ほしぞloveログ

天体観測始めました。

カテゴリ:鏡筒 > PST

前回記事の「エタロン良像範囲改善 (その1)」の続きになります。今回は主に新カメラG3M678Mを使ってエタロンの良蔵範囲を調査してみました。




ニュートンリング

7. ニュートンリングをあらわに見てみる

前回の記事は5月4日までにやったことですが、その次の5月5日に、やり残してあったニュートンリングのテストをしました。新カメラG3M678Mが到着したのがちょうどこの日なのですが、このテストはまだASI290MMを使っています。

元々、チルトアダプターの角度をほぼ最大限まで傾けて使っていました。ニュートンリングを完全に消すためにはほぼ最大角度まで傾ける必要があったからです。下の写真を見てもらえばわかりますが、USBケーブルが見えている方向の裏側から出てることからわかるように、センサーの長手方向が傾くようにチルトアダプターに角度をつけています。

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太陽を実際に撮影した画像だと模様がグシャグシャしていてわかりにくいのですが、ピントをずらしてフラットフレームを撮影するとニュートンリングがどれくらい出ているかよくわかります。その状態で比較してみます。まずは傾ける角度を0度にしてニュートンリングが最も出る場合です。かなり目立ちます。
スクリーンショット 2025-05-05 132111

いくつか角度を変えて試したら、センサーの上側方向に角度をつけるとニュートンリングが小さくなりました。上側を傾けて、その角度は最大の半分くらいにした場合です。干渉縞の幅が大きくなって多少ましになっているのがわかります。角度0度だと目立ちすぎるのと、かといって最大角度ではピントずれの場所が出てしまいます。ピントずれが出るか出ないかくらいの、とりあえずこれくらいを基準とします。
スクリーンショット 2025-05-05 133748_tilt_upper_half

多少ましとはいってもこんなに目立つニュートンリングですが、実際の撮影時にはフラット化するとほぼ目立たなくなります。

まず、フラット化をしない画像ですが、撮影中でもすぐにわかるくらいです。特に黒点下など、横に走る縞が多数見えているのがわかります。
スクリーンショット 2025-05-05 133932_tilt_upper_half

次にフラット化した画像です。前回の記事で示したものとほぼ同じですが、ニュートンリングは全く見えないと言っていいでしょう。
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ところが、このまま撮影を長時間続けていくと、フラット補正ががずれてくるのかと思いますが、ニュートンリングが見えてきてしまいます。真ん中上部に明らかに縞模様が見えるのがわかるかと思います。
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フラット補正直後の撮影始めは大丈夫かもしれませんが、これだと長時間撮影するタイムラプス映像は厳しいかと思います。

ちょっと結論が出ないので、とりあえずこの問題はこのままにして、次は新カメラのテストに移りました。


カメラ位置のテスト

8. より広角なG3M678Mでカメラ位置を変えて良像範囲を探る

その後は天気が悪くてじっくりとした時間が取れなかったので、せいぜい8cmの全景のテストだけが進み、再びC8でテストができたのは5月18日になります。ここからは新カメラG3M678Mでのテストになります。
  • 大きな違いは、長辺、短辺ともにセンサーの大きさが1.5倍程度になるので、面積だと2倍くらいになり、より広い範囲を見ながら判断できます。
  • もう一つの重要な違いが、アイピース型なので、センサー面よりPSTの奥まで押し込むことができることと、さらにBFとの距離を縮めることができることです。これは光束の径が最も小さくなるところを、一番径の制限されるBFのより近くに持ってくることができる可能性高くなります。

カメラの差し込み位置を変えるということは、結局のところエタロンとセンサー面の間の距離を変えるということになります。その距離に合わせたピント位置を、C8の主鏡の位置で合わせるということなので、相対的には実質C8とエタロン間の距離を変えていることに他なりません。エタロンカメラ間の距離を保ったまま、C8エタロン間の距離を変えても結局C8主鏡でのピント合わせで補正してしまうので、実質ほとんど状況は変わらないということは、前回記事の「3. C8に対して、どれだけPST本体を押し込むか」で示しました。

ここからカメラ位置を変えた結果を、違いがわかる代表的なところをA-Eまでの5ヶ所で示していきます。

A. まずは、カメラを最も中に入れた位置です。ここを0mmとします。
スクリーンショット 2025-05-18 063445_01_0mm_min

B. カメラをPSTから約15mm引き抜いてねじで固定た場合です。周辺の黒いケラレが減っているのがわかります。
スクリーンショット 2025-05-18 063837_02_15mm_blueallout_noblackpart

C. カメラにフィルターを付けるための延長ノーズアダプターをカメラ側に取り付けて長くし、その分最初の位置から35mm引き出した状態です。明らかに良蔵範囲が広がっています。黒点と白いプラージュ間の距離を比べても、拡大しているだけではなくて、見える範囲が広がっていることがわかります。
スクリーンショット 2025-05-18 064615_04_35mm_oneringoutest

D. 別途手持ちのアイピース口の延長等をつけて、カメラを最初の位置から55mm引き出した場合です。良蔵範囲がほぼ全面に広がっています。また、ヒストグラムを見るとわかりますが、明らかに山の位置が左に行っていて、全体に暗くなっているのがわかります。
スクリーンショット 2025-05-18 065033_06_55mm_onering_extender_longest

E. カメラを最大引き出した70mmの状態です。ねじでカメラの伸ばしたアダプターの一部を固定しているだけなので、撮影をするには不安定ですが、テストのために確認してみました。55㎜よりも明らかに左右が改善されているのがわかります。ヒストグラムが示すように、さらに暗くなっています。
スクリーンショット 2025-05-18 065334_07_70mm_onering_exteder_longets

ここまでの結果でいくつかのことが判明しました。
  • カメラを引き出せば引き出すほど、良蔵範囲が広がり、全体が暗くなることがわかりました。
  • それにしても、これだけの違いで良蔵面積が2倍以上になっているのは驚きでした。
  • ただ、暗くなっている理由がまだわかっていません。制限がBFの径からきているのなら暗くなるのはわかりますが、その場合良蔵面積は小さくなるセンスだと思います。
  • 時間経過もあり、ピントがきちんとあっている保証がないので、どこまではっきり言えるかはわからないのですが、カメラを引き出せば引き出すほど分解能も増しているようにも見えます。これはエタロンにより平行光に近い光が入ったということなのでしょうか?
かなり大きな進展です。まだいくつかミステリーはありますが、とにかく引き出した方が面積、分解能がよくなる傾向で、暗くなることだけが不利なので、これはもう引き出す方向のほうがメリットが大きいと言っていいでしょう。


