ほしぞloveログ

天体観測始めました。

2026年02月

今年もCP+が近づいてきました。今回もサイトロンブースにおいて、太陽について話します。タイトルは

「昼間の天体観察
〜太陽専用望遠鏡を使ってみる〜」

としました。太陽観察をしている方、太陽に興味がある方、太陽望遠鏡のことを知りたい方、是非とも会場まで足を運んでいただければと思います。フェニックスとヘリオスター100Hαを使ったので、その比較を中心にお話しします。

CP+の情報については、公式サイトをご覧ください。


セミナー情報はここから検索できます。出展社で「サイトロンジャパン/LAOWA」を選択して「検索」ボタンを押して、最終日の3月1日を選んでください。

私のトークは

3月1日(日)の15時30分から

で、サイトロンのセミナーの中では一番最後になります。

サイトロンの特設ページからもリンクが張られています。リンク先の下の方にセミナー一覧が出ていますので、スクロールさせてみてください。
 

また、天リフさんの協力で今年もセミナーがライブ配信されます。おそらく後日見ることもできると思いますので、会場に来れなかった方は是非ともYoutubeでセミナーの内容をご覧ください。


さて、今年の内容ですが、少し期待して頂いていいかと思います。

Heliostar100Hαで撮影した高分解能の画像の一部を載せておきます。
11_05_01_lapl3_ap2189_IP2_light_mono_cut
こんな画像をどうやって撮影するのか、これまでの経験から学んだ手法を解説します。

当日は上の画像が動く様子も見せます。多分これまであまり見たことがない映像になると思います。

さらには、昨年解説したエタロンの仕組みをさらに発展させ、実際にその特性を実測した結果もまとめて紹介します。

楽しみにしていてください。



以前の分光器SHG700を使って測定したPSTのエタロンに引き続いて、いよいよフェニックスのエタロンの透過特性を測定します。



解析時のオフセットの見直し

でもその前に、以前、2025年9月23日に測定したPSTのエタロンの透過特性で少し訂正があります。グラフを再掲載しますが、ピークとピークの間の底の部分の実測とモデルが少しズレています。

fit_result_ok

この理由を以前はロスのせいと述べていましたが、これは勘違いということが判明しました。正しい原因は、測定時にカメラの設定でオフセットをつけていたのに。モデル化するときにそのオフセットをきちんと考慮していなかったことです。撮影時のオフセットはADCのカウントにすると16bit換算で2000に相当します。カメラは12bitのG3M678MでSharpCapでの撮影時にオフセットを2000としたのですが、これは(ちょっと不思議なのですが)16bitで換算された時の値になるようです。その際のエタロンの櫛のピークの高さが40000程度なので、5%ほどのずれになり、無視できない範囲です。上の画像もちょうど5%くらいずれています。オフセットの補正をして、改めてフィットしてやると下の画像のようになります。
fit2_result
底の部分が一致するようになったことがわかります。その際のFWHMは0.71Åとなり、前回より少し小さく出ています。

底の部分を合わせることがなぜ重要かというと、そのずれの分ピーク位置の高さが変わるからです。ピークの高さが変わると、当然半分の高さも変わってしまうので、FWHM(Full Width Half Maximum)も「半値全幅」の名の通り、その幅が変わってしまうからです。底位置での高さの式は

(T/(1+R))^2

で表され、上の鏡の反射率と透過率(1-R=0.28)を入れると(0.28/1.72)^2=0.026となります。この高さも使われることで、より正確なフィッティングになります。

PSTのエタロンについては、別の日の2025年10月5日に測定したデータもあります。それを同様にフィッティングしてグラフ化すると以下のようになりました。
fit_result

フィッティングから求めたFWHMは0.98Åとなりました。上記の0.7Å程度と結構違います。まだ原因がはっきりしたわけではないですが、おそらく測定の際にPSTエタロンに入射する光の当たり具合が違うために起きているようです。パラメータは大きく2種類あると考えられ、
  • 面内のどこに、どれくらいの面積で光が当たるか
  • エタロンに対する光の入射角
が問題になるかと思われます。これらのばらつきは、この時点ではまだ解決していないので、今後の課題となります。


