ほしぞloveログ

天体観測始めました。

カテゴリ:赤道儀・経緯台・三脚 > AZ-GTi

前回の記事で、SWAgTiのディザーがうまくいくかもと書きましたが、まだ確証がありませんでした。


少し晴れ間があった日の夜、改めてディザー撮影ができるかどうか試してみました。長時間露光が効く天体ということで、M27亜鈴状星雲の羽を狙うことにしました。 

最初に結果だけ書いてしまいます。3分露光で40枚、2時間分の撮影ができましたが、
見事にディザーで画面を揺らすことができました!

動画で示します。ピョコピョコずれているのがわかるかと思います。
Blink

これで縞ノイズが解決されるのか、画像処理までしてみます。


設定

今回のSWAgTiのディザーをソフト的にどう設定したのか、詳しく書いておきます。

ディザーですが、通常の場合はオートガイド撮影が前提で、オートガイドによってソフト側から撮影中に信号を出して架台を制御できる状態にしているわけです。ディザーはそれに加えて1枚1枚の撮影の合間に、架台に信号を出して少しだけ(数〜数十ピクセル)画角をずらし、ホットピクセルが重ならないようにして、また撮影に入ります。

通常のディザー撮影から考えると、SharpCapのディザー撮影はかなり特殊です。まずガイド撮影やディザーは基本的にライブモードを使います。なぜこう設計したのかは少し疑問もあるのですが、とにかくライブモードでしかガイド撮影もディザーも出来ません。さらに特殊なことは、SharpCapでは、オートガイドなしでディザーすることができます。要するに、ガイド鏡がなくても、PHD2などのガイドソフトを使わなくても、それらとは独立にディザーができてしまうということです。もちろん、ディザーで架台に信号を送る必要はあるので、その制御のためのセットアップは必要です。それでもこの「オートガイドが必要ない」ということは、SWAgTiのお気楽撮影の目的にかなり合致していて、今のところSharpCap以外にガイド無しでディザー出来るソフトは、少なくとも私が探した限りでは見つかりませんでした。今回SWAgTiの撮影ソフトにSharpCapを選んだのは、ガイドと独立してディザーができるというのが1番の理由です。だって、SWATの追尾性能が飛び抜けていいのに、あえてガイド鏡とか用意するのはなんか負けた気がするからです。

そのディザーの設定です。まずはSharpCapの設定のガイドタブから。
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  • 「ガイディングアプリケーションは」3つ目の「ガイディング無し」を選びます。これでガイドは無しでディザーのみできるようになります。
「ディザリング」のパラメーターは状況に応じて適当に設定しますが、重要なのはどれだけずらすか、収まるまでにどれくらいかかるかでしょうか。
  • 今回はディザーでの揺れ幅を見るために「最大ディザステップ」をかなり大きくしています。これはもっと小さくてもいいでしょう。
  • 「最小整定時間」はある程度長めの方がいいかと思います。ディザー時にAZ-GTiを動かすのですが、モーターの精度がSWATと比べて劣るので、キックしてしばらく揺れる可能性があります。一年前のテストではそんな兆候が見られたのですが、今回撮影した画像を見ている限りではキックのようなものは確認できなかったので、あまり気にしなくてもいいのかもしれません。

次に、ライブスタックモードでのガイドタブの設定です。
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  • 最初の「Monitor Guiding Applicaton」にチェックを入れると、実際にディザーされます。
  • 「Only stack when guiding is active」はチェックしましたが、ちょっと確かめきれていません。これがないとディザーしている最中もライブスタックするかもしれません。
  • 私は3枚撮影するごとにディザーするようにしています。1枚ごとにディザーをかけると撮影終了までの時間が増えてしまからです。
  • 「Reduce Exposure While Dithering」はオンにしておいてください。長時間露光に設定してあっても、ディザーの最中は短時間露光に勝手に切り替えてくれます。揺れが収まったかどうか見るのに、短時間露光で比較することが必要になります。
  • 右に、ディザーやドリフトなどで中心からずれていくと、プレートソルブを使って元に戻すという機能もあります。今回は使っていませんが、M27のような中心が決まりやすい天体はオンにしておいたがいいかもしれません。

もう一つ重要な設定があります。ライブスタック画面左の「Raw Frames」のところです。
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  • ここを「Save except for when Paused/Dithering」にしておきます。こうしないと、ディザリング中の短時間露光の画像が何枚も保存されてしまいます。
今回は露光時間を180秒、ゲインを200でHGCモードにしてライブスタクを始めると、3分ごとにRAW画像が保存され、3枚ごとにディザーが適用されます。ディザーが動いているかどうかは、ライブスタックパネルの「Log」タグを見ると、実行時に色々メッセージが出てくるので、それを読むとうまくいっているかなど詳細が分かります。

あとは通常のライブスタックと同じでしょうか。あ、一つ忘れそうなことがあります。毎回のことなのですが、AZ-GTiで追尾をオフにしても、SharpCapでライブスタックを立ち上げた瞬間になぜか強制的にAZ-GTiの追尾がオンになります。ライブスタックをオンにしたときに、毎回必ずAZ-GTiの追尾を改めてオフにするようにしてください。そうしないと2重で追尾することになり、星が画面内を流れていきます。


プレートソルブがトラブルの種

撮影中は少し雲がかかっていましたが、基本的に安定していて順調でした。前回書きましたが、プレートソルブが安定性に関係するのは確実みたいです。

まだ一回しか試せてませんが、最初にプレートソルブをしてから長時間露光を開始すると、やはり1枚目の途中でSharpCapの「望遠鏡制御」のところの「赤経」の更新頻度が徐々に広がり、程なくして更新が止まります。その後、ディザーをするときにSharpCapからSynSan Proに信号を出しても反応がないので、エラーダイアログが出てきます。

一旦、AZ-GTiの電源を落とし、PCも再起動し、次はプレートソルブなしでマニュアルで再度初期アラインメントから試すと、不安定なところは微塵も出ずに、まるまる2時間連続で撮影ができました。プレートソルブの具体的などの操作が原因なのかまでは特定できていません。できればプレートソルブはつかいたいので、何か回避策がないか今後探っていきたと思います。


ライブモードでの実際のディザー撮影

さて、撮影ですがディザーはライブスタックモードですることになるので、必然的に常時仕上がり具合を見ることができます。これが結構楽しかったです。なんと、総露光時間わずか30分ですでに羽が確認できます。
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鏡筒のせい?カメラのせい?ちなみに鏡筒は最近手に入れたRedCat51で、カメラがUranus-C Proです。フィルターはサイトロンのDBP(Dual Band Pass)の48mmをRedCatに取り付けて使いました。機材については次回記事で詳しく書きます。

約2時間経ったのちのライブスタック画像です。羽もさらに濃くなっています。
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うれしいことに、少なくともこれを見る限り縞ノイズは全く発生していないようです!

2時間少し撮影しましたが、最後の数枚は雲が出てきたので、ちょうど2時間分を画像処理に回すことにします。上のライブスタック画像は最後の雲の画像も入ってしまっていますが、長時間露光から考えたら影響は少ないようです。


ライブスタックとWBPPでのスタック

ライブスタック画像をfits形式で保存したRAWファイルと、PixInsightでスタックした画像にどれくらい違いがあるか比較してみましょう。一見したところではクオリティーは同じかと思いました。

これがライブスタック画像をオートストレッチした画像です。
Stack_16bits_41frames_7380s_22_23_34_cut


次がPixInsight上でスタックした画像をオートストレッチした画像です。
180.00s_RGB_cut

ほとんど同じに見えるかもしれませんが、よく見るとライブスタック画像の左上の真ん中よりに明るい緑の輝点群が、右下に軽く青の輝点群があるのがわかります。ホットピクセルが残っていて、ディザーで散らされたものの残りと思われます。PixInsightではWBPPの際に、Cosmetic CorrectionをAutomaticでhigh sigma = 10でかけたので、そこでホットピクセルが除去されたのかと思われます。ライブスタックでもSharpCapで簡易ホットピクセル除去をするだけでも、ライブスタック画像もそのまま処理できるくらいにホットピクセルが消えるかもしれませんが、今回は試していません。

今回、WBPPではフラット補正もダーク補正もしていません。RedCat51と1/1.2インチのUramus-Cではフラット補正は必要がないほど周辺減光はないです。あ、CMOSセンサー面に埃がついているとダメですよ。フラット補正が必須になります。フラット補正をサボるためには、少なくともセンサー面はきれいにしておきましょう。ダーク補正もしていないので、ホットピクセルとコールドピクセルはCosmetic Correctionで除去しているだけですが、これで十分なようです。ダーク補正をしない場合は大きなメリットが一つあります。ダーク補正によってダークカレント起因のダークノイズが余分に加算されないということです。今回のような強い光害補正フィルターを使った「暗くて」、さらに「長時間露光」での撮影では、背景などの淡い部分がダークノイズで制限されている可能性があり、画像処理でダークノイズを増やさないことはかなり有利になります。具体的には、ダーク補正をするとダークノイズは√2倍になり、信号は増えなくて1倍のままなので、仕上がり画像のSN比の違いは最大で1/√2 = 0.71倍となり、損をします。ダーク補正についてのもっと詳しい計算を知りたい方はここをご覧ください。


一つ心配だったのは、バイアス補正でした。今回、バイアス補正もしていません。なのでバイアスファイルに含まれる決まった模様などのコヒーレントなノイズは除去されていないことになります。バイアスファイルに含まれるノイズは読み出しノイズと考えていいかと思いますが、長時間露光で相対的に読み出しノイズは効きが弱くなるはずなので、みている限り今回は影響がないように思われます。

