先週の「星もと」でSuper WideBino36を購入しました。販売開始はかなり前でずっと気になっていたのですが、でもなかなか購入に踏み切れなかった星座ビノです。今回は、Super WideBino36を含んだいくつかの星座ビノの見栄えを比較してみようと思います。
以前の比較記事などは
になります。ご参考に。
今回の比較のエントリーです。
購入順に
比較は飛騨コスモス天文台の観望会の際に行いました。ただしここは、暗くなると星が見えすぎてしまい裸眼と星座ビノの差があまり出ない可能性があるので、今回は星座ビノの効果が最も現れる、少し明るめの薄明終了前くらいの空で行いました。
まず基準となる星座ビノを、今回のエントリーの中では一番古くからあるNikonのTC-E2にします。星座ビノの最高峰と言われるTC-E2を基準にするのは少々酷かもしれませんが、今回はそれくらいハイレベルの戦いになります。
まずはNikon TC-E2です。これは市販品ではなく、以前ビデオカメラ用に使われていた、像を拡大するためのテレコンビノというものを2つ利用した、基本自作品になります。上板2丁目さんという方が数多く制作されていて、星まつりやヤフオクなどで販売されています。現在は入手が困難になりつつありますが、突き詰めていくとこのTC-E2に行き着くという方も多く、テレコンビノの最高峰と呼ばれることもあります。
はい、というわけで、これを見ている限り不満はありません。収差、像の閉まり具合、コントラスト、どれも素晴らしいです。これで不満があるというなら、もう星座ビノというもの自身の不満になるかと思います。でもですねー、今回Super WideBino36を見てこの評価が変わったんですよ...。詳しくはSuper WideBino36の項で。
次は笠井のCS-BINO 3x50です。笠井は星座ビノを2系統販売しています。一つは市販の星座ビノとしては最初期からあるWideBinoシリーズで、実視野で28度を誇るWideBino28と今回比較する実視野なんと36度のSuper WideBino36の2種類です。もう一つが安価なCSシリーズで、2倍のCS-BINO 2x40と3倍のCS-BINO 3x50です。CSシリーズには2倍の単眼バージョンもあります。
とにかくCS-BINO 3x50の特徴は3倍であるということ。これまでも何度か説明していますが、見える星の数は原理的には倍率のみで決まります。口径などは関係ありません。3倍の星座ビノはこれまでの2倍のものよりも圧倒的に見える星の数が増えます。
そういった意味ではNikonのTC-E2よりはるかに見えていいはずなのですが、実際の星の数はあまり違いがありません。厳密にいうと3倍のこのCS-BINO 3x50の方が暗い星まで見えますし、星の色の違いもCS-BINO 3x50のほうがよくわかります。でもNikonは十分それに迫っています。これはCS-BINO 3x50が悪いのではなく、Nikonの方が良すぎると言った方がいいでしょう。
それよりもNikonと決定的に違うのは、CS-BINO 3x50は倍率が3倍なので「大きく見えてしまい」、「見える範囲が小さくなる」ことです。なので、星座によっては全部一度に視野に入らなくなることも多々あり、星座の形をよく知っている人にはオススメですが、星座の形をあまり思い浮かべることができな初心者の方にはやはり2倍のものがオススメかと思います。
このCS-BINO 3x50の利点は圧倒的に安価なことです。CS-BINOの2倍と3倍両方買っても税込みで約2万3千円。見比べ等もできることから、2つ一度に買ってしまった方が遥かに楽しめると思います。
こちらも3倍のもので、サイトロンから販売されています。笠井の3倍の後に出たもので、昼間に比べてみると明らかに周辺像が改善しているのがわかります。
ですが夜に星を見ながらだと、その違いは全く分かりませんでした。人工的な直線などで比較すると分かる違いですが、そういった比較物がない夜の星だけだと、少なくとも私の目では違いを見出すことができませんでした。なので見え味としては笠井のCS-BINO 3x50と感想はほとんど同じで、普通の2倍の星座ビノより見える星の数は圧倒的に増え、その一方で見える範囲は減ります。最高峰のNikonのTC-E2と比べてしまうと見える星の数はそこまでは変わらず、見える範囲はTC-E2より狭いというものです。
Stella Scanも2倍のものが出ているので、こちらも一度に2倍と3倍を両方買ってしまって、比較などして楽しむのも一つの手です。
