シーイングを客観的に評価するのは結構大変です。今回は太陽望遠鏡としてヘリオスター100Hαにモノクロのピクセルサイズ2μmのG3M678Mを用いて撮影した多数の画像を使い、シーイングを計測してみようと思います。
本記事はCP+で話した太陽トークでまだ記事にしてないことの一つで、
撮影日は2026年2月14日、ヘリオスター100Hαで太陽を約30秒に1回、約1時間で合計120枚撮影しました。一回あたりの撮影では、露光時間5ms、gain200 (ZWOのカメラでgain60=6dB=2倍に相当) で、200フレームを撮影しています。フレームレートは40fps程度で、一回の撮影で5秒くらいかかります。
ちなみに、1ファイル3GB程度の大きさになるので、120回撮影すると400GBものサイズになります。今回は通常の1倍撮影と、2倍のバローレンズをつけた撮影の、120x2=240回になります。画像処理も入れるSSDを1TB近くを消費したことになります。今回はテストなので全ファイルを残していますが、シーイングの悪い時間帯のserファイルは消すとかしないと、流石にストレージが持ちません。
1回の撮影でできたserファイルの200フレームのうち、AutoStakkert!4で上位80%をスタックします。これを120回分まとめて全て連続処理しますが、できた1枚1枚の画像ファイルのサイズはバラバラになってしまうので、ImPPGで画像サイズを合わせます。必須ではないですが、同じくImPPGで位置合わせまでしてしまうと、後からのタイムラプス映像を作る時の処理が楽になるでしょう。
これ以降シーイング評価の話になりますが、実際にやったのは目で画像を見て分解能別に分別することです。目で画像の分解能を見分けるためにはスタック直後の画像ではボケボケで見分けがつかないのでダメで、それをImPPGのバッチ処理を使い、細部出しをしたもので判別しています。その後、アルゴリズムで画像から分解能を評価するテストに進みましたが、その際はImPPGで細部出しをしたものではシーイングが現実的な値にならずにうまく評価できませんでした。そのため、以下の話はスタック直後の画像で評価しています。
画像からシーイングを評価する方法としては何種類かありますが、ここでは5つの方法を試しました。
それぞれの計算結果が正しいかどうかの判断はなかなか難しいです。ここでは120枚の画像を目で見て1枚1枚粗さ別に仕分けして、それを時系列でプロットしてみた場合と比較してみました。
その結果、少なくとも3と5は、見た目で分けた傾向とは全く違いました。3はブレが大きい場合の違いを見分けることが得意でないようです。5は大きく間違えている場合がいくつかあったので却下しました。
1、2、4に関しては、目で見た傾向とは似たものが得られました。相対的な変化は甲乙つけ難いですが、問題はこの粗さ細かさの相対的な時系列変化を、シーイングという秒角の単位の絶対的な評価にしてやる必要があります。この場合、arcsec/pixelの値がわかっていれば、秒角にまで落とし込むことができるはずです。ところが、これがなかなかうまくいくことができずに、結局1のTenengradのみがそれらしい値になりました。2と4はいずれも1秒角以下と現実的な値から乖離していたので、今回はこのTenengradを採用することにしました。
その際の結果が以下になります。
グラフを見る限り、1時間の間にシーイングがどんどん良くなっているのがわかります。9時頃は4秒書く以上と、典型的か少し悪い程度。それが改善されていって、10時頃からは1秒角程度になっているので、相当良かったことがわかります。この評価ですが、見た目で仕分けたものと比較してみます。見た目の画像は先に書いたように、ImPPGで細部出しをしたもので分別しています。
右軸の目の評価はランク付けしただけの値なので、秒角とは無関係ですが、少なくともTenengradで評価した傾向は目で見て分けた傾向とそこそこ合っているように見えます。その目で仕分けた画像を、分解能別の頻度分布を画像枚数で表してみます。
頻度は正規分布にそこそこ従っているように見えます。全枚数をある程度の順位付けした後、一番いいものと一番悪いもの、ちょうど真ん中のもの、真ん中とベスト、ワーストの中間の5枚を引き出して並べてみたものが下の比較図です。左がワースト、右がベストになります。
同じ機材、同じ手法、同じ日でも、1時間内で見た目でわかるほど大きく分解能が変化することがわかります。このばらつきが上記のような分布に従うとすると、何も考えずに適当に撮影すると真ん中ら辺の画像になる確率が一番高くなります。きちんと選ぶと、1時間で120枚撮影したうちのわずか数枚は、ものすごくいいシーイングになりますが、その確率は数%と小さいので、偶然に頼るのはあまり得策でないことがわかります。