Phoenix

PSTは一旦置いておいて、次にPhoenixのエタロンの特性を測定したいと思います。測定は2026年1月4日に行いましたが、LED光源が暗すぎて櫛の底の部分がノイズに埋もれてしまっていたので、再度2月7日に測定しました。

IMG_2524

Phoenixは鏡筒の先端部にエタロンが付いているため、鏡筒を通した光を分光器SHG700に入れます。エタロンの特性を見たいので、上の写真からBFとERFは外しています。

今回、鏡筒という長い筒を使うことで、エタロンへの入射光の角度を一定に近いものにすることができることがわかりました。PSTの測定の時にはエタロン単体に近い状態で測定していたので、LED光源の角度を変えるとピーク位置が変わるような様子が見えましたが、鏡筒込みのPhoenixの場合は画面を見ている限りはそのようなことはないようです。ただし、光がエタロンの面内のどこに当たるか、どれくらいの面積で当たるかはまだ確定していません。LEDライトは、先端に付いているレンズ位置をスライドさせることにより光束を広げたり収束できるもので、今回はとりあえず光束径がエタロン径に合うようにしましたが、LEDとエタロンの距離を一定に取れていないのでまだ不確定性があるはずです。それでもPSTの時よりはかなり安定に測定できいるのは間違いないでしょう。

更に、前回記事にした波長のキャリブレーションをしました。
Figure_1
フィットされたデータを見てわかりましたが、短い波長側と長い波長側で5%程違います。Hα中心はほぼ計算通りの0.0905Å/pixelですが、短い側は0.0928Å/pixel、長い側は0.0885Å/pixelです。使っているのはHα線のみなのでこのずれは効いてはこないですが、櫛構造のフィッティングで広い範囲を使う場合は多少効いてくるでしょう。

更に、PSTの再計算で検討したのオフセットもきちんと考慮しながら、エタロンの測定データをフィッティングしてみます。
fit_result_ok

フィッティングは実際にはもっと広い範囲で実行し、グラフでは見やすいように表示する範囲を狭めているため、このフィッティングは櫛構造になるというエタロンの原理そのものの特性を含んでいます。

グラフの横軸の範囲は先に示したPSTと同じなので、直接グラフの形で比べることができます。パッと見だけでもピークの幅が明らかに細くなっていて、Phoenixのエタロンの性能が圧倒的に良くなっているのがわかります。

もう少し詳しく見てみます。まず、Phoenixの場合、PSTに比べてピークとピークの間の幅が広がっているのがわかります。FSRと呼ばれる量ですが、今回は10ÅとPSTの1.5倍程度に広がっています。広ければ広いほど、隣のピークの影響が小さくなるので、これは大きな改善といえます。FSRは「2枚の鏡の間の距離」だけで決まる量で、PSTの0.3mm程度から0.2mm程度に狭くなったことがわかります。ただしFSRが大きくなると、同じ反射率の鏡を使った場合にはピークの幅がより大きくなり不利になります。それにも関わらず、細いピーク幅を実現しているということは、より反射率の高い鏡を使い、フィネスの高い、光の折り返し回数の多い高性能なエタロンを作り出しているというわけです。実際、鏡の強度反射率はPSTの70%程度から、Phoenixでは90%と、かなりアグレッシブな鏡になっていることが実測からわかります。高反射率の鏡を使うとエタロンとしての性能は上がりますが、その一方取り扱いは難しくなり、よりフラジャイルなエタロンとなりますので、くれぐれも荒い扱いは避けるべきです。

