Phoenixの大口径化でとうとう出ました。
ものすごい分解能です。

焦らずに順に説明していきます。


これまで

前回までで、フェニックスに口径の大きな鏡筒を組み合わせて太陽のHα画像を撮影してきました。

最初の記事 (その1) では、途中に入れたコリメートレンズの収差が分解能を制限していました。その後、(その2) で収差を改善し、 (その3) の撮影結果から、 (その2) で得られた画像ではシーイングが分解能を決めていたことを確認しました。

 (その3) では、口径12cmのTSA−120と組み合わせてある程度の分解能が出てきましたが、シーイングが良かった時の撮影ではなかったせいか、市販品の口径10cmのヘリオスター100Hαで出した分解能に比べると、まだ12cmの口径を活かし切っているとは言えません。シーイングが良くなればもっと改善するのか、それとも再び収差でリミットされた状態で分解能はここで頭打ちなのか、もう少し試そうと思ったのが、今回の記事の動機になります。


撮影

分解能を制限している原因を探ることは重要ですが、一番の目的は口径の大きさに見合った分解能を引き出すということなので、判明した問題点は随時気づいた時点で改善してきます。今回、撮影の前に2つのことをしました。

一つはカメラを普通のローリングシャッターのG3M678MからグローバルシャッターのApollo-M MINIに変えたことです。SharpCapの画像をリアルタイムで見ていると、大きなうねりのような歪みが見えます。特に赤道儀を動かした時は顕著です。撮影時は赤道儀は止めたままなのでそこまで影響はないかもしれませんが、風などが吹いて揺れた時は確実に影響があるでしょう。

今の設定では合成焦点距離が2000mm程度と、すでに結構長くなっているので、ピクセルサイズの細かいG3M678Mだと完全にオーバーサンプリングになってしまっています。Apollo-M MINIはピクセルサイズが4.5μmとオーバーサンプリングを解決するとともに、多少センサー面積が大きくなるため、さらに大きな視野を見ることができます。また、画素数が1944×1472とあまり細かくないため、撮影動画ファイルのサイズがあまり大きくならないことも助かります。これまで1ファイルで3GB超えでしたが、今回は1GB程度に抑えられます。使っているPCのトータルのSSDのサイズが1TBなので、120ショット撮って400GB程度になるのか、100GB程度で抑えられるかは大きな違いです。

もう一つの改善点は、TSA−120とフェニックスの距離を調整したことです。正確には、TSA-120に対するコリメートレンズの距離と言ってもいいかもしれません。コリメートレンズはより手前に置いた方が分解能が出るようです。これらの理由については、また別途記事を書くかもしれません。

IMG_3133

撮影は、2026年5月10日の日曜の朝早くからです。この日は快晴で、風もほとんどなく、しかも暑くもなく寒くもない、一年でも数少ない相当快適な日でしょう。しかも朝早いからか、肝心のシーイングもかなり良さそうです。撮影はいつものように、30秒ごとに1ショットで200フレーム、合計120ショットでトータル1時間程度になります。


すごい結果に

一番大きな黒点群AR4432付近を撮影します。最初の1枚を撮った段階で、すでに相当いい結果が出たので、速報としてすぐにXに投稿しました。前回とは比べるまでもないくらいに、はるかにはるかに分解能が出ています。

でもこれは、まだ最初の1枚目です。120ショット撮影し終えてから、全部を見比べてみると、最初に撮ったものは一番いいわけでは全然なく、それよりもっと分解能が出ている画像が何枚もありました。その中で一番いいものを示します。一部をクロップした画像になります。

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  • 撮影日時: 2026年5月10日9時46分
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒:  ACUTER OPTICS Phoenix (f400mm、F5) + Takahashi TSA-120 (f900mm、F7.5)
  • 赤道儀: Celestron CGEM II
  • カメラ: PlayerOne Apollo-M MINI
  • 撮影: SharpCap Gain 200 (= 20dB)、露光時間2.5ms、180/200 frames
  • 画像処理: AutoStakkert!4、ImPPG、PixInsight SolarTools、Photoshop


どうでしょうか?上の画像の黒点周りの画像は、このページにもあるヘリオスター100Hαの画像と比べても、よりシャープな線が出ていて、12cmの口径の性能を引き出し切ったと言っても過言ではなさそうです。