上記の撮影に加えて、連続して2倍のバローレンズをつけて焦点距離を伸ばし、再び同条件で1時間、120枚の撮影をしました。焦点距離を増やしたということは、カメラのピクセルサイズの制限が緩和されるので、うまくいくとより分解能がよくなるはずです。
これも同様に時系列で解析します。
横軸の時間を見てもらうとわかりますが、1倍の撮影の直後の時間帯から始めていて、グラフの値も1倍の最後のところをほぼ踏襲しているように見えるので、評価としては同様のことができていると思われます。
続いて、目で仕分けしたものとの同一プロットです。
まあそこそこ傾向は一致しているように見えます。というより、目で見ていてももう良すぎて差がわからないと言った状況でした。
同様に分布図です。
1倍の時は正規分布に近い形をしていましたが、2倍の場合はどちらかというとピークが左側に寄ってしまっていて分解能が頭打ちのような状況になっているのかと思います。一つの解釈は、もう口径や光学系の制限に近づいてしまい、これ以上シーイングが良くなっても、像は良くならないと考えることができそうです。もしまだシーイングのばらつきが効いているなら、分布はもっと左側に広がってもいいはずだということです。
実際、1倍の時の一番いい画像と、2倍の時の1番いい画像を比べてみます。
確かに微妙に2倍の方がいいように見えますが、そこまで大きな差は無いと言えそうです。いいシーイングを実現してはじめて、やっとヘリオスター100Hαの性能限界に近づくことができるということなのかと思います。逆に言うと、口径100mmの性能を引き出すのは、そう簡単ではないということです。
もし、ヘリオスターの76mmでも100mmでもいいのですが、撮影したらフェニックスとそう結果が変わらなかったと悩んでいる場合は、ぜひともシーイングを選ぶということをやってみてください。方法はいろいろあるかと思いますが、これまでの経験から30秒くらいの単位で大きく変わることもあるので、やはり今回のように長時間、30秒くらいのスパンで間欠的に撮影して選ぶのが確実なのかと思います。
ここで少し疑問が湧きます。上のシーイングの時系列グラフを見てみると、1秒角を切っているところがあります。日本でのシーイングは典型的には2-4秒角、いい時でも1秒角と言われています。今回のように1秒角を平気で切るようなことはあり得るのでしょうか?
少し調べてみると、一般的な天文観測サイトでは
そもそも、シーイングとは普通はどう測定されるのかというと、一般的にはDIMM(Differential Image Motion Monitor)とも呼ばれ、ミリ秒単位の短い露光で「波面の傾きの揺らぎ」を測定し、その「ばらつき(分散)」を評価します。注意すべきことは、DIMMでは短時間露光が必須ということです。仮に露光時間を長くして平均化すると画面はぼやけるのですが、その一方でばらつきは小さくなってしまうため、もしシーイングとして評価しようとすると、良すぎる値が出てしまいます。要するに、平均化で見た目はボケてもシーイングがいいと判断してしまい、逆センスとなるわけです。これはシーイングという指標が、高次の細かい波形を見ているわけではないことを示しています。
その一方、今回の撮影は惑星のように、ごく短時間露光で撮影して多数枚をスタックしています。具体的には5ms撮影で160枚スタックしたものを1枚の静止画としています。AutoStakkertは特徴点を抽出して画像を歪めて位置合わせするようなアルゴリズムのはずなので、短時間で露光したものは一瞬一瞬のブレの少ない状態を撮影して、その特徴的な位置を認識し、次の画像も特徴的な位置を合わせるように画面を歪ませて画像を重ね合わせています。なので同じトータル時間 (ここでは5秒くらい) で単純に平均化した画像と比較すると、位置合わせして多數枚スタックした画像はシャープさが格段に良くなります。こう考えると、短時間露光で評価したシーイングと、位置合わせ多数枚スタックは同等の露光時間で評価したと言っていいのかと思います。
