今回はクワガタ星雲のナローバンド撮影です。私自身ナローバンドはまだよくわからないことが多くて、これまでも結構迷走していました。今回ハッブルパレットについて考えてみて、やっと納得できてきました。
11月20日からの晴れの日の数日間、自宅の庭でε130Dを使って撮影しています。午前0時くらいを境に一晩に前半、後半で2対象、同じものを何日か続けての撮影です。この前のスパゲティ星雲も、今回の記事のクワガタ星雲もその内の一つです。他にもダイオウイカさんや、イルカさんなどが未処理で残ってますが、ダイオウイカさんは露光時間が全然時間が足りていなくて、イルカさんはOIIIはいいのですがHαが強風で全滅だったのでさらに撮り直しです。
平日なので撮影を開始したらあとは寝てしまいます。NINAの自動導入とプレートソルブで放っておいても勝手に対象に向けてくれますし、EAFでピント合わせもしてくれます。天気さえ良ければ、しかもナローなら月夜でも撮影できます。
今回のクワガタさんはスパゲティ星雲が上がってくるまでの前半の、全て月が出ている時間帯での撮影です。そのためナローバンド撮影としましたが、実際どこまで写るのでしょうか?
クワガタ星雲はSh2-157という番号がついています。HαがメインなのでAOO撮影で処理されている場合が多いようですが、SAOでのハッブルパレットで撮影されることも多いようです。今回はせっかくなので象の鼻星雲以来のSIIも撮影しました。今回の結果を見る限りナローバンドなら、月などでかなり明るい状況でも十分炙り出せるようです。
俗にハッブルパレットと呼ばれる画像を見てみると、オレンジと濃い青に寄っているものが主流に見えます。ハッブル望遠鏡オリジナルの創造の柱の場合はまだ緑が残っていますが、JWST(James Webb Space Telescope)の画像になると、さらにオレンジ青ベースが顕著になり、緑が消えていく方向のようです。
この手の色を出すには、これまでの経験上SAO(SIIをred、Hαをgreen、OIIIをblue)で1:1:1で合成をして、PixInsightのSCNRでGreenを1.0で抜いてやると、かなり近い色になります。このことを少し考えてみます。
まず、 SII、Hα、OIIIの中で一番明るいのはHαです。これを最終的に一番出ていないgreenに持っていくのは一見無駄なように思えますが、SCNRの働きを考えると理にかなっているようです。SCNRは「緑の天体というものが実在しないために、画像から緑を除去する」というような説明をされることが多いようです。
そこで、SCNRの定義を探したのですが、いまいち見つかりません。プロテクションの定義はすぐに見つかるのですが、 これはGをどう置き換えるかについてのみの記述で、RとBをどう置き換えているかの記述がどこにも見当たりません。SCNR変換後のRとBを見てみると、両方とも明らかに変換前よりも明るくなっているので、元のG成分がRとBに行っているのは確実です。SCNRは、もう少し正確には余分なG成分をRとBに割り振ると考えた方がよさそうです。
SCNRでGを抜いた画像は以下のようになります。赤とか青にならずに白くなっている部分も多いので、Gを全く無くしているというよりは、RGBのバランスが取れるようにGをRとBに配分したと考えてよさそうです。
試しに、PixelMathで
恒星の赤ハロがSCNRとPixelMathのなぜこんなに違うのか理由はわかりませんが、星雲自体の色の傾向は正しそうです。念の為StarNet2で背景だけ分離してみます。上がSCNR、下がPixelMathです。まだ少し赤系が違うところはありますが、大まかにはオレンジと青で傾向はあっていそうです。
途中、StarNet2が消えていたのに気づいたので再インストールしました。再インストール方法はこのページの中くらいを見てください。 PixInsightをアップデートした際か、BXT2をインストールした際に消えてしまったのかと思いますが、MacのM1ですが、今の所StarNet2の再インストールで、問題なくBXT2とAI2もAI4も共存できています。
