めだかと暮らすひとさんが、SharpCapでのライブスタック撮影で、縞ノイズに悩まされているようです。
ここではできる限り簡単な解決策の一つとして、ガイド無しのディザー撮影のやり方を示したいと思います。
最近電視観望というと、リアルで見ると言うより、ライブスタックを使った簡単な撮影を指すことも多いようです。めだかと暮らすひとさんも、最近やっとAZ-GTiを赤道儀モードにして、視野回転のない追尾を実現したとのことです。でもまだガイド鏡もなく、ノータッチガイド(死語?)での撮影で、電視観望的にライブスタックを利用して、最後にスタックされた画像を処理しているとのことです。問題は、赤道儀の極軸が合っていないとライブスタックをの間に画面が流れていって、縞ノイズができてしまうことです。これは例え極軸が合っていたとしても、またガイド撮影をして画面が流れないように頑張っても、機材のたわみなどがごく普通に存在するので、1時間オーダーの長時間の撮影では縞ノイズが出ることがよくあります。
縞ノイズの原因は、ホットピクセルやクールピクセルなどの、センサーのある点にいつも存在する異常ピクセルが、画面の流れとともに全て同じ方向に動き、縞のようになることです。
縞ノイズ軽減する方法の一つは、ダーク補正することです。SharpCapには簡単なダーク補正方法が搭載されていて、右側パネルの「ダーク補正」の「Hot and Cold Pixel Remove」を選び、簡易補正で済ませます。これはホットピクセルとコールドピクセルを簡易的に取り除く機能ですが、つい最近搭載されたもので、これまでは「Hot Pixel Removal Only」とホットピクセルのみの除去しかできませんでした。以前示したSharpCap上でダークファイルを撮影してリアルタイムダーク補正することもできますが、
ダークファイルでの補正だと基本的にコールドピクセルの補正はできないはずなので、簡易的ですが「Hot and Cold Pixel Remove」の方が有利な可能性が高いです。このオプションががある場合とない場合では数のような違いがあります。
左がオプションなし、右がオプションありです。左の画像を見ると、赤とか緑の輝点が下向きに伸びているのがわかります、右もすごくよく見るとまだ輝点が残っているのがわかりますが、ほとんど目立っていないのがわかります。
それでもダーク補正では縞ノイズを軽減するだけで、完全に消すことはできません。一番確実な方法は、ディザー撮影をすること。ディザーというのは、長時間撮影の途中でわざと画面を数ピクセルとかずらして、異常ピクセルの影響を散らしてやることでかなり軽減できます。今回の問題はこのディザー、一般的にはガイド撮影と込で実現されるので、ガイド撮影をしていない限りディザーはできないと認識されているだろうことです。めだかと暮らすひとさんみたいに、ガイドをしていなくても縞ノイズを解決したいという要求はきっとあることでしょう。
その方法ですが、前提としてSharpCapで経緯台、赤道儀などが接続されていて、SharpCapからコントロールできることです。赤道儀でなくてもコントロールできるなら経緯台でも構いません。今回はトラバースで試しました。トラバースはAZ-GTiのミニチュア版とも言える、自動導入、自動追尾機能がある経緯台です。
設定方法です。まずメニューの「ファイル」の「SharpCapの設定」の中の「ガイディング」タブで、下の画面のように「ガイディングアプリケーション」を3つ目の「ASCOMマウントパルス...」を選びます。
「ディザリング」の中の「最大ディザステップ」はある程度大きくしておいた方が効果が大きいです。私は「40」まで増やしました。値が小さいと効いているかどうかもわかりにくいので、最初多少大きめの値をとっておいて効果を確認し、大きすぎたら減らしていくがいいのかと思います。
