今回はフェニックスでできるだけ高分解能で撮影したという話です。
以前CP+でフェニックスをお借りしていた時は、手持ちで太陽の全景が入るモノクロカメラでちょうど良さそうなものはApplo-M miniくらいでした。このカメラはグローバルシャッターが付いていて、シーイングなどで素早く動く太陽の模様を撮影するのには向いているのですが、ピクセルサイズが4.5μmとそこそこ大きく、高分解能撮影にはちょっと厳しいです。当時、分解能の比較として手持ちのピクセルサイズ2.9μmのASI290Mで画像比較をしてみました。下の画像はCP+で使ったスライドの1ページです。
下の2段は同型のASI294で、カラーとモノクロ(ただし、センサーはIMX294とIMX492で違うものです)で比較したもので、同じピクセルサイズならやはりモノクロの方が分解能的に有利なことがわかります。ピクセルサイズの違いは、上の段の2枚を比べてもらえばわかるように、ピクセルサイズが高々2/3になっただけなのに、小さい方がかなり有利ということがわかると思います。その一方、このASI290MMはセンサー全体のサイズが小さいため、フェニックスでの撮影では太陽の全景が入らないので不便で、その当時のフェニックスには常用使いにはなりませんでした。
その後SHG700での分光撮影のために、センサーサイズが大きくさらにピクセルサイズも2.0μmと小さい、ToupTekのカメラG3M678Mを手に入れました。口径8cmの鏡筒にPSTをつけた状態で、ASI290MMとG3M678Mの比較は以前していますが、今回はフェニックスでこのカメラを使って撮影してみます。全景が入るのはもちろん、分解能がどこまで向上しているのか楽しみです。
試したのは2025年12月6日のことです。前回フェニックスのファーストライトの続きで、まずは眼視で楽しみます。
ところが、エタロンの様子がちょっとおかしいです。元々回転リングの動く角度は60度程度と大きくないのですが、その範囲でHα線の周りを走査できるようになっているはずです。ですが今回は接眼側から見てエタロン回転リングを反時計方向に回していくと徐々にプロミネンスが濃く大きくなっていき、大きくなりきっているかどうかわからないくらいで回転できる範囲が終わってしまい、それ以上エタロンを調整できないのです。
少なくとも、先々週のファーストライトではこんなことは気づきませんでした。夕方間近で時間がなくて気づかなかっただけかもしれませんが、流石にこれだけ不自然だと気づいていておかしくないレベルです。
前回と大きく違っていることは、ここ最近で気温が急激に下がったので、エタロンの振る舞いが違っている可能性があることです。そういえば、CP+で借りたフェニックスも同じ方向にHα線の中心波長が寄ってしまっていたことを覚えています。季節もちょうど同じ冬だったので、元々暖かい時期に回転中心に調整したものが、気温変化で同方向にずれてしまっていると考えてもおかしくなさそうです。
さて、これで撮影してもつまらないでしょう。せっかくの透過幅の狭いエタロンの能力を引き出すことができません。販売店に相談して送り返してもいいのですが、それだとまた時間がかかってしまいます。
フェニックスのエタロンは、裏にスポンジがついていて、PSTのエタロンと似た構造になっています。下の画像はCP+講演のときのスライドの1ページですが、裏から見たエタロン部のところにオレンジ色のスポンジのようなものが見えるのがわかるかと思います。
PSTエタロンの特許が切れたので同型のエタロンを作ることができるようになったとの噂もあり、構造は酷似していると考えられます。PSTのエタロンならエタロン本体(2枚鏡の心臓部)以外は完バラしているので、構造はよく理解しています。手で触れる外側の回転リングの内側にもう一つ回転リングがあり、実際の調整は内側のリングで圧力をかけてエタロンの2枚の鏡の間の距離を変えています。外側のリングと内側のリングは一本のネジで固定されていて、しかも内側のリングには円周上にネジ穴がいくつも開けられているために、ネジをそのうちのどれかに締め込むことによって、内側のリングと外側のリングの相対的な位置が決められています。
