ほしぞloveログ

天体観測始めました。

カテゴリ:調整・改造 > 光軸

完璧ではないですが、やっと3分露光で満足のいく星像になってきました。でも深刻な問題が発覚です。

少し晴れたので撮り増し

この日は明るいうちからSCA260の光軸調整 。どうも光軸がずれている疑いがあったからです。

赤道儀に載せて遠くの南東方向にある山の上の鉄塔を導入し、常時取り付けてあるASI294MM Proの画像を見るのですが、像が結構ブレるのでやはり光軸があっていない様子。画面を見ながら副鏡を合わせようとしますが、結局どのネジをどの方向に回せばいいのか目処が立たず諦めました。

カメラをホイールとオフアキごと外して、アイピース口に付け替えコリメーターを挿します。こちらの光軸合わせはとても簡単で、マニュアル通りに副鏡と主鏡を合わせますが、5分とかかりません。コリメータで見る限り実際に結構ずれていて、副鏡とさらには主鏡も合わせ直してから再びカメラで同じ鉄塔を見てみると、かなり満足するくらいの像になっています。この像と比べると、やはり最初に触る前に見た像は常時ブレていてお世辞にもいいとは言えず、副鏡を触る前にすでに光軸がずれていたということかと思います。

ここまでの結果から、コリメータで合わせることで(少なくとも撮像を見て闇雲に調整するよりも)十分な光軸調整ができると結論づけていいかと思います。

この状態で夜を待ち、導入がてら調整時と同じ南東方向のリゲルを見ると、ディフラクションリングらしきものが見えます。光軸があったからなのか、シーイングがいいからなのか、いずれにせよ色々試せるチャンスです。リゲルBもきちんと写りました。ちなみにその後シリウスを見ましたが、シリウスBまでは見ることができませんでした。まだ低空だったこともあり、目で見ても少し瞬いて見えたので、劇的にシーイングがいいというわけではないと思いますが、そこまで悪くはないようです。

この状態で前回同様トール兜星雲をHαとOIIIで撮影します。撮影途中の画像を見ても、おそらく前回のよりもシャープに見えます。

スタック直後のHα画像です。
masterLight_BIN-2_EXPOSURE-180.00s_FILTER-HA_Mono
明らかに微恒星までシャープになっています。

前回と今回で比べてみましょう。切り出しはPixInsightのAberrationInspectorを使いました。

前回のHα: 恒星がボケボケといったところでしょうか
masterLight_FILTER_HA_Mono_integration_mosaic

今回のHα: 恒星が明らかに小さくシャープですが、その一方暗い星は透明度が悪かったせいか写っていません
masterLight_FILTER_HA_Mono_integration1_mosaic

この差が光軸のせいなのか、シーイングのせいなのかは切り分けは難しいですが、少なくともこの鏡筒は今回のレベルで星像を出せるポテンシャルがあるということがわかります。実際、今回のレベルで撮れればそこそこ満足です。

採択率もHα: 10枚/13枚 = 77%、OIII : 14枚/17枚 =  82%なので、 3分間露光での撮影はまあ合格と言っていいでしょう。

と、ここまでだけ見ると十分な結果なのですが、その後の撮影で深刻な問題があることが判明しました。


赤道儀を反転させると...

南天時を超えて赤道儀を反転させた後です。そのまま撮影したのですが、画像を確認して愕然としました。星像が目に見えて崩れているのです。念のためピントを合わせ直しました。中央でピントを合わせても四隅がかなりずれてしまいます。

masterLight_FILTER_HA_Mono_integration_mosaic

一見揺れでブレたように見えますが、これが同じような星像で何枚も続くので、おそらくブレではなく光軸ずれかと思います。

その後、再度赤道儀を反転させ元の状態に戻して撮影してみると、完全ではないですがそこそこ星像は戻ります。なので少なくとも反転で光軸がズレているのはほぼ確定でしょう。


どこがずれたのか?

