ほしぞloveログ

天体観測始めました。

カテゴリ:観測・撮影 > 電視観望

福島の星まつりで見た「北軽井沢観測所」のアイピースを利用した縮小光学系、買ってしまいました。福島で見せてもらった秒単位で撮影した星雲星団。8倍の明るさになるとのことで、かなり反応速度の速い電視観望やS/Nのいい撮影が可能にになるはずですが、実際に使ってみてどうだったのでしょうか?


北軽井沢観測所

北軽井沢観測所のアイピースは、昔星まつりでジャンクで安く出ていたものを2本だけ持っています。紫がトレードカラーで、ラベンダーから撮ったと思いますが「Lavendura」という名前を冠しています。もともと個人の趣味が高じて販売までされているという、非常にこだわった高性能のアイピースです。視野はそこまで広くないですが、歪みがとても少ないのが特徴です。焦点距離が50mmや68mmという長いものまでラインナップがあり、この「長焦点アイピース」と「短焦点Cマウントレンズ」を使って縮小光学系を組みます。アイピースとレンズの焦点距離の比が縮小率、明るさで言うと倍率になります。

今回購入したセットは、63mmのアイピースと、アイピースの先につけてカメラを繋ぐ専用の金属の延長筒になります。
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Cマウントレンズは手持ちの8mmのものを使うことにしました。このセットアップで63mm/8mm = ~8倍の明るさになるとはずです。

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繋げてみると、アイピースが最後まで入り切らずに金属筒の途中で止まります。中に入りすぎないよう適した位置になるように、金属筒の中に加工がしてあるようです。アイピースは金属筒に付属のネジで固定しますが、アイピースの表面が傷つかないか心配です。ネジは先端が丸く加工されているもので、今のところ傷らしきものは見えていないです。カメラ側は内径が2インチになっていて、カメラの2インチのリングを利用してネジで固定します。

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鏡筒

鏡筒をどうするか考えていたのですが、まずはC8で試すことにしました。口径が大きいこと、F10と暗いので8で割ると1.25になる計算です。この縮小光学系のF値はカメラ前に取り付けるCマウントレンズのF値で制限されるとのことです。今回のレンズはF1.4なので、1.25はすでに明るすぎで、少し倍率を抑えてもいいくらいかもしれません。C8の2000mmの焦点距離は2000/8 =  250mm程度になるはずです。多少の倍率はアイピースとレンズ間の距離を変えることで変更できるとのことですが、どのくらい変わるかなど実際に試してみないとわかりません。

鏡筒に取り付けてみますが、かなり長く、そこそこ重いので、赤道儀に乗せる際に前後の重量バランスに注意する必要があります。今回もか鏡筒をなり前にして固定しました。
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CMOSカメラ

当然なのですが、いくら縮小してみるといえども視野がそこまで広がることはなく、例えばフルサイズのカメラをつけても周辺が全部見えるようになるわけではありません。どれくらいの視野まで見えるか分からないので、とりあえずそこそこの視野があるASI294MCを取り付け流ことにしました。周りが暗いならROIで必要なところをカットすればいいのかと思います。

視野だけで考えると、オリジナルのC8にフルサイズのカメラをつけた時の視野と、C8に今回の1/8の縮小光学系を取り付けた時に、例えばセンサーの一辺がフルサイズの1/8のカメラを使うとすると、結局は見える範囲は同じになり、単純に明るさが8倍になるというわけです。視野の増加はあまり期待せずに、明るさの増加を期待して、その代わりに狭い範囲を拡大してみるために分解能は犠牲になると思えばいいでしょうか。

C8で銀河の電視観望をしようとしたことがあるのですが、やはりかなり暗いです。ykwkさんなんかは長時間露光でかなり成果を出していますが、もう少し明るく見えたらというのが今回の狙いになります。視野がどこまで実用で見えるのかわからないのですが、焦点距離が250mmの鏡筒に1/1.2インチのUranus
-Cや1/1.8インチのNeptune-C IIくらいの面積まで見えるなら、網状星雲を全部入れるのは厳しいですが、北アメリカ星雲くらいの大きさのもはある程度全体像が見えるのかと思います。例え本当に中心しか見えないとしても、小さい天体が明るく見えるはずなので、かなり楽しみです。


視野について

まず、見える範囲は明るい円になるのですが、やはりかなり狭いです。見える円の直径が、マイクロフォーサーズのASI294MCで、長辺の3分の1以下くらいになります。

次に、周辺の星像が彗星の形のようにものすごい歪んでいるのですが、アイピースとカメラ間の距離を変えたりしましたが改善しません。結局これは、カメラにあえて取り付けたCマウントとCSマウントの変換リングアダプター問題であることがわかり、外すことでかなり点像に近くなりました。

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ASI294MCでみるとこれくらいの縁で見えます。
ASI294MCの最大解像度が4144x2822のはずなのですが、
勘違いして4144x2116で見てしまっています。

これでやっと星がまともに見えるようになったので、プレートソルブを試します。星が見えている面積が小さいためか、最初は全くうまくいきませんでした。そこで、明るい円が画面に広がるように、ROIを調整しました。元々4144×2822ありますが、1280x1024にすると円が画面いっぱい近くを占めるようになりました。それでも周辺は暗いままです。この状態でプレートソルブをかけますが、まだうまくいきません。焦点距離はすでに2000mmの8分の1の250mmにしてあります。ここで焦点距離を500mmに変更すると、プレートソルブがうまくいきました。後に400mmでもうまくいったので、8分の1まで小さくなっていないかもしれません。

上の画像にあるように、M27が入り込んでいて周りの星も位置がわかるので、Stellariumなどのプラネタリウムソフトと画面を比較して、星と星の間の距離から見積もって焦点距離を計算してみると、なんと256mmでほとんど設計通りでした。プレートソルブが250mmで動かなくてもっと長い焦点距離で動いたので、縮小率が出ていないかと心配してましたが、きちんと設計通りに出ているようです。ついでに明るい円の部分の視野径を見積もると、1.26度角となりました。元々C8とASI294MCで普通にみる場合は、32.83分角x22.35分角程度になります。60分角で1度角なので、視野は3倍近くにはなっているようです。8倍には当然ならないですが、少なくとも広がっていることはわかります。

そもそもこの明るい円ですが、鏡筒の視野で制限されているのか、カメラ前につけたCマウントレンズの視野で制限されているか、まだよくわかりません。カメラの仕様を見ると2/3インチまで対応だそうです。なので4/3インチのASI294MCでは半分くらいの視野になるはずです。見えている円はそれよりは小さいので、こう考えると鏡筒で制限されている可能性が高いです。今回いじらなかったところの一つが、レンズのピント調整リングです。レンズの焦点を無限遠に合わせたきり、変えませんでした。結局「アイピースで見えた像」を別レンズでマクロ的に見て焦点を合わせて、それをカメラに映していると考えると、レンズの焦点をもっと短く、数cmとかにしていいはずです。これでもう少し視野が広がるのかは、今一度試してみたいと思います。おそらく円周部でエッジがはっき見えるようになるかと思いますが、その分だけ見える範囲が広がるだけで、視野そのものは大きくは変わらないと思われます。


明るさについて

これ以降はROIを1280x1024にして、明るい円が画面にある程度広がった状態で見ることにします。

次の興味は肝心の明るさです。今回客観的な評価はできなかったのですが、焦点距離がほぼ設計通り1/8で出ているので、明るさも8倍程度出ていると思ってもそうおかしくはないでしょう。実際に明るいです。

ただ、電視観望で明るさをそこまで感じられるかというと、結局ライブスタックしてしまうと多少暗い鏡筒でもちょっと待てばノイズが減って綺麗になるので、そこまでありがたみは感じられないかもしれません。例えば下の画像は1.6秒露光で191枚、トータル5分程度です。流石に羽は見えていませんが、ラグビーボールの輪郭は余裕で見えています。
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ちなみにこの日は月齢12.5日ともう満月にかなり近く、しかも下の写真のように雲が常にあるような状態だったのでかなり厳しい環境でしたが、それでも上の画像くらいまでは簡単に写るので、やはりかなり明るい光学系というのは間違いないでしょう。
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ところで、なぜこんなに明るい光学系にこだわるかというと、理由は2つあります。
  1. 一つは最近の撮影経験から考えてです。私がよく撮影する自宅のような光害地では、背景光が明るくスカイノイズがひどいため、S/Nを上げるにはより多くの光子を必要とします。これは露光時間を伸ばしてもいいですし、明るい鏡筒を使っても同じことです。たとえ背景の明るい光害地においても、F値の低い明るい鏡筒はやはり正義なのです。
  2. もう一つは、リアルタイム電視観望をいつか実現したいとずっと思っているからです。元々HUQさんがやっていたα7Sを使った電視観望は、α7Sの8μm越えという巨大ピクセルサイズと、F値が1台の明るいレンズと、10万クラスの高ISOを活かして、リアルタイムで見えるものでした。当時はライブスタックもなかったですし、ミッドトーンストレッチで簡易画像処理をその場でやるというようなこともできなかったので、もう本当に力任せで多少ノイジーだったりもしました。それでも(ライブスタックとかではなく)リアルタイムで画角が動いていても星雲も一緒に動いて見えるというのは、インパクトがありました。現在の電視観望の主流が、ライブスタックでS/Nを稼ぐという方式になってしまっているので、本当の意味でのリアルタイム電視観望は新鮮に感じるはずです。


