ほしぞloveログ

天体観測始めました。

カテゴリ: 観測・撮影

前回の記事で今年5月に撮影した南天の天体を処理しましたが、今回はさらに前の4月の撮影結果になります。


春の銀河

私は春の銀河はあまり得意ではありません。SCA260の1300mmの焦点距離と、ASI294MM Proの画角だと、少し広くて銀河の細かい構造に迫力があまり出ないからです。それでも今回は、一度撮影してみたかったヘルクレス座銀河団に挑戦してみました。

銀河団といえばおとめ座銀河団が有名で、以前撮影しています。範囲もヘルクレス座銀河団よりも遥かに広く、焦点距離420mmのε130Dとフルサイズのカメラでもまだ収まりきりません



今回のヘルクレス銀河団の場合、もっと小さい領域に小さい銀河が集まっていて、一部を拡大して細かい銀河を見ることになるので、分解能が勝負となり、きちんと撮影しようとするとかなり手強いです。

撮影はもうかなり前で記憶の彼方なのですが、その時の様子は当時文章にして残してあったので、ほぼそのままの形でブログ記事として使いました。その時のことを読んでて、赤道儀の反転を失敗したのも思い出しました。ことなきを得たのですが、冷や汗ものでした。

時期的には4月初めに撮影したM104の次で、4月中頃になります。LRGB合成の予定で、3晩にわたって撮影し、Lだけで6時間以上、RGBがそれぞれ約1時間と、合計9時間以上になっています。画像処理の途中で思ったのが、思ったより色が出ないので、もう少しRGBをの枚数を増やしても良かったのかもしれません。

M104のときには画像処理にかなり時間をかけてしまったのも、今回のヘルクレス座銀河団の画像処理が遅れてしまった理由の一つです。実は画像処理は4月の時点で一度パッとやっていたのですが、気に入らなかったので改めて一からやり直しでした。それから約半年後になりますが、今回新たに書いた記事は主に画像処理についての部分です。


撮影時のトラブル1: 赤道儀の反転失敗

今回の撮影ですが、夜中の2時半頃に子午線反転があります。この時間夜中に起きているときついこともあり、NINAの自動反転機能で乗り切ろうとしました。ただし、自動反転は以前痛い思いをしたことがある



ので、ある程度の対策をしてました。

数十cm程度の短いUSBケーブルとDC電源ケーブルをカメラ側に取り付け、カメラの周りにケーブルタイで固定して、引っ張られた時に必ずケーブルの長手方向にのみ力がかかるようにして、引っ張って抜けるようにしておいたのです。

IMG_9265
青いUSBケーブルとDCジャックケーブルが宙ぶらりんになっています。
引っ張られて抜けてしまっていましたが、
このおかげで機材の破損はありませんでした。

今回はこれが功を奏しました。朝起きて撮影結果を見ると、PHD2が途中で止まっていて、カメラが認識されないと出ています。撮影画像のタイムスタンプもちょうど反転時刻くらいまでで、その後は撮影されていません。これはまずい!と直ぐに外に出てみてみると、どうやら赤緯体がクルッと一回転しているような状態で、ケーブルが首に巻かれているような状態になっていました。

それでも想定通り、短いケーブルのところでUSBもDC電源も共に抜けていて、ことなきを得ました。こんな風に首を巻いた状態は初めてでしたが、赤緯体が初期位置からほぼ真反対に向いた状態での撮影になるのでこんなことが起きたのかもしれません。南天の高いところの天体は少し注意が必要かもしれません。今のところはっきりとした原因は不明ですが、とにかく機材が壊れなくて何よりでした。


撮影時のトラブル2: バッテリー

手持ちのバッテリーの一つが、気温が低いと変な振る舞いを見せることが確実となってきました。以前開田高原に行ったときには低温警告が出たのですが、警告は出なくても、温度が低いと電圧降下が激しいようです。

まず、気温が低い時は最初は使えるのですが、途中で電池の消耗が早いと自ら誤認識してしまうようです。一晩持つことはなく、夜中気温が低くなってくると止まってしまいます。こうなると、電源を入れようとボタンを押しても何も反応がないのですが、充電しようとしてACアダプターに繋ぐと何故か一瞬(秒単位)で100%になります。温度がまだ低いうちにACアダプターを外すとまた直ぐにダウンしてしまうのですが、しばらく待って温度が少し上がってからACアダプターを抜いても100%を保ったままになります。充電し切れているとはとても思えない短時間で100%になるので、何か表示がおかしいかです。

季節が進み気温が上がってくると、一晩持つようになってきます。撮影が終わって朝チェックすると、気温によって0%と出る時と、数十%残る時があります。0%となっているときにACアダプターに繋ぐと、これもなぜか一瞬で100%に戻りますが、一晩使っているので明らかに電力が多く残っているとは思えず、充電時の表示が何かおかしいと思われます。一方、数十%とか残っている時は、すぐに100%にはならずに、数十%が徐々に増えて、でも直ぐに(1分くらい?)で99%とかになります。温度が上がってきて徐々に振る舞いがまともなものに近づいてくる印象ですが、まだ春くらいの温度だと信用できません。一応100%充電されていると表示されていようが、そのまま充電を続けて半日くらい放っておきますが、次回使うときは今のところ問題なく使えています。

他のバッテリーを5台ほど使ってきましたが、同じような状況で同時に使っても、今のところこの一台のみがこのような変な振る舞いをします。たまたまこの個体だけなのか、興味がありますが、Amazonのレビューとかみても低温関連のことはあまり書いてないので、よくわかりません。Amazonの同機種のレビューを見ると、低温以外でもよく似たトラブルはたくさん報告されていて、途中から充電できなくなったとか、保証期間を過ぎると修理もできないとかの投稿がたくさんあります。大手のものだから数が出ているからというのもあるのかもしれません。

今回のようなことがあると改めて思うのですが、大型のバッテリーを買って1台で運用するようなことは、撮影失敗のリスクを考えるとちょっと怖いと思ってしまいます。私は1万円からせいぜい2万円までの機種で抑えていて、そのクラスの数を揃えるという戦略です。トラブルの時はすぐに交換して、冗長性で回避できることと、不具合時の1台あたりの金額的なダメージを防ぐのが目的です。低温時には問題があるこのバッテリーも、その後暑い夏には普通に使うことができたので、冬場は他のバッテリーを使えば良く、長い目で見たらそこまでダメージはないです。


画像処理

撮影直後の画像処理では銀河がのっぺりと絵のようになってしまい、やる気を無くしてしまいました。反省して、今回はRAW画像の選択からやり直しです。

まず、前回画像処理した自分の画像と、Astrobinのヘラクレス銀河団でよく写っているものを見比べてみました。のっぺりは仕方ないとして、パッとわかる決定的な違いは微恒星の数です。例えばAstrobinのImage of the day (IOD) に選ばれた画像と自分の画像で、同じ領域を切り出してPixInsightのSubframeSelectorで認識できる星の数を比べてみると、IODの方が約1.5倍の星の数になりました。実際の画像を見ても、細かい星があるかないかでかなり違って見えて、1.5倍というのはちょうど納得できるくらいの数字です。

1回目の画像処理ではFWHMが5以下、星の数が250以上という閾値を設けてRAWのL画像を振り分けました。その場合、376枚中、147枚が採用されました。できるだけ小さな星を救おうとしたために、悪い画像を切り捨てたつもりですが、かなりの枚数を捨てていることになります。今回、2回目の画像処理はFWHMが7以下、星の数が150以上と条件を緩め、採用枚数を376枚中、274枚としました。