ハッブルパレット、もしくはJWST画像の2極の色の「オレンジ」はRとGが混ざった「黄色」と「R」を混ぜたものと考えると、反対側の「濃い青」はBとGが混ざった「Cyan(明るい水色)」と「B」を混ぜたものと考えることができます。こう考えると、一番明るいHαをSAOとして最初Gに置いてやって、そのHαを余すことなくRにもBにも配分して、しかもカラーバランスが取れるようにGにも残すというやり方は、一番情報の多いHαを余すことなく使っているという点において、かなり理に適っているといえるのかと思います。ところで、Rを消すように最初HαをRに置くこともできますし、Bを消すように最初HαをBに置くこともできるはずです。ハッブルパレットが「Gを消す」方向としているのは、やはり緑の天体は基本存在しないということなのでしょうか。
あ、当然ですが本物のハッブル望遠鏡は我々アマチュアが使うフィルターとは全然別のフィルターを使っています。ですが、コンセプトとしてはそこまで間違っていない気はしますし、少なくとも我々アマチュア天文の範囲では上のように考えてハッブルパレットをまねるのは、持てるリソースを最大限利用するという観点からはそれほどおかしいことではないのかと思います。
さて、これまでずーっといまいち納得できなくて迷走してきた3波ナローバンド合成ですが、
今回の検証で自分的には色々納得ができてきたので、今後はSAOで合成して、SCNRで緑を抜くという方向で進め、撮影もどんどんしていきたいと思います。PixelMathの方は恒星の色がうまく出なかったので、ここからはSCNRの方を標準とします。
画像処理中に気づいたのですが、下の方の真ん中少し右のところに、なんとバブル星雲が入っているではありませんか!
ただし、さすがにε130Dの焦点距離430mmだとかなり小さいです。今回bin2で撮っていたので、解像度的には少し不利です。そのため、Drizzleのx2で処理し直して、そこにBXTをかけてみました。BXTは新しいAI4も検証したのですが、これは別記事で書きたいと思います。以前の検証で、Bin2でもDrizzleなどで解像度を増し、そこにBXTをかけることで、BXTのまだ残っている余地を引き出すようなことができることがわかっています。BXT2のAI4バージョンでの効果はまだわからないので、少し試してみました。
左がdrizzle x1、右がdrizzle x2にそれぞれBXT2のAI4をかけたものになります。ただし、左のdrizzle x1は元画像が小さいので、Photoshopで同じ大きさにしたときに再サンプリングされていますので、意図せずして解像度が上がっています。それでもこの程度です。これだけ見てもdrizzle x2にBTX2でも解像度をさらに引き出しているように見えます。
画像処理ですが、ハッブルパレットの検証に時間がかかったこと以外は、それ以降特に困ることはありませんでした。淡いモクモクを引き出すためにABEなどを使ってのフラット化に気をつけて処理し、途中BXTを注意深くかけ細部を出します。今回は色を出すために ArcsinhStretchでストレッチして、あとは仕上げでPhotoshopにひきわたしてさらに彩度を上げていくだけです。結果は以下のようになりました。
今回もっとオレンジと濃い青になるかと思ったのですが、思ったより緑成分も残っていますし、オレンジもどちらかというと金色に近く、また濃い青もシアンに近い青になりました。これはSII成分やOIII成分が比較的強かったからなのでしょうか?色バランスはもう少し場数を踏む必要がありそうです。
淡い部分については、月明かりといえどさすがナローバンド撮影、かなり出ているかと思います。クワガタという名前ですが、牙が2本以上あるように見えてあまりクワガタっぽくならないところが残念です。星雲本体だけでなく、周りにもたくさんのHαが広がっていて、非常に面白い領域かと思います。
下部の真ん中より少し左に、マジェンタの小さな天体が見えています。最初これ何か失敗したのかと思ったのですが、どうも本当に存在している天体のようです。拡大してみると、マジェンタとシアン色に分かれているのですが、これはSIIとOIII画像にのみ存在していて、Hαでは何も見えていないことに起因するみたいです。でもなんの天体か調べても全然分かりませんでした。もしかしたら撮影ミスの可能性もまだあるのですが、どなたか同じ領域を撮影した方とかいらっしゃいますでしょうか?
