ほしぞloveログ

天体観測始めました。

カテゴリ:観測・撮影 > 太陽

3連休ですが、富山は3日とも天気は駄目の予報。初日の今日、朝起きても雨が降っていて太陽は駄目そうでした。でも昼近くになってきて徐々に青空の範囲が広がってきました。北と東の方はかなり曇っているのに、南側から天頂向けてかなり晴れてきています。ガストでモーニングを食べてのんびりしていたのですが、天気を見て急遽帰宅して、機材の準備を始めました。


2時間くらいの昼間の晴れ

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前回の撮影が10月12日だったので、3週間ぶりくらいになり、結構久しぶりです。Hαでまずは調子を見ます。コリメーターレンズもカメラレンズも少しずれていたので調整します。鏡筒の焦点はかなりズレていました。SharpCapのバージョンを上げたら、起動時に立ち上がるはずの連続撮影のためのSHGスクリプトが認識されなくなってしまいました。SHGスクリプトの新バージョンも出ていたのでそれも試したのですがダメ、SharpCapのバージョンを戻してもダメで、結局SharpCapもSHGスクリプトも旧バージョンに戻してやっと認識されました。時間が惜しいのでとりあえず撮影を開始しました。スクリプトが認識されない問題は後から検証します。

赤道儀の極軸があまり合っていなかったようで、繰り返し撮影の間に結構な速さで太陽位置が左にずれていきます。確かに赤道儀が少し西向きになっている様子なので、赤道儀の水平回転ねじで合計3回転ほど回して東方向に回転し、その後は10ショット撮るくらいではズレがわからなくなるくらいになりました。

Hαを18ショット撮って安定に撮影できることを確認してから、次の波長に移ったのですが、その後すぐに曇ってきてしまい、機材を片付けた直後に雨が降り出しました。正午を中心に2時間くらい晴れていましたが、撮影にかけることができた時間は1時間弱位だったでしょうか。


Hα画像

今日の撮影結果はHαだけです。いつも通りモノクロ画像から順に、ドップラーシフト画像まで載せておきます。

撮影時間に間が空いてしまうと表面の模様が変わってしまい平均化されて分解能が出にくくなるののは分かっているのですが、今回は短時間のうちに枚数を撮ったので、スタックした方が解像度が出ました。撮影した18枚のうち、雲が流れていないなど使い物になる9枚をスタックしてみました。

今回、画像処理は
  1. JSol'ex1の1枚どりのオートストレッチ
  2. AS!4でスタック、Registax6で解像度出し
  3. AS!4でスタック、 ImPPGで解像度と炙り出し
  4. AS!4でスタック、 ImPPGで解像度出し、PixInsightのSolarToolsで炙り出し、
の4つを比較してみました。1枚撮りよりは、スタックした方がいずれも分解能が出ます。2のRegistaxは分解能は出るのですが、ダークフィラメントの階調が消えてしまうようなので諦めました。3と4はどちらも良かったですが、カラー化することも考えるとSolarToolsのカラー化機能が使える4の方が良さそうです。その後、4をPixInsightのMultiscale Linear Transformでノイズを少し落として、今回のモノクロ画像の仕上げとしました。結局カラー画像は使わなかったので、3を使っても良かったのかもしれません。

1枚目のモノクロのみスタックしたものを示します。

IP_aligned_lapl2_ap5296_IP_PI_MLT_LHE2_cut

2枚目以降はスタックなしの1枚画像です。
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今回ちょっとだけ面白かったのは、P角が25度近くとかなり大きく、軸が相当傾いていたことです。一般的な太陽観測サイトは、例えばよく参照する「宇宙天気ニュース」でもP角補正をしていないので、黒点の位置がかなりズレて見てしまい、最初間違えて上下フリップをしてしまったのではないかと勘違いしたくらいでした。黒点位置があっているかどうかはJSol’Exの「active regeon」画像を見るとわかります。普段出さない画像ですが、向きなど間違えて撮影していないかの確認に使っています。

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他にも普段出していない画像があって、プロミネンス画像と、そのドップラーシフトというのがあります。いい機会なので、今回載せておきます。
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12_25_29-trimmed_0000_12_25_29-trimmed_doppler-eclipse

