3月末、茨城県石岡市にある「カフェぽうざ」に行ってきました。おそらく日本では唯一の、食事やコーヒーを楽しみながら、電視観望を実演してくれるカフェです。
事の発端は、半年ほど前に天リフ超会議の電視スペシャルで基調講演で話した際に、YouTube 経由でとても丁寧なコメントを頂いたことです。天リフ編集長がこんなコメントがありましたと、わざわざ知らせてくれました。内容はというと、細かいことはYouTubeのコメント欄を直接読んで頂いた方がいいと思いますが、大雑把には
とのことです。このコメントには返信することもできたので、私の方も「いつか立ち寄らせて下さい」と返事をさせて頂きました。今回関東の方に行く用事があり、やっとその約束が実現したというわけです。
カフェは住宅街の中にあり、青い壁と煙突が目印になっています。駅から離れているために車で来ることになるかと思いますが、店の前が駐車スペースになっています。
カフェは現在は週1回の営業で、基本は日曜のランチから夕方くらいまでとのこと。電視観望の実演では夜の営業があり、今のところ2ヶ月に1回程度の頻度だそうです。お客さんは主に、地元の方と遠方から車で来る方が多く、星空実演の日は予約ですぐに埋まってしまうそうです。
玄関を入ります。
中はとてもおしゃれな空間になっていて、暖炉もあります。
反対側を見ると早速、目の前には望遠鏡が!
「カフェぽうざ」のマスターですが、電視観望を始めたというので初心者の方と思っていたら、子供の頃から星が好きで、高校のころは天文部、銀塩で撮影もされていた大ベテランの方でした。震災で天文から遠ざかってしまったのですが、少し前にカフェを始められて、天文復帰された際にちょうどいいというので、カフェで電視観望を始めたとのことです。
復帰直後は浦島状態で、断念した時の天体写真撮影を念頭に再開したとのことですが、CMOSカメラが凄いことになっていて、天文の世界全体が大きく進化していてびっくりしたそうです。ASI385MCからはじめて、電視観望が面白いと本格的にASI294MC Proを購入し、今はこちらをε160に取りつけてメインに使っているそうです。
カフェのオペレーションをしながらの電視観望操作なので、オートフォーカスのEAFは必須。星雲と銀河でフィルターを切り分けるためにもホイールでの自動切り替えも必須。カフェの中にいながら外に置いた機器をいじるので、これらの機器を使い全てリモート操作だそうです。一人で簡単に操作するためASIAirを使っていて、安定動作させるために接続はカフェの中から庭先まであえて有線LANにするなど、かなり独自に工夫されています。お客さんが居ながらの操作なので、実際には相当大変かと思います。最初の頃はトラブル続きで、やっとこの形で安定になってきたそうです。
晴れていればその日、その場で見えている天体を、上の写真にも少し写っている大きなスクリーンに映し出すそうです。晴れていればいいのですが、天気が悪い時に備えてこんな星空メニューを作ってあります。
電視観望で見えない時はこのメニューに載っている天体を、料理を注文するかのように選んでもらい、スクリーンに映し出すそうなのです。その映し出す写真は事前に撮っておくことになるので、その準備が大変で今のところは2ヶ月に1度程度の開催にしているそうです。電視観望での星空実演は昨年夏からで、まだ1年に満たないくらい、一回りしたら写真のストックもできてメニュー作りも楽になるので、もう少し回数を増やせるかもとのことでした。
立ち寄ったのは平日で営業日ではなかったのですが、ランチで出しているというメニューをご馳走になりました。
鶏肉は麹に漬け込んだものということで、柔らかくてとてもおいしかったです。
パスタはペペロンチーノで、ニンニクを焦がさないように作った本格的なもので、地ビールとよく合い絶品でした。
マスターはコーヒーにもかなりこだわっているとのことです。この日出して頂いたのはエチオピア産の豆を使ったもの。カップも好みのものを選ばせてもらえました。
奥様が焼いた手作りケーキと合わせて、とても美味しくいただけました。
食事が終わる頃には日も沈み、星空観望の時間になります。マスターも私も電視観望の準備です。
私はすぐ隣でいつものFMA135とUranus-Cです。
この日は少し雲があり、上弦を過ぎた月も出ていて明るかったので大したものは見えませんでしたが、それでも雲間からオリオン大星雲、バラ星雲、しし座の三つ子銀河など、いくつか見ることができました。
実際の電視観望もよかったのですが、それよりもマスターと色々お話しできたことがとても楽しかったです。お互いの星歴や機材のこと、カフェで電視観望に行き着くまでの話、家族のこと、かなり話し込んでしまいました。
実はマスターが機材を準備している間、奥様ともかなりお話しさせて頂いたのですが、マスターはとても寡黙な人であまり感情を出さないタイプだったそうです。でも私の印象だととても気さくに話してくれるので「え?、今日はお会いした時からずっと話してくれてますよ」と言ったら、カフェで星の解説をし出したらとても饒舌に話すのでビックリしたと言うのです。しかも今日私がくると聞いてからここ何日かずっと嬉しそうで、もう社会人になっている娘さんたちにも喜んで話していたとのこと。わざわざ遠くから来てくれた訪問客へのお世辞なのかもしれませんが、私もとても嬉しくなりました。
