プレートソルブトラブル解決集の続報です。今回はある意味決定版になっています。前回あやふやにし解決できなかったことが、かなり確実に解決できるようになりました。
2023/9/2にSynScan Proの最新版(v2.4.5)がリリースされました。リリースノートによると、今回のバージョンアップでプレートソルブ関連で以下のような改善をしています。
これは2022年9月にバージョン1台からバージョン2台になって以来、初めてのプレートソルブ関連の大きな改善です。バージョン2以降では、上に書いてある2.3.4でPAE(調べるとPointing Accuracy Enhancementとのことです)をオフにしたことが唯一の変更で、それも今回戻してあるということなので、それを含めて初の大きな改善となるということです。
現実に、バージョン1台でそこそこ安定だったプレートソルブ関連は、バージョン2台で不安定になりがちでした。そのため、プレートソルブを試す際は、まずは手持ちのSynScan Proを現段階で最新のv2.4.5以降にすることをお勧めします。実際に、今回かなり安定な状況を実現できています。
また、最新のSynScan ProではPCに接続されたゲームコントローラーでAZ-GTiが動かせるそうです。私はまだ試していませんが、Xbox互換、PS3互換のものが使えるそうなので、興味がある方は一緒に試してみるのもいいかもしれません。
あと、SynScan Proではなく、ただのSynScanもアップデートされていますが、こちらはProを単に機能制限しただけのようなものです。その機能制限の中にはワンスターアラインメントなどあって然るべき機能も含まれて制限されてしまっているので、私は今はProの方しか使っていません。SNS上には、Proでない方でどうしても解決しなかったトラブルが、ショップの方の助言でProにしただけで一発で解決したという例もあるみたいなので、何か理由がない限りPro版を使う方がいいのかと思います。
今回の動作条件は、AZ-GTiを使ったプレートソルブをするために、PCにSynScan ProとSharpCapがインストールされていて、それぞれをASCOM環境で接続するためにASCOMプラットフォームがインストールされていることとします。プレートソルブはASTAPもしくはASPSを使います。最新のSharpCapではPlatesolve3もサポートしているので使えるかもしれません(私はまだ未検証)。
1. SynScan ProとAZ-ZTiの接続
まずはSynScan ProとAZ-ZTiの接続がきちんと確立されているか確認します。接続方法はデフォルトのWiFiを使っても、オプションのケーブルを使った有線でも、どちらでも構いません。プレートソルブをするためには「PC上の」SynScan ProとAZ-GTiを接続することが必要で、最初はスマホやタブレットのSynScan Proでの接続でも構いませんが、プレートソルブ時、より正確にいうとSharpCapと接続する時にはPC上で動いているSynScan Proとの接続が必要になります。
経緯台モードか赤道儀モードかはどちらでも構いません。自分が設置している状態に合わせてください、どちらのモードでも正しくプレートソルブができます。
一つ重要なことが、緯度経度情報が正しく入っているかです。SynScan Pro上で「設定」から「位置情報」を見て、きちんと緯度経度が入力されている確認します。
PCはGPSを持っていないので、位置情報を自動的には取得できないことが多いです。GPSを持っていなくてもインターネットから位置情報を獲得することもできますが、正しい位置にならない場合もありますので、自分で数値で確認するのが確実です。ここが大きく間違っていると、プレートソルブも初期アラインメントも全然違った方向に行ってしまいます。関連した注意ですが、最初スマホやタブレットのSynScan Proに接続して正しい位置情報が入っていると思っても、PCに切り替えた時にはその情報は引き継がれません。なので、PC上のSynScan Proで位置情報を確かめるようにしてください。
2. SharpCapとSynScan Proの接続
次にSharpCapとSynScan ProをASCOM経由で接続します。ASCOMプラットフォームはASCOMのページから、SynScanアプリ用のASCOMドライバー(2023/9/11現在、2023/9/3のv1.4.0が最新)はSkyWatcherのページからダウンロードしてインストールしてあるとします。
SharpCapの「設定」の「ハードウェア」から「SynScan App driver」を選び、メイン画面右の「望遠鏡制御」の「接続済み」をオンにします。正しく接続されると、AZ-GTiが向いている方向などの数値が出てきます。一つ確認しておくといいのは、その数値が時間と共に動いているか、PC上のSynScan Proの「ユーティリティ」の「情報」を見て、その数値と合っているかを見ることで、きちんと接続されているかがわかります。実際、以前のバージョンでは数値が動かなかったり、全部0だったりして、接続できたように見えてもうまく接続できていないことが何度かありました。今のところ、最新バージョンのSynScan Proでは接続に失敗したことはありません。
