ほしぞloveログ

天体観測始めました。

2025年10月

前回の記事で、週末金曜にレモン彗星を撮影した話を書きましたが、雲が多くて時間をかけることができませんでした。その後スワン彗星に移るというてもあったのですが、レモンさんがうまくいかなかったのとお腹が空いたので、まだ19時過ぎでしたが、もう諦めて自宅に帰ってしまいました。それでも天気は良かったので、そのまま前週の短時間撮影の撮り増しをすることにしました。


撮り増し撮影開始

時間的には夕食を食べた後の20時過ぎくらいなので、まずはサドル付近です。前週の撮影は雲も多くて、使えたものはHαが5分が5枚、OIIIに至ってはわずか3枚で、時間的には合計40分と十分とは言い難い状況でした。

今回撮影したかったのは、まずはR、G、B画像です。恒星の色を出すことと、背景が赤一辺倒になるのを防ぐ目的です。R、G、Bをそれぞれ5分x6枚撮影し、その後足りなかったOIII画像を15枚、Hα画像を12枚としました。結局OIIIの途中で雲が出てしまい、Hαの追加は取れませんでしたが、Hαはかなり濃く出るのでおそらく問題ないでしょう。結局使えたのが、RGBは6x3枚全部、OIIIは11枚でした。前回の分と合わせて、RGBがそれぞれ6枚、Hαが5枚、OIIIが14枚になります。全て5分露光です。

晴れていたらその後魔女の横顔星雲も撮り増しする予定でしたが、雲で厳しそうなので、サドル付近が終了した時点で撤収としました。

枚数的にはもう少し増やしたかった気もしますが、ノイズ処理を丁寧にすることであまりノイズ感が出ないように仕上げることができたのかと思います。ノイズ処理は最近はNXTをメインで使っています。今年2月のアップデートでのカラーノイズの対応と、高い空間周波数と低い空間周波数を分けることで、ノイズをあまり不自然にならないようにできます。

今回の撮影もフードは取り付けませんでしたが、前回撮影したフラット画像を使うことで、今回も迷光は全く出ませんでした。フード無しのフラット補正でうまくいくというのは、再現性もありそうということがわかってきました。


画像処理

R、G、B画像にも構造は十分に見えています。これはHαやOIIIだけでは表現しきれない模様があることを意味しています。画像処理は、最初はR、G、B画像のみでRGB合成をして、MGCまでかけます。これで大まかにはおかしな勾配がないことがある程度保障されます。構造は複雑ですが、白に近い色が多くて、赤色や青色の単色に近い成分は思ったより少ないです。

これだけだとさびしいので、Hα画像とOIII画像でAOO合成をして、こちらもナローバンドで(擬似的ですが)MGCを適用します。ナローだとしても、大まかな勾配を無くしておきたいという目的です。

R、G、BとHαとOIIIをどうやって混ぜていくかですが、今回はPhotoshopでRGB画像にAOO画像をレイヤーの比較 (明) で合わせて、明るさを適度に調整しました。特にRGB画像のGはAOO画像の比較的暗いところに面白い構造を出してくれます。必ずしもこの構造が正しいとは限りませんし、そもそも正しい構造なんて誰も定義できないと思うので、好みで見栄えがいいようにしています。仕上がりとしては赤だけでない色彩豊かな、淡いところの構造も複雑な色で出ていると思いますが、どうでしょうか?

ASI6200MMはbin1だと解像度が高くなりすぎて1枚1枚のファイルサイズも大きくなるので、前回も今回も含めて通常はbin2で撮影しています。今回の画像処理では、分解能を出すために2倍のDrizzle処理をして、そこにBXTをかけています。

bin2だとピクセルサイズが7,52μmになり、より明るく撮影できるので信号的に有利になります。また、光害地での撮影では背景光のショットノイズが支配的で、読み出しノイズは効いてこないので、S/N的にもbin1で撮影するよりダイレクトに有利になります。

まとめると、分解能的にはbin2の方が不利なのですが、bin1だと暗くなるのでS/N的には不利になるのと、drizzleとBXTで明らかな分解能の向上が見られるので、トータルではbin2の2倍drizzle+BXTが、今の状況では効率的にはいいのかと思っています。


