ほしぞloveログ

天体観測始めました。

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皆既月食の一連の結果です。前回の広角撮影の記事からの続きです。


今回の記事は天王星食です。

機材

天王星食は2つの機材で臨みました。一つはその2で示した、TSA120 + ASI294MC Pro (常温) + CGEM IIでの自由撮影です。もう一つは、拡大撮影にと思って、他3つの機材の設置が終わってから準備したVISAC (VC200L) + Uranus C + CGX-Lです。

でもVISACの方は結局失敗でした。調整がものすごく難しくて恒星がおにぎり型になりやすく、天王星を見たらツノがピンピン立っていました。このことは天王星を見た直後に気付いた(思い出した)のですが、時すでに遅しで、一応撮影はしましたがあまり公開するに値しません。

TSA-120の方は焦点距離が900mmとそこまで長くないので分解能が心配でしたが、まあさすがのタカハシです、下手な大口径長焦点よりもはるかに結像してくれます。潜入の瞬間と出現の瞬間は動画で撮影し、.ser形式で保存しました。ただし、フルの解像度だとフレームレートが10以下になってしまうので、ROIでクロップしてフレームレートが20以上になる範囲で一番広い画面(3104x2116)になるように設定しました。


潜入時

まずは潜入時です。


できればクリックして画面一杯で見ると迫力があります。いやホント、すごいです。何度見ていても飽きないです。

その中の800x600ピクセルを切り出して拡大したものです。


まるで天王星が月にめり込んでいくみたいです。ピントはかなり気をつけたと思いますが、もしかしたらめり込んで見えるのはピントがずれていたせいなのでしょうか?空気の揺らぎもあるので、多少はこのように見えるのは仕方ないのかもしれません。それとも一般的にはこれがまともな見え方でいいのでしょうか?


出現時

続いて出現時です。全体像は明るい部分が多すぎて少し見にくいのですが、最下部より少し右に天王星が出てくるのがわかるかと思います。

拡大版です。こちらもあまりコントラストがよくないですが、出現時の様子がわかるかと思います。




VISACは没

ちなみにVISACで撮ったものはというと...、動画から1枚だけ抜き出した画像を示しますが、よく見ると天王星に角が立ってしまっています。
_2022_11_08_1136_1_RGB_VNG
Uranus-Cで天王星(Uranus)を撮ったので使いたかったのですが、残念ながらお蔵入りです。


そのうちに追加

まだ未処理画像がたくさんあるのですが、ちょっと時間が足りなくて未消化気味です。時間のある時にもう少し処理を進めて、適時追加していきます。



 
 
 
 
 
 
 
 


皆既月食の一連の結果です。前回の記事の続きです。


今回は広角で月食の全景を撮影したものです。


広角撮影セットアップ

全過程を広角で撮影したものです。機材は
  • 35mm、F1.4のNIKKORレンズをF8で使用
  • Canon EOS 6D、HKIR改造、フィルターなし、1/400s(2.5ms) ISO100
  • Manfrottoの固定三脚とVelbonの自由雲台PH-173
になります。

レンズは最初50mmを考えていたのですが、今回は4時間と長丁場で、Stellariumで画角を計算してみると全景は全然入りきらずに持っていた古い35mmレンズとしました。広角なので手持ちの唯一のフルサイズの6Dをここに投入します。

露光設定ですが、こちらもSharpCapのシーケンサーを使って、1分に2枚明るさを変えて撮影します。
  • 1枚は露光時間1/400s(2.5ms)、ISO100で、月の明るい部分に合わせた暗い設定
  • もう1枚を露光時間1/2s(500ms)、ISO800で、月食部分にあわせた明るい設定
とします。SharpCapのシーケンサーの詳細です。

seq

撮影後、撮って出しJPGを見たらかなり暗く写っていたので、最初失敗かと思いました。でも画像処理をして炙り出すことで、特に問題ない画像となりました。1分間に2枚撮影して、4時間強の撮影になったので、1セットあたり263枚、合計526枚の画像がありました。多量のファイルがあるのでどう画像処理を進めようかと思い、LightRoomや動画にしてからPremireで加工するなども試しましたが、結局PixInsightでContainerを使うのが一番小回りが効きやすかったです。


画像処理詳細

かなり暗めに撮影したため、炙り出すとBiasノイズのような縞ノイズが見えました。しかも縞は一定ではなく、ランダムで出るので厄介です。今回はCanonBandingReductionが有効なことがわかったので、これを全てのファイルに適用します。263枚を一度に処理する必要があり、さすがに一枚一枚処理するのは大変なので、
  • ImageContainer
  • ProcessContainer
を使うことにしました。心配だったのは、CanonBandingReductionはScritpsに所属するUtilityなのですが、これでも一括処理できるようです。やり方は、
  • ImageContainerに処理したいファイルを登録し、出力フォルダを設定したりします。
  • ImageContainerのインスタンスを作ります。
  • CanonBandingReductionを開き、適当に設定し(今回はデフォルトのまま)、そのインスタンスを作ります。
  • ProcessContainerを開き、CanonBandingReductionのインスタンスを投げ込みます。
  • ProcessContainerのインスタンスを、先ほど作ったImageContainerのインスタンスのインスタンスに投げ込みます。
すると順次各ファイルの処理が進みます。

ここで一つ注意です。CanonBandingReduction単体の処理なので、ProcessContainerが余分な気がしますが、試した限りUtilityはImageContainer単体には適用することができないようです。

