ほしぞloveログ

天体観測始めました。

カテゴリ: 場所

2024年10月20日、おそらくこの日が紫金山アトラス彗星の、最後の最大のチャンスです。


好条件で天気も良さそう!

薄明終了が18時34分、月が昇ってくるのが18時52分なので、わずか17分ですがやっと暗い時間が訪れます。高度も月が出るくらいまで20度以上を保ち、かなりの好条件です。しかも富山の天気予報は快晴ということです。

その一方、彗星自身はだいぶ暗くなってしまっているようで、最新の光度データによると、この日は5等級以下くらいになっているようです。テイルも短くなっていると思われるので、今回はとりあえず核を狙うことにしました。核が回転している様子が撮影されているようで、上手く見えたらこれは面白そうです。他は、前回取れなかったタイムラプスでしょうか。あとは暗い空なので、イオンテイル狙いでしょうか?


結局同じ場所に

午前は天リフのピックアップの様子を聞ききながら、画像処理やブログ書きです。午後一で大型赤道儀を含む大量の機材を車に積み込んで、準備万端にしておきます。

ところが、天気予報では一日中快晴クラスのはずなのに、昼くらいからどんどん曇り始めて、15時を回ってもまだ全面かなり厚い雲で、その時はもう半分諦めモードだったのでした。16時になって再び外を見ると、一応日が差していて西の方も青空が出始めているので、とりあえず車を出すことにします。

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まだどこに行くか迷っていたのですが、出発が遅くなったのであまり時間がないこと、どうも南の空の雲が多いように見えたので、結局前回撮影した同じ場所で、近くの川沿いに陣取ることにしました。

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というのも、富山は北の海側に街があるので、北側が明るく南側が暗いのです。早くから晴れていたらもっと南の暗い空を狙う予定でした。結局は雲を見て、いつものそこそこ明るい場所で妥協したのですが、この判断は正しかったようです。

撮影している途中に以前会ったことがある人が来て、「南がダメだったのでここまで来た」と言っていました。「結局時間がなくて簡単なセットアップにした」とのことなので、欲張らずに時間に余裕をもつことが大事なのかと思いました。というのも、今回撮影機材を3セットも出したのですが、トラブル続きでかなり焦ってしまって、全然時間が足りなかったのです。


3つの機材

現場に着いたらすぐに機材を出しますが、今回は3セットと多いことと、一つはSCA260とCGX-Lという大型機材の部類なので、そこそこ時間がかかります。大雑把に機材を設置して、少し余裕が出た時に撮った写真がこちらです。

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ここから実際の撮影に入っていきます。


1セット目はタイムラプス

1セット目はタイムラプス目的で、シグマの50mmのレンズにEOS 6Dで17時くらいから20秒に1枚のペースで撮影を開始します。

できるだけ手間をかけたくなかったので、最初からISO1600で固定します。露光時間は1/4000秒、F11から始めて、暗くなるごとにまずはF値を小さくしてF2.8まで行きます。あとは露光時間を暗くなるごとに伸ばして、最後は2秒まで行きます。2秒で止めたのは、前回の撮影から105mmで3秒で流れ始めたからです。今回は50mmだったので、4秒くらいまでは大丈夫だったかもしれませんが、もうその頃には余裕がなくなってきていたので、2秒までいってあとは完全放置です。

あ、連続撮影はMagic Lanternを適用した6Dを使っています。レリーズいらずで、連続撮影の際の細かい設定もできます。例えば今回は、20秒ごとに1枚シャッターを切って、500枚でストップするなどです。20秒間隔なので、撮影の途中は少し余裕があり、露光時間とかを任意に変えるなどができます。とても重宝しているのですが、ファーム書き換え作業とかがあり、失敗するとダメージが大きく、万人向けではないのであまりお勧めではありません。

実際の露光時間の変更はかなり頻繁で、明るさを見ながらマニュアルでダイヤルを回していきます。他の準備に夢中で暗くなりすぎしまったりとかで、結構大変でした。


2セット目は彗星全景

とにかく、1セット目のタイムラプスをセットしてから、やっと次に取り掛かれます。もうそこそこ暗くなってきているので星が見え始め、極軸調整ができるはずです。2セット目はSWAgTiにRedCat51を載せて2台目のEOS 6Dで、彗星全景とイオンテイル狙いです。ところが、よく考えたら一眼レフカメラなのでCMOSカメラと違い、SharpCapに繋いでの極軸調整がちょっと面倒です。しかもこの6Dは最近手に入れたものなので、まだSharpCapに繋いでテストしていません。結局、電視観望用のFMA135+Uranus-Cがあったので、RedCatを一旦取り外して、こちらで極軸調整をしました。

SWAgTiの極軸微動の記事でも書いたように、極軸調整は必ず往復で2度試すのですが、どうも2度目の誤差が3−5分角くらい出てしまいます。どこか緩んでいると思われるのですが、パッと見つからないので、このままRedCatに戻して、初期アラインメントに進みました。西の低い空の星があまり明るいのがなかったので、少し天頂に近いですがベガにしました。ところが、これまた一眼レフカメラなのSynScan Proのプレートソルブが使えないのにここで気づきました。

ここら辺からかなり焦ってきます。

次にピント合わせをしていると、なんと鏡筒が動くことに気づきました。どうやら三脚と極軸微動アダプターの間のネジが緩んでいたようです。往復の極軸調整で大きくズレたはずです。

ネジは締め直しましたが、ここら辺からヤケになりました。

RedCatから6Dを外して、SCA260につけてあったASI294MC Proを外してRedCatの方に付け替えます。よく考えたら、Celestron赤道儀で彗星を自動導入する方法を考えてなかったので、1300mmの焦点距離ということもあり、うまく入れられる自信が全く無くて、もう核は諦めようと判断したのです。

でもこの判断は良かったようです。RedCatとASI294MCの極軸調整は一瞬でおわりました。緩んでいたネジはしっかり締め込んだので、今度は誤差も1分角程度で許容範囲です。初期アラインメント(ベガ)もSharpCapのプレートソルブが使えるので、すぐに導入できます。

次が痛かったのですが、なぜかPCで繋いでいるSynScan Proのアランメントで彗星を選んでも何も出てこないのです。かわりにiPhoneの SynSan Proに接続しようとするとなぜか接続エラー。もうここら辺で暗い時間帯に入ってきているので、泣く泣くマニュアル導入にしました。

まず金星をプレートソルブで視野に入れ、そこから矢印ボタンで右上に行き、とりあえずM5と思われるものが入り、さらに右上に行きます。なんとか入ってくれないかと思っていたら、明らかに明るい太い線が見えました。こんな明るく写るのはテイルしかないはずです。これを根元まで辿ることで核まで辿り着くことができました。でもASI294MCの範囲ではテイルの全景まで入りきらないようです。

ここでまた判断です。このアラインメント状態で、再び6Dに変更することにしました。鏡筒をずらさないようにカメラを入れ替え、今度はBackYardEOSで画面を確認し、ピントを合わせます。そこそこピントもあったので、とりあえず30秒で10枚撮影します。ここでやっと余裕が少し出ました。

