ほしぞloveログ

天体観測始めました。

カテゴリ: 調整・改造

ちょっと前に、XでにゃーとんシュガーさんからR200SSでフラット補正がうまく行かないという投稿がありました。

ちょうど同じ時期にseki-chanさんもR200SSでよく似た問題に直面していて、個人的に直接問い合わせがあったので、個々のRAWファイルにまで見ながら、ある程度の理由を突き止めました。だいこもんさんからその過程を公開してほしいとの要請があったのですが、記事にするのに時間がかかってしまいました。

実際、皆さんフラット補正には相当苦労されてますよね。理由はそれぞれかと思いますが、フラット補正については古くから様々な方法が提案されています。それでもいまだに決め手がないような状態かと思います。光学的フラット補正の「アルゴリズム」自体は、各種画像処理ソフトにおいてある程度確立しているので、問題は「フラット画像の撮影方法と」言ってしまってもいいかもしれません。

ちょうどいい機会なので、最近思っているフラット補正について思うこともあり、記事にしておきます。あくまで光学的なフラット補正についてで、画像処理中に行うソフト的なフラット補正については基本触れず、今回は最後に少しだけ適用するだけにします。


フラット補正は大変

まず、フラット画像の撮影について、私がやっている方法を何通りか書いておきます。ただし、この方法が必ずしも正しいわけではありません。自分の環境に合わせて各自で試されるのがいいのかと思います。

基本的には、私は部屋の中の白い壁を使っています。これは元々、以前見学に行った東京大学木曽観測所の口径1mのシュミット望遠鏡が、ドーム内に吊るした白いスクリーンを使ってフラット画像を撮影していることから、この方法にしたという経緯があります。

白い壁を使う場合ですが、光源は日光の方がよくて、晴れた日か、曇りの場合は全面が曇っていて明るさが時間であまり変化しない日がいいです。窓の近くで、直射日光が当たらない壁で、できるだけ均一に光が当たっている部分を探します。基本的には明るい方がいいですが、窓が大きくて明るすぎる場合などは、薄手のカーテンなどしてもいいでしょう。壁の明るさはなかなか一様にはならず、窓側に近い側がどうしても明るくなりますが、それでもできるだけ均一な場所を選びます。このグラデーションに近い明るさの違いは、PixInsightのABEの1次でほとんど落とすことができます。あと、鏡筒の自らの影が壁に映ったりするので、あまり鏡筒を壁に近づけないことです。

もしくは、障子を利用する手があります。鏡筒の径が収まる面積の障子があれば、直射日光が当たらないところを探して、それでフラット撮影すると簡単です。屈折など、そこまで口径が大きくない場合はいいのですが、大口径の反射型などではそれだけの面積を持つ障子面を探すのが難しくなってくるので、私は最近は障子はあまり使っていません。

もう一つの方法が、晴れた昼間でいいので、鏡筒を空に向けてピントをずらして撮影することです。これは鏡筒やフォーカサー部、カメラ筐体からのセンサー面への光の入り方をかなり再現することになるので、フラットはかなり合います。特に光害地では効果が高いです。その代わり、青くなるのでその補正が必要なのと、視野に虫や鳥が入り込むこんでピントが合ってしまうことがあるので、邪魔なものが入っている画像を目で見て取り除く必要があるのが面倒なところです。

逆に一見良さそうで全然ダメなのが、ライト撮影後に対物側にスーパーの袋などを被せて、まだ暗いうちにフラットを撮影することです。「暗いうち」というのがダメな原因で、できたフラット画像は結局のところ暗いところを写しているだけなのでノイズが大きく、これでフラット化すると縞ノイズの原因になったりします。

あと、壁の場合でも、障子の場合でも、青空の場合でも、フラット撮影をするときは「カメラ側を暗くしない」ことがコツでしょうか。現実的には、天体撮影時にフォーカサー部やカメラからも光が入っていて、特に光害地での撮影だとフラット撮影時にそれを再現できないためにフラットが合わないケースがあります。フラット撮影時にもできるだけ実際の状況を再現してやるという考えです。上の方法は全てその観点から有利になっています。壁の(あまり明るすぎない)光を利用するのも、対物側とカメラ側での光量にあまり差をつけないためです。フラット撮影は短時間で済むので、漏れ光は関係ないのではという反論もあるかもしれませんが、ライト画像の撮影時には1枚あたりの露光時間が長くなるので、漏れ光の影響は入ってくると考える方が自然で、それを漏れ光が入っていないフラット画像で補正しても、原理的に補正できないのは想像できるかと思います。

その一方、フラットダークの撮影時はカメラ側も徹底的に暗くしてやります。昼間にカーテンなどで部屋を暗くするだけでは不十分で、私は部屋を暗くして、なおかつ毛布などをカメラを含めて鏡筒全体にかけて光を遮ります。ただし、毛布などを被せる時にカメラの排気口を塞ぐのは厳禁です。熱がカメラにこもってしまい故障の原因になりかねません。排気口を塞がないように且つ、光が入らないような工夫をすべきです。

IMG_8667

接眼部からの漏れがあるかどうかは、カメラを鏡筒につけたままダークノイズを撮影してみるとわかるかと思います。通常のライト撮影と同じ露光時間、ゲインで、対物側にキャップを被せてダーク画像を撮影します。その際、明るい部屋で撮影するのと、暗い部屋でさらに毛布などを全体に被せて撮影して、それぞれの画像を比較してみてください。画像の比較はオートストレッチをして、必要ならABEの4次などを使い差を見やすくするといいでしょう。ここで差が出るならば、漏れ光が原因でフラット補正がきちんと当たらない可能性が高くなります。また、漏れ光でダーク画像自身が汚されてしまい、ダーク補正がうまく行っていない可能性も出てきます。

ダーク画像、フラットダーク画像、必要ならばバイアス画像も、暗い部屋でさらに毛布などを被せて暗い状況を作り出し撮影し、その一方フラット画像はライト画像の撮影時の状況をできるだけ再現するという、ある意味至極真っ当なやり方というわけです。

これらの観点から考えると、LEDなどのフラットパネルでの撮影は原理的にどうやっても合わないと思われます。フォーカサー部やカメラ筐体からの接眼側光の入り方を無視して、鏡筒側だけ光度を強調しているからです。フォーかサーブからの漏れをものすごく気をつけているとか、ものすごく暗いところで天体を撮影しているのなら、接眼側から入る光が少なくなるのでこの問題が顕在化する可能性は下がるでしょう。フォーカサー部やカメラになんの対策もせず、光害地、特にローカルな街灯や家の明かりなどがある光害地では、この問題は大きくなる可能性が高いです。また、そもそもLEDパネルは対物側にピッタリつけるので、光路的にも現実の光の入り方とは変わってくるはずです。壁撮影も原理的には合わないですが、対物側にすきまがあるのでまだ現実を反映しやすいと考えられます。

ただし、LEDが全く使えないかというかというと、そんなことは全くなく、程度問題なのかと思います。暗い場所で撮影している場合は漏れ光の影響は少ないでしょうし、漏れこう対策をきちんとしている場合も大丈夫でしょう。原理的に光のパスが違うのは仕方ないのですが、これもどこまで合わせるかで問題になるかどうかが決まってくるでしょう。私は淡いところを相当炙り出したい口なので、わずかのフラットのズレが問題になってきますし、結局のところ光学的なフラット補正だけでは完全に合わせるのはほぼ無理なので、ソフト的な補正も駆使してます。あまり淡いところをあぶり出さない場合は、フラット補正は多少ズレがあっても問題にならないでしょう。というわけで、それぞれの環境、目標に応じた程度問題ということになるのかと思います。

あと少しだけ一般事項です。フラット画像の撮影は画面が十分明るくなるような露光時間にします。目安はヒストグラムで見てピーク位置が左3分の1から真ん中くらいです。フラット撮影時のカメラのgainはライト撮影時のゲインと必ず同じにしてください。その一方、温度は常温で構わないと思います。フラット撮影時のような短時間露光ではダークノイズはほとんど関係ないですし、バイアスノイズの温度依存性がほとんどないことは以前調べています。それよりも、下手に温度を下げたりして結露してフラット撮影を失敗することの方が多かったです。今のところ常温が原因でフラット補正を失敗したという経験はありません。