さらに画像処理して、PixInsightで適度にストレッチします。今回は途中で明るさをいじったりしたくなかったので、MaskedStretchなどは使わずに、HistgramTransformationのみ使いました。全部のファイルに適用するのはImageContainerを使いました。ここではProcessContainerは必要なく、直接ImageContainerにインスタンスを投げ込むだけで適応できました。

さらに出来上がった.xisfファイルをjpegに変換します。変換はのちに動画にしたいこともあるので、Blinkを使います。ここでjpegを指定し、一旦仮の動画にしてしまいます。


結果の画像と動画

これらの過程を満月に合わせた暗い設定、月食に合わせた明るい設定の2つに適応し、できた多量のjpegファイルを合成します。合成は、皆既になる前後を境にして、暗い設定->明るい設定->暗い設定としてファイルをまとめるようにします。Blinkを通した時点でファイル名のタイムスタンプはなくなってしまっています。なので、Blinkを通す時点で1分で2回取れたファイルのみを変換しておくことに注意です。そうしないと2種の明るさのファイルの時間がずれてしまい、合成した時に境目でズレが起きます。(それでも境目で30秒のずれはどうしても発生していますが、これは今回は無視するとことにします。)

まずは5分おきに比較明合成したものです。これが一番メインの結果となるでしょうか。
StarStaX_Blink00001-Blink00261_lighten

ついでに、1分おきに比較明合成すると以下のようになります。
StarStaX_Blink00001-Blink00263_lighten_500ms

月食に合わせた、明るい設定だけを1分おきに比較名合成してみました。最初の頃と最後の頃に雲が多かったので、全部は使わずに部分月食が終わってからの画像はカットしました。
StarStaX_Blink00001-Blink00200_lighten

次にタイムラプスです。アニメ化する際には、必要なファイルを入れたフォルダに移動して、ターミナルで

ffmpeg -y -r 20 -i Blink%05d.jpg -vf scale=1920:-1 -b:v 20000k Blink.mp4

などと打ち込みます。横幅がHDMIの1920ピクセルになるようにしています。ただしこれだと横長の動画になってしまうので、次のコマンドで回転させます。

ffmpeg -i Blink.mp4 -vf "transpose=2" Blink_rot.mp4

こうしてできた動画になります。


動画にするとかなり月が小さく見えるので迫力があまりないです。できるだけ画面いっぱいに拡大してみた方が良さそうです。ついでに、明るい設定のものだけをタイムラプスにしたものをアップしました。こちらのほうが見やすいかもしれません。

最初と最後に雲がそこそこあったことがよくわかります。

次の記事は天王星食です。


 
 
 
 
 
 
 
 

 

もう小海の星フェスの前のことになってしまいますが、11月8日の皆既日食で撮影した画像処理を進めています。これから数回に分けて、月食関連の記事を書いていきます。

今回はどういう方針かと、リハーサルの様子などです。


今回の方針

今回の皆既月食はかなり気合が入っていました。本番は11月8日ですが、その前の5日の土曜からいろいろ準備開始です。

前回の限りなく皆既に近い月食の時の撮影の反省から、いくつか方針を立てます。



前回のブログを読み直すなどして、今回の皆既月食で達成したい大きな目標を3つ立てました。
  • 一つのカメラで一つの設定だけだと、満月時と皆既時で輝度差がありすぎるので、写す時は毎回露光時間と輝度を変えて複数枚撮影すること。
  • 太陽時で撮影し、後から月の位置をずらすことなく、何枚か重ねて、地球の影を出すこと。
  • 天王星食を動画で撮影すること。
です。

具体的な撮影機材のセットアップは4種類考えます。
  1. 固定三脚の短焦点距離のカメラレンズで広角で、1分ごとに撮影し、月食の初めから終わりまでの全景を。
  2. FS-60CB+ASI294MCで赤道儀の同期レートを太陽時に合わせて、月が画面内で移動していく様子を撮り、あとで影で地球の形を出すもの。
  3. TSA120+ASI294MC Pro(常温)で、タイミング、位置など、被強に応じて自由に撮影するもの。
  4. 天王星食を拡大で撮影するもの。
としました。

これらを実現するために、当日までにリハーサルで特にやっておくことは、
  1. 1分の撮影に2つの設定(露光時間とゲインを自由に変えること)ができるかどうか試すこと。
  2. 満月の時の露光時間とゲインを各機器で確かめておくこと。
としました。


1つのカメラに、2つの設定での撮影テスト

特に1の、一つのカメラで複数の設定を切り替えながら繰り返し撮影というのはこれまでやったことがないので、本当にできるかどうかよくわかっていません。

試したソフトは4種。
  1. FireCapture
  2. NINA
  3. SharpCap
  4. BackYard EOS
実際に試してみて、これらのソフトの中でCMOSカメラと一眼レフカメラ両方に対応しているのは2と3ということがわかりました。さらに試していくと、例えば1分で2回、30秒ごとに設定を変えるようなことを繰り返し撮影できるのも2と3のみのようです。NINAはアドバンスド・シーケンス、SharpCapはシーケンサーというちょっと複雑なスクリプトようなものを使うと、設定を変えながら繰り返し撮影できるようです。

どちらでもよかったのですが、NINAで6Dを繋いで撮影したことがほとんどないことと、ガイドを使う必要はないので、今回はSharpCapを使うことにしました。実はNINAの方が「月の照度」というパラメータがあり、明るさがあるところになると条件を変えるというようなことができるようなのですが、複雑になりすぎるのと、当日は天気が良くないことが予想されたので、SharpCapで十分だったように思います。