新カメラでのニュートンリング

新カメラG3M678Mに変えて一つ気づいたことがあります。それはニュートンリングが全く目立たなくなったことです。

これまでのASI290MMとの大きな違いは、センサーの前に保護ガラスが無くなったことでしょうか。もしそうだとすると、ZWOカメラでニュートンリングが出てくるのは、保護ガラス単体か、保護ガラスとセンサー面でニュートンリングが出ていた可能性が高いです。いずれにせよ、チルトアダプターをつける必要がなくなって、さらにアイピース口に差し込むタイプのカメラなので、これまでより対物側にかなり押し込めるようになりました。今回のC8での結果では、センサー面をより遠くにする方がいい結果が得られているので、逆センスなのが残念ですが、全景を8cm鏡筒で撮る場合は有利な方向に働きます。


PSTの光軸調整

9. PSTのC8に対するセンタリング(光軸調整)

5月18日にやった最後の検証です。実はここからC8に対してPSTを回転させて、良蔵範囲が変わるかテストしようとしてました。回転する前にPST固定のねじを緩めて、何の気なしにPSTを横に動かしてみると、画面の右手方向にさらに良蔵範囲が広がっていることに気づきました。最良のところは、これまで見ていた位置から画面の横手方向の半分くらいの長さ行ったところにあるようです。

これまでの固定位置です。いいところと悪いところがわかるように、フラット化を外して輝度差をあえて目立つようにしています。フラット化していないと、実質分解能が落ちたようにも見えるため、左側が暗く、ボケたように映ります。
スクリーンショット 2025-05-18 071127_11_70mm_longest_noflat_0deg

次に、最良方向に向けて黒点を画面中心あたりに持って来ました。これもフラット化はなしですが、明るさは均一に近くなっています。左端の分解能は上がっています。その一方、黒点右側の分解能が悪くなっているように見えます。さらにその右側は再びよくなっているようにも見えます。
スクリーンショット 2025-05-18 071557_12_70mm_longest_noflat_0deg_center

なぜこんな風に画面内途中で複雑に良蔵範囲が変化して見えるのかはまだ謎です。

その後、PSTのねじを固定すると「安定に」毎回最良位置から左側の所に固定されることがわかってしまいました。これまでずっと悪い位置で見ていたということです。また、前回の検証でASI290MMでPSTを回転させて良蔵範囲が改善していたのは、最良方向へ位置が少し移動しただけということもわかりました。

さて、どうやったらいい位置で固定できるかですが、とりあえず今回は対処療法で、PSTの差し込み部に1枚テープを張り、ねじを締めたときに良蔵方向へ傾いて固定されるようにしてみました。また、C8とPSTの固定部分がおそらくネックになっていて最も弱く、今のセッティングではここが一番揺れる可能性が高いこともわかってきました。固定方法はいずれ、強固にする方向で解決する必要がありそうです。


その後の撮影

ここで長時間撮影に移りました。その結果が、前々回の記事で示したものになります。



まとめ

5月後半はなかなか晴れなくて、太陽関連のやりたいことが溜まってしまっています。しかも最近は休日も忙しかったりするので、さらにチャンスが少なくなっています。今週末の福島も残念ながら参加できません。

ゆっくりですが、エタロン調整は一応進んではいます。そうは言っても、結局のところエタロン関連でここまでで有効だったことって、
  • 2のカメラのチルトをなくしたこと
  • 4、6、8のカメラ位置を遠くにしたこと
  • 9のC8に対するPSTの光軸調整
くらいです。どれもたいして難しいことはしていなくて、ある意味単純なことしかしていないんですよね。その一方、これだけ単純なことでもある程度検証しようとすると、手順は丁寧に、問題を切り分けて、一つ一つ確認していく必要があります。ここまででもいろんな不具合がわかり、ある程度改善もできてきましたが、今後必要ならもっと大変になってくるエタロンそのものにメスを入れることもあるかと思います。

そもそもPSTエタロンで自分が望むものが得られるいのか、もしくはより高性能なエタロンを手に入れる必要があるのか、はたまた自分が望んでいるものとはいったいなんなのか?

まだまだ道は長そうです。







今回は、4月から撮影の合間にずっと続けているエタロンの調整についてです。現段階でまだ結論は出てませんが、かなり溜まってきたので、途中経過を一旦記事にまとめておきます。


はじめに

4月30日に書いた記事の中で書いた目標の最後の9番、C8+PSTでの良像範囲の改善です。今回の記事の範囲ではカメラはASI290MMを使っています。次回以降の記事では新カメラも使っていきます。

エタロンの調整はなかなか難しいので、簡単でわかりやすいところから順番に丁寧にやっていきます。この記事の後に試したことで、答えがわかっていてすでに意味がないこともありますが、それを飛ばして書くと意味がつながらなくなることもあるので、基本はやったことを順に書いておくことにします。

作業に入る前に、前提条件を書いておきます。
  • エタロンの回転角の自由度による不定性をどうするか? -> 画面中央が暗くなる位置で、ほぼ一意に決まると考える。
PSTのエタロンは、調整リングを回転させ、エタロンに圧力を加えることで鏡間の距離を変化させ、透過波長を調整します。現在の手持ちのエタロンは良像範囲は狭いのですが、暗い部分が画面中心にくることで中心波長を判断していて、その位置さえ再現すれば回転角はほぼ一意に決まるので、毎回その角度に持ってくるようにして一連の作業を進めています。もちろんん多少の誤差はありますが、今回の調整範囲程度では十分再現性もあると考えています。

(補足) 以前は入射光に対するエタロンの角度を変えて中心波長を調整すると思っていましたが、それだと計算上十分な角度変化が取れなさそう (今考えるとFSRの10%くらいは変わっていいはずで、当時の計算は2%) なので、ずっと疑問に思っていました。PSTを作ったCoronado社が持っている特許と、実際に実装されている方式を見る限り、圧力式と思って間違いないと思われます。2024年春までに一連の特許が切れたために最近のエタロンに採用されたようです。Phoenixのエタロンも、後部のスポンジの存在など、見ている限りPSTのものに酷似しています。

もう一つ、今回の一連の作業で困難と思われることを書いておきます。
  1. エタロンへの入射光の平行光度と、エタロンがきちんと働いているかの関係がまだよくわかっていない。
  2. 良像かどうか、スタックして細部出しをしないとわからないことがある。
  3. ニュートンリングが撮影時に確認できない。
などです。

