先週試したフェニックスに口径10cmの鏡筒を付ける試みですが、半分成功、半分失敗といったところでしょうか。少なくとも口径4cmのオリジナルのフェニックスよりは分解能は出ましたが、なんかボケボケで、まだ口径10cmの性能が出ているとは思えません。今回は、なぜ分解能が期待通り出ないのか、どうすればいいのかを試してみました。


3枚レンズの合成焦点距離

前回の記事のコメントで、銀命堂さんが合成焦点距離に関して有益な情報を提供してくれました。銀命堂さんには、以前VISACの光軸調整のシミュレーションのページでお世話になり、このブログにもコメントをいただいた方で、光学設計に詳しく、同ブログにある天体写真を見ても相当な実力をお持ちの方です。

3枚レンズの合成焦点距離は、銀命堂さんがコメントに式も書いてくれていますが、、今回の合瀬焦点距離はきちんと計算にはこのページが便利です。



物体距離を1000000とかかなり大きな数にして、物体距離 
  • 第1レンズの焦点距離: 1000
  • 第1-2レンズの間隔: 800
  • 第2レンズの焦点距離: -200
  • 第2-3レンズの間隔: 50
  • 第3レンズの焦点距離: 400
と順次数値を入れて計算を実行すると、合成焦点距離が2000mmと出ます。これも便利なのですが、簡易的な計算としては銀命堂さんがおっしゃるとおり、1000mm/200mm =5 倍のガリレオ式望遠鏡と考え、この倍率にフェニックスの対物レンズの焦点距離400mmを掛けた 5 x 400mm =2000mmと出すのが、暗算でも求められるので簡単です。

ちなみに、C8+PSTだと合成焦点距離は2000mmでした。これはC8の2000mmに-200mmのレンズで10倍、それにエタロン後部の200mmを掛けて2000mmと同様に暗算でも計算できます。今回焦点距離が1000mmの鏡筒なのに合成焦点距離が伸びてしまったのは、コリメートレンズを-200mmにして、フェニックスの対物レンズが倍の400mmと絶対値に違いがあるからです。

コリメートレンズの焦点距離を決めると、平行光の条件 (1/f = 1/f1 + 1/f2 - d/(f1*f2) で f=∞ を解くとd = f1+f2、今回の場合d = 1000 -200 = 800mm) でレンズ間距離が一意に決まります。鏡筒の焦点距離の手前に、コリメートレンズの焦点距離部だけ鏡筒側に食い込んで置かなければならず、今回のMagellanもフォーカサー部を外すことでこの条件の位置に置くことができました。前回記事のコメントでエレキさんが言われたように、もっと焦点距離が負側に長いコリメートレンズを置けば収差が減っていいのかもしれませんが、そうなってくると鏡筒を切断するとか、別途鏡筒に変わる何かを用意する必要がありますし、そもそもパッと探した限り-300mmくらいの凹レンズが最長で、それ以上は簡単には手に入れることができません。


エタロンの中央遮蔽が問題?

ここら辺までが、前回のブログ記事をアップしてからジタバタ考えていたことでした。今回まず試したいことは、前回ブログの最後の方にも書いた、このボケがフェニックスエタロンの中方遮蔽から起こるのではないかという推測の確認です。方法は、手持ちの口径8cm、焦点距離400mmの鏡筒に同じ-200mmのコリメートレンズを付けてフェニックスを接続してやります。エタロン位置での平行光条件から、最初のレンズから200mmの位置にコリメートレンズを置くようにすると、エタロン位置でのビーム径が40mmになり、前回のビーム径20mmに比べて十分に大きく、中央遮蔽を避けることができるはずです。これでボケボケなのが解決されるなら、中央遮蔽が悪かったということになります。

10cm鏡筒が載っていたアルミフレームには、アルカスイス互換のクランプが取り付けてあります。鏡筒側にアルカスイス互換のプレートを取り付けていれば、クランプの開け閉めだけで、鏡筒をを容易に取り替えることができます。