SharpCapのシーケンサーはかなり直感的でわかりやすく、CMOSカメラの場合動画で撮影したいので
  1. 「Repeat」の中に
  2. 露光時間設定、ゲイン設定、キャプチャ開始、ウェイト、キャプチャ停止、ウェイト
  3. を露光時間とゲインを変えて2回書き
  4. ウェイトを含めた一回のループの時間を1分間になるように設定し、
  5. トータルの回数を4時間分の240回にする
というような設定になります。部屋の中で試しながら、色々スクリプトを書き換えて、上記の状態に行きつきました。保存ファイルは.ser形式になりますが、一つ一つのファイルサイズが大きくなりすぎないように、5秒間だけ撮影することにしました。それでも1つ800MB程で、4時間で240枚x2(30秒ごとなので1分で2枚)で約500個のファイルができることになり、トータル約400GB!となる予定です。

SharpCapのシーケンサーの設定はCMOSカメラの方が遥かに楽でした。一眼レフカメラの場合は静止画撮影になるので、「Still Mode」にして、キャプチャ開始とかではなく、1静止画をキャプチャとかになります。難しいのは、PCとカメラの接続がUSB2で転送が遅く、しかもそのダウンロード時間がばらつくので、1分間ごとのループにならないことです。そのため、ストップウォッチで計測しながら1分間になるようにウェイトを調整します。これも後から気づいたのですが、NINAのアドバンスド・シーケンスにはループする時間を直接指定できるコマンドがあるようです。次回からはもしかしたらNINAを使うかもしれません。でもNINAって大原則DSOが対象なんですよね。msオーダーの極短時間露光の月とかでもうまくいくのかどうかはきちんとテストする必要があるかと思います。

とにかくこのようにすることで、CMOSカメラも、一眼レフカメラも、30秒ごとに
  • ゲインが低く露光時間が短い満月用の設定
  • 皆既時用のゲインが高く露光時間が長い設定
の2種類を一つのカメラで撮影することができます。頑張れば20秒ごとに3種類の撮影もできますが、撮影後のファイルの数と容量ともに膨大になるので、2つの設定に抑えたほうがよさそうです。


明るさの設定

次に暗くなってからの調整です。こちらは実際には月食前日の月曜に行いました。満月に近い月齢13日のかなり明るい月が出ているので、露光時間とゲインをその月の明るさに合わせます。

問題は皆既時の明るさの設定です。これまでの月食の経験から、露光時間とゲインをかけた明るさの比が100倍(TSA120+ASI294MC)、400倍(FS-60CB+ASI294MC)、1600倍(35mmレンズ+EOS 6D)とかになるように設定しました。明るさの比にかなりばらつきがありますが、TSA120は自由撮影機なのであとから変更することもあり、かなり仮の設定です。

重要なことは、サチると何も情報は残りませんが、暗い分には画像処理で持ち上げることで十分な明るさにすることができると考え、少し暗めの設定にしておきました。この判断は正しかったようで、実際に撮れた画像は最初思ったより暗いと感じたのですが、DSOの時の炙り出しに比べたら全然大したことなく、十分すぎる情報があるので、どの設定も最終的には全く問題がなかったです。ただし、暗いと背景がノイジーになることがあるので、そこは画像処理時に適したレベル補正や、もしくはノイズ処理が必要になる場合がありました。


当日の撮影

前日までの予報では、日本海側の天気はかなり絶望的でした。もうあきらめるか、一時期は休暇を取って太平洋側に行こうかと思っていました。でも当日になり、夕方くらいから晴れそうな予報に変わってきたので、結局自宅で撮影することにしました。

雲が出るなどの、天気によっては連続撮影は意味が無くなってしまうので、様子を見ながらのセットアップになります。最初は天気が悪くても雲間からでも狙えるように、自由撮影のTSA-120とASI294MCをセットしました。途中からどんどん雲も少なくなってきたので、次に広角35mmとフルサイズのEOS 6Dを置き、さらに太陽時に合わせて連続撮影で写すFS-60CB+ASI294MCもセットします。

暗くなりかけてきたところでまずはFS-60CBの方から、ガイド鏡を仮載せしてSharpCapで赤道儀の極軸を取ります。でも雲がまだ北の空にそこそこ残っているので、雲が薄くなっているところを狙います。今回は赤道儀の精度が肝なので、Excellentがでる30秒角を切るくらいまで合わせこみます。

IMG_7046

18時には撮影を開始したかったのですが、最初の頃は雲が多くてかなり戸惑っていたため、実際に撮れた画像の時刻を確認してみると、35mmの方が部分月食開始の18時7分から、FS-60CBの方が部分日食開始が過ぎた18時13分からになってしまいました。

FS-60CBの連続撮影を開始し、ついでにTSA-120の極軸とりと連続撮影も開始したらやっと少し余裕が出て、最後にCGX-LにVISACを載せてUranus-Cを付けたものをセットアプしました。天王星食の拡大撮影用です。でもこれ、後で詳しく書きますが結局失敗でした。

途中、お隣のご夫婦がきて、一緒に月食をみました。撮影の面倒を見ていたのであまりお世話ができなくて申し訳なかったのですが、それでも双眼鏡を出してみてもらったりしました。今回は皆既の時間がかなり長かったので、そこまで焦らずに見ることができたと思います。