毎回示すカラー画像は、JSol'Exでモノクロ画像を単にカラー化した「colorized」というものではなく、実は「mix」という出力ファイルで、カラー化された太陽表面に、上のあぶりだされたプロミネンスも合成して疑似カラー化したものを載せるようにしています。なので、ブログに載せてあるカラー画像だけはプロミネンスがよく見えています。他の画像はプロミネンスがほとんど見えていません。ただし、今回のようにモノクロをスタックした場合は、その過程でプロミネンスもあぶりだしているので、その場合はプロミネンスもよく見えるようになっています。

うーん、記録の記事だとあまり書くことがないですね。もう少し天気がいい時間が確保できれば、また劇的に進む予定です。それまではおとなしくいい天気になるのをゆっくり待つことにします。


最近は休日に全然晴れません。この日は久しぶりの晴れの予報でした。でも結局、朝は曇りで、昼頃に少し晴れただけでした。その晴れ間に撮ったHα画像です。


スリット部を改造

SHG700のスリットは、その台座のところで斜めになって取り付けられています。反射光を光軸から逃すためだと思いますが、その斜めになっていることが理由で、一部の測定で太陽像のゴーストが出てしまうことがわかっています。その斜めになっている台座の固定ネジの下側に、ワッシャーを挟むことで台座を斜めに傾けて、スリットを水平に近づけるようにしてみました。今日の午前中はその作業に時間を費やしました。

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その作業の効果や、どんな用途で使うかはまたそのうちに説明するとして、作業後の撮影復帰が大変だったというのが今日の話です。そもそも、スリットを触ったのはこの日が初めてです。その結果、問題点が二つ起きてました。

一つは作業でスリット表面にホコリのようなものがついてしまい、撮影時に黒い固定線が入り込んでしまったことです。これは、MLastroで推奨されていないブロアーでしつこく吹き飛ばすことで何とか解決しました。ブロアーはまだましかもしれませんが、少なくともスリットを何かで拭くようなことは絶対にしない方がいいとのことです。

もう一つの問題は、スリット位置をそこそこ正確に取り付け直さないと撮影範囲がずれてしまい、スリットの端がカメラの画角内に入らなくなってしまうことです。最初は鏡筒からSHG700を外して調整し、取り付けて太陽で画角を確認して、また外して調整というのを繰り返していました。これは結構な手間です。でもよく考えたら、散乱光でもスリットの端が見えるということに気づき、鏡筒から外して画面を見ながら調整することでうまく合わせることができました。位置合わせについては今回の調整で様子がわかったのですが、スリットの回転角が撮像にどう影響するかがまだよくわかっていません。

実はちょっと前に、長さが7mmから10mmになった新しいスリットがMLastroからリリースされて、リリース後すぐに発注していのがやっと最近届いたので、今回はその交換練習も兼ねていたのですが、本番の交換前にもう少し理解を深めておいた方が良さそうです。

さて、スリットをうまく付け直して、やっと撮影です。ピントはいつものようにコリメートレンズとカメラレンズと鏡筒の焦点の3自由度を合わせることで、うまくいきました。撮影している途中でちょうど正午くらいになり、連続撮影のSHGで毎回初期位置に戻すように設定していたのが原因で赤道儀が勝手に反転したのにはちょっとびっくりしました。反転後は、ウェイトバランスが悪さをして、また像が伸びてしまいました。ウェイトの位置を調整して、やっときちんと取れるようになったかと思ったら曇り出してしまいました。結局この日取れたのは5ショットのみ。その結果です。


Hα画像

まずモノクロ画像ですが、これは5ショットをスタックしました。1枚1枚の解像度がイマイチだったからです。
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条件がいい時の1枚画像のほうがいいのか、スタックした方がいいのかはまだ迷っています。少なくとも、30分とかの長時間で撮影した多数枚のスタックでは、逆に像が甘くなってしまうようです。それでも今回は5枚スタックでもはっきりしません。基本的には午前撮影の方がいいみたいです。

モノクロ以外は、一枚画像です。

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12_12_38_0000_12_12_38_autostretch_15_00

12_12_38_0000_12_12_38_card_0_00

12_12_38_0000_12_12_38_mix_0_00

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CaKなど、もう少し撮影したくて夕方まで待っていましたが、結局晴れず。この日は諦めました。


昨日の撮影に引き続いて、日曜の今日も朝から晴れていたので記録撮影です。

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でも、特に新しいことをするわけでもないので、だんだん飽きてきています。この日は、昨日のセッティングが残っていたCaKを最初に撮影し、その後Hαで撮影しました。午前8時半くらいから始めたのですが、Hα撮影の途中で雲が徐々に濃くなってきたので、午前9時15分くらいには早々と撤収しました。暑くないので晴れたらまた再開しようと思いますが、どうなるでしょうか?

