TSA-120を使ってのフェニックスの大口径化の最後の記事で少しだけ見せたのですが、次に更なる大口径、20cmのC8を使うことを考えています。
PhoenixとC8の接続は、TSA-120の時と同様に、アルミフレームを使っています。そもそも、C8で高さが変わることも見込んで、最初からアルミフレームを採用していたというわけです。
このフレームを縦に2段にすることで、フェニックスの位置を高くすることができ、長穴の空いた板で接続することで高さを調整することができます。
コリメートレンズはTSA-120の時と同様に、PSTの焦点距離-200mmのメニスカスレンズを使いました。TSA-120の時は、コリメートレンズ位置で光束径が27mmと、実測レンズ径の23mmを超えていましたが、C8は焦点距離2000mmのF10鏡筒なので、焦点から200mm対物側に置いてやれば、光束径は20mmになり、レンズ径内に収まるはずです。
C8は主鏡を移動することでピントを合わせる構造となっています。その調整範囲はかなり広く、焦点距離は1800mm程度から2300mm程度まで調整できるそうです。これはフェニックスを置く位置の範囲を、広く取れることを意味します。逆にいうと、この調整範囲の広さから最初は簡単にピントが出るでしょうが、最適化は自由度が大きく大変だということになりそうです。
減光に関しては、PST+C8やTSA120+Phoenixでやった方法と同じで、エタロン前にUV/IRカットフィルターをつけています。
UV/IRカットフィルターは基本的に反射と透過が主で、熱はほとんど発生しません。熱は、反射でも透過でもないわずかのロスで発生するからです。
また、UV/IRカットと言いながらも、実際に太陽光をフィルター単独で反射光を見るとわかるのですが、意外に可視光も反射することがわかります。さらに、見る限り透過光より反射光の方が明るかったりします。そのため、不可視光も含めたパワー的には3分の1程度に抑えることができるはずです。
その後にさらに赤色のR2フィルターを入れています。以前C8の光をこのR2フィルターに直接入れたときは熱で割れてしまいましたが、UV/IRカットフィルターの後に入れた場合はほんのり温かくなるくらいで、全然余裕がありそうです。
エタロンも基本的には反射と透過なので、エタロン自体が熱を持つことはあまりなく、熱で壊れることはないということは、PSTで経験済みです。ただし、フェニックスのエタロンはPSTと違い中央遮蔽があり、そこでのロスが熱になる可能性があるので、十分注意しながらエタロンを壊さないように試す必要があります。今回UV/IRカットフィルターとエタロンの間にR2フィルターを入れたのは、中央遮蔽での熱膨張を心配してです。
副鏡のところではそこそこ集光しているので、鏡以外のところには全光量をあまり当てない方がいいでしょう。最初のアラインメントだけは、鏡筒の蓋を少しだけ開けて、大きくずれていないことを確認してから全部開けるようにしています。
また、焦点から大きく外れたところに平面の反射面を置くと、戻り光が変なところで集光する可能性があります。基本的には焦点から遠くない所に反射物を置きますが、やはり対物側を覗き込まないように気をつけるべきです。戻り光は集光さえしなければ、太陽光以下の光しか返ってこないので、基本的には問題ないはずです。
でも、そうは言っても太陽望遠鏡が危険なことには変わりないです。ここで書いていることが理解できない場合、もしくは危険を軽視して注意を払えないような場合は、太陽望遠鏡の改造などは絶対に試すべきではないです。もし試す場合も、口径が大きな鏡筒での太陽観察は、失明や火事など、本当に深刻な危険が伴うことを十分肝に銘じて、安全に十分な注意を払いながら、自己責任の範囲で進めるようにしてください。この記事を読んで何か事故が起きたとしても、私は何の責任も取ることができません。
C8とPhoenixの2台を繋いだ状態で、実際に太陽を導入してみます。やはり最初は怖いので、鏡筒前の蓋を少しずつずらしながら、熱くなるようなところがないか、手で触ったりして確かめながら進めます。接眼部では最初はカメラをつけずに、手をかざして明るい光が来ていないことを確認しながら、徐々に蓋をずらして開けていきます。
問題なさそうならカメラを取り付けて、早速SharpCapで見てみます。C8のピントノブを回していくと、やはり予想通り範囲内に簡単にピントが合うところがありました。
でも、ピントが合ったというだけで、これで成功かというと、見ている限り問題点が大ありです。
視野が狭いので、PST時代のASI290MMよりも多少センサー面積の大きいということで、Apollo-M MINIを使いました。でもこれだと丸く見える範囲しか使えず、特にピクセルサイズが大きく画素数が多くないので、全然有効活用できていません。
