ここしばらく彗星にかかりきりでしたが、明日の日曜の夜が、短時間ですが月の出ない時間に彗星が残るので、最後の大きなチャンスでしょうか。徐々にいつもの天文ライフに戻りそうなので、ブログ記事としてはSWAgTi関連に戻りたいと思います。
10月初めに少し晴れ間があり、前々回記事でSynScan Proでのプレートソルブによるアラインメント、前回記事で微動極軸ユニットをテストしてみました。今回の記事は、いよいよこれらの機能を実践で使用しての撮影です。
今回はさらに、SWAgTiの撮影ソフトとしてSharpCapの代わりにNINAを使ってみました。これまで縞ノイズを避けるためにディザリングをかなり苦労をしてきたのですが、NINAでも同様にうまく動くのでしょうか?NINAまで使えると、SWAgTi撮影での選択肢の幅が大きく広がるので、かなり嬉しいです。
ここでのポイントは
まず、新アイテムの微動極軸ユニットを使って、前回に引き続き再度SharpCapで極軸をとってみます。直接RedCat51とUranus-C Proで見ている画像を使いました。その際にピントもきちんと出しておきます(ピント固定リングに初めて気づいてたので、いい位置で固定しました。これまでは片付けで鏡筒に蓋をするときに押し込んでしまい、毎回ずらしてしまっていました。)。
前回の記事にあるように、ネジの安定性もあり、今回も非常にスムーズに極軸を調整することができ、1度目は0.3分角程度に合わせました。もちろんSharpCapの評価はExcellentです。その後、折り返しで2度目の極軸調整を行いましたが、その時の誤差も1分角を切るくらいで、十分に実用レベルの精度です。その後の撮影された画像をチェックしましたが、ガイド無しで焦点距離250mm、180秒露光で星像の流れは見ている限り全く気になりません。歩留まりも雲とかで除いたもの以外は100%です。少なくとも、微動極軸ユニットを使う前の精度は出ていると言っていいと思いますので、実用レベルで十分使うことができるとの判断です。
次に、SynScan Proのプレートソルブ機能を使ってみました。今回のターゲットはRedCat51とUranus-C Proの画角からと、これまで撮影したことがない新規天体ということで、「NGC281:パックマン星雲」と決めました。ワンスターアラインメントでの初期アラインメントを終えて、すぐにSynMarix Alignに移ります。
以前繋いだカメラがあると、自動的に最初からカメラ接続までされるようなので、特に何か設定するでもなく、ただ「Run」ボタンを押すだけでした。ポイント数は今回も2点です。一番少ない数を選んでいるのは短時間に終わらせたいということもありますが、すでに極軸をきちんと合わせてあるので、位置さえ決まればあとは変に高度な追尾をする必要がないという意図もあります。
最初の1点目はやはり鏡筒が動かずに単に画像を撮り、プレートソルブも問題なく終わります。2点目は鏡筒が30-40度くらい適当な方向に動いてから撮像し、プレートソルブします。完了後はそこの位置から動かないので、この時点ではどこか適当なあさっての方向を向いています。でも、もし2点目で適当な方向に向いたときに星がある方向でなかったらどうなるのでしょうか?今のところはまだそんなケースには遭遇してませんが、当然エラーか何かになるのかと思います。その際、どうやり直すのかは少し興味があります。
プレートソルブによるアラインメントが終わったら、SynScan Proでパックマン星雲を導入します。導入後、NINAを立ち上げて「撮像」タブでライブモードで循環撮影をオンにして確認しますが、ものの見事にど真ん中に入っていました。
本当は、この後にNINAでプレートソルブをして、SynScan Proとの接続の安定性を見るべきだったのですが、今回は撮影の方を優先させたかったので、この時は試しませんでした。でもその後、別の日の馬頭星雲の撮影の際、NINAのプレートソルブをやってみましたが、SharpCapのようにSynSca Proとの接続が不安定になるようなことはなかったので、NINA上ならプレートソルブも自由に使えそうだということがわかりました。
これでSWAgTiで使えるプレートソルブに関してはSynScan ProとNINAの2つの選択肢があることになります。という違いがあるので、使用目的も少し違ってきますが、(心持ちちょっとだけ特殊な使用方法である)SWAgTiにとっては、選択肢が増えることは非常にありがたいことです。
すでにターゲット天体がかなり真ん中に入っているので、この時点で自動追尾をSynScan ProからSWATに切り替えてしまいます。ここでチェックすべきことは、SynScan Proの自動追尾を切っても、NINAからAZ-GTiをコントロールができるかどうか?です。まず「架台」のところで赤道儀として「SynScan Apps」を選択し接続します。10秒ほどするとASCOM仕様の十字ボタンが画面に出てくるので、NINAの「撮像」タブでカメラの画像を見ながら方向ボタンを押してみます。すると、自動追尾なしでも星が見事に動くので、まずは第一関門突破です。