もう少し詳しく書いておきます。今回スタックした画像というものは、厳密にはシーイングそのものは違っていて、実効的にはPSF(Point Spread Function)を評価しています。PSFは点光源がどのように広がるかを表す関数で、これを「秒角/pixel」という画角とカメラセンサーから出てくる値から、PSFのFWHM を秒角単位にしたものです。短時間露光のスタックなので、短時間露光で測定したシーイング相当になるというのは上記で説明したとおりでいいでしょう。ただし、短時間露光スタックの方が一般的にいいFWHM値が出てしまうようです。理由は難しくはなく、位置合わせによって本来シーイングが見るべき傾き成分が取り除かれてしまい低周波成分が減るため、PSFのFWHMが小さくなるとのことです。例えばオフアキでのAO撮影のように、単純に各フレームを平行移動でそろえるだけでも一般的にFWHMは改善しますし、画像を歪ませての位置合わせとなると改善はさらに大きくなります。
さらにですが、今回は200枚中の上位160枚で8割を選んで使っていますが、この割合をもっと減らして1つのserファイル内でラッキーイメージング的なことをもっと進めると、さらに改善幅は大きくなる可能性があります。
というわけで、普通に評価するシーイングよりもスタックした方がある程度良い値になるというのは少なくとも定性的にはおかしくなさそうで、上記のグラフで出した良すぎる値は十分あり得るのかと思います。
このように厳密にいうとスタック撮影から評価した分解能はシーイングとは違うということになりますが、ここではイメージしやすいということで、グラフ内ではシーイングという言葉をあえて残すことにします。
撮影した多数の太陽のHα画像から、シーイング相当の時間変化を定量的に評価してみました。1時間でシーイングは大きく変化し、その際の最も分解能の出ている画像と、最もボケた画像では、大きく違うことがわかりました。同じ機材を使って、ここまで大きな差があることは驚き以外のなにものでもありません。いいシーイングを選ぶということは非常に重要で、口径の大きいヘリオスター100Hαはシーイングを選ぶだけの価値がある太陽望遠鏡だということです。その一方で、口径限界まで達するとそれ以上いいシーイングがあったとしても、分解能は頭打ちになってしまいもうそれ以上改善しません。
口径100mmはハイエンドクラスの太陽望遠鏡なのですが、口径200mmや300mmでの太陽画像の分解能はさらに別世界となります。例えばここは、口径300mmの太陽望遠鏡を市販しているメーカーになります。最後は口径が効いてくるのは、惑星の場合と同じなのかと思います。
2月の途中から3月はとにかく忙しかったです。CP+もありましたが、その前後も合わせて出張が多くて、ほとんど自宅にいない日が続きました。たまに自宅にいても1日とか2日で、次の日朝早く出発することを考えるとなかなか夜の撮影もままならない日が続きました。
そんな中で、先日実家の名古屋に行く用事があり、ついでにSCORPIOに寄ってきました。いつもの如く何か買うわけではないので申し訳なかったのですが、店長さんにCP+の黒点振動の動画を見せたりして盛り上がりました。ちょうど来ていたお客さんに、小学4年生の男の子と、さらにその後中学2年生の女の子がいたので、黒点振動や撮影した星雲や銀河の写真をみてもらいました。二人とも天文に興味がある子達で、一人は望遠鏡の受け取りに、もう一人は赤道儀の検討に家族と一緒に来店していました。その間に、ヘリオスター76Hαを覗かせてもらったりして、結局2時間近く滞在してしまいました。店を出た後に、たまたま宙うたさんが来店されたらしくて、つい先日購入されたヘリオスター100Hαを持ち込んで76Hαと並んで太陽を見ていたとのこと。せっかくなので宙うたさんとお会いしたかったです。もう少し長くいればよかったのかもしれません。
更に今週末は天文仲間のお客さんが自宅に来る予定です。少し準備をしたいので、できれば平日のうちに晴れてくれればいいのですが。
本記事はCP+で話した太陽トークでまだ記事にしてないことの一つで、
の3と4になります。
撮影条件
撮影日は2026年2月14日、ヘリオスター100Hαで太陽を約30秒に1回、約1時間で合計120枚撮影しました。一回あたりの撮影では、露光時間5ms、gain200 (ZWOのカメラでgain60=6dB=2倍に相当) で、200フレームを撮影しています。フレームレートは40fps程度で、一回の撮影で5秒くらいかかります。
ちなみに、1ファイル3GB程度の大きさになるので、120回撮影すると400GBものサイズになります。今回は通常の1倍撮影と、2倍のバローレンズをつけた撮影の、120x2=240回になります。画像処理も入れるSSDを1TB近くを消費したことになります。今回はテストなので全ファイルを残していますが、シーイングの悪い時間帯のserファイルは消すとかしないと、流石にストレージが持ちません。
