ほしぞloveログ

天体観測始めました。

カテゴリ: 鏡筒

実際のフェニックスの大口径化作業がどんどん進んでいて、ブログ記事の方が追いついていないです。とりあえず連休中の分を書いておきます。


前回までは、エタロン前に置いたコリメーターレンズの収差と思われるのが原因で、像がボケボケだったものを、PSTのエタロンに付いていた対物側の焦点距離-200mmのレンズを使うことで、分解能が一気に出たことを書きました。でも、この分解能が果たしてまだ収差に制限されてしまっているのか、それともシーイングが制限になってしまっているのかが不明でした。今回はこれに決着をつけたいと思います。


分解能を制限しているのは何?

今回は、これまでのように30秒ごとに1時間程度、合計120ショット撮影を続けて、その中で前回撮影したものより明らかに分解能が良いものがあれば、前回の撮影はシーイングリミットだった、ほとんど変わらないなら収差リミットだったと言えるのかと思います。もう少し言うと、前回は12cmよりも10cmの方が若干分解能が良く、少なくとも10cmに比べて12cmの口径としての分解能は確認できていません。シーイングは時間によってばらつきがかなりあることはわかっているので、前回の10cmと12cmでみた逆転や差は誤差の範囲内の可能性が高いと思っています。

さて、2026年5月6日のゴールデンウィーク連休最終日、実際に撮影してみました。実際には前回の記事の撮影日の次の日に撮影していて、比較のためにもセットアップは何もいじっていなくて、全く同じ状況での撮影になります。

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シーイングができるだけいい時間帯ということで、撮影は午前中にしましたが、あいにく全体に薄雲が掛かっている状態で、時折晴れに近くなったり、時折熱い雲が通ったりと、状況的にはかなりイマイチでした。それでもその中で1枚でも前回よりいい分解能で見えるなら、前回の撮影は収差リミットでなかったと言えるので、撮影を敢行しました。

曇が通ると写らないこともあるので、結局合計235ショットを撮影しました。曇りのせいか、そもそもこの日はシーイングが悪いのか、ほとんどの画像は分解能は出ていませんでした。前回程度のものもありますが、前回よりも数多く悪いものもあります。でもその中の少なくとも9ショットは、やはり明らかに分解能が出ているものがありました。その中で、ベストのものがこれになります。
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前回のものが以下になります。明らかに上の方がいいですね。
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少なくとも前回を越すものが1枚でもあったということから、前回の結果は収差リミットではなく、シーイングが悪く、改善の余地はあったということがわかります。また、前回は10cmと12cmの分解能が逆転していましたが、今回は前回の10cmで撮影した結果よりも分解能も出ているので、前回はシーイングのばらつきでたまたま順位が変わったと考えてよさそうです。


まだ結論は出ていない

た、だ、し、だからと言って、今回撮影した結果がまだシーイングリミットなのか、これで収差リミットになったのかは判断がつきません。特にこの日は曇りで、平均的にシーイングがそもそも良くなかったと思われるので、まだシーイングリミットの可能性もあります。上の画像は、その中でもシーイングがいい時間帯を選んだことになるので、この画像の時は十分シーイングとしては良く、実際に分解能の制限に効いているのは改めて収差になった可能性もあります。というのも、上の画像でもまだ口径10cmのヘリオスター100Hαに迫っているとは言えず、口径12cmの性能を引き出し切っているとはとても思えないからです。

シーイングリミットにしろ、収差リミットにしろ、もしくはその他の原因にしろ、統計的に考えたら、無相関なバラツキの和になるので、それぞれのブレの2乗和のルートで効くと考えればいいはずです。全体で見ると、大きなブレが支配的になり、ブレが小さい成分は効きが一気に弱くなります。
  • 例えばシーイングのブレ成分が1として、それに収差のブレ成分が半分だとして混ざると考えたら、2乗和のルートで考えるとsqrt(1^2+(1/2)^2) = sqrt(1+0.25) ~ 1.18なので、ブレは2割も増えません。
  • シーイングのブレ成分が1で、収差のブレがその10分の1なら、sqrt(1^2+(1/10)^2) = sqrt(1+0.01) ~ 1.004と、それぞれの成分で見て1割あったはずの増加分は、全体で見るとわずか0.5%以下の増加になります。
  • 収差のブレが1で、シーイングのブレが同じ程度の1あったとしても、全体ではsqrt(1^2+1^2) = sqrt(2) ~ 1.4倍程度にしかなりません。
大きなブレがあると、それが支配的になりやすいということです。

なので今回言えることは、「このセットアップで、少なくとも今回撮影したところまでの分解能を出す性能があることはわかった」ということだけなのかと思います。繰り返しになりますが、今回の撮影で得た分解能を制限している原因はまだ分かっていません。でも、今回の撮影の結果から、前回の分解能が収差で制限されていたわけではなかったということは言えますね。


次は?

次に確かめるべきこととしては、明らかに今回よりもシーイングのいい時を狙って、さらに分解能が改善されるかどうかを見るべきでしょう。もうこれ以上改善されないなら、収差制限か、もしかして他の原因による制限かもしれないけれど、それが今のセットアップでの限界ということになるので、その原因を取り除くような改善をしていくべきなのでしょう。

さて次回ですが、実はもう撮影は終わって暫定的ですが結果も出ています。また記事にします。


先週試したフェニックスに口径10cmの鏡筒を付ける試みですが、半分成功、半分失敗といったところでしょうか。少なくとも口径4cmのオリジナルのフェニックスよりは分解能は出ましたが、なんかボケボケで、まだ口径10cmの性能が出ているとは思えません。今回は、なぜ分解能が期待通り出ないのか、どうすればいいのかを試してみました。


3枚レンズの合成焦点距離

前回の記事のコメントで、銀命堂さんが合成焦点距離に関して有益な情報を提供してくれました。銀命堂さんには、以前VISACの光軸調整のシミュレーションのページでお世話になり、このブログにもコメントをいただいた方で、光学設計に詳しく、同ブログにある天体写真を見ても相当な実力をお持ちの方です。

