2822_EXPOSURE-180.00s_FILTER-O_Mono_cut

とりあえず今回は回避策として、最初からEZ Star Reductionをするのはやめて、まずはStarNet V2で恒星と背景を分離し、その分離された恒星のR画像のみにEZ Star Reductionをかけてみました(この方法、一般的に結構使えるかもしれません)。その結果、背景画像のRに窪みは完全になくなり相当マシになりましたが、それでも合成して炙り出していく過程でゴーストの痕跡は残って赤く目立ってしまいます。

ghost

この結果を見るに、SIIフィルターをBaaderのものに変えようと思ったのですが、国際光器のページを見ても、本家のBaarderのページを見てもナローバンドフィルターは軒並み在庫切れのようです。ZWOのナローバンドフィルターは結構マシという記述をどこかで見たので、SIIだけそれを買うか、もしくはどうも今後SIIを使う機会があまりなさそうだということもわかってきたので、そのまま放っておくかもしれません。今回は後の画像処理でこのゴーストはできるだけごまかすことにします。

処理を進めます。ここでPhotoshopに移動し、R画像のノイズを減らします。Camera Rawフィルターは特定のチャンネルのみにフィルターを適用できるため、使い勝手がいいです。ここではディテールのノイズ軽減をレッドチャンネルに対して使います。

あとは普通に炙り出しです。ハッブルパレットだと多少派手にしても怒られなさそうなので、彩度も多少上げてしまいます。ただ、基準となる色がよく分からないので、どうしてもお絵描き感が強いと思えてしまうのも正直なところです。

最後の方で、レベル補正でRGBのピーク幅をそろえてやると、ハッブルパレットのように青とオレンジの対比が出てくるようになりました。最後に画面全体をひっくり返して北を上にします。

SAO_dim3_mod
  • 撮影日: 2022年5月6日1時24分-2時33分
  • 撮影場所: 富山県富山市牛岳
  • 鏡筒: SHARP STAR製 SCA260(f1300mm)
  • フィルター: Baader:Hα 6.5nm、OIII 6.5nm、Optlong: SII 6.5nm
  • 赤道儀: Celestron CGX-L
  • カメラ: ZWO ASI294MM Pro (-10℃)
  • ガイド:  f120mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: NINA、Gain 120、露光時間3分、Hα: 5枚、OIII: 6枚、SII: 7枚の計18枚で総露光時間54分
  • Dark: Gain 120、露光時間3分、温度-10℃、128枚
  • Flat, Darkflat: Gain120、露光時間 Hα、OIII、SII、それぞれ20秒、16枚
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC

こうやって改めてみてみると、やはりまだ赤が足りないでしょうか。でもSIIがノイジーなのでここら辺が限界です。今回は全体的に露光時間が全然足りていないと思うので、画像処理でノイズ除去とか結構強めにかけてなんとか見えるようにしています。それでもノイジー感が残ってしまっています。

いつものAnnotationです。

SAO_dim3_mod_Annotated


ちょっとAOO

SAOも綺麗なのですが、普通の見え方?に近づけるためにAOO合成をしてみました。

AOO_ABE_PCC_AS_AS_HT_mod
  • 撮影日: 2022年5月6日1時24分-2時33分
  • 撮影場所: 富山県富山市牛岳
  • 鏡筒: SHARP STAR製 SCA260(f1300mm)
  • フィルター: Baader:Hα 6.5nm、OIII 6.5nm
  • 赤道儀: Celestron CGX-L
  • カメラ: ZWO ASI294MM Pro (-10℃)
  • ガイド:  f120mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: NINA、Gain 120、露光時間3分、Hα: 5枚、OIII: 6枚の計11枚で総露光時間33分
  • Dark: Gain 120、露光時間3分、温度-10℃、128枚
  • Flat, Darkflat: Gain120、露光時間 Hα、OIII、それぞれ20秒、16枚
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC

HαとOIIIしか使っていないので、わずか33分の露光でしかなくて短すぎるのですが、それでもなんとか見えているのは26cmの口径おかげなのでしょう。

あと、この色合いだと2016年の当時に撮影したM17と直接比較しやすくなります。
IMG_0027_DPP
こちらはわずか2分の露光なので、そもそも比較するのもかわいそうなのですが、少なくともM17で始めた星雲撮影が、6年間でまたM17にたどり着いて、あらゆるところで進化してることを実感することができます。


まとめ

初の3波ナローバンドの撮影と、その全組み合わせをしてみて、最後SAO合成で画像処理までやってみました。露光時間が3波合わせて1時間未満で、特にSIIはかなり暗くて苦労しました。そのため全体的にノイジーなのは否めませんが、少し強引に一応見える位にまではできました。

フィルターもメーカーによって違いがあることもわかりました。Baarderは何気なしに使っていましたが、やはり良いものだということがわかってきました。

まだ今のところSAO合成が面白いのか面白くないのか、正直いうとよく分からないところもあります。SAOという縛りがあっても自由度が大きすぎる気がします。これはおそらく絶対基準のようなものがないからだと思います。普通の可視光も絶対基準という意味でははっきりはないのですが、それでも目で見て自然とか、いろんな画像例の中心値みたいなのはあって、少なくとも私の中ではある程度の参照基準みたいなのはあります。一方、SAOはハッブルパレットが元なので、今回は想像の柱を想像しながら色を合わせ込んでみましたが、果たしてこれが正しいのかどうか、まだよくわかっていません。