その他、基本的なことは当然なのですが、基本的に守るようにようにします。基本ができてないと何をやっても無駄です。例えば、フラットダークは必ず撮影します。フラット化がうまくいかないかなりの原因がフラットダークを使っていないことです。フラットを撮影してからそのまま部屋を暗くして、毛布をかけて、同じゲインと同じ露光時間で撮るだけです。あと、フラットとフラットダークは必ず同じ時間帯に撮影するようにしています。時間が経って温度が違うと振る舞いが変わる可能性があるからです。フラット、フラットダークの温度が合っていれさえすれば良くて、上にも書いたように、ライトフレームの温度とは違っていても構わないので、フラット撮影時に冷却する必要はありません。

いつも気をつけていることは大体これくらいです。ここで書いてるあることも単に経験則で、きちんとした検証はできていませんが、フラットで困ることはあまり無いので、そこまで間違っていないと思います。


問題の画像

seki-chanさんとは結構頻繁に画像処理の検討をしていて、今回撮影したフラット画像も、上のようなことを実行してくれています。その上で、今回はフラット補正が全くうまくいかなかったとのことです。最初に送られてきた画像は以下のようなものでした。

NGC2359_周辺減光が過補正

円のような青い形が周りに出ていて、フラットが合っていないように見えます。状況を聞いて、例えばCBPフィルターを使っているとのことなので、それも疑いました。また、処理ソフトがSirilとのことなので、フラット補正アルゴリズムが間違っている可能性もあると思い、他のソフトでも試してもらいましたが、いずれも状況は変わらずでした。他にも色々試してもらったのですが、なかなか原因が掴めずにいたので、ライト画像、ダーク画像、フラット画像、フラットダーク画像を全枚数をRAWでアップロードしてもらい、手元でそれぞれ確かめることにしました。

実はこの時点である程度原因は予測できていて、seki-chanさんに子午線反転の前後の画像をあらかじめ送ってもらっていました。一見するとあまり差がないように見えるのですが、よくみると暗い部分が反転している様子が見えました。このことを確かめるために、画像をRAWで送ってもらったというわけです。

問題の子午線前後の画像です。
2026-01-09_23-58-39__-10.00_180.00s_0049_d

赤道儀が反転する前後のRAW画像を、debayer、オートストレッチして、SterNetで恒星を消したものをgif化しています。このブログへのアップロードの関係でサイズを小さくしていますが、大まかな傾向を見るのには支障がないでしょう。

繰り返し見て比べてみると、明るいところと暗いところが上下で反転しているのがわかるかと思います。これは、近くにある邪魔な光が、ニュートン反射鏡筒の先端部から入り、先端部近くについている接眼部に非対称に当たるために起こることが原因で、子午線反転でその効果が逆転してしまった様子です。

次に同じ子午線反転前後のライト画像を、フラット補正したものを示します。
2026-01-09_23-58-39__-10.00_180.00s_0049_c_d
RAW画像をフラット補正とダーク補正して、debayer後にオートストレッチしたものです。

フラット補正に利用したマスターフラット画像は以下のようなものです。こちらもdebayerしてオートストレッチして見やすくしています。
integration_RGB_VNG

上のように、フラット補正をした後の画像を2枚を重ねて交互に見比べるとよくわかりますが、迷光の入り方で出来た差を1枚のマスターフラットでは補正しきれていないのがわかります。

次がフラットでは補正しきれていない60枚の画像を位置合わせしてスタックしたものです。
masterLight_BIN-1_4144x2822_EXPOSURE-180.00s_FILTER-NoFilter_RGB

補正しきれていない部分が重ね合わせのようになり、円状の形になっています。それぞれがうまく補正できていない一枚一枚をスタックしたので、当然かなりひどい影響となってしまっています。これが、最初にseki-Chanさんから送られてきた画像相当のものになります。一番上の画像を比べると、ちょっと補正できていない部分の形が違って見えますが、ストレッチの仕方で見え方は違ってきます。紫っぽい色なんかはよく似ていますね。


なぜこんなことが起こるのか?

結局のところ、ニュートン反射の迷光は、接眼部が鏡筒先端に近いことが原因です。接眼部が鏡筒の片側だけについているので、入ってくる迷光が本質的に対称にならないからです。撮影画面上では左右や上下で非対称になります。左右か上下かは、カメラの回転角によります。このような鏡筒と撮影地の場合、子午線反転で光の当たり具合がかなり変わってしまっています。このことは、接眼部が鏡筒横についている反射型ではかなり一般的に起こる話で、私の使っているε130Dでも起こっています。同じ反射でも、接眼部が対称になっているシュミカセなどでは起きにくいと思われます。


この光のズレは、赤道儀が動くことにより、光害などによる迷光の入り具合が違ってくることが第一に考えられます。光害と言っても、遠くの空が明るいとかというよりは、近くの街頭などの影響の方が効いてくると思われます。周りが明るい市街地での撮影だと顕著だと思います。フラット画像は例えば壁利用なんかだと、安定した状態で撮影した画像をスタックしますが、少なくともこうしてできた「一通り」のフラット画像で、これだけ違う状態を一度にフラット化するのは無理でしょう。反転前と反転後の位置でフラットを撮影して、それぞれ別に処理すると少しマシなのかもしれません。

実際には赤道儀の反転時だけでなく、追尾で動いていく最中にも迷光の状態が変わっていくはずなので、反転前後の2グループに分けるだけだとまだ不十分かもしれません。フラット処理を終えた画像を1枚1枚見ていくと、処理しきれていない誤差が画面上を動いていくのが見えます。これらをスタックすると、補正できないところが円上の形になって出てくるかと思います。

上の、円状にフラット補正がうまくいっていない画像を、無理やりソフト的に解決してみたものになります。
integration1_ABE_ABE_ABE_ABE_ABE_ABE_ABE_ABE_DBE1

これはPixInsightのABEで1次から8次まで8回繰り返し、最後にDBEをかけたものです。これくらいやって、やっと添付画像くらいになりました。完璧ではありませんが、かなりましになったかと思います。

でも、この補正は画面全体が星雲でモクモク状態だと通用しません。PixInsightのMGCだとかなり対応できるのですが、このトールの兜星雲のように、領域のデータがまだないようだMGCも使うことができません。今回は全体がモクモクしているわけではないので、まだなんとか誤魔化せたくらいです。

一番の解決方法はまずはフードだと思います。それでも時としてフードが悪さをする場合もあります。フードはペラペラの薄いものだと形が安定しないので、取り付け方次第で迷光の入り具合が変わります。もしフードを取り付けるなら、頑丈で変形せず、毎回同じ位置に取り付けられるものがいいと思います。

ε130Dもよく似た問題があるのですが、結局フードも結構面倒なのと、フードなしの方がいい場合もあったりするので、私はソフト側でなんとかしてしまっています。

というわけで、光害の影響というのが私の結論です。光害地ではフードは必須でしょう。それでも影響は残ると思うので、ソフト的な処理が必要になるかと思います。


エピローグ

その後のseki-chanさんからの返答です。
ご検討いただき、ありがとうございます。また、迷光の影響と結論づけていただき、ありがとうございます。大変勉強になりました。

今回ご指摘いただき、これまで撮影した画像を落ち着いて見返してみました。

いつも屈折望遠鏡とニュートン反射望遠鏡で撮影しています。
屈折望遠鏡の方はフラット補正後に割と素直な勾配のカブリにとどまっていました。
こちらは結露対策で長めのフードを付けており、迷光対策になっていたのだと思います。

一方、ニュートン反射の方は今回ほどひどくはないものの、ほとんどの写真で複雑な背景勾配になっていることが分かりました。
程度が軽く、一回のBGE処理で目立たなくなっていたので、気づいていないだけでした。
とのことでした。多かれ少なかれ、ニュートンで光害地での撮影では同様の問題が存在するのかと思います。


まとめ

フラット補正については私も紆余曲折してきていて、過去様々な方法を試しました。障子撮影でかなり落ち着いてきて、大口径も含めて白壁撮影で今はほとんど問題がないです。撮影したフラット画像は、鏡筒とカメラを外したり回転しなければ、使い回しができるので、できるだけ同じセッティングを保ちながら撮影するようにしています。それでも最近ε130Dの子午線反転でまだ問題があることがわかったので、こちらはもう少し対策を進める必要がありそうです。

今回、フラット画像撮影においてフォーカサー部などからの光の漏れの影響について言及しましたが、もう少し定量的な評価が必要かと思っています。ただ、これまでこういったことがこれまで議論されたことはほとんどなかったで、フラットパネルの有効性も含めて、今後議論が進めばいいのかと思っています。


