先週末の観望会の電視観望でプレートソルブがうまくいかずに大敗を喫したのですが、その原因を調べました。




機材など

一例ですが、私が使っている機材を今回の検証の前提条件として書いておきます。必ずしも同じ状況にしなくても、同様のトラブルはありえると思いますので、参考にしてください。

  • ハードウェア: 鏡筒(FMA135)、CMOSカメラ(Uranus-C)、AZ-GTi or TRAVERSE、三脚、PC(Surface 8, Surface 9, StickPC)
  • ソフトウェア: OSはWindows 10 or 11、SharpCap 4.1、SynScan Pro 231 or older、ASCOMプラットフォーム 6.1、SynScanアプリ用ASCOMドライバー 1.31 or 1.30、カメラドライバーなど

状態:
  1. AZ-GTiをスマホなどのSynScan Proを使って操作する準備ができている。
  2. PC上にSharpCapがインストールされていて、電視観望などができる準備ができている。
  3. PC上にSynScan Proがインストールされ、AZ-GTiに接続して操作する準備ができている。
  4. PC上にASTAPやASPSなどのプレートソルブ環境がインストールされている。
  5. SharpCapからASCOMを介して、SynScan Proに接続する。
  6. SharpCapを使ってプレートソルブをする。
今回は特に1、3、5、6がトラブル箇所で、中でも3と5、特に5が不安定な箇所です。


最初に確認しておきたいこと

まず最初は基本的なところで、PC上のSynScan ProとAZ-GTiがWi-Fi経由できちんと接続されているかです。接続ができているかと思っていても失敗している、もしくは接続していても知らない間に接続が切れていることなどもよくあります。チェックすべきことは
  • PC上のSynScan  Proの「ユーティリティ」の「情報」を見て、きちんと数字が動いているか?スマホやタブレットだけで繋がっていることがあります。
  • スマホとPCの両方から同時にAZ-GTiに接続していないか?
  • PC上で二つ以上のSynScan  Proが立ち上がっていて、重なってAZ-GTiに接続していないか?
  • 観望会などで間違えて他人のAZ-GTiに接続していないか?SynScan  Proの矢印ボタンを押して、きちんと自分のAZ-GTiが回転するか見ます。
などです。ここまではバグとかの可能性はほとんどないので、自分の設定ミスの可能性が高いです。でもこれ以降は自分の設定ミスというより、バグに近いものがたくさんあることがわかりました。ここまでで、きちんとPC上のSynScan ProとAZ-GTiが接続されていることが、ここからのトラブルシューティングの前提条件となります。


トラブル1: SharpCapとSynScan Pro接続の不安定性

ここからはさらにややこしい状況で、この不安定性はバグの一つかと思われます。

現象
  • SharpCapからASCOM経由でAZ-GTi(実際にはSynScan Pro)に接続しようとするとエラーメッセージが出て接続できない。
  • もしくは一旦SharpCapから接続できても、SharpCap上の矢印ボタンからAZ-GTiが反応しない。
  • もしくはSharpCapから接続できていたものを一旦外して、再度接続しようとするとエラーメッセージが出て接続できなくなる。

エラー
  • エラーメッセージはASCOMドライバーからで、下のように接続先が存在しないとか言われる。
スクリーンショット 2023-06-21 204049


状況確認
  • PC上のSynScan Proの「ユーティリティー」「情報」から、方位などの数字が動いているかどうか見る。止まっていたら(Wi-Fiなどの問題で)すでにPC上のSynScan ProとAZ-GTiの接続が切れているので、特に前項を見ながら接続をきちんと確認する。
スクリーンショット 2023-06-21 204520
  • SharpCapからまだ接続されいるなら、SharpCapのタブの望遠鏡パネルの数字が動いているかどうか見てみる。止まっていたらすでにSharpCapとPC上のSynScan Proの接続は確立されていない。次の解決策を試す。
  • SharpCapとの接続が確立されていないなら、次の解決策を試す。

解決策
  • PC上のSynScan Proを立ち上げ直す。わざわざ画面上部をクリックして「接続を切る」とかをする必要はありません。そのまま右上のxボタンを押してバチッと閉じてしまっていいです。


トラブル2: プレートソルブした時に解がない

トラブル1までで、ShaprCapとSynScan Proとの接続はうまくいっているはずです。その後プレートソルブをしようとして、以下画面のように「プレートソルブに解がない」とか言われる場合は、それでも前提のSynScan ProとAZ-GTiの接続がうまくいっていないことが多いです。再度前項目をチェックするなどして、SynScan ProとAZ-GTiの接続を確立、チェックしてください。