結果

結果ですが、全体像としては以下のようになります。430mmでフルサイズなので、かなりの広角になります。サドルと三日月星雲が十分入るくらいになります。解像度的にはdrizzle x2をしているのでbin1相当なのですが、そのままだと大きすぎてブログにアップすることもできませんので、全体像のみ解像度を縦横半分に落としてbin2相当にしています。

「サドル (Sadr) 付近」
Image25_SPCC_MGC_BXT_GHS_GHS_NXT_HT_more_back2_half_cut
  • 撮影日: 2025年10月17日21時43分-23時51分、10月24日20時30分-23時9分
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: TAKAHASHI製 ε130D (f430mm、F3.3)
  • フィルター: Baader製 Hα 6.5nm、OIII 6.5nm
  • 赤道儀: Celestron製 CGEM II
  • カメラ: ZWO製 ASI6200MM Pro (-10℃)
  • ガイド:  f120mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: NINA、bin2、Gain 100、露光時間5分、R: 6枚、G: 6枚、B: 6枚、Hα: 5枚、OIII: 14枚の計37枚で、総露光時間3時間5分
  • Dark: Gain 100、露光時間5分、温度-10℃、117枚
  • Flat, Darkflat: Gain100、露光時間 R: 0.03秒、G: 0.03秒、B: 0.03秒、Hα: 0.5秒、OIII: 0.5秒で全て64枚
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC

前回はAOO画像からの色付けだったので、かなり無理をして、特に無理に緑を出してたような処理になっていました。今回はRGB画像があるので、まずは恒星の色がきちんと出ます。背景にもRGBの効果は出ているようで、Hαの赤を生かしつつ、緑っぽいところ、青っぽいところなど、色彩豊かになっているのかと思います。

HαとOIIIをどう混ぜるかはまだ試行錯誤中です。これまではRGBのRをHαに、BをOIIIに置き換えていましたが、RGBとAOOを適度な比率で合成する方が、よりRGB画像が生きる気がします。HαやOIIIに存在せず、RGBだけに存在する構造もあるので、できるだけRGB画像を活かす方法を今後も考えていきたいと思います。


三日月星雲とsoap bubble nebula

この撮影での目的の一つが、三日月星雲の少し下にある惑星状星雲のsoap bubble nebulaを写すことです。Wikiによると、2007年にアマチュア天文家によって見つかったという、比較的新しい星雲になります。前回も狙いましたが、撮影時間が短いせいか、存在があるかどうかというくらいの見栄えでした。今回は十分見えるくらいには出ましたが、それでもまだ淡く、これは単独で長時間で個別に狙ってもいいのかもしれません。こちらはbin1相当画像からの切出し画像になります。

Image25_SPCC_MGC_BXT_GHS_GHS_NXT_HT_more_back2_cut_L

三日月星雲自身も面白くなりました。OIII画像の枚数を増やしたからかと思いますが、周りの青いベールがよく出ています。細部の出方も焦点距離430mmとは思えないレベルです。

Image25_SPCC_MGC_BXT_GHS_GHS_NXT_HT_more_back2_cut_SS

以前、SCA260で撮影したものと比較してみます。画角が少し合わないので、以前と今回の画像の重なる部分を、向きも合わせて並べてみます。左がε130D + drizzlex2 + BXT、右がSCA260になります。

comp1

クリックして拡大してみるとわかりますが、drizzleとBXTをつかったε130Dが、BXTのないSCA260にかなり迫る解像度になっています。微恒星に関してはε130Dの方が圧勝だったりします。口径で2倍、焦点距離で3倍の差を縮めているのは驚異的です。

じゃあ大口径は無駄かというと、そんなことは全くなくて、SCA260の画像にBXTをかけたものと比較すると歴然の差が出ます。左がε130D + drizzlex2 + BXT、右がSCA260 + BXTになります。

comp1

分解能はやはり口径の大きいSCA260が圧倒、微恒星もε130Dがかなり拮抗しますが、最微恒星を比べるとやはりSCA260の方が有利です。このように、ソフトの条件を揃えるとやはり口径なりの差になるようです。ただし、SCA260の画像に使っているBXTは初期の頃のバージョンであることと、drizzleは使っていないので、もしかしたらSCA260の方はまだ解像度の向上は可能かもしれません。