撮影結果は次の記事から

次の記事から、セットアップの詳細と結果を順に書いていきます。ファイルを見たら全部で900GB近くあったので、まだ処理をしている最中です。

とりあえず今回の記事では撮影の最中に、iPhoneでSharpCapの画面を撮ったものだけ載せておきます。

IMG_7044
FS-60CBで連続撮影をしている画面です。
欠け始めていて、雲がまだ多いのがわかります。
シーケンサーが走っているのが分かると思います。

IMG_7047
皆既に入って間も無くくらいの時です。
TSA-120での撮影です。右上が明るいです。

IMG_7049
天王星が認識できたところです。TSA-120で拡大して写しています。  

IMG_7053
VISACでの撮影です。天王星が出てくるところです。

最後の写真ですが、月食も終わりの頃でFS-60CBで露光を変えて2種類撮っているところです。
IMG_7055

IMG_7056
最初は画面左下から始まった月の位置も、月食が終わる頃には真ん中のかなり上まで移動してきました。太陽時に合わせてあるので、地球の影が固定されているはずで、その影を映すスクリーンのように月が動いていく様子を見ることができました。

さて、次の記事からは実際に撮影した画像を載せていきます。


 
 
 
 
 
 
 
 


また晴れました。貴重な時間です。でも月齢17日と、満月直後くらいで月が明るすぎです。こんな時は、明るい時にできることをします。


シリウスBチャレンジ

まず、シリウスBのチャンレンジ。前回のシンチレーションはそこそこいい方でしたが、眼視ではダメで、カメラで撮影して炙り出したら見えました。



今回の機材も前回と同じくTSA120とXW3.5mm。どうも今回のほうがシンチレーションは少し悪いようです。まず前回余裕で見えたリゲルBは少し苦労しました。常時見えているというよりは、たまに見える感じです。ちょっとそらし目っぽいことをやるとかなりきちんと認識できるといった状態です。こんな状態なので、シリウスBは今回は当然見えません。一応見てみますがやはりカスリもせず、シリウス本体の方もチラチラと盛大に飛び跳ねてます。内外像もユラユラでした。


月の撮影

シリウスBチャレンジはここで諦めて、次はせっかく月が明るく出ているので、月の撮影です。まだSCA260で月を撮ったことはないので試してみます。口径26cmがどこまで分解能に効くか楽しみです。

これまで月は口径20cmのVISACで高分解能撮影に挑戦してきましたが、これを超えることができるのでしょうか?



今回の撮影では、軽量化したSCA260をCGEM IIに載せてありますが、やはりこの赤道儀には少し重荷で揺れが心配です。あとシンチレーションはそこまでよくないので、これがマイナスに効くかもしれません。

カメラはASI294MMのBIN1モード、8288x5644ピクセルの高解像度撮影です。明るいのでダークは気にすることはなく常温稼働ですが、外は気温0度くらいなので十分冷たくなってるでしょう。あと、フィルターホイールを外したくないのですが、ホイールにはL用のフィルターが入っていないので、とりあえずRフィルターを使いました。

撮影はSharpCapで1000フレームをserファイルに落としましたが、100GB近くになりました。これだと何回も撮影はできないので、(一応失敗したファイルも捨てない方針なので)ほぼ一発勝負です。

一旦設置した後の撮影とか調整は、ほとんど自宅の中からリモートでやっています。寒いですから...。
特にピント合わせはEAFが活躍してくれます。50カウントくらいの精度で最適焦点が分かります。


画像処理と結果

画像処理はAutoStakkert!3で上位50%(500枚)をスタック、PixInsightのMultiscaleLinearTransformationでwavelet変換をして細部を出しました。

細部出しについてですが、Registaxは大きすぎる画像を扱う事ができません。気楽なImPPGは細部のノイズリダクションができません。PIのMLTはRegistaxにかなり近い操作性でもう少し高機能ですが、ノイズ処理は効きが少し鈍いみたいなのでIterationの回数を増やしています。今回はLayerを4つにして、Layer1が+10、Layer2が+4でノイズリダクションがThreshold10のAmountが1、Iteration5、Layer3が+1です。これでImPPGで出すより、(同程度のノイズで)細部がもう少し出せたと思います。

結果です。このブログでは高解像度画像もアップロードできるようにしていますので、是非とも拡大してから細部を見てみて下さい。

23_58_29_lapl3_ap9855_MLT2_cut
  • 月齢17日
  • 撮影日: 2022年2月18日23時58分
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: SCA260
  • フィルター: Baader Red
  • 赤道儀: Celestron CGEM II
  • カメラ:  ZWO ASI294MM Pro(常温で使用)
  • 撮影: SharpCap、露光時間2.5ミリ秒x500/1000枚、ゲイン120 
  • 画像処理: AutoStakkert!3、PixInsight、Photoshop CC
モザイク合成という意味でない1枚撮りでは一応十分高解像度なのですが、念のため過去画像と比べてみます。

左が今回のSCA260、右が2021年7月19日にVISACで撮ったものです。太陽の当たり方が左右逆なので、できるだけ当たり方が同じで比較しやすい場所を選びました。

SCA260_vs_VISAC

これはどう贔屓目に見ても過去のVISACの方が分解能が出ています。なぜだか考えてみました。

  1. まず画像を比較している最中に気づいたのですが、同じエリアをピックアップしてもVISACの画像の方が大きい事です。これは焦点距離がSCA260:1300mm、VISAC:1800mmと1.4倍近く違うので当たり前なのですが、このことを忘れてました。要するに、SCA260は焦点距離が足りなくて、カメラの分解能の制限の方が先に効いてしまい、口径が本来持っている分解能にたどり着けていないと言うわけです。これを回避するには、バローレンズなどを入れて拡大して撮影して、モザイク合成をすることになります。
  2. もう一つの理由ですが、やはりシンチレーションかと思います。撮影した動画を拡大して見返してみると、画面内でゆらゆら揺れています。ただ、一部全体が揺れている時もあるので、こちらは赤道儀の揺れのせいかもしれませんが、月は明るくワンショットが短時間露光なので、その効果はたとえあったとしてもスタックの時点でほぼキャンセルされているかと思います。