1回の撮影でできたserファイルの200フレームのうち、AutoStakkert!4で上位80%をスタックします。これを120回分まとめて全て連続処理しますが、できた1枚1枚の画像ファイルのサイズはバラバラになってしまうので、ImPPGで画像サイズを合わせます。必須ではないですが、同じくImPPGで位置合わせまでしてしまうと、後からのタイムラプス映像を作る時の処理が楽になるでしょう。
これ以降シーイング評価の話になりますが、実際にやったのは目で画像を見て分解能別に分別することです。目で画像の分解能を見分けるためにはスタック直後の画像ではボケボケで見分けがつかないのでダメで、それをImPPGのバッチ処理を使い、細部出しをしたもので判別しています。その後、アルゴリズムで画像から分解能を評価するテストに進みましたが、その際はImPPGで細部出しをしたものではシーイングが現実的な値にならずにうまく評価できませんでした。そのため、以下の話はスタック直後の画像で評価しています。
シーイングの評価
画像からシーイングを評価する方法としては何種類かありますが、ここでは5つの方法を試しました。
- Tenengrad: 画像のシャープネス(鮮明度)や焦点の合い具合を評価するためによく用いられる勾配ベースの指標
- ラプラシアン分散(Laplacian Variance): 画像内のエッジ(輪郭)の強さを表す「ラプラシアン」を計算し、その分散(ばらつき)を算出する。
- FFT高周波比(高周波/低周波パワー比): 信号の全パワーに対する特定の高周波帯域(バンド)のパワーの割合を計算する。
- エッジ遷移幅: エッジ画像からエッジスプレッド関数 (ESF、画像上の輝度変化)を求め、それを微分してラインスプレッド関数 (LSF)を求める。エッジ法線方向に輝度プロファイルを取り、誤差関数(erf)やロジスティックでフィットして遷移幅を得る。
- フレーム間jitter(位相相関で微小シフト): シーイングは「ぼけ」だけでなく「像の揺れ」も大きいので、サブピクセルの微小移動は残る。連続フレームの相互相関からピーク位置のシフト求め、jitter のRMSを計算。
それぞれの計算結果が正しいかどうかの判断はなかなか難しいです。ここでは120枚の画像を目で見て1枚1枚粗さ別に仕分けして、それを時系列でプロットしてみた場合と比較してみました。
その結果、少なくとも3と5は、見た目で分けた傾向とは全く違いました。3はブレが大きい場合の違いを見分けることが得意でないようです。5は大きく間違えている場合がいくつかあったので却下しました。
1、2、4に関しては、目で見た傾向とは似たものが得られました。相対的な変化は甲乙つけ難いですが、問題はこの粗さ細かさの相対的な時系列変化を、シーイングという秒角の単位の絶対的な評価にしてやる必要があります。この場合、arcsec/pixelの値がわかっていれば、秒角にまで落とし込むことができるはずです。ところが、これがなかなかうまくいくことができずに、結局1のTenengradのみがそれらしい値になりました。2と4はいずれも1秒角以下と現実的な値から乖離していたので、今回はこのTenengradを採用することにしました。
シーイング変化の結果
その際の結果が以下になります。
グラフを見る限り、1時間の間にシーイングがどんどん良くなっているのがわかります。9時頃は4秒書く以上と、典型的か少し悪い程度。それが改善されていって、10時頃からは1秒角程度になっているので、相当良かったことがわかります。この評価ですが、見た目で仕分けたものと比較してみます。見た目の画像は先に書いたように、ImPPGで細部出しをしたもので分別しています。
右軸の目の評価はランク付けしただけの値なので、秒角とは無関係ですが、少なくともTenengradで評価した傾向は目で見て分けた傾向とそこそこ合っているように見えます。その目で仕分けた画像を、分解能別の頻度分布を画像枚数で表してみます。
頻度は正規分布にそこそこ従っているように見えます。全枚数をある程度の順位付けした後、一番いいものと一番悪いもの、ちょうど真ん中のもの、真ん中とベスト、ワーストの中間の5枚を引き出して並べてみたものが下の比較図です。左がワースト、右がベストになります。
同じ機材、同じ手法、同じ日でも、1時間内で見た目でわかるほど大きく分解能が変化することがわかります。このばらつきが上記のような分布に従うとすると、何も考えずに適当に撮影すると真ん中ら辺の画像になる確率が一番高くなります。きちんと選ぶと、1時間で120枚撮影したうちのわずか数枚は、ものすごくいいシーイングになりますが、その確率は数%と小さいので、偶然に頼るのはあまり得策でないことがわかります。
2倍バローでどうなるか?