こちらも高性能と評判のCanon製のテレコンビノを利用した星座ビノです。NikonのTC-E2よりはマイナーなので星座ビノとしてはそれほど作られていないと思われます。TC-E2と比較したくて、2021年の小海の星まつりで上板2丁目さんから譲っていただきました。
TC-DC10だけで見ている限り、とてもよく見えると言うのが最初の印象でした。それでもTC-E2と直で比べるとその差がわかってしまいます。TC-E2や3倍で見ると見える星が、TC-DC10だと見えないことがあります。例えば今回夕暮れの明るいうちにこと座を見比べて見たのですが、TC-E2と3倍で見えたこと座の平行四辺形の4つの星のうちの一番暗い三角よりの星が、TC-DC10だと見えませんでした。
かといって、TC-DC10が悪いのかというと全くそんなことはなく、普通の2倍の星座ビノと比べると見える星の数に見劣りはなく、シャープさではかなり優秀な部類です。2倍のものを3倍と比べることなどが本来無理があるというわけです。そう考えるとTC-E2の性能の良さを改めて実感でき、比較目的で手に入れたこのTC-DC10は私的にはそれだけで価値のあるものです。他の2倍の星座びの同様、観望会で活躍してもらいます。
最後は今回の目玉のSuper WideBino36です。改めて確認しておきますが、倍率は2倍です。それでも見える星の数はTC-E2や3倍のビノとに比べて全然遜色ありません。明らかに通常の2倍ビノとは差があり、最高峰と言われているTC-E2に迫っています。
しかもパンフォーカスでピントを合わせることができないTC-E2と違って、Super WideBino36は当たり前ですがピント調整が普通にできます。これは私個人のことなのですが、眼鏡の度数があまり合っていなくて普段あまり星をきちんと見ることができていません。とくに右目がだいぶ悪くなってしまっているために、右だけを比べると明らかにSuper WideBino36のほうがよく見えています。
私はTC-E2の唯一の欠点がピントを合わせることができないことだと思っていたので、Super WideBino36はこの欠点を完全に解決しています。かつ見え味はTC-E2に相当するので、個人的な評価としては目の悪い人でも最高クラスの星座ビノを味わうことができると言う意味で、Super WideBino36のほうが上という判断です。
Super WideBino36があまりに素晴らしいので、頑張って欠点を探してみました。唯一気づいたのが、木星クラスの明るい星を見た時で、ジャスピン位置が合わせきれないように見えたことでしょうか。ピントを内外にずらすと、点像が縦方向横方向にそれぞれ伸びるのですが、注意してピントを合わせても完全に縦横のずれが消えることがないことがわかります。ただしこれ、飛び抜けて明るい星以外では全くわからないです。なので欠点というには至らなく、シャープさ、コントラストなど、私としては満足の逸品です。
NikonのTC-E2の入手性がかなり悪くなってきている現在、それを置き換えることのできる、今のところ唯一の星座ビノがSuper WideBino36だと思います。TC-E2を持っていて目がいい人はあえて買わなくてもいいかと思いますが、TC-E2を持っていても目が悪い人、TC-E2を手に入れるのが難しい人は迷わずSuper WideBino36でいいかと思います。3倍の星の数と、2倍の視野の広さを兼ね備えていると言ってしまってよく、少し値段は高くなりますが、一台選ぶとしたらこれをお勧めします。
その一方、2倍と3倍を2台もつ楽しさ(比較や二人で見る場合など)もあるので、Super WideBino36を1台だけにするのと迷います。いや、いっそのこと3台買ってしまうのが一番幸せかもしれません。ちなみに私は手持ちで11台の星座ビノがあるので、3台くらいなら全然アリだと思います。
今回はハイレベルな星座ビノの比較となりました。星座ビノに一般的な2倍という倍率でも、機種によっては性能差があることがわかり、一部は3倍相当の星の数が見えることがわかりました。市販されている星座ビノの種類もかなり増えてきていますが、今回満を辞して手に入れたSuper WideBino36は、現行モデルでその可能性を味わうことができます。まだまだ星座ビノも発展する余地があるのかもしれません。
以前の比較記事などは
になります。ご参考に。
エントリー機種
今回の比較のエントリーです。
購入順に
- Nikon TC-E2を利用した星座ビノ(2019/4/12 ヤフオクで上板2丁目さんから落札)
