ほしぞloveログ

天体観測始めました。

カテゴリ:イベント > 講演会

昨年の12月、「星なかまの集い」という研究会の実行委員の方から「講演をしてほしい」との依頼がありました。研究会の開催は3月初めで、当時は予定も詰まっていなかったので快諾しました。その方と少しやりとりして、テーマは電視観望ということになりました。そもそも私は関西の集まりはあまり経験がなく、どんなものかわからなかったのですが、コロナ明けということもあるのでしょうか、実際に顔を合わせての研究会は、夜に行われた交流会も含めて、とても楽しいものでした。


兵庫の「西はりま天文台」にむけて出発

3月2日、この日は兵庫の西はりま天文台までの移動です。前日が飲み会だったので、朝は眠い目をこすりながら5時半頃に起き、準備をして午前6時20分頃の朝イチのバスで富山駅に向かいます。みどりの窓口が開く直前の午前7時前に富山駅に到着。7時16分の金沢行きの新幹線にのりたいので、すぐに並んでみどりの窓口が開くのを待ちます。窓口が開くまでに、途中で駅員さんがどこまで行きたいかとか聞きにくるのですが、天文台最寄りの兵庫県の「佐用」駅といって、iPhoneに表示させた乗換案内の乗換回数2回の最速、最楽ルートを見せると、ちょっと怪訝そうな雰囲気に。色々確認してくれた後に聞いてみると、どうやら京都からでる特急が、途中JRと相互乗り換えで「智頭急行」という別の鉄道会社の線に入ってしまうので、途中の駅から佐用駅までの乗車券が出ないというのです。特急券は佐用まで出せるというので、とりあえず途中までの乗車券と、佐用までの特急券だけ購入し、あとは現地で聞いてみることにしました。

そんなこんなで少し時間を食ってしまい、いそいでお弁当などを買い込み、走って新幹線に乗り込みます。全線自由席で買ったのですが、新幹線も朝はガラガラ。時間ぎりぎりでも十分に座れます。

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やばかったのがサンダーバードです。実は新幹線はもう一本遅らせてもギリギリサンダーバードには乗れたのですが、無理してでも一本早めでよかったです。なんと指定席は満席、自由席も通路が人で溢れていて、グリーン以外の指定席車両の通路まで座れない人のために解放していました。3月16日には新幹線が敦賀まで開通するので、その影響もあって混んでいるのかもしれません。

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とにかく席に座ることはできたので、電車が出発してからすぐに朝ごはんです。富山-金沢間の新幹線は20分くらいなので落ち着かないんですよね。午前8時過ぎくらいでしょうか、ここでやっと富山駅で買った弁当を開けます。この日は「海鮮美食」。

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前週にCP+で東京方面に行った時は「ぶりとたいのこばこ」で、SNSで海鮮美食も美味しいと聞いていたので、今回はそちらに挑戦です。両方とも同じ会社の製品ですが、どちらもとても美味しくて、今回の海鮮美食もいろんな味が楽しめて、大満足でした。言うなれば寿司のコースが弁当箱に凝縮されたような印象です。他より100円か200円高いのですが、その価値は十分にあります。

京都駅に着くと、次の特急スーパーはくとに乗ります。京都駅での乗り換え時間は40分くらいあるのですが、先にホームの確認に行きます。まだ出発まで30分以上あったのですが、すでに車両は到着していました。
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自由席が1、2号車であることを確認して、まだ時間があるので弁当などを買いに行きます。それでもまだ出発まで十分時間はあるのですが、もう席に座ってしまいました。なんでかというと、一番前が空いていたからです。
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この見晴らしはいいですね。運転席は全体が見えるし、運転席越しに前方の景色が全部見えます。

電車内は結構時間があるので、その日の講演の最終チェックなどをします。姫路を越えると、相生と上郡という駅に泊まりますが、この上郡でJRから智頭急行にはいるようです。あ、ここからの乗車券が富山駅で買えなかった件ですが、電車が発車してすぐに車掌さんの切符の点検が来て、その時に話したらその場で発券してくれました。

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ここからは単線です。単線を特急で飛ばしていくのを見るのはかなりの迫力です。このスーパーはくとは振り子型の電車らしくて、酔いに気をつけてというXでのコメントがありました。私は酔いにあまり強くないのですが、今回は全然大丈夫でとても快適した。
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6分遅れの13時過ぎに、目的地の佐用駅に到着。ここでやっと乗る時に撮り忘れていた先頭からの写真を撮ることができました。
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駅を出ると、天教でもお世話になったMさんが待合室にいました。早めに着いたそうです。相乗りのタクシーが13時30分にくるので、しばらく待ちます。その間に以前お会いしたことがある方、初めての方含めて、全部で6人が集まりタクシーに乗り込み、西はりま天文台に向かいます。タクシーで15分かからないくらいでしょうか、歩くと90分らしいのですがずっと上り坂なので、タクシーの方が無難かと思います。


到着

西はりま天文台に到着。実はここにくるのは2回目で、別件で以前昼間のうちに来たことがあります。その時は仕事関係で短時間案内されただけなので、じっくり夜まで滞在して望遠鏡を覗いたりするのは今回が初めてです。

かなり広い敷地で、遠くに望遠鏡のある建物が見えます。左の白い建物に口径2mの「なゆた」が入っています。

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下の写真が、今回お世話になる宿泊施設(焦茶色の屋根の長い棟)と、研究会が行われる建物(左手前の赤茶色の棟)です。
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研究会の会場です。
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すぐに電視観望の講演

到着して、今回お誘いいただいた実行委員のFさんにご挨拶して、荷物などを置いたり、機材を準備していたらすぐに会の始まりです。簡単な説明の後、すぐに講演会が始まります。トップバッターが私なので、そのまま話すことに。内容は電視観望と普及についてです。持ち時間は25分と言われていましたが、少しオーバーして30分くらいになってしまいました。質問もいくつかあり、もともとメンバーは眼視の方が多い印象でしたが、電視観望をすでにやられている方、興味を持ってくれた方もいたので、少し安心しました。最近はSeestarの普及率がすごくて、メンバーの中に持っていらっしゃる方も結構いましたし、この研究会に実際に持ってこられた方もいました。また、公共天文台などの関係者の方もいらしていたので、ぜひCMOSカメラをつけて試してみてくださいと、宣伝しておきました。質問に答えた際にもいったのですが、電視観望は突き詰めた撮影とは違いますし、1人で見るというよりはむしろイベント向きだと思います。大人数で一度に楽しむことができ、暗い空をそこまで必要しないので安全面からも適しています。そういった楽しみ方の可能性が増えるということが伝わっていればと思います。

その後さらに二人の講演があり、掛け合い漫才みたいなのもあったので、関西っぽくて楽しかったです。

この日は3人の講演だけで終わりで、その後は少し早めの夕食です。目の前に座っていた小学5年生の女の子が次の日に発表するという話を聞いていたら、左隣の方もその女の子の次に発表とのこと。明日の日曜もかなり楽しめそうです。

夕食後、18時を過ぎていたのですが、まだ外はかなり明るいです。そうか、西日本に来てたのだと実感した瞬間でした。調べたら富山と兵庫では日の入りの時刻は10分ほどの違いでしかありませんでしたが、ずいぶん遅くまで明るいなと思いました。というか、富山は最近全然晴れてくれないので、早くに暗くなってしまう印象だったのかもしれません。到着した時はまだ曇りだったのですが、夕方くらいになってくると、この日はすごい快晴で、全面星が見渡せるほどでした。暗くなりかけだったので、私も電視観望機材を用意して少しだけデモをしたのですが、外に出てくる人があまり多くなかったので、何人かの方に見せることができた程度です。


「なゆた」の見学

というのも、19時半から口径2mの望遠鏡「なゆた」の見学会があります。一般の見学会に合わせた形になっていて、なゆたの建物の説明会場に行くと、かなりの人がいました。

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なゆたが入っている建物です。
食後すぐに、明るいうちに立ち寄った時に撮った写真です。