まずこれで微恒星の数が変わるかです。ここでいう微恒星の数というのは、M104の時に散々議論したBXTで認識される小さな星の数ということです。


結果はというと、M104の時とほぼ同じで、
  • 1回目の、枚数を絞ったFWHMが小さい方が、出来上がりの恒星の大きさは小さい。
  • この場合、背景ノイズが大きい。
  • ノイズに埋もれた淡い微恒星を救いきれない。
でも、落としてしまう微恒星の数は大したことはなく、IODの画像で見えている微恒星からみたらまだ全然少ないままなので、誤差の範囲です。

一方2回目では、
  • FWHMは大きくても枚数が多い方が背景のノイズは明らかに小さくなる。
  • S/N測定でもいい結果出ている。
  • かつ残る恒星の数も多少増える。
  • 恒星の大きさが少し大きくなる。
といいことが多いのので、今回は枚数を増やしたもので処理することにしました。不利な点として、恒星が少し大きくなるのはBXTでどうにでもなると考え、今回は重要視しなかったです。もしBXT無の場合は、判断が変わるかもしれません。


次に今回の画像処理でやり直したことは、drizzleの有無です。今回は最初drizzle無しで処理しましたが、小さい銀河が多数あるので、改めて比較するとdrizzle x2の方が有利そうです。
comp1
左がdrizzle x2で、右がdrizzle無し。
わかりにくい場合はクリックして拡大してみてください。

そのため、2度目の処理はdrizzle x2を使いました。

本当はM104の時のように、撮影時からASI294MMのbin1にしてもよかったのですが、撮影時から画像サイズが大きくなり、画像処理の負担も大きくなり、かなりきついです。フラットなども合わせると、ディスク容量も平気で数100GBを使用してしまいます。bin2のdrizzleのx2なら、最後のインテグレーションで増えるだけなので、全然許容範囲です。drizzle x2にBXTをかけるとかなり解像度が出ることがわかっているので、これでbin1に迫れるといいのですが。

ただし今回は、露光時間をこれまでの自分の標準の5分から1分に短くしました。恒星が飽和するのをできるだけ避けるためです。そのため撮影枚数はこれまでの5倍と多くなるので、その分ディスク容量を食います。

4月の最初の画像処理でのっぺりとしてしまった原因もわかりました。ストレッチ時のGHSの使い方が原因でした。GHSは最初にSP (Symmetric Point)を選ぶのですが、SPに0以外の値を入れてしまうと銀河の中の淡い部分が明るくなりがちで、どうも階調が取れません。今回だけなのかもしれませんが、SPは0にして、当然LP保護も0になりますが、HPの保護は明るいところをあまり明るくしないように適当に0.5とかにしました。あとの残りのパラメータはStretch FactorとLocal Intensityだけなので、これで銀河の暗いところから明るいところまで階調ができるだけ残るようにストレッチとLPを調整しました。どちらも大きくしすぎないことがコツみたいですが、まだあまりよくわかっていない部分もあるので、もう少し経験が必要みたいです。

さらにその後、GHS以外にもいくつか試したのですが、今回は背景の淡い構造を出す必要はないこと、飽和しないことという条件で、結局もっとシンプルなMaskedStretchとしました。結果を見ると、もう少し彩度を出しても良かったので、ArcsinhStretchでもよかったのかもしれません。

そこからの最後の仕上げはかなり苦労して、結局5回くらいやり直しました。Astrobinを見ていると、銀河も恒星も色彩豊かで、一つの銀河内でオレンジから青白まで出ているものもあるのですが、自分の画像だとなかなかそこまで出ないです。RGBの撮影時間が短いので色情報がノイジーなこともあるのかと思います。もう少し手はあるのかもしれませんが、キリがないのでできる範囲でまとめました。まだ少し不満が残っているので、微恒星の写りも含めていつかリベンジしたいです。


結果

今回画像処理した結果を示します。drizzle x2だと画像が大きくなりすぎてアップロードできなかったので、ブログ用に少しだけ(75%くらい)解像度を落としています。

Image15_cut_low
  • 撮影日: 2024年4月13日1時35分-4時8分、4月13日22時17分-14日2時32分、4月14日22時26分-15日3時27分
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: SHARP STAR製 SCA260(f1300mm)
  • フィルター: ZWO社のLRGBフィルター
  • 赤道儀: Celestron CGX-L
  • カメラ: ZWO ASI294MM Pro (-10℃)
  • ガイド:  f120mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: NINA、Gain 120で露光時間1分でL: 274枚、R: 57枚、G: 54枚、B: 60枚、総露光時間445分 =7時間25分
  • Dark: Gain 120で露光時間1分が64枚
  • Flat, Darkflat: Gain 120でLRGB: それぞれ128枚
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop

画角が少し広いので、一部銀河団の中心部を切り取った画像も載せておきます。銀河をできるだけ取り込むために、縦型に切り出した後、90度回転させています。これぞ「銀河団」という感じです。
Image15_cut_small_rot

特に拡大図の方をみると、4月ののっぺり画像処理から比べたら、輝度の階調を残し、色調もある程度確保することができたと思います。BXTの効果も絶大で、drizzle x2と合わさって、銀河の細部もよく出ていますし、恒星の肥大も抑えられています。

見る距離や拡大率にもよると思いますが、小さな銀河なので離れた時見てもある程度はっきり見えるように、もう少し輝度や彩度を出してもいい気もします。その一方、あまり派手でないこのくらいがいいのかとも思えます。まだ自分の中で銀河にあまりはっきりとした基準がないので、今後しばらく試行錯誤かと思います。

上で議論したように、M104の時と同じでBXTで認識できない微恒星を取りこぼしてしまっているので、あるところより暗い恒星が全く見えなくなるという、あからさまな閾値ができてしまっています。BXTで小さな銀河と恒星の見分けが本当にできているか、StarNetで恒星と背景を分離するときに、銀河をうまく背景に分離できているかどうかは、まだ多少疑問が残ります。私は趣味と割り切っているのであまり気にしていませんが、気にする人は気になるかもしれません。ただし、同じクオリティーをBXTなどなしで出そうとすると、鏡筒の大口径化、赤道儀の大型化、シンチレーションのいい撮影地の選択、更なる長時間撮影など、敷居がはるかにはるかに上がります。簡単に同程度の効果をソフト的に実現するBXTやStarNetは、やはりすごいと言わざるを得ません。

最後に、恒例のアノテーションです。

Image15_cut_Annotated

確かにそこそこ銀河の数はありますが、おとめ座銀河団の時アノテーション画像ほどではなく、面積も数もやはりもう少し小ぢんまりとした印象です。


まとめ

長く処理されずに残っていたヘルクレス座銀河団も、やっとブログ記事にたどりつきました。細部をいかに出すかで、おとめ座銀河団の時はε130Dで最初から焦点距離が短かったのであまり気にしなかったのですが、今回は焦点距離1300mmなので、かなり細かい描写でシンチレーションとかも効いてくるはずです。処理してみると、思ったよりはるかに手強かったです。

HDDの中身を見ても未処理画像も、だいぶん底が尽きてきました。残っているのは中途半端に撮影したものとかで、今後処理する気になるかどうかもよくわからないものばかりです。なんとか救ってやりたいものもあるのですが、もう2年前に撮影したものとかもあるので、撮り直したほうが早いかもしれません。

撮影にも画像処理にも時間がかかるようになっています。もっと気楽に済ませたいという思いもあります。この場合はSWAgTiとかを活用すればいいのでしょうか。でも大口径のものと比べてしまい、満足できるのかどうかはまた別問題になるのかと思います。

さて、次はここしばらく何日か撮影している網状星雲です。もう諦めて画像処理を進めるか、さらに撮影枚数を増やすか。いや、全然気楽な方向に行ってないですね...。


たまっている画像処理に少し取り掛かります。といっても最近撮影した話ではなく、もう何ヶ月も前のものです。

今回はその中で、MACHOさんのご好意でチリのリモート天文台で撮影させて頂いたものを仕上げました。撮影から記事にするまで長らくかかってしまい、申し訳ありませんでした。結果は画像を見て頂ければわかりますが、十分に満足できるものとなりました。