と、今のところこのセットアップだとフラット補正もダーク補正もバイアス補正も、あえてしなくても問題はなさそうです。仮に多少画質に影響はあったとしても、フラットファイルとダークファイルとバイアスファイルを撮影する手間を省くのは、相当気楽です。


画像処理

画像処理はSWAgTiのコンセプトを崩さないように、できるだけシンプルにしたいと思います。WBPPでも、上で書いたようにライトフレームだけを処理しています。

上で書いたように、このRedCat51とIMX585の1/1.2インチ程度の範囲だと、光学的なフラット補正無しでも周辺減光がほぼありません。一度ABEの4次をかけましたがほとんど補正しなかったので、簡単のためPixInsightでのソフト的なフラット補正も無しとしました。 
masterLight_BIN-1_3856x2180_EXPOSURE-180.00s_FILTER-NoFilter_RGB
スタック直後の画像の強あぶり出し。周辺減光はほとんど見られません。
左にカブリが少しあるように見えますが、これは実際に何か構造があるようです。
この構造はかなり淡く、今回の露光時間ではまだノイジーで
うまく出すことは諦めました。

結局PixInsightで使ったのは、スタックでWBPP、色調整でSPCC、恒星出しにBXT、ストレッチにiHDR、最後にNoiseXTerminatorで背景のノイズを緩和して、StarNet++で恒星と背景を分離までで、あとはPhotoshopに渡します。今回iHDRがうまくいって、自動的にうまく羽根まで炙り出してくれたので、Photoshopでは背景と恒星を重ねること以外には、ホントに最後微調整したくらいです。


結果

まずは全体像です。
180.00s_RGB_SPCC_BXT05_02_10_iHDRx3_NXT05_015_back2

少し画角が広いので、クロップしてみます。わずか2時間の露光ですが、既に羽もはっきりとわかります。

180.00s_RGB_SPCC_BXT05_02_10_iHDRx3_NXT05_015_back2_cut

肝心な縞ノイズですが、拡大した画像でも全く見えていません。

SWAgTiのディザー撮影大成功です。

これでSWAgTiが一気に実用的になりました。今後デフォルト機器として、使う頻度が増えてくると思います。


まとめ

SWAgTiのアイデアが出てから苦節1年。縞ノイズがどうしても気になって、どうやって解決しようかずっと悩んでいました。

一時はSharpCapとSynScan Proの間に何かソフト的に割り込ませようとも思いましたが、プログラミングはあまり得意でないので時間がかかりそうでした。でもそこにSharpCapが大幅改善されていて、(プレートソルブで不安定になる以外は)ほぼ目的通りのことができました。正直言って、わざわざガイド無しディザーを実用レベルに持ってくるためのアップデートだったとしか思えません。でもそもそもガイドも無しでディザーをやりたい人が実際どれくらいいるのでしょうか?たまたま開発がこの方向で進んだのか、もしくは誰かが開発者に助言してくれたのか、最近SharpCapフォーラムなどあまりフォローしていないので状況がわかっていませんが、とにかく感謝でしかありません。

ここまで使えるようになると、このSWAgTiで色々試したいことが出てきます。軽くて、コンパクトで、設置も楽。精度も出るし、機能的にも十分。5kg以下の機材は全てSWAgTiまかせにしてよさそうです。CGX-LもしくはCGEM IIとSWAgTiの2台体制でも、時間的にも精神的にも十分余裕が出そうです。使用頻度が大幅に増える予感しかありません。


今回の目的はSWAgTi君を使って、ノータッチガイド撮影でディザーをすることです。

でも結論だけ言うと、現段階の環境でノータッチガイドで、ディーザーだけ追加というのは難しいと言うことがわかりました。どんなことを試したか、実際の撮影に即して書いておこうと思います。


たわみの影響

前回の記事で、極軸の精度について話しました。でも実際に撮影を始めてみると、合わせたはずの極軸精度よりも、一方向に大きく流れていってしまうことがわかりました。

原因の目処はついています。機材の撓み(たわみ)によるものです。ここで言う撓みとは、一般的なガイド撮影で問題となる「鏡筒とガイド鏡の相対的な撓み」のことではなく、「鏡筒、ガイド鏡、AZ-GTi、SWAT、三脚など、ありとあらゆるところで起きる撓み」のことで、影響は遥かに大きいです。

ガイド撮影の場合は、ガイド鏡で見た星の初期位置からのずれを赤道儀に返すことで、撮影鏡筒の向きがずれないよう補正します。それでも、ガイド鏡の固定が十分でなかったりすると、その撓みによってガイド鏡と撮影鏡筒の相対的なずれが発生して、撮影鏡筒での星像の流れに繋がります。でもこのズレは高々相対ズレに起因することなので、実用上はそこまで大きくはないです。それでも数時間とかに及ぶ長時間撮影では無視できない量になり、縞ノイズになることがあり、ディーザーを使い撮影途中で少し方向を変え、縞ノイズになる原因のホットピクセルやクールピクセルを散らしてやることにより、スタック画像ではほぼ影響がなくなります。

今回のノータッチガイドの場合の撓みは、撮影中に起きたどの場所で起きた機材の撓みもそのまま直結して星の流れになっていくので、遥かに影響が大きくなります。その大きさをざっくりですが見積もってみました。使ったのはSharpCapの曲軸調整機能です。

まず、使う機材を設置して、ガイド鏡を北に向けて、通常のように極軸調整をします。今回はFS-60CBの焦点距離が370mmと大して長くないことと、カメラがUranus-Cでそこそこセンサー面積が広いので、ガイド鏡を使わずに撮影鏡筒で直接極軸調整をしました。前回の記事でも書きましたが、微動雲台とか使わなくても、三脚の足の伸び縮みと水平方向の移動で、1分角程度の精度で合わせることは十分に可能です。調整の際に、赤道儀の赤経方向を90度程度傾けることで、カメラで見た製造の位置を比べ極軸方向とのずれを計算します。今回も下のように1分角以下程度、42秒角の精度で調整することができました。

04_polar_after

極軸調整が終わった直後は、最初の位置に比べて鏡筒が90度赤経方向に傾いた位置にあります。今回、この位置から再度極軸調整をスタートします。再びずれの計算のために90度赤経方向に回転し、元の位置に戻します。その結果が以下になります。

05_polar_after_right

本来、たわみなどなければ最初に調整した時と同じくらいの値の1分角以下程度が出なければなりません。今回は3分角程度のずれが出てしまっています。何度か試しましたが、毎回有意にこれくらいずれます。反対側に90度回転させて測定した場合は5分角位のズレになることもありました。これは90度赤経方向に回転した時の撓みの量相当のずれをそのまま表していることになるはずです。

というこうこは、撮影して赤経が回転していくにつれ、6時間で3分角から5分角はずれてしまうことになります。STAgTi君での撮影時間を仮に2時間としても、1-2分角位はずれてしまということです。前回計算したように、カメラの1ピクセルが1.6秒角に相当するので、40ピクセルから80ピクセルくらい、もし左右両方向の回転のずれを合わせると120ピクセルくらいずれる可能性があり、それくらいの長さの縞ノイズが出ても全くおかしくないことになります。

例えば2時間程度何もいじらずに撮影した実際の画像はライブスタック画像は以下のようになり、盛大な縞ノイズが出ていることがわかります。縦方向に典型的に120ピクセルくらいの縞ノイズになっていて、オーダー的には撓み起因のずれで縞ノイズになっていると考えておかしくなさそうです。

Stack_16bits_21frames_3780s

この撓みがどこから来ているのか?三脚なのか、SWATの固定なのか、SWATとAZ-GTiの固定なのか、鏡筒の載せ方が悪いのか、はたまた全体で悪さをしているのか?今後調査して、弱いところが見つかったら補強していく方向になるかと思います。


撮影時のテクニック「DECモード」

ここで一つ、SWAgTiでの撮影し際してのテクニックです。ユニテックさんが前回の「ほしぞloveログ」の記事を紹介してくれた際に紹介してくれました。

SWATは電源ケーブルを繋ぐことですぐに動作体制に入りますが、その際赤経方向に一旦大きくズレ、やがて戻ってくるキックバックのようなことが起きます。元に戻るまで数十秒待つことになります。これを防ぐためには、あらかじめSWATの電源を入れておいて、その際に追尾モードを「DEC」に合わせておけば追尾をしないでそのまま止まってくれます。AZ-GTiの追尾をオフにする際に、この「DEC」を「STAR」にすれば、キックなしでスムーズに移行できるとのことです。

実際私も試してみましたが、撮影の際の画面を見る限りジャンプの様なものは全く見えずみ、スムーズに切り替えることが出来ました。


ディザーで縞ノイズを回避したい

今回の記事のメインの目的です。撮影する際にディザーを試してみます。

すでにSWATでの追尾にしてあり、AZ-GTiはSynScan ProとASCOM経由でSharpCapと接続されていますが追尾は止めてある状態から始めます。


1. SharpCap+AZ-GTi

SharpCapの設定でガイドのタブを選び、3つあるガイド検知方法のうちの一番下のASCOMを選びます。ちなみに1番上がphd2で、次がMGENです。3つ目を選ぶことで、ガイドソフトがなくてもディザーをすることができるようになります。

02_gudesetting


SharpCap上でガイド(ガイドソフトが有り無しにかかわらず)をする場合はライブスタックモードにする必要があります。ここらへんがSharpCapがイマイチ撮影に対してはちょっと?なところなのですが、まあこういうコンセプトということでとりあえずはよしとしましょう。