持ち手代わりのためと、ガイド鏡やファインダーを付け替え可能にするために、ほとんどの鏡筒にアルカスイス互換プレートをつけるようにしています。なので10cmの鏡筒を8cmのものにすぐに交換することができます。ただし今回の場合は、二つの鏡筒の光軸を合わせるために、特に「高さ」を調整して合わせなければいけません。8cm鏡筒と10cm鏡筒はまた交換したくなるかもしれないので、今回はフェニックス側の高さは変えずに、8cm鏡筒の高さを間にプレートを挟むことで調整しました。

高さ調整後、アルミフレームに2つの鏡筒を載せた状態にします。2つの鏡筒の相対的な距離に関しては、アルカスイス互換のクランプを緩めることで、かなりの範囲を位置を調整できます。

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結果はというと、SharpCapの画面上で見ても相当ボケボケでした。ピントが合う位置が無いような状態で、10cmの時より全然ひどいです。

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全く改善がないということで、中央遮蔽は関係なく、コリメートレンズの収差が問題だという可能性が高くなってきました。

ここで疑問が湧きます。今回のコリメートレンズはAmazonで見つけた安いもので、直径50mm、焦点距離-200mmの球面の凹型の単レンズです。単レンズでは収差を避けることができないので仕方ないのですが、ではなぜPSTでは8cmや10cmと組み合わせてもきちんと見えていたのでしょうか?

改めてPSTのエタロンの対物側のレンズを外して確認にしてみたのですが、やはり以前見たとおり単レンズにしか見えません。

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理由がよくわからないのですが、少なくともPSTの大口径化ではうまくいっていたと考え、とりあえず試しにこのPSTエタロンの対物側のレンズを使ってみることにしました。

このレンズは焦点距離は-200mmで同じですが、径が23mmで、Amazonで買った50mmのレンズに比べて小さいです。光はこの径しか通り抜けることができないので、フェニックスエタロンの中央遮蔽の影響はより出るはずですし、このレンズ径で制限されるとすると8cmになった口径を生かしきれないので、分解能的に不利になるはずです。不利なことしかない気がしますが、それでも像が改善されるなら、収差がなくなるような何らかの理由が存在すると思っていいでしょう。

こちらも簡単に、テープでフェニクス前面に貼り付けてやります。さらにその上にUV/IRカットフィルターを付けます。
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結果はどうなったかというと、SharpCapで見る段階で大幅に改善しています。
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うーん、なぜなんでしょう?それでも、少なくともこの結果から、中央遮蔽の影響は象には関係ないと言えそうです。


10cmをPSTレンズで再び試す

中央遮蔽の問題ではないことが確認できたので、ビーム径は小さくてもいいと考え、再び口径8cmから口径10cmに戻します。その際に、PSTレンズも10cmの方に付け替えてやります。F10鏡筒なので、エタロン位置でのビーム径が20mmになり、PSTレンズにほぼぴったりの径になります。

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SharpCap上で確認すると、口径10cmの場合でも、PSTレンズを使えばかなりの分解能が出ることが確認できました。
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せっかくなので、動画で撮影して画像にまで仕上げてみました。
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これならば十分な解像度が出ていると言えます。

ついでにフェニックスオリジナルと比較してみましょう。左がフェニックス単体、右が口径10cm+フェニックスになります。
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前回のアマゾンで買ったコリメートレンズの時よりも、明らかに細かい線が出ていて、分解能が上がっていることがわかります。

あと、それぞれの画像の下にある倍率を見ると505%と100%となっていて、5倍の違いになっているのがわかります。これはフェニックスの400mmの焦点距離が、2000mmになって5倍になったのと一致しているので、実際に合成焦点距離が計算通りに出ていることがわかります。



TSA-120を使い、口径12cmに

調子に乗って、口径12cmのTSA-120で試します。こちらは合成焦点距離が900mm / 200mm x 400mm =1800mmとなり、エタロンでのビーム径が120mm x 200mm/900mm = 27mmとなります。その手前のレンズ径が23mmなので、120mmの口径は完全には生かしきれず、単純には120mm x (23mm/27mm) = 104mm相当になります。 