IMG_1987


Hα線

いつものようにHα線です。15ショット撮影して、その中で一番きれいなものを選びました。

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height

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CaK線

CaKですが、少し色を変えました。ちょっと見やすくなったと思います。こちらは12ショット撮影して、午前8時40分の1ショットを選んでいます。

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土曜日の朝からそこそこ晴れていたので、太陽分光撮影です。今日の目的は、前回動画撮影で速度が一定でなかったのか、おかしな太陽画像になってしまったことの検証です。

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これは午後一で撮った撮影風景です。赤道儀が反転した後です。

この日気を付けたことが、赤道儀の赤経の左右バランスでした。定説通り、回転方向に多少荷重がかかるようにします。そうするとテスト撮影でも全く問題なく、きれいな太陽画像が再構築できました。途中曇ったりしたので、晴れ間を狙いながらHαを26ショット、テストも入れたら30ショットくらい撮影しました。

その後、12時を回って、CaK線を撮影します。赤道儀を反転したのですがウェイト位置は触らなかったので、今度は回転方向と逆に荷重が少しかかった状態になってしまっています。この状態で撮影すると、前回見たような、一部スピードが変わったような画像が再現できました。その後、ウェイト位置を少し外側に移動し、回転方向に荷重をかけると、今度はきちんと撮影きます。どうやら赤道儀の赤経体の回転方向と逆に荷重をかけてしまったことで起こったバックラッシュで原因は確定のようです。CaKの時も曇りが多く、晴れ間待ちで何度かに分けての撮影でしたが、13ショットを撮影しました。

いつものように撮影結果です。Hα線からです。今回は15ピクセル (0.13Å) 離れた画像を連続光として載せておきます。

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続いてCaK線です。モノクロとカラーを載せておきます。カラーはJSol’Exの色遣いはちょっとどぎついかもしれません。

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この日は午後から某天文台のリモート講習会に参加しました。再来週に試験があります。受かると晴れてリモートで望遠鏡を操作して撮影することができるようになります。


夕方からですが、久しぶりに休日晴れたので、太陽分光撮影です。しかもやっと少し秋らしくなってきて、全然暑くないのです!

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新兵器で、日が当たらないようにパラソルを装備しました。


今日の太陽像

記録なので順に載せていきます。まずはモノクロです。スタックなどしていない一枚撮りですが、拡大しても十分な解像度が出ています。結構満足です。

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モノクロ反転画像です。
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カラー画像です。こちらはプロミネンスも強調してあります。
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緯度経度と、黒点の番号付き画像です。自転軸 (P軸) がかなり傾いているのがわかります。こういった変化を見ることができるのもJSol’Exの利点です。
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ドップラー画像です。面白いのは、青と赤の境界が傾いていて、太陽自転軸の傾きの影響も見えているようです。
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今日の失敗

実は結構たくさん撮影したのですが、ことごとく失敗でした。HαとCaKと合わせて54ショット撮影したのですが、ほとんどが下の画像のように途中が伸びたりしてしまいました。上に挙げたものは、その中でたまたま唯一生き残ったものです。

0009_16_30_06_autostretch_0_00

伸びている位置はどの画像を見ても大体同じでした。再構築した画像がこのようになる原因は、動画撮影時の赤道儀のスイープのスピードが途中で変わってしまうからです。なぜそうなるのか?まだはっきりとはしていませんが、おそらくバックラッシュが関係しているのではと推測しています。

普段の撮影はほとんど午前の早いうちに済ませてしまいます。でもこの日は午後のしかも夕方近くから日没までのかなり遅い時間です。鏡筒とウェイトの左右バランスに気を使わなかったので、スクリプトでの繰り返しの撮影時に、反転してから録画開始して少ししてちょうどスピードが変わるような状況になってしまっているのかと考えています。次回撮影時に、少し時間を撮って検証してみようと思います。


フィルター特性測定プロジェクト開始

あと、ここしばらく休日で安定に晴れる日が無くて、この日も夕方晴れるのを期待していなくて、とうとう次のステージに進むことにしました。やりたいことはエタロンなどのナローバンドのフィルターの特性を実測することです。とりあえず出だしなので、セットアップの写真だけ載せておきます。

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普通は太陽を光源にすることが多いようなのですが、写真にあるように試しに光源にLEDを使ってみました。LEDは白色光と言われているように、ローカルには波長特性もほとんどなく、かなり平坦でほぼ直接透過光の輝度が測定できそうです。画像にはエタロンフィルター特有のComb (櫛形) 構造がきれいに見えています。別途、太陽の散乱光を使ってフラウンホーファー線を撮影してあるので、回折格子を動かさなければ波長のキャリブレーションができるはずです。今後解析までして、また記事にします。

星をもとめて」から帰宅して、機材のチェックをしていました。特にSHG700は、フラウンホーファー線の展示のために、カメラを外したりピント位置をずらしたりしたのと、一度三脚ごと倒れてしまったので、ダメージなどないか、一からチェックすることにしました。


再調整がうまくいかない?

