少し前に書いた電視観望の入門記事ですが、
記事公開当時はまだ未発売だったCMOSカメラ、つい先日サイトロンからSV305-SJという型番で正式発表されました。今回は正式販売開始記念として、もう少し突っ込んでみようと思います。
そもそもは、シュミットさんからCMOSカメラをレビューして欲しいという依頼が全ての始まりです。特に、初心者に向けてこのカメラで電視観望入門という形にしてもらえればという要望でした。
このブログでは、宇宙の深淵を覗くことの魅力を知ってもらいたくて、電視観望がその一役を担えないかというので、電視観望技術の普及をこれまでずっと目指してきています。天文人口が増えてくれればという思いで、初めて挑戦する方にもできるだけその敷居が下がるように、私のできる範囲で試したことをできる限りわかりやすくというのを目標に前回の記事を書いてみました。しかしながら、前回の記事ではこのカメラでどこまでできるかという可能性を示す目的で書いた意味もあったので、ほとんどトラブルのようなことは書いていません。
でも実はこのカメラ使ってみると分かりますが、かなりのクセがあります。初心者が前回の記事を見て始めると、いくつか迷う点が出てくると思います。今回の記事は前回の記事の続編という形で、実際に電視観望を始めたときに助けとなるように、より突っ込んだ内容にしようと思います。
シュミットさんからは、トラブルや問題点もきちんと書いて下さいという許可も取ってあるので、遠慮なくいきます。
加えてもう一つ、どうしても書いておきたいことがあります。以前ブラックパンダさんとのTwitter上でのやりとりで、できるだけ初めての人が電視観望を試しやすくする商品を開発してくれると発言してくれました。この時とても嬉しくて心強く思い、そして有言実行で、例えばAZ-GTeシリーズで多くのラインアップを展開してくれているのも、その一環なのかと信じています。
初心者が電視観望を始めるときに、価格で一番引っかかる部分がカメラだと思います。今回のカメラの販売もブラックパンダさんが自分が発言したことを責任を持って守ってくれたのかと思っています。その考えに賛同して、シュミットさん経由で今回のカメラを評価して欲しいという依頼があったとき、喜んで引き受けました。
もちろん、今回の依頼も突然というわけではなく、過去にはQBPのアメリカンサイズを私のTwitteでの何気ないつぶやきから作っていただいたり、愛用しているAZ-GTiのレビュー(間もなくSkyWatcherのカタログが配布されると聞いています)を頼まれたりもしてきたので、今回も二つ返事で引き受けました。
また最近も、QBPの赤外領域をカットしたフィルターを作ってれると、これもユーザーのTwitter上での発言を元に約束してくれています。このように、ユーザーの意見に真摯に耳を傾けてくれる姿勢は、非常に好感が持てます。
今回も含めていろいろ頼まれたりはしてますが、私はやはりユーザー目線で記事を書いているつもりです。ユーザー目線で見た場合、最近のサイトロンさんの対応はすごいと思います。こんなことを書くとプレッシャーになってしまうかもしれませんが、無理をしない範囲で、これからもユーザーの意見に真摯に対応してもらえるととても嬉しく思います。
肝心のCMOSカメラはSONYのIMX290センサーを使用したカラーカメラで、つい先日サイトロンジャパンから正式発表されたものです。販売ページも既にできていて、
私が受け取った時はまだ型番もついて無かったですが、SV305-SJとなったようです。SJはSIGHTRON JAPANの頭文字とのこと。
これを聞いてピンと来た方も多いと思いますが、前回出したカメラ本体の写真を見てもわかるように、SVBONYのSV305と同等品です。SV305は初心者でも購入しやすい価格設定のため、電視観望でのCMOSカメラの裾野を広げるかと思われていましたが、保護ガラスが赤外線カットフィルターを兼ねていて、Hαの赤色がなかなか出てくれないようです。ここから考えると、どうやらこのカメラのターゲットは星雲というよりは惑星のようです。そのため、保護ガラスを外してHαを感度良く出しているユーザーが何人もいます。この場合はもちろん保証外になってしまいますし、ガラスが接着されているので上記リンク先にもあるように割れてしまうこともあるようです。