もしフェニックスのエタロン部の構造が同じなら、同様のネジがあるはずで、そのネジを緩めて外側の回転リングを独立して回してやり、ネジを別の穴に挿して締めてやることで調整範囲を変えることができるはずです。
フェニックスのエタロン部の外観を見ると、ちょうどそれらしいネジがありました。
これから示す方法は、決して難しい方法ではありませんが、マニュアルなどには記載されていない方法で、あくまで自己責任での調整になります。これで故障などしても販売店の保証は受けられなくなる可能性があります。それを理解した上で、必要な方はお試しください。中心波長が回転範囲内に入っていないと思っても、心配な方は販売店に修理依頼などをお尋ねください。このブログではあくまで調整方法があるということを示すだけで、それによって生じた不具合などを補償することはできません。繰り返しになりますが、あくまで自己責任ということを理解した上で実行するようにしてください。
事前準備1: 外側リングをどちら方向にずらした方がいいかをあらかじめ確認しておきます。
事前準備2:
実作業:
私の場合はHα中心が丁度回転端付近にまで達していたので、3つくらいネジ穴をずらしたところで、回転範囲の中心にHα線の中心が来るようになりました。
上のように調整した後は、眼視で見てもプロミネンスがちょうど回転中心付近でよく見えるようになりました。表面の複雑な模様もよく見えます。大きな黒点が出ていてちょうど真正面にきているので、眼視でも迫力がありました。
付属アイピースは焦点距離を調節できるタイプのものなので、拡大もできて便利です。また、スマホアダプターも付属されているので、使ってみました。うまくスマホを固定するのに少しコツはいりますが、固定さえできればあとは簡単に撮影することができます。普通に写すとかなり明るくなってしまうので、スマホのカメラ機能で輝度を落とすといいのかもしれません。
jpegで保存されていますが、これでも多少の画像処理をするだけでプロミネンスや表面の模様が見えてきます。
スマホの殺絵だけでも楽しいかもしれませんが、ここからはモノクロCMOSカメラを使った本格的な撮影にうつります。カメラはG3M678Mです。このカメラはピクセルサイズが2μmと天体用カメラとしてはかなり細かい部類で、分解能を上げることができると思われます。その一方、センサーサイズも1/1.8インチとそこそこ大きく、今回のフェニックスの焦点距離400mmだと太陽全景がプロミネンスも含めてちょうど入るくらいの大きさです。
フェニックスの鏡筒の口径は8cmですが、エタロンを取り付けたときはエタロンの開口径の4cmに制限されるため、実効的には口径4cmとなります。その場合の分解能は例えばドーズ限界を考えると11.6秒 / 4cm = 2.9秒となります。
その一方、センサーサイズが7.7x4.3mmなので、焦点距離400mで画角を計算すると1.10 x 0.616度となります。解像度が3840x2160なので、1ピクセル当たりの画角は1.03秒となります。上のドーズ限界と比べると、カメラの分解能の方がすでに十分細かいので、オーバーサンプリングになります。うーん、こうやって改めて比較してみると、すでにオーバースペックのカメラですね。
それでも、ドーズ限界は眼視における2つの星を輝度で見たときの分離限界とも言えるので、撮影の際にはのちの画像処理も考えると輝度差を拡大できるので、分解能はもう少しよくなるはずです。例えば、かなり昔に惑星撮影でドーズ限界をどれくらい超えることができるかを議論したことがあって、ざっくり1.5-2倍程度まで改善できそうだという検討結果でした。
また、カメラのピクセルサイズと分解能について議論したこともあり、ピクセルサイズがレイリー限界やドーズ限界よりも細かい方がより分解能を上げる効果があるのではないかと、当時は結論付けています。
なので、おそらくですがまだこのレベルだとピクセルサイズが小さくなることは効果があって、今回のカメラは分解能に対してまだ貢献できるのかと思います。実際には口径4cmの分解能にかなり近いところを攻めるくらいになっているはずで、言い換えると、フェニックスの性能限界にちょうど迫るくらいになっているのかと思います。