今回の研究会のメンバーが75人と聞いていたので、一般の人と合わせて確実に100人を越えて参加者がいたと思います。

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なゆたでは木星、カノープス、M37、M42のトラペジウムを見せてもらいました。M42は色がつかないか、並んでいる間に右目だけスマホで明順応しておいたのですが、残念ながら色がついているようには見えずに、普通に暗順応している左目と変わりませんでした。何度もなゆたを巡回するのですが、ちょうどその時刻にカノープスが南天するらしく、同じフロアの外の屋上エリアからカノープスを見ることができました。少なくとも地元の富山よりは南なのと、山の結構高いところからのしかも建物の屋上からなので、視界が開けていて、地平線からはそこそこの高さのカノープスを見ることができました。地元から一般の方も見学に来ているので、それらの方たちとの会話も楽しかったです。冬の天の川もやはりなかなか気づかないので「オリオン座の左からずっとカシオペア座の方に...」とか説明していました。

なゆたの制御室の前にあるモニターを見ると、SharpCapが使われているのが印象的でした。ただ、バージョンが3.2台なので、ちょっと昔のものです。

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夜の部の高校生の発表

なゆたに十分満足して宿泊棟の方に帰ると、高校生たちがMITAKAでの発表の準備をしていました。偏光グラスをかけて、画面が立体的に見えるもので、解説もよく練習しているようで、とてもわかりやすかったです。
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この高校生たちは、次の日発表もするということです。若い人たちがこういった研究会で発表するのは素晴らしいです。ぜひとも自分たちで色々考えて、こういった研究会で成果を発表して、楽しんで活動していただければと思います。そしていつまでも天文を好きでい続けて欲しいです。


色んな参加者

この研究会には、年配の方も子供も、ベテランの方も初心者も、こういった会では珍しいくらいに女性もたくさん、本当に色んな層からの参加者がいます。夕食が終わった次の交流会までの時間に、例えばある一人の方と少しお話ししました。講演の後に質問されてきた方で、赤道儀の極軸が全然取れないというのです。時間があったので、ちょっとじっくり聞いてみます。

その方はかなり勉強熱心で、極軸を合わせる説明のファイルを印刷してバインダーに閉じ、自分で理解できるようにかなり書き込みをしています。でもよくよく聞いてみると「極軸が数十度とかズレる」というのです。でも数十度?普通に考えたらちょっと信じられないような数字です。いろいろ話を聞いていて、やっとなぜか理解できました。「鏡筒はRedCatを使っている」と聞いていたので、最初結構経験のある方かと思ったら、どうやら「ほぼ完全な初心者」と言います。「いまだに一度も極軸をきちんと合わせられたことはない」というのです。極軸をどう合わせているかというと「ASIAirの極軸調整機能で、しかもそれを北極星の見えない南側に向いたベランダでやっている」というのです。私が「そもそも赤道儀を方位磁石とかで北にむけていますか?」と聞いたら、その意味自身が伝わっていない様子でした。

そこでアドバイスしたのは「まずは近くの公園でもどこでもいいので、北の空が見えるところで、まずは赤道儀を北に向けてください。方位磁石でもいいですし、今ならスマホでコンパスアプリもあります。極軸望遠鏡もあるということなので、ASIAirとかの高度な機能はまずは忘れて、基本に忠実に、手で合わせるところから初めてください。北極星が見えるところでさえ極軸が合わせられないのなら、北極星が見えないところで極軸を合わせるなんて到底できません。高度な機能に頼るのは基本ができてからがいいです。」というようなことです。

今の世の中、高度すぎる機能のものが溢れかえっています。基本を疎かに便利なところだけ使おうと思っても逆に難しくなってしまいます。なので数十度ずれても、なぜそんな不思議なことが起こるか、根本的な疑問にさえ辿り着かないのかと思います。

実際、初心者にとっては天文機器を扱うのは難しい場合があります。「地元に天文クラブとかないでしょうか?もし一緒にやってくれる人がいるなら、一緒に夕食でもとりながら、その後、機材と一緒に付き合ってもらうのもいいですよ。」と、どなたかがアドバイスしていました。本当はこの場に機材を持ってきてくれていれば、教えてくれるような人はたくさんいると思うのですが、車を持っていなくて機材を持ってくるのは大変とのことです。

一度だけ上手く撮れたというアンドロメダ銀河の写真を見せてもらいました。奇跡的に極軸が取れた時で、それ以降やはり全然ダメだとのことです。基本を疎かにせず、コツさえ掴めば、必ず上手く行くはずです。せっかく揃えた素晴らしい機材です。今のままだと苦行になってしまいかねないので、一刻も早く楽しんでいろいろできるよう、成長されることを願って病みません。私が近くに住んでいるなら、押しかけてでも一緒に作業してあげたいくらいです。


夜の交流会

さて、夜はお待ちかねの交流会。なんでも「ダメな人間の会」とかいう別名がついているとのことで、延々と夜中まで続くそうです。たくさんの方がいるので、それでも話せたのは一部の方ですが、とても楽しかったです。私も漏れずにダメ人間になっていて、飲んだくれてずっと話し込んでいたら、電視観望の機材を外に出しっぱなしにしていたのを完全に忘れてしまっていました。午前0時頃に気づいて外に出てみたら、かろうじて2等星くらいまでの星は見えるのですが、全面がガスっていて、その時点で機材は片付けることにしました。後から聞いたら、高校生たちはダメ人間にはならずにずっと外で撮影をしていたとのことです。見習わなければいけません。

その後も交流会という名の飲み会は続きました。気づいたのは、女性が結構な割合でいることです。少し会話の中に入れてもらったのですが、みなさん以前からの知り合いのようで、とても仲が良さそうに見えました。こういった会にはよく参加されるそうで、居心地がいいのでしょうか、とても楽しそうに話していました。というのも、コロナ禍でこの会もなかなか集まることができず、観望会形式のようなものは続けてきたけれども、こうやって顔を突き合わせて交流(飲み食いする)するのは2019年以来4年ぶりとのことです。そんな会に呼んでいただき、とても光栄でした。

午前2時半頃でしょうか、やっと「そろそろお開きにしましょう」とかいう宣言がかかり、解散となりそれぞれの大部屋に戻って行きました。もちろん途中で布団に入った方や、宴会場の椅子に座って眠りこけてしまった人もいますが、3-4割の人は最後まで残っていたのではないでしょうか?眠るのは少し惜しかったのですが、明日の朝食は7時45分からです。あまり寝坊もできないのでそのまま布団に入ったら、すぐに眠ってしまいました。ちょっと疲れていたようです。


2日目の研究会

朝7時15分、部屋の電気がついて起床です。着替えや部屋の掃除をなどして、朝食に向かいます。朝食後になゆたの建物の上に見た白い月が印象的でした。

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午前9時から研究発表会が始まります。月の石を探す旅や、各地の観望会などの活動の様子が発表されます。小学5年生の女の子の発表や、高校生の発表もありました。少し緊張しているように見える人もいましたが、皆さん頑張って発表していました。

最後に発表された研究奨励賞には、一つは月の石の話と、もう一つは子供達がいろいろな体験をして自分たちで発表するという活動の、2つが選ばれました。特に後者の活動発表は、子供たちに自分で考えてもらい、考えたことが「腑に落ちる」というところを重要視しているとのことでした。私も観望会で似たようにできる限り参加者自身に考えてもらうようにしているので、この方針には大いに賛同できました。

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研究発表会のあとは、恒例のビンゴ大会です。私も星柄のフェイスタオルをいただきました。その後の奨励賞の表彰式も無事に終わり、15時少し前に会は終了しました。電車の時間に余り余裕がなかったので、当初からお世話になった実行委員のFさんに挨拶して、他の方とのお別れの挨拶も余りできずにその場を去って、呼んであったタクシーに乗り込み駅に向かいました。タクシーではお一人、岡山から参加している方と相乗りしました。この方、来る時も一緒のタクシーに乗った方です。駅までのタクシーの中と、駅のホームでも少しお話ししたのですが、今回初めての参加とのことで、いろんな方とお話しできたと言っていました。どうも他の方も聞いてみると、4年ぶりということもあったのか、今回が初めての参加の方も多かったようで、それぞれ楽しむことができるのが、この会の特徴と言えるのではないでしょうか。この方ともまたいつか会えるのを楽しみに、ホームでお別れしました。

さて、帰りも同じ電車でスーパーはくとになります。自由席は今度は後部にあたるので、来たときのような運転席を見ることは当然できません。というか、来た時と変わって結構混んでいます。それでも2つ並んであている席はあったのでそこに座り、昨日の寝不足のせいもあるのでしょうか、ぐっすり眠ってしまいました。

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帰りの乗り換えは、大阪駅です。混むことを心配して指定席を取っておいたサンダーバードに乗り込み、金沢まで向かいます。

