以前、SHG700用に新しい10mm長のスリットを手に入れて、TSA120で分光撮影を試みたのですが、カメラのセンサー拡大も必要で、手持ちのASI294M Proを使ってみたところ、ROIの設定が限定されていてい結局使えなかったという記事を書きました。新しいIMX183系のカメラを買えば済む問題なのですが、最近フェニックスを買ってしまったので、しばらくはお預け状態になっています。
でも捨てる神あれば拾う神ありで、ASI294MM ProのROIを任意に設定する方法があることがわかりました。SharpCapのフォーラムに投稿されていたのですが、やはり悩みは全く同じで、新しいスリットで手持ちのカメラを使えないかというのが発端です。
それによると、Windowsのタスクバーの検索欄に「regedit」などと入れて、出てきた「レジストリエディター」をクリックして立ち上げます。
「\HKEY_CURRENT_USER\Software\AstroSharp Limited\SharpCap\4.1」まで行き、「CustomResolutions」をダブルクリックします。「値のデータ」に例えば「;8000x180」などを加えます。
SharpCapが立ち上がっていた場合は再起動して、ASI294MMProを接続し直すと、設定したROIが選択できるようになっています。
最初8000x180で試しましたが、seeファイルの大きさが10数GBと大きくなってしまったので、もう少し攻めて結局5400x150に落ち着きました。一時、縦幅を120まで攻めたのですが、Hα線をうまく読み出せないことがあったので少し余裕を持たせています。頑張れば5000x130くらいでも実用的になるかと思います。でも、撮影時のファイルサイズが大きいのはそんなに問題ではなくて、JSol'Exで処理するときにserファイルを時間、サイズともに同クオリティで小さくするオプションがあるので、それを使うと結局どんなサイズで撮影してもほぼ同じ小さいサイズで保存することができます。今回も小さくしたファイルでもきちんとHα画像を再現することを確かめました。撮影時7GBくらいのファイルが1.5GBくらいの大きさになるので、撮影時にさえディスクが溢れないように気を付けておけば、処理した後はディスク容量などそこまで問題になることはなさそうです。
問題はフレームレートです。8000x180で70fps、5400x150で76fpsでした。fpsは縦幅のみに依存していて、横幅はほとんど関係ないみたいです。縦幅を120にしてももう大きくは上がらず80fps程度で高止まりです。これまでのG3M678Mは縦幅にも依りますが、実測で450-570fps程度は出ていたので、これまでの6分の1以下のスピードと相当遅くになります。
これは1枚あたりの撮影時間に直結します。出来上がる画像の横の空間分解能はserファイルの撮影枚数で決まります。縦幅が5400ピクセルなので、横幅も同じくらいのピクセル数にすると考えると、ざっくり5400枚撮影する必要があります。撮影時間はこれをフレームレートで割った、5400/76=71秒くらいは必要なわけです。実際には太陽が映っている部分はもう少し小さいとしても、これまでFC-76とG3M678Mだと1回16秒くらいで撮影を済ましていたことを考えると、大幅な撮影時間の増大となります。
また、時間をかけて撮影する必要があるということで、赤道儀のスキャンスピードも16倍から4倍程度にまで落とす必要があります。以前、16倍と32倍で試したのですが、赤道儀としてはどうも速いスピードのほうが安定っぽかったので、ここまでスピードを落としてうまく撮影できるかも心配になります。
最初、1回あたり90秒でスキャンしてテスト撮影していました。一応太陽全景は入るには入っていたのですが、連続撮影のための「SHGスクリプト」の初期位置を最初に太陽中央に置くと、撮影時間ギリギリになってやっと太陽の終わりが入るくらいになってしまいます。その一方太陽の写り始めは録画開始時刻のはるか後になってしまいます。できた動画は前半は何も映っていなくて、後半にのみ太陽が入っているという時間的にもファイルサイズ的にも無駄が多い状態になってしまいました。