前回まででStellaVitaの準備編撮影編を記事にしました。




今回の記事では、一通り使ってみて、気づいた点や改善要望点などを書いておきます。

IMG_2364


情報関連

  • 情報はある程度は探せば出てくるのですが、問題は、互いのリンクがされていないので、検索に引っかからない限り情報に辿り着けないことです。例えば準備編で挙げたToupTek社の中にあるFAQは検索で見つけたのですが、どこからリンクされているのかわかりません。上部のリンクのところを見ると、Home -> StellaVitaとなっているようなのですが、上のStellaVitaのページは宣伝用のトップページに近くて、技術的な詳細にはつながっていません。きちんと情報を一覧で表示してくれるようなページがあるといいのかと思います。
  • アップデートの記録がここにあります。週一くらいのかなりのペースで更新されているので勢いがあるのがわかります。ただし、機器のサポートとかバグ取りがメインで、ユーザー、特に初心者に対しての親切設計とかまではまだ手が回っていない気がします。ここら辺がメジャーになるかマイナーで終わってしまうかのポイントかと思います。是非とも頑張ってほしいです。
情報に関しては、細かい気遣いがユーザーの評判を呼び、さらにユーザー数の増加に繋がっていくのかと思います。そういった意味では、まだこなれているとは言えないので、メーカー側の努力を期待したいです。


ハードウェア関連

  • 電源入力コネクタですが、電源ケーブルや本体側のコネクタ部分を触ると電源が切れてしまいます。赤道儀が大きく動く時など、ケーブルを引っ張られても電源が途切れることがあります。ケーブルの方が問題がある可能性もありますし、もしかしたら手持のStellaVitaだけかもしれませんが、接触にもう少し余裕をもったコネクタが選ばれるといいのかと思います。通常のPCはあまり場所が変わるとか想定してないかもしれませんが、鏡筒に取り付ける場合なども考えると、本体が動いてケーブルが多少引っ張られることなどもあるので、自分でできる対策としてはケーブルを別途固定するなど、方法を少し考えた方がいいのかもしれません。とりあえず今回はできるだけケーブルなどに触らないようにして進めて、撮影まで完了することができました。-> (2026/1/18追記) StellaVitaに付属の短いL字ケーブルを使うと、揺らしても切れることは全くなくなりました。電源供給に手持ちの長いケーブルを使ってましたが、改めて見てみると外径が細くて内径が太いケーブルで、不安定になる方向のケーブルでした。付属の短いケーブルに長いケーブルを足して使う分には大丈夫そうなので、電源供給で長いケーブルを使いたい場合は、オスメスのケーブルを買って延長して、付属のケーブルを本体側に挿すのがいいかと思います。
  • StellaVita本体からDC12V電源を4つ供給できるのですが、3番と4番が差し込んでも反応しなくて困ったというコメントがありました。初期設定ではオフになっていたのを後から気づいたとのことです。
  • ところで、StellaVita本体ってバチンと電源を切ってしまっていいのでしょうか?一応設定のその他の所に「StellaVita管理」というのがあって、そこからシャットダウンができるみたいです。でもわざわざこんなところまで探って電源落とさないですよね。試しにバチンと電源を切るのを何度か試しましたが、今の所特に問題ないようです。

ドライバー、アプリ関連

  • カメラの冷却をオンにしたときに、ファンをオフにできるというのは温度上昇で故障の元になるので、ファンをオフにできないようにするか、できるとしてももう一段奥に隠した機能にするなどの工夫をしたほうがいいかと思います。
  • カメラ接続時にドライバ一覧を見てみると、有名どころの名前が全然出てこなくて最初戸惑いました。実際には有名どころのサポートされているカメラは接続した時点で認識できるカメラとして表示されるので、実用上の問題はないです。その一方、赤道儀はケーブル接続後に「検索」をしても上手く見つからないことや、違う赤道儀として認識されることが多いです。その場合は赤道儀のドライバを自分で選びますが、こちらは名前がないものは基本的にサポートされていないのかと思います。このようにカメラと赤道儀のドライバ名の表示に、サポートされているかどうかの一貫性がないと、戸惑うのかと思います。
  • 分かってしまえばいいのですが、赤道儀の場合は「ドライバーをきちんと選択しなければならない」ということさえ最初はわからないわけです。このドライバー選択で迷う初心者は結構いると思うので、もう少しうまく誘導してくれる示し方を検討してもらえればと思います。
  • ガイドが動いていなくても撮影することは可能なのですが、その場合NINAのように「ガイド開始されていませんが...」とかの警告が出ると、ガイド忘れがなくていいかと思います。特に、ガイドカメラの接続トラブルがあったので、ガイドがされているかどうかさえも気づかないことがありました。
  • 電源を落とすたびに、ガイドのキャリブレーションが必要になります。キャリブレーション情報は使いまわせるはずなので、情報を保持する機能があるといいです。特に、今回キャリブレーションは終えるまで時間がかかったので、なおさらです。
  • StellaVitaでの追加撮影ですが、アプリのタスク作成で、せっかく作ったライト画像のタスクなどをいちいち消すのは面倒なのと、記録として持っておきたいなどもあると思うので、タスクのオン/オフや、順序の入れ替えができるといいかなと思いました。

一部でStellaVitaはNINAと似ているという意見がありますが、私はあまりそうは思いませんでした。NINAは非常に細かい設定ができて、ある程度複雑なのですが、天体撮影の知識があればユーザーインターフェースはかなり直感的で、日本語訳も素晴らしく、ほとんど迷うことはありません。

その一方、StellaVitaはかなり簡略化されてるとは言え、天体写真に知識があっても、どこにその機能があるのか迷うことが多かったです。これは必要な時にだけ必要な機能が表示されるような設計方針になっているからのようです。その一方、天体写真の知識がない初心者にとっては他に目が移らないので、もしかしたら逆に利点になっている可能性もあります。ただ、そのことをさっ引いても、やはりまだソフト的に足りない機能や説明があるのはおそらく誰もが思うことかと想像します。ハード的な機能は一通り揃えているかと思うので、それをきちんと引き出すようなソフト的な充実が求まれているのかと思います。

そうは言っても、必要な「天体の画像を写す」という最低限のことは十分にできます。なのでStellaVitaを使うことに躊躇する必要はないでしょう。今後もアップデートを重ねていくはずですし、良くなることはあっても悪くなることはないはずです。個人的にはまだ発展する余地があって、それらの発展をこれからも味わっていくことができるというのは、ちょっと楽しみなところです。NINAみたいに、個人ユーザーからの拡張機能とかを受け付けてくれれば、もっと楽しくなるのにとか思ったりします。


StellaVitaの評価

私は実を言うと、こういったオールインワン機器はあまり好きではありません。簡単になるのはいいことなのですが、その代わりにできないことが出てくることが嫌なのです。なので、すっかりメジャーになったASIAirにも手を出してきませんでした。

ASIAirに手を出さなかった理由はもう一つあります。ZWO社のCMOSカメラしか使えないという囲い込み方針があまり好きではないからです。これは以前の私の趣味で嫌というほど味わいました。自分のメーカー以外の製品を一部にでも使っている場合は大会に出場できないとかいう制限をかけてくるのです。天文趣味に移って良かったと思ったことが、どのメーカーの機材を使っても自由だということです。自社製品を売りたいこと、サポートが大変なことも理解できますが、宇宙は誰のものでもなく、天文は本来自由なものなのかと思います。ZWO社には今からでも囲い込み方針を変更してもらえたらと強く思っています。

StellaVitaはZWO社以外のカメラも制限なく使えるということろが、他のユーザーも大きく期待しているところではないでしょうか。もちろんZWO社のカメラも使うことができます。その分、サポートが大変になるのかと思いますが、ぜひこの方針を続けていって欲しいと思っています。

現段階の総合的な評価としては、必要十分な機能は整っていると思います。最低限の目的の「天体写真を撮る」という観点から行くと、十分達成することができました。その後の画像処理に十分耐え得るクオリティーの画像が撮影できています。その一方、アプリ側の作り込みや、初心者へのサポート体制はもっと充実させる必要があるのかと思います。

サポート体制に関しては、ある程度ユーザー数が増えないとあまり力を入れることはできないのかとも想像できますが、ここがToupTekの正念場の気がします。私自身はToupTekのカメラのG3M678Mを使っていて、性能的には非常に満足しています。ToupTekも日本に本格的に進出しようとしているところかと思います。StellaVitaについても今後の発展とサポートに期待していきたいと思います。







星をもとめて」から帰宅して、機材のチェックをしていました。特にSHG700は、フラウンホーファー線の展示のために、カメラを外したりピント位置をずらしたりしたのと、一度三脚ごと倒れてしまったので、ダメージなどないか、一からチェックすることにしました。


再調整がうまくいかない?