1については、前回前々回の記事で、8cmでエタロン位置を0-5cm程度動かして、エタロン内に入射する光を平行光からずれた状態を作ったはずなのですが、結局エタロンの働きに差を見出すことはできませんでした。鏡間距離が短いことと、フィネスが低い( = 光の折り返し回数が少ない)ことが要因だと推測していますが、もっと動かしたら違いがわかるのか、実はすでに影響が出ていて気づいていないだけなのか、もう少し検証が必要です。

2は結構厄介です。はっきりとした悪い像はリアルタイム見てもわかるのですが、中にはリアルタイムで(まだボケた状態で)見て問題無いと思っていても、スタックした後で(これもまだボケた状態で)見て問題無いと思っていても、ImPPGで細部を出すと、なんかボケ気味だという場所が画面の中の部分的に存在することがあります。撮影時に確かめられるといいのですが、かなり最後の方まで画像処理して出てくるので、すぐに判断ができなくて調査が進みません。この一部がボケる原因そのものも、まだよくわかっていません。

3は、今回以降の一連の検証作業の途中で、カメラの角度が問題だということがわかってくるのですが、カメラの角度を変えるとニュートンリングが出てくることがあります。ニュートンリングを避けたいのですが、軽いものだと太陽表面の模様などに隠れて、撮影中はよくわからないのです。これも画像処理を進めていく過程、特にタイムラプス映像まで作ると、リング上の模様が動いているのがわかることがあります。撮影時に判断ができないので、困りものです。


PSTを回転

最初にやったのはかなり簡単なことです。

1. PSTとC8の取り付け相対角度を変える

まずいつもの通りC8+PST+ASI290MMで太陽表面のHα画像を撮影します。上に書いた通り、エタロンリングの調整は画面中央付近が一番暗くなるところを選ぶので、ほぼ一意に決まります。少しわかりやすいところを選びましたが、いつものように画面右側が明らかに模様が出ていないのがわかります。

スクリーンショット 2025-04-26 141939

次に順次PSTをC8に対して90度づつ回転していきます。その際、同時にCOMSカメラも順次90度回転させていき、視野の角度が回転しないように補正するようにします。PSTを90度や180度回転させただけではそこまで違いがわからなかったのですが、270度回転させた時には明らかに改善が見られました。

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その時の画像です。見ている場所が違うので少し比較しにくいですが、明らかに右側が改善しているのがわかると思います。

スクリーンショット 2025-04-26 141435_270

この状態で、500フレーム撮影し、改善するかどうか比較してみました。
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うーん、右側は思ったより改善してません。この日(4月26日)はここでおしまいとなりました。


もしかしてエタロンのではない?

2. チルト角度調整

4月30日の記事で書いたように、上のテストの次の日 (4月27日) に粒状斑を撮影しています。そこでふと気づいたのですが、ここでも同じように右側がボケボケなんですよね。クロップしていない画像を改めて載せておきます。

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PSTで右側がボケていたのはエタロンの透過中心波長がHαからズレていたと思い込んでいたのですが、粒状斑の撮影では白光なのでエタロンは全然関係ないはずです。ということは、これはC8かカメラから来ているでは?と考えたわけです。

ここで怪しいのは、カメラの手前に入れてあるチルトアダプターです。もともとの目的は、焦点距離が長くなりF値が大きくなると、直線的に入ってくる光が多くなるためにニュートンリングが発生しやすくなるので、それを回避する目的でカメラを傾けて取り付けるために入れています。ただ、その傾き角をかなり大きく取ってしまっているので、もしかしたらそれで焦点が合っていないだけなのではないかと思ったわけです。

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しかも、午前と午後では赤道儀が反転するので、画面で見て上側を北に保つためにCMOSカメラを午前と午後で180度回転するのですが、たまにこの180度回転を忘れてしまう時があって、その忘れた時はボケが右から左に移動してるのを思い出しました。もしこのボケがエタロンからきているなら、ここでボケの左右反転は起きないはずですが、もしこのボケがチルトアダプターからきているとしたら、カメラとチルトアダプターの取り付けはねじ込み式なので相対角度は常に保たれているので、左右反転が起きるはずで、今ある現象を説明することができます。

この推測を確かめるために、ゴールデンウィークの5月4日の午後の曇りの中の晴れ間を利用して、実際にチルトアダプターを変更してみました。

結果は上から順に、チルトアダプターが 1. これまで通りほぼ最大角、2. 半分の角度、3. 傾きなしとなります。
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下にフラット補正時のヒストグラムが残ってしまっているので少し比較しにくいですが、右側が明らかに改善されていきます。傾きをなくした時にもニュートンリングはパッと見は確認できません。傾きなしが一番いいので、とりあえずこれ以降は傾きなしでさらに調整を進めます。(その後、別の黒点画像を連続撮影し、タイムラプス映像にしたところで、明らかにニュートンリングの存在がわかりました。なので、傾きをなくす場合は、何らかの対策が必要です。)


C8に対するエタロン位置調整

3. C8に対して、どれだけPST本体を押し込むか

次に試したかったことは、鏡筒に対するPST固定位置の変更でした。でもその前に、カメラ位置の自由度を高めるために、ここでいったんチルトアダプターを外してカメラをより押し込む方向に動かしました。その結果を載せます。

スクリーンショット 2025-05-04 154255_04_notilter

右側の見え方が有意に悪くなっていますが、理由はまだよくわからないので、一旦は放っておきます。ここでのテストは上の画像がスタートになります。

鏡筒に対して、レンズ込みのエタロン位置を相対的に変えるために、手持ちの2インチの延長アダプターをC8とPSTの間に挟み込みます。これでエタロン位置も含めてPST全体が3cmほど後ろに下がったことになります。ここから更にPSTの入れ込み度合いを調整することで、もう少し位置を変化させることができ、最大で6cmくらい下げることができます。その際のピントは、C8側で合わせます。C8の主鏡の位置をずらすということですが、この調整範囲がかなり広くて、以降のテストで様々な個所の位置を変えていますが、すべてピントを出すことができます。この調整範囲の広さはC8を選んだ利点の一つです。

結果になります。上から順に 1. 2インチ延長アダプター挿入後で初期位置から3cm下がった状態、2. さらにアダプターに浅くPSTを入れることでさらに3cmほど、合計で6cmほど後ろに下げた後となります。
スクリーンショット 2025-05-04 154649_05_2inch_adapter