そしてFWHMは0.37Åと公称値の0.6Å以下を十分余裕を持って満たしています。今回は得られた画像の真ん中の部分のみを使っていて、これはエタロンの中心部のみを見ていることになるので、良すぎる値が出ている可能性があることは明記しておくべきでしょう。また、LED光源の設置にまだ不確定性が残っているので、絶対値としてFWHMについてはまだ検証の余地があるかもしれません。それでもPSTと相対的に比較することは少なくともできるはずで、共に不確定性はあるにしても結果が大きく変わることはなく、ピークの幅だけを比べても半分以下になっていることは、エタロンの性能として圧倒的に進化しているということは言えるのかと思います。

もう少し比較します。BFでHα線の波長以外をどれだけブロックできるかと、太陽光まで考えた時にどれくらい変わるかです。まずは参照として、以前掲載したPSTの場合です。

sum_eta_BF
sum_eta_BF_spe
1枚目のグラフを見るとわかりますが、Hα線の隣の左右のピークが少しですが残ってしまっています。更に2枚目では、それに太陽光のスペクトルを掛けたものを表しています。太陽光のHα線は吸収線ですが、それ以外では連続光で明るくなっているので、漏れ光としては大きくなり、左右のピークの影響は更に大きくなってしまいます。そもそものHα線のすぐ周りの裾の明るくなっているところも拾ってしまっていますし、左右のピークの高さもそれぞれ15%程度、両方あるのでそれの2倍と、無視できる範囲ではありません。

Phoenixの結果を示します。
all

all_sun_multi


1枚目のグラフでは、左右のピークの影響は全くなくなっているのがわかります。BFの透過幅自体はPSTでもPhoenixでも同じくらいです。PhoenixでFSRが広がっているのが効いていることがよくわかります。2枚目にあるように、太陽のスペクトルを掛けると、やはりHα線以外では明るいので少し影響は見えますが、PSTに比べたらほとんど影響がなくなっていることがわかります。あと、ピークの幅が小さいことが、Hα線すぐ裾の明るくなる部分もきちんとカットしてくれていることもわかります。

2枚目が実測の見え方に相当するので、2枚目で比較すべきだと思いますが、差がより明確に出ているのがわかると思います。実際に目で見たり撮影に影響するのは、全波長で積分した光量になるのですが、コントラストが圧倒的に改善することは容易に想像できるのかと思います。


まとめ

エタロン特性も大分まともに測定できるようになってきました。今回で光源の入射角についてはかなり改善できたのかと思います。測定結果を見る限り、Phoenixのエタロンはかなりすごいことがわかりました。ただ、FWHMが0.37Åと公称値の0.6Å以下というのに比べて良すぎる気もするので、もう少し検証は必要なのかと思います。PSTも鏡筒を付けて入射角の依存性を少なくして改めて測定したいと思っていますが、それで大勢が変わるとは思えず、今回の比較でわかるように太陽望遠鏡としてのエタロンの性能の進化にはもう驚くばかりです。さらに、FWHMの測定結果だけでなく、実際に太陽像を見た時の面内の見え方のばらつきも圧倒的に少なくなっていることから、世代が変わったと言っていいくらいの進化と結論づけていいかと思います。

さて、次はHeliostar100Hαの測定結果です。お楽しみに。


ちょっと前に、XでにゃーとんシュガーさんからR200SSでフラット補正がうまく行かないという投稿がありました。

ちょうど同じ時期にseki-chanさんもR200SSでよく似た問題に直面していて、個人的に直接問い合わせがあったので、個々のRAWファイルにまで見ながら、ある程度の理由を突き止めました。だいこもんさんからその過程を公開してほしいとの要請があったのですが、記事にするのに時間がかかってしまいました。

実際、皆さんフラット補正には相当苦労されてますよね。理由はそれぞれかと思いますが、フラット補正については古くから様々な方法が提案されています。それでもいまだに決め手がないような状態かと思います。光学的フラット補正の「アルゴリズム」自体は、各種画像処理ソフトにおいてある程度確立しているので、問題は「フラット画像の撮影方法と」言ってしまってもいいかもしれません。

ちょうどいい機会なので、最近思っているフラット補正について思うこともあり、記事にしておきます。あくまで光学的なフラット補正についてで、画像処理中に行うソフト的なフラット補正については基本触れず、今回は最後に少しだけ適用するだけにします。