ゴールはきちんとした太陽画像が撮影できることです。次のような手順で再調整しました。
  1. カメラを定位置に固定。
  2. 回折格子の角度をHα線に合わせる。
  3. カメラの露光時間を伸ばしたり、ゲインをあげたりして背景光を画面で見えるようにする。
  4. 「背景光のフランウンホーファー線」を見ながら、カメラレンズの位置をマイクロメーターで「フラウンホーファー線のピント」が出るように合わせる。
  5. 太陽を導入して、太陽光を直接見る。「太陽の端のエッジ」がはっきり見え、かつ「フラウンホーファー線のピント」が合うように、コリメートレンズの位置と鏡筒のフォーカサーを繰り返し調節して合わせ込む。

このような調整をして、撮影してみた画像がこれです。

13_20_11_0000_13_20_11_autostretch_0_00

ボケボケです。上の手順を何度かやっても、全然改善しません。コワレタカ?と一瞬思いました。


忘れていたこと

でも上の手順で一つ忘れていたことがあったのです。何だと思いますか?

クイズにしようかとも思いましたが、ちょっと複雑すぎるかと思うので、今回はすぐに答えに行きます。

忘れていたことを含めた、正しい手順です。
  1. カメラを定位置に固定。
  2. 回折格子をHα線に合わせる。
  3. カメラの露光時間を伸ばしたり、ゲインをあげたりして背景光を画面で見えるようにする。
  4. 背景光で見える「スリットの端にあたる明るい部分の境界」を見ながら、カメラレンズの位置とコリメートレンズの位置を、2つのマイクロメーターを行き来しながら、「スリット端の境界のエッジ」と「背景光のフラウンホーファー線」が両方ともはっきり出るように合わせる。
  5. 太陽を導入して、太陽光を直接見る。鏡筒のフォーカサーを調整しながら「太陽のエッジ」と「フラウンホーファー線のピント」が両方とも合うように合わせる。
  6. 鏡筒のフォーカサーだけで両方とも合わない場合は何かおかしいので、3に返って見直す。ぴったり合うところでは、「縦の線」が最も多く見える。

最初の手順では「スリット端の境界のエッジ」を見ることを忘れていたのです。実際、マイクロメーターで2回転分くらい、コリメータレンズ位置にして1mm位ずれていました。ここを合わせなくても、「太陽のエッジ」ははっきり見え、かつ「フラウンホーファー線のピント」が出てしまうので、一見全部合わせたように思いこんでしまったのが敗因です。

この手順を踏んで合わせた画像が下になります。雲が出てきてしまったので明るさが一様でないですが、シャープさは上の画像を雲泥の差であることがわかります。

13_44_59_0000_13_44_59_autostretch_0_00


調整方法はきちんと理解されているのか?

2枚の画像を見て少し思うところがあります。上の画像って、Sol’Exの平均的な画像に似てませんでしょうか?もちろん、もっときれいに出ている画像もあるので、必ずというわけではありません。でも2枚の画像の調整で違うところって、コリメートレンズの位置が高々1mmほどずれているだけなんです。あとの自由度は最初の調整でもできる限り合わせているので、コリメートレンズ位置以外は最適化されてるんですよね。

この結果を見る限り、1mmはもうズレすぎでお話にならないのですが、じゃあ実際後半の調整ではどれくらいの精度で合わせたかに興味がいくかと思います。驚かないでください。約100分の1「10μm」のレベルで合わせています。マイクロメーターがあることで実現できるオーダーですが、実際にマイクロメータの精度でちょうどいいくらいです。というのも、マイクロメーターの目盛りを見ずに画面だけで合わせるのを何度か試しても、毎回ほぼ同じ目盛り位置に行きます。1目盛りが10μm刻みなので、同程度のオーダーで実際に合わせているというわけです。

典型的なSol'Exユーザーが、Sol'Exの標準的な手合わせ機構でこのオーダーまで合わせているとはなかなか考えにくいです。Sol'Exできれいな結果を残している方は、ここら辺の所にかなり気を使っているのかと思います。

Sol’Exの調整方法を調べてみたのですが、コリメータレンズの位置については単に「調整する」くらいしかなく、具体的に「何を見ながら」「どれくらいの精度で」合わせたらいいのか、少なくとも日本語で書いてある記述はどこにも見当たりませんでした。Sol’Exで、上の正しいと思われる手順でうまく合わせこんだら、実際もっときちんと写るのでしょうか?一度試してみたいです。

SHG700を購入した時点で、Hαを撮影するならかなりきれいに写るはずです。それはコリメーターレンズの位置をあらかじめきちんと調整してくれているからです。でも何らかの拍子でそこをずらしてしまい、その後調整すべきところをきちんと調整し直さなければ、写りは全く駄目になるということを今回示すことができたのかと思います。

今後、SHG700を手に入れる方が日本でもどんどん出てくると思います。調整方法はやはりちょっと複雑なので、だんだん調子が悪くなっていったなど、困る人も出てくることは容易に推測できます。正しく調整する方法を確立して、広く認識されることが大事なのかと思います。


調整過程の詳細

上の説明は単純な手順だけの話なので、調整の過程で何がどうやってあっていくのか、ちょっと考えてみたので、もう少し詳しく書いておきます。

調整すべき自由度は、以下のように5つもあります。
  1. 回折格子の回転角(波長の選択)
  2. カメラ位置
  3. カメラレンズ位置
  4. コリメーターレンズ位置
  5. 鏡筒の焦点

その内、1と2は自分で任意に位置を決めることができます。この2つの位置に合わせて、残り3つの自由度の位置を一意に決めてやる必要があります。

ところが、3のカメラレンズがカメラに像を結ぶ位置は、4のコリメーターレンズ位置に依存します。この2つの自由度がカップルしているのが、調整を難しくしている要因の一つです。

もう一つのポイントは、4までは太陽の直接光を必要としないので、4までの自由度と、5の鏡筒の焦点の自由度は独立です。5は鏡筒の焦点位置をスリット上に合わせるだけです。なので、鏡筒のフォーカス状態とスリットの位置だけで決まります。


コリメーターレンズの役割

では、4のコリメーターレンズ位置は何を調整しているのでしょうか?ここが最大のポイントです。

そもそも背景光は散乱光に近いものなので、鏡筒のピントに関係なく、入ってきた光に対してカメラレンズ位置だけを調整することで、カメラにフラウンホーファー線のピントを合わせることができます。コリメーターレンズがどんな位置にあろうと、カメラレンズでカメラにピントを合わせることができてしまいます。

でもこの適当な状態だと、スリット位置で焦点を結んでいない光に対してカメラにピントが合ってしまっているので、スリット位置を見る目安となるスリットの端の境界のエッジがボケて出てしまいます。これが、この日最初にミスった部分です。

コリメーターレンズを調整することで実現できる「スリット位置に焦点があった光」を、さらにカメラレンズを調整することでカメラにピントを合わせることが重要になります。こうすることで、スリット端の境界のエッジがはっきりと出て、かつフラウンホーファー線のピントが合った状態を画面で見ることができます。これが最初の調整で忘れていた部分で、正しい手順できちんと確認して像が実際に劇的に改善された要因です。

ここまでくると、あとは鏡筒の焦点をスリット位置に合わせることだけが残っています。実際に鏡筒のフォーカサーで合わせてやると、太陽の直接光の端の境界のピントもスリット上に合うために、カメラで見てもエッジがきちんと出たピントが合った状態に自動的になるというわけです。

今回は調整も上手くいきましたが、今後のことを考えると一つ疑問が出てきます。スリットの端が画面で見えているうちはいいのですが、もっと長いスリットを使ったり、センサー面積が小さいカメラを使ったなどで、スリットの端が見えない場合はどうなるのでしょうか?スリット長を長くする予定なので、こういったケースでもきちんとした調整法を確立する必要がありそうです。


