ほしぞloveログ

天体観測始めました。

カテゴリ:赤道儀・経緯台・三脚 > Advanced VX

前回の記事で、Advanced VXの赤経体のところで、円周方向にガタがあって、それを取り除く記事を書きました。その後一度撮影を試したのですが(それはまた別の記事に)、像がブレるようなことはなかったです。



ところが、赤経体のガタがとれると、今度は赤緯体のガタが気になってきました。かなり大きかった赤経体のガタはほぼ完全と言っていいほどピクリとも動かなくなりました。するとそれほど大きくなかった赤緯体のガタが相対的に目立ってきたというわけです。

というわけで、今度は赤緯体部分を取り外し、モータなどが隠れているプラスチックカバーを取ります。プラスチックカバーは上下に分かれていて、下の方まで開けないとウォームホイールの調整機構にアクセスできません。しかも下のカバーの最後の一本のネジが、アリミゾクランプが邪魔になってドライバーがネジまでアクセスできません。しかたないのでアリミゾクランプのところのネジを4本緩めて、クランプ分も外してしまいます。するとプラスチックカバーも容易に外すことができます。

さて、今回も同じようにモーターの下にキャップネジ2本と、その間にイモネジがあって、押し引きネジ構造になっています。前回と同じかと甘くみていたのですが、今回の方が赤経体の時よりも難易度が高いです。というのも、モーター下のスペースが短くて、六角レンチが入らないのです。イモネジの方は小さなレンチでよかったので、まだ短手の方がギリギリ入りました。左右のキャップネジは径が大きく、レンチの短手の方も、長手のボールになっている方で斜めにしても入りません。

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ここでの解決策の一つは、ギヤを外して、さらにモーターも外してしまってネジにアクセスすることです。迷ったのですが、ギヤを外してしまうとバックラッシュ調整などさらに手間がかかる可能性があるので、今回はイモネジを緩めるだけにとどめました。イモネジも相当きつく締められていて、引きネジ分の効果が多少そうされているような状態だったので、若干イモネジを緩めるだけでガタはほぼなくなりました。

その後全て元に組み直して再度確認しましたが、わかる範囲でのガタはなくなり、赤経、赤緯ともに完全にガタは無くなったと言っていいと思います。

次回再度撮影してみて、他に不備はないか洗い出したいと思います。もし問題が出るようなら、ギヤを外しての調整になるかと思います。

最近2本立ての撮影を考えているので、現行のCGEM IIに加えて、久しぶりにAdvanced VXを引っ張り出してきました。

ところが、赤経体のところでガタがあります。ウィエイトバーをつけて触ると一番端で動きが目で見えるくらいなので、度とは言わないですが分くらいは平気でありそうなガタです。

実は以前同じところにガタがあったことがあります。



この時は上の記事にあるように、本体裏側から2本のネジを緩めて、ウォームホイールを押し付けるような形で、ネジを締め直して解決しました。

今回も同じだろうと鷹を括っていて、同様にネジを調整したのですが、ガタがどうしても収まりません。ギヤがついているモーターを手前上に持ち上げる方向に手でtからを加えると、ガタが収まるので動かす場所は間違っていないはずです。でも手を離すとすぐにまたガタが戻ってきます。どうもギヤボックスごと少し上側に回転させるような力が必要な感じですが、前回の裏からのネジだけではその自由度は動かせそうにないことがわかってきました。

仕方ないのでプラスチックカバーを外します。上側のカバーはすぐに外れるのですが、下側のカバーは外すのにかなり苦労します。厳密にいうと今回の場合下側のカバーを外し必要はありません。ですが、外さずに隙間から見ているだけだとネジが見にくくて位置が理解できないかもしれません。いずれにせよ、下側カバーを外す際は、無理に引っ張ってカバーを破壊しないように気をつけてください。