雲が出てきて電視観望も終わりにしたあと、日本酒をご馳走になりました。石岡市の地酒とのことですが「渡舟」というお酒でとにかくフルーティー。物凄く上品なジュースのようで、アルコールにあまり強くない私ですが、全く抵抗なく飲むことができます。なんでも地元茨城の酒米を使っていて、天候などの影響を受けやすく昭和初期に一度絶てしまった品種を、研究所に残っていた種籾から復活させたということです。まるで「夏子の酒」の中で復活させた酒米と同じような話です。
このお酒を飲みながらもずっとマスターと話していたのですが、そもそも地元での星仲間もほとんどいないとのことで、星のことで話す相手がこれまであまりいなかったそうです。同じ趣味で話すのは、それはもう楽しくないはずはないですよね。星まつりもまだ参加したことがないというので、いつか星まつりで、奥様とも一緒にお会いできたらと約束しました。
夜もかなりふけてしまい、ありがたいことに石岡駅まで送っていただきました。新しい星仲間とのとても楽しかった時間、この趣味を続けていればこれからも必ず関わり続けることができるはずです。星まつりでの再開を近い、この日はお別れとなりました。
帰り際にマスター手作りのガラス板にエッチングしてLEDをはめ込んだという「ぽうざ」の看板が青く綺麗にかがやいていました。
もし近場で電視観望に興味がある方は、ぜひとも「カフェぽうざ」を訪れてみてください。とても楽しい時間になるはずです。
その際は「開催日が限られてもいますので、あらかじめご予約して下さい」とのことです。
事の発端は、半年ほど前に天リフ超会議の電視スペシャルで基調講演で話した際に、YouTube 経由でとても丁寧なコメントを頂いたことです。天リフ編集長がこんなコメントがありましたと、わざわざ知らせてくれました。内容はというと、細かいことはYouTubeのコメント欄を直接読んで頂いた方がいいと思いますが、大雑把には
「....この夏からカフェ店内で電子観望を楽しんでもらう「星空カフェ」を開くまでになりました。食事や飲み物メニューとならんで写真付きの星空メニューをテーブル上に用意し、星を注文してもらうサービスです。
....様々なノウハウを公開してくださったSamさんをはじめ天リフチャンネルのオーナーさんや多くの方々のおかげと感謝しています。」
とのことです。このコメントには返信することもできたので、私の方も「いつか立ち寄らせて下さい」と返事をさせて頂きました。今回関東の方に行く用事があり、やっとその約束が実現したというわけです。
カフェは住宅街の中にあり、青い壁と煙突が目印になっています。駅から離れているために車で来ることになるかと思いますが、店の前が駐車スペースになっています。
カフェは現在は週1回の営業で、基本は日曜のランチから夕方くらいまでとのこと。電視観望の実演では夜の営業があり、今のところ2ヶ月に1回程度の頻度だそうです。お客さんは主に、地元の方と遠方から車で来る方が多く、星空実演の日は予約ですぐに埋まってしまうそうです。
玄関を入ります。
中はとてもおしゃれな空間になっていて、暖炉もあります。
反対側を見ると早速、目の前には望遠鏡が!
「カフェぽうざ」のマスターですが、電視観望を始めたというので初心者の方と思っていたら、子供の頃から星が好きで、高校のころは天文部、銀塩で撮影もされていた大ベテランの方でした。震災で天文から遠ざかってしまったのですが、少し前にカフェを始められて、天文復帰された際にちょうどいいというので、カフェで電視観望を始めたとのことです。
復帰直後は浦島状態で、断念した時の天体写真撮影を念頭に再開したとのことですが、CMOSカメラが凄いことになっていて、天文の世界全体が大きく進化していてびっくりしたそうです。ASI385MCからはじめて、電視観望が面白いと本格的にASI294MC Proを購入し、今はこちらをε160に取りつけてメインに使っているそうです。
カフェのオペレーションをしながらの電視観望操作なので、オートフォーカスのEAFは必須。星雲と銀河でフィルターを切り分けるためにもホイールでの自動切り替えも必須。カフェの中にいながら外に置いた機器をいじるので、これらの機器を使い全てリモート操作だそうです。一人で簡単に操作するためASIAirを使っていて、安定動作させるために接続はカフェの中から庭先まであえて有線LANにするなど、かなり独自に工夫されています。お客さんが居ながらの操作なので、実際には相当大変かと思います。最初の頃はトラブル続きで、やっとこの形で安定になってきたそうです。
晴れていればその日、その場で見えている天体を、上の写真にも少し写っている大きなスクリーンに映し出すそうです。晴れていればいいのですが、天気が悪い時に備えてこんな星空メニューを作ってあります。
