先々週の赤道儀のセッティングの記事で、水平出しのことが議論になりました。コメントがいくつかあったのですが、かんたろうさんとその後もメールのやり取りをして、白熱した議論となりました。以後の議論では赤道儀の極軸は十分な精度であっていて、また、鏡筒も極軸と平行に設置されるものと仮定しています。
突き詰めていくと、今回の論点は、
というものになります。私は水平出しをしていなければ入らないという主張で、かんたろうさんは必ずしも水平出しをしていなくても、赤緯体が天頂方向を向いていれば、きちんと視野に入るというものです。
もう少し噛み砕いていうと、私はいつも赤道儀の水平出しをしてからインデックスマークを合わせるので、赤緯体は基本的に誤差の範囲内で天頂方向を向きます。かんたろうさんのは赤道儀の水平を出していなくても、赤緯体を天頂方向に向ければそれでよくて、その場合は赤経のインデックスマークが(水平からずれた分だけ)ずれた状態となるということです。赤緯体を天頂方向に向ける方法は、赤緯方向を90度傾けて鏡筒を東西に向ける。鏡筒の上に水準器を乗せて、赤経を調整して水平を出せば、赤緯体は天頂方向を向くというものです。
議論は平行線で、やはり実際に確かめなければ納得できなかったので、久しぶりに晴れた今日、試してみみました。
まずは、自分の方法できちんとワンスターアラインメントで入ることで、機器に異常がないかどうか確かめます。三脚についた水準器で赤道儀の水平を出し、
SharpCapで極軸を1分角以下の精度であわせて、
ワンスターアラインメントで手近なカペラを導入します。まあいつもやっているのでわかっているのですが、結果はきちんと視野の中に入ってきて、
左がASI178に50mmのレンズをつけた電子ファインダー、右がASI294MCを600mmのFS-60Qに取り付けた鏡筒の視野です。両方とも明るいのがカペラです。電子ファインダー、鏡筒の視野ともに、赤いクロスの交点は一致しています。すなわち、右の鏡筒でクロス点にきているなら、左の電子ファインダーでもクロス点にきます。実際の導入はファインダーでざっくり0.8度くらい中心からずれた位置で導入されています。水平出しやインデックスマークの誤差もこれくらいのオーダーなので、特におかしくない精度です。機器に特に異常もないと思われます。
次に、三脚の脚の一本を数cm伸ばします。
三脚につけた水準器はこの時点で全く水平を示していません。
この状態で極軸をSharpCapを使って再び1分角以内の精度で合わせ直します。
ここから、赤緯を90度程度傾けて、鏡筒に水準器を乗せて、赤経を調整してその水準器が水平になるようにします。
この時点で赤緯体は天頂方向を向き、赤経のインデックスマークは当然ずれます。
90度傾けた赤緯を戻して、赤緯のインデックスマークを合わせて準備完了です。この状態でワンスターアラインメントを実行します。
私の説が正しければ天体は導入できない、かんたろうさんが正しければ天体は導入できることとなります。果たして結果は...