まだどこの部分がズレたのかは不明です。3つの可能性があるかと思います。
  1. 可能性が高いのが副鏡。以前コメントでタカsiさんが指摘してくれていたように、鏡筒上部のアルミのバーを外して強度的に不足している可能性があります。
  2. 主鏡自体の重量で支えきれていなくて傾いた可能性がもう一つ。
  3. 接眼部には対物側からEAF、オフアキ、フィルターホイール、冷却CMOSカメラとそこそこの重量が搭載されているので、ここで撓んでしまった可能性も否定できません。
最初に書いたように、コリメータを使うことで光軸のズレは明らかに判明します。明るいうちに赤道儀を交互に反転させて、コリメータで見ながらどこがズレているのかある程度わかるかと思います。
  1. もし上部プレートを外したことによる強度不足が問題になった場合にはいろいろと難しくなってきます。プレートを戻さずに赤道儀を反転するたびに光軸調整をするのか、
  2. プレートを戻してまた揺れと戦うことになるのか、
  3. プレートを戻してもっと強度のある赤道儀を真剣に考えるか
主鏡が問題の場合でも念のため上部プレートは戻して確認することになる思います。あまり無いとは思いますが、万が一接眼部だった場合はプレートは関係ないはずなので今のままで、接眼部の補強とかになるのかと思います。

明日の日曜の明るいうちに試そうと思います。実は最初テーブルの上で鏡筒を上下逆さにすることで試そうとも思ったのですが、赤道儀に載せて南天を見た場合左側、もしくは右側の片側が固定されて吊るされたような状況になるので、再現のためには赤道儀に乗せることは必須かと思います。今日土曜は小雨で赤道儀を外に出すことができませんでしたが、明日は曇りなのでなんとか外に出して検証してみるつもりです。

前回の記事で主鏡止めマスクを作りました。



再び主鏡部を鏡筒に嵌め込み、ネジで固定したのですが、位置がいまいち確定しないので今回改めて光軸の取り直しです。


前回光軸調整の問題点

まず前回の光軸調整の反省です。前回は一度光軸調整が終わったと思って、カメラを180度回したら全くズレてしまったので、カメラにつけたCマウントレンズの光軸がずれていると考えました。そのためカメラをアダプタに押し付けながらクルクル回転させて画面の回転中心を求め、それがターゲットの副鏡固定ネジの穴の周りを回転するように、VISAC接眼部の角度を調整しました。ただ、カメラを回転させた時の中心を基準にするのであまり安定せず、この部分の誤差は大きかったはず。この誤差を小さくできないか考えてみました。


コリメータを有効利用

持っている機器で使えそうなものはレーザーを使わない一般的なタイプのコリメータです。覗き込む所の真ん中に小さな穴が開いているので、接眼部「中心から」のみ覗くことができます。また、内部に円柱の真ん中に穴を開けて斜め45度でカットしてある金属部があり、接眼部から覗いた時にこれが描く同心円から光軸調整ができるようになっています。

IMG_3279

また、コリメータの先端に十字のワイヤーが張ってあるので、覗いた先の方の中心もわかります。覗き口の中心と十字の中心が確定するので、軸が精度よく出るという仕組みです。よく考えてありますね。

これを接眼部に取り付けて、のぞき穴からカメラで見てみます。

IMG_3263

この方法の利点は、カメラで写った画像の中心点を全く気にしなくていいことです。前回は画像の中心点に、合わせたい対象の中心が来なかったことが精度を疑う要因になっていました。そのためカメラに取り付けたレンズの光軸がずれていると仮定しました。

今回の方法では、カメラで見ている「近く」と「遠く」の中心が確定するので、映っている画像の中心点は気にしなくていいです。その代わり、カメラが接眼部の「ある程度中心」から覗いているという保証が必要です。例えば極端な場合、カメラが鏡筒の横から見ていたらどうやっても十字ワイヤーと副鏡固定ネジ穴一致することはありません。これについては、コリメーターの覗き口の中心の「小さな穴」が保証してくれます。これがカメラの覗く方向をうまく制限してくれるというわけです。その証拠に、カメラのガタつきを利用して多少見ている角度を変えても、写っている画面での十字ワイヤーと副鏡固定ネジ穴の関係は全く変化なしでした。


接眼部の調整時の問題

いろいろ試したのですが、大きく分けて2つの合わせ方を検討する必要があると考えました。

 1. まず一つ目。VISACの接眼部ネジを調整して、
  • この十字ワイヤーの中心と、
  • 副鏡固定ネジの穴中心を
合わせるやり方。実際に合わせた結果が以下の写真になります。十字ワイヤーはわかりやすいように45度回転させてスパイダーとずらしています。