カバーが外してから中をよく見てみました。すると、モーターの下に2本のネジが見えます。ですが、これだと固定しているだけのようで、あまり意味がなさそうです。

ところが、最初気づかなかったのですが、よーく見てるとその2本のネジの間にイモネジらしきものがあることに気づきました。どうやら2本のネジと、1本の芋ネジで、押し引きネジになっているようです。しかも位置的にモーターの直下ではなく、少し中心からずれたところにネジがあるので、どうもここでギヤボックスごと回転できそうな雰囲気です。

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ここまでわかれば、あとは簡単です。ただしこのネジかなり固く締められてるのと、レンチが真っ直ぐには入らないので、長手がボール型になっているレンチを斜めに挿し、ペンチでレンチの頭をひねることでうまく緩めることができました。

最初、イモネジの方で押す方向で、モータを上側に回転するようにやってみたのですが、ガタがひどくなります。どうもウォームホイールの密着度が足りないような感じで、結局引ネジを少し締める方向でやってみたらバッチリ。ガタは全くと言っていいほどなくなりました。最後にギヤを手で回して赤経体がきちんと動くかなど、ネジの締め過ぎてないかのチェックをして、問題なさそうなのでカバーなどを元に戻し、作業完了です。

このAvanced VX、以前真っ二つになったこともあるせいか、プラスチックのところが割れたりして結構ボロボロです。でも機構的には全く問題なし。まだまだ十分使えます。

今回ガタも完全に取れて満足です。もしAVXの赤経体のところでガタがあって困っている方がいましたら、前回の記事と合わせて試してみてください。

 

赤道儀のセッティングの記事のコメント欄で延々と続いていた、Advanced VXの時刻の保持の謎がやっと解けました。

わかってしまえば簡単なのですが、謎が解けるまでにいろんなことをやりました。このブログは自分の天文関連の日記のような役割もあるので、読んでくださる方にはまためんどくさいことをと思われるかもしれませんが、一応失敗したことも含めて書いておきます。

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ハンドコントローラーの内部。
基板上に内蔵電池らしきものは見当たりません。(後述)


Celestron Advanced VXのアップデート手順

時刻の保持とは関係ないかもしれませんが、まずはファームウェアのアップデートです。はっきり言ってこの手順も分かりにくいですね。自己責任らしいのですが、他の方にも役立つかもしれないので、とりあえず試した順に書いておきます。
  1. 機器の接続ですが、ハンドコントローラー (NexStar+、以下コントローラー) と赤道儀本体は繋いでおいて、電源もいれておきます。コントローラーとPCの接続はRS232Cです。最近のPCでRS232Cがついているものは稀なので、USB-RS232C変換ケーブルなどを購入してつなぎます。RS232C端子とコントローラーは、赤道儀を買った時についてくる付属のRS232C-4pinモジュラー変換ケーブルで接続します。私はこのケーブルの存在を完全に忘れていて、過去に改めて買おうと思ったことがあるので注意が必要です。持っていないという方は箱の中を探してみてください。最初から付属しています。
  2. 一方ソフトの方ですが、CelestronのサイトからSUPPORT -> Manuals & Softwareに進み、Drivers & Softwareのページに行きます。その後たくさんあるソフトの中から適したものを選ばなければいけまえん。Hand Control Firmware Updatesとか、Motor Control Firmware Updatesとかそれらしい名前があるのですが、これらは古い機種用のアップデートツールみたいです。Advanced VXの場合は、Celestron Firmware Manager (CFM)を選びます。私がダウンロードしたのは2.3.7111というバージョンでした。
  3. ダウンロードしたzipファイルを解凍して、その中のCFM.jarファイルをダブルクリックします。あ、Windowsでしか動かないのと(追記: あれ?JAVAだから機種依存しない?未確認です。)、あと、JAVAがインストールされていないと実行できませんので、必ずJAVA(JRE)をインストールしておきます。
  4. ここまでできたら、あとは勝手にCFMが機器を認識してくれるはずです。最初ちょっとわかりにくかったのですが、コントローラーと赤道儀本体の「2つ」の機器が認識されたと出るはずです。一度のアップデートで、コントローラーと赤道儀本体の二つともアップデートしてくれます。
  5. うまく認識されたら、Updateボタンが押せるようになるはずなので、押します。12個のファイルをアップデートして終了です。
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アップデート時の様子。
この写真を撮っているときにケーブルを触ってしまい、
この後、失敗します。