南天天体の撮影チャンス

以前、MACHOさんのご好意でチリのリモート天文台の電視観望を試させ得ていただく機会があったのですが、


今回はさらにご好意に甘えて、撮影までさせていただきました。

撮影日はGW中で、その頃に調子を悪くしてしまった私はある意味これがGW中の唯一の天文活動でした。 事前の打ち合わせで4日間割り当てて頂いたので、事前にターゲット天体を色々考えていました。実際には意外に曇りだったり、途中から私の方が入院などで、結局撮影できたのは1日半です。それでも環境といい、機材といい、結果から考えても十分楽しむことができました。

ターゲット天体には優先順位をつけてあったので、半日ごとくらいに3つの天体を撮影しました。今回のターゲットは撮影順に、
  1. NGC3372: イータカリーナ星雲
  2. SMC (小マゼラン星雲)
  3. LMC (大マゼラン星雲)
となります。南天の撮影は「ほぼ」初めてなので、全部メジャー天体です。でも全部念願の天体です。

「ほぼ」と書いたのには理由があって、星を始めて結構すぐくらいにオートラリアに出張があって、簡単な機材を持って撮影も試みたことがあります。でもその時はあいにくの満月期で、まだ機材的にも自分の技術的にも全然未熟で、随分と悔しい思いをしたものです。




撮影環境

撮影はGWなのでかなり前のことになってしまいますが、記事は当時ある程度書いておいたことと、別途記録が残っているので、なんとかなります。あとはできるだけ記憶を辿ってになります。

機材はFRA300 Pro+ASI2600MC Proです。モノクロのTOA150もあったのですが、最初は簡単なカラーからと思っていたのですが、今回は時間切れだったので、泣く泣くTOA150の方は諦めることになってしまいました。

FRA300には特に光害防止フィルターなどは何も付いていませんでしたが、さすがにかなり暗い空です、かなり迫力ある画像が撮影中からNINAの画面上で見えていました。

撮影に使うソフトは、
  • 導入と位置確認: SkyChart(Cartes du Cael)
  • ガイド: PHD2
  • 撮影: NINA
となります。赤道儀のためのASCOMドライバーなどの詳細設定がありますが、ゲストユーザーは特に触ったり、あまり意識しなくていいように、あらかじめ設定てしてくれています。リモート接続にはシン・テレワークシステムのクライアント版を使います。今回はWindows版を使いましたが、Macでは専用クライアントは無いみたいですが、Web版を使うことができるようです。

撮影までの準備は、前回電視観望の時にあらかじめ接続方法や、リモート接続した後の操作方法を聞いていたので、それほど困ることはありませんでした。唯一迷ったのが赤道儀のパークの解除方法です。電視観望のときはどこかを操作してアンパークしていたと思ったのですが、その場所が分からなくて今回はNINAからアンパークしました。ASCOM関連なども一通り見たのですが結局分からなくて、後から聞いたら、MACHOさんも普段NINAからアンパークしているみたいで、それで良かったみたいです。でも電視観望の時はNINAを使っていないはずなので、もしかしたら別のところにもパークを制御できるスイッチがあるのかもしれません。

撮影に関してはほとんど準備されていたので、特にそこまで迷うこともなく、ほとんど問題なかったでしょうか。あえて言うなら、私は普段NINAのシーケンサーは簡単なレガシータイプを使っているのですが、「レガシータイプをデフォルトでオフにする」というオプションが入っていたのでオフにしました。そのオプションの場所を探すのにちょっと迷ったくらいです。


撮影初日は少しだけ

初日、最初の撮影はNGC3372: イータカリーナ星雲狙いです。少し時系列を追います。
  1. 午前7時過ぎ、シンテレワークでドームに接続成功。チリはほぼ地球の裏側にあたるので、時差が13時間。5月で日本では日が長いのに比べて、チリはこの時期は夜が長いので撮影時間は十分確保できます。
  2. まだ日が残る明るいうちに、モニター用のASI120MCで見て、望遠鏡がPark位置にあることと、まだドームが閉じていることを確認。
  3. skychatで赤道儀の現在位置を確認して、これでもPark位置にあることを再確認。
  4. 午前8時前くらい、天文薄明に入りSharpCap+ASI120MCでドームが開いていることを確認。ドームの開閉は現地の天気を見て、現地スタッフがやってくれるようです。
  5. skychatで導入成功。NINAの試しのライブ撮影ででFRA300Pro+ASI2600MCでイータカリーナ星雲が見えた。
  6. カメラの冷却を開始し、その後PlateSolveも成功。
  7. PHD2で一度はガイドまでオンになった。
  8. 午前8時過ぎ、上記PHD2の設定中に突然PHD2の画面が見えなくなった。ドームが閉じたのか?その判断がつかない。
結局、午前9時前 SharpCap + ASI120MCで露光時間を60sにしてかなり明るく見ることで、ドームの屋根がしまっていることが確認できました。現地の天気を調べてみると、薄曇りでどうも星は見えているようですが、撮影には向かないとの判断だと思います。

その後、昼頃に再び接続してみると星が見えています。そのまま導入して、すぐに撮影を始めました。ただし、やはり少し曇り気味で、1時間半ほどで終了となってしまいました。

というわけで初日はお試し程度でした。2日目にかけます。


撮影2日目は絶好調

2日目: 最初にドームにアクセスしたのが日本時間で朝の7:44でした。初日のイータカリーナ星雲がまだ1時間半ほどの撮影しかできていないので、午前中は今一度イータカリーナ星雲を撮り溜めます。

この日の時系列のログが残っていたので、コピペしておきます。
  • 7:48 SharpCap+ASI120MCでドームが開いていることを確認。
  • 7:49 NINAからUnPark
  • 7:50 SkyyChartでNGC3372導入
  • 7:56 NINAで画像確認とPlateSolve
  • 7:58 Phd2でキャリブレーション開始。
  • 8:01 キャリブレーション完了、オートガイド開始。
  • 8:19 EAFの「ZWO forcuser (2)」に接続してオートフォーカス開始
  • 8:34 撮影開始
  • 8:40 一枚目確認。大丈夫そう。綺麗。
と当時の記録を見てもかなり順調だったことがわかります。EAFの調整から撮影開始まで少し時間が空いているのは、フィルターホイールに迷っていたからです。カラーカメラでフィルター無しなのでフィルターホイールの設定は意味がないはずなのですが、EFWが接続されているようなので、何か変わるのかと思って確証が持てませんでした。結局このフィルターはTOA150についているEFWだということが後からわかりました。

撮影が始まるとまず気づいたのが、赤道儀の安定性です。ガイドラインが相当ピターっと0付近にへばりついています。私の手持ちのCGX-Lも結構安定していると思っていましたが、さらに別次元の安定度です。実際撮れた画像を見ても、ほぼどの画像も星が円に近くなっています。

その後、記録を読み返すと、9:54に天頂越えのところで少し迷ったようです。撮影開始から2時間後です。一旦、本当に反転しているか、Parkとかしてあえて確かめたりしましたが、撮影された画像を後から見たら、すでに自動で反転されていたことがわかりました。自動反転も安定しているようで、これは楽です。反転を確認したついでに、時間的にも丁度いいのでPlateSolveとAFを今一度実行しました。その後、10:11に撮影再開です。

イータカリーナの高度が低くなってきたので、次の天体のSMC: 小マゼラン星雲に移ります。NINAに自動導入とプレートソルブ込みで指示してあって、後から見たら14:40に自動的にSMCに切り替わっていて、そのまま撮影も開始されていました。結局この日は日本時間の18時近くまで撮影していました。カメラは撮影が終わると自動で昇温するようにNINAでセットできるので、後片付けはParkすることくらいでしょうか。こちらもとても簡単で、ドームがかなり楽なのを思い知らされます。


