最近SIGMA fpに触る機会がありました。Webカメラとして使おうと思っているのですが、せっかくなので少しだけ電視観望してみました。レンズはキットの45mm F2.8です。初めてのフルサイズのセンサーでの電視観望です。
SIGMA fp
あまりカメラに詳しくない私が語っても、何の説得力もないのですが、SIGMAという名前は星の写真を撮る人なら誰でも必ず一度は聞いたことがあるはずです。星景、星家写真用(もちろん一般用途にも素晴らしいです)に適した素晴らしいレンズを数多く出しています。
レンズが有名で、カメラ市場においてはCanonやNikonほど大きなメーカーではありませんが、これまでカメラ本体も何台も出しています。そんな中でも、SIGMA fpは昨年7月に発表され、その小ささと、機能を絞り切った潔さですごく話題になりました。もちろんその時点で好きな人はかなり気にしていたはずですが、春からのコロナ禍において状況が一変しました。
Zoom会議などのWeb会議がメジャーになると、SIGMA fpがWebカメラになるフルサイズのカメラとして一気に話題になったのです。会議に参加するときに自分の写りが全然変わると言うのです。私は天体用にはEOS 6Dがあるので、そこまで注目はしてなかったのですが、今回Webカメラとして会議で使うこととなり実際に使ってみてWebカメラとしてのインパクトに驚きました。それとは別に、もしかしたら天体用にもどうだろうかと思ったのが今回の記事です。
一眼レフ、ミラーレスカメラを利用したWebカメラの現状
PCに繋ぐカメラとしてみた場合、Sigma fpの最大の特徴は、何もドライバーとかも入れなくてWebカメラとして働くこと。これは一眼レフ、ミラーレス含めて、フルサイズのカメラとしては唯一で、Webカメラとして使いたいならほぼ一択となります。
EOSも5月頃からWebカメラとして動かすことはできるようになってきました。米国CanonがCanon EOSシリーズをWebカメラ化するドライバーをリリースしたのですが、EOSの場合にはからなずPCにドライバーをインストールする必要があります。
私の持っている6Dは一見上のドライバーではサポートされてないのですが、実際に試してみるとWebカメラとしてきちんと動いて、WindowsではZoom上でも使えたりします。ただし、Mac版はまだ相当制限があり、例えばZoomで使うのは難しいです。
Nikonも8月に入ってWebカメラ化するソフトを公開しましたが、私はNikonユーザーではないので試してはいません。Windows10以外は未対応など、制限がかなりありそうです。
Sonyもつい最近、8月後半に入って同様のソフトを出しましたが、Nikon同様に制限が多いみたいです。
いずれにせよ状況としては、SIGMA fpが唯一そのままWebカメラとして使え独走体制、ついで大きく離れてCanon、さらにNikon、Sonyと続いているような状態で、WebカメラとしてはSIGMA fpはほぼ一強と言っていい状態です。
SharpCapとSIGMA fp
PCやMacからも普通のWebカメラとして認識されるSIGMA fpなので、SharpCapからも当然Webカメラとしてきちんと認識されます。
ただし、色々制限もあります。例えば露光時間は25fpsが最長。しかも、SharpCapから露光時間を変えることはできまえん。かと言ってそのままカメラ本体を触って露光時間を変更しようとしても、これもできません。一度PCとの接続を切って、初めてカメラ本体で露光時間を操作できるようになります。あと、多分バグなのですが、設定を25fpsにしてもどうこうするとSharpCap上で15fpsとなる時があります。少しでも長い方がいいので、今回のテストはこのままで進めました。
ISOはデフォルトでは25600まで、拡張すると102400まで増やせます。でも流石に10万台はノイジーなので、25600で試しました。
とにかくこの状態でSharpCapに画像を取り込むことができます。実はこれ大きな一歩で、フルサイズの一眼レフ、ミラーレス含めて、SharpCapで生で取り込めたのはSigma fpが初めてではないかと思います。
以前HUQさんがα7SのHDMI出力をUSBに変換しwebカメラとして認識させる機器を利用して、SharpCapに取り込んでたりしてましたが、生映像というわけにはいかず、いったん変換が入ります。
また、Webカメラ化した6DもWindows上のZoomなどでは使えても、SharpCapで認識させようとすると、少なくとも私のところの状況ではエラーメッセージが出て使うことはできませんでした。
実際の取り込み画像
いずれにせよ、SIGMA fpはフルサイズセンサーでSharpCapで動くので、いやがおうでも期待してしまうわけです。
上の写真のようにAZ-GTiにつけて試してみます。アンバランスについていますが、経緯台モードで、横長の画像にしようとすると不安定な取り付けになってしまいます。しかもこれ、AZ-GTiのファームが最新ではないので、レンズが南向きになるのが初期状態になってしまっていて、上下逆になります。なんでこんなことになるかというと、アルカスイスプレートを写真で見て左側につけようとするとUSBケーブルが干渉して取り付けられないからです。ここら辺はL字フレームを買って取り付けるなどして解決すると思います。