スクリーンショット 2025-05-04 155148_07_2inch_adpter_faresr

上3枚を比較してみると、最初の位置からエタロンを変化させても、予想に反して右側の映り具合はほとんど変化しません。これは8cm鏡筒でのコメントの議論がヒントになって謎が解決しました。gariさんが「PSTの黒箱を望遠鏡に挿してピントを合わせられる場合、対物がいずれの場合でも焦点位置からだいたい200mm手前の位置に-200mmのレンズが配置されることになるので、いずれの対物でもほぼ平行光になります」と言っていて、その後、私から「PSTの場合、レンズ位置とカメラの位置が固定だから、ここをいじれない限り大きく状況は変わらないということですね」と返しています。今回はPSTのピント調整を使わずに、この段階ではカメラ位置も調整していなくて、手前のC8のみでピントを合わせていることになります。結局エタロン以降でのセンサー面までの光の状態に(ほぼ)違いはないので、コメントでの議論が実証されたような形になるのかと思い、納得できました。


カメラ位置の調整

面白いのはここからです。

4. カメラの位置を変えて、エタロンとカメラセンサー面の間の距離を変える

上の最後の状態から、カメラをPSTに対して浅く差し込むようにして、エタロンから遠くで固定するようにしてみました。右側に明らかな改善が見られ、細かい模様が出ています。
スクリーンショット 2025-05-04 155839_09_2inch_adapter_faethest_tilter_far

ここに載せている状況以外でもいろいろ試してみましたが、やはりカメラを遠くに付ける方が右側のボケが少なくなるのは確実なようです。なので結局、C8とPSTの間の2インチ延長アダプターは外して、チルトアダプターを再度取り付けました。その時の画像が以下です。

スクリーンショット 2025-05-04 160149_10_no2inchadapter_tilter_camera_far

ただしこれがベストかというと、たぶんまだ結論を出すのは早そうです。まず画面右側はいいのですが、逆に左側の分解能が出ていない気がします。また、画面上にニュートンリングっぽい回転状の模様が出ているようにも見えます。でも見分けはかなり微妙で難しくて、明らかな差が出るような状況にない限りは自信をもってこれがいいというのは難しいです。


再度PSTを回転

5. PSTをC8に対して、再び回転させてみる

上の状態をもう少し改善できないかと思い、ここから、再度前週に試したPSTの取り付け角度を探ることにしました。書き忘れてましたが、この日のテストは再びPSTを0度で取り付けていて、前週の270度ではなくなっています。正直に言うと、単に270度のことを完全に忘れていただけで、何の疑いもなく最初からいつも通りに0度に取り付けてしまっていました。

0度から順に変えていきます。上から0度、90度、180度、270度です。
スクリーンショット 2025-05-04 162401_01_0deg_original_tilter0deg
スクリーンショット 2025-05-04 162931_03_90deg
スクリーンショット 2025-05-04 163133_05_180deg
スクリーンショット 2025-05-04 162709_01_270deg

これら4枚を比べると、特に画面左側が、有意に180度 > 90 or 270度 > 0度となっていると言えそうです。前週の270度がよかったというのは、やはりチルトアダプターでの右側のピンボケの効果が含まれた複合原因だったといってよさそうで、今回の180度の方がより独立した正しい判断だと言うことができそうです。


更にカメラを遠く

6. カメラを最大限遠くに固定

この日の最後に、カメラ位置をもっと遠くにしたらどうかということで、カメラのところに1インチの延長アダプターを挟み込んでみました。下が結果になります。

スクリーンショット 2025-05-04 164049_06_180deg_externder_best_but_darker

大きく変わったことが2つあります。まず、明らかに全体が暗くなりました。画面での見かけ上はストレッチを駆使して同じくらいになるように調整していますが、ヒストグラムの山の位置を比べて見ると明らかに左に移動しているので、実際は暗くなっているのがわかります。この暗くなるのが、BFの径が小さいことによる制限からきているのか、エタロンの働きが変わってよりHαに合ったので暗くなったのか、もしくは全く別の理由なのかは今のところ不明です。ただ、全体的に分解能はよくなったようにも見えますが、これは時間にも依るものなのかもしれないのでまだ結論は出ていません。

まとめ

と、今回の記事はここまでとしたいと思います。

ここ最近ずっとこのエタロン調整のことを考えています。週末の天気が悪くて、何の検証もできなかったのが不満なのか、昨晩はとうとう夢の中にエタロンが出てきて、全く訳のわからない調整を延々としていました。もうちょっとした末期症状です。

この後、より画角の広いG3M678Mが来て、さらにいろんなことがわかるのですが、これまた長くなるので、次回以降に書くことにします。







2025年5月18日の日曜日、前日の土曜の天気が悪くて悶々としていたところ、この日は朝から太陽が出ていて、6時頃には起きて早速太陽撮影の準備です。でも肝心の天気はというと、結構雲もあり、晴れ間を見つけて撮影とかになりそうでした。


エタロンの調整


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この日、最初にやりたかったことは、C8でのエタロンの調整です。ここ一か月くらい色々試していて、なかなか結果が出ていないのですが、この日新カメラのG3M678Mを使ったことで、少し進展がありました。ただし、まだ調整の余地がありそうなので、もう少し続けようと思っています。

エタロン調整はまだ結論まで出ていないので、もう少しまとまったら、また別途記事にします。


黒点周りをより広角で

朝の早い時間を利用したかったので、エタロン調整の成果を試すべく、すぐに撮影に入ります。まずは黒点周りです。

1ショットあたり200フレームで、いいシーイングを逃したくなかったので30秒に1回、トータル30分で合計60ショットとしました。30分の短時間にしたもう一つの理由がファイルサイズです。カメラをこれまでのASI290MMかG3M678Mに変えたので、前回計算したとおりピクセル数は約4倍になるため、ファイルサイズも単純に4倍くらいになります。ディスク喰いなので、長時間撮影を何度もできないということに気づきました。

撮影後、全60ショットを仮処理して、細部出しまでしてから改めて分かったのですが、この日は相当シーイングが良かったです。以前のかなりシーイングがいい日と思った日の、1-6までランク付けしたときの基準に合わせてみると、悪い方のランク6と5は皆無、4もほぼないと言っていいでしょうか、全部3以上で、ランク1の枚数が多かったです。ただし晴れ間は続かなくて、撮影したうちの3分の1程度はほぼ真っ暗で捨てることになりました。多少暗くなっているだけのものは残しています。そのうち、ランク1の中で、実際そこまで差はないのですが、一番いいと思われる時間帯の、ほぼ連続した4ショットを処理しました。モノクロ、カラー、カラー反転版を載せておきます。