まだ暗い時間帯は続いているので、もう10枚の撮影に入ります。でもその前に、今度は余裕を持ってきちんとピントを合わせて、核の位置ももう少しいいところに持ってきます。これ以降は10枚セットの撮影を時間の許すまで続けることで、こちらも放置できるようになりました。

とりあえず1枚撮りの全景画像の画像を載せておきます。これと同じような画像を50枚くらい撮影したので、スタックしてどこまで淡いところが出るのか楽しみです。

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3セット目のセットアップは核

やっと最後のSCA260のセットアップです。先ほどRedCatから外したASI294MC Proを、再びSCA260に取り付けます。

実はちょっと前にSCA260のアップグレードがあったのですが、つい最近帰ってきたばかりで、この日段ボール箱から出してそのまま持ってきました。まだいろんな準備がいろいろできていなくて、特にいつもつけてあるガイド鏡を取り付けるプレートをまだ付いていなかったのです。手持ちの適当なプレートを使って工夫してガイド鏡をつけるような時間的な余裕がなく、結局極軸を取るのをあきらめました。

CGX-Lの電源を入れ、極軸適当のままベガを導入します。ベガはSharpCapでプレートソルブして、なんとか画面内に導入できました。でもその後は、例えば彗星の近くのM5を自動導入しても全然入ってきません。

もうここからはSharpCapの画面を見ながら、マニュアルで矢印ボタンを押していくことにしました。RedCatでも入ったので、なんとかなるかもしれないと思ったのですが、焦点距離が250mmと1300mmでは全然違い、そう簡単に導入はできません。

ここでのヘルプは、隣のRedCatでした。少なくともRedCatは撮影中の彗星の方向を見ています。なので、その方向に近くなるようにSCA260も向きを合わせて、画面に入ってこないか見るのです。5分くらい探していたでしょうか、先ほどと同じように明るい領域が見えました。間違いなくテイルです。これでやっと核まで入れることができました。この時点で暗い時間帯は過ぎていましたが、核は明るいので多少の月明かりは大丈夫でしょう。

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1枚撮りです。こちらも50枚くらい撮影できていました。


忙しくて、大変で、焦ってた

核を何枚も撮影して、RedCatの画像を見ると、少し雲がかかっています。これ以上はRedCatは意味がないと考え、片付けを始めました。ちょうどRedCatセットが片付け終わる頃、核の方もかなり低空になってきているので、ここで片付け開始です。大型機材なので少し時間がかかりますが、片付け終わることにはタイムラプスも最初にセットした500枚に近付いていたので、500枚になるまで少しだけ待って、こちらも片付けです。

とにかく3セットは私にとって多過ぎで、ずっと焦っていた気がします。下手をしたらRedCatもSCA260も導入さえできなくて、メインの成果が全くなくなっていたかもしれません。かなり綱渡り的状態で、偶然に近かったかもしれませんが、画面で見たテイルの明るさには助けられました。全て終わってから、全景も核もタイムラプスも撮れたということで、やっとホッとしましたが、疲れ果てていました。

自宅に着いたら20時過ぎで、温かいシャワーを浴びて夕食を食べて、やっと落ち着くことができました。これから画像処理ですが、明日からまた平日で仕事なので、あまり無理をせずに一つづつじっくりと取り組もうと思っています。


大興奮だった紫金山アトラス彗星ですが、10月14日に見えて以来、次の日も同じ場所に行ったりしましたが、結局あれからずっと天気がダメで、見えたのは今のところ14日だけです。



先日のブログ記事では、見えたその日のうちに速報として記事を書きましたが、その後画像処理を進めてみました。と言っても大した枚数を撮っているわけではなく、しかも雲がまだ残っていたので、スタックしても雲が流れてしまい、どうしても見栄えが悪くしなってしまいます。なのでほとんどは1枚撮りを加工しています。機材は前回も書いた通り、EOS 6Dにシグマの105mmレンズをつけF2.0、固定三脚に載せて撮っています。


明るい中で見え始めた彗星

まずは、比較的早い時間のもので、18時4分です。まだ周りはかなり明るくて、彗星の核が見え初め、次に尾が見え始め、尾がやっと雲から出たところくらいです。

1枚撮りになります。 F2.8、ISO800、1秒露光で写しています。Photoshopで処理していますが、周りの明るさが残る時間帯なので、あまり加工せずにその場で見えた時の印象を残しました。といっても、そもそもが天体改造したカメラなので、赤外領域が明るく写っているはずで、ホワイトバランスを調整してそこそこ目で見える印象に合わせている画像です。そこから記憶に残っている印象に近づけていきます。

「10月14日、見え始めた紫金山アトラス彗星」
LIGHT_Tv1s_800iso_f2-8_+21c_20241014-18h04m59s158ms

太陽が沈んだあとの夕焼けの赤い空が残る中、上の方から徐々に暗くなっていきます。空の青さはまだ残っていて、まだ全景を現しきれない彗星が、徐々にはっきりと見えてくるような状況です。


地面と一緒に

次もまだ早い時間帯で、高度はある程度下がってきていますが、依然高い位置にあります。地面を入れてちょうどいいくらいになっています。時間は18時25分です。

F2.8、ISO1600、2秒露光です。これ以降は全て同じ設定で撮影しています。こちらもPhotoshopのみでの処理です。

「地平線と紫金山アトラス彗星」
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彗星はどんどん明るくなってきていて、背景には星も見え始めています。地面のすぐ上にはまだ少し赤い空が見えていました。


全景

そこそこ時間が経ち、雲に沈む寸前の全景です。

「紫金山アトラス彗星全景」
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この画像ををPixInsightのABEで平坦日して、ギリギリまで炙り出してテイルがどこまで伸びているかをみてみました。淡いところは雲にかかりつつあるので、どこまでが尾なのか、はっきりとはわかりませんが、核からテイルと思われるところまでそ測定すると、約13度になることが分かりました。20度を超えているという報告もあるようなので、まだこの後も伸びているのかと思います。

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アンチテイルとネックライン構造

今回の紫金山アトラス彗星の特徴の一つは、はっきりと出たネックライン構造でしょう。雲に沈むより少し手前の、十分に周りが暗くなった時に写した2秒露光の画像を、少しでもわかりやすくするために5枚スタックして画像処理で炙り出してみました。複数枚スタックのために雲が移動しているのが映り込んでしまうために、少し大胆にクロップしています。

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テイルの反対側に、テイルと同じくらいの太さの淡いアンチテイルと、そのアンチテイルの中にネックライン構造と呼ばれる鋭い線が見えます。初期の頃はこんな鋭い構造は何かのミスかと思った方もいるようですが、同じような画像が続々と出てきているので、少なくとも存在しているのは間違いないでしょう。