NINAで自動導入した際にSh2-157で指定すると、左牙の根元の明るい部分が中心になるようです。そのため、画角として星雲本体が少し上に行き過ぎている印象を受けます。もう少し下に移動してもよかったかもしれません。drizzleで2倍の解像度になっていて分解能だけは十分にあるので、下の画像のようにクワガタ星雲本体が中心となるようにトリミングしてみました。「クワガタ星雲」とあらわにいう場合はこちらの方がいいのかもしれません。
ついでにいつものアノテーションです。他のシャープレス天体もたくさん写っていますね。Sh2-152, 153, 156, 158, 159, 162, 163くらいでしょうか。Sh2-157は確かに牙の根元の明るい部分を指すようなので、Sh2-157がクワガタ星雲というよりは、Sh2-157の周りにクワガタ星雲があると言った方がいいのでしょうか?英語だとLobster claw nebulaと言うそうですが、StellariumでもSh2-157がLobster claw nebulaそのものと出ています。
うーん、この左下のマジェンタの天体、アノテーションでも出てきません。何なのでしょうか?ゴミとかと判明するまでは撮れたものなので残しておくことにします。
あと、上部真ん中より左のバブル星雲部分を切り出して、もう少し見えやすくなるように処理しました。
まだ拡大できますが、下くらいが限界でしょうか。
これがどれくらいの領域かというと、下の画像の緑枠で囲ってあるくらいの場所です。
こんな小さなエリアですが、今回はε130Dの分解能と、Drizzle x2、BXTが相まって、チートクラスの解像度になっています。焦点距離430mmでここまで出るのでびっくりです。でもこれもいつか長焦点で撮ってみたいので、リベンジ案件としておきたいと思います。
久しぶりのSAO合成でしたが、やっとハッブルパレットも納得できてきたこともあり、ちょっとおもしろくなってきました。でもまだ色合いが違う気がしていてい、むしろ以前の象の鼻星雲の時の方がよりハッブルパレットに近い気がしています。
それでもかなり淡いところまで出たので、結構満足です。あとクワガタ星雲でメジャーなAOOも時間があればやっておきたいと思いますが、これはまた別の記事に。
最近忙しくて、休前日とか休日にしか画像処理やブログ書きの時間を取ることができません。未処理の画像がまだ溜まっていますし、途中になっているノイズ解析とかもあります。やりたいことは溜まっているので、ブログ記事のネタには困っていませんが、記事自体が最近長くなっているのでもっとシンプルに速く書けないかとも思っています。天気はしばらくあまり期待できなのいので、残っているネタをひとつづつ片づけていこうと思っています。
他にも物書きが溜まっていたり、正月は再び北陸のどこかのスターバックスで天文密会が予定されていたりで、年末年始の休みも予定でいっぱいになりそうです。
最近機材欲は減っている気がします。ε130Dが調子が良さそうなので、しばらくはこのまま続けて、飽きてきたらまたSCA260に戻るのかと思います。現状が430mmでフルサイズ、1300mmでフォーサーズの2種がメインで、ちょっと間が空いていてその中間がないので、もしかしたら手持ちのBKP200を撮影に持ち出すかもしれません。焦点距離800mmとちょうど中間くらいで、F4と明るいので効率よく撮影できそうです。撮影できるまでに時間はかかるかもしれませんが、コマコレはあるのでそこそこの画像にはなるはずです。コマコレがあってもやはり周辺では乱れると思いますが、BXT2の威力がかなりすごいので、その効果込みだと十分実用レベルになる気がします。
撮影
11月20日からの晴れの日の数日間、自宅の庭でε130Dを使って撮影しています。午前0時くらいを境に一晩に前半、後半で2対象、同じものを何日か続けての撮影です。この前のスパゲティ星雲も、今回の記事のクワガタ星雲もその内の一つです。他にもダイオウイカさんや、イルカさんなどが未処理で残ってますが、ダイオウイカさんは露光時間が全然時間が足りていなくて、イルカさんはOIIIはいいのですがHαが強風で全滅だったのでさらに撮り直しです。
平日なので撮影を開始したらあとは寝てしまいます。NINAの自動導入とプレートソルブで放っておいても勝手に対象に向けてくれますし、EAFでピント合わせもしてくれます。天気さえ良ければ、しかもナローなら月夜でも撮影できます。
今回のクワガタさんはスパゲティ星雲が上がってくるまでの前半の、全て月が出ている時間帯での撮影です。そのためナローバンド撮影としましたが、実際どこまで写るのでしょうか?