3枚レンズの合成焦点距離は、銀命堂さんがコメントに式も書いてくれていますが、、今回の合瀬焦点距離はきちんと計算にはこのページが便利です。



物体距離を1000000とかかなり大きな数にして、物体距離 
  • 第1レンズの焦点距離: 1000
  • 第1-2レンズの間隔: 800
  • 第2レンズの焦点距離: -200
  • 第2-3レンズの間隔: 50
  • 第3レンズの焦点距離: 400
と順次数値を入れて計算を実行すると、合成焦点距離が2000mmと出ます。これも便利なのですが、簡易的な計算としては銀命堂さんがおっしゃるとおり、1000mm/200mm =5 倍のガリレオ式望遠鏡と考え、この倍率にフェニックスの対物レンズの焦点距離400mmを掛けた 5 x 400mm =2000mmと出すのが、暗算でも求められるので簡単です。

ちなみに、C8+PSTだと合成焦点距離は2000mmでした。これはC8の2000mmに-200mmのレンズで10倍、それにエタロン後部の200mmを掛けて2000mmと同様に暗算でも計算できます。今回焦点距離が1000mmの鏡筒なのに合成焦点距離が伸びてしまったのは、コリメートレンズを-200mmにして、フェニックスの対物レンズが倍の400mmと絶対値に違いがあるからです。

コリメートレンズの焦点距離を決めると、平行光の条件 (1/f = 1/f1 + 1/f2 - d/(f1*f2) で f=∞ を解くとd = f1+f2、今回の場合d = 1000 -200 = 800mm) でレンズ間距離が一意に決まります。鏡筒の焦点距離の手前に、コリメートレンズの焦点距離部だけ鏡筒側に食い込んで置かなければならず、今回のMagellanもフォーカサー部を外すことでこの条件の位置に置くことができました。前回記事のコメントでエレキさんが言われたように、もっと焦点距離が負側に長いコリメートレンズを置けば収差が減っていいのかもしれませんが、そうなってくると鏡筒を切断するとか、別途鏡筒に変わる何かを用意する必要がありますし、そもそもパッと探した限り-300mmくらいの凹レンズが最長で、それ以上は簡単には手に入れることができません。


エタロンの中央遮蔽が問題?

ここら辺までが、前回のブログ記事をアップしてからジタバタ考えていたことでした。今回まず試したいことは、前回ブログの最後の方にも書いた、このボケがフェニックスエタロンの中方遮蔽から起こるのではないかという推測の確認です。方法は、手持ちの口径8cm、焦点距離400mmの鏡筒に同じ-200mmのコリメートレンズを付けてフェニックスを接続してやります。エタロン位置での平行光条件から、最初のレンズから200mmの位置にコリメートレンズを置くようにすると、エタロン位置でのビーム径が40mmになり、前回のビーム径20mmに比べて十分に大きく、中央遮蔽を避けることができるはずです。これでボケボケなのが解決されるなら、中央遮蔽が悪かったということになります。

10cm鏡筒が載っていたアルミフレームには、アルカスイス互換のクランプが取り付けてあります。鏡筒側にアルカスイス互換のプレートを取り付けていれば、クランプの開け閉めだけで、鏡筒をを容易に取り替えることができます。

持ち手代わりのためと、ガイド鏡やファインダーを付け替え可能にするために、ほとんどの鏡筒にアルカスイス互換プレートをつけるようにしています。なので10cmの鏡筒を8cmのものにすぐに交換することができます。ただし今回の場合は、二つの鏡筒の光軸を合わせるために、特に「高さ」を調整して合わせなければいけません。8cm鏡筒と10cm鏡筒はまた交換したくなるかもしれないので、今回はフェニックス側の高さは変えずに、8cm鏡筒の高さを間にプレートを挟むことで調整しました。

高さ調整後、アルミフレームに2つの鏡筒を載せた状態にします。2つの鏡筒の相対的な距離に関しては、アルカスイス互換のクランプを緩めることで、かなりの範囲を位置を調整できます。

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結果はというと、SharpCapの画面上で見ても相当ボケボケでした。ピントが合う位置が無いような状態で、10cmの時より全然ひどいです。

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全く改善がないということで、中央遮蔽は関係なく、コリメートレンズの収差が問題だという可能性が高くなってきました。

ここで疑問が湧きます。今回のコリメートレンズはAmazonで見つけた安いもので、直径50mm、焦点距離-200mmの球面の凹型の単レンズです。単レンズでは収差を避けることができないので仕方ないのですが、ではなぜPSTでは8cmや10cmと組み合わせてもきちんと見えていたのでしょうか?

改めてPSTのエタロンの対物側のレンズを外して確認にしてみたのですが、やはり以前見たとおり単レンズにしか見えません。

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理由がよくわからないのですが、少なくともPSTの大口径化ではうまくいっていたと考え、とりあえず試しにこのPSTエタロンの対物側のレンズを使ってみることにしました。

このレンズは焦点距離は-200mmで同じですが、径が23mmで、Amazonで買った50mmのレンズに比べて小さいです。光はこの径しか通り抜けることができないので、フェニックスエタロンの中央遮蔽の影響はより出るはずですし、このレンズ径で制限されるとすると8cmになった口径を生かしきれないので、分解能的に不利になるはずです。不利なことしかない気がしますが、それでも像が改善されるなら、収差がなくなるような何らかの理由が存在すると思っていいでしょう。

こちらも簡単に、テープでフェニクス前面に貼り付けてやります。さらにその上にUV/IRカットフィルターを付けます。
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結果はどうなったかというと、SharpCapで見る段階で大幅に改善しています。
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うーん、なぜなんでしょう?それでも、少なくともこの結果から、中央遮蔽の影響は象には関係ないと言えそうです。


10cmをPSTレンズで再び試す

中央遮蔽の問題ではないことが確認できたので、ビーム径は小さくてもいいと考え、再び口径8cmから口径10cmに戻します。その際に、PSTレンズも10cmの方に付け替えてやります。F10鏡筒なので、エタロン位置でのビーム径が20mmになり、PSTレンズにほぼぴったりの径になります。