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金沢駅について走って新幹線に乗ったら、予定より一本早く乗ることができました。富山駅では妻に迎えに来てもらい、最後は車で帰宅です。21時過ぎでした。かなりうまく乗り継いで片道6時間なので、やはりちょっと遠いですね。


まとめ

今回の講演を引き受けた時はまだ予定がガラガラだったのですが、実はそのあとどんどん詰まってきて、ブログでも書いたCP+も含めてここ2週間ちょいでセミナーや講演などが7つあり、相当タイトなスケジュールでした。このブログを書いている今はやっと全て終わり、自分の時間を取ることができています。それでもこの研究会は得るものも多くて、とにかく夜が楽しかったです。ちょっと遠かったですが十分に行く価値のあるもでした。もし興味がある方は、ぜひとも来年参加してみてはいかがでしょうか。


CP+2024の前回の続きで、今回は主に24日の土曜日のことを書きます。


桜木町駅から会場まで

この日の空は打って変わって快晴です。いつもはみなとみらい駅からですが、天気もいいので桜木町駅から歩いていくことに。徒歩で12分くらいとのことです。
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といっても、このエスカレーター以降は基本的に屋根のある道で、しかも最初のうちはうごく歩道なので、全然大した距離に思えないです。昨晩止まったJR川崎駅からだと、みなとみらい線を使うより百円くらい安くなるので、最初からこちらを使えばよかったかもです。


ブース廻りその2

サイトロンブースが元気すぎて、前回のレポートでは全然新商品を紹介しきれていません。でもやはり単に紹介するだけだとつまらないので、その場で色々試したことを書いておきたいと思います。

まず、大型鏡筒のための低頭の経緯台兼赤道儀です。シンプルな構造でこれだけの重量を支えることができ、コンセプトが素晴らしいです。重心を低くしているのもいいです。実際に色々触ってみました。すると、鏡筒部分を手で押して揺らすしてみると結構下のほうで揺れるみたいで、どうやら緯度が高くなると緯度を調節して固定する2つのネジの間の距離が短くなってくるので、構造的に弱くなるようです。フタッフの方に聞いてみたら、この部分はまだ確定していない仕様のようです。なんとか発売するまでに改良されるといいなと思います。この揺れがあるかないかで評価は大きく変わるはずです。

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そんな観点から行くと、今回発表された経緯台タイプのマウントは、揺らしてもピクリともしなくて、サイトロンの全マウントの中で異彩を放っていました。
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理由は三脚の下に三角の板があり、それを押し上げて三脚をガッチリ固定しているからです。

その一方、改良で問題を解決するのは、通常はなかなか大変です。例えば、昨年のCP+でサイトロンのスタッフさんに、どんな三脚がいいのか聞かれました。私は迷うことなく上のような構造の「三脚の下側から3角の板で押し上げるタイプが良くて、カーボンタイプでさえもそうして欲しい。逆に撮影レベルのサンキャ腕そうでないものは信頼するのが難しい。」とまで言い切っていました。あれから1年経ちましたが、なんとサイトロンの開発部隊のお一人であられるマチナカリモートさんが、CP+後に以下のようなポストをXに投げてくれました。


カーボン三脚の場合、金属の板だと表面が削れないかとか心配だったのですが、上のような厚みがあるプラスチック系なら傷つけることもありません。しかもその前の投稿でマチナカリモートさん自ら「もう、別物。強度抜群で補強入れるとこんなに変わるんだ。」などと述べてくれています。これは期待大です。三脚側に改造なしで取り付けることができるとのことなので、できるなら汎用的に三脚に取り付けられるように一般化して、ぜひとも製品化まで持っていって欲しいくらいのアイデアです。

というように、一言に改良とか改造とか言っても、1年とかかかることも全然珍しくありません。なので、こういった展示会で触ってみて思ったことは、スタッフさんに伝えておこうと思い、実際に今回もスタッフさんに伝えています。でもこれサイトロンさんだから言えたのかも。実際に去年も今年も思ったことを伝えたスタッフさんは、セミナーでお世話になった仲のいいスタッフさんだからです。

あと、もう一つの期待大は太陽望遠鏡です。ちょっと珍しい、エタロンが鏡筒中央部に入っている形になっています。エタロン部では普通は平行光になっていなければならないのですが、どうせ平行光にしたならばここにもう一つエタロンを追加できるとかで、ダブルスタックタイプにもオプションで対応するとかだともっと面白いかもしれません。
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でも普通は太陽望遠鏡は改造非推奨のはずなので、やはり難しいでしょう。エタロンだけオプションで売ってくれるなら、大口径改造とかもしたいですが、まあこれも当然非推奨です。いずれにせよ、太陽望遠鏡の久し振りの新規参入メーカーとなるはずです。とても楽しみです。

もう一つ、どうしても紹介しておきたいブースがあります。「Metal Print」さんです。


一応リンクを張っておきましたが、これは展示場などでサンプルをぜひ見て頂きたいです。
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金属の板に印刷をしていて、額とかなしで平面が保たれています。印刷の綺麗さは紙とは違い、やはり金属で細かいところで平面が出ているのでしょうか、かなりシャープです。印刷は3種類あって、光沢ありのグロス、光沢なしのマット、金属の色が出るクリヤタイプだそうです。金属色が出ないのか出るのかは、下地が白か透明かということらしいです。
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星景写真もありましたが、かなりのコントラストで印刷されています。
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データはJPEGかTIFFとのことで、TIFFが16ビット以上を受け付けるかどうかは、スタッフの方もわかっていなかったので、注文時によく確認すべきかと思います。値段はそこそこですが、仕上がり具合を見たら決して高いとは思わなかったです。天体写真を印刷する場合は、印刷時に画像処理が入ってしまうと大抵うまくいかないのですが、まだそこら辺はわからないとのこと。小さなサイズで一度印刷して欲しいと言っていました。会場で40%割引のチラシが置いてあったのでもらってきました。いや、本当に一度印刷されたメタルを見て欲しいです。すごかったです。

よく考えたら、今回大手のブースはほとんど行っていません。カメラにはそこまで興味がないのがバレバレですね。カメラというよりはCMOSセンサーの方に興味があります。

というわけで、最後の私的な注目ブースは「日本写真学会」です。CMOSセンサー自身についても、この学会の柱のテーマの一つに入っていました。究極的な状況でCMOSセンサーがどういった信号を出すのか、これは基本暗いところを写す天体写真にも通じるところがあるはずです。他にあまりお客さんがいなかったので、ブースの方と少しお話しさせていただきました。学会員を募集していたのですが、会員になるためには年会費がそこそこするので、学会貧乏になってしまいこれ以上あまり入れません。いつか仕事などと別に、趣味で学会に入るのもいいのかもしれません。


いよいよセミナー本番

さて、そんなブース周りをしている間に、間も無く自分のセミナーの時間です。

少しネタバレすると、この日の朝は9時過ぎくらいに会場に到着して、10時の開場までに発表のための接続テストをしていました。すでにこの時点から結構なトラブルがあり、事前にテストしないとホントにまずい状況でした。出力は会場モニターと動画配信用の2系統あるのですが、Windowsと繋ぐとうまくいくのにMacだとどうやっても2系統のうち1系統しか信号がいかないのです。色々やって、最後は会場側の配線ミスということが判明したのですが、このテストをしていなかったら本番直前で配信ができずにアウトだったと思います。

さらに今回はMacとWindowsを手持ちの簡易Wi-Fiルーターで接続して、MacからWindowsのリモートデスクトップに繋ぎ、本番でさもSharpCapを含めてMacとWindowsを2台扱っているように見せようとしていました。この朝の時点で2台を繋ぐテストもできたのですが、このリモートデスクトップも、会場モニターの解像度と、Macから見るWindowsの解像度が別認識らしくて、最初画面の端が切れて表示されるとかのトラブルもあったので、こちらもテストしてないと本番でトラブルようなレベルでした。これも朝のテストでなんとか解決することができました。

それでも本番の一番の問題は手持ちのWi-Fiルーターだったのです。前のトークが15分ほど伸びてしまって、準備時間が少なくなったので焦っていたのもありますが、MacとWindowsが全然つながりません。お客さんが多い時間帯では、WiFiの電波が飛びまくっている状態だったのが原因かと思われます。それでもなんとか繋ぐことができて最低限の準備が終わったのがセミナー開始1分前くらいでした。もう心の準備をすることもなく、セミナーがスタートしてしまいました。