クワガタ星雲はSh2-157という番号がついています。HαがメインなのでAOO撮影で処理されている場合が多いようですが、SAOでのハッブルパレットで撮影されることも多いようです。今回はせっかくなので象の鼻星雲以来のSIIも撮影しました。今回の結果を見る限りナローバンドなら、月などでかなり明るい状況でも十分炙り出せるようです。
ハッブルパレットの理由
俗にハッブルパレットと呼ばれる画像を見てみると、オレンジと濃い青に寄っているものが主流に見えます。ハッブル望遠鏡オリジナルの創造の柱の場合はまだ緑が残っていますが、JWST(James Webb Space Telescope)の画像になると、さらにオレンジ青ベースが顕著になり、緑が消えていく方向のようです。
この手の色を出すには、これまでの経験上SAO(SIIをred、Hαをgreen、OIIIをblue)で1:1:1で合成をして、PixInsightのSCNRでGreenを1.0で抜いてやると、かなり近い色になります。このことを少し考えてみます。
まず、 SII、Hα、OIIIの中で一番明るいのはHαです。これを最終的に一番出ていないgreenに持っていくのは一見無駄なように思えますが、SCNRの働きを考えると理にかなっているようです。SCNRは「緑の天体というものが実在しないために、画像から緑を除去する」というような説明をされることが多いようです。
そこで、SCNRの定義を探したのですが、いまいち見つかりません。プロテクションの定義はすぐに見つかるのですが、 これはGをどう置き換えるかについてのみの記述で、RとBをどう置き換えているかの記述がどこにも見当たりません。SCNR変換後のRとBを見てみると、両方とも明らかに変換前よりも明るくなっているので、元のG成分がRとBに行っているのは確実です。SCNRは、もう少し正確には余分なG成分をRとBに割り振ると考えた方がよさそうです。
SCNRでGを抜いた画像は以下のようになります。赤とか青にならずに白くなっている部分も多いので、Gを全く無くしているというよりは、RGBのバランスが取れるようにGをRとBに配分したと考えてよさそうです。
試しに、PixelMathで
- R: A*0.33+O*1
- G: A*0.33
- B: A*0.33+O*1
恒星の赤ハロがSCNRとPixelMathのなぜこんなに違うのか理由はわかりませんが、星雲自体の色の傾向は正しそうです。念の為StarNet2で背景だけ分離してみます。上がSCNR、下がPixelMathです。まだ少し赤系が違うところはありますが、大まかにはオレンジと青で傾向はあっていそうです。
途中、StarNet2が消えていたのに気づいたので再インストールしました。再インストール方法はこのページの中くらいを見てください。 PixInsightをアップデートした際か、BXT2をインストールした際に消えてしまったのかと思いますが、MacのM1ですが、今の所StarNet2の再インストールで、問題なくBXT2とAI2もAI4も共存できています。
ハッブルパレット、もしくはJWST画像の2極の色の「オレンジ」はRとGが混ざった「黄色」と「R」を混ぜたものと考えると、反対側の「濃い青」はBとGが混ざった「Cyan(明るい水色)」と「B」を混ぜたものと考えることができます。こう考えると、一番明るいHαをSAOとして最初Gに置いてやって、そのHαを余すことなくRにもBにも配分して、しかもカラーバランスが取れるようにGにも残すというやり方は、一番情報の多いHαを余すことなく使っているという点において、かなり理に適っているといえるのかと思います。ところで、Rを消すように最初HαをRに置くこともできますし、Bを消すように最初HαをBに置くこともできるはずです。ハッブルパレットが「Gを消す」方向としているのは、やはり緑の天体は基本存在しないということなのでしょうか。
あ、当然ですが本物のハッブル望遠鏡は我々アマチュアが使うフィルターとは全然別のフィルターを使っています。ですが、コンセプトとしてはそこまで間違っていない気はしますし、少なくとも我々アマチュア天文の範囲では上のように考えてハッブルパレットをまねるのは、持てるリソースを最大限利用するという観点からはそれほどおかしいことではないのかと思います。
さて、これまでずーっといまいち納得できなくて迷走してきた3波ナローバンド合成ですが、
今回の検証で自分的には色々納得ができてきたので、今後はSAOで合成して、SCNRで緑を抜くという方向で進め、撮影もどんどんしていきたいと思います。PixelMathの方は恒星の色がうまく出なかったので、ここからはSCNRの方を標準とします。
バブル星雲、でも小さい!