なぜ、視野が狭くなるのか?まず試しに、接眼部についているERFとBFを外してみました。エタロンのいわゆる櫛形の透過光を見ている状態になります。
連続光に近い状態になるのですが、少なくとも周りをカットするようなものはなくなってるようです。BFとERFが何か悪さをしているようなのですが、必ずしもBF、ERFが単体で問題ということは言い切れません。エタロン単体も問題ないと結論付けそうになりますが、これもやはり言いすぎです。エタロンとBFとERFがそろって、Hαのナローになって初めて出てくるような複合要因の問題はまだ残されているかもしれないということです。ここで言えることはせいぜい、「C8とPhoenixの組み合わせで、連続光で見ている限りは変な視野の制限はなさそう」ということくらいでしょうか。
ここでは視野を制限する理由として、2つの原因の可能性を考えてみます。
1と2をそれぞれ個別に議論してみます。
まず、エタロンへの入射角で視野がどれくらい制限されるかの見積りです。コリメートレンズで平行光を作っているはずなので、平行光がエタロンへ入っていくはずで、なぜエタロンに対して入射角がつくか、不思議に思わないでしょうか?ここはきちんと理解しておく必要があるので、今回説明することにします。
最初に、コリメートレンズ中心の光は入射角0度でエタロンに入っていきます。でも、太陽は面積を持っているので、視野の中心位置からズレたところでは「局所的な光束はたとえ平行光」だとしても、「その光束全体が角度を持って」エタロンに入射している状態になります。
まだちょっとわかりにくいかもしれないので、次のように考えてみましょう。(C8とかの接続を考えずに)フェニックス単体でHαで、太陽を中心に導入して、カメラで見ることにします。この場合、鏡筒の対物レンズ前にエタロンがついていることになります。太陽から平行光が入ってきていて、対物レンズ全体でその光をとらえます。センサーの中心に集光する光は太陽中心を見ている光なので、平行光で入射角も0度でエタロンに入った光を見ることになります。その一方、センサーの中心からy[mm]離れた端の位置に集光する光は、面積のある太陽の中心からずれた端の方を見ることになります。その光は、局所的な光束で考えると平行光ですが、エタロンに対しては
で表されるような入射角θを持って、エタロンに入射していることになります。ここで、yはセンサー上での中心からの距離、fは対物レンズの焦点距離で、フェニックスの場合400mmになります。
ポイントは、太陽は面積を持ってるということです。それが面積を持っているセンサーの上で像を結んでいるので、(光束としては)平行光ですがエタロンの時点で入射角を持った光を見ているということになります。間違えやすいのは、対物レンズで集光する際の角度とは違うということです。対物レンズ上ではセンサー上よりもっと大きなビーム径になっているので、その集光する角度はもっと大きな角度になります。この角度と、エタロンへの入射角は別物です。
もっとわかりやすい話として、視野角を考えてみましょう。太陽の視野角は0.5度程度です。視野角0.5度の円状の面積が、センサー上に円状の像を結びます。この視野角と、エタロンへの入射角は同じものになります。なので、太陽の縁の所は、センサー上で中心から400[mm] x tan(0.5/2度) = 1.75[mm]の位置に像を結び、その際の光の「エタロンへの」入射角は0.25度ということになります。
センサー位置から逆にエタロンへの入射角を考えて見ます。例えば、Apollo-M MINIのセンサーサイズ横幅8.75mm、縦幅6.6mmの場合、横端では
でエタロンへの入射角θ = 0.627度の光が集光している
縦端では
でエタロンへの入射角θ = 0.473度の光が集光している
ことになります。
ここできちんと意識しておかなければならないことは、フェニックスのようにエタロンが対物レンズの前に置かれている場合は、この入射角は「対物レンズの焦点距離」と、「センサー上の像の位置」のみで決まってしまうということです。波長にも、口径にも依存しないということはきちんと理解しておくべきでしょう。これは太陽のような平行光を見ている限り、もしくはフェニックスの手前にTSA-120やC8を接続してもコリメートレンズで平行光にしている限り、一般的に成り立つ話です。なので、フェニックス前をどういじろうが、平行光条件を満たす場合は、エタロンへの入射角に対してはフェニックスという決まった対物レンズを使っているので、もうどうにかするような自由度は残されていないということです。これは結構痛いですね。