接続がきちんとできていたら、次はプレートソルブの設定の確認です。まず、SharpCapの「設定」「プレートソルブ」画面を見ます。
ASTAPもしくはASPS、もしくはその両方がインストールされているでしょうか?インストールされている場倍は、上の画面のように下の方にFoundとかでますが、まだインストールされていない場合は、どちらか、もしくは両方ともインストールしてください。「プレートソルブアプリケーションの選択」で選択することも忘れないでください。お勧めはASTAPですが、たまにASTAPだと解決できなくて、ASPSだと解決できることがあります。でもASPSは遅いので私は普段使いはASTAP、どうしてもダメな時はASPSとしています。
重要なことの一つ目は、焦点距離がきちんとあっているかです。これが実際の鏡筒と大きく間違っていると、どうやってもプレートソルブで位置解決ができません。
重要なことの二つ目は、下の画像のようにSynScanとの同期方法を4つ目の「マウント位置をオフセットして、天体位置を中央に配置する」を選ぶことです。これまでは2つ目の「マウントを同期し、天体を中央に再配置する」にしてたのですが、SysScan Proが反応せずAZ-GTiが動かないことがありました。4つ目のオプションは今のところほとんどの場合AZ-GTiをきちんと動かせています。
準備ができたら、初期アランメントの最中にプレートソルブを試してみましょう。まずはSynScan Proから「アラインメント」を選びます。1スターアラインメントで十分でしょう。出てきたリストの中から、今見えているわかりやすい星を選び、そのまま導入します。今回は木星を選びました。
SynScan Proがターゲット天体に向くまでに、ターゲットまでの差が角度で表示され、数字がどんどん小さくなっていきます。SynScan Proがターゲットの方向に向いたと思い込んだ時に下のような画面になります。
ここで、SharpCapの画面にターゲットの星が出て来ればいいですが、出てこない場合はプレートソルブの出番です。上の画面で書いてある「マニュアルで中心に」というのの代わりに、「プレートソルブで中心に」持って行ってやるという意味です。なのでこの時点ではまだ、完了をSynScan Proに知らせる真ん中の「星印の横長ボタン」を押してはいけません。
プレートソルブはSharpCapのメニューの「ツール」から「プレートソルブ後再同期」を選ぶか、右側パネルの「望遠鏡制御」の方向矢印の左下の方角マークのようなアイコンを押します。
うまくプレートソルブが下位を見つけると、どれだけずれていたかの表示が角度で緑色のバーのところに表示され、自動的にターゲット天体が真ん中に来るようにAZ-GTi下に信号が送られて、下の画面のように実際にターゲット天体が導入されます。
問題はこうならない時です。いろんなケースがあります。まず、以下のようにNo solution foundと出る場合です。2つの原因が考えられます。もし下の画面のように望遠鏡接続のところの数値が明らかにおかしい場合は、SharpCapとSynScan Proとの接続がうまくいっていません。再度接続しなおしてください。再接続でエラーなど出る場合は、SynScan Proをいったん閉じて再度開いてから、SharpCapから接続してみてください。
接続がうまくいっているはずなのにこのエラー場出る場合は、あまり追求せずにターゲット天体を変えてみてください。一度この状態でできる限りのことをやったことがあるのですが、結局どの試みも失敗し、最後あきらめがてらターゲット天体を変えたら、今までの苦労は何だったのかというくらい、一発でプレートソルブが成功しました。なので最近はこのエラーが出たら無駄なことはせずに、素直にターゲット天体を変えるようにしています。
上の問題が解決した時に、次によく出るエラーが、下の画面のような星が「多すぎる」とか「少なすぎる」とかいうものです。でもこのエラー、SynScan Proを最新版にしてから「多すぎる」というのは見なくなりました。今のところだけかもしれませんが、改善されたのかもしれません。星が「少なすぎる」というのは、プレートソルブをうまくやろうとしているが、取得した画像のクオリティが悪い場合に出てきます。雲が多い、空が明るすぎて星がよく見えないなどです。この場合は露光時間を延ばすとうまくいくケースが多いです。
ただし逆に、露光時間を延ばしすぎてうまくいかないこともあります。例えば星が流れてしまう場合です。私は5秒程度が最もうまくいっています。どれだけ星が流れるかは、AZ-GTiの水平出しの精度、見ている方向などによりますので、取得した画面で星が明らかに流れていないか確認してみてください。星が流れない限りは、露光時間は長いほうが有利です。
このエラーが回避されれば、あとはうまくいくでしょう。自動的にAZ-GTiが動き出し、ターゲット天体が画面真ん中近くに来るはずです。
プレートソルブがうまくいったら、初期アラインメントのマニュアルで中心へもっていくことが完了したことになります。SynScan Proに残っていた初期アラインメント画面の真ん中の星印バーを押すのを忘れないでください。これでプレートソルブを利用した初期アラインメントは完了です。実際に見てみたい天体をSynScan Proから自動導入してみてください。