その後、ライブスタックの下部設定画面の「Guiding」のところで、最初のチェック「Monitor Guideng Application...」をオンにします。「Automatically DIther」をオンにし、「Dither every:」でどの頻度ディザーするのか選びます。撮影の場合は「Frames」を選んで、何枚撮影することにディザーをするかを選んだ方がいいでしょう。実際には数分に1回くらい散らせば十分なので、今回の1回の露光時間が20秒とすると、10枚に1枚、3分ちょっとに1回ずらすことにしました。
するとライブスタックで10枚スタックするごとに、下の画面のように上部にの緑色のバーが現れて、ディザーが実行されます。
実際にディザーの効果があるか確認してみましょう。30フレーム分を動画にしてみました。輝点が右下に進んでいきますが、その途中で一度カクッと下に降りて、またカクッと上に上がるのがわかると思います。でもまだずれが少ないので、もっと大きな値でも良かったかもしれません。

実際のSharpCap上のライブスタック画面では、ディーザーが何度が進むと、最初に見えていたミミズが散らされてどんどん薄くなっていきます(すみません、画像を保存するのを忘れてしまいました)。
ただし、今回は雲がすぐに出てきてしまい、実際の長時間で縞ノイズが見えたわけではないので、ディざーなしで縞ノイズが出て、ディザーをオンにして縞ノイズが消えることを確認すべきなのですが、今回はとりあえず手法を書くだけにしました。後日確認ができたら、また結果を追加したいと思います。
最後に、今回撮影した画像2種を仕上げてみました。FMA135にCBPを付け、Uranus-Cで撮ってます。課題はトラバースなので小さくて楽なものです。ただし経緯台なので星が回転もしくは流れてしまうので長時間露光はできず、1フレーム当たり20秒露光の露光で、ゲインは高めの300としています。共に、かなり淡いところまであぶ出していますが、上の動画でもわかりますが、少なくとも経緯台でガイド無しなので、撮影時にかなり流れてはいるのですが、これくらいの露光時間ではかなり炙り出しても縞ノイズは出ていないことがわかるかと思います。
M42: オリオン大星雲
オリオン大星雲はライブスタックで30フレームの計600秒、ちょうど10分経った時に保存したfitsファイルから画像処理しました。SharpCapの時点でスタックまで終わっているので、かなり楽です。星雲本体周りの分子雲も少し写っています。
向きを変えて星雲部分を切り取り。
口径3cmの高々10分でこれならまずまずではないでしょうか。
M31: アンドロメダ銀河
2枚目はM31、アンドロメダ銀河です。こちらは途中雲がかかり、ライブスタック画像ではかすみがかってしまったので、別途1枚1枚保存してあったRAWファイルから、PixInisightでスタックして処理しました。トータル露光時間はM42よりさらに短く、14枚でわずか4分40秒です。
こんな短い時間でも、情報としてはある程度残っているものです。さすがにかなりギリギリ出しているので、どうしてもノイジーなのは否めません。
今回は、ガイド無しでディザーする方法を示しました。まだ実際の長時間撮影はできていないので、またいつか試したいと思います。
曇りがちで十分な撮影時間をかけることができませんでしたが、それでも口径3cmでもそこそこ情報は残っていて、ある程度画像処理すれば十分見えるくらいにはなることがわかりました。途中で気づいたのですが、ライブスタック時にBrightnessフィルターを入れると、雲が入った時の画像のスタックを回避できるので、そういったことも今後試していきたいと思います。
こうやって見ると、小さなトラバースでも撮影に耐え得るくらい、十分に安定していることがわかります。
1枚目 AZ-GTi赤道儀化して外廊下、月齢7.7の月あかりで撮影74分(Sirilで編集)
— めだかと暮らすひと (@kamedaroisa) November 22, 2023
2枚目 経緯台モードで房総のダム月明りなし撮影28分(Sirilで編集)
3枚目 1枚目の加工無しver
これを見て思うのは、
綺麗な画には第一条件の良い空!