始まったのはいいのですが、やはりWindowsに繋いでもネットワークの速度が全然出なくて、リモートデスクトップどころではないのです。結局、本番のその場でもうWindowsを使うことを諦め、SharpCapでの再ライブスタックと、Windowsの「フォト」アプリを使っての画像処理は諦めたのは、その場にいた方や配信でご覧になった方はすでにご存知かと思います。もしいつか同様のことをするなら、有線の簡易ハブを持っていくか、もしくは5GHzでの接続でも良かったかもしれません。自宅外なので2.4GHzしかダメだと思い込んでいたのですが、よく考えたら会場は屋根の下なので、屋内扱いでよかったのかもしれません。

Windowsがうまくいかなくて焦っていたせいもあり、直後のMacのプレビューでのスタート画像を間違えたミスもありましたが、それでもその後の解説はなんとか体制を立て直し、無事に最後まで辿り着きました。無事に終わった時は本当にホッとしていました。

セミナーはかなり多くの方に来ていただけたようです。
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U-Chanさんが撮ってくれた写真です。

結局今回は、Wi-Fi接続の大トラブルが1件、Macでの画像処理の選択を間違えるという致命的なミスが1件と、大いに反省すべきです。それでも、画像処理をやってみたいという人にとってできる限りわかりやすく説明したつもりです。後で見直してみたら、焦っていたにもかかわらず一応頑張って説明しているように見えました。少し駆け足のところもあったので、解説ブログ記事と合わせて、配信動画も興味が湧いた時でいいので、長期的に見ていただければと思っています。

後日、配信の際に投稿されたコメントを見ました。直接の質問のようなものはありませんでしたが、多くのコメントがありました。特に雑兵Aさんは、コメントの時点で今回私が伝えたかったことに対してかなり反応してくれていて、その後のXでの投稿でも自分が試した結果を見せてくれていました。画像処理に足を突っ込み出したくらいの方が大きく進歩してくれるなら、今回のセミナーを引き受けた甲斐があったというものです。

XではあんとんしゅがーさんからNINAとPixInsightについても同じようなことをやってほしいというリクエストがありましたが、ベテラン向けはなかなか難しいです。それぞれみなさん自分の道を持っていますし、選択肢もたくさんありますし、過程も格段に複雑になってしまいます。もし何かやるとしても、全然別の方法でになるかと思います。

あと技術的な追加情報ですが、光害防止フィルターに最初CBPで撮影したのですが、青ハロが出てしまいました。その後QBP IIIを使って青ハロが消えたのですが、おそらくこれはあぷらなーとさんが説明されたことと一致しているのかと思います。私が使ったのはアクロマート鏡筒ではないですが、EDの入門的な鏡筒なので、同じような効果が得られるのかもしれません。あと、私もあぷらなーとさんと同じように、0.75倍のサイトロンのレデューサを使えばよかったと思いました。少し画角が広くなり、 より分子雲の領域を広げられたのかと思いましす。オリオン大星雲は少し画角を広げると背景を楽しむことができるかと思います。


セミナー後

セミナーが終わった後は疲れ果てていて、あぷらなーとさんのセミナーを聞いた後はもうグダーっとして、セミナー会場にある椅子に座ってのんびり話しているくらいでした。

そうそう、今回のCP+でだいこもんさんとniwaさんに初めて直接お会いできました。お二人はオンライン会議などで何度も話しているので、むしろホントに今まで顔を合わせてなかったのか?という感じでした。M&Mさんと蒼月城さんは初めてお顔を拝見しましたが、想像と全然違っていました。お二人とも想像よりかなり若かったです。多分、M&Mさんは天文歴が長いから、蒼月城さんは知識があまりにも深いから、勝手に私よりも年配の方と想像していたのだと思います。でも蒼月城さんの声は、いつものあの渋みのある、魅力的な声と同じでした。今回の画像処理セミナーの対象として(勝手に)想定していた、めだかと暮らすひとさんや、Imarin0321さんとも顔を合わせることができました。

会場を出る少し前くらいだったでしょうか、サイトロンのスタッフさんに紹介されて、中3のAPS君に会うことができました。中学生で都心でナローバンド撮影をしていて、私も結構最近「え?中3」とびっくりしてフォローさせてもらいました。なんとハーフの方で、来年はお母様の出身のイギリスの高校に行くとのことです。将来は天文学者を目指しているとのことです。帰り際、わざわざお父様と一緒に再度挨拶に来ていただきました。「APS君、イギリスでもがんばれ!」


飲み会

この後は、編集長とあぷらなーとさん、星沼会のメンバーなど、10人くらいでの飲み会でした。Aramisさんの案内で少し歩いて中華料理店へ。その途中でM&Mさんとあぷらなーとさん話していて、昔のことを聞くことができました。私はこの界隈では新参者に近いので、昔の話を聞くのはとても楽しいです。この時の会話が元で、M&Mさんがブログにまとめ記事を書いてくれています。

飲み会ではMACHOさんから面白い提案をいただきました。星ナビの今年の2月号に紹介されているのですが、MACHOさんが高校生と一緒にチリのリモートを利用して電視観望を実践しているとのことです。聞いてみるとかなり理にかなっていて、最近は学校関係だと夜に観望会を開くことも安全上難しくなってきたりしています。チリはちょうど12時間の時差があるということで、なんと授業がある昼間にリアルタイムで電視観望ができるということです。来週実際に、テストで参加させてもらう予定です。実際に高校生を交えて試すのはまだ先になりそうですが、今から楽しみでなりません。

その後、何人かのメンバーは横浜駅で帰られたのですが、他にまた別メンバーとも合流して2次会にまで行くことになりました。そこでも色々話し、店を出たのは23時15分くらい頃だったでしょうか。それでも電車も無くなることはなく、川崎のホテルまでたどりつきました。富山と違い、さすがに都会です。


帰宅とまとめ

次の日はかなり疲れていたこともあり、早めに富山に帰ることにしました。だいこもんさんがNiwaさんの個展に立ち寄ったみたいですが、私はまだ行けてないので、私も思いついて立ち寄れば良かったです。

星まつりはたいてい山の中とかの比較的遠いところで行われますが、CP+は関東中心で行われるので、集まりやすくていいですね。CP+の魅力の一つは、ものを買うことをしなくていいところだと思います。掘り出し物を探すなどせずに、新製品とかに集中できるところでしょうか。さらに天文関連のブースが限られているので、去年も今年もそうだったのですが、サイトロンブースがある意味天文民溜まり場のようになっていて、ここにいれば誰かに会えるというところですかね。やはり星まつりとは色んな意味でちょっと違う、別の価値のあるイベントなのかと思います。

今回の記事をもって、私にとっての今年のCP+も本当に終わりです。昨年のCP+はまだコロナの影響が少しあったのかと思いすが、明らかに今年はパワーアップしていたと思います。連動企画もかなり充実したものになったかと思います。画像処理を始めるきっかけになってもらえるとありがたいです。


CP+連動企画、「電視観望技術を利用して天体写真を撮影してみよう」ですが、前回は撮影方法についていくつか検討しました。


結論としては、
  • 電視観望利用で画像処理が楽になるとしても、やはり撮影時に解決できることは、撮影時にやってしまおう
ということです。
  • 経緯台でも赤道儀でもディザーはあった方がいい、
  • 露光時間を伸ばしたいならオートガイドも必須
といったところでしょうか。

今回は、実際に長時間撮影撮影した画像について議論します。具体的な処理方法はCP+で説明するとして、その直前くらいのところまでです。


その前に一つ、SharpCapのちょっと便利な、多分あまり知られていない機能の説明をします。


「フォルダーモニターカメラ」で撮影した画像の救いだし

これまで撮影中に突然車のヘッドライトが当たるとか、ものすごい明るい人工衛星が通ってせっかく貯めたライブスタック画像がダメになり、最初からライブスタックをやり直したとかいうことはないでしょうか?