次に、入射角と波長のズレの関係を考えます。エタロンに入っていく光に入射角がある場合の波長のズレは、アマチュア天文の範囲では例えばAstrosurfのこのページで検討されています。中心波長λ0の光が、エタロンへ入射角θを持って入射した場合に、波長のズレΔλは
というような式になります。でもこの式、きちんとした証明が同サイト内のどこにも書いてないんですよね。根拠がわからない式を使うのは気が引けるので、今回きちんと証明しておこうと思います。
エタロンについては、関係式を太陽を始めた初期の頃にある程度説明しています、エタロンの間の距離dは半波長λ/2の整数倍mになるという条件が課せられるので
となります。もし光がエタロンに対して角度θで入射した場合、dは入射光から見るとエタロン間のギャップの距離が1/cosθで長くなったように見えるので、
となるように思えますが、ここは注意が必要で、実際には
となります。これは隣り合う2つの光の光路長差をきちんと考えると理由がわかります。エタロンの2枚の鏡の内側を反射する隣り合う2つの光が、「後ろ側の鏡を出た時を基準」に光が重なりあうと考えると、一つ目の光のスタート地点は手前側の鏡に入射した地点がスタートではなく、入射角のために遅れた場所がスタート地点となるからです。これはわりと有名な話で、わかりやすい解説などもあるので、ここでの証明は省きますが、興味がある人は調べてみてください。1より小さいcosθが「掛かって」いるので、エタロンへの入射角がある場合には、共振する波長は全て短くなる側にシフトします。
この場合、入射角θを持ってエタロンに入射する波長λ(θ)は、入射角θが0度の時の波長λ0に対して
と書けることがわかります。θが十分小さいとして、cosθをテイラー展開してやると
と書けるので、元の中心波長λ0からの差Δλは、入射角θの関数として
と書くことができます。これを元に計算してやります。
先に議論したように、センサー端部に集光する光の入射角はわかっているので、λ0=6562.8Åとして、
となります。
一方、センサー上の位置yに対応する光束中心は、50mm離れた絞り面では0.875yの位置にあります。これは
からわかりますね。
センサー上の中心からyの位置に集光する光は、BF位置で0.875yにあり、最大で半径 2.5/2 = 1.25 [mm]の範囲の光が影響し、それがBFの半径 8/2 = 4 [mm]以内であれば、完全に光が通る条件となり
最小で半径1.25 [mm] の範囲の光が影響し、それがBFの半径 8/2 = 4 [mm]以内であれば少しでも光が届く限界の条件となるので、
となります。これらを満たすyは
となり、中心から半径 約3.14 mm以内では完全に光が届き、半径3.14 mmから6.0 mmでは周辺に向かって徐々にケラれ、 半径6.0 mmより外側では光が届かないということになります。
Apollo-M MINIのセンサーサイズが8.75 x6.6mmなので、BFによる周辺減光は存在するが、光が届かないわけではなく、フラット補正をすれば何とかなりそうです。
別で撮影した、中心がずれてしまっている画像があります。Photoshop上で光が届かない所に円を描いてみます。
中心と思われる点から、完全に光が届かなくなるまでの距離が、SharpCapをキャプチャした画面上で2350/2 = 1175ピクセルくらい、横幅を本来のApollo-M MINIの1944ピクセルで換算すると1337ピクセルで、センサー上の距離にして6.01mmなので、上記の見積もりでかなり合っているように思われます。
このBFの絞りの効果も、フェニックスという縛りがある限り大幅に改善することは出来ず、BFとセンサー面との距離で多少いじることができるくらいです。
このことは、以前PSTとC8でカメラ位置をより遠くにした場合に見える範囲が広がったことを少なくとも定性的にうまく説明できます。
今回、C8+Phoenixで見える範囲が制限される理由として
入射角はフェニックスの対物レンズの焦点距離で決まってしまい、エタロンに入る光が平行光という条件を満たす限り、その手前がC8だろうがTSA-120だろうが違いはありません。BFによる絞りも同じで、C8だろうがTSA-120だろうが違いはありません。要するに「フェニックスを分解せずに使う」という縛りを設ける限り、大口径化のために接続する鏡筒に何を選んでも、これ以上あまり大きな改善をすることはできないということです。
実際、今回C8で撮影した画像を見ても、以前TSA-120で撮影した画像を見ても、上の二つの理由でうまく像が周辺で悪くなっていく様子を説明できます。ただ、C8の方がTSA-120よりも一見視野が狭いように見えている (急激に周りが落ち込む) のですが、なぜなのかはちょっと不明です。