さて、撮影開始という意味でライブスタックを始めますが、ここで問題発生です。なぜかAZ-GTiの自動恒星追尾が勝手にオンになるのです。なので、再度マニュアルでAZ-GTiの自動追尾をオフにして、ずれた位置を少し合わせ直して、ライブスタックをクリアして一から撮影を始めます。ディザーは3枚おきにする様に設定しました。SharpCapのライブスタック画面のガイドタブのステータスを見ていると、ディーザーをしようとしているように見えます。でも10枚ほど撮影してから画像をチェックしても、全然ディザーされてる様子が見えません。

いろいろ試してわかったことは、ライブスタックを始めるときに「ガイドをするように選択している」と、勝手にAZ-GTiの「自動追尾がオン」になること、それをマニュアルであえてオフにしたりして「自動追尾がオン」にならない限りディザー信号はAZ-GTi側に行かないことがわかりました。

言い換えると、SharpCapからSynScan Proに信号を送る限りでは、AZ-GTiの自動追尾をSWATに切り替えた状態で、ノータッチガイドでディザーをする方法はないということです。


2. PHD2を使い、カメラ赤道儀共にシミュレーター

気を取り直して、次の方法を考えます。返す先がSynScan Proでだめなら、他の場所にと考えPHD2を立ち上げました。この場合、SharpCapの設定でガイドのタブの3つあるガイド検知方法のうち、一番上のPHD2を選びます。

03_guide_setting

ガイド鏡は使っていないので、PHD2は単なる擬似ガイダーとして使います。とりあえずはPHD2の設定でカメラも赤道儀もシミュレーターを選びます。SharpCapのディザー設定で、ディザーは3枚おきにするようにしました。3枚目になるとSharpCapはディザー信号をPHD2に送り、PHD2も反応していますが、AZ-GTiには信号が行かないようで、ディザー時にきちんと画角がずれている様子が全く確認できません。返す赤道儀がシミュレーターなので理解できる結果です。


2. PHD2を使い、カメラはシミュレーターだが、赤道儀はSynScan Proに設定

次に、カメラはシミュレーターで、赤道儀はSynScan Proを選び、実際にAZ-GTi信号を返すようにしてみます。確認ですが、ディザー信号だけ返したくて、SWATの精度を生かすためにガイド信号は返したくないです。

まず、PHD2の設定でガイド信号を返さないオプションを選んでみました。Advanced Setupの「guiding」タブの「Enable mount guide output」のチェックマークを外します。ですが、この状態だとSynScan Pro側に信号が全く行かないようで、ディザー信号も返すことができず、ディザー動作はしないようです。

次に、「Enable mount guide output」にチェックを入れ直して、ガイド信号を返すようにします。この場合も、ディザー信号のみ返してガイド信号は返したくないので、Agrを最初の0、MinMo(ズレがこの値を超えたら信号を赤道儀に返す)を最大の20、Hysを最小の10などとします。

04_PHD2_screen
ダミーカメラでSynScan Proに返しているため、
何度かディザーをしたあとはターゲット星が全然ずれてしまいます。

これは短時間では一見うまくいきます。3枚撮影するごとにディザー信号のみSynScan Proに返すようにしたので、3枚おきにディザー信号がAZ-Gtiまで行き、実際に指定したピクセル(上の設定だと50ピクセル)分だけ動きます。目で見てその動きがリアルタイムでわかるので、やっとうまくいったと喜んでいました。問題はそのまま長時間撮影が続いた場合です。疑似カメラのターゲット星からのズレがまだ小さい場合はいいのですが、そのズレが何度かディーザーを繰り返しある程度大きくなると、最大時間まで待って(上のSharpCapの設定だと20秒間)再び3分露光が始まります。さらに、あまりにターゲット星とのズレが大きくなると、PHD2の方でガイドが始まってしまい、これは実際にSynScan Proに信号を返していくので、その後どんどんズレが大きくなり、カメラは疑似カメラのままでフィードバックされたことを検知しないので収束することなく、最後破綻します。

あと、この過程で気づいた最大の問題は、AZ-GTiの精度がSWATと比べると悪いために、ディザー信号をAZ-GTiに返すと大きく揺れ過ぎてしまうことです。そのため、十分な緩和時間を取る必要があるのですが、上の20秒とかでは短すぎるようで、分単位の緩和時間が必要そうな様子です。


今後どうすべきか

今回はここで詰みとなりました。PHD2のパラメータはもう少し探れば何か見つかるかもしれませんが、大原則でディザーだけ返すというのはダメそうでした。その後、2軸ガイドとかも試したのですが、これはまた機会があったら記事にします。

ここまで試した上で、必要なことを考えてみます。とにかく大事なことは、ガイド信号を返さずに、ディザー信号だけ返すようなソフト側の対応です。今のところ一番見込みがあるのが、ASCOM経由でSynScan Proに信号を送る方法です。SynScan Proの恒星時追尾だけオフにして、SharpCapからのディザー信号をSynScan Proが受け取って実際にAZ-GTiを動かすことですが、上述のように恒星追尾をオフにするとディザー信号は伝わらないようで、今のところこれはできません。それでもSharpCapの矢印ボタンには反応するので、この矢印ボタン相当のところに返すことができれば、今回の目的は達成できそうです。

PHD2は触ってみた限り、そもそも外部から来た信号とPHD2から出す信号の区別がつかないようで、ディザー信号だけAZ-GTiに出すというのは根本的に難しいようです。

それでも原理的にソフト側で解決できる問題ではあるので、今のところはいつか解決するのを期待することとします。


せっかくなので仕上げてみる

ディザーは諦めたのですが、3日ほどに渡ってM27を色々試しながら撮り溜めた画像があり、それぞれバラバラの位置で撮影しているので、ある意味ナチュラルディザー状態になっています。せっかくなので仕上げてみます。


masterLight_180.00s_ABE124_SPCC_BXT_MS_NXT3
  • 撮影日: 2023年7月17日22時18分-23時16分、7月22日1時40分-2時6分、7月22日21時55分-23時39分
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: TAKAHASHI FS-60CB+マルチフラットナー(f370mm、F6.2)
  • フィルター: サイトロン Dual Band Pass (DBP)
  • 赤道儀: SWAT+AZ-GTi
  • カメラ: Player One Uranus-C(常温)
  • ガイド: なし
  • 撮影: SharpCap、bin1、Gain 200、露光時間3分x57で総露光時間2時間51分
  • Dark: Gain 200、露光時間3分、常温、64枚
  • Flat, Darkflat, Gain200、0.05秒、64枚
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC

ある程度長時間連続で位置をずらさずに撮影した分の縞ノイズは多少なりとも出てしまいますが、画像処理でなんとかできるレベルです。今回はM27の周りの淡い羽部分が少し見え始めるくらいまで出すことはできました。

今回の撮影は富山の住宅街での自宅撮影なので光害はそこそこあります。これ以上出したい場合は、もっと鋭いワンショットナローバンドフィルターを使う、ナローバンドとモノクロカメラで撮影する、口径を大きくする、露光時間を伸ばすなどの工夫が必要になってくると思います。また、ダークノイズに関しては非冷却カメラはどうしても不利で、特に夏場の暑い夜はかなりのノイズが出ていることが1枚ショットの画像を見るとよくわかります。冷却のためのケーブルは増えてしまいお気軽撮影からは少し遠くなりますが、夏場で淡い天体を撮影する場合は冷却カメラの恩恵は無視できないでしょう。

今のところオートでディザーをする方法は見つかっていないので、縞ノイズがどうしても気になる場合は、少し面倒ですが、適時LiveStackの露光を一時停止して、マニュアルでランダムに位置を少しずらしてやれば、気にならないレベルに持ってくることができると思います。

SWATとAZ-GTiの組み合わせのSWAgTiというお気楽撮影に、少しだけマニュアルディザーをするという工夫を加えるだけで、ここくらいまでは出すことができることがわかってきました。


まとめ

結論としては、今のところノータッチガイドで撮影すると、どうしても縞ノイズが出てしまいます。ディザーはソフト側の対応が必要そうです。あと、AZ-GTiとの精度差があるので、十分な緩和時間をとることです。

マニュアルディザーである程度回避できるのですが、何かもっと簡単な方法はないのか?どうなるSWAgTi...