そんなときに、もし下部のライブスタック画面の「Controls」の「Raw Frames」で「SAVE all」を選んであると、保存されたRAWファイルから、ライブスタック画像を復元させることができます。
  1. まず、メニューの「カメラ」から「フォルダーモニターカメラ」を選びます。
  2. 次にフォルダを選択しますが、これは復活させたいRAWファイルが保存された場所を選んでください。以前すでにフォルダを選択しているときは、撮影画像が表示された状態になっているかもしれませんが、右パネルの「カメラコントロール」からフォルダを選択し直すことなどもできます。
  3. フォルダの中にあるファイルをどれか1枚選びます。例えば1枚「.fits」ファイルを選びます。
  4. fits形式を選んだ場合は、次に下部に出てくる「All .fits Files」ボタンを選ぶと、フォルダが選択できます。
  5. フォルダにある最初のファイルが画像としてSharpCap上で表示されます。ストレッチなども後掛けすることができます。
  6. 右パネルの「カメラコントロール」をさわることで、ファイルの連続表示を進めたり、途中でスタックが進んでいくのを止めたいとか、進行をコントロールすることができます。
  7. この状態でライブスタックをオンにして、カメラコントロールの三角マークの再生ボタンを押すと、自動的にフォルダ内のファイルを連続して読み込み、ライブ(?)スタックされていきます。ディザー時に保存された短時間露光のファイルは条件が違うせいか、(ラッキーなことに)うまくスタックできないことが多く、たいていはまともに露光したものだけがスタックされていきます。
  8. ここでこれまでほとんど役に立たなかった「フレームレート」が役に立ちます。適当に1秒とか、2秒とかすると、その時間間隔でファイルを更新してくれます。
  9. この時のライブ(?)スタック結果などは、通常のライブスタックのように、実行した時の日付や時間ごとのフォルダが改めて作成され、設定してある形式でファイルが改めて保存されます。

これを応用することで、
  • これまで溜め込んだファイルを全部あるフォルダにコピーして、超長時間で再スタックするなども可能になります。
  • 途中で車のライトや人工衛星の軌跡など、失敗したファイルを除いて再スタックすることも可能です。
  • SharpCapで撮影した画像に限らず読み込めるので、PI、SI、Siril、DSSなどに代わって、簡易スタックアプリとして使うのもいいかもしれません。
いろんな応用方法を考えることができると思うので、各自いろいろ試してみるといいでしょう。


ライブスタックでの長時間撮影

今回のCP+のセミナーに使うために、何度か長時間撮影を試しました。まとめがてら、少し検討してみます。

撮影時の共通項目としては
  • 赤道儀がSA-GTi
  • 三脚はSA-GTiに付属のもの、但しハーフピラーは外しました
  • 鏡筒はEVOLUX 62EDに専用レデューサーをつけて、焦点距離360mm
  • カメラがUranus-C Pro
  • 撮影はSharpCapでライブスタックを使用。
くらいでしょうか。

いくつか変えた撮影条件ですが、
  1. 1分露光、ゲイン220+CBP
  2. 1分露光、ゲイン220+CBP+UV/IRカットフィルター
  3. 1分露光、ゲイン0+QBP III
となります。順に見ていきます。


撮影1日目

まず最初にテストしたのは、ここまでの記事で示していた
  • 1分露光、ゲイン220+CBP
です。下はスタックなしの1枚のみの画像です。

frame_00001_60s

トータルで1分露光の短時間画像となりますが、この時点で構成周りの青ハロが見えています。CBPは青の波長域をかなり通すのですが、
  • 鏡筒が持つ青ハロをCBPではカットしきれない
ということになります。そこで、少し青側をカットしてやる目的で、UV/IRカットフィルターを入れることにしました。UV/IRフィルターは1.25インチのものを使い、下の写真のようにカメラのT2ねじのところに、薄型のT2->Cマウントのアダプターで固定しました。
IMG_8994

固定といっても、ネジをはめ込みすぎるとセンサー側に落ちてしまうので、教頭に固定するまではカタカタ揺れています。またネジの途中で止めるので、教頭にはめるときのねじ込みが浅くなり、落下の危険性も出るので、あくまで自己責任でお願いします。

注) : 「電視撮影 (その1): 機材の準備」編の時に初出で紹介したフィルター取り付け方法ですが、おそらくこのレデューサーと鏡筒の間に48mmのものを取り付ける方が正式だと思います。ただ、訂正記事で書いたように、ネジが緩んで鏡筒側から外れて、その際にレデューサ側にはまりこんでしまうと、取り外すのにかなりの苦労をします。なので、今回の上の写真のように1.25インチサイズを使用する方法を取りましたが、これはきちんとした固定法ではないはずです。48mmで外せなくなった時の大変さと、1.25インチで落下などの危険性を認識した上で、どちらか取り付け方法を選ぶ必要があると思います。もしくは、私が勘違いをしていて、もっと正しい方法がある可能性もあるので、他にいい方法があればコメントなどで教えていただけるとありがたいです。


さて、1日目の撮影は雲が出てきてしまったので、短時間撮影でおしまいです。


撮影2日目

とうわけで、撮影2日目、長時間露光は
  • 1分露光、ゲイン220+CBP+UV/IRフィルター
という構成で開始しました。この状態で60フレーム、合計1時間ライブスタックで撮影したものが以下になります。強目のストレッチにしています。

Stack_60frames_3600s_19_43_27_WithDisplayStretch

撮影は一通り終えて、その後に画像を仕上げる過程で、5つ問題点が見つかりました。
  1. 青ハロが全然改善していないこと
  2. UV/IRカットフィルターによる、緑色の大きなハロが右の明るい恒星周りに、新たに出てしまっている
  3. 明るすぎることによる極度に飽和した恒星周りに白いハロが出ている
  4. 明るすぎることによる一部の恒星中心部の飽和
  5. 明るすぎることによる星雲中心部の飽和

背景の淡いところはそこそこ出ているのですが、恒星部が明るすぎます。恒星の多少の飽和は許容しても、画像処理である程度はなんとかなるのですが、これは許容範囲を超えていました。

Uranus-CでHCGがオンになるの220としたのですが、これだと感度が高すぎるようです。かといって、中途半端にゲインを下げると、ダイナミックレンジで損をします。露光時間を短くしてもいいのですが、読み出しノイズの観点からは、トータル撮影時間が同じならば、1枚あたりの露光時間を伸ばした方が得をしますし、あまり撮影枚数が多くなっても、ディスク容量を食いますし、再処理の時とかに負担になるかもしれません。

これらのことから、次の撮影は以下のようすることにしました。
  • 露光時間は60秒のまま、アナログゲインを220から0とする
  • CBPでは一部青ハロが残ったので、青領域をもう少し制限したQBP IIIとする
  • 余分なハロを防ぐために、UV/IRフィルターも外す

QBP IIIフィルターは1.25インチのものを、上で示したようにカメラ側に取り付けます。

実はこの撮影2日目は珍しく晴れたと思って結構焦っていて、上記のような検討がまだ十分にできていない状態で長時間撮影に臨みました。この設定で実際2時間以上の撮影をしたのですが、上記問題により結局お蔵入りです。2時間は結構長いので、今後は画像処理においては1時間撮影画像をデフォルトとします。


撮影3日目

撮影3日目は、前回の記事に使った、色々な設定での撮影方法を試しました。ブログに載せたのは6+1で7通りですが、実際には17通りの設定を試して、記事として意味のある7通りを選んでいます。

記述しなかったことの一つはシグマクリッピング機能についてですが、先に説明した「フォルダーモニターカメラ」で再ライブスタックすることができるなら、撮影時にオンにしてもオフにしても後からどうとでもなります。実際には長時間撮影で枚数を重ねるので、1枚のみに載った人工衛星の軌跡などは、シグマクリッピング機能がオフでもほとんど目立たなくなります。それでもオンとオフで少し差は出るので、オンにしておいた方が無難でしょう。

もう一つは「Hot and Cold Pixel Remove」機能のオンオフでどう違うかです。このカメラでは結局「Hot and Cold Pixel Remove」も「Hot Pixel Remove」も「なし」もほとんど違いがわかりませんでした。ただしカメラによっては、特にホットピクセルを多く持つカメラを使う場合にはこの機能が効くと思われます。別途RAWファイルを一からスタックするなど、その際にダーク補正をする場合はこの機能はオフの方がいいのですが、ライブスタックで簡単にスタックする場合はこの機能はオンにしておいた方が楽な場合が多いかと思われます。


撮影4日目

天気が悪くて少し間を置いたのですが、運よく晴れた撮影4日目、前述の通り
  • 1分露光、ゲイン0+QBP III
という設定で、60枚ぶん1時間の撮影をします。撮影後のSharpCapのオートストレッチした画像です。ここでのオートストレッチは具体的には以下のようになります。
  1. ライブスタック画面の「Histgram」タブの右下にある「Stretch Mode」を「6」にして
  2. ライブスタック画面のカラーバー下の雷マークのホワイトバランスアイコンを押し
  3. さらに右側パネルのヒストグラムでオートストレッチをして
  4. ライブスタック画面の左側の「Action」の「Save」ボタンで、4つ目の「Save exactly as seen」で画面で見たままの状態を保存しています。
Stack_60frames_3600s_21_00_44_WithDisplayStretch