さて、初期アラインメントで導入したターゲット天体の近くの天体を自動導入する場合は、特に問題なく画面真ん中らへんに来るかと思います。
ところが、遠くの天体を自動導入する場合は画面内に入らないこともあるかと思いますが、その場合もプレートソルブをしてみてください。設定などはうまくいっているはずなので、今度は特に問題なく真ん中に導入されるはずです。ただし自動導入でプレートソルブをしたとしても、AZ-GTiが認識している(遠くに移動した誤差のために間違って認識されている)位置がアップデートされるわけではないです。そのため、次の天体がもし今導入したものの近くにあったとしても、同じような誤差のために画面内に入ってこなくて、再度プレートソルブをする必要があるかと思います。そんな場合はSynScan Proでアラインメントを選んで、今見ている方向の近くにある星でアラインメントを取り直してみてください。同じように「マニュアルで中心に」と出たところで再びプレートソルブをして、うまく導入されたら初期アランメントを完了して、SynScan Proが認識している位置をアップデートしてみてください。こうすることで、その付近の天体の自動導入できちんと画面内に入るようになるはずです。
今回AZ-GTiだけでなく、少し前に発表されたSynScan仲間のトラバースもじっくり試してみました。
上の記事でも少し書いていますが、この記事で試した次の日の観望会でも接続やプレートソルブにトラブルがありました。その後自宅などでも何度か試していたのですが、うまくいく時とうまくいかない時の差がかなりあり、観望会本番で使うのは少し怖いという印象でした。少なくともAZ-GTiと比べると安定度の差はあったかと思います。
ところが、今回SynScan Proのバージョンを最新のものにアップデートしてからは、トラバースで以前経験したようなトラブルは今のところ一切なくなっています。少なくとも、もうAZ-GTiとの差は感じられないレベルの安定度です。
まだ何度か検証する必要はあるかと思いますが、観望会での実戦投入も含めて、実際に使っていけるレベルかと思いますので、今後どんどん活用していきたいと思います。
これ以降は、古いバージョンのSynScan Proで試したことも含めた補足記事です。ほとんど役に立たないと思いますが、参考がてら載せておきます。
(古いSynScan Proで)AZ-GTiとトラバースを交互に使用するなど、複数台からの接続がうまくいかない場合、ASCOMのDevice Hubを使うといいという情報を得ました。Device Hubは複数の各機器のASCOMドライバーを管理し、接続を制御するという中間的なハブの役割をするものです。ダウンロード場所が分かりにくかったのですがここになります。
前回不安定だった状況を再現し、それがDevice Hubで解決するか試しましたが、残念ながらSharpCap上でASCOM Driver for SynScan Appに直接つなぐ方法と、Device Hubを通してSharpCap上でASCOM Driver for SynScan Appにつなぐ場合では、明確な違いを見ることはできませんでした。
PC上のSynScan Proですが、最新より少し前の2.3.9と(私が持っている古い)1.9.20では明確な違いがありました。今回のSynScan Proの最新版で再びオンにしたというちょっと謎のPAEに関連するかもしれません。 SharpCapから接続してAZ-GTiを動かすことまでは両方とも問題なくできます。ですが、プレートソルブになると2.3.9でAZ-GTiにフィードバックしようとするところまでは行きますが、どうやってもAZ-GTiが反応しないことがありました。それを1.9.20にしたところ、何の問題もなく動くことが何度かありました。1.9.20の方がどうも安定に動くのは確かなようです。
このことは、私だけでなくほかの方も同様の指摘をされていたので、偶然とかではないと思います。最新のSynScan Proのリリースノートにあったように、PAEをバージョン2台のどこかでオフにして再び最新版でオンにしているというので、もしかしたらこれがバージョン1台とバージョン2台の安定性の違いに関係していたのかもしれません
もう一つ気づいたことがあります。プレートソルブの最初の段階ですぐに「星が多すぎるのでは」とかのエラーが出て全く動かないときですが、どうも探索範囲が毎回15度程度で止まってしまいこのエラーが出ます。うまくいかない時は、SharpCap上で認識されている鏡筒の向きと、撮影した画像が実際に向いている向きとで大きな違いがあるときに、このエラーが出るようです。問題は、実際にはSynScan Pro上では目標天体の近くを向いていると認識されていても、SharpCapがSynScan Proとうまく接続できていなくて、SharpCap上では全然違う方向を向いていると認識された場合は、このエラーが出るようです。
このエラー、SharpCapのメニューからプレートソルブ実行時に選択できる2つのうちの2つめの「同期までしようとする」とすぐに出るのに、一つ目の「同期せずにプレートソルブだけ試す」と出ないこともあるので、どうも同期までしようとすると15度までの探索とかの制限がかかっているからのかもしれません。