本来このSHGスクリプトでは、太陽中央を初期位置にするので正しいはずなのですが、赤道儀のスキャンスピードが4倍と遅いのが原因なのか、それともスクリプトにまだ対応しきれていないところがあるのかわかりませんが、とりあえずあらかじめ初期位置をずらすことで回避することにしました。具体的には、太陽の進む方向に先回りしたところ(具体的には赤道儀のWestボタンを押して太陽が見えなくなるところから、16倍速で10回ボタンを押すくらい離れたところ)に初期位置を設定してスクリプトを開始すると、動画の真ん中の時間帯に太陽が入ります。この設定で動画の長さを60秒くらいまで短くすることができ、前後5秒くらい余裕が残る程度になりました。これで撮影動画をJSol'Exで処理すると太陽の縦横比が0.98と出たので、ちょうどいいくらいのスピードでしょう。例えば縦横比が0.5とかだと、赤道儀のスピードが速過ぎて潰れたような太陽になってしまい、それを無理に円形にするので、解像度が出ないというわけです。
結局これらの
下の画像は、テスト中に撮影した30枚くらいのがぞうのなかから、30分間くらいの間に撮影した10枚をスタックしたものになります。
残念ながらこの日はかなりの強風で、さらにシーイングも見るも無惨な日でした。特に分光撮影ではスキャン時間の間の風による鏡筒のブレの影響は結構深刻で、画像自体の分解能はまだ議論できるレベルではないと思います。それでも口径がこれまでの76mmから120mmになって分解能が得している様子はある程度伺うことができているように見えます。今回はとりあえず撮影ができることがわかったということで、細かい比較は今後余裕が出た時にしようと思います。
ちなみに、フェニクスでSharpCapのライブスタックで同じような時間帯に撮影したものが下になります。この画像はライブスタックでの簡易撮影ということと、シーイングが相当悪かったこともあり、分解能は前回より相当落ちてしまっています。
先の分光撮影の画像と比較したいのは、波長分解能(波長透過幅)です。白く明るいところはプラージュと呼ばれている領域です。このプラージュ以外にも、先の分光の撮影ではもっと広い領域に白いモヤモヤしたものが写っています。これは波長分解能が相当良くなると見えてくるもので、私的にはこのモヤモヤがどれだけ見えているかで波長透過幅どれくらい狭いかを評価する指標としています。
また、先の分光撮影の方が黒いダークフィラメントがより濃く見えるのも、波長分解能がより細かい証拠で、背景光の影響がより少なくなるためによりコントラストがよくなります。
白いモヤモヤ部分ですが、どのように呼べばいいのか、少なくとも私はまだ名前を知りません。波長分解能がものすごく良くなってから初めてわかるものなので、これまであまり認識されていなかったのかもしれません。どなたかこの名前がわかる方いらっしゃいませんでしょうか?フェニクスはそのモヤモヤが少しですが、実際に見えているところがすごいです。エタロンですが、昔のものよりも性能が確実に上がっているのがよくわかります。
ここら辺の詳しい話は、以前SH700で波長透過幅が分光よりも広いエタロンの写り具合を再現した時の記事で詳しく議論しています。
今回のフェニックスも同程度の写りかと思うので、エタロンの性能としては前回お借りしたフェニックスと大きな差はないものと思われます。フェニクスエタロンの波長透過特性は、そのうちに測定するつもりです。これまでの手持ちのPSTと比べてどれくらい差があるのか、とても楽しみです。
とうとう、SHG700+長めの新スリットと、より口径の大きいTSA-120と、手持ちでセンサ面積の広いASI294MM Proで、太陽全景の分光撮影が成功しました。このカメラのフレームレートが遅いのでかなり苦労しましたが、カメラを新規で購入するまでには至らずになんとかなったので、まあよかったでしょう。
これで以前計算した結果によると、空間分解能は2.2 arcsecから1.4 arcsecと大幅に改善されたことになります。その一方、波長分解のは0.091Åから0.105Åと少し悪くなっていますが、そこまで大きな違いではないでしょう。
トータルとしては大きな改善なのですが、今回の撮影では天候のせいでまだその性能を引き出せたとは言えないので、風もなくシーイングがいい日を狙って再度評価してみたいと思います。
ASI294MM Proが使えるかも!