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SharpCap上で確認すると、口径10cmの場合でも、PSTレンズを使えばかなりの分解能が出ることが確認できました。
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せっかくなので、動画で撮影して画像にまで仕上げてみました。
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これならば十分な解像度が出ていると言えます。

ついでにフェニックスオリジナルと比較してみましょう。左がフェニックス単体、右が口径10cm+フェニックスになります。
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前回のアマゾンで買ったコリメートレンズの時よりも、明らかに細かい線が出ていて、分解能が上がっていることがわかります。

あと、それぞれの画像の下にある倍率を見ると505%と100%となっていて、5倍の違いになっているのがわかります。これはフェニックスの400mmの焦点距離が、2000mmになって5倍になったのと一致しているので、実際に合成焦点距離が計算通りに出ていることがわかります。



TSA-120を使い、口径12cmに

調子に乗って、口径12cmのTSA-120で試します。こちらは合成焦点距離が900mm / 200mm x 400mm =1800mmとなり、エタロンでのビーム径が120mm x 200mm/900mm = 27mmとなります。その手前のレンズ径が23mmなので、120mmの口径は完全には生かしきれず、単純には120mm x (23mm/27mm) = 104mm相当になります。 

ただし、TSA-120は鏡筒の外径が大きいため、光軸を合わせるために、今度は高さの低いフェニックス側の高さを調整する必要があります。それだけならいいのですが、TSA-120に取り付けてあるアルカスイス互換プレートは、ネジ穴位置の関係から鏡筒バンドの中間に取り付けられていなくて、中心から1cmくらいオフセットがあります。下の写真でわかりますでしょうか?
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鏡筒バンド上部に取り付けてあるプレートが、
3つあるねじ穴の2つを利用して固定されているので、
片側に寄ってしまっています。

このオフセットを取り除くのはネジ穴加工が必要となるため、今回はとりあえず保留としました。TSA−120とフェニックスをきちんとアルミフレームに合わせて平行に取り付けると、1cmくら光軸がずれてしまいますが、まあなんとかなるでしょう。うまくいったらプレートの方を加工し直そうと思います。

赤道儀に乗せる際ですが、もともとアルミフレームの下側にVixen規格のアリガタを取り付けてあるのですが、ちょっと心もとないので、上下をひっくり返してTSA-120についているLosmandy規格のプレートで赤道儀に固定することにしました。そのため、フェニックスは上から吊り下げられたような状態になってしまいますが、これで問題なく安定に固定できています。

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なんか魔改造っぽくなってきました。

さて、結果はというと、
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と遜色ない分解能が出ています。10cmの場合と比べると、今回の12cmの方が少し分解能が落ちているようですが、シーイングは時間的にかなりのばらつきがあることはわかっているので、誤差の範囲内でしょう。


コリメートレンズの謎

分解能を出すという意味では、一応ここまでの結果を見る限り、大成功と言っていいのかと思います。

ただし、なぜAmazonで買ったレンズではダメで、PST付属のものだと収差がなくなるのか、その理由がまだわかっていません。焦点距離は同じで、両方とも単レンズです。同じようなレンズなので、単純に考えても収差がなくなる理由がよくわかりません。それとも収差ではない、何か他の原因があるのでしょうか?

色々考えていて、ふと思いつきました。もしかしたらPST付属のレンズを使った場合は「テレセントリック条件に近くなっているのではないか?」ということです。テレセントリック系を構築するには絞りが必要になります。平行光に近い焦点位置近くに絞りを入れることにより、その後のレンズで平行光に戻す際にはどの光束も全て平行になります。今回はコリメートレンズ以降が平行光になり、そのコリメートレンズの径が小さくなったということは、絞りを入れたことと同等の効果があります。もちろん完全なテレセントリック条件ではないですが、近いことは起こるはずです。

もっと単純に言い換えると、レンズ系を絞ったことにより、レンズの端の影響の球面収差を抑えることができたり、光束が細くなりコマ収差や非点収差が軽減されると考えてもいいでしょう。

いずれにせよ、収差に関してはレンズ径が小さい方が有利そうです。その一方、暗くなったり、エタロンの径を生かしきれないという不利な点が出てくることになります。


まとめと今後

PSTレンズを使うことで、口径8cm、10cm、12cmのいずれの場合も分解能が出るということがわかりました。実際には、PSTのレンズというよりは、小さいレンズ径が有利ということもわかってきました。

でも、このレンズ径の小ささで十分収差は除去されているのかというと、それはまた別の問題のはずです。今の像がまだ収差で制限されているのか、それともシーイングなどで制限されているのかというのが疑問として残ります。

シーイングリミットならもうシーイングのいい時を待つしかないのですが、もしまだ収差が問題だというのなら、これ以上径を小さくするのは分解能を制限する方向なっていって、あまり現実的ではなくなってきます。そうなると次は、収差の小さいレンズを作ることが次の課題になります。

次回は、今の疑問のシーイングリミットか、収差リミットかの切り分けをしてみたいと思います。希望的観測としては、PST+C8でもシーイングリミットが大半で、(収差が問題になるようなことはなく) きちんと分解能が出ていたという事実があります。


最終的には口径20cmのC8と繋ぐことを目指しているのですが、フェニックスをC8にそのまま繋ぐと合成焦点距離が4000mmとさすがに長すぎになってしまいます。前回と今回の検討から、今後の合成焦点距離も課題として持ち上がってきたことになります。


今回はとうとうフェニックスのエタロンを利用して鏡筒部分の大口径化に挑戦します。まずはその第一歩です。

最初に、とても重要なことです:
太陽望遠鏡の改造は危険を伴います。失明や火事など、重大な事故を起こす可能性があります。もし試す場合は、くれぐれも安全には気をつけて、自己責任の範囲内で進めるようにしてください。この記事を見て試してみて何か起きたとしても、私は何の責任も取ることができません。

今回の挑戦で一つ重要なことは、フェニックス自身には直接には何の改造もしていないことです。フェニックスにレンズを取り付けていますが、そのレンズを外して再び単独で使用する分には完全に元の状態と変わりません。メーカー出荷時と同じ状態なので、安全の観点からも安心できます。