ここら辺の検証は、カメラを例えば手持ちの2.9μm/pixelのASI290MMにわざと分解能を落として比較するとか、バローレンズを入れて分解能が上がるのか上がらないのかを見るなどで実際に確かめることができるのかと思います。余裕があったら試してみたいと思います。
実際にG3M678Mで見てみます。まずはSharpCapで簡易的にライブスタック機能を使います。この時点で黒点周りのHαの模様もかなりの分解能で見えることがわかります。
この時にそのままPNGで保存したファイルになります。
どうでしょうか?画面にWaveletの設定が出ていますが、ほぼオート設定です。500枚のライブスタックで、簡単にここまで見ることができますが、これは楽でいいです。実際ここまで出るのはかなり楽しいと言わざるを得ません。
せっかくなので、serフォーマットで動画で撮影し、マニュアルでスタックして、画像処理までしてみました
直接比較してみるとどうでしょうか?左がSharpCapのライブスタック、右がserファイルからのマニュアル処理です。
さすがにライブスタックそのままだと差が大きいので、別途画像処理してみましょう。左がSharpCapのライブスタックを画像処理したものです。右は上と同じでserファイルからのマニュアル処理です。
どうでしょうか?両方とも画像処理することが前提なら、ライブスタック画像もマニュアル処理にかなり迫ることができます。それでもやはり差はあって、特に明るいところと暗いところの階調の滑らかさや分解能など、きちんと出すならやはり動画からマニュアルで処理した方が多少いいようです。
今回のフェニックスとG3M678Mは、太陽全景を一度に写しつつ、口径4cmのフェニックスの限界近くに達しているものと思わ、ある意味ベストに近い組み合わせなのかと思います。これ以上分解能を上げるには大きな口径の鏡筒を使うのが正しい方向です。口径を増やして、さらに拡大して撮影して分解能を上げるのが、次に考えることになるのかと思います。
今回の組み合わせは、フェニックスが15万円強、G3M678Mが4万円強で、合計20万円程度です。決して安い価格ではありませんが、一昔前の太陽望遠鏡ではこの値段ではここまでの性能を出すのはかなり難しかったと思います。太陽望遠鏡としてはまだ入門機なのですが、それでもフェニックスの透過波長幅は0.6Å以下とかなり優秀で、ここまで太陽Hα画像が出るのなら、しかも簡単なライブスタックでもこれくらいは出るのなら相当なコストパフォーマンスです。
上の全景画像のように簡単に全面がムラなくほぼ一様にHα中心に見えるというのは、実は驚異的なことだと思います。例えば手持ちのPSTエタロンでは、均一範囲は3-4割と言われています。フェニックスエタロンは製品ごとのばらつきもほとんどないと聞いているので、安心して手に入れることができる入門用の太陽望遠鏡なのかと思います。いい時代になったものです。フェニックスエタロンの詳しい性能については、CP+での講演動画をご覧いただければと思います。
この日は天気は良かったのですが、思ったより風が強かったので、フェニックスでの撮影を終えてからは少し気が抜けてしまって、自宅でのんびりしていました。そんな折、お客さんがきてくました。以前、太陽を見に来てくれたMさんの所の中3のお嬢さんです。私が朝からXでつぶやいていたのを見てお母さんと一緒に訪れてくれました。
まだフェニックスのセットアップは残っていたので、アイピースに戻して実際に太陽を見てもらいました。と言ってももう夕方近くで、太陽が隣の家の高い木にかかってしまっていたので、わざわざ赤道儀をずらして太陽が見える位置に移動しての観察になります。星座ビノに太陽フィルムを付けたもので、太陽黒点も直接見てもらいました。
満月の次の日でちょうど月の話が出たので、望遠鏡を一本持って帰ってもらいました。ビクセンのポルタで、昔星まつりで中古で特価で手に入れたものです。振動比較で使ったくらいでほとんど使っていなかったので、長期貸し出しということで自由に使ってもらいたいです。うまく月が見えたかどうか、今度会ったときに感想を聞いてみたいです。
以前より高分解能カメラで
