新月期、天気が良かったので平日ですが、自宅で撮影しました。ターゲットは季節柄、M31アンドロメダ銀河としました。アンドロメダ銀河の撮影は、なんと4年ぶりとなります。4年でやっと最初に戻った感じでしょうか。


そろそろ2巡目

4年前当初は、まだ星を始めたばかりで、初めてオートガイドが成功したと喜んでいた頃でした。当時はすごくうまく出てきたと思っていたアンドロメダも、流石に色褪せて見えてきました。そろそろこれまで撮影したメジャー天体の再撮影をしてもいい時期なのかもしれません。

今回の撮影の目的は2つあります。
  • 一つは、4年経ってどれくらい進歩したのかをみること。
  • もう一つは、4年前の撮影が数河高原と環境が格段良かったのに対し、今回は自宅で数段劣る空でも銀河撮影に耐えうる環境なのかを見極めること。
機材も画像処理の技術も進歩したはずです。少なくともカメラはAPS-CのEOS 60DからフルサイズのEOS 6D、鏡筒はFS-60CBから、FC-76と少し口径アップです。ですがこのFC-76、レンズが白濁してるやつです。果たして上手く写るのか?まあ、これまでHαはうまく出てるので、なんとかなるでしょう。

自宅なので空の環境が4年前より悪い代わりに、平日にもかかわらず撮影時間は朝まで気にしないで長時間できることはメリットになります。これがどこまで有利に働くか?うまく撮影できるなら、休日前に遠征に行くか、平日でも自宅で撮るかで、おそらく後者の方が圧倒的に撮れるチャンスは増えるはずです。


撮影開始

セットアップは順調で、19時半頃には撮影を開始できました。ちなみにフィルターは無し。最初CBPを入れてテスト撮影しましたが、流石に銀河部分もかなり暗くなるので、CBPは外しました。カメラが6Dなので、フィルターは鏡筒のフォーカサー付近につけるしかなく、この大きさで他に使えるフィルターもないため、今回はフィルター無しでの撮影としました。後の結果を見ると、フィルターなしでも十分戦えそうです。

でも後で見てみると、低空で北向に近い19時台と20時台は背景が明るすぎたので、ばっさり捨てました。富山の北は街明かりでかなり厳しいです。天頂付近と比べて明るさが倍以上違います。最初3分露光のISO1600でヒストグラムのピーク位置が半分くらいまできてたのでISO下げるか迷ったのですが、下げなくて良かったです。一番暗い時はピーク位置で25%以下にまでなってました。

19時の撮って出しJPG:
M31_LIGHT_180s_ISO1600_+22c_20201020-19h36m14s797ms
最初これを見た時、あー自宅はやっぱりダメだなと思いました。流石に淡すぎる気がします。

PHD2でのガイドは極めて安定でした。RMSで1秒程度、ピークでも数秒です。
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今回は6Dでの撮影なのでBackYardEOS(BYE)を使いましたが、途中3回くらい停止しました。PHD2からのDitherが始まるか終わるかするところで泊まるみたいです。どうもPCの負荷と関係あるようで、プロセスを見るとなぜか「System」が異常に高いCPUパワーを食っていました。後日、なにもUSBに繋げずに立ち上げ直した時はそんな負荷はなかったので、何か撮影時につないでいるものが悪さをしているようです。6DでもNINAに乗り換えた方がいいのかもしれません。

結局画像処理使ったのはBYEが止まってたのを復帰させたあとの21時半頃から、翌日の午前3時半頃までの、91枚。3分露光なので273分で、4時間半ちょっと分です。

0時頃、天頂付近の撮って出しJPG:
M31_LIGHT_180s_ISO1600_+17c_20201020-23h59m04s734ms
時間が経つにつれかなりマシになっていきました。まあこれならなんとかなるかもと思い始めました。あとは長時間で枚数を稼ぐのがどれだけ効いてくるか?ちょっと楽しみになってきました。


画像処理と結果

画像処理はいつも通りPIで、途中からPSに渡します。
  • ライトフレームが3分で91枚。
  • 後日同様の時刻に外で鏡筒に蓋をして撮影したダーク66枚。
  • フラットを障子越しに同じISOの1600で1/400秒で100枚。
  • 今回はWBPを使ったのでフラットダークも撮影しました。こちらもフラット撮影の時間が短いので簡単で、フラット撮影後そのまま蓋を閉じ、暗いところにもっていって同様の設定で撮影するだけです。
  • バイアスは以前撮ったものを流用。
全部をPIのWBPに放り込み、しばらく待ちます。1時間もかからなかったでしょうか、できた画像をとりあえずオートストレッチだけしてみます。

masterLight-BINNING_1-FILTER_NoFilter-EXPTIME_180.5

うん、悪く無いですね。

画像処理の手順は
  1. フラットで補正し切れてない所をDBEで滑らかに
  2. PCCで色合わせ
  3. 恒星の色を出したいので今回はArcsinhStretchでストレッチ
  4. StarNetで恒星部と分けて
  5. あとはPSで炙り出し
  6. DeNoiseでノイズ除去
くらいです。出来上がりは下のようになりました。色はタカsiさんのM31があまりに綺麗だったので、参考にさせてもらいました。

「M31アンドロメダ銀河」
masterLight_DBE1_PCC_AS_all4
  • 撮影日: 2020年10月19日21時37分-20日3時40分
  • 撮影場所: 富山市自宅
  • 鏡筒: タカハシ FC-76 (口径76mm, 焦点距離600mm) + FC/FSマルチフラットナー(x1.04)
  • 赤道儀: Celestron CGEM II
  • センサー: Canon EOS 6D HKIR改造
  • ガイド: PHD2 + f=120mmガイド鏡 + ASI290MMによるディザリング
  • 撮影: BackYard EOS, ISO1600,  露光時間: 300秒 x 91枚 = 4時間35分
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC, DeNoise

ついでにAnnotationです。
masterLight_DBE1_PCC_AS_all4_Annotated

どうでしょうか、タカsiさんのと比べるとまだまだ全然ですが、自宅でFC-76(しかも白濁で格安)でここまで撮れたのなら、私的にはまあ満足です。恒星の色もきちんと出ています。4年前の撮影より空は格段に劣るにもかかわらず、ありとあらゆるところで更新できたと思います。画像処理の技術もそうですが、5時間近くを平気で撮影できるようになったというのも自分の技術の進歩かと思います。やはり4年は大きいですね。

反省点としては、赤ポチがやはり出ないところでしょうか。これはHαだけ別撮りして足すとかしないとダメなのかもしれません。

ちなみに4年前のはこんな感じ。アラもたくさんあるのは当たり前ですが、画像処理も含めて随分頑張っていたことを思い出します。

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あと、今回の画像処理はすごく楽でした。5時間近くの露光になるとやはりスタックされた画像はかなりのクォリティーになるのでしょうか、あまりいじったり強調したりすることなく、無理なく細部も出てきます。これなら個人で撮影して喜んでいる分には十分です。一晩を目処に自宅で、というのをしばらく続けてみたいと思います。

実はもう少し、初期の頃に撮ったM42とかをTSA-120と6Dで真面目に撮り直してみたいです。でもまたしばらく天気が悪く、回復するのは上弦の月くらいのようです。