ただし、もともとフェニックスはエタロンと接眼部のBFやERFを取り外せる構造になっています。外した状態で太陽を見てしまう危険もあるので、太陽を見る際はエタロンがついていることと、太陽用の接眼部になっていることを、「指差し確認」するくらいのレベルで、必ず毎回確認するのがいいでしょう。


これまでの試み

これまで、口径20cmのC8と、PSTのエタロンを用いて、大口径望遠鏡でどこまで太陽のHα画像の分解能が出るかを試してきました

自分的には大成功で、PST単体からは考えられないような高分解の太陽のHα線周りの様子を観察することができました。でもPSTのエタロンにはやはり不満があって、
などの問題点がありました。C8でこれ以上を求めようとすると、次はいよいよエタロンをより高性能のものに交換することになりそうです。

それでももしかしたら、PSTエタロンのコントラストが悪いだけなら、ストレッチ時に輝度のオフセットを除くことでコントラストを改善することができるのではと、淡い期待を持っていました。最後にまだPSTエタロンを使い続けようとあがこうともしましたが、分光撮影の評価から、Hαの中心波長からズレると像自体が変わってしまうということがはっきりわかったので、とうとうフェニックスを購入して、エタロン交換の準備を着々と進めてきました。


概要設計

最初の計画では、フェニックスのエタロン部分を外して前後にレンズをつけて、その後距離を稼ぐための筒を適当に取り付けようとか思っていました。でも、色々考えていくと、エタロンが鏡筒前部にすでに確実に取り付けれらていて、その後ろのレンズ系と筒、BFとERFはすでにフェニックスとして完成してるんですよね。そのことに気づいてからは、別途大口径鏡筒の後ろにフェニックスをそのまま配置し、エタロンに平行光を入射させるためにフェニックス前にレンズを取り付ける方向を模索し始めました。世界でも同様の考えに達する人が何人かいたようで、それを見て、あーやっぱりこうなるのかと納得しました。

次に検討したことは、どうやってフェニックスと大口径鏡筒を接続するかと、エタロン前のレンズをどうやって取り付けるかでした。最初は接続アダプターのようなものを3Dプリンタで作ることを考えていて、3Dプリンタそのものは年末に発注し、正月には届いていました。でも、いざ鏡筒同士を接続する段階になって、強度的に大丈夫かどうか不安になってきました。仮に強度的に大丈夫だとしても、相当大きな部品を作ることになりそうですし、取り付け精度と、取り付けた後にぐらつかないかなどの安定性も不安です。

結局、鏡筒の接続は金属ベースにした方がいいことと、できるだけ特殊部品は作らずに一般に入手できるものがいいと考えるようになりました。結果として使ったのは、モノタローで手に入るアルミフレームです。強度的にも十分で、重量的にも重くなく、専用のはめ込みナットで強固に固定でき、しかも簡単に組み換えられるなど、汎用性も十分です。

アルミフレームは各種ありますが、金額ベースで決めて、一番安価なSUS社のものにしました。40x40mmの太さなので、撓みとかもほとんどなく強度的には十分でしょう。長さは無理に細かい長さにせず、当日出荷のキリのいい800mmにしました。端部につけるキャップとか、固定用ナットをM6とM4で、後からレールに傾けてはめ込むことができるナットもいくつか買っておきました。


組み立て

実際にアルミフレームを組み上げてみました。といっても、鏡筒を固定するための手持ちのアルカスイスタイプ互換のクランプを取り付けるだけです。赤道儀側はVixen規格のアリガタにしました。強度的に不足そうなら、Losmandy規格のプレートが一枚余っているので、そちらに載せ替えるかもしれません。

接続する鏡筒は手持ちの口径10cm 焦点距離1000mmの国際光器のMAZELLAN 102を使うことにしました。ここにアルカスイス互換のプレートを取り付けます。同じくフェニックスにもルカスイス互換のプレートを取り付けます。問題は、2本の鏡筒の外径が違うので、高さが合わないことです。そのため、フェニックス側に底上げのプレートを一枚追加しました。

実際にアルミフレームに鏡筒2つを載せてみて分かったのですが、意外に2本の鏡筒の中心を合わせるのが大変でした。高さ方向もそうですが、横方向の傾き調整がアルカスイスタイプ互換のクランプの取り付け時の遊びで決まってしまいます。その一方、水平方向に関してはアルミフレームがで水平面がきちんと出ているので、それほど問題にはならなさそうです。

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肝心のレンズですが、とりあえずテストということでテープで止めるだけにしました。うまくいったら3Dプリンタで取り付けアダプターを作ろうと思います。レンズはPSTと同じ焦点距離-200mmの凹レンズにしました。Amazonで売っている安いレンズで、これで問題ないかどうかはテストしてみないとわかりません。光量を落とすために、レンズの後ろにUV/IRカットフィルターを入れました。エタロンに入る熱をカットして保護するためです。

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実際に太陽を導入してみる

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準備ができたので、外に出て実際に太陽方向に向けて、どうなるかを試します。熱で溶けたり燃えたりしないように、最初は少しだけ光を入れて、光が当たっている場所に手を置いてそれぞれの機材が熱くなっていないかなどを確かめながら、少しづつ光量を増やしていきます。

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レンズは透過、UV/IRカットフィルターは反射、エタロンも共振する光以外は反射なので、基本的に吸収はないはずなので熱くなるようなことはないと思うのですが、念のために一つづつ確認しながら進めました。接眼部のところまで光が来ていて、かつ十分減光されているこをと確認し、カメラに光を入れます。

これでやっと、SharpCapでカメラの像を見ることができます。両鏡筒がピントが合う範囲にあるかどうかもわからないので、まずは2つの鏡筒をそれらしい位置にセットして画面を見てみます。まあ当たり前ですが、最初は全くピントは合わなくて、明るくなるので太陽が入っているのがわかる程度です。

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何箇所かMazallanの位置を移動してみて、それぞれの位置でフェニックスのフォーカサーを前後に目一杯動かして見ると、ある程度傾向がわかってきました。少なくともピントが出る範囲はありそうです。

