先週のお寺観望会で赤道儀の止め方の不具合で落下したC8。落ちた瞬間に少しでもショックを和らげるように足を伸ばして鏡筒を横に蹴飛ばす形で落下させました。鏡筒自身は問題なさそうでしたが、ファインダーとマイクロフォーカスの部分で地面に接触したようで、大きく傷がついていました。ファインダーは光軸ズレかと思いましたが、ピントを調節し、ファインダーホルダーの位置をネジを緩めて少しずらしたら実用上問題ないレベルになりました。問題はマイクロフォーカスです。こちらはかなりダメージが大きく、つまみを回そうとしても軸が全く回転しなかったので、分解して様子を見てみました。

まず外観ですが、つまみのところが完全にに傾いているのがわかりますでしょうか。

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順にイモネジを六角レンチで外していき、シャフトを取り出すと完全に曲がっています。最初このシャフトは全く取り外すことができず、ベンチバイスにシャフトを固定して手で力を入れて大まかにまっすぐにすることでやっと取り外すことができました。その後、金槌で叩きながらできるだけまっすぐに直します。

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微動つまみも全く回転しなかったのでよく見ると、先っぽの細いシャフトが少し曲がってしまっています。これも取り出して、ベンチバイスに挟み、金槌で軽く叩くことでまっすぐになるように戻しました。

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それにしてもこの微動の仕組みはすごいですね。部品はベアリングボールと細いシャフト、それを囲む真鍮のケースだけです。シャフトの先に少しだけ窪みがあり、そこで3つのボールと触れ合います。シャフトが回転するとボール3つも摩擦によって反対方向に回転します。ボールは外側で写真真ん中に写っている外側の回転体に触れていて、この回転体もまたボールとの摩擦によって回転します。すなわちシャフト軸の外径と、外側の回転体の内径の比で減衰率が決まるというものです。シンプルなのに非常によく考えられています。

下が全バラした写真です。分解すると非常によく構造がわかります。

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さて、シャフト2つは大体まっすぐにできたのですが、想定外だったのは真鍮のベアリングケース自身がよく見ると少しだけ曲がっていたことでした。なのでどれだけ軸だけを伸ばしてもつまみ側がどうしても傾いてしまいます。このケースもまっすぐにしようとしましたが、変に力をかけると破壊しそうで今回はそのままにしておきました。ベアリングボールはうまく回転しているようなので、つまみの見た目の傾きさえ我慢すれば問題なさそうです。

あと、写真の右側のつまみのシャフト軸を入れる方の内径が小さくかなりきつかったので、4.5mmのドリルで穴を広げたらすんなり入るようになりました。

組み立てるときに一つだけ注意点。ベアリングと回転体を押さえつけるためにナットとさらに内側に金属板状のバネが入っていますが、このナットが使っていると緩んできて微動が効かなくなってくることがあります。このナットが緩まないように、ねじ止め剤が最初から付いているようでしたので、それに合わせて組み立て時もねじ止め剤を添付します。こうすることで微動の効きが変化したり、動かなくなったりすることを防ぐことができます。

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ナットのところの青い液体がねじ止め剤です。

あとは下側の2つのネジの役割をしっかり理解することです。アイピース側から見て奥側の長いネジはフォーカス可動部の筒自身を固定する役割、手前側のネジがシャフトと可動部の密着度を調整するネジで、ここでつまみの固さを調節できます。

今回の修理の結果、まだ多少つまみの回転に渋いところは残っていますが、実用上問題無いくらいにはなりました。微動も多少渋いこともありますが、ほとんど問題なく動いています。もう少し使って、もし実戦で不満が出るようなら次はモーター付きに買い換えるかもしれません。