IMG_3260

確かに、十字ワイヤーが副鏡固定ネジの穴中心になるように合っていますが、これだと明らかにスパイダーの十字が左いずれていて、一番外側のバッフルの中心ともずれていることが分かります。


 2. もう一つの方法は、
  • 主鏡の先についている黒い筒(以下バッフルと呼びます)の先の円の中心と、
  • 副鏡固定ネジの穴中心が
重なればいいのではという考え方です。コリメータを使わない場合は、おそらくこの方法がよりどころになるはずです。この考えで合わせたのが下の写真になります。

IMG_3257


ところが、この合わせ方ではコリメーターについている十字ワイヤーがずれてしまうのです。中心のすぐ右にピントはボケていますが黒い線が見えているのがわかると思います。縦のスパイダーのすぐ右のところにもずれたワイヤーが見えています。


少し議論

上の二つの方法ですが、どちらが正しくて何がずれているのでしょうか?

ここでは、十字ワイヤーはかなり精度が出ていることが確認できていたので、バッフルの方がずれていると考えました。最初の1の方法が正しくて、2はずれたバッフルに合わせてしまっているというわけです。要するに、接眼部に対してバッフルが垂直に固定されていないかもしれないと考えたわけです。これは十分にあり得ます。単純に考えても、その垂直の精度よりも、十字ワイヤー ~ 幅鏡間の方が距離も長いので精度が出るでしょう。

写真では十字ワイヤーが副鏡固定ネジの穴中心に合っているように撮影していますが、十字ワイヤーの中心精度もそこまで正確ではなくて、コリメーターを回転させると十字の中心が円を描くので、実際には十字中心が描く円の中心が副鏡固定ネジの穴中心になるように合わせました。

ここまでさらっと書いていますが、もしこの実測が正しいならこれはバッフルの初期設置角度が十分でないというある意味驚愕の結果になります。いや、十分か不十分かどうかは星像を見て判断すべきです。オーバースペックの可能性もあります。いずれにせよ、ユーザーレベルでこれが認識できるというのは、おもしろいです。

というのは、今回はカメラを使って拡大して見ていますが、実際にはかなり小さな部分を見ているので、これを目で直接見た場合はこの二つの違いはほとんど認識できません。どちらの場合も十分あっていると判断してしまうと思います。カメラだけだと前回のように精度が出ませんでした。コリメータとカメラを併用して初めてよくわかるようになったということです。


副鏡の角度調整

次にやったことは、副興を取り付けてその角度を調整することです。これは写真を見ながら説明します。

IMG_3268

まず大前提ですが、上の写真に写っているものは全て副鏡面内に写っているものです。さらに上の写真は全て調整し終わった後のものです。調整前はいろいろとバラバラですが、写真を撮るのを忘れてしまいました。なのでちょっとややこしいですが、言葉で説明します。

副鏡に写っているものは何かというと
  1. 真ん中の黒丸がコリメータの中心の穴。
  2. その外のXになっている十字線がコリメータについているワイヤー。
  3. 十字の端にある線で書かれている円がコリメータの斜め45度にカットされている金属部分の外径。
  4. その円の外の狭い明るい部分が、コリメータのバッフル部分。
  5. 明るい部分の外側のしばらく黒くなっているところは接眼部から出ている筒、すなわちバッフルです。
この中で、最初4のところがしばらく正体がわかりませんでした。コリメータを外してよく確認してやっと理解できました。コリメータのお尻側から覗いて見てみると、筒の長い部分を見ているだとわかります。これを副鏡に反射させると実質遠くから見ていることになり、白い金属部分に比べて、いくつもの同心円に見えるつの部分がどんどん狭く見えて、4のように極僅かのエリアとして見えているということです。

IMG_3281_cut

でもこのエリアはすごく重要で、この4のことを理解していると副鏡をどう合わせたらいいかがわかってきます。

まず試しに、副鏡のネジを緩めてグラグラの状態で適当に動かしてみて、画面のどこが動くかよく見てみました。3と5の内側の相対的な位置が変わって4の面積が変わります。要するに、コリメータの筒に対して副鏡が垂直になっているかどうかが3と5の内側を見ることによってわかるというわけです。なので今回はこの3と5の内側が同心円になるように中心を合わせることにしました。

副鏡の調整が終わった段階では、5のバッフルの内側の円の中心と外側の円の中心はずれていましたが、最初にバッフルが接眼部に対して垂直についていないと考えたので、不思議はありません。ここではさらに外側のスパイダーの中心も、1とはずれています。