これらを解決できるのか、解決していくべきなのかが、今後の課題でしょう。解決のためのアイデアはすでにいくつかあるのですが、その前に、少しこの状態でいくつか試したいことがあるので、まずは一旦、この状態で撮影してみたいと思います。
PhoenixとC8の接続
PhoenixとC8の接続は、TSA-120の時と同様に、アルミフレームを使っています。そもそも、C8で高さが変わることも見込んで、最初からアルミフレームを採用していたというわけです。
このフレームを縦に2段にすることで、フェニックスの位置を高くすることができ、長穴の空いた板で接続することで高さを調整することができます。
コリメートレンズ
コリメートレンズはTSA-120の時と同様に、PSTの焦点距離-200mmのメニスカスレンズを使いました。TSA-120の時は、コリメートレンズ位置で光束径が27mmと、実測レンズ径の23mmを超えていましたが、C8は焦点距離2000mmのF10鏡筒なので、焦点から200mm対物側に置いてやれば、光束径は20mmになり、レンズ径内に収まるはずです。
C8は主鏡を移動することでピントを合わせる構造となっています。その調整範囲はかなり広く、焦点距離は1800mm程度から2300mm程度まで調整できるそうです。これはフェニックスを置く位置の範囲を、広く取れることを意味します。逆にいうと、この調整範囲の広さから最初は簡単にピントが出るでしょうが、最適化は自由度が大きく大変だということになりそうです。
減光
減光に関しては、PST+C8やTSA120+Phoenixでやった方法と同じで、エタロン前にUV/IRカットフィルターをつけています。
UV/IRカットフィルターは基本的に反射と透過が主で、熱はほとんど発生しません。熱は、反射でも透過でもないわずかのロスで発生するからです。
また、UV/IRカットと言いながらも、実際に太陽光をフィルター単独で反射光を見るとわかるのですが、意外に可視光も反射することがわかります。さらに、見る限り透過光より反射光の方が明るかったりします。そのため、不可視光も含めたパワー的には3分の1程度に抑えることができるはずです。
その後にさらに赤色のR2フィルターを入れています。以前C8の光をこのR2フィルターに直接入れたときは熱で割れてしまいましたが、UV/IRカットフィルターの後に入れた場合はほんのり温かくなるくらいで、全然余裕がありそうです。
エタロンも基本的には反射と透過なので、エタロン自体が熱を持つことはあまりなく、熱で壊れることはないということは、PSTで経験済みです。ただし、フェニックスのエタロンはPSTと違い中央遮蔽があり、そこでのロスが熱になる可能性があるので、十分注意しながらエタロンを壊さないように試す必要があります。今回UV/IRカットフィルターとエタロンの間にR2フィルターを入れたのは、中央遮蔽での熱膨張を心配してです。
副鏡のところではそこそこ集光しているので、鏡以外のところには全光量をあまり当てない方がいいでしょう。最初のアラインメントだけは、鏡筒の蓋を少しだけ開けて、大きくずれていないことを確認してから全部開けるようにしています。
また、焦点から大きく外れたところに平面の反射面を置くと、戻り光が変なところで集光する可能性があります。基本的には焦点から遠くない所に反射物を置きますが、やはり対物側を覗き込まないように気をつけるべきです。戻り光は集光さえしなければ、太陽光以下の光しか返ってこないので、基本的には問題ないはずです。
でも、そうは言っても太陽望遠鏡が危険なことには変わりないです。ここで書いていることが理解できない場合、もしくは危険を軽視して注意を払えないような場合は、太陽望遠鏡の改造などは絶対に試すべきではないです。もし試す場合も、口径が大きな鏡筒での太陽観察は、失明や火事など、本当に深刻な危険が伴うことを十分肝に銘じて、安全に十分な注意を払いながら、自己責任の範囲で進めるようにしてください。この記事を読んで何か事故が起きたとしても、私は何の責任も取ることができません。
太陽光を入れてみる
C8とPhoenixの2台を繋いだ状態で、実際に太陽を導入してみます。やはり最初は怖いので、鏡筒前の蓋を少しずつずらしながら、熱くなるようなところがないか、手で触ったりして確かめながら進めます。接眼部では最初はカメラをつけずに、手をかざして明るい光が来ていないことを確認しながら、徐々に蓋をずらして開けていきます。
問題なさそうならカメラを取り付けて、早速SharpCapで見てみます。C8のピントノブを回していくと、やはり予想通り範囲内に簡単にピントが合うところがありました。
視野の問題
でも、ピントが合ったというだけで、これで成功かというと、見ている限り問題点が大ありです。