2日目の撮影時に比べて、1枚当たりの露光時間は同じですが、ゲインが220から0になっているので、220[0.1dB] = 22 [dB] = 20 +2 [dB] = 10x1.26 = 12.6倍と、明るさが1/12.6 ~ 0.08で約8%程と、2日目の画像に比べて結構暗くなっています。

2日目のところで挙げた5つの問題点がどうなったかを見てみます。
  1. 青ハロはほとんど目立たなくなりました。CBPからQBPへの変更が効いているようです。
  2. 緑色の大きなハロも無くなりました。UV/IRカットフィルターを外したことが効いていると思われます。
  3. 恒星の飽和による白ハロはなくなりました。
  4. 恒星の飽和は一見なくなっているかに見えますが、実は明るい星の極中心はまだ飽和しています。ゲインは0なのでもう下げられないです。露光時間を下げることはできますが、後述するように、読み出しノイズが見えてきてしまっているので、これ以上露光時間を短くするのは危険です。
  5. 見た目をかなり明るくしているのでわかりにくいですが、ストレッチした状態でも星雲中心のトラペジウムも十分生き残っています。
trapegium

と、恒星の中心部のわずかな飽和以外はほとんど改善されていることがわかります。


淡い分子雲部分の検討

心配なのは、ゲインを0にして暗くしたことで背景の分子雲がどこまで読み出しノイズに埋もれるかです。最淡の部分を見るために、別途RAWファイルから別ソフト(PixInsight)でさらに強あぶり出しをした画像です。
more_Stack_16bits_60frames_3600s_21_00_44
3日目撮影のアナログゲイン0の画像。

この画像と、2日目に撮ったアナログゲインが220の場合の画像(下)と比べます。
more_Stack_16bits_60frames_3600s_19_43_27
2日目撮影のアナログゲイン220の画像。

2枚の淡い部分を注意して比べてみると、アナログゲインが0の時は読み出しノイズの横縞っぽい模様が見えているのがわかります。最淡の部分は、明らかにアナログゲイン220の時の方がよく出ていることがわかります。画像処理の最後の最後の淡いところのあぶり出しの時に、この差2枚のは効いてくるかもしれません。

ただし、飽和に関してはゲイン220の時だと(実際に画像処理をしてみた後の感想ですが)画像処理に困るくらいのレベルなので、やはり明るすぎです。こう考えると、アナログゲインを220にして、30秒とか、20秒という露光時間が最適解なのかもしれません。もしくは、今回撮影したアナログゲインが220と0の場合で、HDR合成というのが一つの解なのかもしれません。いずれにせよ、オリオン大星雲は明るい中心部からから暗い分子雲まで、広いダイナミックレンジが必要な対象で、初心者からベテランまで広範囲にわたって楽しめる、天体写真撮影にとって冬の代表的な「大」星雲といえるでしょう。


まとめとセミナー当日に向けて

ブログ記事としての今回のCP+のためのテスト撮影はこんなところです。撮影に際して露光時間とゲインの十分な吟味が必要なことが伝わってくれたのなら、私としてはとても嬉しいです。

実際の画像処理まで進めると、撮影時のパラメータ次第で困難な状況にぶち当たり、次回はこんなパラメータで撮影してみようなどと実感するはずです。最初から最適パラメータを選ぶことができればいいのですが、やってみないとわからないことも多いのでなかなか難しい現実もあり、このような試行錯誤は仕上がり具合にかなり効いてくるはずです。

もう新月期もすぎてしまい、これ以上の撮影も難しくなってきました。今日までにすでになん度も試していますが、あとは画像処理を繰り返し試すのみです。40分という時間内にいかにうまく実演ができるか、まだかなり練習が必要そうです。その結果はセミナー当日の2月24日(土)の13時20分から、実際の画像処理の様子でお見せできればと思います。



後日オンラインでも配信される予定ですので、後から拝見されてもいいのですが、お近くの方はよろしければ当日横浜アリーナまでお越しいただければと思います。その際は、CP+2024の事前登録(無料)をお忘れなく。

会場ではぜひ直接お話などできればと思います。私は金曜午後くらいには会場入りし、土曜は夕方くらいまでいる予定です。サイトロンブース周りでうろうろしていると思います。一応「Sam」と書いたネームプレートを首から下げるようにしますので、もし顔を見たらお気軽にお声かけしていただければと思います。


CP+セミナー事前打ち合わせ

最後にですが、なんでこんなことをしようと思ったのかについて書いておこうと思います。

今回CP+のセミナーを引き受けるにあたって、内容を決める際にサイトロンのスタッフさんとまず話したことは「入門者や初心者で画像処理に困っている人は思った以上に多いのではないか」ということです。

以前小海で開催された「星と自然のフェスタ」サイトロンさんブースでお手伝いしたときの経験が元なのですが、電視観望で撮影して、その場でできるくらいの画像処理をした時のことです。一番最初の本当に簡単な炙り出し(オートストレッチ)の段階で「オォー!」という声があがりました。これは私にとって結構意外なことでした。だって、まだ最初の最初のあぶり出し段階です。もっと後から細かいところが見えてきたりするのが待っているのに、最初からこんなに声が上がったら、あとはどうなるのか??? でもその後は、もっと複雑な画像処理プロセスでも、最初のときほど声が上がることはなかったのです...。

星まつりなので、天体画像の処理なんてことを見たこともない一般の方もいらっしゃったと思います。電視観望に興味がある入門者が多かったこともあるでしょう。ブワッと星雲が出てくる様子は、かなりインパクトがあったのかと思います。それで考えたのが、
  • もしかしたら初心者で画像処理のことを知りたい人はかなり多いのではないか?
  • 電視観望から初めて撮影に手を伸ばしたとしても、撮影した画像処理の敷居もまた高いのではないか?
  • 例としてある程度の画像処理の一連の方向性を示すのは、初心者にとっては指標になるのではないか?
などです。

望遠鏡で星を見始めると、誰もが見たものを記録しておきたいと思うはずです。リストを作るのも、手でスケッチするのもいいでしょうし、本格的に写真撮影でもいいでしょう。せっかく記録するのなら、後から綺麗に見えたほうがいいと思うのも、ごく自然な流れでしょう。これは眼視でも、電視観望でも、本格撮影でも、ごく自然な欲求なのかと思います。それならば、天体写真の敷居を下げるべく、電視観望の技術をうまく使い、天体写真を残す方向を探ってみようと思ったのが、今回のセミナーを引き受ける際に考えたことです。

でもセミナー時間は高々40分です。撮影技術を全部話すことは難しいので、今回は画像処理をメインにしてみようと思います。画像処理は実際のやり取りを動きで見てもらったほうがいいと思ったからです。その代わり、撮影の細かい技術は事前に試して、ブログに書いておこうと。

ブログには今回を含めて5回の記事で、天体写真に興味を持った人が始めるところから、実際に撮影が終わるくらいまでをまとめることができました。あとはセミナー本番、うまくいくといいのですが...。

セミナー終了後、画像処理についてまとめました。










先日お知らせた、CP+とほしぞloveログの連携企画

電視観望技術を利用して天体写真を撮影してみよう

ですが、いよいよ開始します。企画名は略して「電視撮影」として、今回の記事のタイトルにも使っています。今回は (その1) で、機材の準備です。

記事としては、今回紹介する機材を用いてCP+当日までにオリオン大星雲の撮影をし、その過程をブログで公開していきます。セミナー当日は時間が限られると思うので画像処理をメインに見せたいと思っています。セミナーを聞いた人も、撮影に興味が出たらブログを見てもらうように誘導するつもりです。


機材選択

セミナーを引き受けたあとに、具体的にどのように進めるかをサイトロンのスタッフさんと一緒に相談したのですが、ここでポイントとなったのは「入門者でも手が出せる天体写真撮影機材を使おう」ということです。

天体写真の撮影はなんだかんだ言って敷居が高いです。初めて撮影に挑戦する方を想定して、電視観望を利用して技術的に敷居を下げることだけでなく、機材に関しても「撮影ができるクラス」で「手の出しやすい価格帯」のものを選択することにしました。その結果、
  1. 赤道儀: SkyWatcher Star Adventurer GTi
  2. 鏡筒: SkyWatcher EVOLUX 62ED + ED62 Reducer
  3. カメラ: PlayerOne Uranus-C Pro
という機材を選んでみました。