ゴールはきちんとした太陽画像が撮影できることです。次のような手順で再調整しました。
  1. カメラを定位置に固定。
  2. 回折格子の角度をHα線に合わせる。
  3. カメラの露光時間を伸ばしたり、ゲインをあげたりして背景光を画面で見えるようにする。
  4. 「背景光のフランウンホーファー線」を見ながら、カメラレンズの位置をマイクロメーターで「フラウンホーファー線のピント」が出るように合わせる。
  5. 太陽を導入して、太陽光を直接見る。「太陽の端のエッジ」がはっきり見え、かつ「フラウンホーファー線のピント」が合うように、コリメートレンズの位置と鏡筒のフォーカサーを繰り返し調節して合わせ込む。

このような調整をして、撮影してみた画像がこれです。

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ボケボケです。上の手順を何度かやっても、全然改善しません。コワレタカ?と一瞬思いました。


忘れていたこと

でも上の手順で一つ忘れていたことがあったのです。何だと思いますか?

クイズにしようかとも思いましたが、ちょっと複雑すぎるかと思うので、今回はすぐに答えに行きます。

忘れていたことを含めた、正しい手順です。
  1. カメラを定位置に固定。
  2. 回折格子をHα線に合わせる。
  3. カメラの露光時間を伸ばしたり、ゲインをあげたりして背景光を画面で見えるようにする。
  4. 背景光で見える「スリットの端にあたる明るい部分の境界」を見ながら、カメラレンズの位置とコリメートレンズの位置を、2つのマイクロメーターを行き来しながら、「スリット端の境界のエッジ」と「背景光のフラウンホーファー線」が両方ともはっきり出るように合わせる。
  5. 太陽を導入して、太陽光を直接見る。鏡筒のフォーカサーを調整しながら「太陽のエッジ」と「フラウンホーファー線のピント」が両方とも合うように合わせる。
  6. 鏡筒のフォーカサーだけで両方とも合わない場合は何かおかしいので、3に返って見直す。ぴったり合うところでは、「縦の線」が最も多く見える。

最初の手順では「スリット端の境界のエッジ」を見ることを忘れていたのです。実際、マイクロメーターで2回転分くらい、コリメータレンズ位置にして1mm位ずれていました。ここを合わせなくても、「太陽のエッジ」ははっきり見え、かつ「フラウンホーファー線のピント」が出てしまうので、一見全部合わせたように思いこんでしまったのが敗因です。

この手順を踏んで合わせた画像が下になります。雲が出てきてしまったので明るさが一様でないですが、シャープさは上の画像を雲泥の差であることがわかります。

13_44_59_0000_13_44_59_autostretch_0_00


調整方法はきちんと理解されているのか?

2枚の画像を見て少し思うところがあります。上の画像って、Sol’Exの平均的な画像に似てませんでしょうか?もちろん、もっときれいに出ている画像もあるので、必ずというわけではありません。でも2枚の画像の調整で違うところって、コリメートレンズの位置が高々1mmほどずれているだけなんです。あとの自由度は最初の調整でもできる限り合わせているので、コリメートレンズ位置以外は最適化されてるんですよね。

この結果を見る限り、1mmはもうズレすぎでお話にならないのですが、じゃあ実際後半の調整ではどれくらいの精度で合わせたかに興味がいくかと思います。驚かないでください。約100分の1「10μm」のレベルで合わせています。マイクロメーターがあることで実現できるオーダーですが、実際にマイクロメータの精度でちょうどいいくらいです。というのも、マイクロメーターの目盛りを見ずに画面だけで合わせるのを何度か試しても、毎回ほぼ同じ目盛り位置に行きます。1目盛りが10μm刻みなので、同程度のオーダーで実際に合わせているというわけです。