もう一つ面白かったところですが、右のVISACの画像にはっきりと写っていた直線の壁は今回の左のSCA260の画像ではほとんどわかりません。白い線がうっすら言えているだけです。
line
これは解像度が悪いということではなく、日の当たり方が左右反対というところです。これだけ変わってしまうんですね。


まとめ

SCA260とフォーサーズサイズのASI290MM ProのBIN1の高解像度モードで満月後の月を撮影してみました。ちょうど収まりも良く、分解能はそこそこはでましたが、過去のVISACの分解能には届きませんでした。焦点距離が短くなったことと、シンチレーションがあまり良くなかった事が原因で、口径分の効果を引き出すには至っていません。

次は2倍のバローレンズを入れて撮影してみることにします。


2022年の初記事ですね。皆様、あけましておめでとうございます。

年末からずっと天気が悪くてほとんど何もできなかったのですが、1月8、9、10日の連休中は北陸としては意外なほど天気が良かったです。ただしシーイングや風など色々問題もあって、結果としてはどれもイマイチでした。記録がわりに簡単に書いておきます。

土曜の太陽

そもそも今週は水曜、木曜と2日連続で、夕方からSCA260を出し、極軸をとり、カメラ回転角とピントを合わせ、撮影準備完了とともに曇って片付けるという空振り続きだったので、かなり不満が溜まっていました。連休初日の土曜日は朝から快晴。午前中はCostcoで買い物に付き合い午後から久しぶりに太陽撮影です。黒点も派手に出ているようです。ただしシーイングが相当悪かったので、結果だけ示します。

13_35_01_lapl6_ap2550_IP_cut
AR2924群ですが、2つの大きな黒点と小さなたくさんの黒点がリングを作っています。問題は今のPSTだとHαの中心波長がきちんと見える範囲が画面の3−4割と一部のみで、今回のように複数の黒点が広い範囲に広がると、模様が均一に見えないことです。しかも右の黒点がピンボケのようになってしまいました。画面内でピントがずれるのはあまりないはずなのでちょっと不思議ですが、シーイングが悪かったのであまり議論しても意味がないのかもしれません。

プロミネンスもたくさん出ていましたが、一番大きなものを一つだけ処理しました。こちらもシーイングがよくないので、あまり気合が入っていません。
13_38_50_lapl6_ap1314_IP_cut


土曜の月

そのまま星が見え出した夕方になだれ込み、SCA260に載せ替えて極軸を取り直しますが、徐々に雲が出始めました。まだ月がでているので、試しにSCA260とASI294MM Pro(常温)で、BIN1(ピクセルサイズ2.3μm)で高解像を狙い、RGBフィルターでカラー化してみました。撮影は星雲撮影のセットアップなのでStickPCを使っています。USBでの取り込み速度が速くないのですが、さらに間違えてfitsで保存していました。そのため0.1fpsくらいのスピードしか出なかったので、RGB各20枚のみの撮影です。serにしていたらもう少し速度が出たのかと思います。

画像処理はなかなか面倒で、まずRGB別々にAS!3でスタックします。BIN1で画素数が多いため、Regisgtaxは使えないので、ImPPGで細部出しをします。ImPPGは全面ごちゃごちゃしている太陽だといいのですが、平面がいくつかある月だとDenoise機能がないため細部にノイズが残ってしまいます。

更に問題がRGB合成です。最初PIで位置合わせしようとしましたが、星が写っていないため不可。ImPPGで位置合わせをしました。ただし、スタック時に画面を歪ませて位置合わせしているはずなので、RGBで本当に合っているかどうかよくわかりません。今回はシーイングが悪くて分解能的にも意味がなく、全くやる気無しだったので手を抜きましたが、根本的にやり方を考えた方が良さそうです。

一応画像だけ貼っておきます。

Image04_cut_s


その後、月が沈むに伴いトール兜星雲を狙っていたのですが、風がビューゴー言い出して星がすごい勢いてブレていて、やがて雲が空全面を覆ったので、あきらめて撤収しました。


Masaさんの北アメリカ星雲

連休2日目の日曜は天気が悪くほとんど何も成果がありません。Masa@MasaAstroPhotoさんからTwitterのDMで長時間撮影した北アメリカ星雲のファイルを公開するので処理してほしいとの依頼がありました。Twitterを見るとすでに何人かの方が画像をアップされています。

画像を実際に見てみると3つあって、一番短い時間のものでも23時間とものすごい露光時間です。Masaさんに了解との返事をして、夕方くらいから画像処理を始めました。あまり詳しいことは書きませんが、
  1. まずxisfフォーマットを開き明るい方でリジェクトされた画像を見ると、どうも何度か画像が回転しているようです。実際の画像は測定すると9.5度程度回転しています。そのためまずは南北を揃えて、はみ出した部分をトリミングします。
  2. 左側の緑カブリがひどかったのですが、DBEを暗い部分に3点打ちして1回、さらに4点打ちしてもう一回かけることで除去できました。
  3. PCCで恒星の色を合わせますが、QBP IIを使っているとのことなので、見た目を合わせる程度にしかならないでしょう。やはりオレンジは出にくいです。
  4. ストレッチはASSで色を保ち、かつ赤がサチらないようにHTで。
  5. あとはStarNetで星マスクを作ります。
  6. ストレッチ後の画像とマスク画像をPSに引き渡して、炙り出しです。QBP IIだと赤がのっぺりしてしまいます。そのため星雲部の青を少し出します。
  7. 超長時間露光のためでしょう、ノイズらしいものはほとんど目立たないため、思う存分あぶり出すことができます。ノイズ処理は何も必要ありませんでした。
出来上がった画像です。北アメリカ星雲真ん中の透明感を重視してみました。
masterLight_PCC_clone_DBE_DBE_PCC_AS2_HT5