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  • 撮影場所: 富山県富山市
  • 撮影時間: 2025年5月18日7時51分
  • 鏡筒: Celestron C8 口径203mm、焦点距離2032mm
  • エタロン: Coronado P.S.T.
  • 赤道儀: Celestron CGEM II
  • カメラ: Touptek G2M678M
  • 撮影ソフト: SharpCap 4.1 (64bit)
  • 画像処理: AS!4にてスタック、ImPPGで細部出し、PixInsightでカラー化など、PhotoshopCCで仕上げ

まず、カメラをこれまでのASI290MMかG3M678Mに変えたので、画角が縦横ともに1.5倍くらい、面積では2倍以上増えています。それでも良像範囲が増えているのは、エタロン調整の効果です。しかも揺れも少なく安定していたせいか、四隅を含めてほぼ全面にわたって使える画像になっています。今回はクロップを何もしていないので、ずれたところも含めて表示していますが、細い枠程度でほとんど影響がないくらいの範囲で収まっているのがわかります。

ピクセルサイズが小さくなったせいなのかわかりませんが、ASI290MMの時に比べて明らかにノイジーになっています。もしかしたら、ImPPGが細かすぎる画像が苦手なことがあるので、その生の可能性もあるかもしれません。ここら辺はもう少し経験を積む必要があるでしょう。

あと、黒点の右側など、まだピントが合っていない部分が変な形であるように見えます。エタロンのせいなのか、C8やカメラのせいなのか、なぜかはまだ謎で、ここら辺をもう少し突き詰めていきたいと思っています。


プロミネンス

次はプロミネンスです。大きなものがいくつか出ていましたが、午後4時半方向の南西に出ているものが大きかったので、それがカメラの長辺になるようにカメラを回転して撮影しました。プロミネンスを撮影したカメラもG3M678Mなので、これまでより広い範囲で撮影ができています。

黒点撮影の時より、さらにシーイングが安定だったみたいで、ほぼ全ての画像でかなりの解像度が出ていました。どれが一番いい画像が選ぶのが難しくて、いっそのことタイムラプスにしてしまおうと、少し処理を進めました。

本当は1時間撮影する予定でしたが、途中で雲が出てしまい、結局連続で使えた部分は午前8時19分から8時46分までのわずか26分間でした。その26分の間も多少雲が通過して少し暗くなってしまったショットもありました。明るさ調整は多少できますし、暗い時に出るノイズもタイムラプスで動画にしてしまうと目立ちにくいので、それでとれる最大の26分を使いました。そうは言っても高々26分の52コマなので、タイムラプスとしては短くて全然期待していなかったのですが、ある程度拡大しているからなのでしょうか、連続で見ると結構動いているのがわかります。

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上の動画は、ブログ上で動くのが見やすいようにgifファイルにしていますが、サイズがかなり制限されてしまいます。HDMIサイズにした動画はYoutubeに挙げておきましたので、よかったらご覧ください。

今回はシーイングが相当良かったので、1枚1枚の画像処理をかなり抑えています。多少ノイジーなところは残っていますが、細かい様子も十分残っていて、短時間ながら迫力ある映像になったのではないかと思います。

これだけの良好なシーイングだったので、もしずっと晴れていたらと思うと、とても惜しかったです。


全景

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もうかなり雲が出てきています。この後、全面を覆うようになっていきます。

最後は太陽全景です。この頃には一つ一つの雲が大きくなってきていて、鏡筒を変えて導入するときも、ピントを合わせるときも、一瞬太陽が出たところで素早く合わせていました。時間がたつほど全面が雲に覆われてきて、撮影時はかなり待ちながら本当に一瞬で出たところを何ショットか狙いました。何度かの途中で雲が通る程度での撮影したあと、9時46分に、やっと全く雲が通らない1ショットが撮れて撤収としました。

画像処理はこれまで通りで、こちらもモノクロ、カラー化、反転バージョンを作ってみました。

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PSTでここまで撮れるならかなり満足です。解像度もピクセルサイズが2μmと小さいので、拡大して見てもある程度耐えうるくらいに、十分に出ています。今回の撮影では分解能を出すために、エタロン位置を、8cmの口径が効くように、かなり後ろにしています。後ろにする理由は前回記事をご覧ください。


その後の処理

撮影後は完全に曇ってしまって時間ができたので、画像処理に移りました。

簡単そうなので先に処理を始めた全景は、その日のうちに済んでXに投稿したのですが、C8で撮影した黒点周りとプロミネンスは新カメラということもあり、思ったより時間がかかってしまいました。天気がイマイチで雲が結構な頻度で通り、少し暗くなった画像をどうするか迷ったのと、画角が広くなった分のエタロンの調整がまだ不十分で、どこまで採用するかを迷ってしまったからです。特に、プロミネンスは静止画にするかタイムラプス化するか迷いました。タイムラプスの処理過程は静止画より遥かに複雑で、前にやったものを思い出しながら、しかもカメラが違うのでパラメータも違い、思ったより時間がかかってしまいました。


まとめ

処理した画像は、まだ一部の個所に不満はありますが、全体としてはそこそこ満足です。これはシーイングがかなり良かったのが主な理由です。このクラスのシーイングで、天気が良く、別の大容量外部ディスクなども用意して、思う存分撮影し、処理もルーチン化して慣れた状態で短時間でできるなら、もう夢のようですね。エタロンの調整は、まだ余地があるならもう少し続けたいと思います。







年明けからCP+での講演のためにでPhoenixに付き合って以来、太陽熱が再燃しています。でもPhoenixはもう返してしまったので、手持ちのPSTで楽しもうと思います。
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CP+が太陽熱再燃のきっかけに

昨年度の振り返りでも太陽にはほとんど触れなかったことからもわかるのですが、ここしばらく太陽から離れてしまっていました。たまに撮影とかするのですが、あまり進展がないのでイマイチ盛り上がっていませんでした。理由としては
  • 粒状斑が一向に分解能よく見えてこない。
  • C8は焦点距離が長いので、PSTでみると良像範囲がどうしても限られてしまい、画面の中で分解能がいいところと悪いところに差ができてしまう。
  • 良像のところは満足だが、結果がシンチレーションに依ってしまい、機材ではもうこれ以上伸ばすのはあまり簡単ではない。
などでしょうか。何か機材などで進化したことを撮影で確認するというのが一番楽しくて、進化がないのに撮影を続けるのは結構苦痛になってしまうのです。