電視観望で見えない時はこのメニューに載っている天体を、料理を注文するかのように選んでもらい、スクリーンに映し出すそうなのです。その映し出す写真は事前に撮っておくことになるので、その準備が大変で今のところは2ヶ月に1度程度の開催にしているそうです。電視観望での星空実演は昨年夏からで、まだ1年に満たないくらい、一回りしたら写真のストックもできてメニュー作りも楽になるので、もう少し回数を増やせるかもとのことでした。
立ち寄ったのは平日で営業日ではなかったのですが、ランチで出しているというメニューをご馳走になりました。
鶏肉は麹に漬け込んだものということで、柔らかくてとてもおいしかったです。
パスタはペペロンチーノで、ニンニクを焦がさないように作った本格的なもので、地ビールとよく合い絶品でした。
マスターはコーヒーにもかなりこだわっているとのことです。この日出して頂いたのはエチオピア産の豆を使ったもの。カップも好みのものを選ばせてもらえました。
奥様が焼いた手作りケーキと合わせて、とても美味しくいただけました。
食事が終わる頃には日も沈み、星空観望の時間になります。マスターも私も電視観望の準備です。
私はすぐ隣でいつものFMA135とUranus-Cです。
この日は少し雲があり、上弦を過ぎた月も出ていて明るかったので大したものは見えませんでしたが、それでも雲間からオリオン大星雲、バラ星雲、しし座の三つ子銀河など、いくつか見ることができました。
実際の電視観望もよかったのですが、それよりもマスターと色々お話しできたことがとても楽しかったです。お互いの星歴や機材のこと、カフェで電視観望に行き着くまでの話、家族のこと、かなり話し込んでしまいました。
実はマスターが機材を準備している間、奥様ともかなりお話しさせて頂いたのですが、マスターはとても寡黙な人であまり感情を出さないタイプだったそうです。でも私の印象だととても気さくに話してくれるので「え?、今日はお会いした時からずっと話してくれてますよ」と言ったら、カフェで星の解説をし出したらとても饒舌に話すのでビックリしたと言うのです。しかも今日私がくると聞いてからここ何日かずっと嬉しそうで、もう社会人になっている娘さんたちにも喜んで話していたとのこと。わざわざ遠くから来てくれた訪問客へのお世辞なのかもしれませんが、私もとても嬉しくなりました。
雲が出てきて電視観望も終わりにしたあと、日本酒をご馳走になりました。石岡市の地酒とのことですが「渡舟」というお酒でとにかくフルーティー。物凄く上品なジュースのようで、アルコールにあまり強くない私ですが、全く抵抗なく飲むことができます。なんでも地元茨城の酒米を使っていて、天候などの影響を受けやすく昭和初期に一度絶てしまった品種を、研究所に残っていた種籾から復活させたということです。まるで「夏子の酒」の中で復活させた酒米と同じような話です。
このお酒を飲みながらもずっとマスターと話していたのですが、そもそも地元での星仲間もほとんどいないとのことで、星のことで話す相手がこれまであまりいなかったそうです。同じ趣味で話すのは、それはもう楽しくないはずはないですよね。星まつりもまだ参加したことがないというので、いつか星まつりで、奥様とも一緒にお会いできたらと約束しました。
夜もかなりふけてしまい、ありがたいことに石岡駅まで送っていただきました。新しい星仲間とのとても楽しかった時間、この趣味を続けていればこれからも必ず関わり続けることができるはずです。星まつりでの再開を近い、この日はお別れとなりました。
帰り際にマスター手作りのガラス板にエッチングしてLEDをはめ込んだという「ぽうざ」の看板が青く綺麗にかがやいていました。
もし近場で電視観望に興味がある方は、ぜひとも「カフェぽうざ」を訪れてみてください。とても楽しい時間になるはずです。
その際は「開催日が限られてもいますので、あらかじめご予約して下さい」とのことです。
予約はこのページからできるようです。
コメント
コメント一覧 (2)
素敵な記事を公開いただき、ありがとうございます。
御用で近くにいらっしゃったとはいえ、わざわざ訪問いただけたことが非常に嬉しかったです。
この記事がきっかけで雑誌「星ナビ」の取材を受け、昨日8/4に「星空カフェ」の紹介記事が掲載された9月号が発売となりました。
実はお礼のコメントを入れようと内容を考えていた矢先、このブログ記事を見た雑誌「星ナビ」編集部のご担当者から「取材できないか」というお話をいただきました。そこで記事が掲載されてからお礼を書かせていただこうと思っていたらこの時期になってしまいました。人のつながりはありがたいものですね。今後も人のつながりを大切にして天文と電視観望の世界が広がっていくことに微力ながら貢献していきたいと考えています。
星ナビの記事読みました。私も少しコメントさせていただきましたが、8ページに渡る大特集で、素晴らしい記事でした!
天文雑誌でこういった方向の記事ってこれまでほとんどなかったと思うので、とても新鮮でした。福島で編集長に会い、大増ページで扱うと効いていたのですが、こんなにすごい記事になるとは!
元々は天リフさんのオンラインイベントからでしたが、人との繋がりは面白いですね。いつかの星まつりでまた再開できればと思います。