なんと、見事カペラが導入されました。
確かめるべく、ベテルギウス、リゲルなどもそのまま導入してみましたが、きちんと導入されます。これは完全に私の負けです。
さてここでやっと、なんできちんと導入されたのか考えました。答えはすぐにわかりました。私はワンスターアランメント(2スターアラインメントの最初でも同じです)のアルゴリズムは「赤道儀の水平」を仮定していると思い込んでいたのですが、実際にはアルゴリズムは「赤緯体が天頂を向いている」ということを仮定していたわけです。落ち着いてよく考えてみると確かに、水平を仮定するよりも赤緯体が天頂を向いていると仮定する方が、より条件が緩く、かつこれで十分だということがわかります。
すぐにかんたろうさんに電話して、私が間違っていたことを素直に伝えました。最後まで意見を変えなかった頑固な私に、ずっと付き合って頂いたかんたろうさん、どうもありがとうございました。改めてお礼を述べさせていただきます。
というわけで、赤道儀の初期アラインメントで一発目に天体を視野に入れるためには、必ずしも水平は必要ないと訂正しておきます。ただし赤緯体を天頂に向ける必要があることは変わりありません。かんたろうさんの方法を使ってインデックスはずれた状態で赤緯体を天頂に向けるもよし、赤道儀のの水平を出してインデックスを合わせて赤緯体を天頂に向けるもよしです。
ちなみに、言うまでもないかもしれませんが、「初期アラインメントで一発目」にさえこだわらなければ、水平も出す必要はないですし、赤緯体を天頂に向ける必要はありません。2スターアラインメント以上でマニュアルで一つづつ丁寧に導入していけば、自動導入可能な状態までもっていけます。
とにかくやっと納得しました。やはり自分で実際に試すのが一番わかりやすいです。かんたろうさんはじめ、コメントをくれたせろおさん、りっくんさん、いろいろお騒がせして申し訳ありませんでした。
突き詰めていくと、今回の論点は、
- Celestronの赤道儀Advanced VXで、ワンスターアラインメントでの初期アラインメントの時に、水平出しをしていることで、きちんと視野に入るかな入らないかに影響があるか?
というものになります。私は水平出しをしていなければ入らないという主張で、かんたろうさんは必ずしも水平出しをしていなくても、赤緯体が天頂方向を向いていれば、きちんと視野に入るというものです。
もう少し噛み砕いていうと、私はいつも赤道儀の水平出しをしてからインデックスマークを合わせるので、赤緯体は基本的に誤差の範囲内で天頂方向を向きます。かんたろうさんのは赤道儀の水平を出していなくても、赤緯体を天頂方向に向ければそれでよくて、その場合は赤経のインデックスマークが(水平からずれた分だけ)ずれた状態となるということです。赤緯体を天頂方向に向ける方法は、赤緯方向を90度傾けて鏡筒を東西に向ける。鏡筒の上に水準器を乗せて、赤経を調整して水平を出せば、赤緯体は天頂方向を向くというものです。
議論は平行線で、やはり実際に確かめなければ納得できなかったので、久しぶりに晴れた今日、試してみみました。
まずは、自分の方法できちんとワンスターアラインメントで入ることで、機器に異常がないかどうか確かめます。三脚についた水準器で赤道儀の水平を出し、
SharpCapで極軸を1分角以下の精度であわせて、
ワンスターアラインメントで手近なカペラを導入します。まあいつもやっているのでわかっているのですが、結果はきちんと視野の中に入ってきて、
左がASI178に50mmのレンズをつけた電子ファインダー、右がASI294MCを600mmのFS-60Qに取り付けた鏡筒の視野です。両方とも明るいのがカペラです。電子ファインダー、鏡筒の視野ともに、赤いクロスの交点は一致しています。すなわち、右の鏡筒でクロス点にきているなら、左の電子ファインダーでもクロス点にきます。実際の導入はファインダーでざっくり0.8度くらい中心からずれた位置で導入されています。水平出しやインデックスマークの誤差もこれくらいのオーダーなので、特におかしくない精度です。機器に特に異常もないと思われます。
次に、三脚の脚の一本を数cm伸ばします。
三脚につけた水準器はこの時点で全く水平を示していません。
この状態で極軸をSharpCapを使って再び1分角以内の精度で合わせ直します。
ここから、赤緯を90度程度傾けて、鏡筒に水準器を乗せて、赤経を調整してその水準器が水平になるようにします。
この時点で赤緯体は天頂方向を向き、赤経のインデックスマークは当然ずれます。
90度傾けた赤緯を戻して、赤緯のインデックスマークを合わせて準備完了です。この状態でワンスターアラインメントを実行します。
私の説が正しければ天体は導入できない、かんたろうさんが正しければ天体は導入できることとなります。果たして結果は...