以前CP+でフェニックスをお借りしていた時は、手持ちで太陽の全景が入るモノクロカメラでちょうど良さそうなものはApplo-M miniくらいでした。このカメラはグローバルシャッターが付いていて、シーイングなどで素早く動く太陽の模様を撮影するのには向いているのですが、ピクセルサイズが4.5μmとそこそこ大きく、高分解能撮影にはちょっと厳しいです。当時、分解能の比較として手持ちのピクセルサイズ2.9μmのASI290Mで画像比較をしてみました。下の画像はCP+で使ったスライドの1ページです。
下の2段は同型のASI294で、カラーとモノクロ(ただし、センサーはIMX294とIMX492で違うものです)で比較したもので、同じピクセルサイズならやはりモノクロの方が分解能的に有利なことがわかります。ピクセルサイズの違いは、上の段の2枚を比べてもらえばわかるように、ピクセルサイズが高々2/3になっただけなのに、小さい方がかなり有利ということがわかると思います。その一方、このASI290MMはセンサー全体のサイズが小さいため、フェニックスでの撮影では太陽の全景が入らないので不便で、その当時のフェニックスには常用使いにはなりませんでした。
その後SHG700での分光撮影のために、センサーサイズが大きくさらにピクセルサイズも2.0μmと小さい、ToupTekのカメラG3M678Mを手に入れました。口径8cmの鏡筒にPSTをつけた状態で、ASI290MMとG3M678Mの比較は以前していますが、今回はフェニックスでこのカメラを使って撮影してみます。全景が入るのはもちろん、分解能がどこまで向上しているのか楽しみです。
とりあえず眼視をもう少し
試したのは2025年12月6日のことです。前回フェニックスのファーストライトの続きで、まずは眼視で楽しみます。
ところが、エタロンの様子がちょっとおかしいです。元々回転リングの動く角度は60度程度と大きくないのですが、その範囲でHα線の周りを走査できるようになっているはずです。ですが今回は接眼側から見てエタロン回転リングを反時計方向に回していくと徐々にプロミネンスが濃く大きくなっていき、大きくなりきっているかどうかわからないくらいで回転できる範囲が終わってしまい、それ以上エタロンを調整できないのです。
少なくとも、先々週のファーストライトではこんなことは気づきませんでした。夕方間近で時間がなくて気づかなかっただけかもしれませんが、流石にこれだけ不自然だと気づいていておかしくないレベルです。
前回と大きく違っていることは、ここ最近で気温が急激に下がったので、エタロンの振る舞いが違っている可能性があることです。そういえば、CP+で借りたフェニックスも同じ方向にHα線の中心波長が寄ってしまっていたことを覚えています。季節もちょうど同じ冬だったので、元々暖かい時期に回転中心に調整したものが、気温変化で同方向にずれてしまっていると考えてもおかしくなさそうです。
さて、これで撮影してもつまらないでしょう。せっかくの透過幅の狭いエタロンの能力を引き出すことができません。販売店に相談して送り返してもいいのですが、それだとまた時間がかかってしまいます。
フェニックスのエタロンは、裏にスポンジがついていて、PSTのエタロンと似た構造になっています。下の画像はCP+講演のときのスライドの1ページですが、裏から見たエタロン部のところにオレンジ色のスポンジのようなものが見えるのがわかるかと思います。
PSTエタロンの特許が切れたので同型のエタロンを作ることができるようになったとの噂もあり、構造は酷似していると考えられます。PSTのエタロンならエタロン本体(2枚鏡の心臓部)以外は完バラしているので、構造はよく理解しています。手で触れる外側の回転リングの内側にもう一つ回転リングがあり、実際の調整は内側のリングで圧力をかけてエタロンの2枚の鏡の間の距離を変えています。外側のリングと内側のリングは一本のネジで固定されていて、しかも内側のリングには円周上にネジ穴がいくつも開けられているために、ネジをそのうちのどれかに締め込むことによって、内側のリングと外側のリングの相対的な位置が決められています。
もしフェニックスのエタロン部の構造が同じなら、同様のネジがあるはずで、そのネジを緩めて外側の回転リングを独立して回してやり、ネジを別の穴に挿して締めてやることで調整範囲を変えることができるはずです。