上記の撮影に加えて、連続して2倍のバローレンズをつけて焦点距離を伸ばし、再び同条件で1時間、120枚の撮影をしました。焦点距離を増やしたということは、カメラのピクセルサイズの制限が緩和されるので、うまくいくとより分解能がよくなるはずです。
これも同様に時系列で解析します。
横軸の時間を見てもらうとわかりますが、1倍の撮影の直後の時間帯から始めていて、グラフの値も1倍の最後のところをほぼ踏襲しているように見えるので、評価としては同様のことができていると思われます。
続いて、目で仕分けしたものとの同一プロットです。
まあそこそこ傾向は一致しているように見えます。というより、目で見ていてももう良すぎて差がわからないと言った状況でした。
同様に分布図です。
1倍の時は正規分布に近い形をしていましたが、2倍の場合はどちらかというとピークが左側に寄ってしまっていて分解能が頭打ちのような状況になっているのかと思います。一つの解釈は、もう口径や光学系の制限に近づいてしまい、これ以上シーイングが良くなっても、像は良くならないと考えることができそうです。もしまだシーイングのばらつきが効いているなら、分布はもっと左側に広がってもいいはずだということです。
実際、1倍の時の一番いい画像と、2倍の時の1番いい画像を比べてみます。
確かに微妙に2倍の方がいいように見えますが、そこまで大きな差は無いと言えそうです。いいシーイングを実現してはじめて、やっとヘリオスター100Hαの性能限界に近づくことができるということなのかと思います。逆に言うと、口径100mmの性能を引き出すのは、そう簡単ではないということです。
もし、ヘリオスターの76mmでも100mmでもいいのですが、撮影したらフェニックスとそう結果が変わらなかったと悩んでいる場合は、ぜひともシーイングを選ぶということをやってみてください。方法はいろいろあるかと思いますが、これまでの経験から30秒くらいの単位で大きく変わることもあるので、やはり今回のように長時間、30秒くらいのスパンで間欠的に撮影して選ぶのが確実なのかと思います。
シーイングがこんなにいいのは本当か?
ここで少し疑問が湧きます。上のシーイングの時系列グラフを見てみると、1秒角を切っているところがあります。日本でのシーイングは典型的には2-4秒角、いい時でも1秒角と言われています。今回のように1秒角を平気で切るようなことはあり得るのでしょうか?
少し調べてみると、一般的な天文観測サイトでは
- 良い観測地(世界標準)-> 中央値 0.6–0.8″
- 普通の観測地 -> 中央値 0.8–1.5″程度
- 都市・低地 -> 中央値 2″以上も普通
とのことです。でもこれは世界でのことで、日本ではいろいろ不利な面があり、典型的には
- 山岳観測所(木曽・岡山など) -> 中央値 1–2″程度が中心
- 良い夜(山) -> 中央値 0.8–1.0″
- 非常に良い夜 -> 中央値 0.6–0.8″
- 平地・都市 -> 中央値 2–4″以上も普通
とのことです。これらの値は全て中央値であることに注意です。今回の撮影は自宅なのですが、時間によって1秒角から5秒角くらいまではブレても良さそうです。今回の測定結果を見ると、6秒角くらいから1秒角を切った時間帯もあります。もう少しきちんと考えてみます。
そもそも、シーイングとは普通はどう測定されるのかというと、一般的にはDIMM(Differential Image Motion Monitor)とも呼ばれ、ミリ秒単位の短い露光で「波面の傾きの揺らぎ」を測定し、その「ばらつき(分散)」を評価します。注意すべきことは、DIMMでは短時間露光が必須ということです。仮に露光時間を長くして平均化すると画面はぼやけるのですが、その一方でばらつきは小さくなってしまうため、もしシーイングとして評価しようとすると、良すぎる値が出てしまいます。要するに、平均化で見た目はボケてもシーイングがいいと判断してしまい、逆センスとなるわけです。これはシーイングという指標が、高次の細かい波形を見ているわけではないことを示しています。
その一方、今回の撮影は惑星のように、ごく短時間露光で撮影して多数枚をスタックしています。具体的には5ms撮影で160枚スタックしたものを1枚の静止画としています。AutoStakkertは特徴点を抽出して画像を歪めて位置合わせするようなアルゴリズムのはずなので、短時間で露光したものは一瞬一瞬のブレの少ない状態を撮影して、その特徴的な位置を認識し、次の画像も特徴的な位置を合わせるように画面を歪ませて画像を重ね合わせています。なので同じトータル時間 (ここでは5秒くらい) で単純に平均化した画像と比較すると、位置合わせして多數枚スタックした画像はシャープさが格段に良くなります。こう考えると、短時間露光で評価したシーイングと、位置合わせ多数枚スタックは同等の露光時間で評価したと言っていいのかと思います。
