まだまだ自分の中では皆既月食マイブーム状態です。今回は地球の影が止まるような位置をどう計算するかの一連の記事の、少し脱線するような記事になります。
前回の記事でコメントをいただいた「ほんのり光芒」のみゃおさんがブログ記事の方で、地球本影の固定に関してかなり細かい検討をされています。
上記ページからリンクを辿れますが、かなり以前から考えられていたようで、私のようなにわか月食撮影とは歴史が全然違います。天リフさんのピックアップにも取り上げられていて、ほしぞloveログとのちょっとしたコラボのような様相を呈しています。
前回までで、地球の自転による観測者の位置変化で視野に大きなずれができて、地球の影の形がひしゃげることを、多少定量的に見積もってみました。
大まかな見積もりと、実際にどれくらいずれるかは、少なくともオーダーレベルでは一致しているようなので、今回はもう少し精度良く計算できないかを考えてみます。といっても、自分だけで考えるのはそろそろ限界で、Webで少し検索してみました。すると老猫こてつさんという方が各種軌道計算などされて、その中で求めていた月の視野位置のずれそのものをpythonで計算してくれていることがわかりました。
プログラムのソースを公開してくれているので、そのまま計算することができ、とても助かります。ただし、それら計算式をどう求めているのかの記述はないので、そのプログラムの出典を調べるためにブログの過去記事を読んでいくと、どうやら中野主一さんの昔のBASICのコードをpythonに置き換えてくれているようです。
中野主一さんといえば、最近では小説「星になりたかった君と」で「長野秀一」という名前で出てきた重要な役割を担う老人のモデルとなった方。おそらく昔の天文少年にとっては憧れのアマチュア天文家で、多くの天文雑誌で連載をもち、アマチュアながら元国立天文台長の古在由秀先生から計算を依頼されるなど、軌道計算の大家です。私はその当時マイコン少年でしたが、大人になって天文を始めてから、昔使っていたマイコンで実用的な天体計算をしていたことを知って、とても感動したことを覚えています。実は中野主一さん、星を初めて少しした2018年に一度お会いして、お話しさせていただいたことがあります。私はかなり緊張していたのですが、気さくにお話ししていただきました。講演も聞かせてもらったのですが、当時どう計算を進めていたか、プロから依頼された当時の様子などのお話で、ユーモアたっぷりの講演で今でも心に残っています。
そんなわけで早速、サイトに載っていた参考文献を注文しました。長沢先生の「天体の位置計算」は以前から持っていたもので、まだ普通に販売されているようですが、他の3冊は流石に古本でかろうじて見つかるくらいでした。
その中で一番古い「マイコン宇宙講座」は昭和55年の初出のもので、月の計算そのものの章があり、式の解説もあったので理解しやすかったです。
「マイコンが解く天体の謎」は昭和57年出版で、使われている言語はなんとF-BASICですよ。内容はプラネタリウムのようなものを実現することが中心ですが、実は私、中1の時にFM-NEW7を中古で買って、しゃぶり尽くした口です。その数年前に出た本のようなので、恐らくFM-7が出た時で、実際にはFM-8で組まれた時代のプログラムですね。
一番新しい「天体の軌道計算」は1992年なので、前の2さつからはかなり経っていて、プログラムも複雑になり、さらに精度を求めているような内容になっています。
とりあえずは、月の視野ズレの計算方法が載っている「マイコン宇宙講座」をもとに、老猫こてつさんのpythonコードを使わせていただいて計算を進めようと思います。
ただしこれはまだ、「月」の視野ズレを追いかけるプログラムで、一番求めたい月食中の「地球の本影」を追うものではありません。でもこれらの計算の延長上に、それもそう遠くないところに地球本影を求めることができるのではと期待しています。
あともう一つ、仮に地球本影の視野ズレも含んだ位置を計算できたとして、それをどう赤道儀に伝えるかですが、彗星を追うメカトーフ法というのが応用できるかもしれません。ただし、地球の本影を追うというようなものは見つからなかったので、実際にどういう方法で赤道儀に伝えるのか、どういうデータ形式なのか、地球本影に応用できるかなど、もう少し調べる必要があります。
ガイドソフトのPHD2にもメカトーフに相当するような機能があるらしいのですが、どうも1次の傾きでガイド信号に補正信号を加えていくようなものらしいです。視野ズレのような複雑な動きはできないかもしれませんが、1次補正だけでも近似的にそこそこ地球の影の形はうまく出るのではと思います。もしくは撮影途中で何度か係数を変えるかとかでしょうか。
視野ズレの計算方法や赤道儀の制御など、まだ直接ではないですが答えにつながりそうな幾つかの見通しは出てきました。次回の日本での地球本影が見える月食は2023年10月23日の部分月食だそうです。1年近くあるので、じっくり準備したいと思います。
「ほんのり光芒」さんとのコラボ?