- 笠井CS-BINO 3x50(2020/1/4 Amazonで購入)
- SIGHTRON Stella Scan 3x48(2021/1/17 SCOPIOで購入)
- Canon TC-DC10を利用した星座ビノ(2021/11/13 小海「星と自然のフェスタ」で上板2丁目さんから購入)
- Super WideBino36(2022/9/18 「星をもとめて」でUCトレードから購入)
比較の基準
比較は飛騨コスモス天文台の観望会の際に行いました。ただしここは、暗くなると星が見えすぎてしまい裸眼と星座ビノの差があまり出ない可能性があるので、今回は星座ビノの効果が最も現れる、少し明るめの薄明終了前くらいの空で行いました。
まず基準となる星座ビノを、今回のエントリーの中では一番古くからあるNikonのTC-E2にします。星座ビノの最高峰と言われるTC-E2を基準にするのは少々酷かもしれませんが、今回はそれくらいハイレベルの戦いになります。
Nikon TC-E2
まずはNikon TC-E2です。これは市販品ではなく、以前ビデオカメラ用に使われていた、像を拡大するためのテレコンビノというものを2つ利用した、基本自作品になります。上板2丁目さんという方が数多く制作されていて、星まつりやヤフオクなどで販売されています。現在は入手が困難になりつつありますが、突き詰めていくとこのTC-E2に行き着くという方も多く、テレコンビノの最高峰と呼ばれることもあります。
はい、というわけで、これを見ている限り不満はありません。収差、像の閉まり具合、コントラスト、どれも素晴らしいです。これで不満があるというなら、もう星座ビノというもの自身の不満になるかと思います。でもですねー、今回Super WideBino36を見てこの評価が変わったんですよ...。詳しくはSuper WideBino36の項で。
CS-BINO 3x50
次は笠井のCS-BINO 3x50です。笠井は星座ビノを2系統販売しています。一つは市販の星座ビノとしては最初期からあるWideBinoシリーズで、実視野で28度を誇るWideBino28と今回比較する実視野なんと36度のSuper WideBino36の2種類です。もう一つが安価なCSシリーズで、2倍のCS-BINO 2x40と3倍のCS-BINO 3x50です。CSシリーズには2倍の単眼バージョンもあります。
とにかくCS-BINO 3x50の特徴は3倍であるということ。これまでも何度か説明していますが、見える星の数は原理的には倍率のみで決まります。口径などは関係ありません。3倍の星座ビノはこれまでの2倍のものよりも圧倒的に見える星の数が増えます。
そういった意味ではNikonのTC-E2よりはるかに見えていいはずなのですが、実際の星の数はあまり違いがありません。厳密にいうと3倍のこのCS-BINO 3x50の方が暗い星まで見えますし、星の色の違いもCS-BINO 3x50のほうがよくわかります。でもNikonは十分それに迫っています。これはCS-BINO 3x50が悪いのではなく、Nikonの方が良すぎると言った方がいいでしょう。
それよりもNikonと決定的に違うのは、CS-BINO 3x50は倍率が3倍なので「大きく見えてしまい」、「見える範囲が小さくなる」ことです。なので、星座によっては全部一度に視野に入らなくなることも多々あり、星座の形をよく知っている人にはオススメですが、星座の形をあまり思い浮かべることができな初心者の方にはやはり2倍のものがオススメかと思います。
このCS-BINO 3x50の利点は圧倒的に安価なことです。CS-BINOの2倍と3倍両方買っても税込みで約2万3千円。見比べ等もできることから、2つ一度に買ってしまった方が遥かに楽しめると思います。
Stella Scan 3x48
こちらも3倍のもので、サイトロンから販売されています。笠井の3倍の後に出たもので、昼間に比べてみると明らかに周辺像が改善しているのがわかります。
ですが夜に星を見ながらだと、その違いは全く分かりませんでした。人工的な直線などで比較すると分かる違いですが、そういった比較物がない夜の星だけだと、少なくとも私の目では違いを見出すことができませんでした。なので見え味としては笠井のCS-BINO 3x50と感想はほとんど同じで、普通の2倍の星座ビノより見える星の数は圧倒的に増え、その一方で見える範囲は減ります。最高峰のNikonのTC-E2と比べてしまうと見える星の数はそこまでは変わらず、見える範囲はTC-E2より狭いというものです。