いずれにせよ、BXTの有り無しで、鏡筒の口径を倍にするくらいの機材の大幅アップグレードに相当する効果があるというのは、驚異的と言わざるを得ません。


アノテーション

アノテーションを今一度示してみます。(実は何日かの間、アノテーション作れなくてエラーが出ていました。どうもサーバー側のVizieRがダウンしていたようなのですが、こんなこともあるということでメモだけしておきます。)
Image01_Annotated

430mmという短焦点でフルサイズという、ある程度の広角撮影なので、かなりの数の天体が含まれていることがあります。これを見ながら、次の切り抜き画像を楽しみます。


広角画像からの切り抜き

以前、おとめ座銀河団の広角画像でやったように、この中から特定の天体を切り出して独立した画像としも、今回の撮影ではかなりの分解能で見えているので、十分見栄えがするのかと思います。いくつか選んでみます。


1. まずはある程度大きな領域です。

最初は三日月星雲をもう少し大きな領域で。

NGC6888

あえて、三日月星雲とサドルを外して。
large3

中央の複雑な構造を、縦構図で。
large2

左上の華やかなところをまとめて見てみます。
large1

どこも複雑な構造で面白く、これらを単独で見ても天体写真として十分通用しそうです。


2. 中規模構造です。

LBN206 LBN209 LBN212をまとめて。かなり淡い領域です。もう少し時間をかけたいところでしょうか。
LBN206_209_212

中央のLBN886、LBN881、LBN882、LBN883をまとめて。
LBN886_881_882_883

LDN880、LDN887ですが、明るい中にクワガタが2匹いるような構造が見えます。ここが分解能よく見えているのも楽しいです。
LDN880_887

左上のLBN251、LBN239です。
LBN251_239


3. もっと細かいところに注目してみましょう。

いくつか星団があります。まずはM29。メシエ天体ですね。
M29

こちらも星団のIC1311です。
IC1311

こちらはかなり小さな星団でNGC6910。
NGC6910

このNGC6910ですが、これくらいの小さい天体になるとアマチュアで単独で撮影される機会はグッと減るようで、むしろ研究対象としての天体になっているのが検索でわかります。例えば、磁場構造の解析がされたりしています。

どうでしょうか?どれも単独で撮影したと言ってしまっても、そこまで見劣りしないくらいにはなっているかと思います。今回は私としては全体的にあまり派手にはしていなくて、かなり地味目な処理になっています。特に小さな領域はどうしても淡く見えてしまうので、そのことも考えて、もう少し彩度などを上げてもいいのかもしれません。切り抜きも考えて、広域と細部を両立させる画像処理は結構難しそうです。今後の課題ですね。


まとめ

前回の撮影枚数は限られていたために、今回の撮り増しは、soap bubble nebulaや三日月星雲だけ見ても明らかに効果がありました。これだけ高解像度だと、広角だけではもったいなくて、拡大してやっと見えてくる箇所もあります。今回のような広角からの切り抜きも、せっかく撮影した画像の有効活用になるのかと思います。



レモン彗星が見頃を迎えています。見えるのは夕方なのですが、平日は仕事があり、最近忙しいので時間的に厳しいです。


やっとチャンスが

そんな中の10月25日、週末の金曜日でたまたま早く帰れそうな時があり、朝から快晴なので期待していました。職場を17時すぎくらいに出たのはいいのですが、空を見るとかなり曇っています。「あー、これはまたダメか...」と思いながら帰りましたが、自宅に近づくにつれ雲がなくなってきます。

「なんとかなりそうか」と思い、自宅に着いてすぐにカメラを車に詰めて、いつもの自宅から5分くらいの川の堤防に行きます。だいぶ晴れてきているのに、西の低いところにはどうしても雲があります。とりあえず三脚に自動雲台をつけて、6Dに50mmのレンズをつけて何枚か写しますが、やはり彗星は確認できません。かんむり座の下というのを目印にしますが、どうしても雲が邪魔しています。