前回の記事でコメントをいただいた「ほんのり光芒」のみゃおさんがブログ記事の方で、地球本影の固定に関してかなり細かい検討をされています。
上記ページからリンクを辿れますが、かなり以前から考えられていたようで、私のようなにわか月食撮影とは歴史が全然違います。天リフさんのピックアップにも取り上げられていて、ほしぞloveログとのちょっとしたコラボのような様相を呈しています。
皆既月食で地球の影を浮かび上がらせるには。Samさんとほんのり光房さんがシンクロ。「地球影中心がずれないような撮影方法はないか」「かなり難しいテーマ」「地球影はどんな動きをするのでしょうか?」「バネのような形に沿った移動」
— 天リフ編集部 (@tenmonReflexion) December 16, 2022
ほんのり光房 blogよりピックアップ。
https://t.co/acYKT4xinc pic.twitter.com/d1D7LgW9fA
視野ズレの計算プログラム
前回までで、地球の自転による観測者の位置変化で視野に大きなずれができて、地球の影の形がひしゃげることを、多少定量的に見積もってみました。
大まかな見積もりと、実際にどれくらいずれるかは、少なくともオーダーレベルでは一致しているようなので、今回はもう少し精度良く計算できないかを考えてみます。といっても、自分だけで考えるのはそろそろ限界で、Webで少し検索してみました。すると老猫こてつさんという方が各種軌道計算などされて、その中で求めていた月の視野位置のずれそのものをpythonで計算してくれていることがわかりました。
プログラムのソースを公開してくれているので、そのまま計算することができ、とても助かります。ただし、それら計算式をどう求めているのかの記述はないので、そのプログラムの出典を調べるためにブログの過去記事を読んでいくと、どうやら中野主一さんの昔のBASICのコードをpythonに置き換えてくれているようです。
参考書籍
中野主一さんといえば、最近では小説「星になりたかった君と」で「長野秀一」という名前で出てきた重要な役割を担う老人のモデルとなった方。おそらく昔の天文少年にとっては憧れのアマチュア天文家で、多くの天文雑誌で連載をもち、アマチュアながら元国立天文台長の古在由秀先生から計算を依頼されるなど、軌道計算の大家です。私はその当時マイコン少年でしたが、大人になって天文を始めてから、昔使っていたマイコンで実用的な天体計算をしていたことを知って、とても感動したことを覚えています。実は中野主一さん、星を初めて少しした2018年に一度お会いして、お話しさせていただいたことがあります。私はかなり緊張していたのですが、気さくにお話ししていただきました。講演も聞かせてもらったのですが、当時どう計算を進めていたか、プロから依頼された当時の様子などのお話で、ユーモアたっぷりの講演で今でも心に残っています。
そんなわけで早速、サイトに載っていた参考文献を注文しました。長沢先生の「天体の位置計算」は以前から持っていたもので、まだ普通に販売されているようですが、他の3冊は流石に古本でかろうじて見つかるくらいでした。
その中で一番古い「マイコン宇宙講座」は昭和55年の初出のもので、月の計算そのものの章があり、式の解説もあったので理解しやすかったです。
「マイコンが解く天体の謎」は昭和57年出版で、使われている言語はなんとF-BASICですよ。内容はプラネタリウムのようなものを実現することが中心ですが、実は私、中1の時にFM-NEW7を中古で買って、しゃぶり尽くした口です。その数年前に出た本のようなので、恐らくFM-7が出た時で、実際にはFM-8で組まれた時代のプログラムですね。
一番新しい「天体の軌道計算」は1992年なので、前の2さつからはかなり経っていて、プログラムも複雑になり、さらに精度を求めているような内容になっています。
とりあえずは、月の視野ズレの計算方法が載っている「マイコン宇宙講座」をもとに、老猫こてつさんのpythonコードを使わせていただいて計算を進めようと思います。
ただしこれはまだ、「月」の視野ズレを追いかけるプログラムで、一番求めたい月食中の「地球の本影」を追うものではありません。でもこれらの計算の延長上に、それもそう遠くないところに地球本影を求めることができるのではと期待しています。
赤道儀の制御
あともう一つ、仮に地球本影の視野ズレも含んだ位置を計算できたとして、それをどう赤道儀に伝えるかですが、彗星を追うメカトーフ法というのが応用できるかもしれません。ただし、地球の本影を追うというようなものは見つからなかったので、実際にどういう方法で赤道儀に伝えるのか、どういうデータ形式なのか、地球本影に応用できるかなど、もう少し調べる必要があります。
ガイドソフトのPHD2にもメカトーフに相当するような機能があるらしいのですが、どうも1次の傾きでガイド信号に補正信号を加えていくようなものらしいです。視野ズレのような複雑な動きはできないかもしれませんが、1次補正だけでも近似的にそこそこ地球の影の形はうまく出るのではと思います。もしくは撮影途中で何度か係数を変えるかとかでしょうか。
今後
視野ズレの計算方法や赤道儀の制御など、まだ直接ではないですが答えにつながりそうな幾つかの見通しは出てきました。次回の日本での地球本影が見える月食は2023年10月23日の部分月食だそうです。1年近くあるので、じっくり準備したいと思います。