前回から始めたSHG700の応用編。
第1回目は波長を大きくずらし太陽表面をさまざまな輝線で見てみました。今回はHα周りで波長をずらしたらどうなるかを見てみます。といっても、これもJSol’Exの標準機能なので、応用というにはまだ物足りないかもしれませんが、それでもこれまであまり見たことのないものかと思います。
まず処理したいserファイルを改めて開きます。バッチモードでなく、単体のファイルを開きます。今回はフルモード、もしくはカスタムモードで全選択して処理を進めます。処理が済んだら、次に画面右の横向きになっているタブのうち「Doppler shift」を押すと次のような画面になります。
「Box size」は見たい領域で、デフォルトが256x256ですが、出来上がり画像としてはちょっと狭いので512x512くらいがいいかと思います。
ここで選ぶレッドシフトのAからEの領域ですが、これは解析した画像の「redshift」フォルダの中に入っている画像を見ると、ドップラーシフトがあった場所に四角いマーカーが追加されていて、AからEくらいまでのアルファベットで区別されているのがわかります。
全部選ぶとかなりの処理量になるので、今回は形が面白そうな真ん中近くのBを選んでみました。
ちなみに、最初全部選んで16GBメモリのWindows Surface8で処理したら、メモリ不足で止まってしまい最後まで辿り着けませんでした。そのため、Bを一つだけ選んで、しかもJSol‘ExのARM Mac版をダウンロードし、32GBのメモリを積んでいるM1 Macで処理することにしました。普段太陽用に使っているWindowsのSurface 8より、普通の処理でさえも相当速いことがわかったので、今後重い処理はMacの方が楽そうです。
「Pixex shift margin」は余分にどれだけ見るかみたいですが、とりあえずデフォルトの2でいいでしょう。あとは「Type」で静止画と動画の両方を選び、「Annotate animations」をチェックし数字を波長などの画像内に埋め込みます。「Use full range in panels」もオンでいいでしょう。オフだとプラス側だけの波長になりますが、オンにするとプラスとマイナス両側の波長が処理され、速度が正と負でどう画像に違いが出るかがよくわかります。これで画面下の「Generate」ボタンを押して処理を進めます。かなりの時間がかかるので放っておきましょう。
全部の処理が済むと、今回ずらした全ての波長をパネル城に並べた1枚の画像と、連続表示した動画ができます。静止画の中の各画像に数値が入っていますが、これがどれくらい波長をずらしたかと、それに対応した速度差になります。
「Profile」タブで見ると、私の機材だとHα線周りでは0.091Å/pixelになることがわかっていて、 このことから1枚1枚が、1ピクセルずらした処理に相当していることがわかります。
同時に出力される動画はmp4形式です。ここではブログに載せやすいように、以下のようにffmpegでgif形式に変換しました。
ffmpeg -i sample_redshift-B.mp4 -filter_complex "[0:v] fps=10,scale=480:-1,split [a][b];[a] palettegen [p];[b][p] paletteuse" output.gif
動画はすごいですよ。

波長がズレると見える模様と見えない模様があることがわかります。これは地球から見た時のHαからの速度ずれが起こっていて、ドップラーシフトを起こした結果だと考えているわけです。
ところでこの動画、どうやらその上で示した静止画の1枚1枚をそのまま繋げているだけではなくて、滑らかに見せるために、隣同士の画像の間の画像を補完して動画化しているようです。その証拠に、中心波長の次が0.02Åとかのあり得ないくらい細かい値になっています。近くの2枚の画像の比率を変えてブレンドしたりしているのかと推測します。中間的な波長は真の波長シフトとは違うかもしれませんが、波長の間をシフトさせて見たい時にはこの手法は使えるのかもしれません。
ここで一つ疑問が湧きます。そもそも、例えばこのgifアニメに写っている、前半と後半で見え方かが変わってくる例えば真ん中の黒い模様は、元々はHαの波長のみで存在しているものなのでしょうか?それとも、Hαの吸収線で周りの波長からの光が暗くなるから、Hα吸収線の底の部分が見えてくるだけで、そこで見えているものは他の波長も暗くできるなら他の波長でも見えるものなのでしょうか?