赤道儀でも縮緬ノイズ(クールピクセル)は防げなかった pic.twitter.com/ScqawYhv1F
ここではできる限り簡単な解決策の一つとして、ガイド無しのディザー撮影のやり方を示したいと思います。
縞ノイズの原因
最近電視観望というと、リアルで見ると言うより、ライブスタックを使った簡単な撮影を指すことも多いようです。めだかと暮らすひとさんも、最近やっとAZ-GTiを赤道儀モードにして、視野回転のない追尾を実現したとのことです。でもまだガイド鏡もなく、ノータッチガイド(死語?)での撮影で、電視観望的にライブスタックを利用して、最後にスタックされた画像を処理しているとのことです。問題は、赤道儀の極軸が合っていないとライブスタックをの間に画面が流れていって、縞ノイズができてしまうことです。これは例え極軸が合っていたとしても、またガイド撮影をして画面が流れないように頑張っても、機材のたわみなどがごく普通に存在するので、1時間オーダーの長時間の撮影では縞ノイズが出ることがよくあります。
縞ノイズの原因は、ホットピクセルやクールピクセルなどの、センサーのある点にいつも存在する異常ピクセルが、画面の流れとともに全て同じ方向に動き、縞のようになることです。
縞ノイズの解決策
縞ノイズ軽減する方法の一つは、ダーク補正することです。SharpCapには簡単なダーク補正方法が搭載されていて、右側パネルの「ダーク補正」の「Hot and Cold Pixel Remove」を選び、簡易補正で済ませます。これはホットピクセルとコールドピクセルを簡易的に取り除く機能ですが、つい最近搭載されたもので、これまでは「Hot Pixel Removal Only」とホットピクセルのみの除去しかできませんでした。以前示したSharpCap上でダークファイルを撮影してリアルタイムダーク補正することもできますが、
ダークファイルでの補正だと基本的にコールドピクセルの補正はできないはずなので、簡易的ですが「Hot and Cold Pixel Remove」の方が有利な可能性が高いです。このオプションががある場合とない場合では数のような違いがあります。
左がオプションなし、右がオプションありです。左の画像を見ると、赤とか緑の輝点が下向きに伸びているのがわかります、右もすごくよく見るとまだ輝点が残っているのがわかりますが、ほとんど目立っていないのがわかります。
それでもダーク補正では縞ノイズを軽減するだけで、完全に消すことはできません。一番確実な方法は、ディザー撮影をすること。ディザーというのは、長時間撮影の途中でわざと画面を数ピクセルとかずらして、異常ピクセルの影響を散らしてやることでかなり軽減できます。今回の問題はこのディザー、一般的にはガイド撮影と込で実現されるので、ガイド撮影をしていない限りディザーはできないと認識されているだろうことです。めだかと暮らすひとさんみたいに、ガイドをしていなくても縞ノイズを解決したいという要求はきっとあることでしょう。
ガイド無しディザーの方法
その方法ですが、前提としてSharpCapで経緯台、赤道儀などが接続されていて、SharpCapからコントロールできることです。赤道儀でなくてもコントロールできるなら経緯台でも構いません。今回はトラバースで試しました。トラバースはAZ-GTiのミニチュア版とも言える、自動導入、自動追尾機能がある経緯台です。
設定方法です。まずメニューの「ファイル」の「SharpCapの設定」の中の「ガイディング」タブで、下の画面のように「ガイディングアプリケーション」を3つ目の「ASCOMマウントパルス...」を選びます。
「ディザリング」の中の「最大ディザステップ」はある程度大きくしておいた方が効果が大きいです。私は「40」まで増やしました。値が小さいと効いているかどうかもわかりにくいので、最初多少大きめの値をとっておいて効果を確認し、大きすぎたら減らしていくがいいのかと思います。
その後、ライブスタックの下部設定画面の「Guiding」のところで、最初のチェック「Monitor Guideng Application...」をオンにします。「Automatically DIther」をオンにし、「Dither every:」でどの頻度ディザーするのか選びます。撮影の場合は「Frames」を選んで、何枚撮影することにディザーをするかを選んだ方がいいでしょう。実際には数分に1回くらい散らせば十分なので、今回の1回の露光時間が20秒とすると、10枚に1枚、3分ちょっとに1回ずらすことにしました。
するとライブスタックで10枚スタックするごとに、下の画面のように上部にの緑色のバーが現れて、ディザーが実行されます。
実際にディザーの効果があるか確認してみましょう。30フレーム分を動画にしてみました。輝点が右下に進んでいきますが、その途中で一度カクッと下に降りて、またカクッと上に上がるのがわかると思います。でもまだずれが少ないので、もっと大きな値でも良かったかもしれません。

実際のSharpCap上のライブスタック画面では、ディーザーが何度が進むと、最初に見えていたミミズが散らされてどんどん薄くなっていきます(すみません、画像を保存するのを忘れてしまいました)。
ただし、今回は雲がすぐに出てきてしまい、実際の長時間で縞ノイズが見えたわけではないので、ディざーなしで縞ノイズが出て、ディザーをオンにして縞ノイズが消えることを確認すべきなのですが、今回はとりあえず手法を書くだけにしました。後日確認ができたら、また結果を追加したいと思います。