今回発表のSV305-SJは、保護ガラスが赤外カットをしていないクリアなものとのことで、電視観望のことも考えてくれているとのこと。Hαで輝いている星雲に期待できそうです。また、UV/IRカットフィルターは付属で、惑星などの撮影にはこちらを使うと余分な赤外領域などをカットしてくれるようになります。
前の記事のコメント欄でも書いたのですが、ガイド鏡の使用を初心者に勧めていいものかすごく迷いました。しかしながら、センサー面積が小さいSV305-SJでは、焦点距離の長い鏡筒では狭い範囲しか見ることができなくなるため、特に導入時に苦労することが予測され、初心者にとっては大きな負担になってしまいます。ところが、適した短焦点距離の鏡筒を探そうとすると意外なほど選択肢がなくて、しかもどれも結構な値段で、なかなか初心者に勧めることができるものがなく、結局最後ガイド鏡に行きつくことになりました。
実は短焦点距離というので、最初一眼レフカメラのレンズも考えました。しかしながら手持ちのアダプターではどうしても解がなかったのです。一応カメラレンズにアメリカンサイズのアイピース口を取り付けるなどして、カメラを固定することはできます。それでもバックフォーカスが長すぎるために、焦点をとることができません。でも仮になんとかできたとしても、これでは初心者には敷居が高すぎます。
次に考えたことは、ガイド鏡を使うことでした。昨年の胎内星まつりで、ブラックパンダさんのお店で購入したガイド鏡(いまでもシュミットで扱っているようですが、2020/10/12現在欠品中のようです。)で試してみようと思うとシュミット店長さんに相談したところ、EVO GUIDE50EDのアイデアを出してくレました。
なので、今回のセットアップができたのはシュミットの店長さんのおかげです。
結果として、これはかなり面白い試みとなりました。特に初心者にとっては、税込でも2万5千円を切っていて、値段的にもかなりこなれています。しかもガイド鏡と言って、もさすがEVOと謳っているだけあって、SV305-SJの小さなセンサー面積で中央を見ている限りは、四隅の星像も相当シャープです。
しかも最近SkyWatcherから専用のフラットナーも発売されたようです。
あまり知られていないようですが、実はEVO GUIDE50ED用の専用フラットナーがSTARIZONA社からも販売されていて、
たかがガイド鏡に各社訳のわからない力の入れようですが、なんか期待できてしまいます。もうこれで超コンパクト鏡筒として、電視観望だけでなく真面目な長時間撮影までするのも楽しいのかもしれません。
その際ですが「ぜひとも足の部分をそのままAZ-GTiなどに取り付けられるように、鏡筒バンドとアリガタを改良してくれるとさらに良かったりします」という話をシュミットさんにしたら、現在足の部分を変更する部品を実際に考えているそうです。こちらも期待したいと思います。
次に、SV305-SJをSharpCapで使う時に幾つか気づいたことです。
SharpCapのバージョン:
まず現在のバージョンでは必ず32bit版を使ってください。64bit版は対応していません。バージョン3.3βになると64bit版でも対応していますが、いずれにせよ注意が必要です。
ゲイン:
このカメラは思ったよりゲインが取れません。まずSharpCapで表されてるGainの数値はそのまま数値倍になります。最小値の1に対して、例えば2なら2倍、4なら4倍。最高は30なので30倍までとなります。同じIMX290センサーを使ったASI290MM(手持ちはモノクロしか持ってないのでこちらで比較します)はSharpCapの値で570まで出ます。これは57dBということなので(60-3)dBということで、1000/1.4 = 715倍程度になり、SV305-SJの30倍に比べるとASI290MMはさらに24倍くらいゲインを上げることができるということになります。なので電視観望などをしようとした場合に、ゲインがあげられない代わりに露光時間を伸ばすなどの必要性が出てきます。
Black Level:
次に、実際の電視観望をする際のコツです。カメラに入る光を遮断したときのヒストグラムに注目します。本来ノイズを表すある広がりを持ったピークが見えるはずなのですが、ピークの左側が画面の左端から出たような状態になってしまうことがよくありあます。あるレベル以下の信号を0としてしまっているのですが、これだと暗いところの諧調をきちんと表現することができません。まずは画面右の「Camera Controls」タブの「Black Level」を100とか150くらいまで持ち上げて、きちんとヒストグラム左端の暗い信号情報を取りこぼさないようにします。淡い星雲などを扱う場合の第一歩です。