その時やらかしたのですが、SynScan Proの緯度軽度情報を間違っていたり、前回の情報が残っていたりで鏡筒のホームポジションがずれていた場合など、そもそもSynScan Proの方が実際の向きと大きく乖離していると、同じ状況に陥ります。色々触っていると、意外に何度かSynScan Proの段階で間違っていることがありました。この場合、SharpCapといくらうまく接続できていてもダメみたいです。このことの自戒も含めて、今回の記事では注意事項にそのようなことを入れています。
今回のSynScan Proのアップデートは、AZ-GTiのプレートソルブに関してかなりの改善がなされたように思います。実際、セレストロン系の赤道儀でこれまでプレートソルブで不安定だったことは一度もなかったので、やはりこれはSynScan系のソフト的な問題だった可能性が高いと思っています。
あと、ASCOMドライバーに関してはアップデートに気づかなくて一つ前の1.3.1を使い続けていましたが、特に不具合は感じませんでした。更新日がSynScan Proとも近いので、もしかしたらアップデートした方がより安定になる可能性もあるかと思います。
あと、これまでのプレートソルブに関するトラブルは、SkyWatcherの代理店であるシュミットさんの方にも何度か報告させていただいていて、今回SynScanおよびSynScan Proがアップデートされた際には、いち早くプレートソルブ関連が改善された可能性があるので試してみて欲しいとの連絡を受けました。私からの報告が実際にフィードバックされたかどうかはわからないのですが、現実にアプリが改善され、連絡までしてもらえたのはとてもうれしく、ショップとしての真摯な対応に感謝したいと思います。また、実際に最新バージョンを試してから記事にするまでに、少し時間がかかってしまったことをお詫びします。
さて、これでAZ-GTiだけでなく、トラバースでのプレートソルブまで実用レベルに達したようなので、カバンの中に余裕で入るミニマムセットでの電視観望をどんどんやっていきたいと思います。
SynScan Proの最新版
2023/9/2にSynScan Proの最新版(v2.4.5)がリリースされました。リリースノートによると、今回のバージョンアップでプレートソルブ関連で以下のような改善をしています。
- Re-enabled PAE, where were disabled from 2.3.4 to 2.3.9
- Replaced "Align with Sync" page with "Sync samples" page.
- Multi-star alignment, where performing any of the following adds a sync sample:
- Using one of the alignment methods from the Alignment page
- Centering on a celestial object at the prompt after any catalog object GOTO
- Receiving a `SyncTo` command from ASCOM with a plate-solving software
現実に、バージョン1台でそこそこ安定だったプレートソルブ関連は、バージョン2台で不安定になりがちでした。そのため、プレートソルブを試す際は、まずは手持ちのSynScan Proを現段階で最新のv2.4.5以降にすることをお勧めします。実際に、今回かなり安定な状況を実現できています。
また、最新のSynScan ProではPCに接続されたゲームコントローラーでAZ-GTiが動かせるそうです。私はまだ試していませんが、Xbox互換、PS3互換のものが使えるそうなので、興味がある方は一緒に試してみるのもいいかもしれません。
あと、SynScan Proではなく、ただのSynScanもアップデートされていますが、こちらはProを単に機能制限しただけのようなものです。その機能制限の中にはワンスターアラインメントなどあって然るべき機能も含まれて制限されてしまっているので、私は今はProの方しか使っていません。SNS上には、Proでない方でどうしても解決しなかったトラブルが、ショップの方の助言でProにしただけで一発で解決したという例もあるみたいなので、何か理由がない限りPro版を使う方がいいのかと思います。
接続の確認
今回の動作条件は、AZ-GTiを使ったプレートソルブをするために、PCにSynScan ProとSharpCapがインストールされていて、それぞれをASCOM環境で接続するためにASCOMプラットフォームがインストールされていることとします。プレートソルブはASTAPもしくはASPSを使います。最新のSharpCapではPlatesolve3もサポートしているので使えるかもしれません(私はまだ未検証)。
1. SynScan ProとAZ-ZTiの接続
まずはSynScan ProとAZ-ZTiの接続がきちんと確立されているか確認します。接続方法はデフォルトのWiFiを使っても、オプションのケーブルを使った有線でも、どちらでも構いません。プレートソルブをするためには「PC上の」SynScan ProとAZ-GTiを接続することが必要で、最初はスマホやタブレットのSynScan Proでの接続でも構いませんが、プレートソルブ時、より正確にいうとSharpCapと接続する時にはPC上で動いているSynScan Proとの接続が必要になります。