過去の彗星画像でネックライン構造と言われているものも、カラーでここまではっきりと直線状になっているのはめずらしく、しかも相当多く撮影されていると思われるので、やはり今回の紫金山アトラス彗星の特筆すべき特徴と言っていいのかと思います。


木村-劉 理論

ネックライン構造についてはかなり昔に、

"On the structure of cometary dust tails", Kimura Hiroshi, Chinese Astronomy Volume 1, Issue 2, December 1977, Pages 235-264

で提案されたようで、著者の1人は日本人です。当時の所属を見ると「Purple Mountain Observatory, Academia Sinica」となっているので、なんとも今回の紫金山アトラス彗星に相応しいではありませんか。あれ、Academia Sinicaって台湾ですよね?でも紫金山天文台は南京では?と思って調べてみたら、今の紫金山天文台は「Purple Mountain Observatory, Chinese Academy of Sciences」と書くそうです。「中国科学院紫金山天文台の前身は1928年に成立した国立中央研究院天文研究所である。1950年に現在の名称に改称された。」とあるので、昔はAcademia Sinicaと言っていたのかもしれません。

ネックライン構造とは、一旦放出されたダストが再び彗星軌道上に集まることによって見え、そのダストの集まる場所が太陽を挟んで180度程度のところなので、ちょうど視線の方向が軌道平面に近いと核の180度向こうのダストの集まりが線のように見える現象だと考えられます。でも、なぜダストが再び軌道に集まるのでしょうか?

「彗星夏の学校」という集まりで論文のレビューをしていて、2008年の収録誌の中にネックライン構造を理解するのに、比較的わかりやすく書いてあるレビューがありました。これによると、ネックライン構造を説明するのは、ダストテイルの輝度分布を求める過程で出てきて、
  1. 19 世紀~20 世紀初めの古くからのBessel-Bredichin 理論でシンクロン(等時放出線)とシンダイン(等斥力線)の2次元で扱う網状の輝度分布図を書くことができる。
  2. 1968年のFinson-Probstein理論でシンクロン・シンダイン網の各点で、球殻が拡散していくモデルを導入し、輝度分布を3次元的に扱えるようになった。
  3. 1977年の木村-劉 理論で、球殻の広がり方に制限を加えることで、軌道上に再びダストが集まるネックライン構造があると説明された。
  4. 木村-劉 理論はその後のMarco Fulle(1987、1989)によって逆算法という逆モンテカルロ法に相当する方法で解説できる。
と書いてあります。でも、どうしてダストが再び集まるかという理由についてはあらわには書いてありません。4の逆算法は、観測したダストの「輝度分布の画像」から、彗星のパラメータを求める手法で、おそらくですが 鋭い(当時は名前がなかった) ネックライン構造も含めたダスト分布の観測をどうやって説明するかの計算手法の確立の過程で、ダストが集まる現象も説明ができ、それをネックライン構造と呼ぶようになったのではないかと推測しました。

「ネックライン構造」という言葉は50年近く前に提案された言葉ですが、アマチュア天文の範疇ではほとんど認識されていなかったようです。木村-劉 論文ではネックライン構造の他に、「サンワードテイル(Sunward tail)」という言葉も使っていて、こちらは日本語で検索している限り全く使われていないようなので、さらにマイナーな言葉です。論文レベルではNeck-line strucutreもSunward tailも普通に使われているので、どちらも主に専門用語の範疇と考えられ、アマチュア天文家にあまり認識されていないのも仕方ないのかと思います。

さて、今回のネックライン構造ですが、どういった物理過程でダストが軌道上に集まってくるのか?元論文まであたる必要がありそうです。私も時間があったら少し読んでみようと思います。


まとめ

今回の紫金山アトラス彗星、かなり楽しめますねー。ここまで盛り上がるとは、私自身はあまり期待していませんでした。

すでに暗くなってきているようですが、それでも尾はどんどん長くなっているようですし、なんと言ってもネックライン構造!自分で撮った写真にも綺麗にはっきりと出ました。いやー、カッコいいです。紛れもなく記憶に残る大彗星です。

10月20日の日曜からは、月が昇る前に観測できそうなので、暗い場所に行く価値が出てきそうです。それまでに尾はどれだけ残っているのか?天気は大丈夫か?できるだけのことはしたいと思います。


関西唯一の星まつり、「星をもとめて」に参加してきました。今年は星まつりの参加を少し控えています。今回はちょうどSWAgTiでディザー撮影が成功したので、Unitecさんのブースで展示させていただけることになり、日帰りでしたが少し頑張って行ってきました。

できた記事を読み返してみましたが、完全に自分目線の日記がわりなので、星もとの情報を知りたいとか、雰囲気を知りたいとかでは、あまり役に立たないです。ごめんなさい。


当日朝の移動

出発は星もと当日の日曜日の朝6時頃。私的には星まつりにしてはゆっくりめの出発で、昼前くらいの到着になるでしょうか。そもそも今回の星もと、事前の天気予報はあまり良くなくて、特にSCWだとずっと雨の予想でした。「どうせ何も見えないや」と高を括って、特に撮影や電視観望の事前テストなどはせず、SWAgTiの展示用の機材を用意しておくくらいでした。

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荷物の量も大したことありません。

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玄関からパッと座席に置いただけで出発です。

富山から日本海側経由で京都に向かう途中、敦賀JCTの手前の南條SAで休憩です。ちょうどお腹が空いたので、朝のレモン味のさっぱりラーメンを食べます。同じものを去年も食べたのを思い出しました。なのでこのラーメン、2年連続になります。
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日本海側周りなので基本的に渋滞は全くなかったのですが、結構のんびり運転してたので現場に着いたのは午前11時頃だったでしょうか。今回は機材をUnitecさんのブースに運ぶので、テント裏に車を停めさせて頂きました。偶然にもUnitecさんの車が後ろにきていたので、展示準備のタイミング的にもちょうどいいくらいの時間でした。

今年も場所は「るり渓」なのですが、去年までの北側の駐車場の奥のスペースとは違います。南側の開けた広場のようなところで、ステージがある場所です。聞いたところによると、第4回までの星もとはこの場所で開催されていたとのことです。

かなりダメそうだった天気予報にもかかわらず、雲は厚いですが所々に青空も見えていましたし、広場中央に並べられた太陽望遠鏡も、青空が通るタイミングでプロミネンスがよく見えています。しかも滞在中雨は一滴も降らずに、完全にいい意味での裏切りの天気でした。
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何人かの方が言っていましたが、星もとは「胎内などの大型星まつりほど規模が大きくなく、アットホームでいい」とのことです。天気も悪くなかったので、この日は多くの人が来ていましたが、会場が溢れたりすることもなく、食べ物なども普通に買うことができました。関西の方達の気さくな雰囲気もまた、星もとらしさを醸し出しているのかと思います。