お願い

何をどうやって合わせているかの仕組みはおそらく上に書いたようなことだと思います。でも素人の考えることなので、もしかしたら間違っているかもしれません。何か気づいた方はコメントにでも残してもらえると助かります。

特にSol'Exを持っている方に、上記方法を試していただいて、本当に像がきれいになるか見てもらえたらと思います。うまくいったら教えてください。


最近ずっと太陽で少し疲れてきたので、たまには夜もと思い、少しメンテナンスも兼ねて電視観望関連のテストをしました。


メンテナンス

先月末の飛騨コスモス天文台での電視観望は散々な結果に終わりました。やはり普段から触っていないと、いざというときに使い物になりません。今回はちょっと反省して、きちんとメンテナンスすることにしました。


現在電視観望用としては3台のPCを運用しています。Windows SURFACEの7と8、M1 MacのVMware上で動くArm Windowsです。その中でメインはSURFACE 7で、予備がM1 Macだったりします。理由は仮想上でない普通のWindowsの方がなんだかんだ言って安定していることと、予備も含めてWindows PCを2台も持っていきたくないことです。SURFACE 7はSWAgTiなど撮影用にも使っていて環境を壊したくないので、いまだにWindows 10で、電視観望に用の環境も整っています。SURFACE 8はWindows 11で、太陽用に使っていたりでそこまで電視観望用の整備をしてませんでした。

今回いい機会なので、3台とも関連ソフトをアップデートをすることにします。想定ハードウェアはFMA135+Uranus-C+トラバースと、50mmレンズ+ASI294MC+自由雲台の広角電視観望の2種類です。そのための関連ソフトは最新のバージョン番号も書いておくと
となり、これらを3台のPCで全て最新版にアップデートしました。年単位でアップデートしていなかったものも結構あったので、いい機会となりました。

最新版にするにあたり設定も少し見直しました。特に以下の4点は、おまじないかもしれませんが、SharpCapとSynScan Proとの接続の不安定性の解決に効く可能性があります。
  • SynScan Proの「設定」「接続の設定」の「リードアウトタイム」をデフォルトの200msから1000msにしました。これで最初に接続に失敗することが少なくなります。
  • ファイヤーウォールでパブリックでの接続を許可しました。これは効果があるか不明ですが、プライベートだけだとダメだったことがあります。
  • SynScan Proの「設定」「観測値」の緯度、経度情報を自動ではなく手入力すること。
  • SharpCapのプレートソルブ設定の所の鏡筒の焦点距離をきちんと入力すること。
3台とも、ソフトアップデート後、上のような設定に気を付けてセットアップしましたが、どれもSharpCapとSynScan ProのWiFi接続も安定していて全く落ちることはなく、以前あったSharpCapのプレートソルブを3回実行すると必ずSynScan Proとの接続が落ちるという謎の現象も無くなりました。


ZWOカメラのArm Windows対応状況は1年たっても進展なし

広角電視観望ではできるだけ大きいセンサー面積が欲しいので、ASI294MCを使っています。手軽さ優先なので冷却は無しです。問題はM1 MacのArm版 Windowsです。カメラドライバーだけはArm版専用のものを必要とします。逆にカメラドライバー以外では今のところ大丈夫で、ASCOM用ドライバーなどカメラ以外の全てのドライバー、その他全てのアプリはArm用ではなく普通のWindowsのものがそのまま使えます。これは結構驚きでした。

カメラドライバーのインストールは以前かなり苦労しました。


その苦労もあり、PlayerOneのドライバーは安定して動いています。

問題はZWOカメラで、ドライバーをインストールはできて一応動くのですが、Windowsを再起動するたびに署名を無効にしなくてはならずに、そのためだけにWindowsをさらに2回再起動する必要があるなどかなり面倒です。しかもその署名無効方法があまり直感的でなく、覚えきるのが大変で、手順を間違えると深刻なことになる可能性もあり、毎回手順を確認しながら実行するようにしています。そのためやる気が大きく削がれてしまい、観望会においてM1 MacでASI294MCを稼働することはかなり稀な状況になってしまっています。

今回約1年以上たって状況が改善されていることも期待したのですが、調べた限りは状況は全く変わっていないようで、相駆らわず今も署名オフが必要なようです。これは結構残念でした。VMwarewを落とさないか、レジューム機能でWindowsを停止状態にしておけば復帰後もカメラドライバーが生きているので、観望会前は事前に一度認識させておくのがいいのかもしれません。


SynMatrixでのカメラの認識

M1 Macで電視観望を控えるもう一つの理由が、SynScan Appのプレートソルブ「SynMatrix AutoAlign」でUranus-Cが認識されないことでした。SURFACE 7ではきちんと認識されているのに、なぜかM1 MacのArm Windowsでは認識されていないのです。この問題、SynMatrixが必要になるときは結局SURFACE 7を使ってしまって、M1 Macのほうでは長らく解決せずという状態が続いていました。

今回は少し気合を入れて調べてみます。まず、SynMatrixでPlayerOneカメラを認識しているのがSURFACE 7のみ、しかもよく見てみるとZWOカメラもSURFACE 7のみでしか認識されていません。M1 Macだけでなく、今回SynScan ProをアップデートしてSynMatrixが使えるようになったSURFACE 8の方もカメラを全く認識していません。どうやらArm Windowsだからという問題ではないようで、Armが悪いというのは単なる思い込みだったようです。

結局この問題はかなり単純で、少し調べると、SynMatrixがリリースされた時のどこかのコメントに、カメラ用のASCOMドライバーが必要だという記述がありました。まずSURFACE 8に、ZWOカメラ用のASCMOMドライバーと、PlayerOne用のASCMOドライバーをインストールしたら、無事に両カメラとも認識され実際に画像を取り込むことができました。特に、PlayerOneの方はASCOM platformの6.5を必要とすると書いてあったので心配でしたが、7.0.2でも普通に動くようです。

さて問題のM1 Mac上のArm Windowsですが、こちらもZWOとPlayerOneの ASCMOドライバーをインストールしてみました。すると何の問題もなくSynMatrixで両カメラとも認識され、(ZWOの方は署名をオフにしてから)無事に画像を取得することができました。

これで3台ともSynScan Proでのプレートソルブ、SharpCapでのプレートソルブ、安定なSharpCapとSynScan Proの接続が実現され、今後の観望会での電視観望運用に目処をつけることができました。


フィルターなしの広角電視観望で見る天の川

広角電視観望で、カメラレンズとZWOカメラを接続するアダプターをAmazonで見つけた安物にしたところ、飛騨コスモス天文台の観望会でピントが出なかったという致命的な欠点がありました。その時は時間がなかったので結局諦めたのですが、あらためて見直してみました。

まず一番の原因が、QBPが入っていて、それが薄型のT2と1.25インチフィルターをつけるアダプターでカメラにねじ込んで取り付けてあったので、接続アダプターのねじ込みが足りなかったことが問題でした。薄型といっても厚さが数mmはあるので、影響があるみたいです。

まず、フィルターをねじ込みアダプターごと外して、接続アダプターを一番奥までねじ込んで試してみると、ギリギリですがなんとかピントが出ます。このテスト自宅でやっていたのですが、ここでちょっと驚きました。この状態で見る天の川があまりにはっきりしているのです。これまで天の川電視観望は何度もやってきましたが、いずれもCBPやQBPを入れた状態で試していました。これは同時に主に赤い星雲を見るためなのですが、天の川自身の見え方はかなり犠牲にしていたようです。

wde_nofilter2

ただし、当然ですが星雲の見え方はかなり犠牲になります。上の画像は天の川の一番濃いところらへんで、M8干潟星雲などが映り込んでいるのですが、どこにあるかわかりますでしょうか?