ところがここでポカをやらかしました。12個目のファイルをアップデートしている最中にケーブルが外れてしまったのです。アップデートは当然停止、しかも赤道儀を立ち上げると「Bootloader invalid pkg: 0002」とかいうエラーが出て何もできなくなります。ここから迷走し出したのですが、Celestron Firmware Managerで機器が認識できない時に出る解説の通り、一旦赤道儀の電源を切り、コントローラーの左下のボタンと、すぐ上のMENUボタンを同時に押して、立ち上げなおします。「BOOT LOADER Serial User Keyoad Entry」とでて、本来これでファームウェアが壊れていても接続できる状態になっているはずなのですがなにをどうやっても接続できません。ファームが壊れて接続自身ができなくなったと思い込んでしまいました。

この段階で小一時間格闘して、別のPCを持ってきてやっと原因が判明しました。COMポートの自動選択がうまくいかなかったようです。最初のPCにはCOMポートが複数あり、うまくいった時は自動で赤道が繋がったものを見つけ出したようですが、うまくいかなくなった時はコントローラーが繋がっていないCOMポートを見ていて、その結果繋がらないというメッセージを繰り返していたというわけです。別のPCはCOMポートが一つしかなくて間違えようがなかったということです。Celestron Firmware Manager はCOMポートの選択を任意にできないようなので注意が必要です。

とにかく、ケーブルの接続に注意して再びアップデート。今度はうまく行きました。バージョンを見てみると
  • HC:GEM 5.28.5184
  • MC:7.11.4244
から
  • HC:GEM 5.29.7137
  • MC:7.15.8270
にアップデートされていました。 HCはハンドコントローラーのこと、MCがモーターコントローラーで赤道儀のことを表しているとやっと理解できました。

ファームウェアは日本語が含まれるものと含まれないもの2種類あるのは、以前CGEMIIをアップデートした時のブログのコメントでの情報で知っていましたが、今回は自動的に日本語が含まれるファームが適用されました。
 
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時刻の保持

やっと今回のメイン記事に当たるのですが、ここでも結構手こずりました。無駄なことも含まれてますが、やったことを書いておきます。

  1. アップデート後、一旦アラインメントで時刻を設定し、再度立ち上げなおして時刻が保持されるか確認しましたが、時刻は最初に設定した時のままで進まず。
  2. アップデート時に工場出荷時にされますが、りっくんさんがされたようにあえて再度工場出荷時にリセット。それでも同じで、立ち上げた時に設定した時刻が残るのみです。
  3. いろいろ触っていて一つ気づきました。「MENU」ボタンを押して上下ボタンを適当に押すと出てくる「時刻・場所の表示」です。これを押すと「位置を記憶」というのが出てきます。ここでEnterを押してやると、その時の時刻が保存されるようです。でも時刻が進むことはありません。でも保存時刻をコントロールできることはこの時点でわかりました。
  4. 半分諦めかけて、昼食を食べ買い物に行って帰ってきてから、後片付けの前に最後にと思って「advanced vx time keep」で検索してCloudy nightsでやっと答えが見つかりました。「MENU」ボタン -> ユーティリティー -> RTCのON/OFFです。RTCとはReal Time Clockとのことで、これをオンにすると内部時計が電源を切っても進み出します。
  5. でもこれもなかなか曲者で、時刻を合わせても、なぜかRTCをオンにすると「現地時刻」が30分くらいずれてしまいます。諦めずに、再度工場出荷時にリセットし、最初の時刻を合わせ、RTCをオンにし、30分くらいのズレが出ても「MENU」ボタン -> スコープセットアップ -> 時刻・場所の設定で時刻を合わせなおして、やっと現地時刻が正確な時間になりました。
  6. 確認方法は、赤道儀のスイッチを入れた時に、これまで時刻を合わせていたところで突然場所の設定が表示されてしまいます。ここでビビらずに、下ボタンを押すと現地時刻が表示され、しかも時間がリアルタイムで進んでいるのが分かります。