ついでにAnnotationです。
masterLight_PCC_clone_DBE_DBE_PCC_AS2_HT5_Annotated

一言で言うと、非常に楽な処理でした。長時間撮影でノイズが少ないのもそうですが、元の3枚の画像を見比べてみても、星像などんほとんど差がなく、とても丁寧に撮影したことがわかります。長時間撮影自信がそもそも大変だと思うのですが、ノイズのことを考えたら明るい星雲でもこれくらいの長時間撮影をするのがいいのかもしれません。

他の方も色々特徴的な画像処理をされています。Masaが比較検討動画を作るとのことなので結果が楽しみです。


月曜は再び太陽撮影

3日目の月曜は朝から快晴です。期待しながら太陽撮影の用意をしますが、実際に見てみるとやはりシーイングが全くダメです。午前に黒点とプロミネンスを何ショットか撮影しました。午後に少しだけシーイングがいい時間があったので少し撮影し直し、その後に雲で撤収です。

13_44_16_lapl6_ap2568_IP_cut

13_28_07_lapl6_ap2551_IP_cut
ピントがずれているかもと思い、カメラの傾きを緩めたらニュートンリングが出てしまいました。それでもまだ右上の黒点は少しピントがずれている気がします。傾きは後で戻しておきました。

10_41_00_lapl6_ap2544_IP_cut

10_16_58_lapl6_ap791_IP_cut


まとめ

3日間の結果としては全く冴えなかったですが、それでも晴れ間があっただけまだマシです。久しぶりでちょっと満足しました。 

限りなく皆既に近い月食から1月以上経ち、もうほとんど話題にあがることもなくなってきました。



今回の記事を公開するかどうか随分迷いましたが、やはり考えた過程として残しておこうと思います。多少衝撃的な内容かもしれませんが、全く間違っている可能性もあるので、あまり気にしないでください。


TSA-120とFC-76での違い

まずはこの記事を書こうと思った動機です。ターコイズフリンジ に関して、TSA-120で撮影したものと、FC-76で撮影したものに、大きな違いがあったことがきっかけとなります。


TSA-120の場合

まずはTSA-120で撮影したもの。皆既にかなり近い時間帯の月食です。
  • 機材はTSA-120 + ASI294MC Pro(常温) + 35フラットナー + UV/IRカットフィルター + CGEM IIです。
  • 撮影はSharpCapで25ミリ秒露光、ゲインが220で100枚撮影をワンショットとし、serフォーマットで記録します。
  • これをAS!3でスタックしRegistaxで軽く細部を出しています。ここがスタートです。

1. まずはできたTiFF画像をPhotoshopで限りなくシンプルに処理してみました。ヒストグラムを見ながら背景のピークを合わせるだけです。
2021-11-19-0923_0_lapl5_ap3030_level
月食当日にライブで処理してTwitterに投稿した時がこれくらいの処理でした。

他の方の投稿を見てターコイズフリンジ があまりに出ていないので、少しがっかりしたのを覚えています

2. 次にもう少し濃い赤銅色を目指し、赤をレベル補正のみで出した場合。これだとどうしても青い成分が出てこなくて、ターコイズフリンジらしいものは全く出てきません。
2021-11-19-0923_0_lapl5_ap3030_level2

3. 次に上の画像を、トーンカーブでBlueの明るい部分を上げることで、かなり無理をして青を出します。わかりにくいですが、境のところの色に青成分が出てきているのがわかるかと思います。でもこの時点で真っ当な画像処理とは言い難くなってきてしまいます。
2021-11-19-0923_0_lapl5_ap3030_level2_blue

4. さらに眼視で見た時に近くなるようにしてみます。青成分が含まれていることがわかりターコイズフリンジらしいものが見えてきます。
2021-11-19-0923_0_lapl5_ap3030_level2_blue_eye

5. さらにかなり苦労してですが、明るい部分と暗い部分の境が出る様に処理すると、綺麗なターコイズフリンジが出てきているように見え、一般的にいうターコイズフリンジ が見えている月食のような画像になります。
2021-11-19-0923_0_lapl5_ap3030_level2_blue_eye_fringe

上の画像は以前の記事で最後に「ターコイズフリンジ が見えている」と言って出した画像と雰囲気は近いです。以前の記事でも述べているのですが、はっきり言ってかなり無理をして青を出している気がします。ターコイズフリンジを見るのにここまでの画像処理を必要とするほど大変なのでしょうか?