この写りだと星雲を見てもらうにはちょっと厳しいので、試しに何とか元々使っていたQBPを入れてなんとかピントが出ないか試してみることにしました。結局、カメラ側に取り付けるのではなく、接続アダプターとレンズの間の隙間に、ねじ込むことをせずにポンと置くだけのような形で入れ込みました。

IMG_1609

揺らすとちょっとカタカタ鳴りますが、T2アダプターが防波堤になってレンズを傷つけるとかもなさそうなので、実用上は問題ないでしょう。

QBPを通して見た天の川ですが、上と同じような画角で見るとこうなります。
wide_QBP

今度はM8、M20、M17、M16など星雲がはっきりとわかりますが、逆に天の川が随分と淡くなります。

見栄えがかなり違うので比較してみるのが面白いかと思います。なので、できるならフィルターの取り外しがすぐにできるといいのですが、これは今後の課題としたいと思います。


SharpCapの新機能

SharpCapのアップデートに伴い、ライブスタックで恒星の色合わせを実現する機能が追加されていました。調べたら6月30日のバージョン4.1.13447.0で搭載されたようなので、まだ出来立てホヤホヤみたいです。どの星の色かを特定するために、プレートソルブと合わせて働く機能のようです。
スクリーンショット 2025-07-25 220910

それに合わせて、背景を自動で調整する機能も搭載されたようです。
スクリーンショット 2025-07-25 220910_cut

各色の上にある白いマーカーの左側をずらすことで、マニュアルでどれだけ引くか調整することもできるようです。

これまでも色バランスと輝度のストレッチなどを駆使して恒星の色を調整するとかはできることはできたのですが、今回はPixInsightのPCCみたいに、より客観的に、安定して色をそろえることができるようになったということかと思います。


まとめ

以上久しぶりの電視観望ネタでしたが、先月あったトラブルはメンテナンスでかなり状況は改善されたと思います。3台体制で、どれも機能に差がなく、同様の動作が期待できます。

今週末にまた飛騨コスモス天文台で観望会があることと、夏休みで8月にも何度か観望会の予定があるのでこれでちょっと安心です。さらに、今回試したノーフィルター天の川も含めて来てくれたお客さんに披露できればと思います。



6月1日の記事で書いたエタロン改善ですが、最後に少し謎が残っていました。
  1. なぜエタロンとカメラの間の距離を長くすると、両像範囲が拡大するのか?
  2. なぜエタロンとカメラの間の距離を長くすると、画面が暗くなるのか?
  3. なぜエタロンとカメラの間の距離を長くすると、分解能が良くなったように見えるのは気のせいか?
などです。その後、少し検証しました。


暗くなる理由

6月5日、平日ですが朝早くから試したところで、2の原因の一部は理由がわかりました。前の記事で推測はしていたのですが、先に答えだけ言ってしまうと、接眼部についているBF(ブロッキングフィルター)と呼ばれている、直径5mmの径の小ささが原因でした。

試したことは、まずは前回のようにカメラをできるだけPSTのアイピース口に対して浅く取り付けて、エタロンとセンサー面の距離を長くとります。具体的な順序は

PST -> BF+アイピース取り付け口 -> アイピース口延長筒(手持ちのVixen製のもの) -> カメラ(G3M678M)

となります。ピントが出るように、C8の主鏡位置移動のつまみを回して合わせます。前回同様に距離が短い場合に比べて画面全体が暗くなるので、再現性はあります。
スクリーンショット 2025-06-05 073153_01_75mm_PST_BF_VIXENextender

次に、接続順序を以下のように変更します。

PST -> アイピース口延長筒(PSTに付属していたもの) -> BF+アイピース取り付け口 -> カメラ(G3M678M)

スクリーンショット 2025-06-05 07375702_75mm_PST_extender_BF_camera

ようするに、エタロンとカメラ間の全体の距離を保ちながら、Vixen製の延長筒を外しBFとカメラセンサー面の相対距離を縮めたわけです。全体長を保つために、BFの手前に別途延長筒を取り付けています。ピントは、C8の調整つまみを回すのではなく、カメラをアイピース口に出し入れすることで調整しています。カメラ位置を変えることでピントが出たなら、そこは全長が同じだった位置ということになります。

視野の大きさや、分解能に見た目の変化はほとんどないですが、明るさだけは倍程度になりました。(見かけの明るさはヒストグラムに応じてオートストレッチしているので同じようになりますが、ヒストグラムの山の位置は変わっているので実際の明るさは変化しています。) これはBFの小径が通る光を制限していたことになり、BFの位置がより焦点近くに移動したために、BFでの光束径が小さくなり、より多くの光が通ることになったのかと思われます。

この結果を踏まえて、BFとセンサー面の距離がある程度短い方が有利ということで、PSTとBFの間に、PST付属のアイピース口延長筒をもう一つ追加 (PSTが2台あるのでもう一台から奪ってきたもの) しました。それでもまだカメラ位置はエタロンから遠い方が良さそうなので、さらにBFとカメラの間にVixen製のアイピース口延長筒を入れたものをデフォルトの設定としました。


視野が広がる理由がまだわからない

1については考察のみしてみます。

8cm鏡筒でエタロン位置の最適化を探った時、エタロンを対物レンズから遠ざけるほど、カメラ位置はPST側に押し込まなければピントが出なかったという経験をしています。

対物レンズの焦点距離をf1、エタロン手前のレンズの焦点距離をf2として、その2枚で得られる合成焦点距離fは、レンズ間の距離をdとすると
1/f = 1/f1 + 1/f2 - d/(f1 f2)

と書くことができます。エタロン内部で平行光を作る条件は、= ♾️なので、

0 = 1/f1 + 1/f2 - d/(f1 f2)
で両辺にf1 f2をかけて、

0 = f2 + f1 - d
なので

d  = f1 + f2
となる長さで、エタロン内部に平行な光が提供されます。エタロン手前のレンズは凹レンズで焦点距離はf2 = -200 [mm]とわかっているので、例えばよく使っている8cm鏡筒で、対物レンズの焦点距離f= 400 [mm]の場合は、d = 200 [mm]となり、実際にその辺りの距離にエタロンをおいて運用してうまく動いているようなので、間違っていないでしょう。

ここで、エタロン位置を対物レンズから遠ざけるということは、dを大きくするということです。これは合成焦点距離が正の無限大でない数になります。言い換えると、平行光にはならずに、光を有限の距離で収束させる合成レンズになるということです。わかりにくい場合は、具体的に数値を入れてみるといいでしょう。最初の式に、f= 400と f = -200を入れてみると

1/f = 1/400 - 1/200 + d/(400 x 200)
となります。右辺最初の2項を合わせると負になるので、

1/f = -1/400  + d/(400 x 200)

となり、右辺の初項と2項目が等しいとバランスが取れて平行光になります。dは正の数で、増えると2項目が増えて、右辺は正になるので、結局合成焦点距離fも正になり、光を収束することになります。

エタロン後部に置かれた焦点距離 f= 200 [mm]のレンズで集光するのですが、エタロンをより後ろに動かすと、もともとあった平行光が、dが伸びたことでより集光された状態になるので、カメラまでの焦点距離がより短くなる方向になります。なので8cm鏡筒で試したように、現実にカメラをPST側により押し込んだときに焦点が合うというのは、正しいと言えそうです。

以上のことを踏まえて、C8で起こったことを考えます。
  1. 今回は、カメラの位置をPSTから遠ざけるほど視野が広がりました。カメラをPSTから遠ざけてピントを出したということは、上の考察から「エタロンはより対物レンズに近づいた」ということになります。そして、エタロン後部のレンズを出た光が焦点を結ぶ距離は、より後ろに下がったということになります。
  2. その一方、センサー上で見えている太陽表面のエリアは広がりましたが、これは拡大率が変わったわけではなくて、センサー内に映る円の大きさが大きくなったために、より多くの範囲が見えているというだけです。
これら2つのことがどうしても一見対立しているようで、なかなかいい説明ができません。エタロンが相対的に対物レンズ(この場合主鏡)に近づいたということは、レンズ径やエタロン径の制限がより効く方向なので、視野が狭くなると思えるのです。

ここ1週間くらいずっと考えていましたが、いまだに結論は出ていません。


黒点撮影

というわけでまだ謎は残りますが、とりあえずこれで撮影してみます。

まずは黒点AR4100、4101周りです。30秒おきに1ms露光で200フレームづつ、合計60枚で約30分間撮影しました。シーイングはあまりよくなく、その中で一番いいものを画像処理しました。画像処理は、ImPPG、PixInsightのSolarToolbox、Photohopなどです。いつものように、モノクロ、カラー化、さらに反転させたものです。それぞれ端の方を少しクロップしています。