幾つか不具合や謎らしきものも見受けられました。
  • ユーティリティー -> スコープセットアップ -> 時刻・場所の設定でtoyamaを選択してもなぜかakitaになってしまう。何度かやったらやっとtoyamaになりました。
  • Cloudy Nightsによると、しかも電池(CR2032)もあると。前回ネジを外してカバーを取って基板を見ても見つからなかったので、今一度、裏表も含めてきちんと見てもやはり見当たりません。2032なら大きいのですぐに見えるはずなのですが、不思議です。
  • 内部電池が見えないので、まさかと思って一旦ハンドコントローラーも赤道儀も電源ケーブルも全て外してしばらくしてから再接続し、再起動しましたが、時間は保持しているようです。何かどこかに時間を保持する電力があるはずなのですが、今のところ不明です。(追記: Twitterで情報がありました。電池は赤道儀本体側にあるとのことです。)

とはいえ、やっとAdvanced VXの時刻保持の謎が解けました。結構長かったです。知っている人にとってはあたりまえのことかもしれませんが、りっくんさんもkiharaさんも私もそうだったのですが、このことに気づいていない人は意外にたくさんいるのかと思います。

外は大雪。こういったことに時間をかけられるのは、なかなか星の出ない北陸の冬だからこそですね。
 

赤道儀のセッティングの続きを少しだけ。初期アランメントで一発目に度くらいの精度で入ってくるかという話です。比較するのは、前回の記事で評価した

  • 水平インデックス法
  • 鏡筒水平法

の2通りの方法で実際どれくらいの誤差になりそうかというのを評価してみます。今回も極軸は十分な精度であっているとの仮定が入っています。あ、便宜上名前は勝手につけてしまいました。全然正式な名前ではありませんのでご了承ください。


水平インデックス法

1. 三脚の脚の長さででる水平度の誤差:
水準器を見ながら、最下部の脚の開きがざっくり1mくらいの幅で、手で3mmくらいの精度の脚の長さを合わせるのはできそうなので、
0.003[m] / 1[m] x 180[deg] / pi[rad] ~ 0.2 [deg] 

2. AVXの赤経体の直径が10cm(半径5cm)くらい、インデックスマークの幅が2mmくらいで半分の半分くらい幅の幅では少なくとも合わせられるとして、
(0.002[m] / 4) / 0.05[m] x 180[deg] / pi[rad] ~ 0.57[deg] 

3. 同じくAVXの赤緯体の直径が10cm(半径5cm)くらい、インデックスマークの幅が2mmくらいで半分の半分くらい幅の幅では少なくとも合わせられるとして、
(0.002[m] / 4) / 0.05[m] x 180[deg] / pi[rad] ~ 0.57[deg] 

4. 時刻の精度ですが、実際に時刻を打ち込んでからいつが赤道儀が動き出す最初かあまり確定していないのですが、30秒くらいの精度では合うとして、
0.5[min] / 60[min] / 24[h] x 360[deg] ~ 0.125[deg]


誤差は1から4までの2乗和のルートくらいになり、

sqrt(0.2^2 + 0.57^2 + 0.57^2 + 0.125^2) ~ 0.84[deg]

となります。この精度がどれくらいの意味を持つかというと、基本的にそのまま赤道儀の初期アラインメントの一発目がどれくらい中心からずれるかを示します。
  • 典型的な光学ファインダーの視野が、例えばVixenで7倍、50mmで実視界7度とのことなので、十分ファインダーには入るはずです。
  • 電子ファインダーで例えば、焦点距離50mm、1.8インチのASI178MCだと8度x6度と十分すぎる画角です。
  • 例えばFS-60Qで焦点距離600mmの鏡筒でフォーサーズサイズのASI294MCだと1.6x1.2度なので、まあなんとか入ってくるくらいです。
  • 例えばFS-60CBで焦点距離355mmの鏡筒で1/3インチのASI224MCだと0.8x0.6度くらいなので、ちょっと厳しいですね。