1. Star Adventurer GTi、略してSA-GTiは1年ほど前にSkyWatcher社から発売開始された赤道儀で、2軸制御としては三脚込みで税込9万円台前半と、最安の部類になるかと思います。もっと安いのだと、同じSkyWatcher社のこれまた最安クラスの自動追尾経緯台に「AZ-GTi」というのがあるのですが、これはファームウェアを書き換えることで赤道儀モードで使うことができます。ただし赤道儀動作はメーカーオフィシャルではないためかなり敷居が高く、少なくとも初心者にお勧めできるものではないと思います。SA-GTiはある意味、AZ-GTiのメーカーオフィシャルな赤道儀としてアップグレードされたものと言えるのかと思います。

2. 鏡筒に関しては名前にEDと冠しているように、アクロマートクラスとは一線を画したもので、専用レデューサも発売されているように、明らかに写真撮影を意識したものです。「レデューサ」とは、焦点距離を短くして視野を広げるためのものですが、同時に星像を改善する働きを持たせていることが多いです。今回も撮影を目指すので、画面四隅の星まで綺麗な点になることを願って、62ED専用のレデューサを使うことにします。鏡筒が実売約6万円、レデューサを入れても約10.5万円と、撮影鏡筒としては安価な部類に入ります。初心者がはじめに手にいれる撮影用鏡筒としては手頃で、いい選択肢ではないのかと思います。

ちょっと心配なのはこのEVOLUX 62ED、シュミットの販売ページに行っても在庫切れで、他のショップやAmazonでも在庫切れやお取り寄せとなっているところばかりです。3年前のCP+でEVO GUIDE50での電視観望を紹介して、その後しばらくの間、肝心のEVOGUIDEが在庫切れという状況が続いたことを思い出してしまいました。もちろん今回CP+で見せようと思っている画像処理の方法は、他の鏡筒でも問題なく応用が効くので、お手持ちの鏡筒で構わないのですが、もしかしたら在庫有りのものにしたほうが良かったのかもしれません。

3. カメラですが、今回の目的が撮影ということなので、冷却タイプのCMOSカメラを選びました。冬季ということでそもそも冷えていることと、撮影も入門用に簡単にということでそこまで露光時間を長く取らない予定なので、ダークノイズはそこまで効かないでしょう。またホットピクセルやコールドピクセルもPlayerOneのカメラの特徴のDPS (Dead Pixel Supressioin) 機能で軽減されるので、冷却は必要ないかもしれません。それでも今後撮影に進んでいくと、一枚一枚撮影しダーク補正をする可能性は高く、冷却を選んでおくに越したことはありません。もう一つは冷却そのものというよりは、「一定の温度で撮影できる」ということが、温度管理という意味で便利だったりします。


赤道儀SA-GTiの組み立て

最初は赤道儀Star Adventurer GTiの組立です。日本語版のマニュアルが同封されているので、基本的にはマニュアルを見て進めていけばいいでしょう。

1. 箱から三脚を取り出し足を広げます。三角受け皿をはめ込み、回転させて固定します。
2. ハーフピラーを三脚の上に載せ、三脚上部から出ているネジを締め、固定します。
IMG_8929

3. ハーフピラー上部の3つのネジを緩めて、接続部を外します。
4. 赤道儀を箱から取り出し、上で外したハーフピラー上部を赤道儀本体底部ににねじ止めします。
5. 赤道儀をハーフピラーの上に載せ、ハーフピラー上部の3つのネジを締めて固定します。
6. 赤経体の経度を日本の35度付近に合わせます。赤経体が上下に動くように、赤道儀本体左右についている2つの大きめのネジが緩んでいることを確認(箱から出した直後は全て緩んでいました)して、前部についているネジを締めながら赤経の角度を35度付近にまでします。
IMG_8931

7. ウェイトバーを取り付けますが、ここで少し迷いました。マニュアルにあまりはっきりと書かれていませんが、バーの根元に取り付けるアダプターの上下に注意です。ウェイトバーがアダプターにすっぽりハマる向きに取り付け、その後ウェイトバーを赤道儀本体に取り付けます。

IMG_8971

機械的な組立はこれくらいです。

次に電源についてです。電池駆動もできますが、撮影中はどうせ冷却カメラに12V電源を使うことになるので、赤道儀、冷却カメラともに12Vの外部のDC電源を使うことにしました。

ちなみに、電池駆動する時の場合の手順です。こちらの方が少し迷うかもしれません。
  1. インターフェースパネル下のネジを外して、インターフェース部分を取り囲んでいるカバーを外します。
  2. 極軸望遠鏡のカバーを外し、電池ケースを2つ取り出します。(注1. 極軸望遠鏡のカバーを外さないと、電池ケースを取り出すことができません。外れないからと言って、無理に引っ張って壊さないようにしてください。)
  3. それぞれのケースに4本、計8本単3電池を入れます。電池は受電式のものでも十分稼働します。
  4. ケースを赤道儀本体に戻します。(注2. その場合、極軸望遠鏡のカバーができなくなりますが、これは液漏れを防止するための仕様とのこと。)
あと、付属のUSBケーブルを挿しておきます。PCとはこのUSBケーブルを介して接続します。
IMG_8965

赤道儀の組立はここまでです。


鏡筒とレデューサー

鏡筒のEVOLUX 62EDですが、どうやら日本ではあまり本数が出回っていないのかもしれません。日本語のレビューなどを探してもごくわずかしか見つかりません。専用ケースが付いてくるようですが、今回私の場合はデモ機をお借りしているので、専用ケースはありませんでした。

まずは鏡筒本体に鏡筒にレデューサをつけます。鏡筒接眼側についている、緑のアダプターを回転させ外します。

ここで、必要ならばフィルターを鏡筒側に取り付けます。取り付けることができるのは48mm径のもので、後に詳しく書きますが、今回はCBP(Commet BandPassフィルター)を取り付けました。

IMG_8951
CBPを鏡筒側に取り付けた様子。

(2024/2/4追加) [[注意]] 初出の記事で、フィルターをこの位置に入れると書きましたが、レデューサ側にはまり込んででしまうとものすごく外しにくくなることがわかりました。カニ目レンチなどがあれば頑張って外すことはできますが、かなり大変なのと、フィルターを傷つける可能性があるので、フィルターを入れる位置は再考します。

フィルターを挟み込むようにして、レデューサを鏡筒本体に取り付けます。下の写真のように、レデューサーの字の向きが鏡筒の字の向きと逆になりますが、これが正しいです。

IMG_8952


CMOSカメラの接続

次にカメラと鏡筒の接続です。

Uranus-C Proには17.5mmと20mmの延長アダプターがついています。さらに、カメラのシャーシ端面からセンサー面までの距離は17.5mmとのことです。ここで、63ED レデューサーに必要なバックフォーカスを調べてみると、55mmだとわかりました。レデューサの「後端」から測って、55mm伸ばしたところに「センサー面」が来ればいいということになります。先ほどの距離を足してみると、17.5+20+17.5 = 55mmで、何とちょうど55mmとなるではありませんか。これは、最近の鏡筒のバックフォーカスは55mmのものが多いので、カメラの方でそれにうまく合うようなアダプターを付属しているというわけです。

とうわけで付属のアダプター2つを挟んでカメラをレデューサの後ろに取り付けます。ネジは全てT2と呼ばれるカメラ界隈で使われている規格で、径42mm ピッチ0.75mmになります。

IMG_8953

CMOSカメラの電源ですが、メインはUSBで供給されます。コネクタはType-Cです。露光時間が長いので、USB2.0でもなんとかなると思いますが、転送速度はやはり早い方がいいので基本はUSB3.0以上で接続した方がいいでしょう。冷却用のDCの12V電源も別途必要になります。撮影用のバッテリーを一つ買うといいと思います。下の写真のようなDCジャックができれば複数付いているバッテリーを選ぶといいでしょう。

IMG_8974

これで赤道儀SA-GTiも駆動できるようになります。

バッテリーとCMOSカメラ、赤道儀を接続するDC電源用のケーブルも必要です。ケーブルを選ぶときに、オスメスを間違えないように気をつけてください。今回のように、通常はオス-オスタイプが必要になりますが、実際に売っているのはオス-メスタイプが多いので、そんな場合はオスメス変換のアダプターを一緒に購入するといいでしょう。