Hα中心位置の調整
フェニックスのエタロン部の外観を見ると、ちょうどそれらしいネジがありました。
これから示す方法は、決して難しい方法ではありませんが、マニュアルなどには記載されていない方法で、あくまで自己責任での調整になります。これで故障などしても販売店の保証は受けられなくなる可能性があります。それを理解した上で、必要な方はお試しください。中心波長が回転範囲内に入っていないと思っても、心配な方は販売店に修理依頼などをお尋ねください。このブログではあくまで調整方法があるということを示すだけで、それによって生じた不具合などを補償することはできません。繰り返しになりますが、あくまで自己責任ということを理解した上で実行するようにしてください。
事前準備1: 外側リングをどちら方向にずらした方がいいかをあらかじめ確認しておきます。
- 太陽を見ながら、Hα線の中心と思われる位置に外側回転リングを回して合わせます。
- 波長中心に持って行ける場合は、そこからリングを回して、回転端までどちらの方向が狭いか、どちらの方向が広いかを確認します。
- 回転端まで狭い方向にリングを回しきってしまいます。
- もし、Hα線の中心に行く前に回転端に到達してしまった場合はそのままにしてください。こちらも下の調整では回しきった反対側の方向に回転リングを回します。
事前準備2:
- 金色の金属の回転リングの対物側の端と、エタロンを上から固定している文字が印刷されている金色の金属円盤との黒い溝状の隙間の長さを確認しておきます。3-4mmくらいかと思います。
実作業:
- 上の写真で見えている、外側リングに埋め込まれているネジをマイナスドライバーで緩めてネジを引き出します。
- ある程度緩めるとそれ以上出てこなくなるので、つまんで少し引っ張ってやります。
- ネジが内側リングの穴から抜けると、外側のリングが独立して軽い力で回転方向にも、前後にも動くようになります。その際、ネジが外側リングからスッポリ抜けてしまっても構いませんが、その際は再び外側リングに挿し込んで、尚且つ内側リングからは抜けた状態になるようにネジをもっていってください。
- 事前準備2で確認した、黒い溝の隙間の距離を保ちながら、事前準備で確認した、回転端に達したのと反対方向にリングをゆっくり回します。
- 黒い溝の隙間の距離を保つことに気をつけつつ、ネジの頭を少し押しながら回していくと、ネジが少し押し込める場所があることがわかります。ここが隣のネジ穴になります。
- 一度ネジを数回転回して仮止めしてから、実際の太陽像を見ながら外側回転リングを(内側回転リングと一緒に)回して、Hα線が回転範囲の中心に来たかどうか確認します。
- ネジ穴をずらした距離が不十分なら、さらに隣のネジ穴を探して同じことを繰り返します。
私の場合はHα中心が丁度回転端付近にまで達していたので、3つくらいネジ穴をずらしたところで、回転範囲の中心にHα線の中心が来るようになりました。
スマホアダプターでの撮影
上のように調整した後は、眼視で見てもプロミネンスがちょうど回転中心付近でよく見えるようになりました。表面の複雑な模様もよく見えます。大きな黒点が出ていてちょうど真正面にきているので、眼視でも迫力がありました。
付属アイピースは焦点距離を調節できるタイプのものなので、拡大もできて便利です。また、スマホアダプターも付属されているので、使ってみました。うまくスマホを固定するのに少しコツはいりますが、固定さえできればあとは簡単に撮影することができます。普通に写すとかなり明るくなってしまうので、スマホのカメラ機能で輝度を落とすといいのかもしれません。
jpegで保存されていますが、これでも多少の画像処理をするだけでプロミネンスや表面の模様が見えてきます。
G3M678の効果
スマホの殺絵だけでも楽しいかもしれませんが、ここからはモノクロCMOSカメラを使った本格的な撮影にうつります。カメラはG3M678Mです。このカメラはピクセルサイズが2μmと天体用カメラとしてはかなり細かい部類で、分解能を上げることができると思われます。その一方、センサーサイズも1/1.8インチとそこそこ大きく、今回のフェニックスの焦点距離400mmだと太陽全景がプロミネンスも含めてちょうど入るくらいの大きさです。