次にチェックするのが、ShaprCapとSynScan Proとの接続です。普通は右パネルの「望遠鏡制御」のチェックボックスを押すて5秒くらい待つとチェックボックスが出て接続が確立されます。この時点でチェックマークがつかない場合はトラブル1などを見直します。問題はチェックマークがつくのに、実際には接続されていない場合です。

スクリーンショット 2023-06-21 204001
その証拠の一つが、上の画面の右下の接続状況を示すパネルです。接続のチェックマークがきちんと出ていますが、AZ-GTiからの数値の多くが0になっていて明らかにおかしいです。接続されたと見えて実は接続できていないケースで、バグの一つです。

最初接続されても、途中で接続が切れて、右下の接続状況を示すパネルの数値が止まってしまっている場合などもこのケースですが、これはバグというよりは例えばAZ-GTiの電池がなくなったとか、Wi-Fiがなんらかの原因で切れたとかの、ミスの部類になります。

解決方法ですが、とにかく右下の接続状況を示すパネルの数値がきちんと動き出すまで、PC上のSynScan Proを立ち上げ成すなどして接続を繰り返してください。どうしても上手くいかない時は、ASCMOMドライバーのバージョンを落とすなどして入れ替えたり、SynScan Pro のバージョンを落とすなどして入れ替えたりしたら途端に直るということを何度か経験しました。ただし、どのバージョンだと動くとか(3種のPCで試しましたが)法則は無いようで、どうも入れ替えたこと自体が何か書き換えて回避するような感じです。


トラブル3: プレートソルブが全く進まない

現象
  • プレートソルブすると「星が多すぎるので、露光時間を減らすとかしろ」とエラーが出て全く進まない。実際の画面の星の数はそんなに多くはない。
キャプチャ_02


状況
  • PC上のSynScan Proの緯度経度情報が大きく間違っている。
  • AZ-GTiが向いていると思っている方向と、実際の方向があまりに違う。

解決策
  • PC上のSynScan Proの緯度経度情報を確認します。「設定」の「観測位置」から確認できます。PCは普通GPSユニットはもっていないことが多いので、マニュアルで数値を入れる必要があります。スマホなどのコンパスアプリでその場の緯度経度の値を取得できるかと思います。
  • 緯度経度を合わせ直したら、再度一からアラインメントをやり直します。
  • 星が多いというのはおそらくノイズをカウントしてしまっています。エラーメッセージとは逆ですが、まずは露光時間を伸ばしてみてください。

トラブル4: 同期なしプレートソルブはできるが、同期ありだと何も進まない

これはかなりたちの悪いバグです。

現象
  • 同期なしのプレートソルブはうまくいくのに、同期ありだとプレートソルブすることなく「星が多すぎる」とエラーが出る。
  • ASTAPだと上記の状況だが、ASPSだと同期ありもとりあえずプレートソルブには進むが、次のトラブル5のように実際には同期できない。

原因
  • トラブル2のところでチェックしたように、右下の接続パネルの数値が動いていて一見うまく接続できているように見えても、実はまだ内部で接続がうまくいっていない。
  • PC上のSynScan用のASCOM driverが悪い。

解決策
  • トラブル2でやったように、ShaprCapとSynScan Proの接続を何度かやり直す。
  • ASCOM  driverのバージョンを変える。最新版(1.31)は明らかに挙動がおかしかった。1.30戻したらエラーは出なくなり、プレートソルブを継続するようになった

ハマってしまうと、一番時間がかかるところだと思います。不思議なことに、全くトラブルなしで行く場合もあれば、接続をし直して一度うまくいくとそれ以降は問題が一切出なくなったり、何度接続し直してもうまくいかずに、ASCOMドライバーのバージョンを一つ(1.31から1.30)に落としたら途端に上手くいったとか、とにかく現象も解決策も不安定なバグです。

あと、ドライバーなどの以前のバージョンを落とすには

https://inter-static.skywatcher.com/downloads/setup_synscan_app_ascom_driver_131.exe



https://inter-static.skywatcher.com/downloads/setup_synscan_app_ascom_driver_130.exe

などとウェブブラウザーのアドレスのところを書き換えてアクセスすると、そのファイルが存在すれば落とすことができます。

SynScan Proの場合は

https://inter-static.skywatcher.com/downloads/synscanpro_windows_238.zip



https://inter-static.skywatcher.com/downloads/synscanpro_windows_220.zip

などと書き換えます。


トラブル4: 同期しようとするが、実際には同期されない

これもかなり解決しにくいバグです。

現象
  • 同期なしのプレートソルブはうまくいって、同期ありだと何度ずれているという計算結果まで出てこれから同期すると表示されるのに、実際にはAZ-GTiが反応せずに同期されない。
  • ASTAPでもASPSでも同じ状況。
スクリーンショット 2023-06-21 211349
ここまで行くのに、なぜが経緯台側が動いてくれない。