露光時間:
そもそも、電視観望ではリアルタイム性を求めるために露光時間をできるだけ短くします。そのため、ヒストグラムのピークがもともとずいぶん左に寄っている状態で操作することが多いです。有料版のSharpCapだと、この状態で雷ボタンのオートストレッチを押すと、淡い天体を適度に見やすい状態にあぶり出してくれるので非常に便利です。この機能を使うためだけでも有料版にする価値があるかと思います。無料版の場合は、ヒストグラムのピークを左と真ん中にある黄色い点線で挟むようにして、淡い部分をあぶり出すようにしてみて下さい。
でも有料版の値段は年間高々10ポンド、日本円にして千数百円。高価なことが多い天体機材と比べたら誤差のような値段で、使い勝手は何万円もする機材を買うより、はるかによくなるかもしれません。もし使い続けるなら迷わず有料版にすることをお勧めします。有料版の場合、ヒストグラムのピークが左端に行かない範囲では、何か設定を変えるたびに雷ボタンのオートストレッチを毎回押せばいいので、かなり楽です。
GammaとContrast:
問題は、この状態でのSharpCapの「Gamma」と「Contrast」の振る舞いです。実際に試してみるとわかるのですが、両方共少し値を変えただけで真っ暗になってしまったり、飛んでしまったりでほとんど役に立ちません。なのでこれらの機能は少なくとも電視観望では使わないと思っておいてください。もちろん月や惑星などの明るい天体など、オートストレッチなどであぶり出したりせずに使う分にはこれらの機能はきちんと目的通りに働きます。十分な光を得ることができる、月や惑星の撮影を中心にテストしたのではと推測できます。淡い星雲を見るためにはこのようにユーザーの方で一工夫(さわらないということ)する必要があると思って下さい。
LiveStack:
さらに、ノイズを下げたい場合のLiveStackですが、1秒以下とかの短時間露光だとノイズが多いせいかAlign機能がうまく働かず、スタックできないことがよくあります。数秒以上の露光時間にするか、もしくはDigital gainを上げるとうまくいくと思います。これもゲインを大きく上げることができないので、全体的に暗くなって、暗い恒星が認識できなくしまうことが原因です。特にDigital gainはこのような暗い画面の時に絶大な改善効果があることが多いので覚えておくといいでしょう。
その他、細かいバグ:
さらに、まだSV305用のドライバーがこなれていないせいか、SharpCapで操作する場合はバグも多いです。
さらにノイズに関することです。どんどんいきましょう。
ノイズのピークが細い:
ヒストグラムを見るとノイズが細く見えます。これはノイズが少ないことを意味しますが、実際の画面を見るとノイズ、特に結構大きな縞構造のノイズが多いです。そのため、このピークに合わせてSharpCapであぶり出しを攻め過ぎると、画面上にノイズが非常に多いという印象を持ってしまいます。どうもこのカメラは、炙り出しを攻めすぎない方がノイズが少なく見え、かつターゲット天体もそこそこ見えるということに気づきました。
例えば、M57を2つの場合で見比べます。これは一番最初にSV305-SJを触ったときに気づいたことで、鏡筒はまだFS-60CBを使っていて、QBPも使っています。
まずは、無理にあぶり出さない場合:
次にかなり炙り出した場合:
見えているノイズが全然多いことがわかります。
比較して欲しいのは、LiveStackでのヒストグラムの攻め具合です。上のノイズが少ないものは、2本の黄色い線をそこまでピークに近くしていません。逆に下のノイズが多いものは、2本の黄色い線をかなりピークに近づけています。実際に無理に炙り出さなくても、天体は十分に見えることが多いので、やはりこのカメラはあまり攻めすぎて炙り出すのは控えたほうがいいのかと思います。
ついでに、前回見せることができなかったM27亜鈴状星雲も載せておきます。こちらもSV305-SJを使った初日に試したもので、FS-60CBにQBPをつけています。
ダーク補正もしていなくて、まだ暑い夏の時期なので、ホットピクセルも目立っていますが、M27がうまく出ています。