寒冷地でのSWAT

ユニテックさんとやりとりしていて、また面白い情報を聞くことができました。もしかしたら興味があるかともいるかと思いますので、共有します。SWATの寒冷地での使用についてで、個別で対応してくれるかもと言うことです。以下、ユニテックさんのメールから抜粋です。

「ちなみにSWAT用のグリスは-50℃に対応したものを使っています。ただし-50℃対応はグリスメーカーの仕様書での値でSWATの動作を保証しているわけではないです(試したことがない)。公称してませんが、実用最低温度は-10℃程度(自分で試した値)としています(-20℃で動いたという報告はあります)。

ただしボールベアリングは汎用のシールド型なので、-20℃くらいが限界と思います。寒冷地仕様の場合は、開放型のボールベアリングにして、上の-50℃対応のグリスにします。金属の収縮率の違いもあるので、極低温動作を保証してトラブルになると大変なので…。

寒冷地仕様は各部クリアランスをわずかに大きくつける(熱収縮を考慮して)ので、遊びが大きくなるデメリットもあり、個別に希望した方のみの対応です。こういった小回りが効くのは手作りの弱小メーカーだからですね。(笑)」

とのことです。もし寒冷地で使うことを想定している場合は、個別に相談してみるのがいいのかと思います。





 
 
 
 
 


前回かなり反響のあったSWAT+AZ-GTiの組み合わせですが、その後さらに試してみました。今回は特に精度について少し議論します。あと、名前をつけてあげました。


命名

せっかくなのでこのSWATとAZ-GTiの組み合わせに名前を付けてあげようかと思います。

いろいろ考えたのですが、SWAT+AZ-GTiなので「SWAgTi」というのはどうでしょうか?ただしgは発音せず「スワッティ」と呼びます。

ユニテックの方もカッコイイと言ってくださいました。メーカーのお墨付き(?)ももらえたということで、これからはこの組み合わせ、「SWAgTi」と呼ぶことにしたいと思います。よろしくお願いします。


鏡筒をFS-60CB+マルチフラットナーに

実用度を上げるために、もう少し焦点距離を伸ばすことを考えました。具体的には鏡筒を前回の焦点距離135mmのFMA135から変更して、焦点距離370mmのFS-60CB+マルチフラットナーにしてみました。カメラはお手軽にということでそのままのUranus-Cで冷却は無しです。暑い夏なので、ダークノイズの処理をどうするかちょっと迷っています。この画角なら、選択肢となる天体もかなり増えるかと思います。焦点距離が長くなるので、ノータッチガイドだとより精度が要求されます。SWATがどこまで行けるのか?テストも兼ねています。

IMG_8035

鏡筒の変更に伴い、まだ大丈夫かと思うのですが一応ウェイトを付けました。どうしても鏡筒側が重たくなってしまって、回転ネジなどを緩めた際にガクンと落ちてしまうことを避ける意味です。ただし、手持ちの最軽のウェイトでも重すぎるので、ウェイト側に荷重がかかっていますが、それでも回転して鏡筒側がストンと落ちるよりはマシでしょう。

実はこの状態で最初に試した時、カメラを見たら星がグワングワン揺れていました。鏡筒を重くしただけでこれだけ揺れるのか???と一瞬思ったのですが、いろいろ触ってみるとSWATとAZ-GTiのねじ込みが全然十分ではありませんでした。しっかり締め込むと、FS-60CB程度の重量ではピクッともしないくらい、多少の風があろうが、揺れは全く気にならなくなりました。もし自分で試したセットアップで揺れが気になるようなら、各箇所のねじ込みをしっかり確認してみてください。

この状態でどのくらいの精度が必要なのか少し議論してみます。


必要な極軸精度

SWATの高精度の追尾性能を活かしてノータッチガイド撮影で露光時間を伸ばしたい場合、重要になるのが極軸調整の精度です。どれくらいの精度で合わせると、どれくらいドリフトで星像が流れる可能性があるのかというのは、以前簡単に評価したことがあって、



ざっくりですが「1分角の精度で極軸を合わせると、4分間で1秒角、星が流れる」ということです。これは星が最も早く動く、天の赤道上の星像での評価なので、最大これくらい流れると言う意味で、天の赤道から離れるとこのずれは小さくなっていきます。

例えば、前回のFMA135とUranus-Cだと焦点距離135mmとセンサーが11.2mm×6.3mmで3856×2180なので、このページなどを利用して計算すると



水平方向では約4.79度角(=17200秒角)の視野となり、横方向の3856ピクセルで割ると1ピクセルあたり約4.5秒角となります。これだと天の赤道上でも(4分x4.5秒角/1秒角=)18分露光くらいしてやっと1ピクセル以上流れ始めるので、相当余裕があることになります。

今回のFS-60CB+マルチフラットナーだと焦点距離が370mmになるので、水平方向で1.73度角の視野となり、1ピクセルあたり約1.6秒角となります。これでも天の赤道上で(4分x1.6秒角/1秒角=)6.4分くらいして1ピクセルのずれなので、前回試した3分間露光としても倍以上余裕があります。最も星像が流れていく天の赤道儀上でこれなので、逆に言うと今回は2分角くらいの精度で極軸をあわせれば十分と言うことになります。

ただ、何の手段もなく適当にやって2分角の精度はさすがに出ないので、私はSharpCapの極軸合わせ機能を使っています。この機能、SharpCapのかなり初期の頃から搭載されていますが、現在では有料版でしか使うことができません。もう8年位前の記事になりますが、詳しくはこちらを参照してください。



相当簡単に極軸の精度が出るので、この機能だけでもSharpCapを有料版にしてもいいくらいかと思います。

問題は、今回のセットアップのようにSWATの下に微動雲台がない場合です。以前井戸端さんの微動自由雲台を評価した時の様に、微動調整機構があればいいのですが、今回は三脚の足の伸び縮みと、三脚の足をずらして水平回転を調節しています。そこそこの微調整になるので、少しテクニックが必要ですが、なれれば1分角くらいまでなら何とかなります。あと、1分角くらいの精度になってくると、大気密度によるズレが問題になってくるので、SharpCapの環境設定の極軸設定タブのところで、きちんと緯度経度を設定して大気補正オプションをオンにするようにしてください。


SWATの精度

1ピクセルあたりの秒角が、SWATの精度を超えなければ、原理的には露光時間に制限はなくなります。例えば今回使っているSWAT350 V-spec PremiumではPECを使うとピリオディックモーションが+/-2.8秒程度ということなので、先ほど計算したFMA135の場合1ピクセルあたり 4.5秒角なので、SWATで発生する誤差は1ピクセルと同等か僅かに大きいくらいのレベルになります。FS-60CB+マルチフラットナーでは1ピクセルあたり 1.6秒角なので、SWAT起因の揺れが3ピクセル程度になります。

SWATの精度が、1ピクセルあたりの秒角を超えてしまうと、星像に歪みが出る可能性が出てきます。ピリオディックエラーは理想的にはSin波で表されるので、振幅が大きいところでは変化は小さく、振幅が小さいところでは変化は大きいです。そのためピリオディックモーションの周期よりも露光時間が長い場合にはピリオディックモーションの振幅が1ピクセルを超えると星像は伸びますが、短い場合には星像の伸び幅は、どのタイミングで撮影したかに依ってきます。撮影した画像が使えるか、使えないかはの歩留まりりつの評価は天リフさんのSA-GTi赤道儀の記事の最後の方での説明



が秀逸ですので、説明はそちらに譲りたいと思います。

現実的には、2ピクセルくらいまでの揺れは許容範囲であること、何よりシンチレーションや風の揺れなどで星像が乱されることも多く、SWAT単体での揺れがその範囲内に収まる場合には、SWATの精度は問題になりません。今回の撮影でも星像を見る限り、3分露光では370mmの焦点距離でも歩留まり率は100%でした。もちろん許容範囲は人にも寄りますが、ピリオディックモーションや特定方向に軟かくて揺れが出る時は一方向に揺れるのでスタックしても目立ちますが、シンチレーションなどの場合は星像が楕円になったとしても撮影ごとにランダムな方向になっているので、スタックすると目立ちにくかったりもします。


実際の星像

実際に3分露光と5分露光で比較してみます。

3分露光だと風とかの突発的な現象が起きない限り、星像の伸びはほぼないと言っていいでしょう。目で見ている限り、ピリオディックモーションによる星像の伸び縮みは確認できませんでした。突発的な伸び縮みは見られましたが、これはSWATの精度とは別で、ランダムな方向に出てくるので、スタックしてしまうとある程度平均化されるので、あまり目立つことはありません。

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3分露光の1枚撮り。

5分露光だと、少し星像が伸びてしまう画像が出てきます。下の画像はピリオディックモーションと思われる縦方向に周期的に伸び縮みする揺れの一番大きな振幅の時の典型的なものです。縦方向に少し伸びていることがわかります。

frame_00005_23_44_39_c_d_r_Preview01

実際にはこれ以上のランダムな方向の揺れが(5分露光の時にも、3分露光の時にも)存在するのですが、ピリオディックモーションは伸びる方向は決まっているので、スタックしても同じ方向の伸びが目立つことになります。

300秒露光で16枚撮影して、上と同程度の星像のものが4枚くらいありました。ちなみに、その4枚も含めて16枚をスタックしたものが以下になります。

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この程度だと他の上手く撮れているものと混ざるので結果としてはほとんど目立たないですが、必要によっては間引いた方が星像が丸に近くなります。よく見るとやはり若干縦方向に伸びてしまっていますでしょうか?これくらいなので、気になる人は気になるかもれませんが、実用上はほぼ問題がないくらいかと思います。


まとめ

まとめると、ノータッチガイドだと、370mmの焦点距離と2.9μmのピクセルサイズで、3分露光くらいだと十分に実用的、5分露光だとピリオディックモーションが影響し始めてくるといったところです。もちろん上で議論したように、焦点距離を短くしたり、ピクセルサイズの大きいカメラを使うなどで露光時間を改善できる可能性があります。

すでに記事がかなり長くなっているので、とりあえず、今回は実験的なことはここまでとします。次回は実際に長時間撮影してみてです。


あとおまけで、開発側のユニテックさんとやりとりした際、かなり面白い話を聞いたので、少し紹介します。

長期間の安定性にも有利とのこと

今回のSWAT+AZ-GTiの組み合わせをユニテックの方にお知らせしたところ、かなり興味を持って頂き、ユニテックのブログの方で紹介していただきました。



とても面白いと言うことで、胎内の星まつりでこのセットアップを展示したいとの提案がありました。どんどん盛り上がりの方向にいきそうで、期待してしまいます。その際のメールのやりとりの中で、いくつか非常に興味深い話を伺うことができました。他メーカーなどの話もあったので、そこらへんのところはうまくぼかしつつ、一般に有益かと思われる話を書いておこうと思います。