画像処理中に気づいたのですが、下の方の真ん中少し右のところに、なんとバブル星雲が入っているではありませんか!
ただし、さすがにε130Dの焦点距離430mmだとかなり小さいです。今回bin2で撮っていたので、解像度的には少し不利です。そのため、Drizzleのx2で処理し直して、そこにBXTをかけてみました。BXTは新しいAI4も検証したのですが、これは別記事で書きたいと思います。以前の検証で、Bin2でもDrizzleなどで解像度を増し、そこにBXTをかけることで、BXTのまだ残っている余地を引き出すようなことができることがわかっています。BXT2のAI4バージョンでの効果はまだわからないので、少し試してみました。
左がdrizzle x1、右がdrizzle x2にそれぞれBXT2のAI4をかけたものになります。ただし、左のdrizzle x1は元画像が小さいので、Photoshopで同じ大きさにしたときに再サンプリングされていますので、意図せずして解像度が上がっています。それでもこの程度です。これだけ見てもdrizzle x2にBTX2でも解像度をさらに引き出しているように見えます。
画像処理と結果
画像処理ですが、ハッブルパレットの検証に時間がかかったこと以外は、それ以降特に困ることはありませんでした。淡いモクモクを引き出すためにABEなどを使ってのフラット化に気をつけて処理し、途中BXTを注意深くかけ細部を出します。今回は色を出すために ArcsinhStretchでストレッチして、あとは仕上げでPhotoshopにひきわたしてさらに彩度を上げていくだけです。結果は以下のようになりました。
「Sh2-157: クワガタ星雲」
- 撮影日: 2023年11月21日19時5分-21時22分、11月22日18時27分-22時5分
- 撮影場所: 富山県富山市自宅
- 鏡筒: TAKAHASHI製 ε130D(f430mm、F3.3)
- フィルター: Baader:Hα 6.5nm、OIII 10nm、SII6.5nm、
- 赤道儀: Celestron CGEM II
- カメラ: ZWO ASI6200MM Pro (-10℃)
- ガイド: f120mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
- 撮影: NINA、bin2、Gain 100、露光時間5分、Hα: 28枚、OIII: 24枚、SII: 23枚の計75枚で総露光時間6時間15分
- Dark: Gain 100、露光時間5分、温度-10℃、117枚
- Flat, Darkflat: Gain100、露光時間 Hα: 1秒、OIII: 1秒、SII: 1秒で全て64枚
- 画像処理: PixInsight、Photoshop CC
今回もっとオレンジと濃い青になるかと思ったのですが、思ったより緑成分も残っていますし、オレンジもどちらかというと金色に近く、また濃い青もシアンに近い青になりました。これはSII成分やOIII成分が比較的強かったからなのでしょうか?色バランスはもう少し場数を踏む必要がありそうです。
淡い部分については、月明かりといえどさすがナローバンド撮影、かなり出ているかと思います。クワガタという名前ですが、牙が2本以上あるように見えてあまりクワガタっぽくならないところが残念です。星雲本体だけでなく、周りにもたくさんのHαが広がっていて、非常に面白い領域かと思います。
下部の真ん中より少し左に、マジェンタの小さな天体が見えています。最初これ何か失敗したのかと思ったのですが、どうも本当に存在している天体のようです。拡大してみると、マジェンタとシアン色に分かれているのですが、これはSIIとOIII画像にのみ存在していて、Hαでは何も見えていないことに起因するみたいです。でもなんの天体か調べても全然分かりませんでした。もしかしたら撮影ミスの可能性もまだあるのですが、どなたか同じ領域を撮影した方とかいらっしゃいますでしょうか?