リアルタイム電視観望

2の意味で考えると、今回のテストにおいても、少し方向性を見せることができるかと思います。例えば下はM13:ヘルクレス座の球状星団の電視観望画像です。
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一見写りがイマイチな電視観望と思われるかもしれませんが、露光時間のところに注目してください。なんと250msです。これだと赤道儀コントローラーの方向ボタンにかなりリアルに反応して、画面が動くと星団そのものが動き、それでも星団だとはっきりわかります。導入時やプレートソルブ時に、星団がリアルタイムで入ってくるところは見ててちょっと感動しました。

続いて、露光時間400msのM27:亜鈴状星雲です。淡いですが、これもかなりリアルタイムに近い状態で反応し、画面が動いていてもきちんと星雲と認識できます。
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ただ、もう少しはっきり見えて欲しいと言うのも正直なところです。フィルターはとりあえず弱めのCBPの48mm径をアイピースの先端に取り付けて見ています。今回は満月に近い月と薄曇りでのテストだったので、空がマシならももっと良く見えるはずです。次回以降、もう少し良い環境で試してみたいと思います。

この日は、その後厚い雲に覆われてしまい、残念ながら撤収となってしまいました。


鏡筒とカメラの再考

最初とにかく口径の大きいものをと思っていましたが、あまり欲張らずに、まずはそもそも視野の広い鏡筒を選び、あまり縮小率を取らない方がいい気もしてきました。

例えば手持ちのTSA-120です。元々フルサイズでも十分撮影可能のなので、多少縮小しても大丈夫かと思います。縮小率ですが、現在68mmのアイピースと8mmのレンズを使っているので1/8程度になりますが、レンズを16mmにして、1/4程度にすると、元々のTSA-120のF値が7.5なので、1/4でF1.8程度になります。手持ちの16mmレンズのF値が1.8で制限されるようなので、ちょうどいいくらいです。TSA-120の焦点距離は900mmなので、こちらも1/4で225mmとなります。

もしくは、今回使ったC8に1/4の縮小光学系で、焦点距離500mmでF2.5にして、もう少し分解能を出す方向にしても良いのかもしれません。視野はまだ鏡筒制限なので実質変わりないか、もしくは次のレンズ制限になるかと思われます。

レンズは監視カメラ用の小さなCマウントのものなので、2/3インチまでのカメラに対応と明記されていて、視野角は限られています。手持ちだとNeptune-C IIが1/1.8インチ、ASI178MCが1/2インチ、あと惑星用カメラだと1/2インチを切ってきて1/3インチくらいまであるので、これらを使うのがいいかと思います。

ただし、カメラを固定流する金属筒の内径が2インチで、ZWOのカメラは2インチ外径の枠があるのでいいのですが、PlayerOneのカメラはそれに該当する枠がないので、取り付けは何か工夫をしなくてはいけません。T2と2インチの変換アダプターがあればいいのかと思います。

ちなみに、北軽さんはASI178MCを使っているそうです。ASI178はセンサー面積が小さい割に解像度が3096×2080と高いのが理由とのことです。ただ、ピクセルサイズが小さいので感度はどうしても低くなってしまいます。分解能と感度はトレードオフなので、慎重に選びたいと思います。


まとめ

条件の悪い日でのテストだったので、試している最中はもう少し見えてもいいのにと思っていたのですが、縮小率もきちんと出ていることがわかりましたし、視野もC8なら妥当だと思います。次回以降で明るさの数値的な評価をしたいと思いますが、それでも今回だけでも明るさの十分な威力を垣間見ることができました。もう少し機材パラメータの調整は必要かもしれませんが、どこまで見えるようになるのか引き続き試したいと思います。目標は系外銀河のリアルタイム電視観望です。


 

この日は久しぶりの観望会です。でも元々の天気予報では全くダメそうで、当日近くになって夜遅くから晴れると言う予報に変わりました。と言っても、Windyで見る限り上層の雲が広範囲に渡って広がっているようなので、あまり期待はできません。もし夜中に晴れてあわよくば撮影と思って、ε130Dを用意してはいきましたが、結局使えなかったです。


ドームの修理

観望会は別として、ドームが長らく故障てしていて使えないので修理をする必要があるのですが、冬だったり体調を悪くしたりで長らく行けていないので、天気のこととは別にとりあえず現地に行くことにしました。気温が心配でしたが、ドライブ中も現地についてからの作業中もずっと雨が降っていて、そこまで暑くなかったのがラッキーでした。

今回の修理ポイントをメモがわりに書いておきます。
  • 昨年交換したモーター周りの仮配線を、圧着スリーブできちんと接続しました。ただ、Amazonで安いものを買ったので、圧着がいまいちなようで、機会があったら再度交換した方がいいかもしれません。でも少なくとも仮止めよりは全然マシです。
  • もう一つは、電磁開閉器と呼ばれるスイッチで、リレーでスイッチが入れるものです。SC-03という型番で1bと呼ばれるNC(Normal Connected)タイプで、本来は奥下の2つの端子に電圧をかけることによりスイッチが開閉します。その際は左下2つの端子間に100Vがかかってリレースイッチが作動するのですが、どうもここに100Vが出てきません。
結局今回はこのSC-03のリレーの動作不良という判断で、交換することにしました。Amazonにも在庫があったので、次回来たときに交換します。


寂しい観望会

作業をしている最中に、スタッフのSさんが到着しました。その後まも無くしてかんたろうさんも到着です。ただ、空は所々青いところも見えますが、全面に薄い雲がかかっているような状態です。 Sさんによると、他のスタッフは今日は体調不良などで不参加とのことです。

雲越しでも多少なりとも星は見えるかと思い、35mmのF1.4のオールドNIKKORレンズとASI294MCで広域電視観望を試しました。雲もまだまだありましたが、最初にアークトゥルスが見え、次にベガが見え、そのうちに薄雲のところはたくさんの星が見えてきました。広域電視観望だとこと座の形もはっきりわかります。この頃には目で見ても夏の大三角が見えるくらいには雲が薄くなってきました。そこでいつものFMA135+Uranus C+トラバースでミニマム電視観望です。かんたろうさんも45cmのドブソニアンを出します。

ただ、この日は午後は雨で夕方暗くなる直前くらいからだんだん薄雲程度になってきたくらいで、こんな日はお客さんは少ないです。近くの人が多いので、その日の空を見てくるかどうか決めるのかと思います。残念なことに、結局お客さんはゼロでした。まあ、ドームの修理があったのでやることはあったのですが、少し寂しかったです。

その時に見たのがM57とM27、北アメリカ星雲と、網状星雲などです。M57と網状星雲はかんたろうさんのドブソニアンでも見比べることができました。他にもかんたろうさんがまばたき星雲を見せてくれました。なぜ「まばたき」なのかその時はわからなかったのですが、調べてみたらそらし目で見ることができるとか。次回もし見せてもらえたら試してみたいです。

今回見えたものです。薄雲越しなので、星が滲んでしまいますが、それでも十分形が認識できるくらいには見ることができます。

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曇ってましたが、雲さえなければ透明度は良かったようです。

見えなくなる直前に向けたアンタレス付近でM4も下のほうに綺麗に見えています。カラフルタウン狙いでしたが、青いところはもう少し上でした。カメラの向きを変えて縦向きにして入れようとしましたが、その時にはすでに曇っていました。
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熊 !?