ナロー3波で撮って、最後に出したAOOみたいに、3波で自然な色合いにする方が見ていて気持ちはいいのかもしれません。そこら辺もいつか探れればと思っています。 


今回は初のナローバンドです。まずは簡単なAOOから、ターゲットはM27: 亜鈴状星雲です。


M27をAOO撮影

M27は、昔コスモス天文台で25cmのMEADEのシュミカセを使って撮影したことがあります。


低F値の明るいシュミカセなのでコマ収差が避けられていないことと、この時は全く気づけなかったのですが、どうやら淡ーい赤や青の領域が周りにあるようなのです。

AOO撮影はナローの中でもシンプルな方で、HαとOIIIの2波長でR、G、BにHα、OIII、OIIIと当てはめると自然な色で(カラーで撮影したような色)出てくるようです。大きさ的にTSA-120の900mmとVISACの1800mmと迷ったのですが、VISACの三角星像が出ると嫌なので、TSA-120にしました。もしかしたらBKP800にコマコレクターでも良かったかもしれません。

カメラはASI294MM Proです。このカメラではM57のRGBフィルターで撮影で10秒露光のラッキーイメージのようなものを試みたのですが、中心星を含めそこそこの解像度になりました。


今回の目的は
  • ナローバンド撮影の感触を掴むこと
  • M27の周りの淡いところを出してみたいこと
です。

フィルターはこれまで星まつりなどでちょくちょく特価品を買い揃えていたもの。大抵は国際光器さんで購入したバーダーの中古やB級品で、サイズは1.25インチです。フォーサーズのASI294MMなので1.25インチで事足りるのですが、これ以上大きなセンサーサイズだとフィルターからまた考えなくてはならなくなります。ここしばらくはフォーサーズとアメリカンサイズフィルターでまずは色々試そうと思っています。また、手持ちの5枚用のZWOのフィルターホイールはRGBで埋まっているので、今回はフィルターを個別にCMOSカメラの先端にとりつけ、1枚ごとに交換します。


撮影

撮影はいつもの通り自宅庭撮り。今の時期、M27は天頂近くの方向にあります。

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撮影はCMOSカメラなのでNINAを使います。撮影中にディザーを使いたいことが理由です。SharpCapも最近はディザーに対応してきてますが、まだこなれきっていない感じです。最近はAPTよりもすっかりNINAという感じです。6Dの場合はBackYardEOSですが、それ以外はNINAといったところでしょうか。

撮影は合計3日に渡りました。いえ、長時間撮影したとかではなく、曇りで撮影時間がほとんど取れなかったというのが実情です。

出にくいと言われている青に目処をつけたかったので、まずは月が出ていないうちに、OIIIの撮影からです。撮影日は9月6日。もう一月近くも前になります。露光時間は5分とし、ゲインは一番得をする120。もしこれで何も出ないようなら、次回はゲインを300にするか、露光時間を10分とかにするかもです。こちらは25枚撮影して18枚使えました。最後は曇って中断です。

対してHαは青より出やすいだろうとタカをくくって、半月期の月がかなり明るい時に撮影しました。というより、最近全然晴れることがなくて、それでもかろじて天気が良かった9月23、24日に渡って撮影しているのですが、両日と月が出ている時です。しかも2日とも曇りに近くて雲越しの像になってしまい、ハロっぽくなったり淡いところが見込みがなさそうでした。結局使えたのは24日の分だけで、枚数で言うと65枚中22枚が使えただけでした。両日もやはり曇って中断です。


各種補正フレームの撮影

上述の通りライトフレームはNINAで撮影しましたが、後日バイアス、ダーク、フラット、フラットダークの各フレームの撮影をSharpCapで撮影して、ビニングの名前の定義の違いで画像処理にトラブったという話を前回の記事で書きました。



でもそれは画像処理になって初めて発覚したことで、撮影自体はなんの問題もなかったです。撮影条件は
  • バイアス: 0.0032ms露光、ゲイン120、500枚
  • ダーク: 300s露光、ゲイン120、31枚
  • フラット: 1s or 16s露光(部屋の明るさに依る)、ゲイン120、50枚
  • フラットダーク: 1s or 16s露光(部屋の明るさに依る)、ゲイン120、50枚
となります。

あえて言うなら、OIIIとHαでフラットフレームを個別に撮っているところくらいでしょうか。もしかしたら一緒にできるかもしれませんが、まだよくわかっていません。フィルターによってムラの出来方が違うと言う話もあるので、念のため各フィルターでフラットフレームを撮っています。そのため、ライトフレームの撮影が数日に渡ってしまったのはラッキーでした。一日での撮影だと、フィルターを交換するたびに途中でフラットを撮らなくてはならなくなります。