なんと、見事カペラが導入されました。
確かめるべく、ベテルギウス、リゲルなどもそのまま導入してみましたが、きちんと導入されます。これは完全に私の負けです。
さてここでやっと、なんできちんと導入されたのか考えました。答えはすぐにわかりました。私はワンスターアランメント(2スターアラインメントの最初でも同じです)のアルゴリズムは「赤道儀の水平」を仮定していると思い込んでいたのですが、実際にはアルゴリズムは「赤緯体が天頂を向いている」ということを仮定していたわけです。落ち着いてよく考えてみると確かに、水平を仮定するよりも赤緯体が天頂を向いていると仮定する方が、より条件が緩く、かつこれで十分だということがわかります。
すぐにかんたろうさんに電話して、私が間違っていたことを素直に伝えました。最後まで意見を変えなかった頑固な私に、ずっと付き合って頂いたかんたろうさん、どうもありがとうございました。改めてお礼を述べさせていただきます。
というわけで、赤道儀の初期アラインメントで一発目に天体を視野に入れるためには、必ずしも水平は必要ないと訂正しておきます。ただし赤緯体を天頂に向ける必要があることは変わりありません。かんたろうさんの方法を使ってインデックスはずれた状態で赤緯体を天頂に向けるもよし、赤道儀のの水平を出してインデックスを合わせて赤緯体を天頂に向けるもよしです。
ちなみに、言うまでもないかもしれませんが、「初期アラインメントで一発目」にさえこだわらなければ、水平も出す必要はないですし、赤緯体を天頂に向ける必要はありません。2スターアラインメント以上でマニュアルで一つづつ丁寧に導入していけば、自動導入可能な状態までもっていけます。
とにかくやっと納得しました。やはり自分で実際に試すのが一番わかりやすいです。かんたろうさんはじめ、コメントをくれたせろおさん、りっくんさん、いろいろお騒がせして申し訳ありませんでした。
コメント
コメント一覧 (14)
ちなみに(私の記憶違いでなければ)ビクセンのスカイセンサー2000では、アライメント前に鏡筒を西に向け、「架台」ではなく「鏡筒の」水平出しをするように指示されていました。
なるほど、スカイセンサー2000が鏡筒水平出し方なのですね。
水平とインデックスだと2自由度なのですが、天頂出しだけなら1自由度なので、確かにこちらの方がスマートなんです。よく考えられています。
私の経験不足なのがばればれですね。
>水平とインデックスだと2自由度なのですが、天頂出しだけなら1自由度なので、確かにこちらの方がスマートなんです。
2自由度対1自由度の説明、わかりよいですね。
水平かどうかという点に関しては、赤道儀からみればどうでもよいこと、ですよね。
初回アライメントの正確性を抜きにすれば、極軸が地軸と平行になってさえいれば、どちらも同じ状態といえますもん。
水平にするというのは使う側からみると、極軸の高度調整が少なくて済むので、設置の手間が減るという点もありますね。
わたしもAVXにはすぐに水準器を付けました。
三脚の三角板の上に接着という、実に雑な置き方でしたけど。
TANKOさん、ありがとうございます。今日はずっと雨の後、夕方に月と少し星が出ていたのでもしかしてと思って、自宅に着いてから外を見たらドン曇りでした。
初期アラインメントに原理的には水平は必ずしも取る必要はないですが、水平法は極軸合わせの時にも確かに利点も多いです。AVXはインデックスを合わせろと指示が出るので、それに従うなら水平にしておいた方がやりやすいと思います。
私の場合は三脚の上部に接着剤で水準器をつけるのは結構苦労しました。三角板の上でも十分精度は出そうですね。
ということは、ここまでで2つの自由度に対して設定が必要になります。もちろん、極軸が合っているということが前提ですが。
それを、それを架台の水平もインデクスマークも無視して、赤緯体をきちんと垂直(天頂?)にすることができれば、アライメントを始めてもいいということになりますか?