ユニテックでも以前2軸の制御を考えたそうです。2020年頃に実際SWATを2つ使い、2軸で制御するモデルが発表されました。いくつかテスト記事はありますが、今のホームページに「赤緯モード搭載」とあるのがおそらくその機能かと思うのですが、追尾スイッチを「DEC」モードに合わせることで追尾を止めることことで実現するものと思われます。あまりあらわに2軸とは書いてなくて、コスト的には不利になることは否めないのかと思います。

今回のアイデアで最も評価してもらえたのが、高速での粗動をAZ-GTiに、低速での微動をSWATに「分けた」ことでした。特に長期の安定性についてコメントして頂いたのですが、この視点は私は完全に欠落していたところです。メールからの一部引用になりますが紹介します。

「というのは、一つのウォームギアで超高精度の恒星時運転と高速にギュインギュイン回して自動導入を兼ねるのは高精度の維持という観点からかなり不安なんです。赤道儀の場合、数十倍速程度の低速運転だけなら長期間心配ないですが、自動導入対応の高速運転を長時間させると最悪焼き付きを起こすことも考えられなくはないです。SWATでも現構造のまま1万倍速で長時間試験したり、かなり無茶(実際の使い方なら100年分くらい?)な実験をしましたが、最終的に焼き付くことはありませんでした。ただウォームの歯面とメタル軸受けの摺動部に潤滑不足の摩耗が生じて歯面が傷だらけで、ハードな使用には何からの対策は必要でした。

解決策として、ウォームギアを2段に配置し、高精度追尾用と粗動用を分けようかというアイデアがあったのですが、大きく、しかも重くなり、それぞれに適したギアと駆動系が2セット必要になるなど、高価になりすぎて現実的ではないと即ボツになりました。

今回のAZ-GTi載せは、粗動と微動を分けることで、見事に上記の問題を解決してしまいました。
しかもAZ-GTiの高機能も満喫できます。私もやってみたくなりました。(笑)」

とのことです。長期間で考えると、ピリオディックモーションの補正に関しても影響があるかもとのことでしたが、こういったことも解決でき製品寿命も伸びるのではということです。メーカーの方からここまで言ってもらえるのは感無量です。




 
 
 
 
 

実は福島の星まつりでSWAT350を手に入れました。UNITECさんのところで話していて盛り上がり、後日レポートを書くということで、特価で譲ってもらうことになりました。実際に試してみて、忌憚のない意見が聞きたいということなので、思う存分楽しみます。


SWAT到着

福島の星まつりの後、しばらくしてから自宅にSWATが到着。ご存知の方はご存知かと思いますが、そもそもSWATは1軸での追尾精度を追求したコンパクトなポータブル赤道儀です。

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青いボディーがかっこいいです。

今回手に入れたものは、PEC付きのSWAT-350V-spec Premiumという機種で、SWATの中でもフラッグシップモデルに当たります。ピリオディックエラーの精度はノーマルでも+/-4.5秒前後と相当なもので、PECが効く片側荷重だとなんと+/-2.8秒前後と驚異的な性能を出すそうです。基本的にはその高精度な追尾を利用した、ガチ撮影用のポータブル赤道儀なので、元々考えていた使用法は、
  • 海外での撮影のための軽量機材
  • もしくは本格撮影の横で、簡単に設置しての撮影
とかです。


SWAT超進化

でも今回SWATで試したのは精度を測るとか、そんな高尚なことでは全然ありません。代わりに超面白いアイデアを思いついてしまったのです!!

SWATは1軸のポタ赤なので、赤緯にあたる2軸目をそもそも持っていません。できることは基本的に精度のいい自動追尾のみ。当然自動導入はできませんし、最近流行りのプレートソルブなんかは夢のまた夢です。もちろんそれを納得して手に入れました。でも実際に撮影しようとすると、これまでずっと自動導入とプレートソルブに頼り切っている軟弱な私には、DSOのマニュアル導入はめんどくさすぎることに気づいてしまったのです。天気もあまり良くなく、実際テスト撮影しようとしても画角もなかなか定まらずで、しばらくSWAT君放っておいてしまいました。

ある日、SWATのことを考えながら風呂場でシャワーを浴びていたら、ふと思いついてしまいました。追尾精度は全然無いが超高機能のAZ-GTiを、超シンプル機能だが超高精度のSWATに載っけたらどうなるんだろう?

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「えーっ??」と思った方もいるかもしれませんが、でもこれかなりすごいですよ。


SWATで自動導入とプレートソルブ!?

SWATは普通に三脚にネジ止めします。底面が斜めに傾いているので、日本だと北方向に置くと、ちょうど回転軸が北極星方向を向くようになります。

AZ-GTiはデフォルトでは経緯台ですが、ファームをアップデートすれば(メーカー保証はありませんが)赤道儀モードで動かすことができます。今回はセットアップといっても、赤道儀モードのAZ-GTiを、本当にそのままSWATに載っけるだけです。AZ-GTiを赤道儀モードで使うときに大変なのは、極軸方向に向けるための傾いたアダプターを用意することです。タカハシなどで販売していますが、それでもそこまで頑丈ではなくて揺れてしまうこともあり、気にする人は自作したりしています。今回はこの斜めアダプターもSWAT自身が兼ねてくれます。

鏡筒は北極星方向に向けて取り付けます。天体導入完了まではSWATの電源は入れず、AZ-GTiだけを使います。なんならPC上のSynScan Proと接続して、さらにASCOM経由でSharpCapと繋いでおけば、初期アラインメントの時からプレートソルブすることさえできます。もちろん、自動導入の際もプレートソルブ機能を使えます。

導入が完了したら、駆動をAZ-GTiからSWATに切り替えます。撮影は精度のいいSWATを使うということです。ちなみに、以前測定したAZ-GTiの追尾精度が実測+/-75秒くらいだったので、SWATの精度が+/-4.5秒とすると17倍、+/-2.8秒だとしたら27倍の精度向上になります。なので、こんなことができます。

キャプチャ

え?何がこんなことかって?露光時間をよく見てください。望遠鏡接続パネルでは確かにSynScan Proに接続しているにもかかわらず、何と1枚180秒の3分露光ですよ!もちろんノータッチガイド(死語?)です。

鏡筒はFMA135で、カメラがUranus-Cと、とりあえず普段の電視観望そのままですが、画角的には撮影対象に困ることはない、ちょうど良いくらいです。これくらいの焦点距離なら、このSWATの性能で3分露光だと、1ピクセルさえも動かないくらいで、ガイドなしで全然余裕です。

SWATの精度とAZ-GTiの機能のいいとこ取りというわけです。


実際の設置

実際に試した手順を書いておきます。まず、組み立ては簡単そのも。三脚とSWATとAZ-GTiと鏡筒とカメラをネジで止めていくだけです。全部組み合わせても、片手で持てるくらいの軽さで、持ち運びも余裕です。

電源はというと、カメラを駆動させるためのPCからのUSB、SWATを駆動させるためのDC12Vだけなので、ケーブルは全部でわずか2本です。ケーブルの数が少ないのも簡単撮影ならではだと思います。ケーブル数が少ないのは、トラブルを起こす率も下がるので、実用上もメリットがあります。

設置ですが、今回はSharpCapの極軸合わせを使いました。ドリフトでズレていく量を抑えたいからです。1分角程度のGoodまで出せばもう十分です。

次にAZ-GTiで初期アラインメントをします。最近は面倒くさいので、本格撮影の時でも極軸は合わせても水平は取っていないです。そのため、一番最初の導入では少し目標とズレてしまうこともありますが、気にせずアラインメント完了にして、そのままプレートソルブしてしまいます。プレートソルブはすごく便利で、これが使いたくてAZ-GTiをくっつけたといっても過言ではありません。同期までうまくいくと、初期アラインメントした天体が画面に出てきます。SWAT使用でこんなことができるとは感無量です。初期アランメント完了後は、目的の天体に自動導入します。今回はM8干潟星雲とM20三裂星雲としました。

天体が画面内に入ってきたら、SWATに切り替えます。きちんと撮影位置まで来なくても、そこそこの位置に見えたら、SWATに切り替えてしまって構いません。この切り替えがまたポイントで、まずSWATの電源を入れますが、その際にAZ-GTiの電源を切るのではなく、恒星追尾をオフにするだけします。そうするとAZ-GTiはこれ以上追尾はしませんが、モーター駆動は2軸ともまだ生きているので、画角の微調整がSynScan ProやSharpCapの望遠鏡制御パネルなどからできてしまうのです。AZ-GTiは追尾さえしなければ精度が悪くなることはなく、構造的にはかなり頑丈です。

AZ-GTiをワイヤレスのリモートコントロールができる強固な微動雲台と考えると、ある意味とんでもなく格安です。AZ-GTiと組み合わせることで、SWATが精度そのままで根本的にアップグレードされたみたいで、便利すぎる使用感となります。


撮影の開始

準備ができたので、実際に撮影までしてみましょう。

撮影ソフトは簡単のためにSharpCapを使います。SWATの精度が期待できるので、ガイドはしません。なので、わざわざガイドにきっちり対応したNINAとかを使う必要もありません。EAFも使わないのでピントはマニュアルです。カメラの冷却さえもしないので、PlayerOneのカメラのDPS(Dead Pixel Suppression)機能でホットピクセル除去を期待します。一応今回はSharpCapの簡易ホットピクセル除去も念のため使いました。できるだけ簡単撮影がモットーで、後でダーク補正をする気など全くありません。