フラット補正は大変

まず、フラット画像の撮影について、私がやっている方法を何通りか書いておきます。ただし、この方法が必ずしも正しいわけではありません。自分の環境に合わせて各自で試されるのがいいのかと思います。

基本的には、私は部屋の中の白い壁を使っています。これは元々、以前見学に行った東京大学木曽観測所の口径1mのシュミット望遠鏡が、ドーム内に吊るした白いスクリーンを使ってフラット画像を撮影していることから、この方法にしたという経緯があります。

白い壁を使う場合ですが、光源は日光の方がよくて、晴れた日か、曇りの場合は全面が曇っていて明るさが時間であまり変化しない日がいいです。窓の近くで、直射日光が当たらない壁で、できるだけ均一に光が当たっている部分を探します。基本的には明るい方がいいですが、窓が大きくて明るすぎる場合などは、薄手のカーテンなどしてもいいでしょう。壁の明るさはなかなか一様にはならず、窓側に近い側がどうしても明るくなりますが、それでもできるだけ均一な場所を選びます。このグラデーションに近い明るさの違いは、PixInsightのABEの1次でほとんど落とすことができます。あと、鏡筒の自らの影が壁に映ったりするので、あまり鏡筒を壁に近づけないことです。

もしくは、障子を利用する手があります。鏡筒の径が収まる面積の障子があれば、直射日光が当たらないところを探して、それでフラット撮影すると簡単です。屈折など、そこまで口径が大きくない場合はいいのですが、大口径の反射型などではそれだけの面積を持つ障子面を探すのが難しくなってくるので、私は最近は障子はあまり使っていません。

もう一つの方法が、晴れた昼間でいいので、鏡筒を空に向けてピントをずらして撮影することです。これは鏡筒やフォーカサー部、カメラ筐体からのセンサー面への光の入り方をかなり再現することになるので、フラットはかなり合います。特に光害地では効果が高いです。その代わり、青くなるのでその補正が必要なのと、視野に虫や鳥が入り込むこんでピントが合ってしまうことがあるので、邪魔なものが入っている画像を目で見て取り除く必要があるのが面倒なところです。

逆に一見良さそうで全然ダメなのが、ライト撮影後に対物側にスーパーの袋などを被せて、まだ暗いうちにフラットを撮影することです。「暗いうち」というのがダメな原因で、できたフラット画像は結局のところ暗いところを写しているだけなのでノイズが大きく、これでフラット化すると縞ノイズの原因になったりします。

あと、壁の場合でも、障子の場合でも、青空の場合でも、フラット撮影をするときは「カメラ側を暗くしない」ことがコツでしょうか。現実的には、天体撮影時にフォーカサー部やカメラからも光が入っていて、特に光害地での撮影だとフラット撮影時にそれを再現できないためにフラットが合わないケースがあります。フラット撮影時にもできるだけ実際の状況を再現してやるという考えです。上の方法は全てその観点から有利になっています。壁の(あまり明るすぎない)光を利用するのも、対物側とカメラ側での光量にあまり差をつけないためです。フラット撮影は短時間で済むので、漏れ光は関係ないのではという反論もあるかもしれませんが、ライト画像の撮影時には1枚あたりの露光時間が長くなるので、漏れ光の影響は入ってくると考える方が自然で、それを漏れ光が入っていないフラット画像で補正しても、原理的に補正できないのは想像できるかと思います。

その一方、フラットダークの撮影時はカメラ側も徹底的に暗くしてやります。昼間にカーテンなどで部屋を暗くするだけでは不十分で、私は部屋を暗くして、なおかつ毛布などをカメラを含めて鏡筒全体にかけて光を遮ります。ただし、毛布などを被せる時にカメラの排気口を塞ぐのは厳禁です。熱がカメラにこもってしまい故障の原因になりかねません。排気口を塞がないように且つ、光が入らないような工夫をすべきです。