典型的なSol'Exユーザーが、Sol'Exの標準的な手合わせ機構でこのオーダーまで合わせているとはなかなか考えにくいです。Sol'Exできれいな結果を残している方は、ここら辺の所にかなり気を使っているのかと思います。

Sol’Exの調整方法を調べてみたのですが、コリメータレンズの位置については単に「調整する」くらいしかなく、具体的に「何を見ながら」「どれくらいの精度で」合わせたらいいのか、少なくとも日本語で書いてある記述はどこにも見当たりませんでした。Sol’Exで、上の正しいと思われる手順でうまく合わせこんだら、実際もっときちんと写るのでしょうか?一度試してみたいです。

SHG700を購入した時点で、Hαを撮影するならかなりきれいに写るはずです。それはコリメーターレンズの位置をあらかじめきちんと調整してくれているからです。でも何らかの拍子でそこをずらしてしまい、その後調整すべきところをきちんと調整し直さなければ、写りは全く駄目になるということを今回示すことができたのかと思います。

今後、SHG700を手に入れる方が日本でもどんどん出てくると思います。調整方法はやはりちょっと複雑なので、だんだん調子が悪くなっていったなど、困る人も出てくることは容易に推測できます。正しく調整する方法を確立して、広く認識されることが大事なのかと思います。


調整過程の詳細

上の説明は単純な手順だけの話なので、調整の過程で何がどうやってあっていくのか、ちょっと考えてみたので、もう少し詳しく書いておきます。

調整すべき自由度は、以下のように5つもあります。
  1. 回折格子の回転角(波長の選択)
  2. カメラ位置
  3. カメラレンズ位置
  4. コリメーターレンズ位置
  5. 鏡筒の焦点

その内、1と2は自分で任意に位置を決めることができます。この2つの位置に合わせて、残り3つの自由度の位置を一意に決めてやる必要があります。

ところが、3のカメラレンズがカメラに像を結ぶ位置は、4のコリメーターレンズ位置に依存します。この2つの自由度がカップルしているのが、調整を難しくしている要因の一つです。

もう一つのポイントは、4までは太陽の直接光を必要としないので、4までの自由度と、5の鏡筒の焦点の自由度は独立です。5は鏡筒の焦点位置をスリット上に合わせるだけです。なので、鏡筒のフォーカス状態とスリットの位置だけで決まります。


コリメーターレンズの役割

では、4のコリメーターレンズ位置は何を調整しているのでしょうか?ここが最大のポイントです。

そもそも背景光は散乱光に近いものなので、鏡筒のピントに関係なく、入ってきた光に対してカメラレンズ位置だけを調整することで、カメラにフラウンホーファー線のピントを合わせることができます。コリメーターレンズがどんな位置にあろうと、カメラレンズでカメラにピントを合わせることができてしまいます。

でもこの適当な状態だと、スリット位置で焦点を結んでいない光に対してカメラにピントが合ってしまっているので、スリット位置を見る目安となるスリットの端の境界のエッジがボケて出てしまいます。これが、この日最初にミスった部分です。

コリメーターレンズを調整することで実現できる「スリット位置に焦点があった光」を、さらにカメラレンズを調整することでカメラにピントを合わせることが重要になります。こうすることで、スリット端の境界のエッジがはっきりと出て、かつフラウンホーファー線のピントが合った状態を画面で見ることができます。これが最初の調整で忘れていた部分で、正しい手順できちんと確認して像が実際に劇的に改善された要因です。

ここまでくると、あとは鏡筒の焦点をスリット位置に合わせることだけが残っています。実際に鏡筒のフォーカサーで合わせてやると、太陽の直接光の端の境界のピントもスリット上に合うために、カメラで見てもエッジがきちんと出たピントが合った状態に自動的になるというわけです。

今回は調整も上手くいきましたが、今後のことを考えると一つ疑問が出てきます。スリットの端が画面で見えているうちはいいのですが、もっと長いスリットを使ったり、センサー面積が小さいカメラを使ったなどで、スリットの端が見えない場合はどうなるのでしょうか?スリット長を長くする予定なので、こういったケースでもきちんとした調整法を確立する必要がありそうです。


お願い

何をどうやって合わせているかの仕組みはおそらく上に書いたようなことだと思います。でも素人の考えることなので、もしかしたら間違っているかもしれません。何か気づいた方はコメントにでも残してもらえると助かります。

特にSol'Exを持っている方に、上記方法を試していただいて、本当に像がきれいになるか見てもらえたらと思います。うまくいったら教えてください。


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