主鏡の調整

その後、主鏡の角度を調整すると、スパイダーの位置を移動することができるので、スパイダーの十字の中心が1と一致するようにします。これを終えたものが上の写真となります。

ここでもう一つの謎に気づきました。主鏡調整でスパイダーを合わせるとなぜか5のバッフルの外側の円の中心が自動的に1に一致し、全ての円が同心になるのです。バッフルが接眼部に対して垂直についていないと考えたのはどこにいってしまったのか?バッフルの外側の円はズレてもいいはずです。

この謎はもっと広角で手前から輝度を落として見ることで解決しました。 iPhoneで撮ったものですが、以下のように見えました。
IMG_3280_cut

明るい外の景色が写っている部分が、主鏡を副鏡の反射を通して見たものです。そこの外端の方にずれている円が見えると思いますが、これが接眼部から伸びるバッフルを(反射じゃなくて)直接見ているものです。これは結局バッフルの向きが接眼部と垂直でないことを表していて、ここだけは同心円にはなり得ませんでした。このことは最初に仮定したバッフルの向きが接眼部と垂直でないということに矛盾しません。

これで調整は終わりとしました。いくつか途中の写真が撮り切れていないですが、いったん合わせた状態を崩したくないので、これで星像でのテストをしてみます。一番まともそうなVISAC調整のページのかなり最後の方で述べられているのですが、結局最後は微妙な調整が重要だとのことです。




まとめ

今回の記事はちょっとややこしくて申し訳ないです。色々紆余曲折していて、いくつか重要な写真を撮るのを忘れてしまっています。

それでも接眼部の調整は明らかに前回より精度は出ているはずで、バッフルの取り付け誤差を議論できるくらいになっています。副鏡の調整は最初かなり迷ったのですが、最終的にはきちんと理解できて、全体としてはかなりの精度で合わせ込みができたのかと思います。それでもやはり最後は星を見て調整することが必要です。

でも梅雨が終わってほんの少し晴れた以外、お盆以前から本当に晴れてくれません。予報ではまだしばらくグズつくようようです。さすがにそろそろ晴れて欲しいです。


蛇足1: レーザーコリメータについて

ちなみにレーザータイプのコリメータも持っています。こちらも悪くないですが、VISACに取り付けてコリメータを回転させると、レーザーの光が小さな円を描きます。よく見てみると出射光の形も円ではなくかなり細長い円弧形をしています。それよりは普通のコリメータの方が精度が出そうでしたので、今回はレーザーコリメータを使うことは諦めました。

でも回転させて描いた円の中心を真の中心と思えば、レーザーコリメーターも使うことができるはずです。本当は分解してレーザーダイオードの向きを調整できればいいのですが、これはまたいつかの機会に。


蛇足2: Cマウントレンズの光軸

前回の光軸調整で、Cマウントレンズの光軸がずれているのではと仮定しましたが、実際に簡易測定してみました。

VISACとは独立に、CMOSカメラに取り付けた50mmのCマウントレンズを窓についている網戸に向けます。

IMG_3207

ちょっとわかりにくいかもしれませんが、赤の十字線の真ん中だけ網戸に汚れがあって黒く目立っています。

この状態からカメラについているレンズのみを、ネジを緩めて180度回転させます。ガタガタするので、そのガタつきの範囲を見るために手で上下、左右いっぱいにずらしてみました。

cmountlens1

明らかに左にずれていることが分かります。左に2マス、下に0.75マス程度ずれていることが分かります。

さらにもう180度回転させて、合計360度一回転した状態にして同じことをします。
cmountlens2
左に0.25マス、下に0.6マス程度のズレになります。

ガタつきの誤差もあるのですが、180度の時と360度の時で有意に差があると言っていいと思います。今回はレンズのみを回転させてこのズレが出ているので、言い換えるとやはりレンズで光軸がずれていると言っていいと思います。

この赤丸で表されている範囲は、最初にやったVISACに取り付けてみている範囲(角度)と同じです。前回の光軸調整の時にずれた範囲と比較しても、横方向に主にずれていること、またずれている量もよく似ているので、やはりこのズレはレンズの光軸のズレからきていると言ってそれほどおかしくないと思います。



このページのトップヘ