さて、SIGMA fpに、キットで付いてきた45mm F2.8のレンズを取り付け、CINE(動画)モードでWebカメラ状態にして、SharpCapで実際に取り込んでみます。下がその時の画面をいつものようにiPhoneで撮影したものなります。まあ、とりあえずあまり期待しないでください。
これくらいが精一杯です。白鳥座付近を写してます。真ん中右下くらいにデネブとサドルがあります。左にイルカ座が見えてます。
もじゃもじゃがよく見えるはずの場所ですが、まず条件が極めて悪いです。満月の日、光害カットフィルター無しなので、相当背景が明るいです。そもそもこんな日にテストするなという話ですが、とりあえず一番最初の軽いテストですでに大きな問題が発覚したような状態です。
ちなみに、30秒露光で普通のSTILL(静止画)モードで写した撮って出しJPEGが下のようになりました。流れてしまっているので、四隅の星像の評価などは保留とします。
明るすぎる状況なのです。RAW画像を処理して炙り出しても
これも適当な画像処理なので、評価は保留ですが、最低限20秒露光すると何かモジャモジャは少しは見えるみたいです。
ちょっとだけ検討
一番の問題は、Webカメラにすると露光時間を全く長く取れないことです。最も長くした場合で15fpsなので、高々0.068秒露光でです。上はそれを55フレームスタックした画面になります。感度のいいASI294MCとかでも最低800ミリ秒くらいで、ゲインも相当上げて電視観望します。
しかもこのfpsだと、速すぎてSharpCapで全てのフレームをキャプチャーしきれなくて、半分近くのフレームを取りこぼしている状態になります。かけてる実時間分さえも成果として画像に出てこないというわけです。
それでも心眼クラスでSharpCapの画面をよーく見ると、サドル付近はほんの少しだけ淡い模様が見える気もしないこともないかもというくらいの感じです(笑)。いずれにせよ、露光時間が最長でも15fpsと短過ぎるのでは電視観望は無理と言わざるを得ません。
ちなみに、Sony α7Sが動画モードで1/4秒まで露光できます(これでも短いと思っていて、もっと長くできるならと思ってます)。これだけでSIGMA fpの露光時間と比べて4倍くらいの違いがあります。さらにISOの最大値が40万越えで、これもSIGMA fpの最大ISOと比べると4倍の違い。さらにさらにピクセルサイズが5.9umと8.4umで面積比だと2倍の違い、全部掛けるとと32倍の差になります。これだけ違うと、流石に電視観望用途ではα7Sに遠く及ばず、厳しいと言わざるを得ません。
シグマさーん!
でも露光時間ってソフトでどうこうなると思うのですが、どうなのでしょうか?いっそのこと30秒くらいまで動画モードで露光できるようにしてくれると一気にα7Sを抜けるのですが、シグマさんどうでしょうか?本気で考えてくれませんか?それでも、リアルタイム性では負けてしまいますが、いい勝負くらいにはなる気がします。
今回の結論と、SIGMA fp本来の魅力
今回試して分かったのは、電視観望をするためには動画モードの露光時間が全然足りないことでした。満月の日にテストするのもどうかと思いましたが、多分別の暗い日で試したとしても相当状況は厳しいはずです。
少しというか、かなり期待していましたが、結論としては電視観望には今のままでは厳しいかなと。今一度、光害防止フィルターなどを入れて、流石にもう少し暗い空で試してみようと思ってますが、それでも露光時間がこれだけ短いと電視観望特性については結論は変わらないと思います。
もちろん、星景写真とかは別ですよ。静止画モードで十分な露光時間をとり、シグマお得意の超高性能のレンズで撮る分には、十分過ぎる画が撮れるはずです。
でも思ったのですが、このSIGMA fpは普段使いにあってこそ、真に生きるのではと。だってこの大きさ、すごい魅力ですよ。私は天体改造した大きなカメラしか持ってないので、昼間の明るい写真を撮ることはほとんどないし、あまり撮ろうとも思ってなかったんです。でもこのカメラとなら持ち歩いていろんなところを撮ってみたくなります。軽くて、最低限の研ぎ澄まされた機能、必要なら機能を足すことのできる拡張性。一言で言うと、カッコイイです。手持ちのNIKKORやPentaxの6x7のオールドレンズと一緒に撮っても面白いと思います。
会議でのWebカメラとしての機能も申し分ないです。ここでの話題ではないので詳しくは書きませんが、レンズを交換できるWebカメラの威力は、実際に試してみると破壊的です。一度、手持ちのSamyangの14mをつけて超広角のWebカメラにしたのですが、もうすごい臨場感です。
今回テストで使っただけですが、これは持っていて普段使いで欲しくなるカメラです。所有欲も満たされます。使ったらわかる、本当に魅力的なカメラです。
急遽状況が一転
実は今回のテスト、少し前に試したのですが、記事を書くのをもたもたしている間にSharpCapがまだテストリリースながら3.3βへとアップデートしました。このバージョンでは一眼レフカメラのサポートがされてます。最低限試したところ、6DでLive Stackまでできるようです。これはこれまで長いこと望んでいた電視観望をフルサイズで安価に楽しめることを意味します。
とりあえずこれから色々テストするので、詳しいことは次回以降の記事で。