そんなこんなで、徐々低空からにガスってきて、そのうちほぼ全面見えなくなってきました。感度のいい電視観望でもほぼ全く何も見えなくなったので、まったりモードで3人で話し始めていました。するとドブソニアンの向こうくらいから「ガーッ」という、少なくとも可愛い動物とは思えないような声が聞こえてきました。初めて聞いた声で、多分猪とかではなさそうです。流石に怖くなったのと、せっかくの新月期ですがもう星は全く見えていなかったので、すぐに片付け始めて退散の準備です。私は広域電視観望とミニマム電視観望だけだったので、10分もあれば余裕で片付きます。かんたろうさんも45cmと大きいのに、意外なほど片付けは早いです。私が片付けてから10分か15分後にはすっかり片付いてしまいました。

そこにいても怖いだけなので、3人ともそのまま退散です。時計を見たら22時10分くらいだったでしょうか。自宅に着いたらまだ家族も起きていて、謎の声の話をしたらビックリしていました。


エピローグ

次の日、Sさんから連絡があり、昼に同じ場所で熊が目撃されたそうです。クマはどうやら鳴くことはあまりないとのことなので、昨日の声は違うのかもしれませんが、それでも万が一だとかなり怖いです。退散で正解だったと思います。今思い出しても怖いです。

富山県には「クマっぷ」と言うのがあり、目撃件数や場所などがわかるのですが、今年は同時期の例年よりも多く目撃されているようです。飛騨の方まで山続きなので、そこまで比率は変わらないと考えると、少し注意した方がいいかと思いました。そういえば富山県天文学会の前会長が生前、観望会の時は必ず車のオーディオを大音量で鳴らしていました。特に一人や少人数の時には、それが正解な気がします。

最近VMwareのProが個人利用なら無料になるというニュースが流れてきました!


MacのCPUがまだIntelだったころは、Boot CampやParalles、VMware、VIirtualBoxと、仮想化ツールを使っていました。電視観望では別のWindows PCを持っていくのですが、再起動して立ち上げるBoot Campや、VMwareからBoot Camp領域にアクセスした仮想PC上で電視観望を敢行したこともあります。

でもM1 Macを使い出した当時からBoot Campは全く使えなくなり、仮想でもArm対応だけで、一般のソフトの対応はあまり進んでいないという状態でした。でも今回調べてみたら、どうやら特殊なソフトでない限り、一般のソフトは結構普通に動くということのようです。これは再びMacでSharpCapを使っての電視観望で使えないか、また試したくなってきました。私はお客さん相手の観望会の時は、トラブルがあることを考えてWindows PCを2台持っていくことにしています。MacでSharpCapが動くなら、少なくとも持っていくPCを1台減らすことができます。


VMware Fusion

VMware Fusionのインストール自身はいくつも記事が出ているので、ここではポイントだけ書いておきます。ちょっとクセがあり面倒です。以下のページがわかりやすかったです。


WMwareをダウンロードする際に、アカウントを別途作る必要があること、その際住所などを書かなければならないことがちょっと抵抗がありましたが、これはしかたないでしょう。元々VMwareを使っていたので、昔のアカウントがあるかと思っていたのですが、どうも残っていないようで、結局新たにアカウントを作り直しました。

Windows自身は指示に従ってVMware上でダウンロードするのが楽だと思います。私は上のページに辿り着く前にここを見てしまい、別途Windowsをマニュアルでダウンロードしました。


あと、VMware Toolsが上のページに書いてある方法そのままではうまくいきませんでした。VMware Toolsが入っているisoイメージをあらわにマウントしてやる必要があり、次のようにしました。
  1. Macの「アプリケーション」フォルダ内のVMware Fusion.appを右クリックして、「パッケージの内容を表示」でContents -> Library -> isoimages -> amd64を開き、その中にあるwindows.isoをデスクトップなどにコピーします。
  2. VMwareのメニューの「仮想マシン」から「CD/DVD(SATA)」 -> 「ディスクまたはイメージを選択」で先ほどのwindows.isoを選択
  3. 再びメニューの「仮想マシン」から「VMware Toolsのインストール」を選択して、出てくるダイアログで「Setup.exe」を実行することで、ビデオドライバーやネットワークなどがインストールされ、画面の解像度を変えることができたり、やっとネットワークに繋ぐことができるようになります。

ここまでくれば、もう普通のWindowsと同じです。CMOSカメラのドライバーをインストールしたり、SharpCapをインストールしたりしましょう。必要ならASCOMプラットホームやASCOMドライバーもインストールします。

さて、必要そうなドライバーやソフトのインストールまでは普通にできました。まずは実際にArm版のWindowsで各種ソフトが立ち上がるのでしょうか?ドキドキですが、SharpCapを立ち上げてみます。

おっ!普通に立ち上がるようです。とりあえずカメラが手元になかったので、仮想のテストカメラを選択してみますが、これは少なくとも普通に動くようです。Arm版でも普通に立ち上がるんですね。これだけでもすごいです。

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Arm Windowsですが、まずはSharpCapに付属の仮想のテストカメラで、問題なく動きました。


カメラの認識がちょっと大変

さあ、次はカメラを用意して実際に接続してみます。USB機器を接続した時に、Macに接続するか、Windowsに接続するか聞かれます。ここはもちろんWindowsです。「ピロン」と音が鳴って、接続されたことがわかります。

次にSharpCapを開いてカメラの接続を試みようと思いますが、ここで問題発覚です。カメラが全く認識されていません。

カメラは電視観望でいつも使っているPlayerOneのUranus-Cです。ここでPlayerOneのサイトに飛んで上部の「Service」の「Driver and Software」のところを見てみると、なんと(2024年6月4日現在)「Camera native driver on Windows11 on arm (Windows11 in Parallels on Apple silicon Mac)」とあるではありませんか!早速リンクをクリックしますが、出てきたページによるとドライバーインストールの前に注意があるみたいで、どうやらドライバーの署名を強制的にオフにしなくてはダメなようです。


ドライバー署名オフ

ドライバーの署名のオフ説明画面に沿って進めればいいのですが、英語なので一応日本語に相当する部分を書いておきます。
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下の4.のところの画面です。

  1. まずはWindowsの「設定」を開きます。今回入れたのがWindows11で普段はまだほとんどWindows10なので少し戸惑いますが、画面下部のタスクバーの中央のWindowsマークのスタートボタンを押すと出てくる、ピン留め済み一覧の中の、ギヤマークの「設定」を押します。ピン留め一覧に出てこない場合は右上にある「すべてのアプリ」を押して、「さ」行から「設定」を探して押してください。
  2. 最初に選択されている「システム」の中の、「回復」を押します。少し下の方にあるので気づきにくいかもしれません。その場合は少し下にスクロールさせてみてください。
  3. 「PCの起動をカスタマイズする」のところの「再起動」を押します。
  4. しばらく待って出てきた「トラブルシューティング」「詳細オプション」「スタートアップ設定」の順に進みます。ここで一度再起動します。
  5. さらにキーボードの数字の「7」を押すか、キーボードの「fnキー」を押してからそれを離すことなく「F7キー」を同時に押します。
  6. その後、再ログインするとやっとドライバーの署名がオフされた状態になります。
  7. 元のページの一番下にあったArm用のカメラドライバー(2024年6月4日現在でバージョン1.3.12.12)をダウンロードし、展開してインストールします。
  8. その際、「ドライバーソフトウェアの発行元を検証できません」とか出ますが、無視して、下の「このドライバーをインストールします」を選択します。
ちなみに、これらの署名オフの過程はドライバーをインストールする前にWindowsを再起動してしまった場合は、ドライバーの署名強制的にオフが解除されるので、また最初からやる必要があるそうです。


まだカメラが認識されない

ところがです、ドライバーインストール後すぐにSharpCapを立ち上げたのですが、まだ認識されませんでした。どうやら一筋縄ではいかないようです。PlayerOneのページにParalles用のドライバーとかと書いてあったので、もしかしたらVMwareでは動かないのかとあらぬ疑いを持ってしまいます。でも普通に考えたらArmで動くか動かないかがポイントで、それを動かす仮想のベースは関係ないはずです。

ここでZWOのカメラはどうなのか試してみました。まず普通にZWOのドライバーページからカメラドライバーをダウンロードしてインストールしましたが、これは予想通りで、カメラは全く認識されません。ZWOのページにはまだArm対応のドライバーは見当たりません。いろいろ検索してみると、ZWOのフォーラムの中に2021年ごろからArmに対する議論が活発になされていることがわかりました。2021年の初期の頃はRossetaを使ってMacOSの上で走らせたIntelベースのASIAirで動いたとかが議論の中心でしたが、途中2023年2月頃にArm用にドライバーをビルドできたとの報告がユーザー側から出てきます。その後いくつかビルド済みのドライバーがアップロードされていますが、PlayerOneの時と同様な署名オフ問題が存在してるようです。「しているようです」というのは、どうもこれらのドライバーはフォーラムにログインしなくてはダウンロードできないようで、唯一2024年4月24日の投稿にあったこのページがgoodleドライブ上にアップロードしてくれていて、ダウンロードすることができました。このドライバーは署名オフ問題を回避してあるらしいのですが、私は回避状態でインストールしてしまったので、確認は取れていません。