これまでの経験からこのSV305-SJですが、どうも同じサイトロンから発売されている光害防止フィルターのQBPと相性が悪い気がしています。最初QBPを使っていたのですが、前回の入門記事は全てあえてQBPを外しました。きちんと定量的に検証できているわけではないので、あくまで印象からくる推測ですが、理由はおそらく感度もしくは最大ゲインが足りなくて、QBPをつけると暗くなり過ぎるのではないかと思っています。
EOS X5をSharpCapで電視観望で試した時も同じような感触でした。シベットさんの以前のフィルター比較記事で、短時間露光だとQBPが不利で、長時間露光になってくるとQBPが有利になってくるという結果がありましたが、そこら辺につながるのかと思っています。
暗くなりすぎると、一回の露光時間が短いと効いてくるリードノイズが相対的に大きくなっているのではないかと思っています。もしSV305-SJでQBPを使いたい場合は、露光時間を長めにとるといいのかと思います。
今回はSV305-SJを実際に使う際に、注意すべき点などを思うままに書いてみました。でも読み返してみると、本当にサイトロンさんから怒られないかちょっと心配になってきました(笑)。
確かにこのカメラはまだ成熟し切れていないところがあるのは事実です。ですが元のモデルのSV305を出したSVbonyにとって、このCMOSカメラはまだわずか3機種目のものです。一番最初のSV105を少しだけ触ったことがありますが、最長露光時間が500ミリ秒と、月や惑星以外にはほとんど使えませんでした。そこから見ると大した進歩です。ほぼ最安でCMOSカメラを提供してくれるというのはそれだけで大きな貢献です。これから育っていくメーカーだと思いますので、温かい目で見ながら、ユーザー側からの提案をどんどんしていくのが大事な時期なのかと思います。
記事公開当時はまだ未発売だったCMOSカメラ、つい先日サイトロンからSV305-SJという型番で正式発表されました。今回は正式販売開始記念として、もう少し突っ込んでみようと思います。
背景
そもそもは、シュミットさんからCMOSカメラをレビューして欲しいという依頼が全ての始まりです。特に、初心者に向けてこのカメラで電視観望入門という形にしてもらえればという要望でした。
このブログでは、宇宙の深淵を覗くことの魅力を知ってもらいたくて、電視観望がその一役を担えないかというので、電視観望技術の普及をこれまでずっと目指してきています。天文人口が増えてくれればという思いで、初めて挑戦する方にもできるだけその敷居が下がるように、私のできる範囲で試したことをできる限りわかりやすくというのを目標に前回の記事を書いてみました。しかしながら、前回の記事ではこのカメラでどこまでできるかという可能性を示す目的で書いた意味もあったので、ほとんどトラブルのようなことは書いていません。
でも実はこのカメラ使ってみると分かりますが、かなりのクセがあります。初心者が前回の記事を見て始めると、いくつか迷う点が出てくると思います。今回の記事は前回の記事の続編という形で、実際に電視観望を始めたときに助けとなるように、より突っ込んだ内容にしようと思います。
シュミットさんからは、トラブルや問題点もきちんと書いて下さいという許可も取ってあるので、遠慮なくいきます。
最近のサイトロンの対応はすごい
加えてもう一つ、どうしても書いておきたいことがあります。以前ブラックパンダさんとのTwitter上でのやりとりで、できるだけ初めての人が電視観望を試しやすくする商品を開発してくれると発言してくれました。この時とても嬉しくて心強く思い、そして有言実行で、例えばAZ-GTeシリーズで多くのラインアップを展開してくれているのも、その一環なのかと信じています。
初心者が電視観望を始めるときに、価格で一番引っかかる部分がカメラだと思います。今回のカメラの販売もブラックパンダさんが自分が発言したことを責任を持って守ってくれたのかと思っています。その考えに賛同して、シュミットさん経由で今回のカメラを評価して欲しいという依頼があったとき、喜んで引き受けました。
もちろん、今回の依頼も突然というわけではなく、過去にはQBPのアメリカンサイズを私のTwitteでの何気ないつぶやきから作っていただいたり、愛用しているAZ-GTiのレビュー(間もなくSkyWatcherのカタログが配布されると聞いています)を頼まれたりもしてきたので、今回も二つ返事で引き受けました。