- まず、視野が狭いです。カメラはApollo-M MINIですが、像は円状の内部にのみ見え、周りは真っ暗に見えます。
- 合成焦点距離が、(2000mm / 200mm)*400mm =4,000 mm とかなり長いので、視野が狭くなってしまいます。
視野が狭いので、PST時代のASI290MMよりも多少センサー面積の大きいということで、Apollo-M MINIを使いました。でもこれだと丸く見える範囲しか使えず、特にピクセルサイズが大きく画素数が多くないので、全然有効活用できていません。
なぜ、視野が狭くなるのか?まず試しに、接眼部についているERFとBFを外してみました。エタロンのいわゆる櫛形の透過光を見ている状態になります。
連続光に近い状態になるのですが、少なくとも周りをカットするようなものはなくなってるようです。BFとERFが何か悪さをしているようなのですが、必ずしもBF、ERFが単体で問題ということは言い切れません。エタロン単体も問題ないと結論付けそうになりますが、これもやはり言いすぎです。エタロンとBFとERFがそろって、Hαのナローになって初めて出てくるような複合要因の問題はまだ残されているかもしれないということです。ここで言えることはせいぜい、「C8とPhoenixの組み合わせで、連続光で見ている限りは変な視野の制限はなさそう」ということくらいでしょうか。
ここでは視野を制限する理由として、2つの原因の可能性を考えてみます。
- エタロンに対する入射角がつくこと
- センサー前のBF径が小さく、絞りのような状態になっていること
1と2をそれぞれ個別に議論してみます。
エタロンの入射角
まず、エタロンへの入射角で視野がどれくらい制限されるかの見積りです。コリメートレンズで平行光を作っているはずなので、平行光がエタロンへ入っていくはずで、なぜエタロンに対して入射角がつくか、不思議に思わないでしょうか?ここはきちんと理解しておく必要があるので、今回説明することにします。
最初に、コリメートレンズ中心の光は入射角0度でエタロンに入っていきます。でも、太陽は面積を持っているので、視野の中心位置からズレたところでは「局所的な光束はたとえ平行光」だとしても、「その光束全体が角度を持って」エタロンに入射している状態になります。
まだちょっとわかりにくいかもしれないので、次のように考えてみましょう。(C8とかの接続を考えずに)フェニックス単体でHαで、太陽を中心に導入して、カメラで見ることにします。この場合、鏡筒の対物レンズ前にエタロンがついていることになります。太陽から平行光が入ってきていて、対物レンズ全体でその光をとらえます。センサーの中心に集光する光は太陽中心を見ている光なので、平行光で入射角も0度でエタロンに入った光を見ることになります。その一方、センサーの中心からy[mm]離れた端の位置に集光する光は、面積のある太陽の中心からずれた端の方を見ることになります。その光は、局所的な光束で考えると平行光ですが、エタロンに対しては
y = f tanθ
で表されるような入射角θを持って、エタロンに入射していることになります。ここで、yはセンサー上での中心からの距離、fは対物レンズの焦点距離で、フェニックスの場合400mmになります。
ポイントは、太陽は面積を持ってるということです。それが面積を持っているセンサーの上で像を結んでいるので、(光束としては)平行光ですがエタロンの時点で入射角を持った光を見ているということになります。間違えやすいのは、対物レンズで集光する際の角度とは違うということです。対物レンズ上ではセンサー上よりもっと大きなビーム径になっているので、その集光する角度はもっと大きな角度になります。この角度と、エタロンへの入射角は別物です。
もっとわかりやすい話として、視野角を考えてみましょう。太陽の視野角は0.5度程度です。視野角0.5度の円状の面積が、センサー上に円状の像を結びます。この視野角と、エタロンへの入射角は同じものになります。なので、太陽の縁の所は、センサー上で中心から400[mm] x tan(0.5/2度) = 1.75[mm]の位置に像を結び、その際の光の「エタロンへの」入射角は0.25度ということになります。
センサー位置から逆にエタロンへの入射角を考えて見ます。例えば、Apollo-M MINIのセンサーサイズ横幅8.75mm、縦幅6.6mmの場合、横端では
8.75mm/2 = 400mm x tanθ
でエタロンへの入射角θ = 0.627度の光が集光している
縦端では
6.6mm/2 = 400mm x tanθ
でエタロンへの入射角θ = 0.473度の光が集光している
ことになります。