でも捨てる神あれば拾う神ありで、ASI294MM ProのROIを任意に設定する方法があることがわかりました。SharpCapのフォーラムに投稿されていたのですが、やはり悩みは全く同じで、新しいスリットで手持ちのカメラを使えないかというのが発端です。
それによると、Windowsのタスクバーの検索欄に「regedit」などと入れて、出てきた「レジストリエディター」をクリックして立ち上げます。
「\HKEY_CURRENT_USER\Software\AstroSharp Limited\SharpCap\4.1」まで行き、「CustomResolutions」をダブルクリックします。「値のデータ」に例えば「;8000x180」などを加えます。
SharpCapが立ち上がっていた場合は再起動して、ASI294MMProを接続し直すと、設定したROIが選択できるようになっています。
実際の撮影
最初8000x180で試しましたが、seeファイルの大きさが10数GBと大きくなってしまったので、もう少し攻めて結局5400x150に落ち着きました。一時、縦幅を120まで攻めたのですが、Hα線をうまく読み出せないことがあったので少し余裕を持たせています。頑張れば5000x130くらいでも実用的になるかと思います。でも、撮影時のファイルサイズが大きいのはそんなに問題ではなくて、JSol'Exで処理するときにserファイルを時間、サイズともに同クオリティで小さくするオプションがあるので、それを使うと結局どんなサイズで撮影してもほぼ同じ小さいサイズで保存することができます。今回も小さくしたファイルでもきちんとHα画像を再現することを確かめました。撮影時7GBくらいのファイルが1.5GBくらいの大きさになるので、撮影時にさえディスクが溢れないように気を付けておけば、処理した後はディスク容量などそこまで問題になることはなさそうです。
問題はフレームレートです。8000x180で70fps、5400x150で76fpsでした。fpsは縦幅のみに依存していて、横幅はほとんど関係ないみたいです。縦幅を120にしてももう大きくは上がらず80fps程度で高止まりです。これまでのG3M678Mは縦幅にも依りますが、実測で450-570fps程度は出ていたので、これまでの6分の1以下のスピードと相当遅くになります。
これは1枚あたりの撮影時間に直結します。出来上がる画像の横の空間分解能はserファイルの撮影枚数で決まります。縦幅が5400ピクセルなので、横幅も同じくらいのピクセル数にすると考えると、ざっくり5400枚撮影する必要があります。撮影時間はこれをフレームレートで割った、5400/76=71秒くらいは必要なわけです。実際には太陽が映っている部分はもう少し小さいとしても、これまでFC-76とG3M678Mだと1回16秒くらいで撮影を済ましていたことを考えると、大幅な撮影時間の増大となります。
また、時間をかけて撮影する必要があるということで、赤道儀のスキャンスピードも16倍から4倍程度にまで落とす必要があります。以前、16倍と32倍で試したのですが、赤道儀としてはどうも速いスピードのほうが安定っぽかったので、ここまでスピードを落としてうまく撮影できるかも心配になります。
最初、1回あたり90秒でスキャンしてテスト撮影していました。一応太陽全景は入るには入っていたのですが、連続撮影のための「SHGスクリプト」の初期位置を最初に太陽中央に置くと、撮影時間ギリギリになってやっと太陽の終わりが入るくらいになってしまいます。その一方太陽の写り始めは録画開始時刻のはるか後になってしまいます。できた動画は前半は何も映っていなくて、後半にのみ太陽が入っているという時間的にもファイルサイズ的にも無駄が多い状態になってしまいました。