さて、このドライバーもPlayerOneのArm用ドライバーと同じように、普通にインストールはできたのですが、それでもやはりSharpCapで認識されません。どうもドライバーの問題というよりは、何かPlayerOneとZWOで同じような問題が起きているような感触です。ここで一旦諦めました。


ドライバーのマニュアル更新: PlayerOneの場合

冷静になってしばらく考えて、デバイスマネージャーで見たらどうかと気づきました。そういえばZWOのフォーラム上でもデバイスマネージャーのスクリーンショットが出ているのを思い出しました。やった手順を書いておきます。
  1. Windwos11のスタートボタンを右クリックして「デバイスマネージャー」を押して開きます。
  2. この状態でUranus-Cを繋ぐと「不明なデバイス」のところにでてきます。これはおかしいです。フォーラムの中のスクリーンショットによるとカメラは「イメージングデバイス」に振り分けられるはずです。
  3. 右クリックして「ドライバーの更新」を選び、「コンピュータを参照してドライバーを検索」を選びます。
  4. 次は「コンピュータ上の利用可能なドライバーの一覧から選択」を選びます。
  5. 次の画面の「互換性のあるハードウェアを表示」オプションは外してください。そうすると(上でPlayerOneのArmドライバーがインストールされている場合は)「PlayerOne」の選択肢が出てきて、それを選ぶとカメラの選択肢が出てきます。私の場合は手持ちがUranus-Cなので「POA Uranus-C Camera」を選びます。
  6. 「ドライバーをインストールしています」と出て順調に行くかと思いきや、ここでまた問題が発覚です。「デバイスのドライバーのインストール中に問題が発生しました」などと出ます。
  7. また失敗かと思いきや「閉じる」を押しますが、デバイスマネージャーを見ると今度はきちんと「イメージングデバイス」にUranus-Cが移動しています。
  8. もしかしてと思い、SharpCapを立ち上げてメニューの「カメラ」で確認すると、何とUranus-Cがきちんと出てきています。
  9. 実際にカメラを選択して接続完了後に画面を見ると、きちんとカメラで写した画像が出てきました。ROIを最大画角で見てもフレームレートは46fpsくらい出ていてます。スピード的には十分で、少なくとも電視観望レベルで問題になるようなことは全然なさそうです。
あ、SharpCapでカメラに接続時に1-2度フレームレートが0のままや、上がらないことがありました。USB接続の不良(2.0で繋がってしまったとか)もありますので、繋ぎ直すと解決することがあります。私はケーブル再接続で直り、その後は何度か繰り返しましたが全く問題なく安定に動いています。

というわけで、問題は接続したカメラにドライバーがきちんとあてられておらず、ドライバーを更新して手動であえて正しいドライバーを選択してやる必要があったということです。でもこのような問題は、いずれ時間と共に解決するはずなので、今だけの問題なのかと思います。


ドライバーのマニュアル更新: ZWOの場合

さて、PlayerOneのカメラは上のようにすればOKだったのですが、ZWOはさらにひとひねり必要でした。ドライバーがきちんと当たっていないのは同じなので、上の3までは同じです。4のところで今度は「コンピュータ上のドライバを参照します」を選び、ZWOのArmドライバーがインストールされたフォルダ、例えば私の環境では

C:\Program Files (x86)\ZWO Design\ZWO_USB_Cameras_driver\driver\arm64

を選択します。要するに、まだWindowsのシステム内にもドライバーがうまくインストールされていないみたいです。今のところはユーザーがビルドしたオフィシャルでも何でもないドライバーなので、ある程度は仕方ないですね。

これで上の6以降に合流し、同じように文句は出ますが、「イメージングデバイス」に移動しているはずです。これでSharpCap上で接続(今回試したのはASI294MC)して、画面にきちんと像が出てくることを確認できました。フルサイズで12fpsくらい出ているので、仮想OSで動かしていると考えると、こちらも十分な速度かと思います。


Window再起動後の問題

ところがところが、まだ問題が残っています。Windowsを再起動すると、どうも署名オフの効果が消えるみたいで、ZWOのカメラのみ、再接続するとデバイスマネージャー上のASI294MCが、イメージングデバイスには置かれているのですが、三角の警告マークが出てきて、プロパティを見ると「このデバイスに必要なドライバーのデジタル署名を検証できません。... (コード 52)」などと出てきます。この場合、署名オフのプロセスを再度実行しなくてはダメなようで、再起動のたびにこれを繰り返すのは少し面倒です。

一方、PlayerOneのカメラはそのような署名オフ問題は再度出てこないので、こちらはWindowsを再起動しても問題なく再度カメラを使えています。

というわけで、カメラのインストールは少し大変ですが、PlayerOneのカメラは問題なく使えますし、ZWOのカメラはインストールはもう少しだけ手を加えることと、あとはWindos再起動のたびに署名オフのプロセスを繰り返す必要なことが大変でしょうか。でもそこだけ我慢すれば一応使えるというのが今の所の結論です。


SynScan ProとASCOM関連

カメラの認識にかなり苦労したので、その後のSynScan Proとか、SharpCapからSynScanアプリを動かすASCOMドライバー関連がかなり心配になりました。

まずはSysScan Proです。ダウンロード、インストールして、ミニマム電視観望の定番のトラバースで試してみました。ポイントは、WindowsのネットワークアダプターがMacのものをそのまま仮想的に利用しているので、Windowsから見たら一般的なイーサーネットアダプタとなっているということです。Wi-Fiではなく、あえて言うなら仮想的なLANケーブルに繋がったインターネット接続でしょうか。なので、トラバースに繋ぐのはMac側になります。MacのWi-FiでSSIDを見てみると、トラバースらしきものが見つかると思います。まずはここで繋ぎ、次にWindowsに行きます。SynScan Proを立ち上げて、接続を試みます。最初うまく検出できなかったので「ダメか?」と思ったのですが、通常のWindows単体での接続より少し時間がかかるようです。30秒程度掛け何度か接続を試していると、トラバースを認識して接続に成功しました!ネットワークアダプタの違いがあるので厳しいかとも思っていたのですが、これはあっさりし過ぎなほど簡単につながりました。

次は難敵ASCOMです。ドライバーに当たる部分なのでArmに対してはいろいろ未知数です。と覚悟を決めて試してみました。まずはSynScanアプリ用のASCOMドライバーをSkyWatcherのページから落として、インストールします。

SharpCapのメニューの「ファイル」の「SharpCapの設定」から「ハードウェア」タブを選び、「マウント」の「ハードウェアの選択」のところで出てくる「SynScan App Driver」を選び、下の「OK」ボタンを押します。あとは、右パネルの「望遠鏡制御」のところにある「接続」チェックボックスを押し、チェックマークを入れます。おお、何の問題もなく接続するではありませんか!!念の為「レート」を最大にして矢印マークを押すと、トラバースがきちんと動きました。ASCOMもあっさりし過ぎなほどうまく行きました。

やっと電視観望に辿り着いた!

ここまでくれば、もう電視観望も試せます。すべての接続がうまく行ったあと、夜を待って実際の電視観望を少しだけ試してみました。
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このように、M1 Macbook ProでSharpCapを使って電視観望が普通にできています。

初期アラインメントと、途中何度かの導入の際はSharpCapからSharpSolveを使いプレートソルブをしていますが、これらも全く問題なく動きました。下のようにライブスタックも普通にできます。

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簡単にできるかと思っていたArm Windowsでの電視観望ですが、思ったより手こずりました。同様のことを試そうと思っている方は、事前の明るいうちに接続関連をすべてクリアしてから夜に臨んだほうがいいかと思います。私はWMwareだけは昼にインストールしておいたのですが、カメラの接続を夜になってから始めたので、まるまる一晩潰しました。昼間もいろんなトラブルで、2日ほど費やしています。

一旦うまくいけば、Windows PCと比べても、全く遜色なく、いやむしろMacbook Proで画面とか大きいので、さらに快適に電視観望が楽しめます。あと、ブログをまとめるときも、すべての保存画像がMacから直でアクセスできて、Windwow-Mac間も普通にコピペできるので、これまでのようにわざわざ別PCから画像を移動する必要もなく、こちらもむしろ快適だったりします。

ここまでくると、あと出来なさそうなのは太陽とかのミリ秒スケールの短時間露光撮影でしょうか?さすがにフレームレートがそこまで出ないことが予想できますが、面積の小さいカメラを使うので実際どうなのでしょうか?太陽撮影はASI290MMでZWOカメラなのでちょっと面倒かもしれませんが、時間があるときに試してみたいと思います。