ここできちんと意識しておかなければならないことは、フェニックスのようにエタロンが対物レンズの前に置かれている場合は、この入射角は「対物レンズの焦点距離」と、「センサー上の像の位置」のみで決まってしまうということです。波長にも、口径にも依存しないということはきちんと理解しておくべきでしょう。これは太陽のような平行光を見ている限り、もしくはフェニックスの手前にTSA-120やC8を接続してもコリメートレンズで平行光にしている限り、一般的に成り立つ話です。なので、フェニックス前をどういじろうが、平行光条件を満たす場合は、エタロンへの入射角に対してはフェニックスという決まった対物レンズを使っているので、もうどうにかするような自由度は残されていないということです。これは結構痛いですね。
入射角による波長のずれ
次に、入射角と波長のズレの関係を考えます。エタロンに入っていく光に入射角がある場合の波長のズレは、アマチュア天文の範囲では例えばAstrosurfのこのページで検討されています。中心波長λ0の光が、エタロンへ入射角θを持って入射した場合に、波長のズレΔλは
Δλ = λ0 (θ^2) / 2
というような式になります。でもこの式、きちんとした証明が同サイト内のどこにも書いてないんですよね。根拠がわからない式を使うのは気が引けるので、今回きちんと証明しておこうと思います。
エタロンについては、関係式を太陽を始めた初期の頃にある程度説明しています、エタロンの間の距離dは半波長λ/2の整数倍mになるという条件が課せられるので
m λ/2 = d
となります。もし光がエタロンに対して角度θで入射した場合、dは入射光から見るとエタロン間のギャップの距離が1/cosθで長くなったように見えるので、
m λ/2 = d/cosθ
となるように思えますが、ここは注意が必要で、実際には
m λ/2 = d cosθ
となります。これは隣り合う2つの光の光路長差をきちんと考えると理由がわかります。エタロンの2枚の鏡の内側を反射する隣り合う2つの光が、「後ろ側の鏡を出た時を基準」に光が重なりあうと考えると、一つ目の光のスタート地点は手前側の鏡に入射した地点がスタートではなく、入射角のために遅れた場所がスタート地点となるからです。これはわりと有名な話で、わかりやすい解説などもあるので、ここでの証明は省きますが、興味がある人は調べてみてください。1より小さいcosθが「掛かって」いるので、エタロンへの入射角がある場合には、共振する波長は全て短くなる側にシフトします。
この場合、入射角θを持ってエタロンに入射する波長λ(θ)は、入射角θが0度の時の波長λ0に対して
λ(θ) = λ0 cosθ
と書けることがわかります。θが十分小さいとして、cosθをテイラー展開してやると
λ(θ) = λ0 (1 - (θ^2) / 2)
と書けるので、元の中心波長λ0からの差Δλは、入射角θの関数として
Δλ = λ(θ) - λ0 = -λ0 (θ^2) / 2
と書くことができます。これを元に計算してやります。
先に議論したように、センサー端部に集光する光の入射角はわかっているので、λ0=6562.8Åとして、
- 横端の像の入射角θ = 0.627度の場合、波長のズレΔλは-0.39Å
- 縦端の像の入射角θ = 0.473度の場合、波長のズレΔλは-0.22Å
と計算できます。
この計算値が実際撮影した画像とどれくらい合っているのか見てみましょう。フェニックスのエタロンのFWHMは以前の測定結果を用いて0.37Åとします。これは全幅なので、中心から0.185Åずれると、透過光量が半分になるということです。
上の式から、波長のズレが0.185Åの場合には、入射角は0.43度となり、その場合中心から半径3.0mmの円のところで、光量が半分になるということがわかります。センサーサイズが8.75 x6.6mmなので、縦はほぼ上下の端で光量は半分以下くらいになります。ピクセルサイズは4.5μm/pixelなので、半径667ピクセル、直径で1334ピクセルが光量が半分になるところです。
実際の画像で光量が半分になるところをPhotoshop上で円を描いて測ってみると、直径で約1600ピクセルだったので、少し計算とズレていて、もう少し大きな範囲で見えているようです。さらに、次で議論するBFの絞りでも周りの光量が減るはずなので、実際の有効範囲はもう少し広いと思われます。
ズレの原因は、
センサーで見える範囲が限られてしまう一つの可能性は、上で説明したようなエタロンでの波長シフトによる透過光量の低下ですが、もう一つの可能性は、接眼部についているBF(Blocking Filter)の径でカメラ上の光束が制限される場合です。絞りの効果と同じですね。
フェニックスのBFの直径は8mm程度です。BFがカメラのセンサー面と同じ位置にあると、カメラセンサー上では直径8mm以上のところには光が来ません。
