エタロンの透過応答の精度をあげる努力をしています。
以前PSTのエタロンを含んだ透過応答を実測して解析しました。
現在新たにPhoenixのエタロンの応答を測定していますが、いい機会なので合わせていろいろと精度を上げようと思っています。
精度向上に関し、いくつかやりたいことはあるのですが、この記事では波長のキャリブレーションについて議論します。
波長のキャリブレーションは分光器SHG700で別途フラウンホーファー線をカメラで写して、その画像を解析して行います。PSTのエタロンの透過応答の測定の際も、このフラウンホーファー線を元に、波長を決めました。具体的には、撮影したフラウンフォーファー線とJSol‘ExのSpectrum Browserの画面を比較します。似たような線の位置を探し出すのですが、Spectrum Browserでは波長を数字で指定できるので、何本か同じ位置の線がわかれば、波長に換算することができます。前回は、下の画像のように目で見比べながら同じ位置の線を特定していましたが、結構面倒なんですよね。しかも、下で数値が見えている2点で合わせただけなので、精度的に、特にHαより短い波長側にズレがある可能性があります。
そこで、撮影したフラウンフォーファー線の画像と、波長と強度がわかっている参照データを比較して、自動的にフィッティングしてキャリブレーションしてしまおうと考えたのです。
最初に作ったプログラムで比較した結果です。まずはHαよりも長い波長側です。
これを見る限り、そこそこうまくフィッティングできているように思えます。ところが波長の短い側を見てみると、全く合っているように見えません。
そもそも、目で見て合いそうな線を追ってみても、候補さえないような状態です。
ここで一度フラウンホーファー線と、JSol'Exの画像比較に戻って確かめてみました。波長が長い方を比較します。上の方に見えている黒い太い線がHαになります。その下に何本か特徴的な線があり、やはり両画像ともそこそこ合っているように見えます。
同じ比率を保ったまま、Hαより短い波長側を見てみます。画面一番下の黒色太い線がHαです。その上を見てみますが、とてもではないですが合っているように見えません。波長が長い側と短い側で、比率は変わってもいいはずなので、線の間をそれらしく伸ばしたり縮めたりしたとしても、全く候補となるような一致する線が見当たりません。
ここで何日か停滞しました。
実測が間違えているのか、参照データが間違えているのか、色々考えてみました。JSol'Exのデータと、今回使った参照データ (Zenodo に公開されている Solar FTS Atlas.npy, https://zenodo.org/records/14641641/files/solar_reference_atlas.npy)はほとんど同じ形をしているようです。ということは、実測したフラウンホーファー線が何か間違っているのでしょうか?いやいや、少なくともHα線より長波長側ではある程度一致したデータとなっているので、測定自身がおかしいという可能性は少ないかと思います。なので色々調べてみると、太陽スペクトルのデータには何種類もあって、純粋な太陽光を目指したものと、地上で 観測された現実のスペクトルに近いものがあるとのことです。太陽光を目指したものは多くの地球大気吸収線が除去または抑制されているそうです。
というわけで、手に入りやすい以下の4つのスペクトルを実際に比較、グラフ化してみました。
作ったグラフのHαより短い側をよく見てみます。
Solar FTS Atlas(青)とIAG(オレンジ)に関しては、存在しない吸収線がたくさんあるようです。この範囲内でさえもパッと数えて10本くらいはあります。特にSolar FTS Atlas(青)は上側が綺麗すぎたりするので、観測データではなく理論的な線の可能性が高そうです。
その一方、NSO/Kurucz 1984(緑)とPEPSI(赤)は深さこそ差はありますが、吸収線の数が多くて、位置も合わせてかなり似通っています。こちらは地上での観測データと考えていいでしょう。実際には真空中の波長か空気中の波長かで2Å程度ずれるとかもありますが、詳細になりすぎるのでここでは省略します。
というわけで、参照データをPEPSIに変更して、再度フィッティングしてみます。さて、どうでしょうか?