Stella Scanも2倍のものが出ているので、こちらも一度に2倍と3倍を両方買ってしまって、比較などして楽しむのも一つの手です。
Canon TC-DC10
こちらも高性能と評判のCanon製のテレコンビノを利用した星座ビノです。NikonのTC-E2よりはマイナーなので星座ビノとしてはそれほど作られていないと思われます。TC-E2と比較したくて、2021年の小海の星まつりで上板2丁目さんから譲っていただきました。
TC-DC10だけで見ている限り、とてもよく見えると言うのが最初の印象でした。それでもTC-E2と直で比べるとその差がわかってしまいます。TC-E2や3倍で見ると見える星が、TC-DC10だと見えないことがあります。例えば今回夕暮れの明るいうちにこと座を見比べて見たのですが、TC-E2と3倍で見えたこと座の平行四辺形の4つの星のうちの一番暗い三角よりの星が、TC-DC10だと見えませんでした。
かといって、TC-DC10が悪いのかというと全くそんなことはなく、普通の2倍の星座ビノと比べると見える星の数に見劣りはなく、シャープさではかなり優秀な部類です。2倍のものを3倍と比べることなどが本来無理があるというわけです。そう考えるとTC-E2の性能の良さを改めて実感でき、比較目的で手に入れたこのTC-DC10は私的にはそれだけで価値のあるものです。他の2倍の星座びの同様、観望会で活躍してもらいます。
Super WideBino36
最後は今回の目玉のSuper WideBino36です。改めて確認しておきますが、倍率は2倍です。それでも見える星の数はTC-E2や3倍のビノとに比べて全然遜色ありません。明らかに通常の2倍ビノとは差があり、最高峰と言われているTC-E2に迫っています。
しかもパンフォーカスでピントを合わせることができないTC-E2と違って、Super WideBino36は当たり前ですがピント調整が普通にできます。これは私個人のことなのですが、眼鏡の度数があまり合っていなくて普段あまり星をきちんと見ることができていません。とくに右目がだいぶ悪くなってしまっているために、右だけを比べると明らかにSuper WideBino36のほうがよく見えています。
私はTC-E2の唯一の欠点がピントを合わせることができないことだと思っていたので、Super WideBino36はこの欠点を完全に解決しています。かつ見え味はTC-E2に相当するので、個人的な評価としては目の悪い人でも最高クラスの星座ビノを味わうことができると言う意味で、Super WideBino36のほうが上という判断です。
Super WideBino36があまりに素晴らしいので、頑張って欠点を探してみました。唯一気づいたのが、木星クラスの明るい星を見た時で、ジャスピン位置が合わせきれないように見えたことでしょうか。ピントを内外にずらすと、点像が縦方向横方向にそれぞれ伸びるのですが、注意してピントを合わせても完全に縦横のずれが消えることがないことがわかります。ただしこれ、飛び抜けて明るい星以外では全くわからないです。なので欠点というには至らなく、シャープさ、コントラストなど、私としては満足の逸品です。
NikonのTC-E2の入手性がかなり悪くなってきている現在、それを置き換えることのできる、今のところ唯一の星座ビノがSuper WideBino36だと思います。TC-E2を持っていて目がいい人はあえて買わなくてもいいかと思いますが、TC-E2を持っていても目が悪い人、TC-E2を手に入れるのが難しい人は迷わずSuper WideBino36でいいかと思います。3倍の星の数と、2倍の視野の広さを兼ね備えていると言ってしまってよく、少し値段は高くなりますが、一台選ぶとしたらこれをお勧めします。
その一方、2倍と3倍を2台もつ楽しさ(比較や二人で見る場合など)もあるので、Super WideBino36を1台だけにするのと迷います。いや、いっそのこと3台買ってしまうのが一番幸せかもしれません。ちなみに私は手持ちで11台の星座ビノがあるので、3台くらいなら全然アリだと思います。
まとめ
今回はハイレベルな星座ビノの比較となりました。星座ビノに一般的な2倍という倍率でも、機種によっては性能差があることがわかり、一部は3倍相当の星の数が見えることがわかりました。市販されている星座ビノの種類もかなり増えてきていますが、今回満を辞して手に入れたSuper WideBino36は、現行モデルでその可能性を味わうことができます。まだまだ星座ビノも発展する余地があるのかもしれません。