まとめ

というわけで、M1 Macで個人利用が無料になったVMware fuisonを使い、Arm64版のWindows11を仮想OSで動かし、電視観望ができるか試しました。カメラ関連はドライバーのインストールとカメラの認識に多少手こずりましたが、少なくともPlayerOneのカメラでは問題なく、ZWOのカメラではWindows再起動時に毎回署名オフのプロセスを踏む必要はありますが、フレームレートも含めて十分なスピードで使うことができます。実際の電視観望も、SynScan Pro、ASCOMプラットフォーム、ASCOMドライバーも全く問題なく動き、ネットワークアダプターもMacでトラバースに繋ぐことさえ注意すれば、問題なく接続し、プレートソルブも含めて動かすことができることがわかりました。

MacユーザーでBoorCampが使えなくて困っていたユーザーは、今回無料になったVMwereを使うことでコストパフォーマンスよく、Windows PCを別途用意することなく、Mac上のArm Windows11で電視観望まですることができます。


タイトルを見てなんだ?と思われた方もいるかと思います。CP+でお会いしたMACHOさんのお誘いで、チリのリモートで電視観望を経験させて頂きました。地球の反対側なので、日本だと昼間というわけです。


チリのリモートを使っての電視観望のお誘い

そもそものお話は、CP+でセミナーを終えた土曜日の夜、天リフ編集長のお誘いで、あぷらなーとさんと星沼会の方達と横浜駅近くの中華料理店で飲んだ時です。 隣になったMACHOさんが高校生や中学生にちりのリモートを利用して電視観望をしているので、よかったら一緒にやってみませんかとお誘いを受けたのです。

チリのリモート望遠鏡はご存知の通り、Niwaさんが音頭をとって日本で広まっているもので、素晴らしい撮影結果がどんどん出ています。私はまだ経験したことがないので、これは願ってもない機会です。3月16日の土曜日、朝の10時半から、まずはZoomにつないで顔合わせです。その際、そーなのかーさんがヘルプに入ってくれます。そーなのかーさんとは、昨年のCP+2023でお会いした時に、チリ関連の交渉や輸送などに相当活躍されているというお話を聞きしました。今回も実際の操作など、不明なところは簡潔にとてもわかりやすく説明してくれて、そーなのかーさんのサポート体制が素晴らしいです。

ZoomでMACHOさんと、そーなのかーさんと挨拶して、早速すぐに接続してみようということになりました。チリにあるリモートPCへの接続は、シンテレワークというソフトを使うとのことです。私はこのソフトを触るのは初めてですが、シンプルでおそらく歴史のある、とても安定したリモートソフトの印象を受けました。 


実際の操作

私は南天の空は全然詳しくないので、事前に少し調べておきました。といっても、大マゼラン雲などメジャーなものばかりですが、最初なので十分満足するはずです。導入はCarte du Cielを使ってASCOM経由で赤道儀と繋いでいるいるようです。でもソフトも好きなものを使っていいということで、必要ならStellariumなどをインストールして赤道儀と接続してもいいとのことでした。とりあえず今回はお手本で、最初は大マゼラン雲を導入してもらいました。

SharpCapの画面常にすぐに大マゼラン雲の中心のが出てきます。今回は普段私が電視観望をどのようなパラメータでやっているか見てみたいとのことでしたので、私自身でSharpCapをいじらせてもらいました。このリモート接続用のシンテレワークはかなり優秀で、複数の人がリモート先のPCをコントロールすることができます。本当に同時に操作とかしなければ、実用で十分に複数人で話しながらいじることができました。私の今回の環境は、Windowsからシンテレワークで接続して、 MacではZoomでつないで、同じ画面を供してもらっていたので、2画面で同時に確認できて一見無駄に思えても、動作に確証が持てて意外に便利でした。一つ不満を言うと、SharpCapのヒストグラムの黄色の点線を移動するときに、その点線を選択することがちょっと大変だったことくらいでしょうか。どうもシンテレワークから見ると、線の上にマウスカーソルを持っていってもマウスポインタが変化しないので、ここら辺だったらOKだろうと見込みをつけて左ボタンを押して線を選ぶ必要があります。

今回電視観望用に使う機材はFRA300ProにASI2600MC Proをつけたものです。これは亀の子状態でTOA150の上に乗っているそうです。こちらは撮影用でカメラはASI6200MMとのことです。機材は別カメラでモニターできるそうです。下の画面の位置がホームポジションで、パークされた状態とのことです。
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電視観望はカラーカメラなので、すぐに色がついた大マゼラン雲が出てきます。パラメータは好きにいじっていいとのことなので、私がいつも設定するように、露光時間は6.4秒、ゲインは500くらいです。露光時間がこれより短いと、読み出しノイズのような横縞が目立ってきてしまうようで、これはASI2600MCがそこまで感度が高くないからではないかとのことでした。露光6.4秒でライブスタックすると、どんどんはっきりと、色鮮やかな大マゼラン雲になっていきます。この時点ではまだ操作に夢中で画面をキャプチャーするのを忘れてしまっています。

実際、大マゼラン雲をこのように自分で操作して見たりするのは初めてです。画面いっぱいに広がるので大迫力です。次に小マゼラン雲も見たかったのですが、こちらはまだ高度がかなり低いようなので諦めます。天文を始めたから結構すぐにオーストラリアに行ったことがあって、この時は大マゼラン雲はみいていなくて、小マゼラン雲だけ撮影したことがあります。でもその時はまだ技術的にも未熟で、しかも満月近くだったこともあり、記念撮影のレベルでした。今回は短時間の電視観望ですが、大マゼランになったこともあり、はるかに満足度が高いです。


SharpCapでのキャプチャ画像

小マゼラン雲の代わりに、りゅうこつ座にあるNGC3372: イータカリーナ星雲に行きました。ここでやっと忘れずにキャプチャできました。光害防止フィルターとか無しの電視観望で、こんなに見事に見えます。これで合計わずか2分半のライブスタックです。
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操作していて気づいたのですが、SharpCapのバージョンが4.0台と少し古くて、いくつかの重要な機能が使えなかったので、途中から最新版の4.1台にアップデートしました。こんなふうに気軽にアップデートができるのも、個人で全てを操作しているからで、公共の天文台の利用とかだとある程度使うソフトには制限があり、なかなかこうはいかないと思います。

4.1で使いたかった機能は、
  • ライブスタック時のカラーバランスの自動設定の際の、鮮やかさの調整機能。1−8段階で選ぶことができ、見かけがかなり変わるので、まだ試していない方は是非試して見てください。
  • 背景のノンリニアなフラット化機能。実際試したら少しだけ炙り出しが改善しましたが、もともとカブリなどほとんどない場所だと思いますので、あまり必要ないかもしれません。
  • ホットピクセルとコールドピクセルの簡易除去。カメラによると思いますが、ASI2600MCだと、今回特に冷却とかしていませんが、元々目立つようなホットピクセルとかないように見えるので、この機能もほとんど必要ないかと思われます。
あと、新機能ではないですが、ライブスタックのカラーバランスバーの右の彩度調整バーは今回いろいろ変更しながら使いました。やはり星雲など色がついているものは、ここを少し上げてやるとかなり見栄えが良くなります。

ライブスタックのヒストグラムでまず雷ボタンで一段階オートストレッチして、その結果が右パネルのヒストグラムに伝わるので、さらに右パネルの雷ボタンでオートストレッチすると、かなり見栄えが良くなります。その際、オートストレッチを使ってもいいですが、派手すぎたり、もっと炙り出したいとかもあったりするので、必要な時はマニュアルで黄色の点線を移動するようにしました。

途中で、「保存するときのファイル形式はどうしてますか?」という質問がありました。まず、RAW16になっていることを確認して、形式は普段はfitsにしています。TIFFでもいいのですが、後で画像処理をするときにはたいていPixInsightになることと、ASI FitsViewerで簡易的にストレッチして見るのが楽だからです。保存は、ライブスタックパネルの左の方の「SAVE」から、16bitか、3つ目のストレッチ込み(これはライブスタックのヒストグラムでストレッチしたところまで)、もしくは4つ目の見たまま(これはライブスタックのヒストグラムのストレッチと、右パネルのヒストグラムのストレッチがかけ合わさったもの)で保存します。後者2つは8bitのPNG形式に強制的になってしまいますが、十分ストレッチされていれば8bitでも大丈夫でしょう。


次々に大迫力の画面が!