次に一番肝心な、NINAでオートガイド無しのディザーができるかどうか?です。少し前に調べたことによると、「Direct Guider」という機能を使うことで、ビルトインディザリングというのができるらしくて、今回の目的にあっていそうです。
実際に、
「Direct Guider」を使うためには、左の「機材」タブの中の「ガイド」で「Direct Guider」を選択します。普段PHD2とかを選ぶところです。設定する箇所はほとんどなく、何ピクセルディザーするかくらいでしょうか。デフォルトは5ピクセルですが、効果をはっきり見たいために今回は20ピクセルとしました。
以前のSharpCapでのディザーは、SynScan Proの自動追尾がオフになった時点でディザー信号がAZ-ZTiのモーターに伝わらなくなるという問題がありました。方向ボタンの信号はきちんと伝わるのに、ディザー信号だけは伝わらないのです。SharpCapの時はバージョンアップで解決されたみたいなのですが、NINAでも同様の問題がないとも限りません。とりあえず撮影の準備だけして、といってもレガシーシーケンサーでLIGHTフレームを露光時間を180秒にして、必要枚数を指定して、ディザーをオンに指定するだけです。実際にはガイドはなくて、フォーカサーも、フィルターホイールもないので、設定はとても簡単です。
そうそう、今回NINAにUranus-C Proを接続するのは初めてだったのですが、SharpCapでのゲインとオフセットの設定がレジストリなどに記録されているようで、最初から同じ値になっていました。ソフト缶を移動して同じカメラを使う場合は、設定が残っていたりするので、これは一方では便利だったりするのですが、変な設定が残ることもあり得るので、注意が必要です。
NINAは撮影に特化されているだけあって、デフォルトでの各種値が撮影用にあらかじめ設定されているのがありがたいです。例えばファイル形式はfitsが最初から選ばれているとかです。もちろん変更することもできるのですが、撮影時のドタバタでミスが少なくなるような設計方針にとても好感が持てます。他にも、カメラのゲインやオフセットはカメラ機器のところで1箇所指定すれば、あとはここの撮影で同じ設定になるのでミスしにくいとか、センサー温度が十分下がっていないと警告が出るとか、撮影のことを第一に考えてくれています。これがSharpCapは撮影もできるし電視観望もできますが、撮影だけを考えるとNINAを使いたくなります。
さて、実際に画像を1枚撮影し終わって、いよいよディザリングが開始されるはずです。まずはNINAの下部のメッセージのところにはディザリングされていると表示されているので、何か動こうとはしているようです。でもまだ実際にうまくいっているかわかりません。実際の確認は、ディザリングが終わって、次の1枚の撮影を3分待って、プレビューが出た時にきちんと位置がずれているかを見てからです。
さて、結果を見てみると
ものの見事にディザー分ずれていました!!!これで、NINAもSWAgTiで使えることが判明しました。バンザーイ!
その後の撮影は順調そのもので、21時過ぎから午前4時頃まで、約7時間の露光を安定に済ますことができました。途中の子午線反転はマニュアルで行う必要がありますが、SWATに自動追尾を引き渡したためにAZ-GTiの位置情報は既にずれてしまっているので、一度ホームポジションに戻して、一からSynScan Proでアラインメントをしました。でもSynScan Proでのプレートソルブアラインメントもすぐにすますことができるので、反転もほとんど苦にならなく短時間で済ませて、そのまま撮影を実行しました。
朝になってファイルをチェックしましたが、途中から雲が出てきて、それでも4時間半くらいの画像を使うことができました。その時の一番最後の画像です。一晩このクオリティーで撮れているので、天体写真として十分使えるレベルの画像を撮影することができていると思います。
画像処理に関しては、また長くなるので次の記事に回します。
今回、NINAでの撮影が選択肢に加わり、SWAgTiの可能性がかなり広がってきました。極軸微動ユニット、SynMarix Alignの導入も安定した撮影体制につながっています。
まだまだ進化過程のSWAgTiですが、実用かどうかでいうならもう完全に実用レベルです。手軽で稼働率が高いので、今後の可能性を求めて、まだまだいろんなことを試していこうと思っています。
10月初めに少し晴れ間があり、前々回記事でSynScan Proでのプレートソルブによるアラインメント、前回記事で微動極軸ユニットをテストしてみました。今回の記事は、いよいよこれらの機能を実践で使用しての撮影です。