FC-76の場合

その一方、FC-76で撮影した画像で処理をしてみました。そうすると今度は拍子抜けするほど簡単にターコイズフリンジらしいものが出てくるのです。
  • 機材はFC-76 + ASI294MC + Advanced VXです。
  • 撮影ソフトはFireCapture、露光時間は25ミリ秒でゲインが220です。70枚程度をワンショットとし、serフォーマットで記録します。
  • これをAS!3でスタックしRegistaxで軽く細部を出しています。ここがスタートです。
TSA-120での撮影との違いは鏡筒以外ほとんどなく、カメラはProかどうかの違いはありますがともにASI294MCで同等。ソフトはSharpCapとFireCaptureですが、同露光時間で同ゲイン、撮影枚数は100枚と70枚ですがまあ同等と言っていいでしょう。

やはり一番の違いは鏡筒で、特にFC-76はジャンク品で白濁している対物レンズというところが最大の違いなのかと思います。


そのため、少しコントラストが落ちるということを確認しています。



さて、スタックと細部出しを終えた画像をもとに、画像処理を進めます。

1. Photoshopで背景のピークを合わせたのみです。TSA-120の時とカメラは同じASI294MCなのでカラーバランスはそもそもあまり変わらないはずです。背景のピークを合わせただけなのでほとんど同じようになると思うのですが、既に青っぽくなっています。また、赤銅色部分も右上が明るく、左下(右下も)は暗くなっているのがわかります。この目でTSA-120の画像を見返すと赤銅色部分の明るさに差が少なくのっぺりしているのがわかります。

Moon_182346_lapl5_ap301

2. ほんの少し青を強調するだけで、境のところに青っぽいところが出てきました。すでにかなりターコイズフリンジっぽいです。

Moon_182346_lapl5_ap301_blue_eye

3. そこからさらに少しいじるだけでかなり明確に青いところが出てしまいます。TSA-120で苦労して出した最後の画像と比べると、差は明らかでしょう。

Moon_182346_lapl5_ap301_blue_eye_fringe


出来上がった画像を比較してみても、TSA-120の方は赤銅色のところの明るさの差が少なくのっぺりしています。一方、FC-76の方は赤銅色の部分の明るいところと暗いところの差があります。明るい部分が拡散されている様な感じです。
  • TSA-120 -> 赤い、ターコイズフリンジが出ない、赤銅色部分に明暗が少ない。
  • FC-76 ->  簡単にターコイズフリンジが出る、赤銅色部分に明暗がある。

改めて機材を見返してみると、カメラの条件はASI294MC同士なのでほぼ同じはずです。違いは
  • TSA-120: 焦点距離900mmで35フラットナーが入っている。UV/IRカットフィルターが入っている。TSA-120はそもそも屈折鏡筒の中でもコントラストは抜群にいい。
  • FC-76: 焦点距離600mmでマルチフラットナーなど入れてないので、周辺で歪みあり。フィルターは無し。白濁ありで、コントラストがかなり悪いかも。
こうやって考えると、この青い部分の出方の違いはコントラストの違いによるものなのでしょうか?特にFC-76は対物レンズが白濁しているジャンクものです。こちらの方が明らかにコントラストが悪いのですが、これが逆に功を奏して、ターコイズフリンジらしく見えているだけなのでしょうか?

他の方の情報でも、ターコイズフリンジが出ている場合と出ていない場合が分かれているような気がします。
  • 一部の情報で同じ機材でも露光時間が短いとターコイズフリンジが見えなくて、露光時間を長くするとターコイズフリンジが出やすくなると言うのがありました。これももしかしたらある程度以上露光をすると明るいところの影響が周りに出やすくなりターコイズフリンジらしく見えるのでしょうか?
  • また、山の上に登るなど高度の高い所で撮影した画像にはターコイズフリンジが出なかったという話も聞きました。大気のかすみ具合によるコントラストの悪化影響が効くかもしれないということを示唆しているのでしょうか?

とりあえずここまででは私が経験したことや、聞いたことを書いただけで、これだけでは全く結論は出ません。青色部分が多かれ少なかれ存在するのは確からしいです。ただし、本当にオリジナルのオゾン層の影響で見えているものなのか、それとも画像処理に伴って何か見えてきたものなのか、判断がとても難しいです。

加えて、赤銅色の加減自身も相当難しいです。とにかく月食時の基準となる色を客観的には何を参照にすればいいのか、結局は不明でした。そうなると自分の感覚に頼るしかありません。


オゾン層について

そもそも、ターコイズフリンジ が出てくる原因はオゾン層にあると言われています。
  • まず、月食とは太陽と月の間に地球が入り込み、地球の影が月の食になるということです。
  • 地球の影で暗くなるはずなのに、月食時に赤銅色が出るのはなぜかというと、赤い光は地球の大気のところで屈折するために、本来届かない食のところに到達し、赤銅色を作ります。夕焼けが赤くなるのと同じ理由とのことです。
  • 青い光はレイリー散乱と呼ばれる大気での散乱のために、月には届きません。これが色部分に青い色がないことの理由です。
  • ではなぜターコイズフリンジ がでるかというと、地球のオゾン層を通るときに、赤よりも青い光に対して透過率が高いからとのことです。

  • オゾン層は大気のかなり上部にあるため、空気が少なくレイリー散乱が起きないために、青い光はそのまま透過し、屈折などもせずにまっすぐ月まで届くとのこと。その光がターコイズフリンジとなるようです。

以上の情報から、オゾン層を通った青い光がほぼ真っ直ぐ進むなら、オゾン層の厚さがそのままターコイズフリンジの幅となりそうです。オゾン層は高度10kmから50km程度の厚さ40kmのところに90%が存在するとのことなので、地球の半径が6400kmとすると、 40/6400=0.6%ほどとなるはずです。前回撮影した画像の地球の影
all_cut
から考えると、月の直径は地球の半径のざっくり半分程度です。とすると、青い光が真っ直ぐ進むと考えるなら、月の直径の1.2%程度の厚さにしからなず、非常に細いターコイズフリンジにしかならないはずです。もしこの推測が本当に正しいのなら、私の画像も含めて青い部分が月の直径の1割とかもあるような画像を説明するのが難しくなってしまいます。