ここで問題になってくるのが、フェニックスとMazellanの相対的な位置です。どうやって調整したかというと、まずフェニックス単体でピントの出る位置を探り、フォーカサーの位置を固定します。

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Mazellanからの光をフェニックスに入れた時に、その固定したフォーカサー位置でピントが出るように、SharpCapの画面を見ながら相対位置を調整します。最後の微調整はフォーカサーでしますが、相対位置はミリメートル単位くらいで合わせる必要があるようです。相対位置が少しずれて、それをフォーカサーで補正しようとすると、フォーカサー位置をかなり大きくずらす必要があります。

実際の撮影時の画面を見てみます。
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まず、視野が狭いです。カメラの端で像が暗くなってしまっています。

あと、ピントの山がものすごく見分けにくくて、ピントがきちんと合わないように思えます。でもまだ少し試しただけなので、光学的に何か問題があるのか、それともあまりにシーイングがひどくて合わせにくいのかの切り分けが、まだできていません。

ちなみに、下がフェニックス単体の撮影時の様子です。これでさえもボケボケなので、少なくともかなりシーイングが悪かったことはわかります。
スクリーンショット 2026-04-26 142802

あと、連結した場合とフェニックス単体で比べた場合、エタロンのHα調整の回転つまみの最適位置がかなり変わりました。つまみで調整できる範囲内でしたが、両端に達するような勢いで、エタロンがかなり温められている可能性があります。PSTのエタロンと違い、中央に遮蔽があるタイプなので、エタロンを壊さないように少し気をつけた方がいいかもしれません。


撮影できた画像

撮影した画像を処理して見てみます。カメラはG3M678M、撮影は8ms露光で、ゲインは800 (=180(ZWOのゲイン) =18dB =8倍)、14時15分に500フレーム撮影して上位100フレームを使っています。処理はごく普通にAS!4でスタックして、ImPPGで細部出しをしました。

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昨日の記事でアップしたフェニックス単体の画像を拡大して同じような画角にしたものと比較してみます。左がMazellan+フェニックス、右がフェニックス単体です。

スクリーンショット 2026-04-29 210740_cut

これだけ見ると少なくとも右側の口径4cmのPhoenix単体よりは、左側の口径が10cmの方が分解能がでていて効果があったように見えるので、まずは成功と言えるでしょう。でもこれで大成功かというと、まだまだ程遠いです。

まず、ImPPGでの処理でわかったのですが、完全にオーバーサンプリングです。もしくは、シーイングが悪すぎるのでしょうか?Unsharp maskingのsigmaは通常0.5からせいぜい2なのですが、4とか5という大きな値でやっと模様が出てきました。処理するベースのピクセル数が大きいことを意味していて、カメラピクセルが生きるような細部の処理は意味がないことになります。ボケボケと言っていいのかもしれません。


焦点距離1000mmをくっつけた時の倍率

フェニックス単体で撮影した画像と、連結して撮影した画像を比べて見ると、倍率は2.9倍程度でした。焦点距離400mmが1000mmになったはずなので、2.5になるはずです。少し大きいですが、あからさまに変な倍率ではないでしょう。

と、最初思っていたのですが、多分これ間違いです。1000mmの対物レンズに、対物レンズから800mmの位置に-200mmのレンズを入れ、平行に光を飛ばして、再び200mmのレンズで焦点を結ぶ場合は、トータルの焦点距離が1000mmになるので、倍率は2.5倍になります。でも今回は200mmではなくフェニックスの対物の400mmレンズで焦点を結んでいるわけです。そうするとおそらく1000mm - 200mm + 400mmでトータル1200mmになり、1200/400=3倍程度になるはずです。実測は2.9倍なのでこちらに近いのですが、まだちょっと計算に自信がないです。


なぜボケボケなのか?

少なくとも大成功とは言えないので、その原因を探る必要があります。

まず、今回のはテストでワンショット撮って時間が尽きてしまったので、ボケが機材のせいなのか、シーイングのせいなのかさえ、まだ切り分けができていません。

機材が原因である可能性としては、エタロンの中央遮蔽です。PSTのエタロンは2枚の鏡のみで面内に邪魔なものはありませんが、フェニックスのエタロンは中央に遮蔽があり、入ってくる平行光の中央部分がブロックされてしまいます。ピントが出にくかったり、ボケボケになったのはこの中央遮蔽が原因かもしれません。

もし中央遮蔽が問題だとすると、今回は-200mmの凹レンズを対物レンズから800mmのところに入れる設計のために、エタロン上のビーム径は20mm程度になり、径があまり大きくならないということは、かなり深刻な問題でしょう。エタロンの有効径が40mmあるので、もう少し緩いレンズにしてビーム径を大きくしてもいいのかもしれません。

この観点から考えると、
  • 手持ちの口径8cmの焦点距離400mmの鏡筒で試すと、今の-200mm凹レンズでビーム径が40mmになるので、まずはこちらから試した方がよかったのかもしれません。
  • もしくは、焦点距離900mmのTSA-120だとビーム径が27mm程度になるので、これでもましかもしれません。
  • 一方C8だと、焦点位置の移動範囲は結構大きく、実行焦点距離も1900mmから2100mm程度になるのですが、それでもエタロン上のビーム径は20mmから大きくは変わらないはずです。凹レンズの焦点距離をもう少し負側に伸ばすか、もしくは大口径でも、もう少しF値の低い鏡筒を考えるべきかもしれません。
ただ、このこの検討はまだ仮説の域を出ていないので、実際に試してみて中央遮蔽の影響がどこまであるかきちんと検証すべきかと思います。


その他改善案

UV/IRフィルターはレンズ手前に入れた方がいい気がします。レンズまでは温められているので、熱レンズ効果などで焦点距離そのものがズレたり、不安定になってボケボケに可能性があることに後から気づきました。本当は、2インチのHαフィルターがあると、エタロン前に取り付けることができていいのですが、撮影用に使っているものしかないので、必要なら透過幅が広くてもいいので安価なものを手に入れようと思います。星まつりで探すことになるかもしれません。