次に見たのが、同じりゅうこつ座にあるIC2944 で、「走るにわとり星雲(Running Chicken Nebula)」と海外では呼ばれていますが、 日本では「バット星雲(コウモリ星雲)」と呼ばれているものです。いまいちニワトリに見えない気がするのですが、もう少し淡いところも出すとニワトリに見えてくるようです。
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途中、天体を辿っていくのに、アノテーション機能を使いました。アノテーション自身は単に天体の名前を示すものですが、上の画像のリストを見るとわかるように、画面内に写っている天体の名前がリスト化されていて、その中の天体を選択して中心に持ってくることができます。さらにリストの次のタブの「Objects Nearby」では画面外の近くの天体リストを出すことができて、その中の名前を選んで中心に持ってくることもできます。要するに、次々に近辺の天体に移動しながら、天体巡りができるというわけです。あと、別機能で画面内をクリックしてそこを中心に持ってくるとかもできるようになっていました。SharpCapも確実に進化しているようです。

もう一つ確認したかったのが南十字星でしたが、画角的にちょっと入らなさそうだったので、南十字座にあるNGC4755を見てみました。結構小さいのですが、少し拡大するだけで構成の色も含めて十分に見ることができました。真ん中に見えているNGC4755の右上に見えている明るい星が、南十字の一つのミモザになります。
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驚いたのは下の方に写っているコールサック(石炭袋)と呼ばれる暗黒隊が余裕で写っていることです。電視観望でこんな暗黒体が見えるのは、やはり空がいいからなのだと思います。

次に見たオメガ星団は見事でした。少し拡大していますが、まだまだつぶつぶ感満載です。かなり拡大しても大丈夫そうでした。日本からも見えますが、光度が低く、撮影するのもなかなか大変です。
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南半球特有の最後はケンタウルス座のAです。こちらも日本からも見えますが、例えば私が住んでいる富山では南天時でも高度10度くらいとかなり低く、実際ここまで見るのは難しいでしょう。今回は中心部の構造も見えています。
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最後は、比較のために北半球でも普通に見えるかもめ星雲を導入しました。最初結構淡いと思いましたが、これまで見ていた大マゼラン雲とかが鮮やかすぎるのです。しかも聞いてみたらノーフィルターだそうです。フィルターとかのことを話していたらそこそこ時間が経ったみたいで、ライブスタックが進みHαも鮮やかになっていました。これで約9分のライブスタックです。しかもOIIIでしょうか、青い部分も綺麗に見えてきています。

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ノーフィルターでこれだけ見えるのだから、やはりチリの空はすごいです。多分低いところですが月がまだ出ていたと思いますので、それでもこれだけでます!


まとめ

うーん、チリのこのセットアップ、羨ましくなってしまいました。元々は自宅の庭でそこそこ撮れればいいくらいが目標でした。目標の中には、自分でいろいろ機材をいじって改善して、その成果が撮影した画像になって現れるようなことも入っています。なので、あらかじめセットアップされたものは避けていたのですが、短時間の電視観望さえここまで違うと、一度撮影とかまでじっくり時間をかけてみたくなってしまいます。それくらいに魅力的な空でした。

今回はとても貴重な経験をさせて頂きました。初めての南天巡りということもあり、私自身は相当楽しめました。MACHOさんとそーなのかーさん、本当にありがとうございました。今後、中高生と電視観望会など開くときは、是非ともまた参加させていただければと思います。


CP+連動企画、「電視観望技術を利用して天体写真を撮影してみよう」ですが、前回までにオリオン大星雲の導入が済んだところまで進みました。今回は、実際に撮影してみます。いくつかコツがあるので、順次説明していきます。


撮影はとりあえずフルオプションで、やれることはやるという方針で進めます。今回はフルオプションで撮影が完了するところまで、次回の記事で簡略化した撮影方法を示しどんな影響があるかを検証したいと思います。

それでは、前回記事の終了時の、SharpCapの画面にオリオン大星雲が入っているところからスタートです。


カメラの回転角

まず、鏡筒に対してカメラをどのような角度で取り付けるかの、カメラの回転角を決めます。これはレデューサと鏡筒の間にある3つのネジがついたアダプターの、ネジを一つか、せいぜい二つ少し緩めるだけで、カメラを回転させられるようになります。カメラの回転角は適当でもいいのですが、一旦カメラを外して設定を変えた時とか、画角が回転方向に大きくずれる可能性があるので、できるなら毎回同じ向きにしておいたほうが無難です。

方法はこのブログの昔の記事に詳しく書いてありますが、

簡単におさらいしていきましょう。
  1. SharpCapで、右上アイコン群の中から、「ズーム」の一つ左にある、赤線のクロスのようなアイコンを何度か押し、同心円のレチクルを画面上に出しておきます。
  2. SynScan Proの方向矢印か、ASCOMで赤道儀とつながっているSharpCapの右パネルの「望遠鏡制御」の矢印で、見ている方向を少し変え、目立つ星を中心に入れる。
  3. 矢印の一方向をしばらく押し続け、星がレチクルの十字線に沿って垂直、もしくは水平方向に真っ直ぐ動くかどうか確認する。
  4. もし水平、垂直にピッタリ動かないなら、レデューサのところのネジを緩めてカメラを回転させ中心にあった星が、垂直線か水平線の上に来るように合わせる。その際、ネジをきちんと締めなおしてから位置を確認する。
  5. 再び矢印ボタンを押し続けて、星がレチクルの十字線に沿って垂直、もしくは水平方向に真っ直ぐ動くかどうか確認する。
  6. きちんと星が垂直、もしくは水平方向に真っ直ぐ動くまで4-5を繰り返す。

こうやって回転角をあわせます。参照記事にも書いていますが、この回転角調整は夜を待たなくても、昼間でもできます。目立つ星の代わりに、遠くの何か目印になる点を使えばいいだけです。例えば遠くにある鉄塔のてっぺんとかでもいいでしょう。もし余裕があるなら、昼間のうちに済ませておくといいでしょう。

この回転角調整で、ピントがズレる可能性があります。レデューサのところの回転固定ネジを締める時にきちんと締めていなかった場合です。ネジを閉めるときは毎回少し手で持ち上げて、下に落ち込まない状態で毎回きちんと最後までネジを締めると、安定してピントずれなどはなくなります。


位置決め

回転角調整で位置がずれてしまったので、再びオリオン大星雲を中心位置に入れます。SynScan ProでM42を再自動導入してもいいですし、SynScan Proか、SharpCapの「望遠鏡制御」の矢印ボタンで、自分がいいと思う位置に入れてもいいでしょう。私は以下のような位置にしました。

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これだと、右上方向に向かうオリオン大星雲の広がりが十分に入り、左のランニングマンもいい位置に来るはずです。


オートガイド

位置が決まったら、次はオートガイドです。ここではガイド鏡とガイドカメラ、ソフトはPHD2を使います。

繰り返しになりますが、PHD2で PlayerOneのカメラを使うときは、PlayerOneカメラのドライバーだけではだめです。前回のソフトの説明のところで書いたように、ASCOMプラットフォームとASCOMカメラドライバーをインストールしてください。ASCOMプラットフォームはここまででSharpCapと赤道儀がつながっていれば、すでにインストールされきちんと動いているはずです。詳しくは

