「星をもとめて」から帰宅して、機材のチェックをしていました。特にSHG700は、フラウンホーファー線の展示のために、カメラを外したりピント位置をずらしたりしたのと、一度三脚ごと倒れてしまったので、ダメージなどないか、一からチェックすることにしました。
ゴールはきちんとした太陽画像が撮影できることです。次のような手順で再調整しました。
このような調整をして、撮影してみた画像がこれです。
ボケボケです。上の手順を何度かやっても、全然改善しません。コワレタカ?と一瞬思いました。
でも上の手順で一つ忘れていたことがあったのです。何だと思いますか?
クイズにしようかとも思いましたが、ちょっと複雑すぎるかと思うので、今回はすぐに答えに行きます。
忘れていたことを含めた、正しい手順です。
最初の手順では「スリット端の境界のエッジ」を見ることを忘れていたのです。実際、マイクロメーターで2回転分くらい、コリメータレンズ位置にして1mm位ずれていました。ここを合わせなくても、「太陽のエッジ」ははっきり見え、かつ「フラウンホーファー線のピント」が出てしまうので、一見全部合わせたように思いこんでしまったのが敗因です。
この手順を踏んで合わせた画像が下になります。雲が出てきてしまったので明るさが一様でないですが、シャープさは上の画像を雲泥の差であることがわかります。
2枚の画像を見て少し思うところがあります。上の画像って、Sol’Exの平均的な画像に似てませんでしょうか?もちろん、もっときれいに出ている画像もあるので、必ずというわけではありません。でも2枚の画像の調整で違うところって、コリメートレンズの位置が高々1mmほどずれているだけなんです。あとの自由度は最初の調整でもできる限り合わせているので、コリメートレンズ位置以外は最適化されてるんですよね。
この結果を見る限り、1mmはもうズレすぎでお話にならないのですが、じゃあ実際後半の調整ではどれくらいの精度で合わせたかに興味がいくかと思います。驚かないでください。約100分の1「10μm」のレベルで合わせています。マイクロメーターがあることで実現できるオーダーですが、実際にマイクロメータの精度でちょうどいいくらいです。というのも、マイクロメーターの目盛りを見ずに画面だけで合わせるのを何度か試しても、毎回ほぼ同じ目盛り位置に行きます。1目盛りが10μm刻みなので、同程度のオーダーで実際に合わせているというわけです。
典型的なSol'Exユーザーが、Sol'Exの標準的な手合わせ機構でこのオーダーまで合わせているとはなかなか考えにくいです。Sol'Exできれいな結果を残している方は、ここら辺の所にかなり気を使っているのかと思います。
Sol’Exの調整方法を調べてみたのですが、コリメータレンズの位置については単に「調整する」くらいしかなく、具体的に「何を見ながら」「どれくらいの精度で」合わせたらいいのか、少なくとも日本語で書いてある記述はどこにも見当たりませんでした。Sol’Exで、上の正しいと思われる手順でうまく合わせこんだら、実際もっときちんと写るのでしょうか?一度試してみたいです。
SHG700を購入した時点で、Hαを撮影するならかなりきれいに写るはずです。それはコリメーターレンズの位置をあらかじめきちんと調整してくれているからです。でも何らかの拍子でそこをずらしてしまい、その後調整すべきところをきちんと調整し直さなければ、写りは全く駄目になるということを今回示すことができたのかと思います。
今後、SHG700を手に入れる方が日本でもどんどん出てくると思います。調整方法はやはりちょっと複雑なので、だんだん調子が悪くなっていったなど、困る人も出てくることは容易に推測できます。正しく調整する方法を確立して、広く認識されることが大事なのかと思います。
上の説明は単純な手順だけの話なので、調整の過程で何がどうやってあっていくのか、ちょっと考えてみたので、もう少し詳しく書いておきます。
調整すべき自由度は、以下のように5つもあります。
その内、1と2は自分で任意に位置を決めることができます。この2つの位置に合わせて、残り3つの自由度の位置を一意に決めてやる必要があります。
ところが、3のカメラレンズがカメラに像を結ぶ位置は、4のコリメーターレンズ位置に依存します。この2つの自由度がカップルしているのが、調整を難しくしている要因の一つです。
もう一つのポイントは、4までは太陽の直接光を必要としないので、4までの自由度と、5の鏡筒の焦点の自由度は独立です。5は鏡筒の焦点位置をスリット上に合わせるだけです。なので、鏡筒のフォーカス状態とスリットの位置だけで決まります。
では、4のコリメーターレンズ位置は何を調整しているのでしょうか?ここが最大のポイントです。