実際にはBFはセンサー面から手前の離れた位置に置かれ、そこではさらに大きな光束になっています。この場合、BFによって直径8mmにカットされた光束がセンサー上でどのような像を結ぶのか考えてみます。
まず、光の集光具合はF値で表すことができます。フェニックスは太陽モードの時、F10鏡筒で、対物レンズで口径40mmの光が、焦点距離の分400mm進むと径が0になります。傾きは40/400 = 1/10 = 1/Fとなり、F値のみで集光の傾きが決まりますね。
ただし今回は、口径200mm、焦点距離2000mmのC8と、焦点距離-200mmのコリメートレンズがC8の焦点位置から200mm手前に置かれているために、フェニックス手前で直径20mm (= 200 x 200/2000) の光束径になっています。そのため、口径20mmで焦点距離400mmで決まるF値が実効的なF値と考えるべきです。今回の場合400/20=20で、F20として考えるべきでしょう。
センサー面からs離れた位置にBFのような絞り径を入れると、絞りの端の一点の光がセンサー面でどれくらいの広がりを持った像になるかというと
になります。今回、直径8mmのBFが、チルターも込みでセンサー面から結構離れた位置に置かれていて、その距離が50mmだとすると、最大で8mm + 50/20 = 10.5mm、最小で8mm- 50/20 = 5.5mmのボケた円像になると考えることができます。
でも、上の考えはまだ不十分で、BF位置の絞りの端の光がセンサー上でどうなるかを見ただけで、より正確にはセンサー上のある位置y に結像する光束の中心が、穴の面ではどこを通るかを考えるべきです。
まず、センサー面から50mm手前にBFがあるので、焦点に向かう光束はBF位置でまだ少し広がっていて、センサー面で中心の1点に結像する光束のBF位置での直径は、
実画像との比較
この計算値が実際撮影した画像とどれくらい合っているのか見てみましょう。フェニックスのエタロンのFWHMは以前の測定結果を用いて0.37Åとします。これは全幅なので、中心から0.185Åずれると、透過光量が半分になるということです。
上の式から、波長のズレが0.185Åの場合には、入射角は0.43度となり、その場合中心から半径3.0mmの円のところで、光量が半分になるということがわかります。センサーサイズが8.75 x6.6mmなので、縦はほぼ上下の端で光量は半分以下くらいになります。ピクセルサイズは4.5μm/pixelなので、半径667ピクセル、直径で1334ピクセルが光量が半分になるところです。
実際の画像で光量が半分になるところをPhotoshop上で円を描いて測ってみると、直径で約1600ピクセルだったので、少し計算とズレていて、もう少し大きな範囲で見えているようです。さらに、次で議論するBFの絞りでも周りの光量が減るはずなので、実際の有効範囲はもう少し広いと思われます。
ズレの原因は、
- フェニックスエタロンのFWHMの測定値が良く出すぎていて、実際のFWHMは2割ほど大きい
- 本来コリメートレンズの位置が平行光を出す位置よりも、C8の対物レンズ側に寄ってしまっていて、広がりのある光束となり、エタロンへの入射角が小さくなることで、波長のズレが小さくなる
BFによる絞り効果
センサーで見える範囲が限られてしまう一つの可能性は、上で説明したようなエタロンでの波長シフトによる透過光量の低下ですが、もう一つの可能性は、接眼部についているBF(Blocking Filter)の径でカメラ上の光束が制限される場合です。絞りの効果と同じですね。
フェニックスのBFの直径は8mm程度です。BFがカメラのセンサー面と同じ位置にあると、カメラセンサー上では直径8mm以上のところには光が来ません。
実際にはBFはセンサー面から手前の離れた位置に置かれ、そこではさらに大きな光束になっています。この場合、BFによって直径8mmにカットされた光束がセンサー上でどのような像を結ぶのか考えてみます。
まず、光の集光具合はF値で表すことができます。フェニックスは太陽モードの時、F10鏡筒で、対物レンズで口径40mmの光が、焦点距離の分400mm進むと径が0になります。傾きは40/400 = 1/10 = 1/Fとなり、F値のみで集光の傾きが決まりますね。
ただし今回は、口径200mm、焦点距離2000mmのC8と、焦点距離-200mmのコリメートレンズがC8の焦点位置から200mm手前に置かれているために、フェニックス手前で直径20mm (= 200 x 200/2000) の光束径になっています。そのため、口径20mmで焦点距離400mmで決まるF値が実効的なF値と考えるべきです。今回の場合400/20=20で、F20として考えるべきでしょう。