鏡筒水平法

一方鏡筒水平法では、誤差は結構変わってくるはずです。基本的に、三脚の脚の長さ調整の誤差と赤経のインデックスマークの誤差が、鏡筒においた水準器の精度に置き換わります。水準器の誤差はホームセンターで普通に売っている簡易なものでも簡単に0.1度くらいは出るようです。赤緯のインデックスマークの誤差は同じとします。全部の誤差を考えると

sqrt(0.1^2 + 0.57^2 + 0.125^2) ~ 0.59[deg]

くらいで、 
  • 光学ファインダーで電子ファインダーでも当然一発目で入ってきて、
  • 焦点距離600mmの鏡筒でフォーサーズサイズセンサーだとかなり真ん中に来て、
  • 焦点距離355mmの鏡筒で1/3インチセンサーでもなんとかギリギリ入ってくるくらいです。

確かにこのあいだの実際のテストでも、何度かやってみても鏡筒水平法の方が真ん中近くに来ていたので、あながち間違った見積もりでもないでしょう。

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水平インデックス法: 視野のギリギリで入るくらいです。入らない時もあります。

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鏡筒水平法: だいぶ真ん中に寄ります。視野に入らないことはまずありあません。

あと、鏡筒の光軸自身が赤道儀に取り付けたアリガタの向きからずれれている誤差は今回入れていません。これがずれていると、上の誤差以上のずれが出るかもしれませんが、見た目でそこそこ合わせているならそれほど大きくずれることはないでしょう。私は極軸を合わせた時に、カメラの視野の真ん中が極軸になるようにある程度光軸を合わせてあるので、実際に上の誤差よりも十分小さい範囲で合わせこまれていることになります。これはSharpCapで極軸調整した際に一回合わせてしまえば、それ以降アリミゾと鏡筒を外したりしなければあまりずれないので、一度はきちんと合わせておいてもいいかと思います。


いずれにせよ、水平インデックス法に変えて、鏡筒水平法にせよ、ファインダーレベルで一発目に入らないのはさすがに論外な誤差と言えるので、何か根本的におかしいと思っていいはずです。例えばりっくんさんは、AVXの設定を工場出荷時に戻したら、少なくとも一発目でファインダーに入るようになったというので、あまりに状況がおかしかったら他の原因を考えるのも解決につながるかもしれません。

先々週の赤道儀のセッティングの記事で、水平出しのことが議論になりました。コメントがいくつかあったのですが、かんたろうさんとその後もメールのやり取りをして、白熱した議論となりました。以後の議論では赤道儀の極軸は十分な精度であっていて、また、鏡筒も極軸と平行に設置されるものと仮定しています。

突き詰めていくと、今回の論点は、

  • Celestronの赤道儀Advanced VXで、ワンスターアラインメントでの初期アラインメントの時に、水平出しをしていることで、きちんと視野に入るかな入らないかに影響があるか?

というものになります。私は水平出しをしていなければ入らないという主張で、かんたろうさんは必ずしも水平出しをしていなくても、赤緯体が天頂方向を向いていれば、きちんと視野に入るというものです。

もう少し噛み砕いていうと、私はいつも赤道儀の水平出しをしてからインデックスマークを合わせるので、赤緯体は基本的に誤差の範囲内で天頂方向を向きます。かんたろうさんのは赤道儀の水平を出していなくても、赤緯体を天頂方向に向ければそれでよくて、その場合は赤経のインデックスマークが(水平からずれた分だけ)ずれた状態となるということです。赤緯体を天頂方向に向ける方法は、赤緯方向を90度傾けて鏡筒を東西に向ける。鏡筒の上に水準器を乗せて、赤経を調整して水平を出せば、赤緯体は天頂方向を向くというものです。

議論は平行線で、やはり実際に確かめなければ納得できなかったので、久しぶりに晴れた今日、試してみみました。

まずは、自分の方法できちんとワンスターアラインメントで入ることで、機器に異常がないかどうか確かめます。三脚についた水準器で赤道儀の水平を出し、

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SharpCapで極軸を1分角以下の精度であわせて、

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ワンスターアラインメントで手近なカペラを導入します。まあいつもやっているのでわかっているのですが、結果はきちんと視野の中に入ってきて、