もしこのドップラーシフト画像が正しいなら、元々はHα線を中心にHα線のみに存在する輝線で、その上や下の波長では見え方が違っていて、地球から見た速度に差があるからHαからズレた波長でも見えているということになります。
その一方、例えばプロミネンスはこれまでHα線のみで見えると思い込んでいましたが、CaKで見た時も同様の形が見えることを今回初めて知りました。Hαで見えてCaKでも見えるのなら、他の波長にも存在していると考えて不思議はなさそうです。そうするとドップラーシフトで見え方が変わるということと矛盾してしまう気がします。
暗線なのか輝線なのかという問題になるのかと思います。まだ自分の中で結論が出ていないので、今後もう少し検討したいと思います。
ドップラーシフトがある領域を、波長をずらして見てみました。かなり面白いのですが、これでもJSol'Exの標準機能の一つにすぎません。さらにImage Mathと呼ばれるスクリプトを使うと、もっと色々なことができるようで、どんどん応用になっていきます。これらの件、今後もう少し突っ込んで進めてみたいと思います。
第1回目は波長を大きくずらし太陽表面をさまざまな輝線で見てみました。今回はHα周りで波長をずらしたらどうなるかを見てみます。といっても、これもJSol’Exの標準機能なので、応用というにはまだ物足りないかもしれませんが、それでもこれまであまり見たことのないものかと思います。
ドップラーシフトを連続で見る
まず処理したいserファイルを改めて開きます。バッチモードでなく、単体のファイルを開きます。今回はフルモード、もしくはカスタムモードで全選択して処理を進めます。処理が済んだら、次に画面右の横向きになっているタブのうち「Doppler shift」を押すと次のような画面になります。
「Box size」は見たい領域で、デフォルトが256x256ですが、出来上がり画像としてはちょっと狭いので512x512くらいがいいかと思います。
ここで選ぶレッドシフトのAからEの領域ですが、これは解析した画像の「redshift」フォルダの中に入っている画像を見ると、ドップラーシフトがあった場所に四角いマーカーが追加されていて、AからEくらいまでのアルファベットで区別されているのがわかります。
全部選ぶとかなりの処理量になるので、今回は形が面白そうな真ん中近くのBを選んでみました。
ちなみに、最初全部選んで16GBメモリのWindows Surface8で処理したら、メモリ不足で止まってしまい最後まで辿り着けませんでした。そのため、Bを一つだけ選んで、しかもJSol‘ExのARM Mac版をダウンロードし、32GBのメモリを積んでいるM1 Macで処理することにしました。普段太陽用に使っているWindowsのSurface 8より、普通の処理でさえも相当速いことがわかったので、今後重い処理はMacの方が楽そうです。
「Pixex shift margin」は余分にどれだけ見るかみたいですが、とりあえずデフォルトの2でいいでしょう。あとは「Type」で静止画と動画の両方を選び、「Annotate animations」をチェックし数字を波長などの画像内に埋め込みます。「Use full range in panels」もオンでいいでしょう。オフだとプラス側だけの波長になりますが、オンにするとプラスとマイナス両側の波長が処理され、速度が正と負でどう画像に違いが出るかがよくわかります。これで画面下の「Generate」ボタンを押して処理を進めます。かなりの時間がかかるので放っておきましょう。
全部の処理が済むと、今回ずらした全ての波長をパネル城に並べた1枚の画像と、連続表示した動画ができます。静止画の中の各画像に数値が入っていますが、これがどれくらい波長をずらしたかと、それに対応した速度差になります。
「Profile」タブで見ると、私の機材だとHα線周りでは0.091Å/pixelになることがわかっていて、 このことから1枚1枚が、1ピクセルずらした処理に相当していることがわかります。
同時に出力される動画はmp4形式です。ここではブログに載せやすいように、以下のようにffmpegでgif形式に変換しました。
ffmpeg -i sample_redshift-B.mp4 -filter_complex "[0:v] fps=10,scale=480:-1,split [a][b];[a] palettegen [p];[b][p] paletteuse" output.gif
動画はすごいですよ。

波長がズレると見える模様と見えない模様があることがわかります。これは地球から見た時のHαからの速度ずれが起こっていて、ドップラーシフトを起こした結果だと考えているわけです。
ところでこの動画、どうやらその上で示した静止画の1枚1枚をそのまま繋げているだけではなくて、滑らかに見せるために、隣同士の画像の間の画像を補完して動画化しているようです。その証拠に、中心波長の次が0.02Åとかのあり得ないくらい細かい値になっています。近くの2枚の画像の比率を変えてブレンドしたりしているのかと推測します。中間的な波長は真の波長シフトとは違うかもしれませんが、波長の間をシフトさせて見たい時にはこの手法は使えるのかもしれません。
一つの疑問
ここで一つ疑問が湧きます。そもそも、例えばこのgifアニメに写っている、前半と後半で見え方かが変わってくる例えば真ん中の黒い模様は、元々はHαの波長のみで存在しているものなのでしょうか?それとも、Hαの吸収線で周りの波長からの光が暗くなるから、Hα吸収線の底の部分が見えてくるだけで、そこで見えているものは他の波長も暗くできるなら他の波長でも見えるものなのでしょうか?
もしこのドップラーシフト画像が正しいなら、元々はHα線を中心にHα線のみに存在する輝線で、その上や下の波長では見え方が違っていて、地球から見た速度に差があるからHαからズレた波長でも見えているということになります。
その一方、例えばプロミネンスはこれまでHα線のみで見えると思い込んでいましたが、CaKで見た時も同様の形が見えることを今回初めて知りました。Hαで見えてCaKでも見えるのなら、他の波長にも存在していると考えて不思議はなさそうです。そうするとドップラーシフトで見え方が変わるということと矛盾してしまう気がします。
暗線なのか輝線なのかという問題になるのかと思います。まだ自分の中で結論が出ていないので、今後もう少し検討したいと思います。
まとめ
ドップラーシフトがある領域を、波長をずらして見てみました。かなり面白いのですが、これでもJSol'Exの標準機能の一つにすぎません。さらにImage Mathと呼ばれるスクリプトを使うと、もっと色々なことができるようで、どんどん応用になっていきます。これらの件、今後もう少し突っ込んで進めてみたいと思います。