NINAで自動導入した際にSh2-157で指定すると、左牙の根元の明るい部分が中心になるようです。そのため、画角として星雲本体が少し上に行き過ぎている印象を受けます。もう少し下に移動してもよかったかもしれません。drizzleで2倍の解像度になっていて分解能だけは十分にあるので、下の画像のようにクワガタ星雲本体が中心となるようにトリミングしてみました。「クワガタ星雲」とあらわにいう場合はこちらの方がいいのかもしれません。
ついでにいつものアノテーションです。他のシャープレス天体もたくさん写っていますね。Sh2-152, 153, 156, 158, 159, 162, 163くらいでしょうか。Sh2-157は確かに牙の根元の明るい部分を指すようなので、Sh2-157がクワガタ星雲というよりは、Sh2-157の周りにクワガタ星雲があると言った方がいいのでしょうか?英語だとLobster claw nebulaと言うそうですが、StellariumでもSh2-157がLobster claw nebulaそのものと出ています。
うーん、この左下のマジェンタの天体、アノテーションでも出てきません。何なのでしょうか?ゴミとかと判明するまでは撮れたものなので残しておくことにします。
あと、上部真ん中より左のバブル星雲部分を切り出して、もう少し見えやすくなるように処理しました。
まだ拡大できますが、下くらいが限界でしょうか。
これがどれくらいの領域かというと、下の画像の緑枠で囲ってあるくらいの場所です。
こんな小さなエリアですが、今回はε130Dの分解能と、Drizzle x2、BXTが相まって、チートクラスの解像度になっています。焦点距離430mmでここまで出るのでびっくりです。でもこれもいつか長焦点で撮ってみたいので、リベンジ案件としておきたいと思います。
まとめ
久しぶりのSAO合成でしたが、やっとハッブルパレットも納得できてきたこともあり、ちょっとおもしろくなってきました。でもまだ色合いが違う気がしていてい、むしろ以前の象の鼻星雲の時の方がよりハッブルパレットに近い気がしています。
それでもかなり淡いところまで出たので、結構満足です。あとクワガタ星雲でメジャーなAOOも時間があればやっておきたいと思いますが、これはまた別の記事に。
日記
最近忙しくて、休前日とか休日にしか画像処理やブログ書きの時間を取ることができません。未処理の画像がまだ溜まっていますし、途中になっているノイズ解析とかもあります。やりたいことは溜まっているので、ブログ記事のネタには困っていませんが、記事自体が最近長くなっているのでもっとシンプルに速く書けないかとも思っています。天気はしばらくあまり期待できなのいので、残っているネタをひとつづつ片づけていこうと思っています。
他にも物書きが溜まっていたり、正月は再び北陸のどこかのスターバックスで天文密会が予定されていたりで、年末年始の休みも予定でいっぱいになりそうです。
最近機材欲は減っている気がします。ε130Dが調子が良さそうなので、しばらくはこのまま続けて、飽きてきたらまたSCA260に戻るのかと思います。現状が430mmでフルサイズ、1300mmでフォーサーズの2種がメインで、ちょっと間が空いていてその中間がないので、もしかしたら手持ちのBKP200を撮影に持ち出すかもしれません。焦点距離800mmとちょうど中間くらいで、F4と明るいので効率よく撮影できそうです。撮影できるまでに時間はかかるかもしれませんが、コマコレはあるのでそこそこの画像にはなるはずです。コマコレがあってもやはり周辺では乱れると思いますが、BXT2の威力がかなりすごいので、その効果込みだと十分実用レベルになる気がします。