また最近も、QBPの赤外領域をカットしたフィルターを作ってれると、これもユーザーのTwitter上での発言を元に約束してくれています。このように、ユーザーの意見に真摯に耳を傾けてくれる姿勢は、非常に好感が持てます。
今回も含めていろいろ頼まれたりはしてますが、私はやはりユーザー目線で記事を書いているつもりです。ユーザー目線で見た場合、最近のサイトロンさんの対応はすごいと思います。こんなことを書くとプレッシャーになってしまうかもしれませんが、無理をしない範囲で、これからもユーザーの意見に真摯に対応してもらえるととても嬉しく思います。
SV305-SJ
肝心のCMOSカメラはSONYのIMX290センサーを使用したカラーカメラで、つい先日サイトロンジャパンから正式発表されたものです。販売ページも既にできていて、
私が受け取った時はまだ型番もついて無かったですが、SV305-SJとなったようです。SJはSIGHTRON JAPANの頭文字とのこと。
これを聞いてピンと来た方も多いと思いますが、前回出したカメラ本体の写真を見てもわかるように、SVBONYのSV305と同等品です。SV305は初心者でも購入しやすい価格設定のため、電視観望でのCMOSカメラの裾野を広げるかと思われていましたが、保護ガラスが赤外線カットフィルターを兼ねていて、Hαの赤色がなかなか出てくれないようです。ここから考えると、どうやらこのカメラのターゲットは星雲というよりは惑星のようです。そのため、保護ガラスを外してHαを感度良く出しているユーザーが何人もいます。この場合はもちろん保証外になってしまいますし、ガラスが接着されているので上記リンク先にもあるように割れてしまうこともあるようです。
SV305-SJで見た月。
明るい月や惑星は本質的に得意なようです。
特別な設定をするでもなく、十分きれいに見えます。
明るい月や惑星は本質的に得意なようです。
特別な設定をするでもなく、十分きれいに見えます。
今回発表のSV305-SJは、保護ガラスが赤外カットをしていないクリアなものとのことで、電視観望のことも考えてくれているとのこと。Hαで輝いている星雲に期待できそうです。また、UV/IRカットフィルターは付属で、惑星などの撮影にはこちらを使うと余分な赤外領域などをカットしてくれるようになります。
センサー面積と鏡筒の焦点距離
前の記事のコメント欄でも書いたのですが、ガイド鏡の使用を初心者に勧めていいものかすごく迷いました。しかしながら、センサー面積が小さいSV305-SJでは、焦点距離の長い鏡筒では狭い範囲しか見ることができなくなるため、特に導入時に苦労することが予測され、初心者にとっては大きな負担になってしまいます。ところが、適した短焦点距離の鏡筒を探そうとすると意外なほど選択肢がなくて、しかもどれも結構な値段で、なかなか初心者に勧めることができるものがなく、結局最後ガイド鏡に行きつくことになりました。
実は短焦点距離というので、最初一眼レフカメラのレンズも考えました。しかしながら手持ちのアダプターではどうしても解がなかったのです。一応カメラレンズにアメリカンサイズのアイピース口を取り付けるなどして、カメラを固定することはできます。それでもバックフォーカスが長すぎるために、焦点をとることができません。でも仮になんとかできたとしても、これでは初心者には敷居が高すぎます。
次に考えたことは、ガイド鏡を使うことでした。昨年の胎内星まつりで、ブラックパンダさんのお店で購入したガイド鏡(いまでもシュミットで扱っているようですが、2020/10/12現在欠品中のようです。)で試してみようと思うとシュミット店長さんに相談したところ、EVO GUIDE50EDのアイデアを出してくレました。
なので、今回のセットアップができたのはシュミットの店長さんのおかげです。
結果として、これはかなり面白い試みとなりました。特に初心者にとっては、税込でも2万5千円を切っていて、値段的にもかなりこなれています。しかもガイド鏡と言って、もさすがEVOと謳っているだけあって、SV305-SJの小さなセンサー面積で中央を見ている限りは、四隅の星像も相当シャープです。
しかも最近SkyWatcherから専用のフラットナーも発売されたようです。
あまり知られていないようですが、実はEVO GUIDE50ED用の専用フラットナーがSTARIZONA社からも販売されていて、