「AR4100、4101回り」
08_56_22_lapl2_ap3397_IP_2_50_mono_cut

08_56_22_lapl2_ap3397_IP_2_50_color_cut

08_56_22_lapl2_ap3397_IP_2_50_color_inv_cut
  • 撮影場所: 富山県富山市
  • 撮影時間: 2025年6月5日8時56分
  • 鏡筒: Celestron C8 (f2000mm、F10)  + Coronado P.S.T.
  • 赤道儀: Celestron CGEM II
  • カメラ: Touptek G2M678M
  • 撮影: SharpCap Gain 200(=6dB)、露光時間1.00ms、8時49分から9時28分まで、30秒ごとに200フレームを60回撮影して、ベストショット160/200をスタック
  • 画像処理: AutoStakkert!4、ImPPG、PixInsight SolarTools、Photoshop CC

その後、タイムラプス映像も作りましたが、高々30分であることと、シーイングが良くない時間が多かったので、結構ボケボケです。参考程度に載せておきます。フレアが最後に収まっていくのと、次のフレアが起こる始めくらいが見えています。



プロミネンス撮影

その後、プロミネンスを撮影し、タイムラプス化しました。前回記事の東端9時方向に出ていた大きなものです。カメラの回転角を変えて、長手方向に全体が入るようにしました。30秒おきに1ms露光で200フレームづつ、合計120枚で約1時間撮影しました。最後のffmpegのコマンドだけメモがわりに残しておきます。
  • ffmpeg -y -r 20 -i Blink%05d.png Blink_20.mp4
  • ffmpeg -i .\Blink_20.mp4 -vf "crop=3500:1900:175:125" Blink_20_cut.mp4
  • ffmpeg -i .\Blink_12_cut.mp4 -vf "scale=1920:-1" -vcodec libx264 -pix_fmt yuv420p -strict -2 -acodec aac .\Blink_12_cut_X.mp4


前回記事のものを再掲載しますが、やはり分解能の違いは明白で、全景からの切り出しでは細部を出すのは難しいことがわかります。


一度に全体と細部を撮る方法はないのか?口径が大きく、C8程度の焦点距離に、広い面積に渡り精度のいいエタロンを探して取り付け、ピクセルサイズの小さいフルサイズモノクロセンサーを使うとかでしょうか。まあ、技術的にも予算的にも全然無理な気がします。


カメラをASI290MMに戻すか?

ここまでの調整の甲斐もあり、G3M678Mで撮影範囲も広がり、かつ分解能も上がっています。その一方、今回の画像を見ても、まだ真ん中と端の方では差があり、これはHαの分解能なのか、収差などでピントがあっていないのかまだわかりませんが(エタロンがかなり無理をした位置に置いてあるので、後者の可能性も高いと思います。)、画角的には欲張りすぎな気がしています。

というわけで、カメラをASI290MMに戻すことを考えています。戻すことは結構利点があって
  • 大きな黒点が少なくなってきて、ある程度の狭角で撮らないと迫力が出ない。
  • G3M678Mだと、ワンショットあたりのファイルサイズが3-4GBで、すでに大きすです。ASI290MMだと800MB程度です。ちなみにこの6月5日に撮影したファイルの総量は600GB超えです...
  • G3M678Mのフレームレートが23fpsと結構遅いです。ASI290MMは60-70fpsくらい出ます。
  • 画素数もすでに多すぎる気がします。タイムラプス映像でYouTubeにアップするとしたら、横は1920ピクセルあれば十分です。G3M678Mはいわゆる4Kカメラで横幅3840ピクセルと倍もあり、今回もかなり削って、最後は横が1920ピクセルになるように縮小しています。
  • また、分解能に関してはシーイングの方が効きやすいので、2μmまでは必要ない気もしています。画像処理、特にImPPGでの細部出しの時に、1ピクセルレベルの細部が十分聞いていない気がしています。
  • G3M678Mを今後別目的(分光太陽撮影のための新機材のSGH700)で専用に使いたい、というかそもそもこのカメラを買ったのはSHG700のためです。
などの理由があります。

その一方、ASI290MMに戻すときの問題点がニュートンリングです。G3M678Mでは全く出なくなったニュートンリングですが、ASI290MMではカメラを傾けない限りはまた復活するでしょう。大きな違いはセンサー前の保護ガラスかと思っていて、一度ASI290MMの保護ガラスを外してニュートンリングが出なくなるかどうか見てみようと思います。


まとめ

結局視野が広がる謎は解けていませんし、さらにまだカメラ位置と画角と分解能の関係は印象だけで検証さえもできていませんが、実用的にはやれることは大体やったので、この時点でカメラをASI290MMに戻すことでほぼ問題ないでしょう。少なくとも以前よりは良い状態で撮影できるようになるはずです。

あとはエタロンそのものを探ることですが、これはさらに大変そうなのと、今の状態でも撮影結果にはそこそこ満足できそうなので、しばらく放っておきます。今後は撮影例を増やしていきたいと思います。

さて、いよいよ次回からは新機材、分光で太陽を撮影する「SHG700」の始動です。多分できることがものすごく増えるので、じっくり取り組もうかと思っています。







前回の週末太陽記事 (その1)に引き続いて、(その2) になります。今回の記事は前回のような撮影ではなく、各種テスト関連になります。



前回挙げた週末作業での目標は以下のとおりです。
  1. いつもの口径20cmのC8+ASI290MM+PSTでプロミネンスを1時間撮影し、ベストの静止画を作り、あわよくばタイムラプス映像を作る。
  2. 同セットアップで黒点周りを1時間撮影し、ベストの静止画を作り、あわよくばタイムラプス映像を作る。
  3. 太陽減光フィルムをC8先端に取り付け、PST部分を2倍のバローに置き換え、粒状斑の撮影を1時間程度。
  4. 口径8cmの鏡筒+PST+ASI290MMで、太陽の全景を見ながら、手持ちの2つのPSTを比較。
  5. 同セットアップで、太陽の全景を見ながら、エタロンの位置の違いで分解能が変わるかのテスト。
  6. 同セットアップで、ベストの選択肢で太陽の全景を撮影。
  7. 同セットアップで、SharpCapのリアルタイムスタックで撮影したらどうなるかのテスト。
  8. PST付属の4cmと、口径8cmで分解能は得するかの再検証。
  9. C8+ASI290MM+PSTに戻して、エタロン視野拡大の初期テスト。

1から3までが前回記事に相当しますので、今回の記事は4以降についてです。最近の手順は、午前中がシーイングがいい可能性が高いということで撮影を先に済まし、各種テストなどは主に午後にやるようにしています。


手持ち2台のPSTの比較

簡単なものから済ませます。まずは4の、手持ちの2つのPSTで性能の差はあるか?です。これについてはずっと以前に比較していて、C8で見た時には差があることはわかっています。2023年5月に2台目の使用を開始した時と、その後9月の過去2回で、2台目の方が明らかに良いと結論付けています。今回は、口径8cmでもこの違いがわかるのかを見てみます。

簡単な比較なので結果だけ載せます。まずは1台目の古くからあるPSTを8cm鏡筒に取り付けたものです。1台目はエタロンを中身まで取り出していますし、ボックスの蓋を開けて中身のペンタプリズムの位置もいじっているので、そのせいで性能が変わっている可能性もあるのですが、今のところの印象は多少いじろうが何をしようが、エタロン自身の性能をどうこうすることはできずに、基本このPST固有の性能が依然出ているというものです。今回のエタロン調整は、太陽真ん中にHα波長の中心が来るように合わせました。

12_28_23_8cm_10mm_lapl2_ap2171_out_prominene

これを見る限り、左右に明るい部分が出てしまっているので、Hα波長に合っている範囲にムラがあることがわかります。エタロンのリングを回すことで、波長があっている範囲を右や左に動かしたりできますが、その分反対側に見えない範囲が増えます。初期の頃のC8ではこの中のいい部分を使っていたことになります。

続いて2台目です。こちらは明らかに1台目より良像範囲が広いです。
13_27_54_2ndPST_lower_30mm_lapl2_ap2041_out

この違いには結構驚きました。C8で見た時よりも差が大きいです。画像を比較すると、本来写るべきフィラメントが1台目だと写っていないものが多くあります。プロミネンスは1台目も炙り出したので見えてますが、2台目と比べると明らかに薄いです。

できればC8に2台目、8cmに1台目としたかったのですが、ここまで差があると2台目だけを使うことになりそうです。1台目をもう少しいじってどこまで2台目に迫れるかは、いつか試してみてもいいかもしれません。