露光時間ですが、とりあえず今回は3分で試します。電視観望を利用した撮影に比べて、1枚あたり十分な露光時間が取れるため、合計撮影枚数を減らすことができるます。このことは二つのメリットがあります。
  1. 1回の露光のたびに入ってくる読み出しノイズの緩和が期待できること。
  2. カメラのアナログゲインを下げることもでき、ダイナミックレンジを十分に残した撮影ができ、飽和を防ぎやすくなります。今回はHGCモードが発動するゲイン200を選びました。
これまでのAZ-GTiを利用した電視観望的な撮影(1回の露光時間が10秒とかの短い撮影のこと)とは一線を画します。

撮影は後の画像処理を簡単にするために、試しに電視観望的な撮影としてライブスタックを使ってみました。一旦撮影が始まったらあとは放っておくだけです。たまにライブスタックされている画面を見てみますが、順調にノイズが軽減さていきます。

調子に乗って、3分露光で合計2時間くらいライブスタックしてしまいました。それだけ撮影しても、見ている限り恒星の流れはなく、SWATの精度とAZ-GTiが動いていないことでその精度を壊す様なことはなく、全体として非常に精度良く追尾してくれているようです。

取得できた画像ですが、3種類あります。
  • 全てスタックされて見た目も画面そのままのPNGフォーマットの画像が1枚
  • ストレッチなどしていないRAW画像のFITSフォーマットの画像が1枚
撮影終了時にすでにスタックや、PNGファイルはストレッチまで完了しているので、その後の画像処理もかなり楽になります。

今回は比較のために、
  • 毎回の露光ファイルも全て保存
の計3種類です。

SharpCapで自動的に1枚にスタックされたPNGとRAW、さらに自分でスタックしたものでそれぞれ仕上げて、後で出来を比べることにします。


画像処理しての比較

3種の画像で最後まで処理してみます。

ライブスタックされたものを見たまま:
まずはライブスタックされ、ストレッチまでされたPNGファイルです。あらかたの画像処理はすでに終わっているようなものです。これに5分程度Photoshopで処理しただけのものになります。

Stack_39frames_7020s_ABE_NXT3

8bitで出力されるので、あまり大したことはできませんが、それでもかなり出ていますね。周りの分子雲がノイジーなことと、恒星が少しうるさいかもしれません。それでも3分x39枚=1時間57分の露光で、星は全くズレていません。これだけでも驚異的かと思います。


ライブスタックされた1枚画像をストレッチなしで:
上のように、これくらいまで出るならもう十分かとも思いますが、ここから次の画像と比較していきます。二つ目はスタックまではされてますが、ストレッチはされていない暗いままで、RAWフォーマットに近いものになります。RAW画像なのでPixInsightでSPCCなどのリニア処理をして、ストレッチした後にPhotoshopに渡します。

Stack_16bits_39frames_7020s_ABE1_SPCC_MS_NXT_bg

さすがに画像処理も多少凝ったことができるので、PNG画像よりはマシになります。StarNetを使うことで特に恒星がうるさいのを消すことができています。BXTは比較するにはチートすぎるので、今回は使っていません。


ライブスタック時の1枚1枚を個別に保存し、マニュアルでスタック:
最後が一番手間のかかる、3分露光が48枚あるファイルを、自分でスタックするところから始めます。ホットピクセルはほとんど出ていないとして、ダーク補正はなし、公平を期すためにフラット補正も無しとします。

masterLight_3856x2180_180_00s_RGB_combination_ABE1_SPCC_MS_NXT2

一から手間をかけただけあって、多少滑らかになってます。でも、輝点が少し目立ってしまっています。やはりここまでやるなら真面目にダーク補正をしてもいいかもしれません。


SWAT+AZ-GTiの威力

今回のアイデアですが、もしかしたらすごい組み合わせかもしれません。ガイド無しで本格的な撮影がかなり楽にできる可能性を秘めています。というかなんか楽しくて、早く次の撮影を試したいです。梅雨で天気待ちなのですが、メイン鏡筒の横で気楽に試せそうなのが良いです。

あまりに楽なので、是非みなさんにこのアイデアをオススメしたいです。
  • SWAT持ってる人はAZ-GTiを買おう!
  • AZ-Gtiを持っていて精度のいい撮影をしたい人はSWATを買おう!
  • SWATとAZ-Gtiの両方を持っている人はすぐにでも試してみてください!

SWATを高いと思うかもしれませんが、1軸に絞っていることもあり、この価格でこの精度を出せるのはむしろ格安というか、多分最安です。一気に長時間露光の本格撮影に手が届きます。


反省点と次回挑戦

今回の撮影の失敗点ですが、ノータッチガイドだけありどうしてもわずかなドリフトが出てしまい、数時間という露光時間のオーダーだとゆっくり画角が一方向に流れていきました。これが結果として、縞ノイズとなって出てしまいました。画像処理である程度誤魔化しましたが、やっぱりガイド必須かなあと思ってしまったのは事実です。それでもやはり「簡単撮影にしたいのになあ」、「ケーブルが増えるのやだなあ」との思いがあります。

そんなことを考えていたのですが、「そういえばSharpCapのライブスタックにディザー機能があったはずで、確かガイドなしでも単独で動いたはずだ」と思い出しました。マニュアルを確認してみたのですが、どうやらうまく動きそうです。次回はこれでリベンジしたいと思います。

今回はテストで135mmと短い焦点距離にしましたが、まだまだ全然大丈夫そうなので、今度はもう少し長焦点で試して、SWATの性能に迫りたいと思います。当然ガイドなしです。

他にも次回以降、検証、挑戦したいことを書いておきます。
  • 焦点距離と、カメラのピクセルと、追尾精度の関係の確認
  • ギヤの大きさと精度の関係の確認
  • 精度の実測
  • SWAT各機種との比較と、それぞれどこまでガイドなしでできるか計算
などです。たくさんやりたいことありますが、無理のない範囲で進めていきたいと思います。


 
 
 








週末の土曜日、天気がいいので撮影してたんですが、あまりに風が強くて途中で断念。その代わりに、一昨晩に試したリモート電視観望をさらにブラッシュアップしてみました。ただしこの日は中継は無しです。色々調整しながらやりたかったのと、さすがに二晩連続中継だとヘビー過ぎます。


前回の反省と、今回試したいこと

今回一番試したかったことは広域電視観望でのLiveStackです。原因は亜鈴状星雲M27がほとんと全く見えなかったこと。小さすぎるのもありますが、ノイジーだったのでLiveStackでもう少しノイズが減れば形くらいはわかったかなというものです。でもなぜか広角でのSharpCapでのLiveStackが全くうまくいきませんでした。

原因はStickPCが非力すぎたかもというのと、収差の多いレンズだったので星像が崩れて星として認識されなかった可能性が高いです。また、広角すぎたのも原因の一つかと思いましたが、ROIで画面を区切ってLiveStackしようとしてもできなかったので、広角なことが直接の原因ではない気がします。もしかしたら複合原因の可能性もあります。

というわけで今回のLiveStack実現のための改善点は
  • PCをハイスペックなものに交換。太陽撮影とかにも使っているSurface pro 7を投入します。可搬性は少し悪くなりますが、性能的には問題ないはずです。
  • もう一つは、レンズをPENTAXの6x7の105mm/F2.4に交換
です。よく考えたら、広域電視観望のLiveStackってこれまだやったことがありません。どれくらい改善されるか楽しみでもあります。

さてこのPENTAXの105mm、収差はそこまでよくはないですが、前回のNIKKOR50mmよりは遥かにマシです。というか、明るいレンズを試してくても手持ちで明るいレンズがあまりなくて、これは私が持っているレンズの中でもF3を切っている数少ないレンズの一つになります。あと手持ちの明るいレンズといえばNIKKOR35mm/F1.4、Nikkon135mm/F2.8、PENTAX 165mm/F2.8くらいですが、35mmはさすがに収差大きすぎ、あとは100をずっと超えることになってしまいます。50mmからあまり離れたくないので、今回の105mm/F2.4くらいが適当かというところです。でもこの焦点距離を倍にしたことは次の改善点と合わせて結構当たりでした。


広角時の簡単な初期アラインメント

もう一つの改善点は、
  • AZ-GTiできちんと初期アラインメントをして、自動導入と自動追尾をできるようにした
ことです。これは手間の割にかなり効果が大きかったので詳しく書きます。

そもそも、前回のコンセプトは場所も方向も気にしない「ポン置き」でした。初期アラインメントはこのポン置きを崩してしまうために避けていたのですが、今回のように広角の場合には、初期アラインメントがものすごく簡単であることに気づきました。

まず一つ目の手間は、一番最初に鏡筒をそこそこ北向きに、そこそこ水平におかなければいけないこと。ポイントは「そこそこ」です。ポン置きから考えるとたいそうな手間に思えますが、はっきり言ってかなり適当でいいです。105mmレンズでフォーサーズ相当のASI294MC Proなら計算すると画角は10度近くあるわけです。方角も水平度も10度くらいの精度で置けばいいのなら、まあ相当適当でいいでしょう。

初期アラインメントは水平が取れていない場合は「ツースターアラインメント」がいいでしょう。アラインメントの過程で水平のズレを補正してくれます。その際、明るい星を2つ選びます。今回はベガとアークトゥルス。初期アラインメントで一番難しいのが、見ている画面内に対象天体が入ってこない場合。特に焦点距離の長い鏡筒を使う場合によくあります。でも今回は焦点距離105mmで相当広角なため、余程適当に向きを置いていない限り、初期アラインメント時に一発で画面の中に入ってきます。ベガなんか一番明るい星なので、すぐにわかります。