3日目の撮影は途中まで

3日目のターゲットは大マゼラン星雲です。この日は朝から少し用事があり、接続開始時間が遅れてしまいました。時系列のログを見ても、

9:34 接続開始で、すぐにLMCを導入。Unpark, Platesoleve, PHD2, AF問題無し。
9:41 撮影開始
13:00 LMC撮影終了

と、とても順調で、昼頃にはLMCを終了しました。

実はここからTOA150にしてオメガ星団をモノクロで撮影しようとしていたのですが何か様子がおかしいです。結局13時20分にはモニターカメラでドームがしまっていることが確認できました。どうやら途中から天気が悪くなってきたようで、ドームが閉じられてしまったようです。

というわけで、ずっと天気が良かったわけではなく、その後に体調を悪くしたこともあり、割り振っていただいた4日のうち約1日半ほどしか撮影に使うことができませんでした。惜しむらくはモノクロカメラでの撮影でしたが、天気ばかりはしかたありません。それでもFRA300 ProとASI2600MCで、十分なクオリティーの画像を、十分な枚数撮影することができました。


画像処理

今回は3つの画像をほぼ並行して処理しました。

撮影後、ダークファイルとフラットファイルはあらかじめ撮影してくれていたものを頂いたので、すぐにPixInsightのWBPPにかけました。ここしばらくはモノクロカメラでのLRGB合成やSHO合成が多かったので、カラーカメラの真面目な画像処理は久しぶりです。自分でカラー合成しなくていいのは、楽でいいですね。特にフラットに関しては、モノクロだとそれぞれの色で最淡のところでどうしても差が出てしまうので、合成の時にいつも苦労しています。

今回のフラット化は、そもそも暗いところの撮影でカブリもあまりないのと、画面全体に星雲や銀河が広がっているので、全体の傾向だけ除去しようとフラット化はABEに留めています。その後、定番のSPCCやBXT、ストレッチは主にGHSを使い、Photoshopに渡すところまでは終えました。

その後は無理をしないようにと少し天文から離れていたこともあり、結局画像処理にはほとんど時間を使うことができていなくて今に至ります。もう少し言うと、Photoshopで少しだけいじってみたのですが、ノンフィルターの画像に慣れていないので、どうしてもあぶり出しに苦労しそうなことがわかって、かなり時間がかかりそうだと思ってしまい、そこからなかなか進まなかったというのが正直な所です。

ここ最近、少し時間的に余裕ができてきたので、Photosopで3枚まとめて画像処理を進めました。

まず全般に関してですが、ノーフィルターで写しているので、かなり暗い空で撮影してるとしてもHαとOIIIに関してはインパクトが弱くなっているようです。特にHαフィルターを使った時と比べると、色がどうしても眠いような感じになってしまいます。というよりも、暗い空でフィルターなしで撮影したことなんてこれまでほとんどなかったので、むしろこちらの方が正しい色に近いと言えるのかもしれません。そもそも本当の色というのが何かという議論もあるので、何が正しいか何が間違っているかの議論自体意味があるかわからないのですが、条件のいい暗い空でノーフィルターで撮影するというの経験は、しないよりはしておいた方がいいと実感しました。今後の色使いに少し影響が出るかもしれません。

個々の画像についての画像処理も踏まえながら結果を示します。


イータカリーナ星雲

まずはイータカリーナ星雲。ナロー撮影でOIIIフィルターを使うと、赤い星雲をとってもある程度の青い成分が残るのですが(例えば北アメリカ星雲)、今回のイータカリーナを見ると青成分はかなり少ないようです。色彩豊かに見せるために少し青成分を強調しましたが、こちらも本来の色はもっと赤だけに近いのかもしれません。

「NGC3372: イータカリーナ星雲」
300_00s_ABE4_BXTc_SPCC_BXT_GHS_back_GHS2_s
  • 撮影日: 2024年5月5日0時4分-1時35分、5月5日19時33分-5月6日0時4分
  • 撮影場所: チリ El Sauce Observatory
  • 鏡筒: Askar FRA300 Pro(焦点距離300mm、口径50mm、F5)
  • フィルター: なし
  • カメラ: ZWO ASI2600MC Pro (-10℃)
  • ガイド: ASI174MM、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: NINA、bin1、Gain 100、オフセット 50、露光時間5分x63枚=5時間15分
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC

これだけHαが多い領域で、たとえノーフィルターだとしても赤は出ています。それでも赤のインパクトが今一つ出ません。画像処理でどうこうするというより、やはりこれはノーフィルターの特徴の色のようです。普段ナローバンドフィルターを通してみている色とは結構違うというのが実感です。

でも南天のメジャー天体で、初撮りでここまで出るのはかなり満足です。日本からだと見えない天体だと思うと尚更です。


小マゼラン星雲

次は小マゼラン星雲です。スタック直後のあぶり出し前の画像では、赤い部分がほとんど出ていませんでした。ノーフィルターではこれくらいが限界でしょうか。それでも青い星雲本体の中での赤なので、上のイータカリーナとは違い、インパクトはあまり必要なさそうで、バランス的にはいい赤だと思います。

「SMC: 小マゼラン星雲」
300.00s_FILTER-L_RGB_BXTc_SPCC_BXT_GHS_GHS3
  • 撮影日: 2024年5月6日1時40分-6時2分
  • 露光時間5分x50枚=4時間10分
構図としては、画角に球状星団のNGC104が入っていて、SMCとの対比がいいです。実は球状星団の中心部がRAW画像の段階ですでに飽和してしまっていて、画像処理で誤魔化さざるを得なかったです。まだ少し不自然かもしれませんが、中心部以外の解像度はかなりものので、ツブツブ感がたまりません。

小マゼラン本体もそこそこカラフルなことがわかります。下に7年前に撮った小マゼラン星雲を再掲載しましたが、構図、色、分解能など、もう雲泥の差です。


大マゼラン星雲

最後は大マゼラン星雲です。こちらも一枚あたり3分という露光時間は少し長かったかもしれません。恒星が一部飽和しているのは仕方ないですが、特にLMCでは右下の星雲の明るい部分も一部飽和してしまい、恒星と星雲の分離の時点で混ざってしまうところがありました。私は普段恒星と背景の合成をPhotoshopのレイヤーの「覆い焼き(リニア) - 加算」を使いますが、今回は「スクリーン」を使いました。「スクリーン」の方が飽和を多少避けることができたので、こちらの方が正しいのかもしれません。でも「スクリーン」だと恒星が弱くなるので、結局強調しなくてはならなくて、明るい部分が新たに飽和しないように、かなり手間がかかりました。

「LMC: 大マゼラン星雲」
BNCc_SPCC_BNC_s
  • 撮影日: 2024年5月6日20時46分-23時59分
  • 露光時間5分x38枚=3時間10分

大マゼラン星雲の名を冠するのなら、もう少し広い画角で撮影できればよかったです。この大きさだと、腕が回転しているような様子は写すことができません。それでもノーフィルターでよくここまで赤が出たと思います。本体の淡い赤も表現できています。割れるような黄色のヒビをもう少し強調したかったのですが、かなり暗い部分なのでノイジーです。ここを表現したかったらもっと露光時間を伸ばす必要がありそうです。


Annotation

恒例のアノテーションです。3連チャンで行きます。さすがメジャー天体で、アノテーションも豪華です。特にLMCはすごいNGCの数です。

_300_00s_ABE4_BXTc_SPCC_BXT_GHS_back_GHS2_s_Annotated

_300_00s_FILTER_L_RGB_BXTc_SPCC_BXT_GHS_GHS3_Annotated

BNCc_SPCC_BNC_s_Annotated


初期の頃からの比較

7年前にハミルトンアイランドに行って50mmレンズとEOS 60Dで撮った小マゼラン星雲はこんな感じです。総露光時間はなんと、たったの7分20秒です。

New5

まだ星を初めて1年で海外へ持っていく機材もままならない状況、画像処理も未熟と、結果としてほとんど何も出ていないですね。小マゼラン星雲のすぐ上にあるのは大きな星かと思っていたのですが、球状星団だったのですね(笑)。これを初の南天撮影とするなら、7年間経ってやっと自己更新です。