センサー面からs離れた位置にBFのような絞り径を入れると、絞りの端の一点の光がセンサー面でどれくらいの広がりを持った像になるかというと
s/F
になります。今回、直径8mmのBFが、チルターも込みでセンサー面から結構離れた位置に置かれていて、その距離が50mmだとすると、最大で8mm + 50/20 = 10.5mm、最小で8mm- 50/20 = 5.5mmのボケた円像になると考えることができます。
でも、上の考えはまだ不十分で、BF位置の絞りの端の光がセンサー上でどうなるかを見ただけで、より正確にはセンサー上のある位置y に結像する光束の中心が、穴の面ではどこを通るかを考えるべきです。
まず、センサー面から50mm手前にBFがあるので、焦点に向かう光束はBF位置でまだ少し広がっていて、センサー面で中心の1点に結像する光束のBF位置での直径は、
20mm × (50/400) = 2.5 [mm]
となります。
一方、センサー上の位置yに対応する光束中心は、50mm離れた絞り面では0.875yの位置にあります。これは
(400−50)/400 = 0.875
からわかりますね。
センサー上の中心からyの位置に集光する光は、BF位置で0.875yにあり、最大で半径 2.5/2 = 1.25 [mm]の範囲の光が影響し、それがBFの半径 8/2 = 4 [mm]以内であれば、完全に光が通る条件となり
0.875y + 1.25 < 4 [mm]
最小で半径1.25 [mm] の範囲の光が影響し、それがBFの半径 8/2 = 4 [mm]以内であれば少しでも光が届く限界の条件となるので、
0.875y - 1.25 < 4 [mm]
となります。これらを満たすyは
3.14 < y < 6.0 [mm]
となり、中心から半径 約3.14 mm以内では完全に光が届き、半径3.14 mmから6.0 mmでは周辺に向かって徐々にケラれ、 半径6.0 mmより外側では光が届かないということになります。
Apollo-M MINIのセンサーサイズが8.75 x6.6mmなので、BFによる周辺減光は存在するが、光が届かないわけではなく、フラット補正をすれば何とかなりそうです。
別で撮影した、中心がずれてしまっている画像があります。Photoshop上で光が届かない所に円を描いてみます。
中心と思われる点から、完全に光が届かなくなるまでの距離が、SharpCapをキャプチャした画面上で2350/2 = 1175ピクセルくらい、横幅を本来のApollo-M MINIの1944ピクセルで換算すると1337ピクセルで、センサー上の距離にして6.01mmなので、上記の見積もりでかなり合っているように思われます。
このBFの絞りの効果も、フェニックスという縛りがある限り大幅に改善することは出来ず、BFとセンサー面との距離で多少いじることができるくらいです。
- BFとセンサーを近づければ近づけるほど有効径は小さくなってしまうが、はっきりとした (均一に明るい) 像になる
- BFとセンサーを遠ざければ遠ざけるほど大きな径で太陽像の情報を得ることができるが、周辺に行くにしたがって徐々に暗くなるような像になる
このことは、以前PSTとC8でカメラ位置をより遠くにした場合に見える範囲が広がったことを少なくとも定性的にうまく説明できます。
まとめ
今回、C8+Phoenixで見える範囲が制限される理由として
- エタロンの入射角
- BFでの絞り効果
入射角はフェニックスの対物レンズの焦点距離で決まってしまい、エタロンに入る光が平行光という条件を満たす限り、その手前がC8だろうがTSA-120だろうが違いはありません。BFによる絞りも同じで、C8だろうがTSA-120だろうが違いはありません。要するに「フェニックスを分解せずに使う」という縛りを設ける限り、大口径化のために接続する鏡筒に何を選んでも、これ以上あまり大きな改善をすることはできないということです。
実際、今回C8で撮影した画像を見ても、以前TSA-120で撮影した画像を見ても、上の二つの理由でうまく像が周辺で悪くなっていく様子を説明できます。ただ、C8の方がTSA-120よりも一見視野が狭いように見えている (急激に周りが落ち込む) のですが、なぜなのかはちょっと不明です。
これらを解決できるのか、解決していくべきなのかが、今後の課題でしょう。解決のためのアイデアはすでにいくつかあるのですが、その前に、少しこの状態でいくつか試したいことがあるので、まずは一旦、この状態で撮影してみたいと思います。







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