経緯台モードか赤道儀モードかはどちらでも構いません。自分が設置している状態に合わせてください、どちらのモードでも正しくプレートソルブができます。
一つ重要なことが、緯度経度情報が正しく入っているかです。SynScan Pro上で「設定」から「位置情報」を見て、きちんと緯度経度が入力されている確認します。
PCはGPSを持っていないので、位置情報を自動的には取得できないことが多いです。GPSを持っていなくてもインターネットから位置情報を獲得することもできますが、正しい位置にならない場合もありますので、自分で数値で確認するのが確実です。ここが大きく間違っていると、プレートソルブも初期アラインメントも全然違った方向に行ってしまいます。関連した注意ですが、最初スマホやタブレットのSynScan Proに接続して正しい位置情報が入っていると思っても、PCに切り替えた時にはその情報は引き継がれません。なので、PC上のSynScan Proで位置情報を確かめるようにしてください。
2. SharpCapとSynScan Proの接続
次にSharpCapとSynScan ProをASCOM経由で接続します。ASCOMプラットフォームはASCOMのページから、SynScanアプリ用のASCOMドライバー(2023/9/11現在、2023/9/3のv1.4.0が最新)はSkyWatcherのページからダウンロードしてインストールしてあるとします。
SharpCapの「設定」の「ハードウェア」から「SynScan App driver」を選び、メイン画面右の「望遠鏡制御」の「接続済み」をオンにします。正しく接続されると、AZ-GTiが向いている方向などの数値が出てきます。一つ確認しておくといいのは、その数値が時間と共に動いているか、PC上のSynScan Proの「ユーティリティ」の「情報」を見て、その数値と合っているかを見ることで、きちんと接続されているかがわかります。実際、以前のバージョンでは数値が動かなかったり、全部0だったりして、接続できたように見えてもうまく接続できていないことが何度かありました。今のところ、最新バージョンのSynScan Proでは接続に失敗したことはありません。
SharpCapのプレートソルブの設定
接続がきちんとできていたら、次はプレートソルブの設定の確認です。まず、SharpCapの「設定」「プレートソルブ」画面を見ます。
ASTAPもしくはASPS、もしくはその両方がインストールされているでしょうか?インストールされている場倍は、上の画面のように下の方にFoundとかでますが、まだインストールされていない場合は、どちらか、もしくは両方ともインストールしてください。「プレートソルブアプリケーションの選択」で選択することも忘れないでください。お勧めはASTAPですが、たまにASTAPだと解決できなくて、ASPSだと解決できることがあります。でもASPSは遅いので私は普段使いはASTAP、どうしてもダメな時はASPSとしています。
重要なことの一つ目は、焦点距離がきちんとあっているかです。これが実際の鏡筒と大きく間違っていると、どうやってもプレートソルブで位置解決ができません。
重要なことの二つ目は、下の画像のようにSynScanとの同期方法を4つ目の「マウント位置をオフセットして、天体位置を中央に配置する」を選ぶことです。これまでは2つ目の「マウントを同期し、天体を中央に再配置する」にしてたのですが、SysScan Proが反応せずAZ-GTiが動かないことがありました。4つ目のオプションは今のところほとんどの場合AZ-GTiをきちんと動かせています。
初期アラインメント
準備ができたら、初期アランメントの最中にプレートソルブを試してみましょう。まずはSynScan Proから「アラインメント」を選びます。1スターアラインメントで十分でしょう。出てきたリストの中から、今見えているわかりやすい星を選び、そのまま導入します。今回は木星を選びました。
SynScan Proがターゲット天体に向くまでに、ターゲットまでの差が角度で表示され、数字がどんどん小さくなっていきます。SynScan Proがターゲットの方向に向いたと思い込んだ時に下のような画面になります。
ここで、SharpCapの画面にターゲットの星が出て来ればいいですが、出てこない場合はプレートソルブの出番です。上の画面で書いてある「マニュアルで中心に」というのの代わりに、「プレートソルブで中心に」持って行ってやるという意味です。なのでこの時点ではまだ、完了をSynScan Proに知らせる真ん中の「星印の横長ボタン」を押してはいけません。
プレートソルブの実行
プレートソルブはSharpCapのメニューの「ツール」から「プレートソルブ後再同期」を選ぶか、右側パネルの「望遠鏡制御」の方向矢印の左下の方角マークのようなアイコンを押します。
うまくプレートソルブが下位を見つけると、どれだけずれていたかの表示が角度で緑色のバーのところに表示され、自動的にターゲット天体が真ん中に来るようにAZ-GTi下に信号が送られて、下の画面のように実際にターゲット天体が導入されます。