まだまだたくさんやることはありますが、次回テストできそうなのは、ゴールデンウィークの最後の方です。前半は少し忙しいのと、天気も悪そうです。それまでに他にも改善案がないか、もう少し考えてみます。


まとめ

長年温めてきた、エタロンアップグレード計画がとうとう進み始めました。まだ今回はテスト段階で、大成功とは言えませんが、少なくとも4cmの分解能よりはよく見えたので手応えを感じています。

太陽は一歩間違えると大変危険なのですが、Phoenix自体が無改造というのもいいです。どこまで行けるかわかりませんが、口径20cmの性能を出し切れるところまで持っていけたらと思っています。

エタロンに目処がついたら、いつか30cmに挑戦したいのですが、これはまだまだ先になりそうです。



4月25日(土)、朝から晴れていて時間が少しあったので、久しぶりに粒状斑を見てみることにしました。

前回粒状斑を見たのは2025年11月のことで、2021年からずっと挑戦していて、長年の苦労でやっと見えたと報告したのが以下の記事です、



撮影セットアップ

今回のセットアップも、カメラ以外は前回と同じになります。

TSA120に2インチのUV/IRカットフィルターと、眼視用の2インチのOIIIフィルターを取り付け、カメラに1.25インチのHβフィルターをつけています。1インチのアイピース口をつけて、そこにExplor Scienteticの5倍のバローを取り付けています。

カメラは前回はピクセルサイズが2.9μmのASI290MMを使いましたが、今回はピクセルサイズ2.0μmのG3M678Mを使ったので、分解能的に少し有利になるかもしれません。

ただしTSA120の口径は120mmなので、口径からくるレイリー限界がOIIIだと1.05秒角になります。焦点距離が4500mmの場合、ピクセルサイズ2.9μmだと、1ピクセルあたりの画角は0.13秒角、2μmだと、画角は0.091秒角と、いずれにせよ十分すぎるくらい細かいので、実際の改善はほぼないと思われるかもしれません。

でも、粒状斑の大きさが1000km程度で、視野角としては1秒角程度にしかならないので、そもそもがレイリー限界程度です。1秒角のものを、ASI290MMの0.15秒角程度の分解能で見るか、G3M678Mの0.1秒を切る分解能で見るかという違いです。言い換えると、粒状斑を一辺6ピクセルくらいで見るか、10ピクセルで見るかという違いになります。

レイリー限界を信じるなら、そもそも粒状斑は全然見えないのでしょうし、ピクセルサイズの違いで改善はないでしょう。レイリー限界を超える何かがあるなら、ピクセルサイズで多少の効果はあってもおかしくないかもしれません。果たして、どちらが正しいのでしょうか?


撮影時のシーイング

この日はそこそこ大きな黒点群が出ていて、G3M678Mの画角にちょうど合うくらいなので、そこを狙いました。ただ、時間的に午前の少し遅い時間帯なので、そこまでシーイングは期待できなさそうです。30秒程度ごとに1ショット、合計1時間程度で120ショットを撮影しました。

撮影を開始してからはそのまま放っておいて、朝昼ご飯を食べにいきます。この日は近所のガストでした。モーニングギリギリに入って、クーポンで少し安くなったトンん汁定食を食べました。

午後12時ころに帰ってきて、今度はもう少し小さな黒点を、ROIで縦横半分にして撮影しました。こちらも1時間程度で120ショット撮影しました。

撮影終了後、AutoStakkertt!4のバッチ処理で一気にスタックし、ImPPGで細部を出して比較しますが、どうやらこの日はシーイングは全然ダメだったようです。基本的には粒状斑が全く出て来ない画像がほとんどでした。午前中の画像は、粒状斑が画面の1部にある程度写っていたものが16枚、画面全体に粒状斑が写っていたものはわずか4枚でした。午後はもっとひどくて、粒状斑らしきものがある程度見えるのがわずか4枚で、全体が写っているものはそのうち1枚だけでした。

実は、前回の粒状斑の撮影後に、試しにC8でも同じような手法で120ショット撮影したのですが、全然うまくいかず、粒状斑の画像としては全滅でした。その後はC8という機材が悪いと思い込んでいたのですが、TSA120でもシーイングで写り方が全然違うので、もしかしたらC8のときはやはり撮影時間帯の間中シーイングが悪かった可能性も捨てきれなくなりました。口径の差は効くと思うので、いつかC8とTSA120で撮影して比較できればと思います。

ちなみに、次の日曜の午前にも同じTSA120のセットアップで粒状斑を120枚撮影しましたが、この日のシーイングはもっと酷くて、全面に粒状斑が映っているものは1枚もなく、全ボツでした。シーイングの影響はものすごく大きいです。


結果

さて、今回の撮影結果です。まずは土曜午前の分のG3M678Mのフル視野角で、巨大黒点群AR4420周りです。

10_15_41_lapl2_ap2096_out_cut_cut
  • 撮影日: 2026年4月25日10時15分
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: Takahashi TSA-120(f900mm、F7.5) + Explore Scientific x5バローレンズ
  • フィルター: UV/IR cut、Baader 7nm OIII、7nm Hβ
  • 赤道儀: Celestrn CGEM II
  • カメラ: ToupTek G3M678M
  • ガイド:  f120mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2 solar
  • 撮影: SharpCap Gain 100 (= 0 for ZWO camera = 0 dB = 1倍)、平均23fps、露光時間0.8ms (10時11分から11時15分まで、約30秒ごとに200フレームを120回撮影して、そのうちベストショットの20/200フレームをスタック)
  • Dark、Flat補正: 無し
  • 画像処理: AutoStakkert!4、ImPPG、Photoshop CC

次が、午後の撮影で、少し離れた単独黒点のAR4421をROIで縦横半分のサイズにして撮影したものです。
13_31_16_lapl2_ap492_out_cut
  • 撮影日: 2026年4月25日13時31分
  • 撮影: SharpCap Gain 100 (= 0 for ZWO camera = 0 dB = 1倍)、平均23fps、露光時間0.6ms (13時31分から14時36分まで、約30秒ごとに200フレームを120回撮影して、そのうちベストショットの20/200フレームをスタック)
  • Dark補正: 無し、Flat補正: Gain 100、露光時間0.6ms x 32枚
  • 画像処理: AutoStakkert!4、ImPPG、Photoshop CC