IMG_8667

接眼部からの漏れがあるかどうかは、カメラを鏡筒につけたままダークノイズを撮影してみるとわかるかと思います。通常のライト撮影と同じ露光時間、ゲインで、対物側にキャップを被せてダーク画像を撮影します。その際、明るい部屋で撮影するのと、暗い部屋でさらに毛布などを全体に被せて撮影して、それぞれの画像を比較してみてください。画像の比較はオートストレッチをして、必要ならABEの4次などを使い差を見やすくするといいでしょう。ここで差が出るならば、漏れ光が原因でフラット補正がきちんと当たらない可能性が高くなります。また、漏れ光でダーク画像自身が汚されてしまい、ダーク補正がうまく行っていない可能性も出てきます。

ダーク画像、フラットダーク画像、必要ならばバイアス画像も、暗い部屋でさらに毛布などを被せて暗い状況を作り出し撮影し、その一方フラット画像はライト画像の撮影時の状況をできるだけ再現するという、ある意味至極真っ当なやり方というわけです。

これらの観点から考えると、LEDなどのフラットパネルでの撮影は原理的にどうやっても合わないと思われます。フォーカサー部やカメラ筐体からの接眼側光の入り方を無視して、鏡筒側だけ光度を強調しているからです。フォーかサーブからの漏れをものすごく気をつけているとか、ものすごく暗いところで天体を撮影しているのなら、接眼側から入る光が少なくなるのでこの問題が顕在化する可能性は下がるでしょう。フォーカサー部やカメラになんの対策もせず、光害地、特にローカルな街灯や家の明かりなどがある光害地では、この問題は大きくなる可能性が高いです。また、そもそもLEDパネルは対物側にピッタリつけるので、光路的にも現実の光の入り方とは変わってくるはずです。壁撮影も原理的には合わないですが、対物側にすきまがあるのでまだ現実を反映しやすいと考えられます。

ただし、LEDが全く使えないかというかというと、そんなことは全くなく、程度問題なのかと思います。暗い場所で撮影している場合は漏れ光の影響は少ないでしょうし、漏れこう対策をきちんとしている場合も大丈夫でしょう。原理的に光のパスが違うのは仕方ないのですが、これもどこまで合わせるかで問題になるかどうかが決まってくるでしょう。私は淡いところを相当炙り出したい口なので、わずかのフラットのズレが問題になってきますし、結局のところ光学的なフラット補正だけでは完全に合わせるのはほぼ無理なので、ソフト的な補正も駆使してます。あまり淡いところをあぶり出さない場合は、フラット補正は多少ズレがあっても問題にならないでしょう。というわけで、それぞれの環境、目標に応じた程度問題ということになるのかと思います。

あと少しだけ一般事項です。フラット画像の撮影は画面が十分明るくなるような露光時間にします。目安はヒストグラムで見てピーク位置が左3分の1から真ん中くらいです。フラット撮影時のカメラのgainはライト撮影時のゲインと必ず同じにしてください。その一方、温度は常温で構わないと思います。フラット撮影時のような短時間露光ではダークノイズはほとんど関係ないですし、バイアスノイズの温度依存性がほとんどないことは以前調べています。それよりも、下手に温度を下げたりして結露してフラット撮影を失敗することの方が多かったです。今のところ常温が原因でフラット補正を失敗したという経験はありません。

その他、基本的なことは当然なのですが、基本的に守るようにようにします。基本ができてないと何をやっても無駄です。例えば、フラットダークは必ず撮影します。フラット化がうまくいかないかなりの原因がフラットダークを使っていないことです。フラットを撮影してからそのまま部屋を暗くして、毛布をかけて、同じゲインと同じ露光時間で撮るだけです。あと、フラットとフラットダークは必ず同じ時間帯に撮影するようにしています。時間が経って温度が違うと振る舞いが変わる可能性があるからです。フラット、フラットダークの温度が合っていれさえすれば良くて、上にも書いたように、ライトフレームの温度とは違っていても構わないので、フラット撮影時に冷却する必要はありません。