たかがガイド鏡に各社訳のわからない力の入れようですが、なんか期待できてしまいます。もうこれで超コンパクト鏡筒として、電視観望だけでなく真面目な長時間撮影までするのも楽しいのかもしれません。
その際ですが「ぜひとも足の部分をそのままAZ-GTiなどに取り付けられるように、鏡筒バンドとアリガタを改良してくれるとさらに良かったりします」という話をシュミットさんにしたら、現在足の部分を変更する部品を実際に考えているそうです。こちらも期待したいと思います。
SharpCapでの操作
次に、SV305-SJをSharpCapで使う時に幾つか気づいたことです。
SharpCapのバージョン:
まず現在のバージョンでは必ず32bit版を使ってください。64bit版は対応していません。バージョン3.3βになると64bit版でも対応していますが、いずれにせよ注意が必要です。
ゲイン:
このカメラは思ったよりゲインが取れません。まずSharpCapで表されてるGainの数値はそのまま数値倍になります。最小値の1に対して、例えば2なら2倍、4なら4倍。最高は30なので30倍までとなります。同じIMX290センサーを使ったASI290MM(手持ちはモノクロしか持ってないのでこちらで比較します)はSharpCapの値で570まで出ます。これは57dBということなので(60-3)dBということで、1000/1.4 = 715倍程度になり、SV305-SJの30倍に比べるとASI290MMはさらに24倍くらいゲインを上げることができるということになります。なので電視観望などをしようとした場合に、ゲインがあげられない代わりに露光時間を伸ばすなどの必要性が出てきます。
Black Level:
次に、実際の電視観望をする際のコツです。カメラに入る光を遮断したときのヒストグラムに注目します。本来ノイズを表すある広がりを持ったピークが見えるはずなのですが、ピークの左側が画面の左端から出たような状態になってしまうことがよくありあます。あるレベル以下の信号を0としてしまっているのですが、これだと暗いところの諧調をきちんと表現することができません。まずは画面右の「Camera Controls」タブの「Black Level」を100とか150くらいまで持ち上げて、きちんとヒストグラム左端の暗い信号情報を取りこぼさないようにします。淡い星雲などを扱う場合の第一歩です。
露光時間:
そもそも、電視観望ではリアルタイム性を求めるために露光時間をできるだけ短くします。そのため、ヒストグラムのピークがもともとずいぶん左に寄っている状態で操作することが多いです。有料版のSharpCapだと、この状態で雷ボタンのオートストレッチを押すと、淡い天体を適度に見やすい状態にあぶり出してくれるので非常に便利です。この機能を使うためだけでも有料版にする価値があるかと思います。無料版の場合は、ヒストグラムのピークを左と真ん中にある黄色い点線で挟むようにして、淡い部分をあぶり出すようにしてみて下さい。
でも有料版の値段は年間高々10ポンド、日本円にして千数百円。高価なことが多い天体機材と比べたら誤差のような値段で、使い勝手は何万円もする機材を買うより、はるかによくなるかもしれません。もし使い続けるなら迷わず有料版にすることをお勧めします。有料版の場合、ヒストグラムのピークが左端に行かない範囲では、何か設定を変えるたびに雷ボタンのオートストレッチを毎回押せばいいので、かなり楽です。
GammaとContrast:
問題は、この状態でのSharpCapの「Gamma」と「Contrast」の振る舞いです。実際に試してみるとわかるのですが、両方共少し値を変えただけで真っ暗になってしまったり、飛んでしまったりでほとんど役に立ちません。なのでこれらの機能は少なくとも電視観望では使わないと思っておいてください。もちろん月や惑星などの明るい天体など、オートストレッチなどであぶり出したりせずに使う分にはこれらの機能はきちんと目的通りに働きます。十分な光を得ることができる、月や惑星の撮影を中心にテストしたのではと推測できます。淡い星雲を見るためにはこのようにユーザーの方で一工夫(さわらないということ)する必要があると思って下さい。
LiveStack:
さらに、ノイズを下げたい場合のLiveStackですが、1秒以下とかの短時間露光だとノイズが多いせいかAlign機能がうまく働かず、スタックできないことがよくあります。数秒以上の露光時間にするか、もしくはDigital gainを上げるとうまくいくと思います。これもゲインを大きく上げることができないので、全体的に暗くなって、暗い恒星が認識できなくしまうことが原因です。特にDigital gainはこのような暗い画面の時に絶大な改善効果があることが多いので覚えておくといいでしょう。