この状態でPCの画面を見ながら、対象天体が真ん中に来るようにアランメントを2回とります。その後、対象の天体を自動導入してみると、かなりの精度で導入できます。というよりも、広角での自動導入なのであまり精度がなくても、きちんと真ん中に来てしまうと言った方がいいかもしれません。

さらにもう一つ、途中でSynScan Proで矢印ボタンでマニュアルで方向を適当にずらしても、AZ-GTiの中に現在の位置が記憶されているので、次の自動導入時もきちんと対象天体を間違えずに導入します。なので、前回やったリモートでモーターだけを使ってマニュアルで自分で天体を探すということも併用できるわけです。どれだけ好きに動かして迷ったとしても、そのまますぐに自動導入で位置確認することができるわけです。


実際のリモート電視観望

焦点距離が前回から比べて倍なので、より暗い星まで見えますが、逆に見える範囲は狭くなり、どこを見ているのかわかりにくくなります。でも今回は自動導入があるので、基本的に迷うことはありません。迷ってもまた自動導入ですぐに位置を特定することができます。これは思った以上に便利でした。中継の時に迷いながら探すのも臨場感があって楽しいですのが、いざという時に戻ったり次の天体に移動することができるのは安心感があります。

では実際に自動導入をして画面に天体を入れてみましょう。まずは手始めは、建物からのぼるM8干潟星雲。建物からのぼる「月」とかではありません。繰り返しますが建物から上る「星雲」です。
IMG_9916
画面のほぼ真ん中にM8がきているのがわかると思います。自動導入の位置精度はこれくらいなので、十分だとわかると思います。この画面はまだLiveStack無し。1.6秒露光の一発撮りなので、建物も木もぶれていません。

次は昨日見えなかったM27です。LiveStackを使ってノイズを減らしますが、今回はLiveStackも全く問題なくうまくいきました。でもPCがパワーアップしたからなのか、レンズの収差が緩和されて製造が良くなったからなのかは特定できていません。
IMG_9919
M27ですが、それでも小さいので見やすいように少し拡大しています。見え方は前回よりは多少マシで、形もなんとかわかりますが、やはりまだ焦点距離不足です。というよりはしょせんカメラレンズ、強拡大すると星がどうしても肥大化されて見えてしまいます。


あ、一応ネタとしてM57も見せますか。
IMG_9921
真ん中少し下の緑の明るいのがM57です。でも恒星に赤ハロが出ているのとほとんど見分けがつきません。さすがにもう少し焦点距離が必要です。


気を取り直して、次はサドルから少し東方向です。これは三日月星雲で自動導入しています。わかりにくいかもしれませんが、ど真ん中に写っているのが三日月星雲です。画像をクリックして、さらに拡大すると多分わかります。これもLiveStackありです。
IMG_9935


サドルからマニュアルで少し北に寄ったところ。真ん中より少し右下に見えるのがサドルです。
IMG_9936
これもLiveStackあり。左側の淡いところがどこまで見えるか試したのですが、驚くほどよく見えています。この後はまた自動導入に戻りました。

アンタレス周辺ですが、ここら辺が今回のシステムの限界でしょうか。赤と黄色は辛うじてわかるものの、青が(なんかモヤッとしている気もしますが)相当微妙です。
IMG_9926
青色はQBPの苦手とする色の一つなので、青だけヒストグラムで補強するような機能があるといいのですが、今のところリアルタイムではできません。


今回のハイライトでしょうか、屋根から上る北アメリカ星雲。自分の家の屋根なのですが、こんなのが家の中から見えるわけです。臨場感がないわけがありません。

IMG_9940


最後は再び干潟星雲とか、天の川中心部です。今度はLiveStackしています。本当にLiveStackさまさまですが、まあよく見えること。

IMG_9946


今回の問題点とまとめ

前回のシステムから少しの変更でしたが、見え方は相当変わりました。もちろん、そもそものASI294MC Proの感度が素晴らしいのと、光害地でも劇的な見え方の改善を提供してくれるQBP(Quad Band Pass)フィルターの性能があってのことです。

今回、広帯域電視観望で初めて試したLiveStackですが、やはりものすごいです。改めてその威力を実感しました。その一方、きれいな画面を見せようとすると露光時間が長く(今回は最長12.8秒)なり、さらにノイズが緩和されるまでスタックを重ねると、どうしても見栄えが良くなるまで時間がかかってしまいます。ただ、中継の時などでも実際にはそこまで頻繁に移動するわけではないです。中継で話しながら見せることになるので、話している時間でLiveStackをするとちょうどいいのかと思います。画面の移動の時は逆にリアルタイム性を出すために、露光時間を短くしたりして星の軌跡を出したりします。中継ではその辺りの作業の様子も全部見せることができるので、電視観望の技術交換にもなるかと思います。

また、今回AZ-GTiの自動導入を使ったのですが、広域電視観望でも自動導入は使った方が圧倒的にいいです。広角レンズとカメラなら、初期アラインメントで「必ず」ターゲット天体が画角に入ってきます。ベガとか明るい星を選んでおけば画面で確実にどれた対象天体かすぐにわかります。なので初期アラインメントの手間はほとんどかかりません。そしてその後の快適さが半端ないです。

レンズに関しては前回のNIKKOR50mmよりは星像はかなりマシで、自動導入もあるので今回の105mmの焦点距離でも、画角の狭さで今いる位置に迷うことはまずありません。その一方、まだ恒星周りを見ると赤ハロが目立ちます。これはピントが少し甘かったかもしれません。また、炙り出した時に出る明るい星の周りの白い大きなハロ。これは一段絞って2.8にした方がいいのかもしれません。


今後のこと

まだ多少の改善すべき点はありますが、夏の天の川がこれだけ見えるなら相当楽しいです。また時間のある時にZoomを使って中継してみたいと思います。前回参加できなかった方も、次回はよかったらぜひ参加してみてください。

ただ、天の川を見ようとするとまだこの時期は遅い時間からになってしまいます。最初はまだあまりたくさんの人数だとトラブってしまうかもしれないので、もう一回くらい遅い時間に始めるかもしれません。あ、でもこれから月が出てくるんですよね。まあ、月がある時にどれだけ見えるか試すのもいいテストになるのかもしれません。

一方、なかなか遠征などができないこの時期に中継してみなさんと繋がりたいという気持ちもあります。その場合は天の川にこだわらず、話が中心になるんでしょうか。

あと、今回の騒動が落ち着いたらいつか観望会でこのシステムを稼働させて、できるなら科学館とかのもっも街中で天の川を子供たちに見せてあげれたらと思います。

もう先々週になってしまいますが、3月8日金曜日の帰宅後、ちょっと疲れていたのですが新月期で天気も良かったので、かねてより試したかったAZ-GTiによる2軸ガイドを試してみました。これができると、かなり軽量コンパクトな撮影システムになるので、海外や登山でも持っていけそうです。

撮影対象はM42、オリオン大星雲です。画像処理に時間がかかってしまったので、記事にするのに時間がかかってしまいました。撮影結果を先に示しておきます。本来ガイドを試して星像を見るテストなのですが、今シーズン最後のオリオンになるだろうことと、撮影時間1時間弱にしてはそこそこ出たので、AZ-GTiで(まだまだ稚拙ですが)ここまでは出るという指標として、きちんと画像処理までしたものをあげておきます。

light_M42_PCC_maskstretched_ok_HDR_dark

富山県富山市下大久保 2019/3/6 21:23-23:04
f=600mm, F10 + AZ-GTi(赤道儀モード)
EOS 6D(HKIR改造, ISO3200, RAW)
300sec x 11frames 総露出時間55分 + HDRのため3sec x 12
PixInsight , Photoshop CCで画像処理




AZ-GTiのこれまでの経緯

これまで、これまでAZ-GTiを赤道儀モードも含めていろいろ試してきました。
  1. AZ-GTiのファーストテスト
  2. AZ-GTiの赤道儀化(その1): ハードウェア編
  3. AZ-GTiの赤道儀化(その2): ソフトウェア編
  4. AZ-GTiの赤道儀化(その3): 極軸調整とオートガイド
  5. AZ-GTiの赤道儀化(その4): Stick PCでのガイドとTips

実際4のところでガイドも試していますが、露光時間が30秒と短すぎたのでまだちゃんとしたテストにはなりませんでした。その後、この赤道儀モードでもう少し時間をかけた撮影を試みました。
  1. 昨年11月2日にAZ-GTiの赤道儀モードでノーガイドでテスト。
  2. 11月3日にAZ-GTiの赤道儀モード2軸ガイドに挑戦するが、接続問題で断念。
  3. その後、ブログの記事にはしていませんが、11月15日に少しくらい山の方に行ってAZ-GTiの赤道儀モード2軸ガイドに挑戦するが、ISO1600、3分で13枚だけとって、そのうち成功はわずか2枚、Maybeが5枚で、失敗6枚とほとんどダメだったので、検証は失敗。原因は風が強くて全く点像にならず。
と、現状はこういったところです。

この頃はまだQBPフィルターを手に入れる前なので、自宅ガイド無しで露光時間90秒が最長、山の中のガイドありでも3分が最長で、その代わり特に自宅だと露光時間の短さを補うためISOが6400と高めです。それからだいぶん日にちが経ってしまいましたが、今年の目標の中にはまだAZ-GTiの赤道儀モード2軸ガイドは入っていました。なかなか天気が良くなかったり、途中レデューサーフラットナーのテストも入ったりしたのですが、それらのテストも一巡して、FS-60CBだった鏡筒もやっとエクステンダーを付け直して、焦点距離600mmのFS-60Qに戻りました。やっと久しぶりのテスト再開です。