振り返ってみて

実質初めてと言っていい南天の空です。しかもメジャー天体を3つもいっぺんに撮ることができました。もう大満足です。貴重な機会を提供していただいたMACHOさんにはとても感謝しています。

リモート天文台はセットアップは大変かもしれませんが、一度できて仕舞えばものすごくパフォーマンスが良さそうです。晴天率も日本より良さそうですし、画像がどんどん溜まっていくのか、1枚にじっくり時間をかけるのか、成果が出るのも納得です。特に今回は上げ膳据え膳で使わせて頂いただけなので、あまりに呆気なくこれだけの画像が得られて、ある意味もうびっくりです。

個人的には機材とかを触っていろいろ改良して、その改良を結果として天体写真で確認したいクチなので、今回のリモート撮影のような恵まれすぎた環境を続けてしまうと、自分の手を入れらなくて物足りなく感じてしまうかもしれません。その分、画像処理に時間をかけて個性を出すこともできると言ったところでしょうか。

この環境を自由に使えることは、羨ましくもあり、ある意味最終形態のようなものなので、ここまでできてしまうと少し寂しくもあると言うのが正直な所です。将来的には同様のサービスがもっと増えて、安価で選択肢も増えていくのかと思います。かと言って、自分でセットアップして撮影するのがなくなることもあり得ないと思います。

最後に、今回は貴重な経験をさせていただいて、本当にありがとうございました。この機会を与えてくれたMACHOさんには改めて感謝いたします。画像処理まで時間がかかってしまい申し訳ありませんでしたが、また何か機会がありましたら、よろしくお願いいたします。



星をもとめてに参加した際、星見屋さんでちょっと面白い話題が出ました。先日の星もと参加記の中に書いてもよかったのですが、少し細かすぎる話なので、独立して書いておきます。


星見屋さんブースにて

星見屋さんのブースのところで、以前福島でも見せてもらった、光球面用とプロミネンス用の2つのエタロンが入っているDaystarのGeminがデモで出ていて、店長さんと太陽について少し話ました。エタロン2つ繋がりではないですが、太陽界隈で少し話題になっている、メーカーや仕様の違うエタロンを直列に並べて使うと、コントラストが良くなるという話です。Fabry-Perotエタロンは、一般的に透過波長が周期的に表れる櫛(comb)型応答を示します。この櫛の位置がズレるので、コントラスが上がるという理解とのことです。

これはFSR (Free Spectral Range, 説明はこちらのページに) が違うことで説明できます。FSRは櫛と櫛の間の幅と考えることができます。このFSRは2枚の鏡の間の距離のみで決まるパラメータです。メーカーが違ったり、仕様が違うエタロンでは、鏡の間の距離が違うのが普通でしょう。Hαを通したいので、透過周波数は656.3nmになるように合わせてあるはずです。エタロンのデザインが違えば、その他の櫛状の透過波長も違うと考えられます。こんなことを踏まえて、星見屋さんとは、互いのcomb周波数のところの透過率を互いに落としあっていると考えると、確かに十分理解できるようなことを話しました。

実際に話したのはこのような定性的な話のみなのですが、帰りの車の中でもう少し考えてみました。


少し定量的に考えてみる

Fabry-Perot エタロンの透過率を考えてみます。詳細な式についてはこのページを参照してください。


光に対するエタロンの振幅透過率は一般的に (t1 x t2)/(1 - r1 x r2) と書くことができます。r,tは鏡の振幅反射率と振幅透過率で、添字の1と2はそれぞれ1枚目、2枚目を表しましす。

その中でも、太陽望遠鏡用のエタロンは共振周波数については完全透過であることが普通なので、2枚の鏡の反射率と透過率は一般的に等しくなります。r1 = r2 = r, t1 = t2 = tと書くと、エタロンの振幅透過率はt^2/(1-r^2) = T/(1-R)となります。Rはr^2、Tはt^2で、それぞれの鏡の強度反射率と強度透過率を表します。鏡のロスを考えないとすると、R+T=1が成り立つので、エタロンの振幅透過率は T/(1-R) = 1となり、完全透過となります。このため、共振周波数のHαのところで像が見えるわけです。

このことは上記リンク先のページにも同様に書いてあります。上記ページには光の位相のことを省いた簡略化した式で書いてあるのですが、位相まで考えると非共振のところで分母の符号が + (正)になります。特に最も透過率が低くなる完全反共振の周波数のところ(combの共振周波数同士のちょうど真ん中)では、透過率は(t1 x t2)/(1 + r1 x r2)と書くことができます。太陽用途なので2枚の鏡の反射率と透過率が同じだとすると、上と同様に t^2/(1+r^2) = T/(1+R) となります。

民生用の太陽望遠鏡エタロンのフィネスは10からせいぜい数10程度なので、強度反射率と強度透過率はそれぞれせいぜい90%と10%程度です。仮に0.9と0.1とすると、完全反共振の波長でさえ T/(1+R)  = 0.1/(1+0.9) ~ 0.1/2 = 0.05となり、振幅で5%、強度だとその2乗で0.25%程度の透過率となります。

実際Hα以外のところで0.25%漏れるとすると、comb全体では結構なコントラスト悪化になりそうです。当然BFやERFなどがあるので、Hα以外のcombのところの透過率は落ちるのですが、その残りの漏れ光でコントラストが悪くなっているということは、十分あり得そうです。エタロンとBFの関係はたとえばここを見るとグラフになってるのでわかります。一見BFの透過率はかなり小さく問題ないように思うかもしれませんが、BF透過の裾のところがすでに隣の櫛のところに引っかかりつつあるので、必ずしも無視できないかもしれません。太陽の光はものすごく明るく、全部カットすれば十分暗くなりますが、ほんの少し漏れるだけで一気に明るくなります。これは皆既日食のときのことなどを考えると、容易に想像できるのではないでしょうか。

ここで、2枚のエタロンがあることが効いてきます。もう一枚のエタロンでさらに漏れが0.25%程度になるのなら、十分な効果があるのではということです。

と、こんな話を「星もと」の会場で星見屋さんとできれば良かったのですが、その場では定量的な評価までは至らず、でも気になって帰りの車の運転の中で考えていたというわけです。もしかしたらどなたかの役に立つのではと思い、一応ここに書いておくことにしました。

(2024/9/21追記1)
初出記事に大きなミスがありました。エタロンの透過率を光の強度透過率としてではなく、振幅透過率として計算していました。きちんと強度透過率で計算すると、振幅透過率の2乗となるので、実際にはもっと漏れ光は少なくなります。上記記述は正しい値に訂正してあります。

(2024/9/21追記2)
BFについてもう少し詳しくみてみます。BFの透過率は下記ページ 


の「Coronado Blockfilter BF15 , Filter zum Okular」のところにあります。Coronadoの15mmのものということですが、他のものでもオーダーは似たようなものと考えます。(注意ですが、CoronadoはERFに相当するものもBlocking Filterと呼んでいるようなので見るべきところを間違えないようにしてください。すぐ上の「Coronado Blockfilter BF15 , Filter zum Objektiv」はERF相当のものになるようです。)

さて、上記グラフを見てみると20%透過の幅が0.9nm程度、10%透過の幅が1.2nm程度、5%透過の幅が1.6nmといったところでしょうか。3%透過の幅に至ってはグラフが途中で切れてしまっていますが、2.5nm以上はありそうです。