SWAgTiの紹介

今回はUnitecさんと外山電子さんのブースに居候しました。小さな机を出してもらって、その上にモニターを置き、その横にSWAgTiを展示しました。モニターには出発前日の夜寝る前に突貫で作ったパワポスライドで説明ファイルを、ループで表示させておきました。席を空けていても、ある程度理解してもらえるのではと思ったからです。あまりこんなことはやったことはないので、スライドのクオリティはイマイチでしたが、見ていてくれた人もいたので、今後こういったことをやる場合はもう少し作り込んでいければと思います。

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今回のSWAgTi展示の事前宣伝に関しては、ディザーのところで記事にしたくらいで、あまり大袈裟にしていなかったのですが、現場にいると意外なほど興味を示してくれる方が多かったです。ブログを読んでくれた方、その場の機材を見て不思議そうな顔をしている方、古くからもSWATファンなど、いろんな人から質問を受けました。この反響にUnitecのスタッフの方も少し驚かれていました。私の方も今年はディザーで縞ノイズを消せたので、少し自信を持って紹介することができました。

SWAgTiは一見「魔改造」に見えるかもしれませんが、実はかなり理にかなっています。オートガイド無しで、かつディザリングは有りという、ちょっと変則的な撮影です。でも、ガイド鏡も、ガイドカメラも、ガイドカメラを繋ぐケーブルも、PHD2などのガイドソフトも、一気に無くすことができるお気軽撮影です。その一方ディザリングだけはして、数時間以上の長時間露光でも縞ノイズを避けることができます。

このガイド無しお気軽撮影は、SWATの超高精度の追尾性能が大前提になります。お気軽と言っても、あくまで長時間露光を目指していて、長時間のドリフトからくる「縞ノイズ」を、AZ-GTiの2軸を使った「ディザリング」で回避しているのです。それに加えて、自動導入やプレートソルブ(まだちょっと不安定ですが...)も可能となるというおまけもついてきます。こんな説明を現地でしていたのですが、聞いてくれた皆さんは、かなり納得されているようでした。「SWATとAZ-GTiの組み合わせがメカメカしくてかっこいい」と言ってくれる方もいました(笑)。

何人かの方から「SWATが高い」という意見を聞きました。SWATは一般的な小型赤道儀どころか、中型赤道儀や大型赤道儀と比較してもまったく遜色ない精度を謳っています。しかも、その精度は全部実測してから出荷しているとのことなので「この値段でこの精度を『確実に』手に入れることができるのは、ある意味安価なのでは」と、私が思っている感想を率直に伝えたりしていました。「最近の冷却CMOSカメラは、本格的なものを揃えようとするとかなりの額になるので、それよりは全然安いですよ」などとも話していたのですが、何人かの方は本気でSWAgTiを試してくれそうな雰囲気でした。SWAgTiユーザーが増えたら、私としてはかなり嬉しいです。

まだ安定性などに少し問題があることも事実なので、できるだけこのブログで情報を発信していこうと思います。今回のブース展示も含めて、Unitecさんにはかなりお世話になっていますが、基本的には完全に私個人のアイデアで、私自身が面白いと思っていて、実用レベルで使いたいからやっているものです。なので、SWATとAZ-GTiを組み合わせることについては、Unitecさんもサイトロンさんも、何のサポートもできないかと思います。そこら辺をご理解いただいた上で、ユーザーの工夫や改造改良で楽しめる天体趣味の醍醐味というものを、各自の責任で楽しんでいただければと思います。


会場内

SWAgTiの方はモニターでの解説もあるので、適度に席を立って会場内のブースを回ります。と言っても最近物欲はあまりないので、購入品は本当にちょっとしたものだけです。KYOEIさん名物のジャンク市も遠目で見ていて、少し空いた頃にちょっとだけ箱の中を覗きましたが、何か購入するには至りませんでした。

面白かったのは星見屋さんんところに置いてあった、笠井トレーディング製のStellaBino50でしょうか。アイピース交換可能の、50mmの鏡筒2本をくっつけた双眼鏡で、プリズムなどの余分なものが一切ないので、コントラストが極めて高いです。ちょっと欲しかったですが、今回は我慢しました。
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星見屋ではZWOのフルセットも置いてありました。AM5の初期型かなりの特価で出てるのが会場内で話題になっていました、この値段なら欲しい人も多いのではないかと思いましたが、その場の現金でとなるとちょっと考えてしまいます。また、展示されていた新型AM5の、電源ポート付きのアリミゾが便利そうでした。
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似たようなコンセプトのものがPegusas Astroにありますが、日本での販売はまだないみたいです。


これと比べても、赤道儀と一体なので、アリミゾの電源入力のケーブルを赤道儀内部から持って生きているのが強みですね。

サイトロンの注目はやはりSkyWatcherの太陽望遠鏡でしょうか。実際に太陽を覗く機会がありましたが、プロミネンスが綺麗に見えていました。挿してあったアイピースがズーム型のもので、簡単に拡大して見ることもでき、表面の模様の詳細がかなりよくわかりました。
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他にも太陽関連では、最近色々成果を出しているgariさんと直接話すことができました。エタロンのことなども普通に話ができたので、きちんと理解されて物事を進めているようで、素晴らしいと思います。私も近いうちにPSTの光軸合わせをやってみたいと思っています。SkyWatcherの太陽望遠鏡は先端につけたエタロンが実際に外れることがわかったので、(太陽望遠鏡の改造は当然メーカー非推奨ですが)改造のし甲斐があるとgariさんと盛り上がっていました。

17時からは集合写真の撮影です。司会者の説明によると、集合写真は全員参加が義務とのことなので(笑)、私ももちろん参加しました。オークションはちらっと見ていただけで、落札とかは全然していません。時折ステージからブラスバンドの音楽が聞こえてきたりですが、ずっと聞いているというようなこともなく、会場内をフラフラしていたか、暑かったのでUnitecブースで座って体力が無くならないように過ごしていたのがメインでした。

なんでUnitecブースに長居してしまったか?それは、なんと冷風器が置かれていたからです。星とは全然関係ないのですが、これすごいですよ。コンプレッサーが入っていて、本物のクーラーと同じで冷たい風が出てきます。湿気を取る代わりに水がポタポタ出てくるのもクーラーと同じです。シャツの中に風を入れると相当気持ちがいいです。消費電力は130W程度で、ポータブル電源でも結構な時間持ちそうです。本体値段を聞いたら1万数千円と全然大したことなかったので1シーズンで壊れてもいいくらいのコストパフォーマンスです。
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なんで星と関係ないこんなことを強調して書くかというと、去年から現地開催が復活した星まつりの際の暑さで、実際参っている人の話を何人も聞いているからです。3週間前の胎内星まつりで2日目に体調が悪くなって早退してしまった外山電子さん。かなり心配していたのですが、この日は元気に回復されていて、同じブースでお世話になりました。聞いたらやはり胎内では熱中症だったようで、しばらく体調を悪くしてしまい、この星もとがやっと復活しての最初の星活動だとのことでした。Unitecさんも去年の胎内でバテてしまったそうで、今年は暑さ対策ということで今回のクーラーを用意してきたとのことです。去年も今年もとにかく暑くて、星まつりに限らず、外での熱中症対策として私もこのクーラー欲しくなりました。