目標

さて、この「AZ-ZGiでの2軸ガイド」計画の目標ですが、具体的には
  1. 焦点距離600mmの鏡筒をAZ-GTiの赤道儀モードで稼働し、2軸のガイドを実現すること。
  2. フルサイズのカメラで撮影して、少なくとも3分以上の露光で、赤道儀起因の流れが十分無視できる程度の撮像が得られること。
  3. 撮影枚数のうち、8割以上の成功率を実現すること。
の3つです。これは海外へ行く時など、できる限り軽量で実用的な撮影ができるという条件から設定しています。この目標が達成できれば、十分海外へ持っていっても使い物になると考えることができます。

1については上で書いたように、赤道儀化テストの4番目や、昨年11月15日にシステムとしては稼働しているので、すでにほぼ目標達成です。2については上記の3に書いてあるように、3分で2枚だけ成功しているのですが、風が弱かった時での成功で、もしかしたらピリオディックモーションがたまたま小さかった時のみの成功かもしれません。なので主にここからの検証です。

機材とソフトウェア

  • 鏡筒: タカハシ FS-60Q (口径60mm, 焦点距離600mm)
  • 赤道儀: AZ-GTiを赤道儀モードで使用
  • センサー: Canon EOS 6D(HKIR改造)、ISO3200、露光時間5分x11枚、計55分 + HDR合成のため、3秒x12枚、バイアス画像100枚、ダーク画像5秒x15枚、フラット補正無し(撮影後、フラットを撮る前にセッティングを変えてしまったため)
  • 初期アラインメントおよび追尾ソフトウェア:iPhone上でのSynScan Pro、その後Windows10上のSynScan Pro
  • 自動導入および視野確認: Carte du Ciel + SynScan Pro AppのASCMOドライバー、Astro Trotilla + BackyardEOS
  • ガイド時のソフトウェア: Windows10上のSynScan Pro AppのASCMOドライバーにPHD2 + BackyardEOSでガイド+ディザー撮影
  • ガイド機器: ASI178MC + 50mm Cマウントレンズ
  • フィルターサイトロン Quad BP フィルター(クアッド バンドパス フィルター、 以下QBP)
  • 撮影場所: 富山県富山市下大久保
  • 日時: 2019年3月6日、21時23分から
  • 月齢: 29.6(新月)、天気快晴、風が少々
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC


セットアップ

まずはAZ-GTiを赤道儀モードで稼働させることが前提です。経緯台モードでも2軸ガイドができるという情報もありますが、私はまだ試したことがありません。

AZ-GTiでの2軸ガイドのポイントの一つは、SynScan App用のASCOM driverをインストールして、PHD2からのガイド信号をSysScan経由でAZ-GTiにフィードバックすることです。すなわち、PC上で信号のやり取りはほぼ済んでしまうために、ケーブルとしてはガイドカメラからのUSBケーブル一本、あとは今回の場合BackYard EOSを使ってディザーガイドをしているため、PCとEOS 6DをつなぐUSBケーブルが一本の、計2本です。AZ-GTiの電源は乾電池で内臓、EOS 6Dの電源も電池のため内臓で、AZ-GTiの駆動はWi-Fi経由なので、本当にケーブル2本、もしディザーをしなくてカメラ単体でとるのならわずかケーブル1本での2軸ガイドが可能です。

さらに今回の場合、Stick PCを使い、PC自身も三脚あたりに取り付けてしまったため、本当にコンパクトな2軸制御システムとなりました。Stick PCの操作はWiFi経由なので、自宅からぬくぬくと撮影、モニターをすることができます。


実際の撮影

極軸合わせはいつも通りSharpCapで行いました。一つだけポイントを挙げておきます。

AZ-GTiは構造的にそこまで頑丈ではないです。SharpCapの極軸合わせで90度視野を回転させる場合、手で回す際はウェイトバーがついているところのネジを緩める必要があるのですが、その時全体が大きくたわんでしまいます。90度回す時はモーターで回転させた方がはるかに精度が出ます。

さて、実際の撮影はフル自動導入の赤道儀とほぼ同様に扱うことができます。これは、Carte du CielなどのプラネタリウムソフトでAZ-ZTiを制御して自動導入することもできますし、Astro Tortillaなどでplate solvingすることもできるので、撮影した写野から位置を特定することもできることを意味します。ようするに、操作性だけ言えば大型で高機能な赤道儀に全然遜色ないということです。

視野が決まれば、あとは撮影です。QBPを使っているので、5分露光くらいまでは十分耐えることができます。ISOは3200としました。撮影中は自宅にいたのですが、今回は星像が気になってしまい、仮眠をとったりすることができませんでした。というのも、最初のうちはガイドは非常に安定していたのですが、30分くらいしてからガイド星の位置が結構頻繁に飛びはじめたのです。しかもピリオディックモーションが出ないはずの赤緯の方です。時に上に行ったり、時に下に行ったり、ガイドがかなり頑張って補正しているようでした。何か調子が悪いのかと思って外に出たらすぐに納得しました。明らかに風が強くなっていたのです。どうやらAZ-GTiは、撮影レベルになるとやはり外乱の影響を受けやすくなってしまうようです。もちろん三脚などでも変わると思うので、もう少し大型の三脚に載せてもいいかもしれませんが、それだと売りのコンパクトさが損なわれてしまいます。使えるのは風が強くない日限定でという制限をつけた方がいいかと思います。

この頃は冬も終わりに近づき、オリオン座も西に傾く時間がはやくなってしまっているので、結局撮影に使えた時間は21時半くらいから23時くらいまでと1時間半で、総露光時間は55分と1時間を切ってしまいました。


撮影結果

結局14枚撮って(ただし、撮影最後の西に沈んで影になった3枚はカウントから覗きました)11枚が成功でした。と言っても衛星が大きく通った一枚も失敗とカウントしたので、星像という意味では実際には14枚中12枚が成功と言っていいと思います。86%の成功率なので、目標達成といっていいでしょう。

隅の星像を(自作プログラムを改良して8隅が出るようにしました。)拡大してみます。大体のガイド性能までわかると思います。ただし、AZ-GTiのそもそものピリオディックモーションが+/-75秒程度とかなり大きいので、ガイドをしてもその影響を取り去ることはできません。また、風の影響も多少あります。

星像がまともと判断したものの中でベストに近いもの。まあまあ、丸になっていますが、やはり完全ではなく、わずかに斜め方向に伸びています。

M42_LIGHT_6D_300s_3200_+7cc_20190308-21h47m38s110ms_8cut


星像がまともと判断したものの中でワーストに近いもの。ここら辺までが許容限界としました。スタックすると多少は平均化されるのですが、拡大すると明らかに縦方向に伸びています。主に風の影響です。

MAYBE_M42_LIGHT_6D_300s_3200_+6cc_20190308-22h50m46s955ms_8cut


また、下のように風の影響で星像が2つに分かれてしまっているものもあります。一瞬大きな風が吹いたのかと思われます。これはもちろん使えないとしました。

BAD_M42_LIGHT_6D_300s_3200_+6cc_20190308-22h57m53s875ms_8cut


画像処理

画像処理は今回のテーマでないのですが、1時間弱にしては結構出すことができたので少しだけ書いておきます。

結果は一番上の画像を見ていただくとして、とりあえず処理してみると分子雲が結構出てきたので、少し強調してみました。露光時間が短いのでまだ粗いですが、自宅撮影でQBPがあればここら辺までは出せることはわかりました。また、青を出す方法も少しわかってきました。といっても、トーンカーブで青の真ん中らへんを持ち上げるだけですが。やはりQBPだと青色が出にくいので、少し強調してやる必要がありそうです。

最後に、全てスタックして画像処理をした画像(一番最初に示した画像)の星像です。やはり、ごくわずか縦長になってしまっています。どれくらい歪むかは風の強さによるかと思いますが、あとは歩留まりで調節するのかと思います。私的にはここら辺までなら、まあ許容範囲です。

light_M42_PCC_maskstretched_ok_HDR_dark_8cut




まとめ
  • AZ-GTiの赤道儀モードで、PHD2とSynScan用のASCOMドライバーを使った2軸ガイド撮影はそこそこ実用レベルで使用することができる。
  • 具体的には焦点距離600mm程度なら、露光時間5分でもある程度の歩留まりで星像は安定する。
  • ただし軽量システムのため、風に弱い点は否めない。
なんとか目標の歩留まり8割にたどり着きました。軽量コンパクトな撮影システムの構築という目的はある程度達成したと思います。次回海外へ行く時や、登山(多分することはないとわかっているのですが...)で持っていくシステムとしては完成です。このシステムは電視観望システムを含んでいるので、海外とかでのデモンストレーションもできることを考えると、当分コパクトシステムはこれで行くことになりそうです。やはり2軸制御できるところがポイントです。惜しむらくはピリオディックモーションです。もう少し小さいと星像ももっと安定すると思うのですが、この価格でそこまで求めるのは酷かもしれません。SWATなどの方がここら辺は利がありそうです。

AZ-GTiの購入から半年ちょっと、すごく楽しめました。軽量撮影システムとしてはこれで大体完成なのですが、本当に撮影で普段使いをするかというとこれはまた別問題。やはり風に弱いという欠点があるため、車が使える時や、自宅では頑丈な赤道儀を使っての撮影になるかと思います。あ、でも電視観望ではAZ-GTiは完全に主力ですよ。

AZ-GTiは、特に天文を始めたばかりの人でも、アイピースでの観察から電視観望、経緯台モードでの簡易撮影から、赤道儀モードでの本格的な撮影までこれ一台で相当楽しめるはずです。コストパフォーマンスを考えたら間違いなくオススメの一品です。


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