太陽が盛り上がってきた理由はいろいろあります。例えば、
  • 今太陽活動の最盛期か少し過ぎたくらいなのに、この時期を楽しまないのは勿体無い。
  • Phoenixのエタロンの精度がかなり良かったので、PSTエタロンをもう少し活用できないか考えたくなった。
  • CP+のサイトロンブースでのフォトコンの裏側の話で、選考には残らなかった画像の中に、ものすごい分解能の粒状斑を写した画像が紹介されていた。
など、CP+のスライドを作っていた時とか、CP+で聞いたセミナーがきっかけだったりします。


良像範囲の検討

良像範囲がどんなメカニズムで決まっているかを確認するために、普段使っているASI290MMよりもセンサー面積の大きいApollo-M miniで見てみました。どうやら光がセンサーまで届く範囲はそこまで大きくはなく、円状になっているのがわかります。右と左では、左の方がより暗くなっているようです。

09_38_44_Sun_00001 09_38_44_WithDisplayStretch

さらに、エタロンの良像範囲はリング状に分布していることがわかりました。上のそこそこエタロンの回転角があっている場合から、エタロンの回転角を変えていきます。
09_38_56_Sun_00001 09_38_55_WithDisplayStretch

09_39_04_Sun_00001 09_39_04_WithDisplayStretch

どんどん中心が明るくなって、同心円状に広がっていく様子がわかります。明るくなっているところは波長がずれているところにあたります。

現在2台のPSTを所有していて、以前良像範囲については一度検討しています。1台目はリング状に、2台目は線上に良像範囲が変化すると書いてありますが、どうもこれは見ている場所が違うだけで、結局は2台ともリング状に変化すると思って良さそうです。


ペンタプリズムの位置調整

実は先々週、1台目のPSTの箱の部分の蓋を開け、ペンタプリズムの位置を動かしていろいろ調整してみました。
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元々こんな風ペンタプリズムは組み込まれています、下に見えるバネ付きの棒が焦点合わせのつまみで、これが回転することでペンタプリズムが載っている台が前後します。上の黒い塊はただの押さえで、さらに上に貼り付けられたフェルト生地で箱の上蓋に接していて、フェルトで滑りやすくなっています。

これをはずして、下の台座からプリズムをカッターナイフを使って外しました。
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上の良像範囲の画像で見た、画面の左側の方が暗いのを、左右均等にしようとかしたのですが、ペンタプリズムの位置をどう変えても、この状況を大きく変更することはできませんでした。光が当たる範囲を上下させることはできるのですが、左右に変化させることはほとんどできません。どうやら、光がペンタプリズムの厚みで制限されてしまっていることが原因とわかってきました。

IMG_1024
手前から光がペンタプリズムに入射し、奥の面、右側の面と2回反射し、左側に抜けていきます。左の黒い壁に投影されている光を見ると、ペンタプリズムの厚みで上下がカットされているのがよくわかると思います。

1台目のPSTのペンタプリズムの位置をある程度最適化すると、2台目のPSTの見え方にかなり近くなりました。左側がどうしても欠けること、エタロンの回転角でリング状に良像範囲が変わることは2台ともほぼ同じです。なのでこの見え方はPSTにある程度固有のものと捉えて、今回はこれ以上は諦めることにしました。


2つのピント合わせの使い分け

今週になってもう一つ、C8でのピント合わせと、PSTでのピント合わせのどちらが得かを検討してみました。

結論としては「PSTのネジを締め込んで、C8でピント合わせした方が良像範囲が多少広がる」ということがわかりました。
  • PSTのネジを引き出して、C8でピント合わせ: PST内での光路長が長い場合
09_58_52_Sun_00001 09_58_52_WithDisplayStretch_pst_long

  • PSTのネジを締め切って、C8でピント合わせ: PST内での光路長が短い場合
09_57_02_Sun_00001 09_57_01_WithDisplayStretch_pst_short

画像を見比べると、明らかに下の方が両像範囲が大きいです。例えば、わかりやすいところでは、四隅の黒い部分は下の方が小さくなっています。

理由を考えてみます。PSTのネジを締め込むということはペンタプリズムがよりアイピース口に近づくということになります。PSTのピント合わせがどんな位置にあるにせよ、C8の焦点調整範囲ははるかに広くてセンサー面に焦点をあわせることができます。最終的にピントが合った状態では焦点位置はセンサー面で固定すると考えると、PSTの焦点つまみをいじることは「C8の副鏡からセンサー位置の間のどこにペンタプリズムを置くか」ということに他なりません。すなわち、PSTの焦点つまみを締めることはペンタプリズムをより光の径の小さい焦点側に寄せるということになります。上でも書いたように、ペンタプリズムの厚みで光がカットされていると思われるので、そのカットをできるだけ小さくするためにペンタプリズムを焦点側に寄せると、より良像範囲が広がるということで、ある程度納得できます。


カメラセンサーの位置

さらにもう一つ試したことが、カメラをアイピース口にの奥まで差し込んだ方がいいのか、抜き気味で遠くで固定した方がいいのかです。

現在一番径が小さいところはBF部分です。直径5mmほどでしょうか。ここで焦点になれば一番得なはずなので、最終的に焦点が合うはずのセンサー面がBFに近い方がいいと予測しました。でもどうも結果は逆で、センサー面を遠くに置いた方が良像範囲が広がるようなのです。
  • カメラをアイピース口の奥まで押し込んだ場合
09_51_38_Sun_00001 09_51_38_WithDisplayStretch_camera_near

  • カメラをアイピース口で少し浮かせて固定した場合
09_50_07_Sun_00001 09_50_07_WithDisplayStretch_camera_far

わかりにくいですが、下のカメラを離して固定した帆が、特に画面右側の広がりが明るくなっています。

画像を見てピントが合った状態にしてから、カメラとBFとERFを外して、PSTの出射口から出てくる光に手を当ててみると、どうも径が一番小さいところはセンサー面が元にあった位置ではなく、もっとPST寄りに見えます。例えばここの図にもあるように、確かにセンサー面である広がりを持つので、最小径はその手前ですね。