もう少し詳しく書いておきます。今回スタックした画像というものは、厳密にはシーイングそのものは違っていて、実効的にはPSF(Point Spread Function)を評価しています。PSFは点光源がどのように広がるかを表す関数で、これを「秒角/pixel」という画角とカメラセンサーから出てくる値から、PSFのFWHM を秒角単位にしたものです。短時間露光のスタックなので、短時間露光で測定したシーイング相当になるというのは上記で説明したとおりでいいでしょう。ただし、短時間露光スタックの方が一般的にいいFWHM値が出てしまうようです。理由は難しくはなく、位置合わせによって本来シーイングが見るべき傾き成分が取り除かれてしまい低周波成分が減るため、PSFのFWHMが小さくなるとのことです。例えばオフアキでのAO撮影のように、単純に各フレームを平行移動でそろえるだけでも一般的にFWHMは改善しますし、画像を歪ませての位置合わせとなると改善はさらに大きくなります。
さらにですが、今回は200枚中の上位160枚で8割を選んで使っていますが、この割合をもっと減らして1つのserファイル内でラッキーイメージング的なことをもっと進めると、さらに改善幅は大きくなる可能性があります。
というわけで、普通に評価するシーイングよりもスタックした方がある程度良い値になるというのは少なくとも定性的にはおかしくなさそうで、上記のグラフで出した良すぎる値は十分あり得るのかと思います。
このように厳密にいうとスタック撮影から評価した分解能はシーイングとは違うということになりますが、ここではイメージしやすいということで、グラフ内ではシーイングという言葉をあえて残すことにします。
まとめ
撮影した多数の太陽のHα画像から、シーイング相当の時間変化を定量的に評価してみました。1時間でシーイングは大きく変化し、その際の最も分解能の出ている画像と、最もボケた画像では、大きく違うことがわかりました。同じ機材を使って、ここまで大きな差があることは驚き以外のなにものでもありません。いいシーイングを選ぶということは非常に重要で、口径の大きいヘリオスター100Hαはシーイングを選ぶだけの価値がある太陽望遠鏡だということです。その一方で、口径限界まで達するとそれ以上いいシーイングがあったとしても、分解能は頭打ちになってしまいもうそれ以上改善しません。
口径100mmはハイエンドクラスの太陽望遠鏡なのですが、口径200mmや300mmでの太陽画像の分解能はさらに別世界となります。例えばここは、口径300mmの太陽望遠鏡を市販しているメーカーになります。最後は口径が効いてくるのは、惑星の場合と同じなのかと思います。
日記
2月の途中から3月はとにかく忙しかったです。CP+もありましたが、その前後も合わせて出張が多くて、ほとんど自宅にいない日が続きました。たまに自宅にいても1日とか2日で、次の日朝早く出発することを考えるとなかなか夜の撮影もままならない日が続きました。
そんな中で、先日実家の名古屋に行く用事があり、ついでにSCORPIOに寄ってきました。いつもの如く何か買うわけではないので申し訳なかったのですが、店長さんにCP+の黒点振動の動画を見せたりして盛り上がりました。ちょうど来ていたお客さんに、小学4年生の男の子と、さらにその後中学2年生の女の子がいたので、黒点振動や撮影した星雲や銀河の写真をみてもらいました。二人とも天文に興味がある子達で、一人は望遠鏡の受け取りに、もう一人は赤道儀の検討に家族と一緒に来店していました。その間に、ヘリオスター76Hαを覗かせてもらったりして、結局2時間近く滞在してしまいました。店を出た後に、たまたま宙うたさんが来店されたらしくて、つい先日購入されたヘリオスター100Hαを持ち込んで76Hαと並んで太陽を見ていたとのこと。せっかくなので宙うたさんとお会いしたかったです。もう少し長くいればよかったのかもしれません。
更に今週末は天文仲間のお客さんが自宅に来る予定です。少し準備をしたいので、できれば平日のうちに晴れてくれればいいのですが。



























