IMG_8975

これで鏡筒とカメラの準備は完了です。


赤道儀に鏡筒を載せてみる

鏡筒部を赤道儀に載せてみましょう。鏡筒にはアリガタプレートが最初から付いているので、そのまま赤道儀に取り付けることができます。
  1. まずは赤道儀のウェイトのネジを緩め、ウェイトバーの下の方までウェイトを十分下げて、再びネジを締め固定します。赤経体のネジを緩めて、ウェイトをぷらぷらさせ、手を離して一番下に下がるところで赤経体のネジをしめます。
  2. 赤緯体のネジを緩めて、鏡筒を乗せたときに真っ直ぐ上を向くくらいの位置までアリミゾ部を回転させ、再び赤緯体のネジを締めます。
  3. アリミゾの所のクランプネジを緩めて、鏡筒のアリガタのところをアリミゾ部にはめ込んで、再びネジを締めて固定します。一度ゆっくり手を離してみて、落ちたりしないか確認し、さらに鏡筒部をつついてグラグラ動いたりしないか確認します。
  4. 赤経体のネジを緩めて、さらにウェイトのネジを緩めて、赤経体を回転させ、水平になるように持っていき、ウェイト位置を中央側にずらして、赤経体のバランスをとります。手を離しても赤経体が回転しないところを探してウェイトのネジを締め固定します。
  5. 赤経体は水平のまま、一旦赤経体のネジを締め水平からずれないように固定します。
  6. 次は赤緯体のネジを緩めてバランスをとります。鏡筒が落ちたりしないように注意しながら、アリミゾクランプのネジを少し緩めて、鏡筒部を前後に動かして、手を離しても回転しないところを見つけてください。手を離す際は「毎回」アリミゾクランプのネジを締めるのを忘れないようにしてください。油断すると鏡筒が地面に真っ逆さまになります。
  7. 赤経、赤緯の重量バランスが取れたら、赤経体のねじ、赤緯体のネジを緩めて元のホームポジション(鏡筒が上に来るように赤経体を上に戻し、赤緯体は鏡筒先端が北を向くようになるような位置です)に戻し、再びネジを固定しててください。

ガイド鏡

今回の撮影では、長時間撮影しても視野がずれていかないように、オートガイドと呼ばれる手法を用います。別途もっと視野の広い焦点距離の短い望遠鏡とカメラを用意して、1秒程度の短時間露光で常に画角を確認して、ずれたらそれを補正するようなフィードバック信号を赤道儀に返します。

そのためのガイド鏡を用意しておきます。ガイド鏡の「鏡」は望遠鏡からきていますが、今回は安価な監視カメラ用のCマウントレンズ(実際にはCSマウントレンズで、延長アダプターをつけてCマウントとしています)を使いました。ガイド鏡はメイン鏡筒の焦点距離の10分の1程度の焦点距離があれば十分です。今回はメイン鏡筒がレデューサーをつけて360mmなので、ガイド鏡の焦点距離は50mmとしました。こういったレンズはアマゾンなどで「cマウントレンズ」と検索すると簡単に手に入れることができます。

カメラは手持ちであったPlayerOneのNeptune-Cを使います。

ガイド鏡は、カメラにL字の適当な金具をつけ、底にアルカスイス互換のクランプをつけます。一方鏡筒側には、鏡筒付属のアリガタにアルカスイス互換のプレートをとりつけました。これらもアマゾンで「アルカスイス」と検索すると、安価な互換品を簡単に手に入れることができます。これで着脱も自由です。

IMG_8967


まとめ

全てを組み上げた全体図になります。

IMG_8956

今回の機材はあくまで一例です。機材はお手持ちのものがあれば、もちろんそれらを使えばいいかと思います。

初めて天体機材を触る場合は、最初の組み立ては昼間の明るいうちにやっておいたほうがといいと思います。最初はなかなかうまくいかなくて、組み上げるだけでも大変です。暗い中ではさらに大変になります。あせらずに、余裕を持って、時間をかけて組み立ててみてください。

一応これで、機材の準備は完了です。次回はPCを接続して電源を入れてみましょう。いよいよ望遠鏡の像を見ることになります。











なんか来た!

IMG_8922

中身はというと、まずはSkyWatcherのStar Adventurer GTiです!
IMG_8924

さらに、鏡筒が同じくSkyWatcherのEVOLUX 62ED、
IMG_8936

専用 ED62 Reducer
IMG_8959

冷却CMOSカメラはPlayerOneのUranus-C Proです。
IMG_8960


天体写真撮影ための入門機クラスの機材をフルセットと言っていいかと思います。

さてこれがなんのための機材かというと、昨日お知らせしたCP+2024でのセミナー

の準備として、サイトロンさんからお借りすることができたものです。

せっかくの新規機材なので、これからしばらくの間、これらの機材を用いて画像撮影する過程を公開する

「CP+2024」と「ほしぞloveログ」
の連動企画

を開始します!CP+までに、本ブログにて機材の組み立てから撮影に至るまで、少しづつ記事にしていこうと思っています。名付けて

「電視観望技術を利用して
天体写真を撮影してみよう」

としたいと思います。

そしてCP+会場にて、

「画像処理でオリオン大星雲の分子雲を
あぶり出してみよう」

として、当日までに撮影した画像を、セミナーにてその場で画像処理してみたいと思います。

本番まであと1ヶ月もないですが、一番の敵は天気です。私は富山在住なのですが、冬の北陸は滅多に晴れてくれません。今週少し晴れる予報ですが、まだ満月期です。上手く晴れてくれて、撮影を終えることはできるのか?乞うご期待!










天文ファン、カメラファンの皆様、いかがお過ごしでしょうか?いよいよCP+の時期が近づいてきましたが、

今年もサイトロンさんに講演依頼を頂き、
CP+2024で話すことになりました!

タイムテーブルなど、詳しくはこちらのCP+のオンラインプログラム一覧の2.24(SAT)のタブをご覧ください。



今年はなんと、現地であぷらなーとさんとの連続講演になります。


セミナー情報


2024年2月24日(土) 13:20-14:00

パシフィコ横浜 CP+2024
「サイトロンジャパンブース」
(オンライン配信あり)


「画像処理でオリオン大星雲の分子雲を
あぶり出してみよう」

元々、リアルタイムで星雲星団を見ることを目指して開発されてきた電視観望ですが、近年はその延長で天体写真撮影へと手を伸ばすことも盛んになっています。本来とても手間のかかかった天体写真撮影ですが、電視観望のライブスタックなどの技術をそのまま使うことで、かなり敷居の低いものになってきています。

今回の講演では撮影方法について少し紹介し、実際事前にライブスタックで撮影したオリオン大星雲を例に、セミナー会場で画像処理をしてみたいと思います。

まず最初にお見せしたいのは、星雲本体を鮮やかに出してみること。暗い中から星雲がブワッとあぶり出される様子は、天体写真をまだ扱ったことがない方には圧巻かと思います。

次は、特に初心者がつまづきやすい星雲周りの淡い分子雲をあぶり出すことです。画像に隠れている情報をいかに引き出すか、実際に操作を見せながら、なぜその操作が必要なのか、その理由をわかりやすく説明しようと思います。こちらは画像処理を始めたくらいの方から、背景までこだわった天体写真を目指そうとする方などに参考になるかと思います。

普段私はブログ記事の文章がメインで、あまり動画など 配信しないので、私自身にとっても動作そのものを見せることができる貴重な機会になりそうです。オンライン配信されるとのことなので、後日繰り返し見ることができればより理解も進むかと思います。その中で何か得て頂くものがあればと思います。

私の会場入りは前日の金曜日午後くらいからです。土曜日は講演終了後もしばらくCP+会場にいますので、私の姿を見つけた方はお気軽にお声掛けください。一応いつものネームプレーをとぶら下げておくことにします。

私のセミナーの後に、同じくサイトロンブースにて14:35から15:15まであぷらなーとさんのセミナーがあります。タイトルは「リーズナブルな天体望遠鏡で星雲撮影を楽しむ方法」とのことです。あれ?もしかして少し内容が被るかな?とも思いましたが、独自路線のあぷらなーとさんなので、そんな心配は杞憂ですね (笑)。


現地パシフィコ横浜会場にいらっしゃる方は、来場登録をお忘れなく。
 


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