本来このSHGスクリプトでは、太陽中央を初期位置にするので正しいはずなのですが、赤道儀のスキャンスピードが4倍と遅いのが原因なのか、それともスクリプトにまだ対応しきれていないところがあるのかわかりませんが、とりあえずあらかじめ初期位置をずらすことで回避することにしました。具体的には、太陽の進む方向に先回りしたところ(具体的には赤道儀のWestボタンを押して太陽が見えなくなるところから、16倍速で10回ボタンを押すくらい離れたところ)に初期位置を設定してスクリプトを開始すると、動画の真ん中の時間帯に太陽が入ります。この設定で動画の長さを60秒くらいまで短くすることができ、前後5秒くらい余裕が残る程度になりました。これで撮影動画をJSol'Exで処理すると太陽の縦横比が0.98と出たので、ちょうどいいくらいのスピードでしょう。例えば縦横比が0.5とかだと、赤道儀のスピードが速過ぎて潰れたような太陽になってしまい、それを無理に円形にするので、解像度が出ないというわけです。
結局これらの
- ROI5400x150
- フレームレート76fps
- スキャンスピード4倍速
- 撮影時間60秒
- 初期位置が太陽端から16倍速で10回ボタンを押したところ
実際の撮影画像
下の画像は、テスト中に撮影した30枚くらいのがぞうのなかから、30分間くらいの間に撮影した10枚をスタックしたものになります。
残念ながらこの日はかなりの強風で、さらにシーイングも見るも無惨な日でした。特に分光撮影ではスキャン時間の間の風による鏡筒のブレの影響は結構深刻で、画像自体の分解能はまだ議論できるレベルではないと思います。それでも口径がこれまでの76mmから120mmになって分解能が得している様子はある程度伺うことができているように見えます。今回はとりあえず撮影ができることがわかったということで、細かい比較は今後余裕が出た時にしようと思います。
同日のフェニックスで撮影した画像
ちなみに、フェニクスでSharpCapのライブスタックで同じような時間帯に撮影したものが下になります。この画像はライブスタックでの簡易撮影ということと、シーイングが相当悪かったこともあり、分解能は前回より相当落ちてしまっています。
先の分光撮影の画像と比較したいのは、波長分解能(波長透過幅)です。白く明るいところはプラージュと呼ばれている領域です。このプラージュ以外にも、先の分光の撮影ではもっと広い領域に白いモヤモヤしたものが写っています。これは波長分解能が相当良くなると見えてくるもので、私的にはこのモヤモヤがどれだけ見えているかで波長透過幅どれくらい狭いかを評価する指標としています。
また、先の分光撮影の方が黒いダークフィラメントがより濃く見えるのも、波長分解能がより細かい証拠で、背景光の影響がより少なくなるためによりコントラストがよくなります。
白いモヤモヤ部分ですが、どのように呼べばいいのか、少なくとも私はまだ名前を知りません。波長分解能がものすごく良くなってから初めてわかるものなので、これまであまり認識されていなかったのかもしれません。どなたかこの名前がわかる方いらっしゃいませんでしょうか?フェニクスはそのモヤモヤが少しですが、実際に見えているところがすごいです。エタロンですが、昔のものよりも性能が確実に上がっているのがよくわかります。
ここら辺の詳しい話は、以前SH700で波長透過幅が分光よりも広いエタロンの写り具合を再現した時の記事で詳しく議論しています。
今回のフェニックスも同程度の写りかと思うので、エタロンの性能としては前回お借りしたフェニックスと大きな差はないものと思われます。フェニクスエタロンの波長透過特性は、そのうちに測定するつもりです。これまでの手持ちのPSTと比べてどれくらい差があるのか、とても楽しみです。
まとめ
とうとう、SHG700+長めの新スリットと、より口径の大きいTSA-120と、手持ちでセンサ面積の広いASI294MM Proで、太陽全景の分光撮影が成功しました。このカメラのフレームレートが遅いのでかなり苦労しましたが、カメラを新規で購入するまでには至らずになんとかなったので、まあよかったでしょう。
これで以前計算した結果によると、空間分解能は2.2 arcsecから1.4 arcsecと大幅に改善されたことになります。その一方、波長分解のは0.091Åから0.105Åと少し悪くなっていますが、そこまで大きな違いではないでしょう。
トータルとしては大きな改善なのですが、今回の撮影では天候のせいでまだその性能を引き出せたとは言えないので、風もなくシーイングがいい日を狙って再度評価してみたいと思います。



