惜しむらくは、上の両画像とも画面内で分解能が出ているところと、分解能が出ていないところがシミのような形で分かれていることです。これは元の動画の1コマ1コマを見るとわかるのですが、シーイングがいいところと悪いところが画面内で分かれているからです。その中でもシーイングがいい時の画像を瞬間的に持ってきているのですが、画面内でいいところだけを選ぶという技術はまだないので、このように時間平均して悪いところが残ってしまうようです。

とにかくシーイングは全然良くなくて、それにもかかわらず、1時間にわずか1-2ショットだけですが、かろうじていい瞬間があるというのは、統計的に見ても非常に面白いと思います。


前回ベストと比較

前回のベストをいま一度比較のために下に掲載しておきます。
11_00_34_l2_ap3983_IP_cut

シーイングは前回のほうがよかった印象にもかかわらず、今回の方が分解能が出ているので、やはりピクセルサイズの小さいカメラの効果はあったのかと思います。ただし、シーイングの良かったせいもあると思いますが、画面内の安定度は前回の方が上なのかと思います。


デジタル時代のレイリー限界の意味

こうやって見てみると、レイリー限界の意味がだんだん薄れてくる気がします。レイリー限界は、眼視時代に定義された、人間の目で2つの星を見分けることができる一つの目安です。具体的には、2つの星のエアリーディスクの重なりが大きくなると中心の間に明確な輝度の落ち込みがなくなるような状態で、 片方の星の明るい中心が、もう片方の星の最初の暗い輪に重なるのが限界になります。

レイリー限界は鏡筒の口径とターゲットの波長のみで決まって、今回のTSA120の場合はOIIIで1.05秒角となります。これが本当に限界だとしたら、そもそも1秒角程度の大きさでしかない粒状斑はほとんど何も見えないことになります。でも、実際にはよく見えてるんですよね。

今回は焦点距離を伸ばすことで、この1秒角程度の粒状斑を10ピクセルくらいを使って見ています。レイリー限界を信じるなら、より細かいピクセルを持ってきてもオーバーサンプリングになってしまい分解能は上がらないはずなのですが、目で見る場合と違いカメラで撮影した画像データでは、例えば少しの輝度差も、輝度のオフセットを除き、輝度さを画像処理で拡大などすることで、S/Nよく明るい部分と暗い部分が区別できるので、レイリー限界で考えるよりももっと分解能は上がってもおかしくありません。

今回の結果だけ見ると、粒状班の形や、更には粒状班の中の様子まで見えつつあります。レイリー限界だけで考えると勿体無くて、例えばこの結果からレイリー限界の10分の1くらいのサイズのピクセルで見ることには、十分に意味があるということが言えそうです。


まとめ

口径120mmで見る分解能としてはかなり限界に迫っているのかと思います。ここまで迫るためには、シーイングの極めていい瞬間を狙うことがかなり重要になります。1時間撮影して、シーイングが良くなるあるある時間帯のうちの、その中でも一番いい16ミリ秒ぶんを使ったということになります。確率で言うと、20/(200*120) = 0.083%です。いい分解能を得るのは、このくらいの確率を考えなければならないということもなんとなくわかってきました。

ただ、日としては悪いシーイングだったので、シーイングのいい日を狙うとまだ改善する余地があるのかと思います。あとは、やはりもう少し大きな口径で同様なことを試してみたいです。



IMG_7068

2019年5月に、名古屋のスターベースが閉店する直前に寄った際見つけた、レンズが白濁したジャンクのFC-76。作りは昔のタカハシを彷彿とさせるべく、無骨そのもの。例えば、レンズキャップは鋳造の金属製です。

この鏡筒、白濁なんて全く気にならくて、かなり使い勝手が良く、のちに大活躍しています。特に太陽分光ではサイズ的にもピッタリで、ジャンクで信じられないような値段で購入したにもかかわらず、すごい稼働率です。改めて、関連記事をまとめておきます。














CP+で話した太陽トークの内容で、まだ一部記事にしてないことがいくつかあります。
順に記事にしていこうと思います。今回は1のヘリオスターのエタロンについてです。


これまでの結果

これまでに、PST、フェニックスと、手持ちの太陽望遠鏡のエタロンの特性を測定してきました。





PSTに比べて、フェニックスが圧倒的に性能が良くなっているという結果でした。

具体的には、鏡間の距離が0.3mmから0.2mm程度に短くなってFSRが1.5倍広がったために、両隣のピークの影響がすくなくなったこと、FSRが広がってピークの太さは太くなるはずなのに、鏡の反射率を70%程度から90%程度に上げて、FWHMを捕捉してよりHα線をコントラストよく補足するようになっていることがわかりました。

今回はそれに加えて、CP+セミナーのためにお借りしていたヘリをスター100Hαについても同様の測定をしてみます。公称値ではフェニックスが0.6Å以下、ヘリオスターが0.5Å以下となっていて、差がついています。特にこの差が有意なのかどうか、フェニックスのエタロンに比べて違いがあるのかどうかに注目です。


ヘリオスター100Hαの測定

測定方法はフェニックスの時とほぼ同じです。測定日は2月8日、LEDライトを使って測定しています。確度依存性をなくすために鏡筒を使い、対物レンズ側からLEDライトを入射します。

IMG_2532

分光器はSHG700を使い、カメラはG3M678M。画像としては
  1. 分光器のみで鏡筒をつけないフランホーファー線
  2. 鏡筒からBF(ブロッキングフィルター)を外した状態(エタロンの測定)
  3. 鏡筒のノーマルの状態(エタロンあり、BF無し)で太陽望遠鏡としての測定
  4. BFのみ分光器に取り付けた場合
の4つを撮影しています。この中で今回は1、2、4を使っています。

1枚の分光画像の撮影は、10秒露光で10スタックの計100秒間撮影しています。ゲインは3200(=ZWOだと300に相当)で、オフセットをSharpCapの値で2000加えています。