ちなみに、4月6日の記事で書いた口径10cm、焦点距離1000mmの鏡筒とASI294MM Proで撮影したものは1台目のPST、4月23日の記事で書いた口径8cm、焦点距離400mmの鏡筒とASI290MMで撮影したものは2台目のPSTを使っていたので、公平な比較ではなかったです。でもまあ、8cmの方が取り回しは楽だし、カメラも294を使うのは勿体無いので、今後も全景用に8cmを使うことには変更はありません。


エタロン位置の最適化

ここからは8cmでの全景撮影の最適化を目指します。

そもそもは、4月23日の記事で8cmで全景を撮影した時の疑問に対してgariさんからのコメントがあったことが発端です。

もう少し戻ると、元々の疑問の一つは、F10用に作られたPSTのエタロンのはずなのに、口径8cmのF5でHαが見えるのは何故か?というものでしたが、これはコメント内の議論で、

「2枚のレンズf1とf2があった時に、合成レンズの公式 1/f = 1/f1 + 1/f2 - d/(f1 f1) から、平行光(太陽光)が対物レンズに入ってきて、エタロン手前のレンズを通り抜けた時に平行光になる。平行光はf=♾️ということなので左辺が0になるため、1/f1 + 1/f2 = d/(f1 f1) が成り立ち、レンズ間の距離: d = f1 + f2 が最適距離になり、これを満たすような距離を取れば、平行光が得られる。PSTでは実際
400mmレンズ-> 距離200mm-> -200mmレンズ-> 平行光-> 距離200mm-> 焦点
となっているので、上の合成レンズの式を満たす。この議論には口径が入ってこないので、この条件は口径8cmでも成り立ち、F5とかF10というのは意味をなさない。」

と結論づけていています。PSTはF10で動くという話がずっと言われていますが、結局はF値に関係なくレンズ間距離さえ合わせれば平行光が出せるので、PSTの場合「F10」ということだけが一人歩きしているように思えます。

その上で、gariさんの疑問は2つで、要約すると
  1. 口径8cmでF5にしたとしても、エタロン前のレンズ径が2cmなのでここでF10にリミットされるはずで、焦点距離が同じ400mmなら口径を大きくしても分解能が上がるのは不思議。
  2. エタロンは完全に平行光を入れなくてもそこそこ機能するのでは?少なくと数cm移動しても見え方に変化はなかった。
というものです。

その一方で、私の方では以前PST標準の口径4cmと今回使った口径8cmを比較した時には分解能明確な違いが見られたという経験があります。

gariさんの疑問1に対しては、同じくコメントの中で議論していて、
  1. レンズ径は実測で23mm程度なのでF5にした場合光はまだ蹴られますが、15%ほど得するはず。
  2. gariさんの疑問2を事実とすると、エタロンが平行光をそこまで要求しないのでレンズ間距離は多少適当でも大丈夫で、レンズを含めたエタロン全体を、(エタロンが働く範囲で)できるだけビーム径が小さくなる後ろに置いた方が得する。
という推測ができます。例えばエタロン2cm後ろに下げたとします。対物レンズは口径8cmで焦点距離が400mmmなので、エタロン前のレンズが200mmの位置に置いてあるとすると、ビーム径は半分の40mmになります。エタロンを2cm下げるとレンズ間距離も2cm伸び、エタロン前のレンズでのビーム径は36mmになります。なので実効的なF値は5から大きくなって、F5 x 36/23 = F7.8となるので、元のPSTのF10と比べると得するはずです。

口径4cmの時のドーズ限界が2.9秒角くらい、口径8cmの時が1.45秒角くらいなので、上の計算が合っているなら、1.45秒角 x F7.8/F5 = 2.3秒角くらいになるはずす。今使っているASI290MMだと焦点距離400mmで1.4秒角/pixとかなので、まだ手持ちのカメラで十分違いが認識できるはずです。

というわけで、そもそも口径8cm鏡筒にPSTを取り付けた状態で、エタロンをどれくらい動かせるのか確かめてみました。エタロンはアルカスイスの長いレールのようなプレートに取り付けてあるので、簡単にスライドできます。PSTの箱がエタロンが鏡筒の筒の部分に当たるまで前に出した時にもピントが合うことが確認できました。反対にピントが出る範囲でできるだけエタロンを後ろに下げてみると、33mmまで下げることができました。平行光を出す位置が確定しないのですが、上の考えがあっているかどうかを確認する意味で、エタロン前後で差が見えるかどうかは見てみる価値はありそうです。

IMG_1197

結果です。今回はエタロン位置が前後で30mm違う場合にそれぞれ撮影し、中心付近のダークフィラメントを拡大してみてみました。左がエタロン位置が前でレンズ径が相対的に小さく、右がエタロン位置が後ろでレンズ径が相対的に大きく有利なので、右側の方が解像度が出るはずです。

スクリーンショット 2025-04-30 111413_cut

よく見ないと分からないかもしれませんが、それでも有意に右の後ろに下げたほうが細かいところまで出ているので、定性的には上の考えは間違ってはなさそうです。

エタロン前のレンズ径に制限がある場合にレンズ位置が30mm違うと、光径は30/400 = 0.075で約8%小さくなり、解像度は逆に約8%上がるはずです。解像度が2倍変わると劇的に変わり、1.5倍でも見ただけで改善しているのがすぐわかるので、8%ならまあこのくらいではないでしょうか。

本当は目的の8の、「4cmのPST鏡筒と、8cm鏡筒との直接比較」をすれば良かったのですが、ちょっと時間的に交換するまではいかず、今回は試すことはできませんでした。


全景画像

さて、口径8cmで分解能を最適化することができたとして、これで一旦撮影してみたいと思います。1.25msで500フレーム撮影して、上位75%をスタックしました。

13_27_54_2ndPST_lower_30mm_out_cut
  • 撮影日: 2025年4月26日13時27分
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒:  iOpton R80 (f400mm、F5) + Coronado P.S.T.
  • 赤道儀: Celestrn CGEM II
  • カメラ: ZWO ASI290MM
  • 撮影: SharpCap Gain 100、露光時間0.5ms、450/500 frames
  • 画像処理: AutoStakkert!4、ImPPG、PixInsight SolarTools、Photoshop CC
全景としてはかなりの分解能になっています。これならそこそこ満足です。中央部に比べて、周辺の分解能は落ちていますが、エタロンの精度に限界があるので、PSTエタロンを使っている限りここら辺が限界でしょう。それでもプロミネンスもきちんと見えているので、まあ良しとします。これ以上を求めるなら、半値全幅を減らす方向の方がいいので、エタロンそのものの性能から考え直さないとだめなのかと思います。

比較のために、目的7のSharpCapでリアルタイムスタックをして、全景に近いものを見てみます。
スクリーンショット 2025-04-26 134504

さらに、SharpCap画面に映って画像をそのままPNGで保存して、太陽の上下2枚の画像をモザイク合成したものです。
Snapshot of 13_45_15_Stack_00001 13_45_15_WithDisplayStretch_cut

もう全景だけなら画像処理ソフトは必要なくて、SharpCapだけで十分な気がします。

一応拡大図を示しておきます。左が1000フレームスタックでマニュアルで上位75%をスタックし時間をかけて画像処理をしたもの、右側がSharpCapでのリアルタイムスタックでこのときは常時100フレームスタックです。

スクリーンショット 2025-05-04 104036_cut

こうやって比べて見ると、SharpCapのリアルタイムスタックの方がノイジーですが、これはフレーム数が100枚と少ないだけなので、もう少しフレーム数を増やしてやりさえすれば、実用上はこれでもう十分かと思います。


まとめと次回以降の課題

この週はかなり時間をかけることができて、色々試したいことが進みました。撮影もある程度コンスタントにこなせるようになってきたので、ここら辺は今後はルーチンワークになっていくのかと思います。

まだ少し課題が残っています。
  • 目標の8番の「PST付属の4cmと、口径8cmで分解能は得するかの再検証」はまだやってませんが、そこまで興味がないので、もしできたらくらいで次回以降の課題とします。
  • 目標に挙げた最後の9番の「C8+ASI290MM+PSTに戻して、エタロン視野拡大の初期テスト」は、色々試しているのですが、まだ結論が出る前でもう少し試したいことがあるので、もう少し進展してからまとめます。

上のこと以外にも実はまだ試したいことが山積みです。次の週 (今ブログを書いている5月4日のゴールデンウィーク中) は天気はある程度晴れるとの予報なので、もう少し進められたらと思います。




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