快適といえば、デモで出ていたクッションでしょうか。


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リンク先にもあるように、天文ガイドの9月号でも紹介されています。星見で寝転んで見るために使ってほしいとのことで、実際皆さんとても快適そうにしていました。


夜は星空

夕方段々と暗くなってきましたが、空を見ると、なんとほぼ一面晴れています。雨予報だったので大した準備もしてなかったのですが、せっかくなのでSWAgTiにRedCat51とUranus-C Proを載せて電視観望兼撮影でもしようと機材を出しました。ところが、手持ちのM1 MacでUranus-C Proを認識できず、諦めてもっと小さな、いつものFMA135と非冷却のUranus-CをSWAgTiに載せてしまいました。しかもSWATは使わずにAZ-GTiのみで、いつもの簡単な電視観望となってしまいました。唯一良かったのが、宣伝用に24インチモニターを使っていたので、それを利用してお客さんの方に向けて電視観望の映像を表示しました。
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せっかくの機会なのに、口径わずか3cmで申し訳ないと思ったのですが「それでどこまで見えるか、実際見てみたい」と言ってくれるお客さんもいたので、少し気が楽になりました。導入も少し不安定だったり、月齢12.3日のかなり明るい月もありましたが、それでもM57から始まり、M27、北アメリカ星雲、アンドロメダ銀河、三日月星雲と定番ですが、連続で見せることができました。

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アンドロメダ銀河を見ている時に、ちょうど隣で外山電子さんがPHQ80にGFX100のモニター画面でアンドロメダ銀河とか写していたのですが、私の電視観望の画面を見ながらひたすら「けしからん、けしからん」と言っていました。口径わずか3cmですが、PCがあるのでリアルタイムで画像処理をしているようなものなので、やはり炙り出しで大きく有利になってしまいます。「こんないい時代になって、けしからん」ということらしいです(笑)。


夜の会場をぷらぷら散歩

21時頃になると空がかなり雲に覆われるようになってきました。電視観望のライブスタックでも星が認識できなくなってドロップし始めたので、少し放っておいて周りをぷらっと歩いてきました。

その途中、3月の「星なかまの集い」でお会いした、惑星撮影の大家のKさんから「惑星を見るのにアイピースで見るのとモニターで見るのどちらがいいと思いますか?」と尋ねられました。私は惑星はアイピースで見た方がいいと思っています。でもKさんの答えは意外で、モニターで見た方がいいという意見が多いというのです。そこで、例えば月を考えました。月はモニターで見るより目で見た方がいいと思います。明るいので十分拡大してもよく、細部まで見えるからです。その一方、星雲は電視観望だとはっきりと色がついて見えるので、眼視とは全く別の楽しみ方だと思います。惑星は月寄りか、星雲寄りかと考えると、どちらかというと月よりだと思うので、アイピースで見た方がいいと思うのです。でもKさんは惑星は暗いと言います。結局Kさんがなぜこんな質問をされたのか、最後まで意図がわからなかったのですが、惑星を極めている方の意見です。何か深い考えがあるのかと思います。大ベテランのKさんですが、自分のやり方を押し付けたり、人がやっていることを否定したりするような素振りは一切なく、一緒にいろいろと考えさせてくれます。この質問もやはり答えが深いかもしれなくて、自宅に帰ってからも今も色々考えてしまいます。

KさんがいらっしゃったブースにC14があり、実際に土星を見させて頂きました。雲越しでしたが、さすが14インチだけあって、大きく拡大していても十分に明るいです。さらに面白かったのが、そのC14を載せている片持ちの赤道儀がどう見ても手作りで、聞いたら一から設計したとのことです。赤道儀だけで重さ40kgとのことなので、さすがC14を載せられるだけのことはあります。その赤道儀のコントローラーに、なんとVixenのスカイセンサー2000がまだ現役で使われているのです。私はSS2000については昔の雑誌で見たくらいの知識しかないのですが、赤道儀の制御を一般化させる画期的な機器だったと理解しています。コンピュータで言うとオープンアーキテクチャのIBM PCといったところでしょうか。当時のVixenは規格そのものをを立ち上げるくらいの勢いがあったことが伺えます。私的には、実際に動いているSS2000を見たのは初めてで、かなり衝撃でした。そこへ飛び込んできたのが外山電子さん。なんとSS2000をまだ7台も持っているというのです。天文界隈にはすごいベテランさんが多すぎです。

雲のせいもあり、会場全体がまったりモードだった気がします。Unitecブースに帰って空を見上げても、まだ一面雲でした。あと1時間くらいで晴れるかもと言う情報を聞きましたが、次の日のこともあるので、ここで片付け始めて帰宅としました。最後挨拶だけして、22時頃に会場を後にしました。


戦利品

この日の戦利品はわずかこれだけです。
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星を始めた頃はものが安く買える星まつりがものすごくありがたかったのですが、私は基本的には買ったものは売ったりしないので、自宅はすでにジャンク部品やあまり使わない鏡筒などで溢れかえっています。なので自分の中で星まつりに参加する目的も変わって来ているのかと思います。少し前までは電視観望の普及にも力を入れてましたが、最近はスマート望遠鏡も出て、普及という意味ではもう十分な気もします。今は人に会ったり、面白い話があったら議論したり、今回のSWAgTiみたいに面白いアイデアがあったら見てもらうとかがメインでしょうか。


帰り道

帰りの高速では、行きにも寄った南條SAで0時過ぎの夕食です。よく考えたら、売店で買ったサラダ巻きを少し食べただけで、まともな夕食を取っていないことに気付いて、夜中でしたがガッツリ食べてしまいました。
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自宅に到着したのは午前2時半過ぎだったでしょうか。そのまま片付けもせず、汗をかいていたのでシャワーだけ浴びてすぐに眠りにつきました。

会場滞在は12時間を切るくらいでしたが、ちょっと体調が悪い今の私ではこれくらいが限界です。次の月曜は祝日で、十分に休養を取りました。そういえば、胎内星まつりは滞在4−5時間でブログも書いていないです。小海も行くかどうか迷っています。今年はとにかくあまり無理をしないで、できる範囲でゆったりと星活動をしていければと思います。


2024年9月13日、ずっと天気予報が悪く中止になりそうだった富山駅前ゲリラ観望会。このゲリラ観望会、5月以来の今年2度目になります。 

午後は結構雨が降ったりしていたのですが、夕方に近づくにつれ少しづつ青空が見えてきます。メーリングリストでゲリラ観望会決行の知らせが入ります。富山のアマチュア天文家が富山駅前に集合です。