問題はこうならない時です。いろんなケースがあります。まず、以下のようにNo solution foundと出る場合です。2つの原因が考えられます。もし下の画面のように望遠鏡接続のところの数値が明らかにおかしい場合は、SharpCapとSynScan Proとの接続がうまくいっていません。再度接続しなおしてください。再接続でエラーなど出る場合は、SynScan Proをいったん閉じて再度開いてから、SharpCapから接続してみてください。
接続がうまくいっているはずなのにこのエラー場出る場合は、あまり追求せずにターゲット天体を変えてみてください。一度この状態でできる限りのことをやったことがあるのですが、結局どの試みも失敗し、最後あきらめがてらターゲット天体を変えたら、今までの苦労は何だったのかというくらい、一発でプレートソルブが成功しました。なので最近はこのエラーが出たら無駄なことはせずに、素直にターゲット天体を変えるようにしています。
上の問題が解決した時に、次によく出るエラーが、下の画面のような星が「多すぎる」とか「少なすぎる」とかいうものです。でもこのエラー、SynScan Proを最新版にしてから「多すぎる」というのは見なくなりました。今のところだけかもしれませんが、改善されたのかもしれません。星が「少なすぎる」というのは、プレートソルブをうまくやろうとしているが、取得した画像のクオリティが悪い場合に出てきます。雲が多い、空が明るすぎて星がよく見えないなどです。この場合は露光時間を延ばすとうまくいくケースが多いです。
ただし逆に、露光時間を延ばしすぎてうまくいかないこともあります。例えば星が流れてしまう場合です。私は5秒程度が最もうまくいっています。どれだけ星が流れるかは、AZ-GTiの水平出しの精度、見ている方向などによりますので、取得した画面で星が明らかに流れていないか確認してみてください。星が流れない限りは、露光時間は長いほうが有利です。
このエラーが回避されれば、あとはうまくいくでしょう。自動的にAZ-GTiが動き出し、ターゲット天体が画面真ん中近くに来るはずです。
初期アラインメントの完了と、次の天体の自動導入
プレートソルブがうまくいったら、初期アラインメントのマニュアルで中心へもっていくことが完了したことになります。SynScan Proに残っていた初期アラインメント画面の真ん中の星印バーを押すのを忘れないでください。これでプレートソルブを利用した初期アラインメントは完了です。実際に見てみたい天体をSynScan Proから自動導入してみてください。
さて、初期アラインメントで導入したターゲット天体の近くの天体を自動導入する場合は、特に問題なく画面真ん中らへんに来るかと思います。
ところが、遠くの天体を自動導入する場合は画面内に入らないこともあるかと思いますが、その場合もプレートソルブをしてみてください。設定などはうまくいっているはずなので、今度は特に問題なく真ん中に導入されるはずです。ただし自動導入でプレートソルブをしたとしても、AZ-GTiが認識している(遠くに移動した誤差のために間違って認識されている)位置がアップデートされるわけではないです。そのため、次の天体がもし今導入したものの近くにあったとしても、同じような誤差のために画面内に入ってこなくて、再度プレートソルブをする必要があるかと思います。そんな場合はSynScan Proでアラインメントを選んで、今見ている方向の近くにある星でアラインメントを取り直してみてください。同じように「マニュアルで中心に」と出たところで再びプレートソルブをして、うまく導入されたら初期アランメントを完了して、SynScan Proが認識している位置をアップデートしてみてください。こうすることで、その付近の天体の自動導入できちんと画面内に入るようになるはずです。
トラバースの場合
今回AZ-GTiだけでなく、少し前に発表されたSynScan仲間のトラバースもじっくり試してみました。
上の記事でも少し書いていますが、この記事で試した次の日の観望会でも接続やプレートソルブにトラブルがありました。その後自宅などでも何度か試していたのですが、うまくいく時とうまくいかない時の差がかなりあり、観望会本番で使うのは少し怖いという印象でした。少なくともAZ-GTiと比べると安定度の差はあったかと思います。
ところが、今回SynScan Proのバージョンを最新のものにアップデートしてからは、トラバースで以前経験したようなトラブルは今のところ一切なくなっています。少なくとも、もうAZ-GTiとの差は感じられないレベルの安定度です。
まだ何度か検証する必要はあるかと思いますが、観望会での実戦投入も含めて、実際に使っていけるレベルかと思いますので、今後どんどん活用していきたいと思います。
これ以降は、古いバージョンのSynScan Proで試したことも含めた補足記事です。ほとんど役に立たないと思いますが、参考がてら載せておきます。
Device Hubは関係なさそう
(古いSynScan Proで)AZ-GTiとトラバースを交互に使用するなど、複数台からの接続がうまくいかない場合、ASCOMのDevice Hubを使うといいという情報を得ました。Device Hubは複数の各機器のASCOMドライバーを管理し、接続を制御するという中間的なハブの役割をするものです。ダウンロード場所が分かりにくかったのですがここになります。