結局何十枚か写して、彗星が写っていたのはわずか3枚でした。その中のベストショットがこれです。クリックして拡大すると、真ん中の少し左くらいに尾っぽが見えます。ベストショットというより、彗星の全景が雲に隠れずに写っているのがこの1枚だけだったということです。
IMG_0066_2

拡大したものが以下になります。4秒露光の1枚撮りなので、炙り出してもせいぜいこれくらいでした。
IMG_0066_crop_BXT_HT_NXT

105mmのレンズも持っていったのですが、導入するまもなく撃沈でした。このブログを書いている土曜日も狙っていたのですが、雨でこちらも撃沈でした。


県天例会

土曜は諦めて、夕方からは富山県天文学会の例会に前回の9月に引き続き出席しました。10人くらいは集まっていたでしょうか?

何人かの方が活動の報告をして、私も半年ぶりに夜の撮影の再開をした話と、先月の例会の時に話した太陽分光の話の続きで、太陽望遠鏡のHαの透過曲線の測定の話をしました。特に、天体撮影用のHαフィルターの透過率の話は、皆さん普通に使っている人も多いので、興味を引いたようです。それよりも、夜の天体撮影でε130Dの話をして、その迷光の話は結構反響が大きかったようです。

その際、私は光害地でもある自宅での撮影なのですが「光害地のような明るい場所では、明るい鏡筒と暗い鏡筒どちらが有利か?」というクイズを出したのですが、ノイズのことを考える良いきっかけになるのかと思います。ブログを読んでいる皆さんはすぐに答えと理由はわかりますでしょうか?特に、撮影の場合と眼視の場合ではどうでしょうか?

さらに「光害地では冷却カメラに効果があるかどうか?」というクイズを出しました。これもすぐに答えは出ますでしょうか?

こんな話をしていると、「昔の『光年』(富山県天文学会の会報)には研究っぽい話がたくさん書いてあった」とかいう話になりました。我々のローカルグループの名前には「学会」と入っていますが、基本的には富山の星好きが集まったアマチュアのグループです。でも「『学会』の名に恥じないように活動していこう」とかで締めとなりました。活動としてはもう50年以上も地域の観望会を定常的に続けていて、会として継続的にとても頑張っているのかと思います。


科学博物館の観望会

例会のあとは、毎週科学博物館で行われている観望会に顔を出しました。と言っても、この日は天気が悪いので室内で学芸員さんによるお話です。ちょうど話が終わったくらいで辿り着いたのですが、ちょうどレモン彗星の話だったとか。

前回の例会の時に来ていた女の子とも再会することができました。神岡の道の駅にある「カミオカラボ」をお勧めしておいたのですが、お父さんに連れて行ってもらったみたいで、面白かったみたいでした。「また岐阜行きたーい」とかお母さんにねだっていました。このご家族、近くに住んでいるので観望会に毎週参加しているとのことです。この日はなんと科学博物館にサイエンスラボ、プラネタリウム、観望会と3回も来ているそうです。まだ小学1−2年生くらいでしょうか、将来も星好きでいてくれると嬉しいです。


ここしばらくずっと太陽に夢中だったのですが、さすがに太陽も少し飽きてきたので、約半年ぶりに夜の撮影を再開しました。


夜の撮影再開

2025年10月17日の金曜日、新月期で8時間も暗い時間があり、晴れていて、空を見たら透明度がかなり良かったので、さすがに何もしないのは気が引けてきました。太陽もやりたいことはかなりできてきています。もう少し試したいことも残っているのですが、太陽の撮影は休日に晴れてくれないとできません。平日に早く起きればいいのですが、仕事に影響がありそうで躊躇しています。

今年は秋でもあまり晴れの印象がありません。平日なら多少晴れるのと、夜の撮影は、開始さえすればあとは寝てしまえばいいので、平日でも可能です。というわけで、やっと夜の撮影の再開です。