そもそも背景光は散乱光に近いものなので、鏡筒のピントに関係なく、入ってきた光に対してカメラレンズ位置だけを調整することで、カメラにフラウンホーファー線のピントを合わせることができます。コリメーターレンズがどんな位置にあろうと、カメラレンズでカメラにピントを合わせることができてしまいます。
でもこの適当な状態だと、スリット位置で焦点を結んでいない光に対してカメラにピントが合ってしまっているので、スリット位置を見る目安となるスリットの端の境界のエッジがボケて出てしまいます。これが、この日最初にミスった部分です。
コリメーターレンズを調整することで実現できる「スリット位置に焦点があった光」を、さらにカメラレンズを調整することでカメラにピントを合わせることが重要になります。こうすることで、スリット端の境界のエッジがはっきりと出て、かつフラウンホーファー線のピントが合った状態を画面で見ることができます。これが最初の調整で忘れていた部分で、正しい手順できちんと確認して像が実際に劇的に改善された要因です。
ここまでくると、あとは鏡筒の焦点をスリット位置に合わせることだけが残っています。実際に鏡筒のフォーカサーで合わせてやると、太陽の直接光の端の境界のピントもスリット上に合うために、カメラで見てもエッジがきちんと出たピントが合った状態に自動的になるというわけです。
今回は調整も上手くいきましたが、今後のことを考えると一つ疑問が出てきます。スリットの端が画面で見えているうちはいいのですが、もっと長いスリットを使ったり、センサー面積が小さいカメラを使ったなどで、スリットの端が見えない場合はどうなるのでしょうか?スリット長を長くする予定なので、こういったケースでもきちんとした調整法を確立する必要がありそうです。
何をどうやって合わせているかの仕組みはおそらく上に書いたようなことだと思います。でも素人の考えることなので、もしかしたら間違っているかもしれません。何か気づいた方はコメントにでも残してもらえると助かります。
特にSol'Exを持っている方に、上記方法を試していただいて、本当に像がきれいになるか見てもらえたらと思います。うまくいったら教えてください。
再調整がうまくいかない?
ゴールはきちんとした太陽画像が撮影できることです。次のような手順で再調整しました。
- カメラを定位置に固定。
- 回折格子の角度をHα線に合わせる。
- カメラの露光時間を伸ばしたり、ゲインをあげたりして背景光を画面で見えるようにする。
- 「背景光のフランウンホーファー線」を見ながら、カメラレンズの位置をマイクロメーターで「フラウンホーファー線のピント」が出るように合わせる。
- 太陽を導入して、太陽光を直接見る。「太陽の端のエッジ」がはっきり見え、かつ「フラウンホーファー線のピント」が合うように、コリメートレンズの位置と鏡筒のフォーカサーを繰り返し調節して合わせ込む。
このような調整をして、撮影してみた画像がこれです。
ボケボケです。上の手順を何度かやっても、全然改善しません。コワレタカ?と一瞬思いました。
忘れていたこと
でも上の手順で一つ忘れていたことがあったのです。何だと思いますか?
クイズにしようかとも思いましたが、ちょっと複雑すぎるかと思うので、今回はすぐに答えに行きます。
忘れていたことを含めた、正しい手順です。
- カメラを定位置に固定。
- 回折格子をHα線に合わせる。
- カメラの露光時間を伸ばしたり、ゲインをあげたりして背景光を画面で見えるようにする。
- 背景光で見える「スリットの端にあたる明るい部分の境界」を見ながら、カメラレンズの位置とコリメートレンズの位置を、2つのマイクロメーターを行き来しながら、「スリット端の境界のエッジ」と「背景光のフラウンホーファー線」が両方ともはっきり出るように合わせる。
- 太陽を導入して、太陽光を直接見る。鏡筒のフォーカサーを調整しながら「太陽のエッジ」と「フラウンホーファー線のピント」が両方とも合うように合わせる。
- 鏡筒のフォーカサーだけで両方とも合わない場合は何かおかしいので、3に返って見直す。ぴったり合うところでは、「縦の線」が最も多く見える。
最初の手順では「スリット端の境界のエッジ」を見ることを忘れていたのです。実際、マイクロメーターで2回転分くらい、コリメータレンズ位置にして1mm位ずれていました。ここを合わせなくても、「太陽のエッジ」ははっきり見え、かつ「フラウンホーファー線のピント」が出てしまうので、一見全部合わせたように思いこんでしまったのが敗因です。
この手順を踏んで合わせた画像が下になります。雲が出てきてしまったので明るさが一様でないですが、シャープさは上の画像を雲泥の差であることがわかります。
調整方法はきちんと理解されているのか?