ここで、エタロンの櫛と櫛の間隔を考えてみます。櫛と櫛の間は、FSRを波長で考えたものそのものなので、以前見積もった通り2nm程度と思われます。BFの3%透過の幅が2nm以上なので、BFといえどそこそこの光を通してしまうということです。これはかなり大きいですね。これだけ透過してしまうとすると、仕様の違う (=FSRの違う) 2つのエタロンのダブルスタックはこの漏れをさらに0.25%に落とすので、かなり効果があることになります。


DSO用のナローバンドHαフィルターの効果について

ついでにですが、星見屋さんとは3nmとか7nmのDSO用のナローバンドHαフィルターを太陽望遠鏡に突っ込んだらコントラストが改善するかどうかについて、少し話しました。

星見屋さんによると、鏡筒によって改善具合が変わるとのことです。基本的に「鏡筒内に存在する散乱光が改善されること、Hα外のUVやIRのコーティングがどうなっているかにも依ると思う」とその場では話しました。

でも後から上の話を考えてみると、意外に非共振周波数での透過率が高そうなので、BFやERFで除去しきれない輝度が残っていて、それを改善する効果も少なくないのかもしれません。

個人的には以前実際に調べていて、気のせいというレベルでなく、明らかに効果が見られました。


ただし、当時も推測で散乱光が少なくなったのではと書いていますが、はっきりとした原因はまだよくわかっていません。でも、違う種類のエタロンのダブルスタックでコントラスト改善があるなら、上で述べたようにエタロンの漏れ光は有意に存在していると考えても、全然おかしくない気がします。これが3.5nmで改善されたというのはシナリオとしては十分にあり得るでしょう。


まとめ

太陽望遠鏡に使われるエタロンは、一般的な望遠鏡とか、一般的なフィルターと違い、なかなか直感的なイメージと振る舞いが一致しないことが多いかもしれません。だからこそ、できるだけ原理を理解して、定量的な見積もりと実際に見た場合とが大きくずれないか、ある程度確かめながら評価していくことが大切なのかと思います。

私もダブルスタック少し興味がありますが、PST以外のエタロンを持っていないので、いつかチャンスがあったらくらいでしょうか。


福島の星まつりで見た「北軽井沢観測所」のアイピースを利用した縮小光学系、買ってしまいました。福島で見せてもらった秒単位で撮影した星雲星団。8倍の明るさになるとのことで、かなり反応速度の速い電視観望やS/Nのいい撮影が可能にになるはずですが、実際に使ってみてどうだったのでしょうか?


北軽井沢観測所

北軽井沢観測所のアイピースは、昔星まつりでジャンクで安く出ていたものを2本だけ持っています。紫がトレードカラーで、ラベンダーから撮ったと思いますが「Lavendura」という名前を冠しています。もともと個人の趣味が高じて販売までされているという、非常にこだわった高性能のアイピースです。視野はそこまで広くないですが、歪みがとても少ないのが特徴です。焦点距離が50mmや68mmという長いものまでラインナップがあり、この「長焦点アイピース」と「短焦点Cマウントレンズ」を使って縮小光学系を組みます。アイピースとレンズの焦点距離の比が縮小率、明るさで言うと倍率になります。

今回購入したセットは、63mmのアイピースと、アイピースの先につけてカメラを繋ぐ専用の金属の延長筒になります。
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Cマウントレンズは手持ちの8mmのものを使うことにしました。このセットアップで63mm/8mm = ~8倍の明るさになるとはずです。

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繋げてみると、アイピースが最後まで入り切らずに金属筒の途中で止まります。中に入りすぎないよう適した位置になるように、金属筒の中に加工がしてあるようです。アイピースは金属筒に付属のネジで固定しますが、アイピースの表面が傷つかないか心配です。ネジは先端が丸く加工されているもので、今のところ傷らしきものは見えていないです。カメラ側は内径が2インチになっていて、カメラの2インチのリングを利用してネジで固定します。

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鏡筒

鏡筒をどうするか考えていたのですが、まずはC8で試すことにしました。口径が大きいこと、F10と暗いので8で割ると1.25になる計算です。この縮小光学系のF値はカメラ前に取り付けるCマウントレンズのF値で制限されるとのことです。今回のレンズはF1.4なので、1.25はすでに明るすぎで、少し倍率を抑えてもいいくらいかもしれません。C8の2000mmの焦点距離は2000/8 =  250mm程度になるはずです。多少の倍率はアイピースとレンズ間の距離を変えることで変更できるとのことですが、どのくらい変わるかなど実際に試してみないとわかりません。

鏡筒に取り付けてみますが、かなり長く、そこそこ重いので、赤道儀に乗せる際に前後の重量バランスに注意する必要があります。今回もか鏡筒をなり前にして固定しました。
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CMOSカメラ

当然なのですが、いくら縮小してみるといえども視野がそこまで広がることはなく、例えばフルサイズのカメラをつけても周辺が全部見えるようになるわけではありません。どれくらいの視野まで見えるか分からないので、とりあえずそこそこの視野があるASI294MCを取り付け流ことにしました。周りが暗いならROIで必要なところをカットすればいいのかと思います。

視野だけで考えると、オリジナルのC8にフルサイズのカメラをつけた時の視野と、C8に今回の1/8の縮小光学系を取り付けた時に、例えばセンサーの一辺がフルサイズの1/8のカメラを使うとすると、結局は見える範囲は同じになり、単純に明るさが8倍になるというわけです。視野の増加はあまり期待せずに、明るさの増加を期待して、その代わりに狭い範囲を拡大してみるために分解能は犠牲になると思えばいいでしょうか。

C8で銀河の電視観望をしようとしたことがあるのですが、やはりかなり暗いです。ykwkさんなんかは長時間露光でかなり成果を出していますが、もう少し明るく見えたらというのが今回の狙いになります。視野がどこまで実用で見えるのかわからないのですが、焦点距離が250mmの鏡筒に1/1.2インチのUranus
-Cや1/1.8インチのNeptune-C IIくらいの面積まで見えるなら、網状星雲を全部入れるのは厳しいですが、北アメリカ星雲くらいの大きさのもはある程度全体像が見えるのかと思います。例え本当に中心しか見えないとしても、小さい天体が明るく見えるはずなので、かなり楽しみです。


視野について

まず、見える範囲は明るい円になるのですが、やはりかなり狭いです。見える円の直径が、マイクロフォーサーズのASI294MCで、長辺の3分の1以下くらいになります。

次に、周辺の星像が彗星の形のようにものすごい歪んでいるのですが、アイピースとカメラ間の距離を変えたりしましたが改善しません。結局これは、カメラにあえて取り付けたCマウントとCSマウントの変換リングアダプター問題であることがわかり、外すことでかなり点像に近くなりました。

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ASI294MCでみるとこれくらいの縁で見えます。
ASI294MCの最大解像度が4144x2822のはずなのですが、
勘違いして4144x2116で見てしまっています。

これでやっと星がまともに見えるようになったので、プレートソルブを試します。星が見えている面積が小さいためか、最初は全くうまくいきませんでした。そこで、明るい円が画面に広がるように、ROIを調整しました。元々4144×2822ありますが、1280x1024にすると円が画面いっぱい近くを占めるようになりました。それでも周辺は暗いままです。この状態でプレートソルブをかけますが、まだうまくいきません。焦点距離はすでに2000mmの8分の1の250mmにしてあります。ここで焦点距離を500mmに変更すると、プレートソルブがうまくいきました。後に400mmでもうまくいったので、8分の1まで小さくなっていないかもしれません。

上の画像にあるように、M27が入り込んでいて周りの星も位置がわかるので、Stellariumなどのプラネタリウムソフトと画面を比較して、星と星の間の距離から見積もって焦点距離を計算してみると、なんと256mmでほとんど設計通りでした。プレートソルブが250mmで動かなくてもっと長い焦点距離で動いたので、縮小率が出ていないかと心配してましたが、きちんと設計通りに出ているようです。ついでに明るい円の部分の視野径を見積もると、1.26度角となりました。元々C8とASI294MCで普通にみる場合は、32.83分角x22.35分角程度になります。60分角で1度角なので、視野は3倍近くにはなっているようです。8倍には当然ならないですが、少なくとも広がっていることはわかります。