測定結果

波長のキャリブレーションはこれまで同様に、フラウンホーファー線を撮影し、参照データ(PEPSI)にフィッティングしています。
Figure_1
エタロンの透過特性の測定値とフィッティングです。
fit_result
  • 鏡の強度反射率、強度透過率: R = r^2 = 0.909, T = t^2 = 0.091
  • キャビティーの鋭さを表すFinesse = π r/(1-R) = 33.1
  • エタロンを構成する鏡と鏡の間の距離 = 0.208 [mm]
  • 周期の幅を表すFSR (Free Spectrul Range) = 10.34 [Å]
  • エタロンの性能を表すFWHM = FSR/Finesse=0.31 [Å]
  • 光の折り返し回数: Finesse x 2/π = 21.1 [回 (片道)]
という結果になりました。

フェニックスのFWHMが0.37Åでヘリオスター100Hαが0.31Åと、約2割違うことがわかります。公称値も0.6Å以下と0.5Å以下で2割の差があるで、ちょうどその違いを説明できています。今回測定したFWHMの絶対値がまだどこまで信頼できるかはわかりませんが、少なくとも同様の方法で測定しているので相対的な違いはある程度正確に評価できていると考えると、公称値の違いも含めてこの差は有意であると考えて良さそうです。これは推測ですが、今回FSRの値はほぼ一緒の0.2mmなので、おそらくエタロンと作っている会社は同じではないかと思います。その上で、公称値に差をつけているということは、鏡の反射率を実際に変えてFWHMに差をつけていると考えると素直な気がします。

続いて、BFも考慮した場合の透過曲線です。エタロンの測定値とBFの測定値を掛け合わせています。BFは両隣のピークからの漏れをカットする役目がありますが、グラフを見る限り十分カットしていることがわかります。
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さらに、太陽光を掛け合わせたものです。太陽光を掛け合わせると、両隣のピークの影響が少し出てくることがわかりますが、積分した総光量に対する量としてはごく僅かで、大した影響はなさそうなことがわかります。
all_sun_multi

ここまで見ても、相当性能の良いエタロンだということがわかります。


エタロン透過曲線のフィッティングについて

少し考察します。エタロンのフィッティング曲線をPST、フェニックス、ヘリオスターを並べてみます。

fit_result

fit_result_ok

fit_result
よく見ると、どのグラフもピークの裾の部分が、実測とフィッティングがずれしまっているように見えます。いずれも実測よりもフィッティングの方が大きく出てしまっています。

もし、裾野部分のフィッティングが実測に合うように重みづけをして改めてフィットしたりすると、おそらくフィッティングしたピークはもっと細くなって、FWHMはさらに小さくいい値になってしまうでしょう。今でもPST、フェニックス、ヘリオスターの公称値

1.0Å以下、0.6Å以下、0.5Å以下

に対して、私が実測した値は
0.71Å、0.37Å、0.32Å
と公称値よりかなりいい値になっています。これに、裾の影響を補正するとさらにいい値になってしまうのは、方向性として果たして正しいのでしょうか?

そもそも、なぜ実測とフィティングでズレが起きるのか考えてみます。光キャビティーは一般的にはh状に素直な応答を示し、かなり理論的に説明できるものです。今回のずれは光キャビティーそのものというよりは、その測定方法に問題があると考える方が素直です。

では何が問題なのでしょうか?一つ考えられることは、測定時間が10秒x10スタック=100秒と長過ぎたことかと思われます。今回の応答はフィネスを見てもわかるように、そこそこ鋭いものになっています。実際、ヘリオスターはその鋭いピークゆえに実測点はわずか5-7点ほどです。ピーク周りに至っては3点ほどでピークを跨いで測定してしまっています。1つの測定はカメラの1ピクセルに相当します。ピクセルサイズを考えるとわずか2μmです。測定時間の間、カメラに入る光が全くずれなければいいのですが、地面や望遠鏡を載せている机が揺れるため、100秒の長い間には、例えばLEDライトと望遠鏡が相対的に僅かにズレることはあり得るでしょう。

もしピークのところがずれたとすると、どちら方向にずれても値は小さく読み取られます。値が小さくなる傾向はピークに近いところほど顕著で、裾に行くに従って緩和されます。すなわち、ピークが低い値で測定され、ピークに近いところではその分太るので、本来のピークよりも頭でっかちなものとして測定されていると考えられます。その頭でっかちなところを合わせるようにフィットすると、裾の部分でズレが大きくなり、本来のFWHMよりも大きな、性能の悪いものと結果が出てしまいます。

この推測が正しい、もしくは他の理由で裾がズレるとしても、いずれにせよ裾の方が測定点が多く、本来の値からのズレは少ないと考え、ピーク部分のずれが本来の値から大きくズレると考えると、実際のFWHMはもっと小さいと考えて良さそうです。

ただし、今回は撮影画像の上に凸の曲線の真ん中の部分だけを使っているので、エタロンの中心部のみを測定していることになります。もしかしたら端の方はもっと透過幅が大きくて、その平均を取るとメーカー値に近づくのかもしれません。ここら辺は今後の課題としたいと思います。

どこをどう測定するかで値は変わってきそうですし、一番いい最小値か、平均値か、最低限の保証をするために最大値を採用するかなどは、メーカーによっても方針が違うかもしれません。やはりきちんと比較するためには、同じ方法で、同じ基準で比較すべきで、そういった意味では手元に持って実測して相対値を比較するのが一番確実だと思われます。少なくとも、今回まででPSTとフェニックスとヘリオスター100Hαの違いは、相対的にはっきり見ることができたというのが結論になると思います。


まとめ

これで手持ちと借りたもののエタロンとBFの測定が終わりました。太陽望遠鏡は高価なのでなかなか自分で買うことはできません。もし今後借りたり、もしくは新しい鏡筒を手に入れたりできた場合にはまた測定を続けようと思います。

あと、もう少し精度を上げたいとも考えています。短時間測定や中心部以外を測定するのも、今後余裕があったら試すことができればと思います。


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