2枚の画像を見て少し思うところがあります。上の画像って、Sol’Exの平均的な画像に似てませんでしょうか?もちろん、もっときれいに出ている画像もあるので、必ずというわけではありません。でも2枚の画像の調整で違うところって、コリメートレンズの位置が高々1mmほどずれているだけなんです。あとの自由度は最初の調整でもできる限り合わせているので、コリメートレンズ位置以外は最適化されてるんですよね。
この結果を見る限り、1mmはもうズレすぎでお話にならないのですが、じゃあ実際後半の調整ではどれくらいの精度で合わせたかに興味がいくかと思います。驚かないでください。約100分の1「10μm」のレベルで合わせています。マイクロメーターがあることで実現できるオーダーですが、実際にマイクロメータの精度でちょうどいいくらいです。というのも、マイクロメーターの目盛りを見ずに画面だけで合わせるのを何度か試しても、毎回ほぼ同じ目盛り位置に行きます。1目盛りが10μm刻みなので、同程度のオーダーで実際に合わせているというわけです。
典型的なSol'Exユーザーが、Sol'Exの標準的な手合わせ機構でこのオーダーまで合わせているとはなかなか考えにくいです。Sol'Exできれいな結果を残している方は、ここら辺の所にかなり気を使っているのかと思います。
Sol’Exの調整方法を調べてみたのですが、コリメータレンズの位置については単に「調整する」くらいしかなく、具体的に「何を見ながら」「どれくらいの精度で」合わせたらいいのか、少なくとも日本語で書いてある記述はどこにも見当たりませんでした。Sol’Exで、上の正しいと思われる手順でうまく合わせこんだら、実際もっときちんと写るのでしょうか?一度試してみたいです。
SHG700を購入した時点で、Hαを撮影するならかなりきれいに写るはずです。それはコリメーターレンズの位置をあらかじめきちんと調整してくれているからです。でも何らかの拍子でそこをずらしてしまい、その後調整すべきところをきちんと調整し直さなければ、写りは全く駄目になるということを今回示すことができたのかと思います。
今後、SHG700を手に入れる方が日本でもどんどん出てくると思います。調整方法はやはりちょっと複雑なので、だんだん調子が悪くなっていったなど、困る人も出てくることは容易に推測できます。正しく調整する方法を確立して、広く認識されることが大事なのかと思います。
調整過程の詳細
上の説明は単純な手順だけの話なので、調整の過程で何がどうやってあっていくのか、ちょっと考えてみたので、もう少し詳しく書いておきます。
調整すべき自由度は、以下のように5つもあります。
- 回折格子の回転角(波長の選択)
- カメラ位置
- カメラレンズ位置
- コリメーターレンズ位置
- 鏡筒の焦点
その内、1と2は自分で任意に位置を決めることができます。この2つの位置に合わせて、残り3つの自由度の位置を一意に決めてやる必要があります。
ところが、3のカメラレンズがカメラに像を結ぶ位置は、4のコリメーターレンズ位置に依存します。この2つの自由度がカップルしているのが、調整を難しくしている要因の一つです。
もう一つのポイントは、4までは太陽の直接光を必要としないので、4までの自由度と、5の鏡筒の焦点の自由度は独立です。5は鏡筒の焦点位置をスリット上に合わせるだけです。なので、鏡筒のフォーカス状態とスリットの位置だけで決まります。
コリメーターレンズの役割
では、4のコリメーターレンズ位置は何を調整しているのでしょうか?ここが最大のポイントです。
そもそも背景光は散乱光に近いものなので、鏡筒のピントに関係なく、入ってきた光に対してカメラレンズ位置だけを調整することで、カメラにフラウンホーファー線のピントを合わせることができます。コリメーターレンズがどんな位置にあろうと、カメラレンズでカメラにピントを合わせることができてしまいます。
でもこの適当な状態だと、スリット位置で焦点を結んでいない光に対してカメラにピントが合ってしまっているので、スリット位置を見る目安となるスリットの端の境界のエッジがボケて出てしまいます。これが、この日最初にミスった部分です。
コリメーターレンズを調整することで実現できる「スリット位置に焦点があった光」を、さらにカメラレンズを調整することでカメラにピントを合わせることが重要になります。こうすることで、スリット端の境界のエッジがはっきりと出て、かつフラウンホーファー線のピントが合った状態を画面で見ることができます。これが最初の調整で忘れていた部分で、正しい手順できちんと確認して像が実際に劇的に改善された要因です。
ここまでくると、あとは鏡筒の焦点をスリット位置に合わせることだけが残っています。実際に鏡筒のフォーカサーで合わせてやると、太陽の直接光の端の境界のピントもスリット上に合うために、カメラで見てもエッジがきちんと出たピントが合った状態に自動的になるというわけです。
今回は調整も上手くいきましたが、今後のことを考えると一つ疑問が出てきます。スリットの端が画面で見えているうちはいいのですが、もっと長いスリットを使ったり、センサー面積が小さいカメラを使ったなどで、スリットの端が見えない場合はどうなるのでしょうか?スリット長を長くする予定なので、こういったケースでもきちんとした調整法を確立する必要がありそうです。
お願い
何をどうやって合わせているかの仕組みはおそらく上に書いたようなことだと思います。でも素人の考えることなので、もしかしたら間違っているかもしれません。何か気づいた方はコメントにでも残してもらえると助かります。
特にSol'Exを持っている方に、上記方法を試していただいて、本当に像がきれいになるか見てもらえたらと思います。うまくいったら教えてください。












