というわけで、今回の場合はカメラはある程度離した方がいいことがわかります。必要なら、もっと積極的にBFに焦点を持ってくるようにきちんと計算して距離を決めてもいいかもしれません。


エタロンの良像範囲

いずれにせよ、以前よりも良像範囲が少し広がったというのが、先々週と今週でやったことの成果です。良像範囲という言葉を適当に使ってしまっていますが、今回改善した良像範囲はあくまで光の欠けが小さくなった部分のことで、エタロン起因の波長のズレによる良像は何ら改善していないです。

エタロンの像がどうしてリング状になるのか少し考えてみました。

元々PSTのエタロンはF10を仮定して前後にレンズが置かれています。このF10の傾きに合わない光線ならリング状に波長ズレが起こってもおかしくないです。でもC8はF10で大丈夫なはずと思っていましたが、よく考えたらC8はカセグレン系鏡筒です。主鏡と副鏡の組み合わせで短い距離でF10を実現しているだけなので、F10とは名ばかりで光線の収束具合は違うはずです。最初コレか!と思ってレンズを用意する必要があると思ってC8の設計を調べたのですが、このページにある8インチのシュミカセの典型的なデザインを見ると、副鏡から焦点までの距離が127+240+127~500mmで光の半径が24mm (~直径50mm)になるので、副鏡より後ろはF10と思って良さそうです。このデザインがC8と同じかはわかりませんが、あまり変な設計にするとは思えないので、とりあえずエタロンが入る位置でのF10相当の傾きは正しいと思うことにします。

そうすると他の可能性ですが、例えば熱レンズ効果でしょうか?エタロン手前にUV/IRカットフィルターが入れてあるとはいえ、エネルギーの半分くらいを占める可視光はそのままエタロンに入り得るので、そこそこの光量になります。エタロンでは櫛状に入ってきた光が10回程度のオーダーで折り返されるので、もしエタロンにロスがあったら中心部が温まりエタロンに温度勾配ができる可能性があります。温度勾配はレンズと同じ効果をもつので、平行光にならずにリング状のモードが見えてもおかしくはありません。

これを確かめるために、エタロンに入る光量を下げてみました。具体的にはUV/IRカットフィルターの後にMarumiの赤いR2フィルターを追加しました。そうです、以前熱で割れてしまったものと同じフィルターです。波長域で考えると少なくとも光量は4分の1くらいにはなるはずなので、もしこの熱レンズ効果が犯人なら何らかの違いが見えることでしょう。でも結果はほとんど違いは分からず。どうやら熱が原因ではないようです。

ちなみに今回は手前にUV/IRカットフィルターがあるためにR2フィルターはほとんど熱くもならず、そのまま入れておいても問題なさそうなので、入れっぱなしで残しておきました。やはりUV/IRカットフィルターだけでもかなりの効果があり、そこの反射光を実際に見てみると、十分に広がって対物側に返ってきていることもわかりました。集光はほぼされていないので、たとえ仮に目に入ったとしても、太陽を直接見るよりもエネルギーは小さいはずです。

IMG_1025
ちょっとわかりにくいですが、C8の対物側のカバーの裏に鏡筒内からの
反射光を当てています。右に見える半円の明るい部分が鏡筒内の
UV/IRカットフィルターで反射された光です。

というわけで、エタロン部の改善は引き続き課題なのですが、もうこうなってくると本当にエタロンの精度そのものが悪いという結論にもなってきます。この件、今後もう少し調べます。


とりあえずの撮影結果

先々週の3月9日と、今週3月22日に、調整作業のついでにC8で太陽撮影しました。9日はシーイングがボロボロでしたが、22日ものは多少見ることができそうなので、ここに載せておきます。

黒点AR4030まわりです。
10_15_36_lapl3_ap530_IP._cut_brighter

カラー版です。
10_15_36_lapl3_ap530_IP._colorpsd._cutjpg

上の画像はトリミングしているのでそこそこ解像度が出ているのかと思いますが、元の画像を見るとやはり全面一様というよりは、中心以外はかなり粗く、ボケているのがわかります。
10_15_36_lapl3_ap530_IP
これでも良像範囲の調整はしたあとなので、以前よりは多少マシになっています。

その後、次の日の3月23と合わせてPHD2のガイドなども試しましたが、これは次の記事で書くことにします。

やっと退院して初の週末の土曜日。この日は一日快晴のようです。

病院では検査で毎朝早く起きていたので、その名残で朝早くに目が覚めてしまうのと、まだ外食も控えていていつものコメダも行けないので、朝から太陽を見ることにしました。そもそもGW中に大きな黒点が話題でしたが、寝ているだけで全く何もできなかったので、今回出てきた黒点でその不満がやっと解消されそうです。

最初に見えた謎の2本の線

セットアップはいつものC8+PST+ASI290MMで、それをCGEM IIに載せています。PCとカメラを繋いで太陽を導入し、まず最初に見えたのが「えっ???」と思った、黒点から飛び出ている変な2本の曲線です。リアルタイムの動画状態でもそのまま確認できます。

ピントを合わせて、次にエタロンの回転を調整しようとして気づいたのですが、見ている画像はHαから全然ずれていて、エタロンの回転の端まで行っているような状態で、ある意味白色光に近いような画像です。とりあえずAutoStakkert!4で1000フレームをスタックして、ImPPGで少しだけ細部を出す画像処理した物です。
09_33_03_lapl2_ap1826_IP_cut
2本の線がはっきりと確認できるかと思います。その後しばらくしてから気づいたのですが、手前側にも何か黒い模様が出ています。

最初はフレアかなと思いました。でも2分後に撮影したHα画像には何も写っていません。
09_35_24_lapl2_ap1975_IP_cut
フレアなら白いスパークのような模様があってもおかしくないと思います。同時刻で調べたのですが、特に何かフレアのようなイベントが起こっているようなこともなさそうでした。

X上でダークフィラメントが伸びているのでは?とのコメントがありましたが、こちらももしダークフィラメントならHα画像に暗い線が写っていてもおかしくないと思いますが、やはりそれらしいものは見当たりません。

先ほど白色に近いと書きましたが、エタロンでHαから外しているだけなので、結構Hαに近いことでしょうか。もしかしたらそれがヒントになるのかもしれませんが、今のところ謎のままです。