フェニックスの鏡筒の口径は8cmですが、エタロンを取り付けたときはエタロンの開口径の4cmに制限されるため、実効的には口径4cmとなります。その場合の分解能は例えばドーズ限界を考えると11.6秒 / 4cm = 2.9秒となります。
その一方、センサーサイズが7.7x4.3mmなので、焦点距離400mで画角を計算すると1.10 x 0.616度となります。解像度が3840x2160なので、1ピクセル当たりの画角は1.03秒となります。上のドーズ限界と比べると、カメラの分解能の方がすでに十分細かいので、オーバーサンプリングになります。うーん、こうやって改めて比較してみると、すでにオーバースペックのカメラですね。
それでも、ドーズ限界は眼視における2つの星を輝度で見たときの分離限界とも言えるので、撮影の際にはのちの画像処理も考えると輝度差を拡大できるので、分解能はもう少しよくなるはずです。例えば、かなり昔に惑星撮影でドーズ限界をどれくらい超えることができるかを議論したことがあって、ざっくり1.5-2倍程度まで改善できそうだという検討結果でした。
また、カメラのピクセルサイズと分解能について議論したこともあり、ピクセルサイズがレイリー限界やドーズ限界よりも細かい方がより分解能を上げる効果があるのではないかと、当時は結論付けています。
なので、おそらくですがまだこのレベルだとピクセルサイズが小さくなることは効果があって、今回のカメラは分解能に対してまだ貢献できるのかと思います。実際には口径4cmの分解能にかなり近いところを攻めるくらいになっているはずで、言い換えると、フェニックスの性能限界にちょうど迫るくらいになっているのかと思います。
ここら辺の検証は、カメラを例えば手持ちの2.9μm/pixelのASI290MMにわざと分解能を落として比較するとか、バローレンズを入れて分解能が上がるのか上がらないのかを見るなどで実際に確かめることができるのかと思います。余裕があったら試してみたいと思います。
G3M678での撮影
実際にG3M678Mで見てみます。まずはSharpCapで簡易的にライブスタック機能を使います。この時点で黒点周りのHαの模様もかなりの分解能で見えることがわかります。
この時にそのままPNGで保存したファイルになります。
どうでしょうか?画面にWaveletの設定が出ていますが、ほぼオート設定です。500枚のライブスタックで、簡単にここまで見ることができますが、これは楽でいいです。実際ここまで出るのはかなり楽しいと言わざるを得ません。
せっかくなので、serフォーマットで動画で撮影し、マニュアルでスタックして、画像処理までしてみました
直接比較してみるとどうでしょうか?左がSharpCapのライブスタック、右がserファイルからのマニュアル処理です。
さすがにライブスタックそのままだと差が大きいので、別途画像処理してみましょう。左がSharpCapのライブスタックを画像処理したものです。右は上と同じでserファイルからのマニュアル処理です。
どうでしょうか?両方とも画像処理することが前提なら、ライブスタック画像もマニュアル処理にかなり迫ることができます。それでもやはり差はあって、特に明るいところと暗いところの階調の滑らかさや分解能など、きちんと出すならやはり動画からマニュアルで処理した方が多少いいようです。
今回のフェニックスとG3M678Mは、太陽全景を一度に写しつつ、口径4cmのフェニックスの限界近くに達しているものと思わ、ある意味ベストに近い組み合わせなのかと思います。これ以上分解能を上げるには大きな口径の鏡筒を使うのが正しい方向です。口径を増やして、さらに拡大して撮影して分解能を上げるのが、次に考えることになるのかと思います。
まとめ
今回の組み合わせは、フェニックスが15万円強、G3M678Mが4万円強で、合計20万円程度です。決して安い価格ではありませんが、一昔前の太陽望遠鏡ではこの値段ではここまでの性能を出すのはかなり難しかったと思います。太陽望遠鏡としてはまだ入門機なのですが、それでもフェニックスの透過波長幅は0.6Å以下とかなり優秀で、ここまで太陽Hα画像が出るのなら、しかも簡単なライブスタックでもこれくらいは出るのなら相当なコストパフォーマンスです。