私が到着したのはちょっと遅めで、もう暗くなっていた19時過ぎ。すでに望遠鏡は10台くらいは出ていたでしょうか。駅の南口からの人の流れに沿ってズラーっと望遠鏡がならんでいるので、俄然注目を浴びます。何人かの方から「今日は何か特別な日なのですか?」と聞かれました。「富山の天文好きが集まってボランティアで望遠鏡を除いてもらっています。今日は月が綺麗ですよ。」などと答え、並んでいる望遠鏡を勧めます。月齢10.5日で月がそこそこ明るいので、クレーターもよく見えます。途中から土星も見える高度に上がってきます。今日のメインは月と土星でした。

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私はというと、駐車場から駅前まで少し距離があるので、いつもの手軽なFMA135電視観望セットです。富山だと一番お客さんが多い観望会になるので、ちょっと無理して24インチモニターとAC100Vが出せるバッテリーを運んだので、ちょっと大変でした。

私も最初は月からです。いつも初期アラインメントに使うベガもデネブも、アルタイルさえも、ちょうどこの時間だとかなり高い位置にあり、候補に上がってきません。明るくて大きな月を初期アラインメントに使うと楽です。最初に月を自動導入して方向がずれていても、画面を見ながら三脚を直接ずらしたり、トラバースの固定ねじをゆるめて高さ方向を回転させて調整したりもできるので、プレートソルブなんか使わなくてもへっちゃらです。

初期アラインメント後、お客さんには`しばらく月を見てもらい、その間に外部モニターを用意します。2画面が用意できたら、いよいよM27を入れて星雲です。前回の5月はシーズン的に星雲がほとんど見えなくて、かといって銀河を見るにはFMA135では焦点距離が短すぎたので、夏シーズンになり満を辞しての駅前星雲となります。

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地方都市といっても、さすがに新幹線がメインで止まる駅なので、駅前はかなり明るいです。それでも電視観望ならM27くらいは余裕で見えます。一般のお客さんは星雲そのものにあまり馴染みがないので、むしろ望遠鏡の小ささに驚いてくれます。「今は超高感度のカメラが使えるので、こんな小さな望遠鏡でも淡い星雲が見えるんです」とか説明して、机の下の脇に置いた小さいFMA135を見てもらいます。「間違って蹴飛ばさないでくださいね」と一言添えるのですが、その後に「小さいのでこれまで何回か実際に蹴飛ばされてます」とか言うと「確かになぁ」というような反応が返ってきます。

最近の電視観望は、M1 Mac上のVMwareで動かすARM Windows11でSharpCapを動かしています。今回は特にMacで動かしているStellarium画面との比較が役に立ちました。WMwareだと SharpCapの画面と、Mac上のStellariumとの切り替えは、3本指でタッチパッドを左右に振るだけなので、ものすごく速くて楽です。駅前なので空を見上げてもほとんど一等星しかみえません。顔を上げて真上を見てもらうと、夏の大三角はなんとか見えます。夏の大三角の大きささえ感覚的にわかってもらえれば、Stellaiumの画面上で夏の大三角を見てもらって、赤枠で示された電視観望で見る視野の広さを確認してもらって、その視野をさらに拡大すればStellariumでM27が見えてきます。その後に画面をパッとSharpCapに切り替えて「これが今実際に望遠鏡で見ている亜鈴状星雲です。同じ形ですよね!」と説明するのです。実際のM27がかなり小さく、目で見ただけでは到底見えるものではないということ、望遠鏡で見るとカラフルな天体が宇宙には存在していることなどを実感しらもらいます。

その後、北アメリカ星雲を入れたりして、スマホの画像検索で見つけた北アメリカ大陸の地図の形と比べたりします。北アメリカ星雲はこんな明るいところでも思ったよりよく見えました。どうもこの日は透明度が良かったようで、自宅に帰ってから空を見上げたら、この季節は霞んでよく見えないことが多いはくちょう座の形がはっきりわかるくらいでした。
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あとは定番のM57ですが、これは輝度が高いので駅前のような明るいところでも余裕で見えます。
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時間的にはもう昇ってきているはずだと思い、アンドロメダ銀河も入れてみました。まだかなり低い位置にあって、どうも駅前ターミナルの大型の屋根の反射光を拾うようで、迷光で画面が明るくなりすぎです。銀河の存在のものはかろうじてわかるのですが、ライブスタックするには明るすぎてサチってしまい、こちらは諦めました。気を取り直して三日月星雲に移動したのですが、こちらも大して見栄えが良くなくてお客さんウケもイマイチだったので、再びM27に移動してしばらく放っておくことにしました。

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電視観望の間、お客さんもかなりきてくれました。4人組の女子高生のうちの一人がM27を見て「感動した」と言っていたのが印象的でした。21時過ぎになって、そろそろ撤収の準備をしてくださいと指示がありましたが、結構グダグダとしていて、まだお客さんや県天メンバーとのんびり話しながら、他の望遠鏡がかなり片付いてきてから、やっと私も片付けはじめました。

それにしても天気が良くてよかったです。今日の朝の時点では中止になるかと思っていたくらいです。駅前なので、富山でやるものとしては最も多く人が集まる観望会と言っていいでしょう。普段あまり星を見るようなことがない人達にもあピールできるところもいいです。今年は年2回のゲリラ観望会でしたが、来年もこれくらいのペースで開催できればと思います。


2024年9月7日、7月に続いて今年2回目の飛騨コスモス天文台での観望会です。

でもこの日の富山は朝からどん曇り。天気予報は富山はまだ晴れですが、コスモス天文台のある数河高原はほぼ曇りで時々晴れですが、時間と共に予報が悪くなっている様子。「富山でこれだと何も見えないな」と思いながら、「もしちょっと見えたらくらいで、まあ機材も最低限でいいか」とほぼ普段車に積んであるような機材だけにします。あ、子供用に一応スコープテックの6cmの屈折だけは載せました。

ところが、国道41号線を南下するに従って、結構青空が出てきてます。現地に着いた頃には、多少雲がところどころにぷかぷかしてましたが、なんとほぼ一面青空です。「しまった、撮影機材持ってくればよかった」と思いながらも、もうどうしようもありません。

その後まだ壊れていたドームの修理をするのですが、この日は絶不調で元の配線を記録し忘れるという体たらく。途中でかんたろうさんがきて、モーター関連の配線を説明してくれて事なきを得ましが、下手したら開けたドームが閉まらなくなるところでした。でもドームのチェーンが噛みかけていて負荷が大きくて、結局修理に至らず。ちょっと別の方法を考える必要がありそうです。

そんなこんなで、ドームの外に出たらもう結構暗くなりかけていて、細い月がもう沈む少し前くらいになっていました。早速準備を始めます。とりあえずスコープテックの屈折で月をすぐに入れて、少しだけ見てもらいますが、程なくして低空の雲で見えなくなってしまいました。


少しだけ電視観望

その間に、電視観望の準備です。機材は限られていて、いつものFMA135にCBPとUranus-Cをトラバースに乗せます。PCはM1 Macの仮装WindowsでCMOSカメラに繋ぎます。PlayerOneのカメラならもう観望会でお客さんがいたとしても、完全実用レベルです。早くZWOもARM  Windowsに正式対応してくれるといいのですが。Macは画面が大きくて映りがやはり綺麗だし、バッテリーがかなりもつので、電視観望用途で改めてWindows  PCと比べると、かなり使い勝手がいいです。この日の準備はサクサクっと、10分もかからなかったでしょうか、M27を入れて声をかけると人が集まってきました。