を参照してください。

PHD2の使い方はマニュアルなどを読んでいただければいいのですが、接続方法などごく簡単に書いておきます。
  1. Windows PC上で、ソフトの準備の時にインストールしておいたPHD2を立ち上げます。
  2. 初めてPHD2を立ち上げる場合は、ウィザードが出てきて、カメラなどの設定が始まるはずです。ほとんどは指示通り進めればいいのですが、カメラの選択は迷う可能性があります。特に同じメーカーのカメラが複数台接続されていると、Player One Camera (ASCOM)の1から3のどちらを繋いでいるかわかりにくい場合があります。もしどうしても分かりにくい場合は、メインカメラを一度ケーブルを抜いて切断してからPHD2のセットアップを開始して、Player One Camera 1(ASCOM)を選ぶのが確実です。もしここでPlayer One Camera 1(ASCOM)が出てこない場合は、Player One Camera用のASCOMドライバーがインストールされていない可能性があるので、上の説明を見て今一度確認してみてください。
  3. カメラを選択する際、ガイド鏡の焦点距離は手持ちのものをきちんと入れるようにしてください。ピクセルサイズはカメラがきちんと繋がれていれば、選択時に自動的に入力されるはずです。
  4. 赤道儀の接続はすでにすんでいるので、そのまま進んでしまえば自動的に適したパラメータが選択されるはずです。
  5. カメラや赤道儀の設定ごとにプロファイル名をつけることができます。後から認識できる適当な名前をつけておきましょう。
  6. ウィザードが終了すると、ダーク撮影に入ります。ガイド鏡にキャップを被せるなどして、光が入らないようにして、ダーク撮影を開始します。結構時間がかかるので、しばらく待ちます。慣れてくれば、必要な時間のみ選択すればいいでしょう。私は0.5秒から2秒くらいまでだけ撮影しています。
これで準備は完了です。2度目以降の立ち上げからはウィザードは自動で起動しません。カメラを変えた場合など、必要な場合はメイン画面の左下にあるUSB端子の絵が描いてあるアイコンをクリックすると、接続設定になるので、そこで再びウィザードを開始することができます。ウィーザードが終わった直後は下の2から始まるはずです。
  1. メイン画面の左下にあるUSB端子の絵が描いてあるアイコン「接続ボタン」をクリックします。
  2. カメラとマウント(赤道儀)を選択します。この際、カメラが複数台接続されていて、どのカメラが接続されるかわかない場合は矢印が二つに分かれるマークが書いてあるボタンを押すと、どちらのカメラか確認できます。カメラと赤道儀それぞれ「接続」ボタンを押します。赤道儀は接続されるまでに10秒くらいかかる可能性がありますので、少し待ちます。全て接続されたら下の「クローズ」ボタンを押します。
  3. メイン画面左下の左から二つ目の矢印が回転しているようなアイコン「露光開始ボタン」をクリックします。ここで画面にカメラからの映像がメイン画面上に表示されます。ガイド鏡のピントが合っていなかったら、ここで合わせてください。
  4. メイン画面左下の左から三つ目の星形のマークのアイコン「ガイド星選択ボタン」が黄色の星になっていることを確認してクリックします。黄色の星にならずに灰色のままの場合は、上記までのカメラの露光が開始されていないということです。いまいちどカメラの接続などを確認して、左から二つ目の矢印が回転しているようなアイコンをクリックしてください。うまくいくと、ガイドに必要な星が緑色の四角で選択されているのが、撮影画像で確認できます。
  5. メイン画面左下の左から四つ目の十字マークのアイコン「ガイド開始ボタン」が緑色になっていることを確認して、クリックします。緑色になっていない場合は、上のガイド星の選択が完了していないので、今一度確認してみてください。うまくいくとガイドに必要な星が緑色の四角で選択されます。
  6. 初回はここでキャリブレーションが始まります。キャリブレーションとはPHD2が動かそうと思った方向と、実際の画像でどちらの方向に動くかを確認し、方向合わせをするような機能です。
  7. キャリブレーションは数分から10分程度かかることもあります。気長に待ちましょう。その際、緑色の四角が、きちんと動いているか画面を見ているといいでしょう。うまく動かないとエラーが出てキャリブレーションが中断されます。赤道儀とのケーブルが断線しているなど、何らかの理由で赤道儀に送っている信号に対して反応がない場合などです。改めてケーブルの接続など、何かおかしいことがないかチェックしてみましょう。ガイド鏡のカメラに接続されずに、メインの撮影カメラに接続されてしまった場合なども、動かなさすぎたり、動きすぎたりして、エラーになる場合があります。
  8. キャリブレーションに成功すると、そのままガイドが始まります。下のグラフで、赤と青の線が時間と共にだんだんと伸びていくのがわかります。キャリブレーション情報を残すかどうかと言う質問が出ることがあると思いますが、「はい」としておくと、次回以降に赤道儀の向きを変えても初回にとってキャリブレーション情報を使い回してくれるので便利です。キャリブレーションが以前実行された場合は、すぐにガイドが始まりますが、あえてキャリブレーションをしたい場合には、「シフトキーを押しながら」ガイド開始ボタンを押してください。ガイドがうまくいかない場合、キャリブレーション情報が古くなっている可能性があります。そんな場合は今一度キャリブレーションを実行してください。
もしここで、ある程度の数の星が見えているのに、画面所の緑色の四角が一つしか見えなくて、選択されている星が一つの場合は、画面下の脳みそマークのアイコンを押して、「ガイド」タブから「Use multiple stars」を選ぶといいでしょう。複数の星をガイド星としてみなすので、精度が格段に上がります。


SharpCapの設定

あとは撮影に際してのSharpCapの設定を残すのみです。

まず最初にメインカメラの冷却機能をオンにします。
  1. SharpCap右側の「温度制御」パネルを開き、「設定温度」を「-10」程度にします。冬場だともっと冷えますが、ダークノイズの影響を考えるとこの程度で十分でしょう。
  2. さらに「冷却」を「オン」にします。
  3. 「温度」のところが徐々に下がっていって、設定温度に向かっていきます。

細かい設定です
  • 「フォーマット」パネルの「出力形式」は「FITSファイル(*.fits)」を選択。
  • 「フォーマット」パネルの「モード」はRAW16
  • 「カメラコントロール」パネルの「露出時間」はとりあえずテストなのですぐに画面が更新されるように1000msとしましょうか。あとで実際の撮影時には「長秒モード」オプションをオンにして「60s」とかにして長時間露光に変更します。
  • 「カメラコントロール」パネルの「アナログゲイン」はとりあえずUranus-C ProのHCG(High Conversioin Gain)モードがオンになる220とかにしておきましょう。これで、ゲインが高い状態で、「読み出しノイズが小さく」「ダイナミックレンジが大きく取れる」ようになります。明るすぎる場合はアナログゲインは0にします。実際の撮影ではアナログゲインは220か0のほぼ2択のみに限られ、それ以外ではダイナミックレンジの観点から不利になってしまいます。
  • 「カメラコントロール」パネルの「オフセット」は小さな値を入れておきます。0だと暗い部分がうまく表現されずに階調がガタガタになる可能性があります。今回はとりあえず「40」とします
  • 「前処理」パネルの「ダーク補正」のところで「Hot and Cold Pixel Remove」を選んでおきます。これはあくまで簡易処理ですが、今回のように電視観望技術を利用した簡単な撮影では、別途ダーク補正をする手間を省いているので、これを選んでおくと仕上がりに有利になると思われます。ただし、有効かどうかはカメラに依ます。実際試したところ今回のUranus-C Proではそもそもカメラに搭載されているDPS (Dead Pixes Suppression)機能が優秀なせいか、このオプション有無でほとんど差は見られませんでした。
  • 「前処理」パネルの「背景減算」は電視観望の時にはよく使うのですが、撮影に際しては1枚1枚で効果が違ってしまっておかしくなるようなので、オフにしました。今回はカブリが少ない状態で撮影したのですが、カブリが多い場合は試してみてもいいかもしれません。

一旦ここで、どのような画像になるか確認します。「ヒストグラムストレッチ」パネルの右側アイコン群の左列上から2番目の雷マークの「オートストレッチ」ボタンを押します。すると、ヒストグラムの左の山のピークを、3本ある黄色の点線の左と真ん中の2本の線で挟むような形になり、画面にオリオン大星雲がバッと明るく出てくると思います。ただし、このオートストレッチ機能は有料版のみ使うことができます。無料版の場合は、マニュアルで黄色の2本の点線を動かして、山のピークを挟むようにしてください。

もしこの時点でオリオン大星雲の位置がおかしい場合は、ガイドを一旦中断して位置調整をしましょう。
  1. PHD2のメイン画面の左下の「STOP」アイコンを押してください。
  2. その後に、SynScan ProやSharpCapの望遠鏡制御の矢印ボタンで位置合わせをします。
  3. PHD2の「露出開始ボタン」「ガイド星選択ボタン」「ガイド開始ボタン」を順に押して、ガイドを再開します。
このように、ガイドを一旦中止してから位置合わせをしないと、ガイドが元の位置に戻そうとしてしまうので、位置を変えることができないことに注意です。

ガイドとディザーの設定をします。
  1. SharpCapメニューの「ファイル」から設定を選び、「ガイディング」タブを開きます。
  2. 「ガイディングアプリケーション」をPHD2に選びます。ホスト名やポートは特に変更したりしてなければデフォルトのままでいいでしょう。
  3. 最大ステップは大きくしすぎると、画面が大きくずれてしまうので、ここでは最小の2としてありますが、もし縞ノイズが目立つようなら増やしてください。また、ライブスタックするたびに星がずれて伸びて見える場合は、個々の値が大きすぎて揺れが収束しきれない場合です。その場合はこの値を小さくしてください。この揺れは次の最小整定時間とも関係があります。
  4. 「最小整定時間」はSA-GTiが多少暴れることがあるので、少し長めに取っておくといいでしょう。ここでは30秒としました。
  5. 最後に下の「OK」を押します。
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ライブスタックで撮影開始