上の全景画像のように簡単に全面がムラなくほぼ一様にHα中心に見えるというのは、実は驚異的なことだと思います。例えば手持ちのPSTエタロンでは、均一範囲は3-4割と言われています。フェニックスエタロンは製品ごとのばらつきもほとんどないと聞いているので、安心して手に入れることができる入門用の太陽望遠鏡なのかと思います。いい時代になったものです。フェニックスエタロンの詳しい性能については、CP+での講演動画をご覧いただければと思います。
その後、お客さんが
この日は天気は良かったのですが、思ったより風が強かったので、フェニックスでの撮影を終えてからは少し気が抜けてしまって、自宅でのんびりしていました。そんな折、お客さんがきてくました。以前、太陽を見に来てくれたMさんの所の中3のお嬢さんです。私が朝からXでつぶやいていたのを見てお母さんと一緒に訪れてくれました。
まだフェニックスのセットアップは残っていたので、アイピースに戻して実際に太陽を見てもらいました。と言ってももう夕方近くで、太陽が隣の家の高い木にかかってしまっていたので、わざわざ赤道儀をずらして太陽が見える位置に移動しての観察になります。星座ビノに太陽フィルムを付けたもので、太陽黒点も直接見てもらいました。
満月の次の日でちょうど月の話が出たので、望遠鏡を一本持って帰ってもらいました。ビクセンのポルタで、昔星まつりで中古で特価で手に入れたものです。振動比較で使ったくらいでほとんど使っていなかったので、長期貸し出しということで自由に使ってもらいたいです。うまく月が見えたかどうか、今度会ったときに感想を聞いてみたいです。











コメント
コメント一覧 (4)
いつも興味深く拝見させて頂いております。
ハイレベル過ぎて着いて行けない部分も多いのですが、いろいろ勉強になります。
こちら、PSTからPhoenixに乗り換えて約10カ月になりますが、温度変化によるエタロンのベストポジションの変化、実感しております。
特に夏場に顕著で、温度上昇とともに刻一刻と変化するので、撮影時には分単位で再調整する必要があります。
私の個体に特有の現象かとも思ったのですが、共通の現象なのですね。
エタロンの正確な温度は不明ですが、CMOSカメラのログを見ると、撮影開始時には40℃台だったものが、撮影後半には60℃超になっているので、エタロンの温度変化も相当なものと推察します。
Chibamberさん、こんにちは。
私もまだ温度で中心波長が移動するのは推測レベルなので、これはありがたい情報です。夏に使っていなかったのでわかりませんでしたが、確かに太陽に向けると温度が上がって中心波長も変わっておかしくないと思います。
私は今回、冬に回転中心にあわせてしまったので、夏になるとまた合わせ直しかもしれません。春とか秋に合わせるのがいいのかと思います。
昨年のCP+でのSamさんの講演を視聴してフェニックスを買いました。おかげさまで手持ちの中でも最も稼働率の高いお気に入りの鏡筒になっています。
今回のブログでは、フェニックスのエタロン調整リングの回転角の調整方法を教えていただきありがとうございました。私のフェニックスも冬になると回転角いっぱいまで回してもまだ足りない感じで困っていたのですが、見事に解決しました。
ブログ記事、今後も楽しみにしています。
M.Miyakeさん、こんにちは。フェニックスの手軽さと見え味は十分すぎるほどのコストパフォーマンスだと思います。
他の方の話もいくつか聞いたのですが、やはり温度差によるエタロンの調整範囲がズレるのは確実みたいです。M.Miyakeさんの話のまた実例の一つとなります。こうやって報告していただけると、とてもありがたいですし、嬉しいです。
でも回転はあまり無理をしない範囲にしてください。圧縮が大きすぎるとエタロンを破損することもあります。あくまで自己責任でお願いいたします。
寒暖が激しい地域では、夏と冬で別の設定が必要になってくるかもしれません。エタロンは一度設計して作ってしまうと、なかなか変更が効かないと思うので、しばらくは対処療法的にやり過ごすことになるかと思います。ここら辺もメーカーへフィードバックで、いつか解決してれたらと期待しています。