大きな黒点群と、大きなプロミネンス

その後はしばらくHα画像を幾つか撮影しました。見栄えのする黒点と、すぐその下に出ていた大きなプロミネンスです。

09_51_20_lapl2_ap2532_IP3_cut

09_50_58_lapl2_ap2516_IP_cut


モザイク合成に挑戦

かなり大きな範囲で黒点、プロミネンス、ダークフィラメントが出ていたので、東側をモザイク合成してみました。

all3_cut

結構頑張ったのですが、まだ境目がわかります。PSTは画面内でHα付近のいいところが限られるので、モザイクは相当難しいです。さらに一枚一枚を見て分かったのですが、どうも上部はピントが出ずに、下部のみピントが出ているようです。しかもこれ、撮影中はほとんど分からず、スタックしてImPPGなどで細部出しまでしてやっとわかるのです。

今回ニュートンリングが残っているのが分かったので、最初の方でカメラをチルトアダプターでさらに傾けました。そのことが原因でピントずれの部分が出ているのかもしれません。一度チルトアダプターの向きをかえて、もう少し小さいチルトでニュートンリングが消えるところがないかなど、一度探る必要がありそうです。


フィラメントとプロミネンス

これまでも何度かチャンスがあったのですが、縁の近辺にあるダークフィラメントから、連続して縁に出ているプロミネンスに続く画像をうまく撮りたいとずっと思っていました。でも画像処理が未熟で、その接続部、特に光球面側のフィラメントをうまく出して、明るさをプロミネンスに合わせる方法が確立できずにいました。

プロミネンスをぐるっと一回り見ている最中に、ちょうどうまく繋がっていそうな場所がありました。今回、光球面とプロミネンス部を別々に処理することで、うまく繋がるのが表現できたのかと思います。
09_46_57_lapl3_ap1360_IP_cut


白色光

その後、今度はNDフィルターを使って、本当に白色光で撮影してみました。PowerMATEの4倍を使っています。
10_01_51_lapl2_ap3240_IP2_cut

最初の変な線が出た撮影から約30分が経っていますが、時間が過ぎたせいなのか、本当に白色光にしたからなのかわかりませんが、あの目立っていた線は見えませんでした。今一度、エタロンをHαからはずして同様のものが見えることがあるのかどうか、試してみたいと思います。

白色光は粒状斑らしきものが少し見えてきています。動画時でもごく僅かそれらしいものが見えていました。以前、粒状斑がきちんと出るくらいの、シンチレーションのいい時の動画を見せてもらったことがあるのですが、今回はその動画には遠く及びません。そもそも、この30分ですでにシンチレーションが悪くなったようで、朝イチの時の方が(バローとかつけてないので)カメラの解像度としては悪いはずなのに、明らかに分解能が良かったように見えます。

実はブログに書いてこなかったのですが、休日で晴れている時はたいてい太陽撮影を敢行していました。ただし、休日の午前はほとんとコメダかガストに行っていたので、朝早くに太陽を撮影することは実は一度もありませんでした。なかなかいい結果が出ず、ほとんどお蔵入りになっています。今回入院でまだ外食は控えているのでたまため朝早くに撮影をしたのですが、朝の早い時間というのはやはりシンチレーションがいいのかもしれません。しばらくは日が長いので早い時間でも太陽は高い位置にくるはずです。できるだけ朝早くに撮影することを今後しばらくしてみようと思いました。


まとめ

久しぶりにブログを書く気になる太陽撮影でした。モザイクに時間がかかってしまい、記事にするのが遅くなりましたが、肝心なモザイクはまだ課題がありそうです。

やはり太陽はシンチレーションがかなり重要です。これまで動画の段階で粒状斑が出るようなのが撮れていなかったのですが、機材のせいかともずっと疑っていました(まだ疑っています)。でも朝早いとシンチレーションが全然マシかもしれないと今回思えたのは収穫でした。

今後は休日の晴れの日は、早起きして、撮影を済ませ、その後にコメダに行くことにしたいと思います。休日の天国のコメダは外せません。





休日で晴れているので太陽撮影です。大きな目的は粒状班ですが、まずはHα画像から。


セットアップ

取り掛かったのは、がストのモーニングでのんびりして帰ってきてからの、ちょうど正午12時くらいからでしょうか。

まずはいつものC8とPSTです。まずPCの画面に写した段階で、そこまでシンチレーションは酷くはないですが、前回の9月10日の時よりも明らかに揺れています。もうこの時点で粒状班は諦めました。Hα画像も処理をしてみると分解能が明らかに劣っています。なのでこの日の画像は記録程度の意味しかありません。


Hα画像

結果だけ示します。真ん中ら辺に目立つ黒点が2つ出ていました。宇宙天気ニュースによると、大きい方からAR3435とAR3440だそうです。番号が小さいほうが先に出ていたもので、先に裏側に回り込みます。

AR3435
12_44_01_lapl4_ap485_IP


AR3440
12_31_29_lapl4_ap530_IP

シンチレーションがいいとImPPGのSigmaが小さい値でかなり細かい模様が残り、分解のがいいことがよくわかります。9月10日の画像は1.5とかせいぜい2でした。シンチレーションが悪くなると、Sigmaの値を大きくしてごまかすような形になります。今回は3とか4でしたので、やはり分解能がでないです。

プロミネンスもいくつか出ていましたが、一つだけ撮影しました。

12_15_48_lapl4_ap530_IP

撮影データです。
  • 撮影場所: 富山県富山市
  • 撮影時間: 2023年9月24日12時15分-12時44分
  • 鏡筒: Celestron C8、口径203mm、焦点距離2032mm、F10
  • エタロン: Coronado P.S.T.
  • 赤道儀: Celestron CGEM II
  • カメラ: ZWO ASI290MM
  • 撮影ソフト: SharpCap 4.1 (64bit)
  • 画像処理: AS3にてスタック、ImPPGで細部出し、PhotoshopCCで後処理


VISACでの粒状班撮影

シンチレーションが悪いので多分ダメなのはわかっているのですが、一応粒状班を撮影してみました。前回PowerMATEの2倍では拡大率が不十分だったので、今回はPowerMATEの4倍を使いました。

今回はC8だけでなく、VISACでも撮ってみました。もしかしたらC8に固有の問題があるかもしれないとも思ったからです。でも見た限りだと、C8もVISACもどちらも同様で劇的な違いはなく、どちらも全然ダメでした。

IMG_8604

撮影したものですが、結局画像処理をするとC8でとったものの方が少しだけよかったので、こちらを載せておきます。

13_12_03_lapl4_ap667_PI_cut

でもまだ分解能が全然足りていません。また休日に晴れていたら撮影してみます。


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