ついでの画像処理
最後に、今回撮影した画像2種を仕上げてみました。FMA135にCBPを付け、Uranus-Cで撮ってます。課題はトラバースなので小さくて楽なものです。ただし経緯台なので星が回転もしくは流れてしまうので長時間露光はできず、1フレーム当たり20秒露光の露光で、ゲインは高めの300としています。共に、かなり淡いところまであぶ出していますが、上の動画でもわかりますが、少なくとも経緯台でガイド無しなので、撮影時にかなり流れてはいるのですが、これくらいの露光時間ではかなり炙り出しても縞ノイズは出ていないことがわかるかと思います。
M42: オリオン大星雲
オリオン大星雲はライブスタックで30フレームの計600秒、ちょうど10分経った時に保存したfitsファイルから画像処理しました。SharpCapの時点でスタックまで終わっているので、かなり楽です。星雲本体周りの分子雲も少し写っています。
向きを変えて星雲部分を切り取り。
口径3cmの高々10分でこれならまずまずではないでしょうか。
M31: アンドロメダ銀河
2枚目はM31、アンドロメダ銀河です。こちらは途中雲がかかり、ライブスタック画像ではかすみがかってしまったので、別途1枚1枚保存してあったRAWファイルから、PixInisightでスタックして処理しました。トータル露光時間はM42よりさらに短く、14枚でわずか4分40秒です。
こんな短い時間でも、情報としてはある程度残っているものです。さすがにかなりギリギリ出しているので、どうしてもノイジーなのは否めません。
まとめ
今回は、ガイド無しでディザーする方法を示しました。まだ実際の長時間撮影はできていないので、またいつか試したいと思います。
曇りがちで十分な撮影時間をかけることができませんでしたが、それでも口径3cmでもそこそこ情報は残っていて、ある程度画像処理すれば十分見えるくらいにはなることがわかりました。途中で気づいたのですが、ライブスタック時にBrightnessフィルターを入れると、雲が入った時の画像のスタックを回避できるので、そういったことも今後試していきたいと思います。
こうやって見ると、小さなトラバースでも撮影に耐え得るくらい、十分に安定していることがわかります。
コメント
コメント一覧 (4)
もしかしたら、SharpCapでプレートソルブをやらないとうまくいくのかもしれません。
何れにせよ、SharpCap側のトラブルと考えていて、例えばNINA + SynScan Proだとプレートソルブとかやっても何のトラブルもありません。
NINAはかなりいいので、NINAに変更するのは一つの手です。
https://hoshizolove.blog.jp/archives/52696520.html
やはり同様のトラブルは起こりうるのですね。
プレートソルビングをできるようにASCOMを入れて、味をしめてこれならうまくディザリングもいけるかなといろいろ試していますが、なかなか一筋縄ではいかないものです。
NINAというのは全く調べたことがないので、一度探ってみます。
古い機械をEZEUS改造して使っております。自分の寿命(健康寿命も含め)を考えても、もうあまり新しいテクニックを学んで更新するのもなかなかしんどいことです。
Samさんのご教示を勉強しながら、もう少しいろいろ試行してみます。
ありがとうございました。
Sharpcapが良くできたソフトだと思うので、これにこだわってしまうのが行けないのかもしれませんね。惑星撮影だけに特化して、星雲写真などは他のソフトを考えてもよいのかもしれないと考え直しました。またよろしくおねがいします。
惑星ならSharpCapかFireCaptureですが、最近はSharpCapの惑星、月、太陽のリアルタイムライブスタックがあまりにすごいので、FireCaptureを使う機会がほとんどなくなってしまいした。FireCaprureは、画像内でソフト的に惑星をセンターに持ってくる機能がすごかったのですが、今ではSharpCapも似た機能はもちろん、もっと進化したも野を持っていますて。
一方、星雲、星団、銀河などのDSOはSharpCapよりもNINAの方がはるかにいいです。何がいいかというと、ミスをなくすような設計になっているところです。例えばSharpCapだとフォーマットをRAW8やRGB24に設定してしまったり、ファイル形式をPNGなどで保存してしまうこともあるかと思いますが、NINAは基本的にそれらを変更することはできなくて、変更するとしたらもっと奥の方へ行って全体のデフォルト設定をいじらなければならないので、基本的に一度きちんと設定したものからのミスなどで変な変更にならないです。あと、カメラが冷却されていないと警告が出たり、ガイドソフトがリンクされていないと警告が出たりとか、夜で焦っている際にミスをなくすような方針で設計されています。
ガイドなしディザーも、SharpCapよりもNINAの方が素直に安定して実現できます。撮影ソフトとしてもかなり直感的でオーソドックスな操作方法なので、私はもうDSOはNINA一択にしています。もしNINAに不満だと、あとはASIAirとかになると思うのですが、これだと例えばガイドなしディザートいったような凝ったことは到底できないので、私の中では選択肢からは外れてしまいます。
その一方で、新しいソフトは安定稼働までに時間がかかるのも事実なので、焦らずに、自分がいいと思うものを使ってください。