今回はさらに、SWAgTiの撮影ソフトとしてSharpCapの代わりにNINAを使ってみました。これまで縞ノイズを避けるためにディザリングをかなり苦労をしてきたのですが、NINAでも同様にうまく動くのでしょうか?NINAまで使えると、SWAgTi撮影での選択肢の幅が大きく広がるので、かなり嬉しいです。
ここでのポイントは
- NINAでガイドなしのディザリングができるのか
- NINAのプレートソルブは動くのか、またSharpCapの時のように不安定にならないか
撮影準備
まず、新アイテムの微動極軸ユニットを使って、前回に引き続き再度SharpCapで極軸をとってみます。直接RedCat51とUranus-C Proで見ている画像を使いました。その際にピントもきちんと出しておきます(ピント固定リングに初めて気づいてたので、いい位置で固定しました。これまでは片付けで鏡筒に蓋をするときに押し込んでしまい、毎回ずらしてしまっていました。)。
前回の記事にあるように、ネジの安定性もあり、今回も非常にスムーズに極軸を調整することができ、1度目は0.3分角程度に合わせました。もちろんSharpCapの評価はExcellentです。その後、折り返しで2度目の極軸調整を行いましたが、その時の誤差も1分角を切るくらいで、十分に実用レベルの精度です。その後の撮影された画像をチェックしましたが、ガイド無しで焦点距離250mm、180秒露光で星像の流れは見ている限り全く気になりません。歩留まりも雲とかで除いたもの以外は100%です。少なくとも、微動極軸ユニットを使う前の精度は出ていると言っていいと思いますので、実用レベルで十分使うことができるとの判断です。
次に、SynScan Proのプレートソルブ機能を使ってみました。今回のターゲットはRedCat51とUranus-C Proの画角からと、これまで撮影したことがない新規天体ということで、「NGC281:パックマン星雲」と決めました。ワンスターアラインメントでの初期アラインメントを終えて、すぐにSynMarix Alignに移ります。
以前繋いだカメラがあると、自動的に最初からカメラ接続までされるようなので、特に何か設定するでもなく、ただ「Run」ボタンを押すだけでした。ポイント数は今回も2点です。一番少ない数を選んでいるのは短時間に終わらせたいということもありますが、すでに極軸をきちんと合わせてあるので、位置さえ決まればあとは変に高度な追尾をする必要がないという意図もあります。
最初の1点目はやはり鏡筒が動かずに単に画像を撮り、プレートソルブも問題なく終わります。2点目は鏡筒が30-40度くらい適当な方向に動いてから撮像し、プレートソルブします。完了後はそこの位置から動かないので、この時点ではどこか適当なあさっての方向を向いています。でも、もし2点目で適当な方向に向いたときに星がある方向でなかったらどうなるのでしょうか?今のところはまだそんなケースには遭遇してませんが、当然エラーか何かになるのかと思います。その際、どうやり直すのかは少し興味があります。
撮影ソフトにNINAを使う
プレートソルブによるアラインメントが終わったら、SynScan Proでパックマン星雲を導入します。導入後、NINAを立ち上げて「撮像」タブでライブモードで循環撮影をオンにして確認しますが、ものの見事にど真ん中に入っていました。
本当は、この後にNINAでプレートソルブをして、SynScan Proとの接続の安定性を見るべきだったのですが、今回は撮影の方を優先させたかったので、この時は試しませんでした。でもその後、別の日の馬頭星雲の撮影の際、NINAのプレートソルブをやってみましたが、SharpCapのようにSynSca Proとの接続が不安定になるようなことはなかったので、NINA上ならプレートソルブも自由に使えそうだということがわかりました。
これでSWAgTiで使えるプレートソルブに関してはSynScan ProとNINAの2つの選択肢があることになります。
- SynScan Proの方は、プレートソルブで精度を出してから自動導入で、自動導入後の補正はしない
- NINAの方は、自動導入時の精度はあまりないが、自動導入してからプレートソルブで補正して天体を真ん中に入れる
すでにターゲット天体がかなり真ん中に入っているので、この時点で自動追尾をSynScan ProからSWATに切り替えてしまいます。ここでチェックすべきことは、SynScan Proの自動追尾を切っても、NINAからAZ-GTiをコントロールができるかどうか?です。まず「架台」のところで赤道儀として「SynScan Apps」を選択し接続します。10秒ほどするとASCOM仕様の十字ボタンが画面に出てくるので、NINAの「撮像」タブでカメラの画像を見ながら方向ボタンを押してみます。すると、自動追尾なしでも星が見事に動くので、まずは第一関門突破です。
NINAでガイド無しディザーができるのか?