ここまではあくまで素人のラフな見積もりですが、少し学術的な方向に注目してみましょう。ターコイズフリンジ については、Gedzelman, S. D. & Vollmer, M. 2008, Appl. Opt., 47, 149が初期の頃に出た論文のようです。月食時にどのように見えるかのシミュレーションの結果が実際に2008年に撮影された写真とともに載っています。これを見ると、青い部分の幅が月の直径の10-20%ほどになっています。

ただし、シミュレーションの詳細については書かれていないことと、写真についても画像処理の方法については何も書かれていないので、どのくらい強調しているなどはやはりわかりません。それでも青い部分が存在することは確からしいので、ターコイズフリンジが存在するのは間違い無いのでしょう。ただ、シミュレーションの色の結果についても「まだ正確ではなくデータ不足」と論文中にはっきり書いてあるので、ターコイズフリンジの太さについてはよくわからないようです。


双眼鏡で除いた時の見え方

あと、月食当日に双眼鏡で覗いた時の様子を書いておきます。使った双眼鏡はいつも車に入れている2019年の「星もと」で手に入れたJasonというブランドのクラシカル双眼鏡です。

見えた月はまだはっきりと記憶に残っています。まず、赤銅色と言われるものは画像になっているような派手な色ではなく、かなり落ち着いた色でした。最大食から少ししてから見たので、明るい部分が多少出始めていて、その明るさが、背景を含み食の部分にも影響を及ぼしています。よく言うと、すごくナチュラルに見える月食で、悪く言うとコントラストが悪いと言えるのかもしれません。重要なことは、明るいところと食の暗いところの境に明らかに青緑色の部分がはっきり見えたことです。これは気のせいでもなんでもなく、何度見てもはっきりと見えました。「これがターコイズフリンジか」とかなり感動しました。

ただ、上の画像やTwitterで示したように、その場で処理した最大食時のTSA-120には全くその青緑が写らず、明らかに見た目と違っていました。また、この双眼鏡は相当古いものであり、整備してあるとはいえコントラストがどこまで良いのかはよくわかりません。

もしコントラストが悪いと、鏡筒で違いが出たことも含めて、以下のようなことも可能性としては考えられます。


コントラストの影響の簡単な実験

皆既に近い月食をまねてPhotoshopでポンチ絵で描いてやります。明るい部分はRGBで192:192:192のグレー、赤銅色部分はRGBで64:32:0としました。

2021-11-19-0924_2_lapl5_ap3030_2nd_0_original

上の画像に、Photshopの「Camera Raw フィルター」の「かすみの除去」のスライダーを-80にして、わざとかすみを与えてやります。

2021-11-19-0924_2_lapl5_ap3030_2nd_1_kasumi

見た目はそれほど変わりませんが、明るい部分が暗い部分に少し浸食しています。コントラストが低下したような状態を再現しています。

次にこの画像をPhotoshopのトーンカーブでBlueを持ち上げてやります。

2021-11-19-0924_2_lapl5_ap3030_2nd_2_blue

すると、明るいところと赤銅色の境のところに、青みがかった色が出てきます。

その一方、「かすみの除去」機能を使わないでコントラストを高く保ったまま同様にトーンカーブでBlueを持ち上げてやった場合には、上記のような赤銅色の境のところに、青みがかったような色は一切出てきません。
2021-11-19-0924_2_lapl5_ap3030_2nd_3_nokasumi_blue


以上のことは白色の非常に明るい部分が、悪いコントラストにより、暗い部分を侵食する可能性があることを示しています。コントラストが十分良いと、このような侵食は無いということです。

月食中は、月の明るいところと、皆既月食の赤銅色のような暗いところというように、明るさに差があります。さらにその月を撮影するときに、雲越しであったり、低空で霞んでいたり、今回の撮影のように鏡筒の状態などによって、コントラストが悪い場合があります。そのような状態では、上記のような過程が起こることがあり、画像処理によっては擬似的に青い部分が見受けられることもあるかもしれません。

同様なことを考察したアマチュアの記事も随所に散見します。例えば「ほんのり工房さん」は色温度について議論していて興味深いです。




まとめ

TSA-120とFC-76で撮影したものと、双眼鏡で目で見たもののそれぞれの違いをどう説明したらいいのか?コントラストの低下が青い色を出している可能性を考えてみました。このコントラスト説が正しいのかどうかまだ全くわかりません。

オゾン層が成層圏を中心に大気の密度の薄いところにあるために、そこを通る青い光は真っ直ぐ進むというものすごく簡単な仮定から、ターコイズフリンジ は月の直径の1%程度とかなり細くなるのではと考えましたが、これはこれまでに撮影されている多くの結果とはかなり異なります。

論文によるとシミュレーションの結果から青い部分が出るのはおかしく無いとのことですが、やはりどれくらいの領域で出るかははっきりとはわからないようです。月の直径の1ー2割出ている結果のようにも見えますが、画像処理などの過程も不明なため、結果は注意深く見る必要がありそうです。

色々考えさせられた月食でしたが、今回はまだたいしたデータも揃っていませんし、考察も不十分ですので、結論を出すには全然至りません。次回はもう少し謎に迫れるよう色々考えてみたいと思います。


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