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左がASI178に50mmのレンズをつけた電子ファインダー、右がASI294MCを600mmのFS-60Qに取り付けた鏡筒の視野です。両方とも明るいのがカペラです。電子ファインダー、鏡筒の視野ともに、赤いクロスの交点は一致しています。すなわち、右の鏡筒でクロス点にきているなら、左の電子ファインダーでもクロス点にきます。実際の導入はファインダーでざっくり0.8度くらい中心からずれた位置で導入されています。水平出しやインデックスマークの誤差もこれくらいのオーダーなので、特におかしくない精度です。機器に特に異常もないと思われます。


次に、三脚の脚の一本を数cm伸ばします。

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三脚につけた水準器はこの時点で全く水平を示していません。

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この状態で極軸をSharpCapを使って再び1分角以内の精度で合わせ直します。

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ここから、赤緯を90度程度傾けて、鏡筒に水準器を乗せて、赤経を調整してその水準器が水平になるようにします。

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この時点で赤緯体は天頂方向を向き、赤経のインデックスマークは当然ずれます。

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90度傾けた赤緯を戻して、赤緯のインデックスマークを合わせて準備完了です。この状態でワンスターアラインメントを実行します。

私の説が正しければ天体は導入できない、かんたろうさんが正しければ天体は導入できることとなります。果たして結果は...



なんと、見事カペラが導入されました。

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確かめるべく、ベテルギウス、リゲルなどもそのまま導入してみましたが、きちんと導入されます。これは完全に私の負けです。

さてここでやっと、なんできちんと導入されたのか考えました。答えはすぐにわかりました。私はワンスターアランメント(2スターアラインメントの最初でも同じです)のアルゴリズムは「赤道儀の水平」を仮定していると思い込んでいたのですが、実際にはアルゴリズムは「赤緯体が天頂を向いている」ということを仮定していたわけです。落ち着いてよく考えてみると確かに、水平を仮定するよりも赤緯体が天頂を向いていると仮定する方が、より条件が緩く、かつこれで十分だということがわかります。

すぐにかんたろうさんに電話して、私が間違っていたことを素直に伝えました。最後まで意見を変えなかった頑固な私に、ずっと付き合って頂いたかんたろうさん、どうもありがとうございました。改めてお礼を述べさせていただきます。


というわけで、赤道儀の初期アラインメントで一発目に天体を視野に入れるためには、必ずしも水平は必要ないと訂正しておきます。ただし赤緯体を天頂に向ける必要があることは変わりありません。かんたろうさんの方法を使ってインデックスはずれた状態で赤緯体を天頂に向けるもよし、赤道儀のの水平を出してインデックスを合わせて赤緯体を天頂に向けるもよしです。

ちなみに、言うまでもないかもしれませんが、「初期アラインメントで一発目」にさえこだわらなければ、水平も出す必要はないですし、赤緯体を天頂に向ける必要はありません。2スターアラインメント以上でマニュアルで一つづつ丁寧に導入していけば、自動導入可能な状態までもっていけます。


とにかくやっと納得しました。やはり自分で実際に試すのが一番わかりやすいです。かんたろうさんはじめ、コメントをくれたせろおさん、りっくんさん、いろいろお騒がせして申し訳ありませんでした。

ブログのコメントで赤道儀のセッティングについて議論があったので、少しまとめておきます。


目的

赤道儀の設定で何が重要かを考えてみる。
具体的には極軸を取るだけでいいのか、赤道儀の水平を取るのは必要なのかを考えます。


検討すべき状況

自分が地表のある経度、ある緯度、ある高度にいるとします。その位置において赤道儀を設置することを考えます。


考えるべき自由度の確認

極軸の向きで2自由度、赤経の初期位置の不定性で1自由度、同じく、赤緯の初期位置の不定性で1自由度の、計4自由度が考えられます。 


さて、検討を始めます。

極軸をきちんと合わせた状態ではどうなるか?