原因
  • ASTAPでもASPSでも同じ状況なので、プレートソルブソフトの問題ではないと推測。SharpCapの信号を出す部分か、その信号を受け取る部分が悪いと推測。結局PC上のSynScan Proが悪かった。 

解決策
  • トラブル2でやったように、ShaprCapとSynScan Proの接続を再度やり直す。
  • SynScan Proのバージョンを最新版から戻したら解決した。

はっきりした解決策は、いまだに分かっていません。再接続を何度かやったり、PC上のSynScan Proを入れ替えると突然直ったりしました。

一つ言えることは、どうも全体的にSharpCapのバグというよりは、ASCMOドライバー、SynScan Pro側のトラブルという感触です。SharpCapのバージョンもいくつかえて試したりしましたが、何ら改善も悪化もしませんでした。なので疑うとしたら ASCMOドライバー、SynScan Proかと思います。あとAZ-GTiのファームウェアを赤道儀化をかなり昔にして以来アップデートしていないので、それが問題の可能性もありますが、今回は少なくともAZ-GTiの方はいじらずに、また、TRAVERSEのファームは最新に近いはずなので、あまり関係ないと思っています。


ASTAPは動かずASPSだと動く

うまくいくならASTAPのほうが速いので、私は普段ASTAPを使うのですが、ASTAPだと解まで辿り着かなくて、ASPSだと解決して同期までできるるということが何度かありました。でも不思議なことに、一度ASPSで同期までできると次はASTAPでも同期までできたりします。まだ感覚的な範囲なのですが、どうもAZ-GTiで認識している方向と、実際の方向に大きな差があったりするとASTAPだとうまくいかないことがあるような気がしています。でも気のせいかもしれません。とにかくASTAPでうまくいかない時はASPSも試してみてください。ちなみに、ASPSがうまくいかなくてASTAPだけ上手くいったことは今のところありません。なので普段使いでASPSでもいいのかと思います。ただし遅いです。


まとめ

もちろん、今回のトラブル回避が全てではなく、環境によっては再現できなかったり、違った振る舞いになることもあるかと思います。この情報を鵜呑みにするのではなく、トラブルに出会った場合は、こんなところが怪しい可能性があるという程度で参考にするのがいいのかと思います。基本的にトラブルさえなければ必ずプレートソルブは動きます。

今回は3台のPCで試したところ、とりあえず飛騨コスモス観望会で発生したトラブルを全て再現できて、無事にどのPCでも解決しました。解決する手段は必ずあるということです。でもその解決策もまだまだ不安定で、ソフトやドライバーのバージョンを変えるとしても最新版が必ずしもいいわけでもなさそうです。さらに古いものも、どのバージョンがいいかまでは検証できませんでした。途中でも書いたのですが、入れ替えること自体がどこかの値を書き直して、それで解決している可能性もあります。

今回の経験から、まずはSynScan ProとAZ-GTiの接続をきちんと確立すること、緯度経度情報が重要なことなどがわかりましたし、さらにはShapCapとSynScan Proの接続の確立が一番大切なこと。むやみやたらに最新版にバージョンアップしないことが重要なようです。もし安定に動いているならそれを保つこと。アップデートする場合は、必ず時間のあるきに行い、実際の星空でテストすることが大事かと思います。安定に動いていても、何かの拍子に不安定になることもあります。

今思うと、AZ-GTiだけなら安定だったのが、2台目としてTRAVERSEもつないだことが突然のトラブル発生の気もしています。最初TRAVERSEで発生したので、一度はTRAVERSEを疑いましたが、同じことがAZ-GTiで起ったのでTRAVERSEのせいというわけでも、かと言ってAZ-GTiのせいというわけでもなく、複数台を運用したことが問題の可能性が高いのかと思われます。おそらくですが、複数台でどこかのアドレスの値を共有しているのが原因かなと思います。

今回、一応全部解決はしましたが、明らかにバグと思われる部分もあるので、できればメーカーの方で複数台のテストも十分にしていただけると、ユーザーは助かるかなと思います。特に、SynScan Pro単体では問題には見えなくても、ASCOM経由で接続すると不安定さが露呈します。3台のPCで同様のトラブルが確認できたので、偶然とかではないはずです。AZ-GTiはかなりの数が出ているので、複数台を使っている方も少なくないかと思います。ちなみに、Celestronの赤道儀を3種をこれまで3台程度のPCで入れ替えて使っていますが、同様のASCOM経由の接続でのプレートソルブで、このようなトラブルは一度も遭遇したことはありません。