前回不安定だった状況を再現し、それがDevice Hubで解決するか試しましたが、残念ながらSharpCap上でASCOM Driver for SynScan Appに直接つなぐ方法と、Device Hubを通してSharpCap上でASCOM Driver for SynScan Appにつなぐ場合では、明確な違いを見ることはできませんでした。
SynScan Proのバージョン
PC上のSynScan Proですが、最新より少し前の2.3.9と(私が持っている古い)1.9.20では明確な違いがありました。今回のSynScan Proの最新版で再びオンにしたというちょっと謎のPAEに関連するかもしれません。 SharpCapから接続してAZ-GTiを動かすことまでは両方とも問題なくできます。ですが、プレートソルブになると2.3.9でAZ-GTiにフィードバックしようとするところまでは行きますが、どうやってもAZ-GTiが反応しないことがありました。それを1.9.20にしたところ、何の問題もなく動くことが何度かありました。1.9.20の方がどうも安定に動くのは確かなようです。
このことは、私だけでなくほかの方も同様の指摘をされていたので、偶然とかではないと思います。最新のSynScan Proのリリースノートにあったように、PAEをバージョン2台のどこかでオフにして再び最新版でオンにしているというので、もしかしたらこれがバージョン1台とバージョン2台の安定性の違いに関係していたのかもしれません
プレートソルブトラブルの振る舞い
もう一つ気づいたことがあります。プレートソルブの最初の段階ですぐに「星が多すぎるのでは」とかのエラーが出て全く動かないときですが、どうも探索範囲が毎回15度程度で止まってしまいこのエラーが出ます。うまくいかない時は、SharpCap上で認識されている鏡筒の向きと、撮影した画像が実際に向いている向きとで大きな違いがあるときに、このエラーが出るようです。問題は、実際にはSynScan Pro上では目標天体の近くを向いていると認識されていても、SharpCapがSynScan Proとうまく接続できていなくて、SharpCap上では全然違う方向を向いていると認識された場合は、このエラーが出るようです。
このエラー、SharpCapのメニューからプレートソルブ実行時に選択できる2つのうちの2つめの「同期までしようとする」とすぐに出るのに、一つ目の「同期せずにプレートソルブだけ試す」と出ないこともあるので、どうも同期までしようとすると15度までの探索とかの制限がかかっているからのかもしれません。
その時やらかしたのですが、SynScan Proの緯度軽度情報を間違っていたり、前回の情報が残っていたりで鏡筒のホームポジションがずれていた場合など、そもそもSynScan Proの方が実際の向きと大きく乖離していると、同じ状況に陥ります。色々触っていると、意外に何度かSynScan Proの段階で間違っていることがありました。この場合、SharpCapといくらうまく接続できていてもダメみたいです。このことの自戒も含めて、今回の記事では注意事項にそのようなことを入れています。
まとめ
今回のSynScan Proのアップデートは、AZ-GTiのプレートソルブに関してかなりの改善がなされたように思います。実際、セレストロン系の赤道儀でこれまでプレートソルブで不安定だったことは一度もなかったので、やはりこれはSynScan系のソフト的な問題だった可能性が高いと思っています。
あと、ASCOMドライバーに関してはアップデートに気づかなくて一つ前の1.3.1を使い続けていましたが、特に不具合は感じませんでした。更新日がSynScan Proとも近いので、もしかしたらアップデートした方がより安定になる可能性もあるかと思います。
あと、これまでのプレートソルブに関するトラブルは、SkyWatcherの代理店であるシュミットさんの方にも何度か報告させていただいていて、今回SynScanおよびSynScan Proがアップデートされた際には、いち早くプレートソルブ関連が改善された可能性があるので試してみて欲しいとの連絡を受けました。私からの報告が実際にフィードバックされたかどうかはわからないのですが、現実にアプリが改善され、連絡までしてもらえたのはとてもうれしく、ショップとしての真摯な対応に感謝したいと思います。また、実際に最新バージョンを試してから記事にするまでに、少し時間がかかってしまったことをお詫びします。
さて、これでAZ-GTiだけでなく、トラバースでのプレートソルブまで実用レベルに達したようなので、カバンの中に余裕で入るミニマムセットでの電視観望をどんどんやっていきたいと思います。
コメント
コメント一覧 (12)
私はSynScanPro(赤道儀モード)の初期アライメント時にASIAIR Proのプレートソルブを使っていたのですが、昨年のSynScanProのアップデート(正確な時期は失念)の後からプレートソルブができなくなりました。ASIAIR Proが全く見当違いな方向でターゲットを探すようになったのです。
少し突っ込んで調べてみると、ASIAIR ProがSynScanProから受け取る架台の座標情報が赤経方向で+90度ずれてしまうことがわかりました。