赤道儀の極軸調整だけして、水平とかは全然とれていない場合は何ができて何ができないのでしょうか?実はマニュアルで天体を導入して、あとは自動追尾するだけなら、これで十分です。赤道儀の水平が出ていようが出ていまいが、関係ありません。赤経、赤緯のクランプを緩めるなり、微動であわせるなりしして、マニュアルでターゲットの天体さえ導入さえすれば、あとは自動で追尾していきます。

自動追尾で時間とともに天体がずれていくのは別の問題で
  • 極軸あわせの精度が悪い
  • モーターの回転精度が日周変化とあっていないなど
  • ピリオディックモーションもこの範疇
などが原因です。いずれにせよ、極軸さえ合わせれば、自動追尾はできます。


自動導入は?

極軸をとるだけでは自動導入まで考えると不十分でしょう。では水平を取ればいいのか?他に気をつけることはないのか?
  1. まず初期アラインメントのことを考えてみます。簡単のために、赤道儀の極軸調整は理想的に取れていて、赤経軸は正しく極軸に一致していると仮定します。
  2. 各メーカーの初期アライメントの詳しいアルゴリズムはよくわかりませんが、普通にプログラミングのことを考えると、何かを仮定しなければいけません。ぱっと考えて、最初はまず鏡筒がきちんと極軸を向いているということを仮定するでしょう。
  3. これをもう少し分解すると、初期アラインメントアルゴリズムは(極軸は理想的にあっているとするので) A. 赤緯の初期位置(クランプを緩めて赤緯の回転体の矢印を二つを合わせて、きちんと北向き(極軸方向)にとるということ)はあっていると仮定する(かんたろうさんとの議論で今回の記事をここから何箇所か訂正しました)でしょうしかもしれませんし、さらにB. 赤経の初期位置(クランプを緩めて赤経の回転体の矢印を二つを合わせて、きちんと地面に対し垂直に向けるということ)もあっていると仮定するでしょうかもしれません。さらに、C. 赤道儀は水平に設置されていることも仮定するでしょうかもしれません。
  4. でもBとCは自由度としては同じことを言っていて、例え水平がずれていても、(極軸は理想的と仮定しているので)赤経の矢印合わせのところで少しずらして補正してやれば同じことです。なので、本質的には自由度はAとBCを合わせた2つになります。セレストロンの実際のアルゴリズムは赤緯体が天頂方向を向いていることだけを仮定しています。なので、赤緯体が天頂を向いていれさえすれば、必ずしも水平が取れている必要はありません。ただし、その場合赤経の矢印もずれることになります。
  5. でもこのことは、実際の初期アラインメント時には正しくないです。たとえ赤緯体がきちんと真上を向くように赤経を合わせてあっても、初期アラインメントプログラムは「水平が取れている状態できちんと赤経の0度が真上を向いているのか、水平がずれていて赤経の0度も真上から少しずれているのに赤緯体が真上を向いているか」を知る手段がないからです。なので普通にプログラムを組むことを考えた場合、赤経が0度が上を向いていて、かつ水平も取れている状態を仮定するでしょう。
  6. なので、一発目の導入をきちんと視野に入れたい場合には、赤緯体を天頂に向けるか、水平を取って赤経、赤緯はきちんと矢印を合わせたほうがいいというわけです。



実際の導入手順

上記のことより、実際の赤道儀のセッティングのしかたは例えば以下のような手順が考えられるでしょう。ここではコメントにあったAdvanced VXを例にとって考えます。