次に一番肝心な、NINAでオートガイド無しのディザーができるかどうか?です。少し前に調べたことによると、「Direct Guider」という機能を使うことで、ビルトインディザリングというのができるらしくて、今回の目的にあっていそうです。
実際に、
とか書いてあります。特に「ガイドがない場合や使えない場合で、ディザーしたいときのための機能で、例えばエンコーダー付きの高精度の赤道儀や、ポタ赤など小さくてかつ高精度な赤道儀の場合に、必要になる機能かもしれない」というようなことが書いてあるので、今回のSWAgTiそのものだと思ったわけです。この機能は、2024年の4月くらいのバージョンで搭載されたようなのですが、9月にこの記述を見てNINAをSWAgTiで使ってみようと思ったわけです。Built-in Dithering#There are some cases where guiding equipment isn't needed or available, but you still want to dither. This can happen if you have a very high end mount with encoders or with small portable setups. N.I.N.A. can perform dithers directly via its Direct Guider which manually slews the telescope very small distances.
「Direct Guider」を使うためには、左の「機材」タブの中の「ガイド」で「Direct Guider」を選択します。普段PHD2とかを選ぶところです。設定する箇所はほとんどなく、何ピクセルディザーするかくらいでしょうか。デフォルトは5ピクセルですが、効果をはっきり見たいために今回は20ピクセルとしました。
以前のSharpCapでのディザーは、SynScan Proの自動追尾がオフになった時点でディザー信号がAZ-ZTiのモーターに伝わらなくなるという問題がありました。方向ボタンの信号はきちんと伝わるのに、ディザー信号だけは伝わらないのです。SharpCapの時はバージョンアップで解決されたみたいなのですが、NINAでも同様の問題がないとも限りません。とりあえず撮影の準備だけして、といってもレガシーシーケンサーでLIGHTフレームを露光時間を180秒にして、必要枚数を指定して、ディザーをオンに指定するだけです。実際にはガイドはなくて、フォーカサーも、フィルターホイールもないので、設定はとても簡単です。
そうそう、今回NINAにUranus-C Proを接続するのは初めてだったのですが、SharpCapでのゲインとオフセットの設定がレジストリなどに記録されているようで、最初から同じ値になっていました。ソフト缶を移動して同じカメラを使う場合は、設定が残っていたりするので、これは一方では便利だったりするのですが、変な設定が残ることもあり得るので、注意が必要です。
NINAは撮影に特化されているだけあって、デフォルトでの各種値が撮影用にあらかじめ設定されているのがありがたいです。例えばファイル形式はfitsが最初から選ばれているとかです。もちろん変更することもできるのですが、撮影時のドタバタでミスが少なくなるような設計方針にとても好感が持てます。他にも、カメラのゲインやオフセットはカメラ機器のところで1箇所指定すれば、あとはここの撮影で同じ設定になるのでミスしにくいとか、センサー温度が十分下がっていないと警告が出るとか、撮影のことを第一に考えてくれています。これがSharpCapは撮影もできるし電視観望もできますが、撮影だけを考えるとNINAを使いたくなります。
さて、実際に画像を1枚撮影し終わって、いよいよディザリングが開始されるはずです。まずはNINAの下部のメッセージのところにはディザリングされていると表示されているので、何か動こうとはしているようです。でもまだ実際にうまくいっているかわかりません。実際の確認は、ディザリングが終わって、次の1枚の撮影を3分待って、プレビューが出た時にきちんと位置がずれているかを見てからです。
さて、結果を見てみると
ライブドアブログの問題でプレビューがうまくいかないみたいなので、
クリックしてみてください。うまくズレているのがわかるはずです。
クリックしてみてください。うまくズレているのがわかるはずです。
ものの見事にディザー分ずれていました!!!これで、NINAもSWAgTiで使えることが判明しました。バンザーイ!
安定した撮影
その後の撮影は順調そのもので、21時過ぎから午前4時頃まで、約7時間の露光を安定に済ますことができました。途中の子午線反転はマニュアルで行う必要がありますが、SWATに自動追尾を引き渡したためにAZ-GTiの位置情報は既にずれてしまっているので、一度ホームポジションに戻して、一からSynScan Proでアラインメントをしました。でもSynScan Proでのプレートソルブアラインメントもすぐにすますことができるので、反転もほとんど苦にならなく短時間で済ませて、そのまま撮影を実行しました。
朝になってファイルをチェックしましたが、途中から雲が出てきて、それでも4時間半くらいの画像を使うことができました。その時の一番最後の画像です。一晩このクオリティーで撮れているので、天体写真として十分使えるレベルの画像を撮影することができていると思います。
画像処理に関しては、また長くなるので次の記事に回します。
まとめ
今回、NINAでの撮影が選択肢に加わり、SWAgTiの可能性がかなり広がってきました。極軸微動ユニット、SynMarix Alignの導入も安定した撮影体制につながっています。
まだまだ進化過程のSWAgTiですが、実用かどうかでいうならもう完全に実用レベルです。手軽で稼働率が高いので、今後の可能性を求めて、まだまだいろんなことを試していこうと思っています。