そもそもこの明るい円ですが、鏡筒の視野で制限されているのか、カメラ前につけたCマウントレンズの視野で制限されているか、まだよくわかりません。カメラの仕様を見ると2/3インチまで対応だそうです。なので4/3インチのASI294MCでは半分くらいの視野になるはずです。見えている円はそれよりは小さいので、こう考えると鏡筒で制限されている可能性が高いです。今回いじらなかったところの一つが、レンズのピント調整リングです。レンズの焦点を無限遠に合わせたきり、変えませんでした。結局「アイピースで見えた像」を別レンズでマクロ的に見て焦点を合わせて、それをカメラに映していると考えると、レンズの焦点をもっと短く、数cmとかにしていいはずです。これでもう少し視野が広がるのかは、今一度試してみたいと思います。おそらく円周部でエッジがはっき見えるようになるかと思いますが、その分だけ見える範囲が広がるだけで、視野そのものは大きくは変わらないと思われます。


明るさについて

これ以降はROIを1280x1024にして、明るい円が画面にある程度広がった状態で見ることにします。

次の興味は肝心の明るさです。今回客観的な評価はできなかったのですが、焦点距離がほぼ設計通り1/8で出ているので、明るさも8倍程度出ていると思ってもそうおかしくはないでしょう。実際に明るいです。

ただ、電視観望で明るさをそこまで感じられるかというと、結局ライブスタックしてしまうと多少暗い鏡筒でもちょっと待てばノイズが減って綺麗になるので、そこまでありがたみは感じられないかもしれません。例えば下の画像は1.6秒露光で191枚、トータル5分程度です。流石に羽は見えていませんが、ラグビーボールの輪郭は余裕で見えています。
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ちなみにこの日は月齢12.5日ともう満月にかなり近く、しかも下の写真のように雲が常にあるような状態だったのでかなり厳しい環境でしたが、それでも上の画像くらいまでは簡単に写るので、やはりかなり明るい光学系というのは間違いないでしょう。
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ところで、なぜこんなに明るい光学系にこだわるかというと、理由は2つあります。
  1. 一つは最近の撮影経験から考えてです。私がよく撮影する自宅のような光害地では、背景光が明るくスカイノイズがひどいため、S/Nを上げるにはより多くの光子を必要とします。これは露光時間を伸ばしてもいいですし、明るい鏡筒を使っても同じことです。たとえ背景の明るい光害地においても、F値の低い明るい鏡筒はやはり正義なのです。
  2. もう一つは、リアルタイム電視観望をいつか実現したいとずっと思っているからです。元々HUQさんがやっていたα7Sを使った電視観望は、α7Sの8μm越えという巨大ピクセルサイズと、F値が1台の明るいレンズと、10万クラスの高ISOを活かして、リアルタイムで見えるものでした。当時はライブスタックもなかったですし、ミッドトーンストレッチで簡易画像処理をその場でやるというようなこともできなかったので、もう本当に力任せで多少ノイジーだったりもしました。それでも(ライブスタックとかではなく)リアルタイムで画角が動いていても星雲も一緒に動いて見えるというのは、インパクトがありました。現在の電視観望の主流が、ライブスタックでS/Nを稼ぐという方式になってしまっているので、本当の意味でのリアルタイム電視観望は新鮮に感じるはずです。


リアルタイム電視観望

2の意味で考えると、今回のテストにおいても、少し方向性を見せることができるかと思います。例えば下はM13:ヘルクレス座の球状星団の電視観望画像です。
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一見写りがイマイチな電視観望と思われるかもしれませんが、露光時間のところに注目してください。なんと250msです。これだと赤道儀コントローラーの方向ボタンにかなりリアルに反応して、画面が動くと星団そのものが動き、それでも星団だとはっきりわかります。導入時やプレートソルブ時に、星団がリアルタイムで入ってくるところは見ててちょっと感動しました。

続いて、露光時間400msのM27:亜鈴状星雲です。淡いですが、これもかなりリアルタイムに近い状態で反応し、画面が動いていてもきちんと星雲と認識できます。
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ただ、もう少しはっきり見えて欲しいと言うのも正直なところです。フィルターはとりあえず弱めのCBPの48mm径をアイピースの先端に取り付けて見ています。今回は満月に近い月と薄曇りでのテストだったので、空がマシならももっと良く見えるはずです。次回以降、もう少し良い環境で試してみたいと思います。

この日は、その後厚い雲に覆われてしまい、残念ながら撤収となってしまいました。


鏡筒とカメラの再考

最初とにかく口径の大きいものをと思っていましたが、あまり欲張らずに、まずはそもそも視野の広い鏡筒を選び、あまり縮小率を取らない方がいい気もしてきました。

例えば手持ちのTSA-120です。元々フルサイズでも十分撮影可能のなので、多少縮小しても大丈夫かと思います。縮小率ですが、現在68mmのアイピースと8mmのレンズを使っているので1/8程度になりますが、レンズを16mmにして、1/4程度にすると、元々のTSA-120のF値が7.5なので、1/4でF1.8程度になります。手持ちの16mmレンズのF値が1.8で制限されるようなので、ちょうどいいくらいです。TSA-120の焦点距離は900mmなので、こちらも1/4で225mmとなります。

もしくは、今回使ったC8に1/4の縮小光学系で、焦点距離500mmでF2.5にして、もう少し分解能を出す方向にしても良いのかもしれません。視野はまだ鏡筒制限なので実質変わりないか、もしくは次のレンズ制限になるかと思われます。

レンズは監視カメラ用の小さなCマウントのものなので、2/3インチまでのカメラに対応と明記されていて、視野角は限られています。手持ちだとNeptune-C IIが1/1.8インチ、ASI178MCが1/2インチ、あと惑星用カメラだと1/2インチを切ってきて1/3インチくらいまであるので、これらを使うのがいいかと思います。

ただし、カメラを固定流する金属筒の内径が2インチで、ZWOのカメラは2インチ外径の枠があるのでいいのですが、PlayerOneのカメラはそれに該当する枠がないので、取り付けは何か工夫をしなくてはいけません。T2と2インチの変換アダプターがあればいいのかと思います。

ちなみに、北軽さんはASI178MCを使っているそうです。ASI178はセンサー面積が小さい割に解像度が3096×2080と高いのが理由とのことです。ただ、ピクセルサイズが小さいので感度はどうしても低くなってしまいます。分解能と感度はトレードオフなので、慎重に選びたいと思います。


まとめ

条件の悪い日でのテストだったので、試している最中はもう少し見えてもいいのにと思っていたのですが、縮小率もきちんと出ていることがわかりましたし、視野もC8なら妥当だと思います。次回以降で明るさの数値的な評価をしたいと思いますが、それでも今回だけでも明るさの十分な威力を垣間見ることができました。もう少し機材パラメータの調整は必要かもしれませんが、どこまで見えるようになるのか引き続き試したいと思います。目標は系外銀河のリアルタイム電視観望です。


 

この日は久しぶりの観望会です。でも元々の天気予報では全くダメそうで、当日近くになって夜遅くから晴れると言う予報に変わりました。と言っても、Windyで見る限り上層の雲が広範囲に渡って広がっているようなので、あまり期待はできません。もし夜中に晴れてあわよくば撮影と思って、ε130Dを用意してはいきましたが、結局使えなかったです。


ドームの修理

観望会は別として、ドームが長らく故障てしていて使えないので修理をする必要があるのですが、冬だったり体調を悪くしたりで長らく行けていないので、天気のこととは別にとりあえず現地に行くことにしました。気温が心配でしたが、ドライブ中も現地についてからの作業中もずっと雨が降っていて、そこまで暑くなかったのがラッキーでした。