その一方、一番解像度が出ていないものを載せておきます。ここまで違うのかと思うくらいの分解能になってしまっています。

10_31_28_lapl3_ap3498_out_aligned_ref

全く同じ設定で、時間によってここまで変わるのはこれまでの傾向と同じで、長時間撮影してその中でいいものを選ぶことができます。C8ヘリオスター100Hαに続いて、TSA-120で3例目で、「いいシーイングを確実に選んで撮影する」という、一つの手法を確立できたと言っていいのかと思います。

さらに、少し小ぶりの東側の新しく出てきた別の黒点AR4436も撮影してみました。こちらも同様に120ショットのうちからベストを選んでいます。こちらも一部をクロップした画像になります。

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  • 撮影日時: 2026年5月10日11時44分
なんと、黒点周りの噴き上がりが立体的に見えています。これまで口径20cm+PSTでも上手く撮れなかった像です。

この日は全体的にシーイングが良かったこともあると思いますし、グローバルシャッターが効いた可能性もあります。口径としては20cmには劣る12cmで、ここまで撮れたのはかなり嬉しいです。エタロンがPSTのものから、半値幅が大幅に改善されたフェニックスのものにした甲斐があったのかと思います。

いずれにせよ、このレベルなら口径12cmの限界近くを引き出していると言ってもいいでしょう。市販品ではなく、改造品でここまで出せたのは、自由に機材を扱うことができるという、アマチュア天文冥利に尽きるのかと思います。

その一方、太陽望遠鏡は常に危険と隣り合わせなので、安全に対しての責任は自分が負うことになります。フェニックスの改造は世界的にも、日本国内でも例がどんどん出てきているので、今後も増えていくかと思われます。自分だけは大丈夫だとか、間違ったことなど起こるはずがないなど、思い込みはとても危険です。決して油断することなく、安全には十分に気を付けることが大切です。


課題

ここまではいいことばかりを示していますが、まだまだ問題点もあります。改めて、1枚目の全体像を、鏡像反転する前の状態で示します。
09_46_43_lapl3_ap3452_IP_ST

左下が視野の範囲外になってしまっていて、撮影できていません。これはTSA-120とフェニックスの取り付け位置が相対的に平行にずれてしまっているからです。TSA-120とアルミフレームを固定するためのアルカスイス互換プレートが、TSA-120の中心軸に対して1cm程度のオフセットをつけて取り付けられていることは、以前述べた通りです。さらに、よく見ると高さ方向もTSA-120とフェニックスで相対的にずれていることに気づきました。

これらを直したとして、それでも分解能が出ている範囲が円状のエリア内だけになっていることは深刻です。先に見せた画像ではいい分解能の範囲だけを見せていますが、その外側にリング状にボケて見える部分があるのがわかるかと思います。これは収差なのでしょうか?それともエタロンの中心範囲がずれているからなのでしょうか?ここはもう少し探る必要がありそうです。

ただ、そうは言っても今回使ったカメラApollo-M MINIが2/3インチサイズで面積が大きいので、上の画像は相当広い範囲を見ていて、これまで使っていたような例えば1/3インチのASI290MMを使えば、ちょうど良像範囲がカメラ面積に一致するくらいになりそうです。ただし、今回のグローバルシャッターがどれくらい効果があったのかはきちんと把握しておくべきかと思っています。もしグローバルシャッターがこの分解能を出すのに重要ならば、カメラを替えることよりは、バローレンズなどで拡大撮影する方がいい結果になるかもしれません。


まとめと今後

まだ課題はありますが、画像の中の一部だけでもかなりの分解能を出せることを示すことができたということは非常に心強いです。今回のようなチャンピオンデータを出せたら、それを目指して全体を調整していくという方向性でいいでしょう。

ここまで分解能が出ると、口径20cmのC8にする必要性があるかどうかもちょっとわからなくなってきます。それでもやはり、更なる大口径とフェニックスエタロンの可能性をもう少し見てみたい気もします。ただ、20cmへの移行はまだあまり準備が整っていないので、もう少しだけ12cmで議論を続けたいと思います。特に、収差に関してはこの段階である程度はっきりさせておきたいです。