いつも気をつけていることは大体これくらいです。ここで書いてるあることも単に経験則で、きちんとした検証はできていませんが、フラットで困ることはあまり無いので、そこまで間違っていないと思います。


問題の画像

seki-chanさんとは結構頻繁に画像処理の検討をしていて、今回撮影したフラット画像も、上のようなことを実行してくれています。その上で、今回はフラット補正が全くうまくいかなかったとのことです。最初に送られてきた画像は以下のようなものでした。

NGC2359_周辺減光が過補正

円のような青い形が周りに出ていて、フラットが合っていないように見えます。状況を聞いて、例えばCBPフィルターを使っているとのことなので、それも疑いました。また、処理ソフトがSirilとのことなので、フラット補正アルゴリズムが間違っている可能性もあると思い、他のソフトでも試してもらいましたが、いずれも状況は変わらずでした。他にも色々試してもらったのですが、なかなか原因が掴めずにいたので、ライト画像、ダーク画像、フラット画像、フラットダーク画像を全枚数をRAWでアップロードしてもらい、手元でそれぞれ確かめることにしました。

実はこの時点である程度原因は予測できていて、seki-chanさんに子午線反転の前後の画像をあらかじめ送ってもらっていました。一見するとあまり差がないように見えるのですが、よくみると暗い部分が反転している様子が見えました。このことを確かめるために、画像をRAWで送ってもらったというわけです。

問題の子午線前後の画像です。
2026-01-09_23-58-39__-10.00_180.00s_0049_d

赤道儀が反転する前後のRAW画像を、debayer、オートストレッチして、SterNetで恒星を消したものをgif化しています。このブログへのアップロードの関係でサイズを小さくしていますが、大まかな傾向を見るのには支障がないでしょう。

繰り返し見て比べてみると、明るいところと暗いところが上下で反転しているのがわかるかと思います。これは、近くにある邪魔な光が、ニュートン反射鏡筒の先端部から入り、先端部近くについている接眼部に非対称に当たるために起こることが原因で、子午線反転でその効果が逆転してしまった様子です。

次に同じ子午線反転前後のライト画像を、フラット補正したものを示します。
2026-01-09_23-58-39__-10.00_180.00s_0049_c_d
RAW画像をフラット補正とダーク補正して、debayer後にオートストレッチしたものです。

フラット補正に利用したマスターフラット画像は以下のようなものです。こちらもdebayerしてオートストレッチして見やすくしています。
integration_RGB_VNG

上のように、フラット補正をした後の画像を2枚を重ねて交互に見比べるとよくわかりますが、迷光の入り方で出来た差を1枚のマスターフラットでは補正しきれていないのがわかります。

次がフラットでは補正しきれていない60枚の画像を位置合わせしてスタックしたものです。
masterLight_BIN-1_4144x2822_EXPOSURE-180.00s_FILTER-NoFilter_RGB

補正しきれていない部分が重ね合わせのようになり、円状の形になっています。それぞれがうまく補正できていない一枚一枚をスタックしたので、当然かなりひどい影響となってしまっています。これが、最初にseki-Chanさんから送られてきた画像相当のものになります。一番上の画像を比べると、ちょっと補正できていない部分の形が違って見えますが、ストレッチの仕方で見え方は違ってきます。紫っぽい色なんかはよく似ていますね。


なぜこんなことが起こるのか?

結局のところ、ニュートン反射の迷光は、接眼部が鏡筒先端に近いことが原因です。接眼部が鏡筒の片側だけについているので、入ってくる迷光が本質的に対称にならないからです。撮影画面上では左右や上下で非対称になります。左右か上下かは、カメラの回転角によります。このような鏡筒と撮影地の場合、子午線反転で光の当たり具合がかなり変わってしまっています。このことは、接眼部が鏡筒横についている反射型ではかなり一般的に起こる話で、私の使っているε130Dでも起こっています。同じ反射でも、接眼部が対称になっているシュミカセなどでは起きにくいと思われます。