いろいろと議論がありましたが、自分のセレストロンには水準器をつけて水平出しをすることにしました。極軸望遠鏡のスケールもちょっとずれていたので、時間を掛けて、スケールの中心と工事区の中心を合わせました。
昨日の夜、雲も切れてきたので、チャンスとばかり準備をしましたが、家内からストップがかかり断念。今朝早起きして、アライメントの確認をしました。ワンスターでファインダー内にだいたいいい感じで入りましたし、直焦点のAPSカメラ(FS60CB+マルチフラットナー+EOSkissX5)でも基準星を捉えることができました。
ついて行けない議論も多くありましたが、架台のセッティングについて、とても勉強になりましたし、鏡筒の水平出しでのセッティングも今度試してみようと思います。
Sam、かんたろうさん、せろおさん、ありがとうございました。
>それを、それを架台の水平もインデクスマークも無視して、赤緯体をきちんと垂直(天頂?)にすることができれば、アライメントを始めてもいいということになりますか?
結論としてはそういうことです。水平出しとインデックスマークを使うと同じことができるということです。
うちもこのテストをしてから撮影に取り掛かろうとしたら、妻の調子が悪くなってそれどころではなくなりました。久しぶりの晴れだったのですが、家族の理解なしでは続けられない趣味です。
それがVixenのやり方のようです。
Celestronは天頂を向けるのですね。覚えておきます。
メーカーによって違うのは仕方ありませんが、できれば統一してほしいですね。
中学生時代の憧れからかVixenを買い替えてきましたが、SXP+R200ssは1年以上使っていません。
最近はポータブル赤道儀+小型鏡筒でお気軽撮影ばかりです。
ポラリエが出たときは、「こんなものいらない」と思っていたのになぁ。
せろおさんこんばんは、Vixenも西向けなんですね。メーカの個性や発展性も欲しい気もするので、私は独自路線も結構賛成です。でも初心者には辛いかもしれないですね。せっかく覚えたのに!とかなるかもしれません。
ポラリエも結構いいみたいです。極限まで手軽にして短焦点でカメラをパッと載せて星景というのなら、使い勝手がかなりありそうです。
メールでの議論にお付き合いいただきありがとうございました。
個人的にはシンタ系のように極に向けるやり方はホームポジションの概念をわかりにくくするように感じます。
ワンスターアライメントの場合スタート時にホームポジションの座標を定義してから最初の基準星に移動するわけですが赤緯は90度で分かりやすいのですが赤経がわかりにくいですよね。赤緯軸を0度にすれば東を向くことからわかるように子午線から6時間戻った赤経になるわけですが、少しイメージしにくいですよね。私もホームポジションで子午線上にいると勘違いしてましたし。ホームポジションが東西水平、もしくは天頂がホームポジションとしてイメージしやすいかなぁと思います。
天頂の場合筒の東西指定を間違えるとクラッシュしますので東もしくは西ですかね。
結局各社のホームポジションの考え方ですね。私は他社の赤道儀の自動導入の経験はほとんどないですが、各社切磋琢磨してもっと良いものができていけば良いかと思います。でもこの分野は中国が伸びてくる気がしています。あ、でもSkyWatcherのプログラミング陣はカナダが主流だと聞きました。多分すごい人がたまに出て、この世界を引っ張っていくのだと思います。
SharpCapというソフトです。
https://www.sharpcap.co.uk
三脚水平でなくても極軸合っていて
ホームポジションが水平垂直なら
ガイド性能も問題ないとの認識で良いですか
はい、極軸さえ合っていれば水平がどうであろうと、結局は極軸を中心に正確に回転する事は変わらないので、ガイド性能も問題ないはずです。その際、ガイド鏡は極軸以外ならどの方向を向いていても構わず、天の黄道付近が一番精度が良くなります。
逆に極軸が合っていない場合、よく言われるのが「結局ガイドをするのだから、極軸は多少合ってなくても問題ないよ」とかですが、これは嘘です。ずれに応じたフィードバックを常にすることになるのでガイドループの負担が増え、性能に影響が出ます。
極軸は正確に取るに越した事はないです。