Hαより長い波長側と
Hαより短い波長側です。
特に短い波長側で劇的な改善が見えます。まだ説明できない実測の線もありますが、参照データにある吸収線はほとんど一致していることがわかります。
これで、実測のフラウンホーファー線の波長が精度良くわかったことになります。ということは、カメラの各ピクセル位置がどの波長になるかもわかったとういことになるので、回折格子やカメラの位置を変えない範囲でエタロンやBFの透過特性を測定すれば、波長に対する応答に変換できるというわけです。
思ったより時間がかかってしまいました。やはりプログラミングはそこまで得意でないので、ペースが遅いです。でも今回の解析で、参照できる太陽スペクトルの状況がある程度わかったので、今後も今回の情報は使えるかと思います。
とにかくこれで、今後分光器を使って波長を特定する場合に、毎回手でやる必要がなくなったのが大きいです。
もう一つエタロンの測定精度に関わることを議論しています。こちらもきちんと解決したいと思っているので、もう少し時間がかかるかもしれません。
フェニックスのエタロン透過特性を測るにあたって
以前PSTのエタロンを含んだ透過応答を実測して解析しました。
現在新たにPhoenixのエタロンの応答を測定していますが、いい機会なので合わせていろいろと精度を上げようと思っています。
精度向上に関し、いくつかやりたいことはあるのですが、この記事では波長のキャリブレーションについて議論します。
波長のキャリブレーション
波長のキャリブレーションは分光器SHG700で別途フラウンホーファー線をカメラで写して、その画像を解析して行います。PSTのエタロンの透過応答の測定の際も、このフラウンホーファー線を元に、波長を決めました。具体的には、撮影したフラウンフォーファー線とJSol‘ExのSpectrum Browserの画面を比較します。似たような線の位置を探し出すのですが、Spectrum Browserでは波長を数字で指定できるので、何本か同じ位置の線がわかれば、波長に換算することができます。前回は、下の画像のように目で見比べながら同じ位置の線を特定していましたが、結構面倒なんですよね。しかも、下で数値が見えている2点で合わせただけなので、精度的に、特にHαより短い波長側にズレがある可能性があります。
そこで、撮影したフラウンフォーファー線の画像と、波長と強度がわかっている参照データを比較して、自動的にフィッティングしてキャリブレーションしてしまおうと考えたのです。
とりあえずフィッティングしてみるが...
最初に作ったプログラムで比較した結果です。まずはHαよりも長い波長側です。
これを見る限り、そこそこうまくフィッティングできているように思えます。ところが波長の短い側を見てみると、全く合っているように見えません。
そもそも、目で見て合いそうな線を追ってみても、候補さえないような状態です。
ここで一度フラウンホーファー線と、JSol'Exの画像比較に戻って確かめてみました。波長が長い方を比較します。上の方に見えている黒い太い線がHαになります。その下に何本か特徴的な線があり、やはり両画像ともそこそこ合っているように見えます。
同じ比率を保ったまま、Hαより短い波長側を見てみます。画面一番下の黒色太い線がHαです。その上を見てみますが、とてもではないですが合っているように見えません。波長が長い側と短い側で、比率は変わってもいいはずなので、線の間をそれらしく伸ばしたり縮めたりしたとしても、全く候補となるような一致する線が見当たりません。
ここで何日か停滞しました。
参照データを考えて直してみる
実測が間違えているのか、参照データが間違えているのか、色々考えてみました。JSol'Exのデータと、今回使った参照データ (Zenodo に公開されている Solar FTS Atlas.npy, https://zenodo.org/records/14641641/files/solar_reference_atlas.npy)はほとんど同じ形をしているようです。ということは、実測したフラウンホーファー線が何か間違っているのでしょうか?いやいや、少なくともHα線より長波長側ではある程度一致したデータとなっているので、測定自身がおかしいという可能性は少ないかと思います。なので色々調べてみると、太陽スペクトルのデータには何種類もあって、純粋な太陽光を目指したものと、地上で 観測された現実のスペクトルに近いものがあるとのことです。太陽光を目指したものは多くの地球大気吸収線が除去または抑制されているそうです。
というわけで、手に入りやすい以下の4つのスペクトルを実際に比較、グラフ化してみました。
- Solar FTS Atlas
- IAG
- NSO/Kurucz 1984
- PEPSI
Solar FTS Atlas(青)とIAG(オレンジ)に関しては、存在しない吸収線がたくさんあるようです。この範囲内でさえもパッと数えて10本くらいはあります。特にSolar FTS Atlas(青)は上側が綺麗すぎたりするので、観測データではなく理論的な線の可能性が高そうです。
その一方、NSO/Kurucz 1984(緑)とPEPSI(赤)は深さこそ差はありますが、吸収線の数が多くて、位置も合わせてかなり似通っています。こちらは地上での観測データと考えていいでしょう。実際には真空中の波長か空気中の波長かで2Å程度ずれるとかもありますが、詳細になりすぎるのでここでは省略します。
PEPSIデータでフィッシング
というわけで、参照データをPEPSIに変更して、再度フィッティングしてみます。さて、どうでしょうか?
Hαより長い波長側と
Hαより短い波長側です。
特に短い波長側で劇的な改善が見えます。まだ説明できない実測の線もありますが、参照データにある吸収線はほとんど一致していることがわかります。
これで、実測のフラウンホーファー線の波長が精度良くわかったことになります。ということは、カメラの各ピクセル位置がどの波長になるかもわかったとういことになるので、回折格子やカメラの位置を変えない範囲でエタロンやBFの透過特性を測定すれば、波長に対する応答に変換できるというわけです。
まとめ
思ったより時間がかかってしまいました。やはりプログラミングはそこまで得意でないので、ペースが遅いです。でも今回の解析で、参照できる太陽スペクトルの状況がある程度わかったので、今後も今回の情報は使えるかと思います。
とにかくこれで、今後分光器を使って波長を特定する場合に、毎回手でやる必要がなくなったのが大きいです。
もう一つエタロンの測定精度に関わることを議論しています。こちらもきちんと解決したいと思っているので、もう少し時間がかかるかもしれません。



