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  1. 初期アラインメントで一発目からある程度天体を導入したい場合は、赤緯体を天頂方向に向ける必要があります。インデックスマークを使う場合は水平を出す必要があります(赤緯体を天頂に向ける方法が他にあるなら、水平にこだわる必要はありません)。手持ちのAdvanced VXには水準器がついていないので、ホームセンターで小さな全方向の水準器を買ってきて、上の写真のようにエポキシ接着剤で三脚に取り付けました。
  2. 最初に水準器を取り付ける時の水平は、三脚と赤道儀の間に板を挟み、そこに水準器を乗せて足の長さを調整して水平を出し、その足の長さを保ったまま、水準器を三脚の上に移動し、水準器が水平を示すように接着剤でつけました。ここまでが事前準備です。
  3. ここからが、毎回の設置時の話です。初期アラインメントの前に、極軸合わせですが、さらにその前に、毎回必ず三脚の水準器で水平を出します。
  4. 水平を出しておけば、赤道儀を設置する場所の緯度が大きく変わらない限り、北極星の高さはほとんど狂わないので、赤道儀の下の横の2本のネジでYawだけを調整して北極星を視野中心に入れます。私の場合、鏡筒(600mmとか)につけたASI294MCをSharpCapで見た画面のだいたい真ん中くらいに北極星が入るようにします。
  5. この状態でSharpCapの極軸調整で1分角程度まで合わせこみます。
  6. その後、赤道儀の電源を入れ、赤経と赤緯の矢印マークをできるだけきちんとモーターで合わせてから初期アラインメントを始めます。
  7. 基本的に水平出しと、極軸合わせこみでほとんど一発目で、鏡筒につけたカメラのSharpCapの画面の中に入ってきます。
  8. ASI224MCの時はセンサー面積が小さく流石に600mmだと一発で入らない時もあったので、50mmのレンズにASI224をつけて電子ファイダーで一発目の導入を補助していましたが、それでも二発目は十分に600mm+ASI224で入ってきます。

実は最初に書いてませんでしたが、鏡筒を赤緯体に取り付ける時にきちんと鏡筒が赤緯軸に対して垂直な面内に存在するという仮定もしています。この仮定が破られている状況とは、例えば極軸がきちんとあっていて、赤緯が0度を向いているのに、鏡筒の頭が下がっていて全然極軸方向を向いていないなどです。アリガタやアリミゾの精度が悪かったり、アリガタに対して斜めに鏡筒を取り付けてしまったときに起こります。上記設定手順を試して、それでも初期アラインメントの一発目に目標天体が入らない時は、鏡筒の取付時のずれを見直してみるといいかもしれません。

というわけで、本当は最初に説明した極軸2自由度、赤経、赤緯の不定性2自由度、さらに赤緯体に対する鏡筒の向きの2自由度の計6自由度があって(厳密にいうと、赤緯の不定性と鏡筒の向きのYaw方向は同じ自由度なので計5つ)、極軸を合わせることで2自由度減り、残り4(厳密には3)自由度を求める必要があります。初期アラインメントの一度の導入で2自由度決まるので、2スターアラインメントで一応4自由度が求まるはずです。3スター以上だと、極軸のズレまでわかると思うのですが、そのアルゴリズムはどうやっているのかあまり想像できません。結構大変そうです。

また、1スターアラインメントだと、原理的に自由度が足りないので、どこかが合っていると仮定せざるを得ません。なので、簡易アラインメントと考えるべきでしょう。でも上記方法で赤道儀を設置すると、1スターアラインメントでも十分実用的になります。

最近のアルゴリズムは相当優秀なので、一発目に導入したいという要求を外してしまえば、2スターアラインメント以上を使えば、多少赤緯体が天頂からずれていても大丈夫ですし、水平もこだわる必要はないですし、矢印も多少ずれていても構いません。下手をすると多少極軸がずれてしまっていても補正しながら追尾することも可能かもしれません。

もっと言うと、赤道儀下部の極軸合わせのPitchとYawの押しネジのところにモーターをつけて、最近はやりのPlate Solvingなんかまで駆使したら、本当にポンと置いて全自動で極軸を取って、アランメント完了まで全自動でできそうな気がします。経緯台など、簡易的なものではすでに実現されつつありますが、元気のある中国メーカーとかが、撮影に耐えられるくらいの安定したレベルのものを赤道儀で作ってくれませんかね?


毎度長々と書いてしまってすみません。とりあえずパッと考えたことを書いただけなので間違ったことを言っているかもしれません。何かおかしなところがあったらコメントなどで指摘していただけると嬉しいです。 ->かんたろうさんのコメントとその後の議論で、初出の記事からいくつか訂正しました。



 

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