その他、細かいバグ:
さらに、まだSV305用のドライバーがこなれていないせいか、SharpCapで操作する場合はバグも多いです。
- 例えば、Colour Spaceを変えると真っ暗になることがあります。これはExposureを適当に変えると戻ることが多いです。
- また、ゲインに100とか150とか50の倍数以外を手入力すると何故か1減った数になってしまったりしますが、こちらはまあ気にしなければ実害はないです。。
ノイズについて
さらにノイズに関することです。どんどんいきましょう。
ノイズのピークが細い:
ヒストグラムを見るとノイズが細く見えます。これはノイズが少ないことを意味しますが、実際の画面を見るとノイズ、特に結構大きな縞構造のノイズが多いです。そのため、このピークに合わせてSharpCapであぶり出しを攻め過ぎると、画面上にノイズが非常に多いという印象を持ってしまいます。どうもこのカメラは、炙り出しを攻めすぎない方がノイズが少なく見え、かつターゲット天体もそこそこ見えるということに気づきました。
例えば、M57を2つの場合で見比べます。これは一番最初にSV305-SJを触ったときに気づいたことで、鏡筒はまだFS-60CBを使っていて、QBPも使っています。
まずは、無理にあぶり出さない場合:
次にかなり炙り出した場合:
見えているノイズが全然多いことがわかります。
比較して欲しいのは、LiveStackでのヒストグラムの攻め具合です。上のノイズが少ないものは、2本の黄色い線をそこまでピークに近くしていません。逆に下のノイズが多いものは、2本の黄色い線をかなりピークに近づけています。実際に無理に炙り出さなくても、天体は十分に見えることが多いので、やはりこのカメラはあまり攻めすぎて炙り出すのは控えたほうがいいのかと思います。
ついでに、前回見せることができなかったM27亜鈴状星雲も載せておきます。こちらもSV305-SJを使った初日に試したもので、FS-60CBにQBPをつけています。
ダーク補正もしていなくて、まだ暑い夏の時期なので、ホットピクセルも目立っていますが、M27がうまく出ています。
QBPと相性が悪い
これまでの経験からこのSV305-SJですが、どうも同じサイトロンから発売されている光害防止フィルターのQBPと相性が悪い気がしています。最初QBPを使っていたのですが、前回の入門記事は全てあえてQBPを外しました。きちんと定量的に検証できているわけではないので、あくまで印象からくる推測ですが、理由はおそらく感度もしくは最大ゲインが足りなくて、QBPをつけると暗くなり過ぎるのではないかと思っています。
EOS X5をSharpCapで電視観望で試した時も同じような感触でした。シベットさんの以前のフィルター比較記事で、短時間露光だとQBPが不利で、長時間露光になってくるとQBPが有利になってくるという結果がありましたが、そこら辺につながるのかと思っています。
暗くなりすぎると、一回の露光時間が短いと効いてくるリードノイズが相対的に大きくなっているのではないかと思っています。もしSV305-SJでQBPを使いたい場合は、露光時間を長めにとるといいのかと思います。
まとめと今後の期待
今回はSV305-SJを実際に使う際に、注意すべき点などを思うままに書いてみました。でも読み返してみると、本当にサイトロンさんから怒られないかちょっと心配になってきました(笑)。
確かにこのカメラはまだ成熟し切れていないところがあるのは事実です。ですが元のモデルのSV305を出したSVbonyにとって、このCMOSカメラはまだわずか3機種目のものです。一番最初のSV105を少しだけ触ったことがありますが、最長露光時間が500ミリ秒と、月や惑星以外にはほとんど使えませんでした。そこから見ると大した進歩です。ほぼ最安でCMOSカメラを提供してくれるというのはそれだけで大きな貢献です。これから育っていくメーカーだと思いますので、温かい目で見ながら、ユーザー側からの提案をどんどんしていくのが大事な時期なのかと思います。






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