この光のズレは、赤道儀が動くことにより、光害などによる迷光の入り具合が違ってくることが第一に考えられます。光害と言っても、遠くの空が明るいとかというよりは、近くの街頭などの影響の方が効いてくると思われます。周りが明るい市街地での撮影だと顕著だと思います。フラット画像は例えば壁利用なんかだと、安定した状態で撮影した画像をスタックしますが、少なくともこうしてできた「一通り」のフラット画像で、これだけ違う状態を一度にフラット化するのは無理でしょう。反転前と反転後の位置でフラットを撮影して、それぞれ別に処理すると少しマシなのかもしれません。

実際には赤道儀の反転時だけでなく、追尾で動いていく最中にも迷光の状態が変わっていくはずなので、反転前後の2グループに分けるだけだとまだ不十分かもしれません。フラット処理を終えた画像を1枚1枚見ていくと、処理しきれていない誤差が画面上を動いていくのが見えます。これらをスタックすると、補正できないところが円上の形になって出てくるかと思います。

上の、円状にフラット補正がうまくいっていない画像を、無理やりソフト的に解決してみたものになります。
integration1_ABE_ABE_ABE_ABE_ABE_ABE_ABE_ABE_DBE1

これはPixInsightのABEで1次から8次まで8回繰り返し、最後にDBEをかけたものです。これくらいやって、やっと添付画像くらいになりました。完璧ではありませんが、かなりましになったかと思います。

でも、この補正は画面全体が星雲でモクモク状態だと通用しません。PixInsightのMGCだとかなり対応できるのですが、このトールの兜星雲のように、領域のデータがまだないようだMGCも使うことができません。今回は全体がモクモクしているわけではないので、まだなんとか誤魔化せたくらいです。

一番の解決方法はまずはフードだと思います。それでも時としてフードが悪さをする場合もあります。フードはペラペラの薄いものだと形が安定しないので、取り付け方次第で迷光の入り具合が変わります。もしフードを取り付けるなら、頑丈で変形せず、毎回同じ位置に取り付けられるものがいいと思います。

ε130Dもよく似た問題があるのですが、結局フードも結構面倒なのと、フードなしの方がいい場合もあったりするので、私はソフト側でなんとかしてしまっています。

というわけで、光害の影響というのが私の結論です。光害地ではフードは必須でしょう。それでも影響は残ると思うので、ソフト的な処理が必要になるかと思います。


エピローグ

その後のseki-chanさんからの返答です。
ご検討いただき、ありがとうございます。また、迷光の影響と結論づけていただき、ありがとうございます。大変勉強になりました。

今回ご指摘いただき、これまで撮影した画像を落ち着いて見返してみました。

いつも屈折望遠鏡とニュートン反射望遠鏡で撮影しています。
屈折望遠鏡の方はフラット補正後に割と素直な勾配のカブリにとどまっていました。
こちらは結露対策で長めのフードを付けており、迷光対策になっていたのだと思います。

一方、ニュートン反射の方は今回ほどひどくはないものの、ほとんどの写真で複雑な背景勾配になっていることが分かりました。
程度が軽く、一回のBGE処理で目立たなくなっていたので、気づいていないだけでした。
とのことでした。多かれ少なかれ、ニュートンで光害地での撮影では同様の問題が存在するのかと思います。


まとめ

フラット補正については私も紆余曲折してきていて、過去様々な方法を試しました。障子撮影でかなり落ち着いてきて、大口径も含めて白壁撮影で今はほとんど問題がないです。撮影したフラット画像は、鏡筒とカメラを外したり回転しなければ、使い回しができるので、できるだけ同じセッティングを保ちながら撮影するようにしています。それでも最近ε130Dの子午線反転でまだ問題があることがわかったので、こちらはもう少し対策を進める必要がありそうです。

今回、フラット画像撮影においてフォーカサー部などからの光の漏れの影響について言及しましたが、もう少し定量的な評価が必要かと思っています。ただ、これまでこういったことがこれまで議論されたことはほとんどなかったで、フラットパネルの有効性も含めて、今後議論が進めばいいのかと思っています。


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