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といっても、この日のお客さんの数はそれほど多くはなく、全部で10人程度だったでしょうか。途中天気がいいのでもっと集まるかと思ったのですが、意外に少なかったです。Stellariumを使って、M27がどれくらいの大きさかを実感してもらいます。Stellariumで見える夏の大三角と、実際の空で見える夏の大三角を比べてもらい、M27の位置と大きさをStellarium上で確認してもらいます。Stellariumには今使っている鏡筒の焦点距離とカメラのセンサーの大きさを入力することで 、今見えている画角をStellariumの画面上に赤い四角で示すことができます。その資格の範囲をM27に合わせてStellarium上での見えたものと、実際の電視観望でSharpCap上に見えた形がほぼ一緒なことがわかると、見ている画角の実感が湧いてきます。M27はM57とかに比べたらかなり大きいのですが、夏の大三角の大きさと比べるとそれでも目で見るには小さすぎることもわかります。それを口径わずか3cmの、ミニ三脚とトラバースに乗せた、すぐに蹴飛ばされそうな地面に転がっている小さな望遠鏡で見ているというのが、これまたインパクトがあります。

Stellarium上でちょうど北アメリカ星雲が見えたので、次は北アメリカ星雲に移ります。北アメリカ大陸の形をネットで画像検索すると、皆さんすごく納得していました。でも、なぜが画面に映る北アメリカ星雲がいまいち見栄え良くありません。今環境ならもっとくっきり見えていいはずなのにと思って、改めて空をよく見たら少し雲がかかり始めています。「あー雲が出てきてますね。」とか言っていたのも束の間、雲がどんどん濃くなり、ライブスタックでも星を認識できなくなったようで、画像をドロップし始めました。

かんたろうさんが「ドブでまだM27が見えている」と言っているので、眼視と電視観望と比較してもらおうと思い私の方でもM27を入れたのですが、もうかなり見えにくくなっています。私がM27を入れている間に「眼視の方で確認してきてください」と勧めたお客さんも、結局眼視でも見ることはできなかったみたいで、それ以降は雲が一面を覆ってほとんど何も見ることができなくなってしまいました。


ちょっとだけ土星

かろうじて東の低空がまだひらけていたので、ちょうど出始めていた土星を見てもらうことにしました。2つ穴ファインダーのスコープテックで導入しますが、かんたろうさんの45cmドブの方が導入が早くて「負けたー!」となってしまいました。敗因はちょっと雲がかかっていたので土星もそこまで明るくなく、二つ穴ファインダーだと穴を通して見るには少し辛かったことです。かんたろうさんの星座ビノファインダーは多少なりとも倍率があり明るく見えるのが有利なのだと思います。

土星は口径6cmの屈折でも、小さいながらもまだ綺麗に見えました。輪っかもかなり細いですが、きちんと見えています。その土星も程なくして見えなくなってしまい、もうまったりモードで話し始めます。


ゲストがお二人

この日は飛騨地方のFMラジオ曲のアナウンサーの方が来ていました。事前情報によるとかなり綺麗な方らしいのですが、真っ暗な中なのでほとんど認識できず。まあ、天文あるあるですね。今回は赤道儀の使い方を学びたいということで来てくれたのですが、あいにくの天気で次回以降に持ち越しです。この方、星空案内人の資格を持つほど星好きな方で、近くの近くの道の駅にある「カミオカラボ」にも行って、ラジオで紹介したりしているとのことです。
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というわけで、この日のもう1人のゲストはそのカミオカラボの解説スタッフの方です。ご存知の方も多いかと思いますが、この飛騨地方は山の中に宇宙物理の一大研究施設群があり、このカミオカラボでは展示されている実験装置などを通してその内容を知ることができます。この方、物理出身とのこと。私も物理出身なので、天文界隈での肩身の狭さについて妙に話が合って、ずいぶん盛り上がりました(笑)。


天体写真で盛り上がる

雲がかかってからは、そのゲストお二人と、来てくれていたお客さんも一緒に、かんたろうさんの「何か見せるものないの?」という提案で、天使観望用に使っていたMacをテザリングでネットワークに繋ぎ、私がブログにあげた写真を見ながら、会話を楽しみました。今回見たページはこのブログのトップバーからもリンクが貼ってあるここ「Nebula」になります。


このページは私がこれまで撮影した天体をまとめてあります。

メシエ順、NGC順、IC順とかになっていて、一番最初のM1:カニ星雲はここ飛騨コスモス天文台に以前据え付けてあった口径25cm、焦点距離3000mmのニュートン反射型鏡筒で撮影したものなので、この場で見せると臨場感があります。

M27:亜鈴状星雲はこの日電視観望でも見えていたもので、露光時間を増やすと蝶の羽みたいな模様があることを説明します。かんたろうさんは眼視で見た時にどうやって導入するかを解説してくれました。「や座」の先端の星から90度曲がると導入できるとか、近くに小カシオペアの「W」の字が見えるとかです。ちょっと電視観望がどうなっているか見てみたら、雲が少し薄くなったのか、かろうじてですがM27が映っています。電視観望だとリアルタイムで見ることになるので、実際に見ている方向を望遠鏡が指している方向で確認するなど、こちらも臨場感があります。電視観望の画像では、上の画像にもあるような、小カシオペアのWの上の3つの星が見えているのがわかりました。

M31:アンドロメダ銀河の所では「今日晴れていたら肉眼で見えるかアンドロメダ探しができたのに...」とか、M45:プレアデス星団とその拡大図のところでは、スバルのことを知っている人も多くて「青色が綺麗
!」とかの感想が聞こえてきました。

他にも馬頭星雲魔女の横顔など、名前と星雲の形を比べることで皆さん興味を持ってくれるようです。M78星雲のところでは鉄板のウルトラマンの故郷の話をして、元々はM87の設定だったこと、M87がブラックホールでジェットが出ていて、ジェットもかろうじて見えたことなどにつなげます。

おとめ座銀河団のところではアノテーションの画像を見せて、なぜ乙女座の方向に銀河がたくさん見えるのかをクイズとして出しました。お客さんはもちろん、ゲストのお二方にも考えてもらいました。答えは「天の川の方向は星がよく見える」ということですね。逆の言い方をすれば、「天の川のない方向には星があまりないので、『星に邪魔されずに』銀河がよく見える」ということです。物理の人ってあまりこういったこうとに興味がないことも多くて、カミオカラボスタッフの方も答えられませんでした。私も星を始めてから得た知識です。ここからさらにかんたろうさんが、「おとめ座は春の方向ですが、じゃあなぜ秋の星座の方向には銀河があまり見えないのでしょう?」というクイズを出してくれました。これは私も知らなくて聞いてみたら「我々の銀河はおとめ座銀超河団(局部超銀河団ともいうらしいです)に属しているけれどもかなり端の方にあり、よく銀河が見える方向がその銀河団の中心方向、反対側はさらに端の方を見ていることになる」ということでした。さすが天文暦30年以上というだけあって、かんたろうさんは色々知っています。