SynScanProを立ち上げなければ(ASIAIR Proと架台を直接接続すれば)架台の座標情報がASIAIR Proに正しく伝わるので、それ以降はSynScanProを使わずに(アライメントをあきらめて)ASIAIR Proのプレートソルブだけを頼りに電視観望を続けていました。
初期アライメント時にプレートソルブを使えるかどうかは電視観望システムの使い勝手に大きな影響があるので、ぜひ使える環境にしたいと考えています。
今回の投稿内容から類推すると、最新版のSynScanProにすれば状況が改善するかもしれません。
試してまたご報告します。
すみません、このコメント読み逃してしまっていたようです。普段はコメントがあるとメールで連絡が来るのですが、ちょうど職場の停電があってサーバーが落ちている時に連絡が来ていたのかもしれません。
SynScan Proのアップデートでおかしくなるのは確かにあるのかとは思いますが、本当に90度ずれているとしたらかなり大きなバグですね。ASIAirは使ったことがないのですが、もしかしたら他でも同様の影響が出ているのかもしれません。SynScan Proの最新版でもしうまく行くようになったら是非教えてください。
ところで、座標情報が90度ずれていたっていうのは、どうやって分かったのでしょうか?技術的に興味があります。
アップデート前後のアプリのバージョンは次の通りです。
SynScanPro:1.19.0->2.3.3
ASIAIR:2.0->2.1.1(ファームウェアは10.46->10.74)
例えばSynScanアプリで確認した赤経/赤緯が14h39m02s/-16°10'23"の時に、ASIAIRアプリの「Mount Info」で表示されるデータではRA 20h27m59s, DEC -19°43'57"となり、約6時間相当のずれが生じていました。この状態でASIAIRから天体の自動導入をかけると、約90°ずれた方向を向いて止まりました。各アプリやASIAIR、AZ-GTi本体それぞれの再起動、iPhoneの再起動などをやっても状況は改善しませんでした。
ASIAIR及びAZ-GTiを購入した販売店に確認すると、ZWO側については情報が得られるがSynScan側(SkyWatcher側)については情報が得られないので、どこに不具合があるのかは確認できないとのことでした。それゆえこの問題については半ばあきらめていました。
SynScanのバージョンアップ後の動作については確認でき次第ここに再度報告します。
いろいろ情報ありがとうございます。こういう他の方からの情報の積み重ねが結構大事だったりします。
やはりバージョン1台はよかったのに、2台になって変わってしまったようですね。
90度ずれの確認の仕方もわかりました。ありがとうございます。
最新バージョンになって諸々直って可能性が高いと思います。またうまくいったら教えてください。
プレートソルブが不安定ということですが、その後に出たSharpCap専用のプレートソルブ「SharpSolve」は試されましたでしょうか?下記ページをご参照ください。
http://hoshizolove.blog.jp/archives/50681983.html
もしまだなら、まずはこちらを試してみてください。圧倒的に安定になっています。
最大の後悔はWin11 へのアップグレード。10日以内だと簡単に10に戻せるようですが、過ぎるとほぼ無理みたい。デフォルトの10日を60日に延長もできたようですが、何も考えずにやっちゃたので今更どうしょうもないです。Sam さんはその後問題なくPlate Solve やられているのでしょうか?
状況教えて頂ければ有り難いです。
SURFACE8のWIn10でもSURFACE9のWin11でも普通に動いています。ASCOMドライバーも最新版がダメという話もあれば、最新版でやっと動いたという話も聞いています。なので一概には言えないかと思います。
今の感触では、SharpCapはSharpSolveを使い、SynScan Proを最新版を使えば、Windowsを含めてASCOMなど他のバージョンは余り影響しないという印象です。あまりバージョンにこだわるのも本末転倒なので、まず欲しい環境(WIn10 or 11)にして、SharpCapとSynScan Proは最新で固定にして、あとはできるか(まずは最新バージョンから)どうか試すというのではいかがでしょうか?多分普通に動くと思います。
もし動かなかったらまたご相談ください。Zoomとかで一緒に見ながらやる手もあるかと思います。その際はX(Twitter)で「ほしぞloveログ」で検索してDMをいただければ折り返し返答します。
その後に、SynScan Proを立ち上げて、改めて右パネルの「望遠鏡制御」のところの「接続済み」をチェックしてSynScan Proに接続してみてください。ここでエラーが出る場合は、SynScan Proを一度立ち上げ直してから、再度「接続済み」を押して接続してみてください。受け手のSynScan Pro側がダメでエラーになる場合が多々あって、これはSynScan Proの立ち上げ直しでリセットされるからです。これでもダメなら、何か他に原因があります。
上記テストは接続だけのことなので、昼間でもできるはずです。また、SynScan Proとの接続が最初からできなければSharpSolveにしても同じことなので、まずはこちらを解決することかと思います。