いよいよ撮影のための最終設定です。電視観望の技術を利用すると言うことで、今回の撮影はSharpCapのライブスタックを使います。

1. 「カメラコントロール」パネルの「露出時間」の「長秒モード」オプションをオンにして、露出時間を「60s(秒)」くらいにします。
2. アナログゲインは最初220で試しましたが、明るすぎたので、のちに0としました。CP+で見せる最終画像に至るまでにフィルターの種類や、いくつかの設定パラメータについては何種類か試していて、これまでの説明から変わったところもあります。パラメータの変更については、次回以降の記事で詳しく解説します。
3. LiveStackを開始します。SharpCapのメニューの下のアイコン群の「ライブスタック」と書いてあるボタンを押します。
4. 下のライブスタック画面の「Guiding」タブを選び、「Setting」の中のオプションを全部オンにします。「Dither every」のところは、枚数区切りでディザーをかけたいので「Frames」します。枚数は数分から10分おきくらいで十分なので、今回は「6」としました。「Only stack...」をオンにしておくと、雲などが出てPHD2が星を見失った時はライブスタックで画像を重ねることをしなくなるので、不慮の天候悪化時の出来上がり画像の劣化を防ぐことができます。
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5. 下のライブスタック画面の「Controls」の「Stacking」で「Sigma Clipping」を選んでおくと、人工衛星の軌跡などが目立たなくなります。
6. 同じ「Controls」の「Raw Frames」で「SAVE all」を選んでおくと、LiveStackが途中で失敗した時に、後から救い出せるかもしれません。ただし、ディスク容量をかなり消費することと、さらにディザーの際の短い露出時間のファイルも全て残されるので、もしこれらのRAWファイルを使う際は、ディーザーの際の余分なファイルは後から手で削除する必要があります。
7. 撮影終了時間が決まっているなら、「Save and Reset every...」をオンにしておくといいでしょう。例えば「60」minutes total exposureとしておくと、60分経ったときに、素のままのRAWファイルと画面で見えているままの画像をファイルとして自動的に保存してくれます。ただし、その時点でライブスタックがクリアされてしまうので、できるだけ長い時間撮りたい場合はオフにしておいた方がいいでしょう。

あと撮影ファイルの出力場所を設定しておきましょう。
  1. SharpCapメニューの「ファイル」から設定画面を開きます。
  2. 「ファイル名」タブを開いて、「フォルダー」のところに保存したい場所を指定します。 
  3. 下の「OK」を押します。

これで全部の準備が完了でしょうか。長かったですが、ここまでうまくできていますでしょうか?さあ、撮影開始です。
  1. 下のライブスタック設定画面の、左側の「Actions」の「Clear」ボタンを押してください。画面が一旦クリアされ、これまで溜まっていた画像が一新され、新しくライブスタックが始まり、撮影が開始されます。
  2. 露出時間で設定した「60秒」待つと、画面に撮影した画像が出てきます。
  3. ここで、ライブスタック画面の「Histogram」タブを開き、右の上の雷マークアイコンを押し、オートストレッチします。その際はSharpCapの右パネルの「ヒストグラムストレッチ」はぐるっと回転する矢印の「リセット」アイコンを押して、ストレッチがない状態にすると見えやすくなるでしょう。もしくは、新たに右パネル「ヒストグラムストレッチ」の方の雷マークを押すと、さらに炙り出した画像が出てきます。二つのストレッチの関係ですが、ライブスタックのヒストグラム画像であぶり出した際の状態が、右側パネルのヒストグラムに受け渡されます。右のヒストグラムでは、さらに重ねてあるり出しをすることができます。撮影画面には両方のヒストグラムのあぶり出しが重ね掛けされた結果が表示されます。
  4. 撮影中に、上で指定した保存フォルダーの中身をエクスプローラーで確認してみましょう。フォルダの中の「RAWFILES」フォルダを確認して、60秒ごとにfitsファイルができていくか確認してみてください。
  5. (RAWファイル以外の) ライブスタックの結果画像の保存は、ライブスタック終了時に自動的にされますが、任意の時間にあらわに保存したい場合は、ライブスタック画面の左の「Action」から「SAVE」を押します。いくつか選べるのですが、「Save as 16 Bit Stack」と「Save with Adjustments」と「Save exactlly as seen」の3つをそれぞれ保存しておくのがいいでしょう。「Save as 16 Bit Stack」はRAWフォーマットでfitsファイル形式で保村されます。これが最も情報を持っていますが、ストレッチされていないので最初は扱いにくいと思います。「Save with Adjustments」はライブスタックのヒストグラムでストレッチされた分までがpngフォーマット(8bit)で、「Save exactlly as seen」はさらに右パネルのヒストグラムでストレッチされた分までの画像がpngフォーマット(8bit)保存されます。
保存されたRAWファイルや、スタックされたfitsファイルを見るには、ASIStudioの中にあるASIFitsViewが便利です。ASIStudioはWindowsだけではなく、Mac版やLinux版もあるので、ある意味貴重なアプリです。ここからダウンロードできます。


保存されたfitsファイルはストレッチされていないので、通常開いただけでは真っ暗にしか見えません。ASIFitsViewは自動でオートストレッチもしてくれるので、オリオン大星雲があぶり出された状態で見えるはずです。下にあるアイコン群の中の、「ヒストグラム」マークをクリックして、「リセット」ボタンを押すと、ストレッチされる前の真っ暗な画像を確認することもできます。また、ストレッチ後のファイルを保存することもできます。

撮影がうまくいくと、SharpCapではこんな画面になっているはずです。
01_SharpCap_ok_03

今回はここまでとして、ここからの画像処理についてはCP+当日に実演として公開することにしましょう。

CP+まではまだ少し時間がありますので、撮影方法に関してもう1回か2回ブログ更新する予定です。今回までは主に初心者を対象に、かなり基礎から説明しましたが、次回からは少し突っ込んだ記事になります。









富山の街中で観望会があり、できることなら天の川を見せたくて、広角の電視観望で見せることができないか、前日に自宅で練習してみました。


天の川のための広角電視観望

富山県主催のスターウォッチングがあるのですが、今回広角電視観望を使って天の川をお客さんに見せることができないか考えてみました。前日の夜に自宅で練習してみました。

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十分な広角なので、PCの画面を見ながらの手動での導入です。

試した機材のセットアップを詳しく書いておきます。
  • 望遠鏡代わりに1970年台の古いNIKKORレンズの35mm、F1.4、これを2.0に絞って使用しました。F1.4だと明るい星にハロが出てしまうので、1段だけ絞っています。これと、後述の光害防止フィルターでハロはほぼ抑えることができました。
  • カメラは広角狙いでASI294MCです。気軽に操作したいので冷却とかは無しです。ホットピクセルについてはSharpCapの「ダーク補正」の「Hot Pixel Removal Only」を選び、簡易補正で済ませます。
  • フィルターはQBP IIIを使用しました。天の川なので色再現はあまり意味がないですが、それでも色バランスが多少難しくなるQBP IIIで、天の川っぽい色にすることは十分に可能なようです。
  • 三脚は普通のカメラ三脚に自由雲台です。広角なので完全マニュアル導入。自動追尾も無しです。

結果としては下の画像のように天の川を十分に見ることができました。6.4秒露光で、ライブスタックで17枚加算。総露光は2分弱の109秒。この程度で天の川の形まではっきりとわかります。

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小さいですが、M8、M20、M17、M16などの星雲もハッキリと見えています。星雲でなく、普通の雲の流れも見えているので、多少雲があってもなんとかなりそうです。

ポイントは、これくらいの広角でもSharpCapのライブスタックが余裕で機能し、時間を追うごとに天の川がはっきりくっきり出てくるところです。ただし、それらしく見せるのは少しコツが必要そうです。メモ程度ですが書いておきます。
  • カラーバランスはオートだと少し赤が強過ぎたり、青が弱すぎたりします。ライブスタック時の右側のカラーバーで微調整するといいでしょう。
  • 明るさもかなり微調整が必要かと思います。特にオートストレッチの効きをよくするために、β版のSharpCap、バージョン4.1.10931を使い、「背景減算」を一番下の「低周波」か、一つ上の「非線形勾配除去」を使います。これで画面がフラット化されます。その上でライブスタック上でオートストレッチを使うとより淡い光量の差をあぶり出すことができます。それでもさらに微調整が必要で、少しだけ左2本の線の間隔を広げて、最後右パネルのヒストグラムで見た目でいいくらいに仕上げます。

上の通り、街の中心からは少し離れている自宅では天の川を余裕で出すことが出来ました。ちなみに、自宅がある場所では年数回透明度のすごくいい日に天の川が薄っすら見えることがあるくらいです。でもこの日はカスリもしないくらい、目では天の川は全く見えることはありませんでした。

ついでにもう一枚、屋根の横の北アメリカ星雲です。35mmの広角ならではで、自宅と星雲が同時に見え、リアルタイム観望感が味わえます、こういったのも電視観望の楽しみ方の一つかと思います。

04_milkyway_NorthAmerica


まとめ

広角電視観望で天の川を見ることを試してみました。画面にはっきり出すのは少しコツが必要そうですが、十分に見ることができるくらいにはなります。機材や設定値は一例ですが、まだいろんなパラメータを試すことができそうです。

さて自宅ではうまく出ましたが、これが市の中心街にかなり近い環水公園でどこまで見えるのか?それとも全く見えないのか?結果が楽しみです。

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