今回の修理ポイントをメモがわりに書いておきます。
  • 昨年交換したモーター周りの仮配線を、圧着スリーブできちんと接続しました。ただ、Amazonで安いものを買ったので、圧着がいまいちなようで、機会があったら再度交換した方がいいかもしれません。でも少なくとも仮止めよりは全然マシです。
  • もう一つは、電磁開閉器と呼ばれるスイッチで、リレーでスイッチが入れるものです。SC-03という型番で1bと呼ばれるNC(Normal Connected)タイプで、本来は奥下の2つの端子に電圧をかけることによりスイッチが開閉します。その際は左下2つの端子間に100Vがかかってリレースイッチが作動するのですが、どうもここに100Vが出てきません。
結局今回はこのSC-03のリレーの動作不良という判断で、交換することにしました。Amazonにも在庫があったので、次回来たときに交換します。


寂しい観望会

作業をしている最中に、スタッフのSさんが到着しました。その後まも無くしてかんたろうさんも到着です。ただ、空は所々青いところも見えますが、全面に薄い雲がかかっているような状態です。 Sさんによると、他のスタッフは今日は体調不良などで不参加とのことです。

雲越しでも多少なりとも星は見えるかと思い、35mmのF1.4のオールドNIKKORレンズとASI294MCで広域電視観望を試しました。雲もまだまだありましたが、最初にアークトゥルスが見え、次にベガが見え、そのうちに薄雲のところはたくさんの星が見えてきました。広域電視観望だとこと座の形もはっきりわかります。この頃には目で見ても夏の大三角が見えるくらいには雲が薄くなってきました。そこでいつものFMA135+Uranus C+トラバースでミニマム電視観望です。かんたろうさんも45cmのドブソニアンを出します。

ただ、この日は午後は雨で夕方暗くなる直前くらいからだんだん薄雲程度になってきたくらいで、こんな日はお客さんは少ないです。近くの人が多いので、その日の空を見てくるかどうか決めるのかと思います。残念なことに、結局お客さんはゼロでした。まあ、ドームの修理があったのでやることはあったのですが、少し寂しかったです。

その時に見たのがM57とM27、北アメリカ星雲と、網状星雲などです。M57と網状星雲はかんたろうさんのドブソニアンでも見比べることができました。他にもかんたろうさんがまばたき星雲を見せてくれました。なぜ「まばたき」なのかその時はわからなかったのですが、調べてみたらそらし目で見ることができるとか。次回もし見せてもらえたら試してみたいです。

今回見えたものです。薄雲越しなので、星が滲んでしまいますが、それでも十分形が認識できるくらいには見ることができます。

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曇ってましたが、雲さえなければ透明度は良かったようです。

見えなくなる直前に向けたアンタレス付近でM4も下のほうに綺麗に見えています。カラフルタウン狙いでしたが、青いところはもう少し上でした。カメラの向きを変えて縦向きにして入れようとしましたが、その時にはすでに曇っていました。
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熊 !?

そんなこんなで、徐々低空からにガスってきて、そのうちほぼ全面見えなくなってきました。感度のいい電視観望でもほぼ全く何も見えなくなったので、まったりモードで3人で話し始めていました。するとドブソニアンの向こうくらいから「ガーッ」という、少なくとも可愛い動物とは思えないような声が聞こえてきました。初めて聞いた声で、多分猪とかではなさそうです。流石に怖くなったのと、せっかくの新月期ですがもう星は全く見えていなかったので、すぐに片付け始めて退散の準備です。私は広域電視観望とミニマム電視観望だけだったので、10分もあれば余裕で片付きます。かんたろうさんも45cmと大きいのに、意外なほど片付けは早いです。私が片付けてから10分か15分後にはすっかり片付いてしまいました。

そこにいても怖いだけなので、3人ともそのまま退散です。時計を見たら22時10分くらいだったでしょうか。自宅に着いたらまだ家族も起きていて、謎の声の話をしたらビックリしていました。


エピローグ

次の日、Sさんから連絡があり、昼に同じ場所で熊が目撃されたそうです。クマはどうやら鳴くことはあまりないとのことなので、昨日の声は違うのかもしれませんが、それでも万が一だとかなり怖いです。退散で正解だったと思います。今思い出しても怖いです。

富山県には「クマっぷ」と言うのがあり、目撃件数や場所などがわかるのですが、今年は同時期の例年よりも多く目撃されているようです。飛騨の方まで山続きなので、そこまで比率は変わらないと考えると、少し注意した方がいいかと思いました。そういえば富山県天文学会の前会長が生前、観望会の時は必ず車のオーディオを大音量で鳴らしていました。特に一人や少人数の時には、それが正解な気がします。

2週連続の太陽撮影です。七夕の日の日曜の朝の撮影です。


3度目の朝の撮影

朝の撮影は5月18日(土)6月29日(土)に続いて今回で3回目です。過去2回解像度もそこそこ出て、前回は粒状斑を出す手法も少しわかってきました。今回はどうだったでしょうか?

まずHα画像ですが、これを撮影して画像処理をすることでシンチレーションの指標になるようになってきました。 具体的には、ImPPGのLucy-Richardson deconvolutionのsigmaの値が小さくて済む場合はシンチレーションがいいです。細かい模様が残ると言う意味です。シンチレーションが悪いとそのsigmaをある程度大きくせざるを得ず、解像度はそれなりに悪くなっていきます。前回は1.5程度、今回は2-3程度が良かったので、シンチレーションは少し落ちたくらいかと思います。それでも十分良かった方だと思います。

撮影条件は前回とほとんど同じです。違うところは三脚にゴム板を置いたこととだけですが、風が結構強かったので、揺れは結構大きかったです。やりたかったPSTの調整は暑くて、やる気になりませんでした。この日は朝8時頃からもう30℃になっていてたので、準備も含めて、Hαも白色撮影も短時間で済ませました。

まず一番大きな黒点AR3736です。
09_00_42_lapl2_ap2554_IP3_7_8_ABE3_ABE4

東側のAR3738群です。プロミネンスも同じ画面に収めてみました。
09_06_27_lapl2_ap2046_IP_2_6_7

西端に近いAR3733です。
08_58_48_lapl2_ap2111_IP_1.5_4_9

この結果を見る限り、シンチレーションはやはり前回の方が良くて、それに隠れてか地面の揺れを防止したことの影響は見えていなさそうです。


粒状斑

今回も白色光を撮ってみました。違いは、前回初めて使ったGreenフィルターに加えて、UV/IRカットフィルターを加えたことです。後のセットアップは同じで、C8にOD5のAstroSolar Safety filmをつけ、Apollo-M MINIで撮影しています。まだOD3.8のフィルターは準備ができていません。

まずは前回撮り忘れたPowerMATEなしの画像です。黒点の数はだいぶ寂しくなっているのがわかります。1週間で結構変わるものです。
08_33_06_lapl2_ap897_IP_cut

次にx4のPowerMATEを入れた画像です。前回試したように、事前にser playerで模様をある程度出しておきます。
08_42_42_F0001-1000_lapl3_ap1099_IP_0.5_4_4_PI_cut

まあ、前回と同じくらいのレベルまで出ているので、再現性もあると言えるかと思います。でももう少し出て欲しいです。何が問題なのでしょうか?


まとめ

朝の撮影はやはり良さそうです。特に夏は暑くて早くから太陽も高くなるので、早いうちにパッと撮影してしまうことがいいでしょう。粒状斑はまだ一段階くらい何か謎がありそうな気がしています。実は今回PSTでHαから大きくずらして白色光に近いものを撮影したり、Photosphereも使ってみましたが、前者は解像度は出るものの粒状斑はでず、後者は解像度がでずで諦めました。次の一手が機材なのか、シンチレーションなのか、画像処理なのか、もう少し考えたいと思います。

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