結局晴れずに撤収

天体写真を見ながらの話が散々続いたのですが、それぞれの写真のところで色々話が盛り上がるので、結局小一時間話していたことになるでしょうか。最後アイリス星雲の写真で「アイリスはあのアヤメのアイリスか?」という質問が出たりで、締めとなりました。最後に「星が見えなくても、こうやって話を聞けると来た甲斐がある」というようなことを言ってくれた人がいました。天体写真だけでこれだけ長く話すことはあまりないのですが、私も意外なほど楽しめました。

21時半頃だったでしょうか、その頃にはうっすらと星が見えている方向もありましたが、結局観望するまでには至りませんでした。一部の人には星座ビノを使ってもらって、雲があっても方向によっては目で見えない星が星座ビノだと見えるということを実感してもらいました。

その後も晴れることはなく、ずっと厚い雲のままで、お客さんも少なくなってきて、22時には撤収となりました。前回の「謎の鳴き声事件」と次の日の昼間の「隣のグランドでの熊目撃事件」のこともあるので、少人数で長居するのはちょっと怖いです。

帰り道、夕飯を食べてないことを思い出し、自宅近くの24時間営業のすき家で「月見すきやき牛丼」の大盛りを食べて満足して自宅に戻り、富山の空も曇っていることを確認してすぐにベッドに潜り寝てしまいました。今年は雨も多く、なかなか晴れてくれませんね。


まとめ

せっかくの観望会でも曇り空でほとんど見えなかったですが、天体写真を用意しておくと、それだけもかなり盛り上がります。その際、画面はできるだけ大き方がいいでしょう。今回はMacBook Proだったので、そこそこ大きな画面でした。Macはバッテリーの持ちが長いので、電視観望していても、それを切り替えて他の目的に使ったとしても、あまり気を使う必要がなく長く使えるのがいいです。


最初の予報だと28日の水曜に富山かとか言っていた台風10号ですが、ずっとノロノロで進んでいるのか止まっているのか、予報でもどちらに行こうとしているのかわからないのですが、結局富山に来るのは週明けの月曜とか火曜とかになりそうです。そんな土曜の夕方、家族は外で食べてくるとのことなので、自分は近くのかつ家でカツ丼を食べ、外に出てみると意外に晴れています。ちょうど科学博物館の観望会が始まりそうな時間だったので、ちらっと寄ってみることにしました。

それでも台風前なので、何か少しでも見えたらいいやくらいの気持ちで科学館に到着して広場に出てみると、何と一面の晴れです!

実はほとんど何も準備してこなかったので、車にある機材で最低限の電視観望です。いつものFMA135とトラバースとUranus-Cは積んであったのでラッキーでした。PCはカバンの中に入っていたM1 MacのVMware上のエミュレータ上のArm Windowsです。机は車に積んであったのですが、いつもの天文椅子は玄関に置きっぱなしだったので、キャンプ用の椅子で代用です。機材は何とかなったので早速セットアップを始めますが、流石に全く準備をしてこなかっただけあって、トラバースは電池切れ、Arm Windowsのディスプレイの解像度は全然安定せず。土壇場での観望会はやはりなかなか厳しいです。

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それでもリクエストされた北アメリカ星雲を入れてみると、透明度がかなり良いのか、富山の中心街に近いのによく見えます。悲しいのは、流石にこんな台風前に星を見ようとは思わないようで、お客さんがすごく少なかったことです。せいぜい3−4組でしょうか。このひはカターレ富山の試合があり、24時間テレビもあり、台風前なので皆さん自宅でおとなしくテレビでも見ているのではとのことでした。

最初北アメリカ星雲を見ていたのですが、バラフライ星雲を見たいというリクエストが小さな女の子からありました。さそり座方向ですが、低いのと何より小さいんですよね。焦点距離135mmでは如何ともしがたく、代わりにM8: 干潟星雲とM20: 三裂星雲を見てもらいました。あまり高い空ではないのですが、雲も少なく、よく見えていました。
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そんな中もう一人、すごい女の子がいました。北アメリカ星雲を見せたら北アメリカ大陸の地質とかを話し出すし、アンドロメダ銀河を見せたら30億年後に天の川銀河と合体するんだとか、なんか異常に詳しいです。年齢を聞いたらなんと5歳。「将来は天文学者かな?」と聞いたらキッパリと否定して「違う、古生物学者!」と一言。お母さんによると、恐竜も大好きだなんだそうです。宇宙も大好きらしくて、この富山市科学博物館の観望会もここ半年くらいほぼ毎週来ているとのことです。多分これまでも会っているはずですが、話したのは今回が初めてだと思います。帰る時に「また来週」と言っていたので、これからも会えるかと思います。将来どうなるか、今から楽しみです。

今回の電視観望は眼視との比較が多かったです。M13: ヘルクレス座球状星団とM31: アンドロメダ銀河は眼視でも見えたようです。
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電視のほうではM31の渦もなんとかわかり、M32とM101もわかったので面白かったみたいです。
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M27は眼視では厳しかったようです。M57は輝度が高く見えるのですが、M27はそれに比べると大きけれども淡いんですよね。
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眼視では土星やアルビレオも見せていたようです。C11が出ていて、終了間際に海王星を入れてくれていました。私も見せてもらいましたが、きちんと面積があり、青っぽく見えていました。

お客さんが少なかったので、アットホームな観望会の雰囲気でした。来ていた子供は小さい子ばかりだったので、21時には終了して撤収です。撤収後、スタッフさんとボラティアさんの何人かで室内に入りお茶を飲みながら話していたのですが、ボランティアさんの一人がSORA-Qという月探査の小型ロボットを持ってきて、机の上で動かしていました。JAXAとタカラトミーの共同開発で発売しているロボットらしくて、昨年発売開始ですぐに完売してしまい、一年経ってやっと次の配布が始まったそうです。この方は春に予約して、やっと購入できたそうです。金属製で、カメラもついていて、値段もそこそこ。スマホで操作できます。おもちゃメーカーが作っていると言っても、おもちゃというよりロボットです。でも、本物の月探査機のように、砂の上を走らせようとするとギヤに砂が噛んでしまうので「あくまでホビーだ」と、オーナーの方は言っていました。

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帰り際に空を見上げたら、もうすでに全面曇り。自宅についてからもずっと曇りなので、本当に観望会の時だけ晴れてくれていたようです。

台風で全く期待していなかった観望会ですが、透明度もかなり良く、多分科学博物館で見せた電視観望ではこれまでで一番綺麗に見えた口ではないでしょうか。せっかくの好条件だったので、もっとお客さんが来てくれればよかったのに...。

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