ただし、TSA-120は鏡筒の外径が大きいため、光軸を合わせるために、今度は高さの低いフェニックス側の高さを調整する必要があります。それだけならいいのですが、TSA-120に取り付けてあるアルカスイス互換プレートは、ネジ穴位置の関係から鏡筒バンドの中間に取り付けられていなくて、中心から1cmくらいオフセットがあります。下の写真でわかりますでしょうか?
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鏡筒バンド上部に取り付けてあるプレートが、
3つあるねじ穴の2つを利用して固定されているので、
片側に寄ってしまっています。

このオフセットを取り除くのはネジ穴加工が必要となるため、今回はとりあえず保留としました。TSA−120とフェニックスをきちんとアルミフレームに合わせて平行に取り付けると、1cmくら光軸がずれてしまいますが、まあなんとかなるでしょう。うまくいったらプレートの方を加工し直そうと思います。

赤道儀に乗せる際ですが、もともとアルミフレームの下側にVixen規格のアリガタを取り付けてあるのですが、ちょっと心もとないので、上下をひっくり返してTSA-120についているLosmandy規格のプレートで赤道儀に固定することにしました。そのため、フェニックスは上から吊り下げられたような状態になってしまいますが、これで問題なく安定に固定できています。

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なんか魔改造っぽくなってきました。

さて、結果はというと、
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と遜色ない分解能が出ています。10cmの場合と比べると、今回の12cmの方が少し分解能が落ちているようですが、シーイングは時間的にかなりのばらつきがあることはわかっているので、誤差の範囲内でしょう。


コリメートレンズの謎

分解能を出すという意味では、一応ここまでの結果を見る限り、大成功と言っていいのかと思います。

ただし、なぜAmazonで買ったレンズではダメで、PST付属のものだと収差がなくなるのか、その理由がまだわかっていません。焦点距離は同じで、両方とも単レンズです。同じようなレンズなので、単純に考えても収差がなくなる理由がよくわかりません。それとも収差ではない、何か他の原因があるのでしょうか?

色々考えていて、ふと思いつきました。もしかしたらPST付属のレンズを使った場合は「テレセントリック条件に近くなっているのではないか?」ということです。テレセントリック系を構築するには絞りが必要になります。平行光に近い焦点位置近くに絞りを入れることにより、その後のレンズで平行光に戻す際にはどの光束も全て平行になります。今回はコリメートレンズ以降が平行光になり、そのコリメートレンズの径が小さくなったということは、絞りを入れたことと同等の効果があります。もちろん完全なテレセントリック条件ではないですが、近いことは起こるはずです。

もっと単純に言い換えると、レンズ系を絞ったことにより、レンズの端の影響の球面収差を抑えることができたり、光束が細くなりコマ収差や非点収差が軽減されると考えてもいいでしょう。

いずれにせよ、収差に関してはレンズ径が小さい方が有利そうです。その一方、暗くなったり、エタロンの径を生かしきれないという不利な点が出てくることになります。


まとめと今後

PSTレンズを使うことで、口径8cm、10cm、12cmのいずれの場合も分解能が出るということがわかりました。実際には、PSTのレンズというよりは、小さいレンズ径が有利ということもわかってきました。

でも、このレンズ径の小ささで十分収差は除去されているのかというと、それはまた別の問題のはずです。今の像がまだ収差で制限されているのか、それともシーイングなどで制限されているのかというのが疑問として残ります。

シーイングリミットならもうシーイングのいい時を待つしかないのですが、もしまだ収差が問題だというのなら、これ以上径を小さくするのは分解能を制限する方向なっていって、あまり現実的ではなくなってきます。そうなると次は、収差の小さいレンズを作ることが次の課題になります。

次回は、今の疑問のシーイングリミットか、収差リミットかの切り分けをしてみたいと思います。希望的観測としては、PST+C8でもシーイングリミットが大半で、(収差が問題になるようなことはなく) きちんと分解能が出ていたという事実があります。


最終的には口径20cmのC8と繋ぐことを目指しているのですが、フェニックスをC8にそのまま繋ぐと合成焦点距離が4000mmとさすがに長すぎになってしまいます。前回と今回の検討から、今後の合成焦点距離も課題として持ち上がってきたことになります。