これを考えると早めにフィルターホイールに入れてしまった方が良さそうです。今のRGBフィルターを入れ換えるか、8枚入るのを買ってRGBもHα、OIII、SIIも全部入れてしまうか、5枚のをもう一台買ってナローバンドフィルター用に別で作るか、迷ってます。


画像処理

画像処理の最初はいつものようにPixInsightです。ビニングの問題でWeighted Batch PreProcessing (WBPP)ができなかった以外は、極めてストレートフォワードでした。

Hα画像とOIII画像の合成はChannelCombinationを使います。R、G、BにHα、OIII、OIIIをそれぞれ当てはめます。

あとはStarNetで恒星と星雲部のマスクをHα、OIIIと別々に作っておきました。でも結局使ったのはHαのマスクだけでした。最近StarNetのマスク作りはトラブルが少なくなりました。コツはSTFのオートストレッチとHTで恒星がサチり気味なストレッチをかけて、そこにStarNetをかけることです。こうするとかなり綺麗に分離できるようです。

一つトラブルを思い出しました。PCCがどうしても上手くいかないのです。位置特定のPlate solveの方は問題ないのですが、色を決めるところでどうやっても最後エラーで終了してしまいます。かなりパラメータいじったのですが、最後諦めてしまいました。もしかしたらAOOで2色が同じなので、そもそも原理的に出来ないのかもしれません。今後の検証項目です。

ストレッチはArcsinhStretchとMaskedStretchを併用しました。それでもASが強すぎて恒星の色が強く出過ぎたのと、MaskedStretchで恒星がサチらないようにしたので、少し眠い恒星になってしまった気がしています。恒星は多少サチるくらいが鋭く見えて好みかもしれません。

ここまできたら、16bitのTIFFにして、あとはPhotoshopに受け渡します。

炙り出している過程で気づいたのですが、青はまだ出ているものの、赤の出がいまいちはっきりしません。淡いところがどうしてもノイジーになるので、一部DeNoise AIを使いました。


なぜ赤色が弱いのか?

赤が出ない理由ですが、私は単純に月夜の晩に撮影したからかと思っていたのですが、Twitterで先に画像だけ投稿したところ、おののきももやすさんから同じように月夜でもないのに赤が出ないという報告がありました。

さに、gotodebuさんから、そもそも水素のバルマー系列じゃなくて窒素の禁制線が出てるのでHαフィルターだと通りにくいのではと言う指摘もありました。Hαは656.3nm、窒素の禁制線は654.8nm,658.4nmとのことで、ともに2nm程度しか離れていません。今回使ったHαフィルターは7nmです。半値全幅が7nmだとしても、十分中に入っていて7−8割は透過してもおかしくないと思います。gotodebuさんによると、もう少し幅の広いQBPだと赤がはっきり出るとのことなので、一度QBPで撮影してみるのも面白いかもしれません。


結果

さて、画像処理の結果です。M27が見やすいようにトリミングしてあります。

Image09_DBE2_stretched7_cut_crop_b

  • 撮影日: 2021年9月6日21時14分-23時23分(OIII)、9月24日22時13分-9月24日0時12分(Hα)
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: Takahashi TSA-120 + 35フラットナー
  • フィルター: Barder 7nm Hα, 7nm OIII
  • 赤道儀: Celestron CGEM II
  • カメラ: ASI294MM Pro (-10℃)
  • ガイド: f120mmガイド鏡 + ASI120MM mini、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: NINA、露光時間300秒x18枚 = 1時間30分(OIII)、300秒x22枚 = 1時間50分(Hα)
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC、DeNoise AI
目的の一つだった回りの淡いところはそこそこ出ているようです。ただ、やっぱり赤が出ていない気がします。もう少し出てもいいと思うのですが、やはりリベンジ案件でしょうか。

それでも前回のM27の撮影よりははるかに進化しています。2018年11月なので3年くらい前です。
integration_DBE_DBE_PCC_st4_cut

3年前と今回の違いですが、口径は25cmと12cmで半分以下、焦点距離は1600mmと900mm、カメラはカラー常温とモノクロ低温、フィルターなしとナローバンドフィルターなどがです。画像処理の進歩も大きいです。3年前はそこそこ写ったと思っていましたが、比べてみると違いは明らかで、ずいぶん進化したことがわかります。

あと、トリミング前の画像はこちらになります。どのくらいトリミングしたかがわかるかと思います。

Image09_DBE2_stretched7_cut_b

いつものアノテーションです。
Image09_DBE2_stretched7_cut_b_Annotated


まとめ

初めてのナローで、今回は比較的簡単なAOOに挑戦してみました。自宅でもナローなら淡いところも出ることがわかったのは大きな収穫です。ただし月がある場合とない場合ではまだ写りは変わるのかもしれません。

あとトータルの撮影時間も実は大したことありません。いや、時間はかけたのですが使える枚数が少なかったです。倍くらいの露光時間があればもしかしたら劇的に変わるのかもしれません。

天気のせいで日数はかかってしまいましたが、今まで見えなかったものが見えてくると思うとナローバンド撮影もかなり面白いです。AOOにとどまらず、SAOとかにも挑戦してみたいと思います。

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