機材と撮影準備

手持ちの撮影用機材は大きい順からSCA260、ε130D、RedCat51とあるのですが、再開に際しどれを使うか迷いました。結局、撮影を中断してから何もいじっていないε130Dにしました。SCA260はアップグレードでカメラを外してから、一旦取り付けはしたのですがまだきちんと動くか不明です。RedCat51はSWAgTiとの組み合わせなので楽なのですが、一時期カメラを外した際に埃が入ってしまったままです。ε130Dは確か今年初めの頃にカメラを90度回転させましたが、それ以外は問題ないはずです。あと、ε130Dを載せるCGEM IIは、太陽でもずっと使っていたというのもあります。

星を始めてから、これだけの期間夜の撮影しなかったことはなかったと思うので、ある意味いろんなことが新鮮です。撮影用のPCはこれまで使っていたStickPCなのですが、ソフトはいくつかアップデートしました。ただ、このPCは結構古くて非力で、NINAの3.0以降では重くて画像の転送速度が出ないことがわかっているので、新しいminiPCも用意することにしました。今回の撮影では設定不足で入れ替えとはいきませんでしたが、次回くらいには新PCで撮影くらいはできそうなところまでセットアップは進みました。

ガイド鏡は太陽撮影でも使ってしまっていて、蓋の穴をくり抜いてフィルムのNDフィルターをつけたりしていたので、カバーを外す時は注意が必要なのです。カバーをなくすのが嫌なのでテープで鏡筒に貼り付けておいたら、途中からの強風で飛んでいってしまい、翌朝10mくらい離れた溝の中に落ちているのを発見しました。

一つ忘れてしまったことがありました。撮影時にε130Dにフードをつけることが頭から完全に飛んでしまっていたのです。でもこのことは、後で示すように意外ないい結果につながりました。

撮影開始時に、NINAでEAFのオートフォーカスを走らせたのですが、曲線の形があまりにおかしいので調べてみたら、鏡筒接眼部の焦点調整のネジがしまっていて接眼部が前後にほとんど動かない状態になってました。なぜこうなっているのか全く記憶がないのですが、久しぶりだとこんな些細なことがトラブルになります。

それ以外は問題なく、むしろ思ったより順調に撮影を再開できた感じです。何も変えていなかった鏡筒を選んだのは正解で、かつそれでも多少のトラブルはあるものです。再開時はできるだけ冒険をしなというのが鉄則なのかと思います。また慣れてきたら、他の二つの鏡筒を試せばいいでしょう。

前半のターゲットは夏の天体の残りのサドル付近で、三日月星雲を入れてです。HαとOIIと構成と背景の色だしにRGBを狙いましたが、0時頃には西の空の低いところに沈んでしまい、結局時間切れでAOの撮影ができたのみでした。その後、冬の天体に移り、ターゲットを魔女の横顔星雲としました。RGBを撮影後Lも撮影できたらと思いましたが、途中から月が出てくるのでLは諦めて、その分RGBの枚数を稼ぐことにしました。

次の日は土曜で休みなので、ずっと起きていても良かったのですが、結局午前2時頃には寝てしまいました。撮影途中も気づいていたのですが、どうもこの日は快晴には程遠くて、ガイド用カメラには雲が流れる様子が見え、結構頻繁にガイド星を見失っていました。


画像処理

翌朝、撮影結果を見ましたが、雲の影響が大きくかなりの枚数を捨てなければダメそうです。結局使えたのが、サドル付近ではHαが5分x5枚、OIIが5分x3枚で、トータルわずか40分、魔女の横顔もRが5分4枚、Gが3枚、Bが4枚と、こちらもわずかトータル55分でした。これだけ短いともうテスト撮影レベルです。結果を期待せずに、様子見で画像処理を進めました。

まずRAW画像をそのまま見て思ったのが、特に魔女の横顔のほうですが、かなり淡いのでパッと炙り出してみるとε130D特有の迷光が大きく出てしまっているのがわかりました。下はRの1枚撮り画像にSTFの強度オートストレッチをかけたものです。

Image17_ABE

これはさすがに厳しいかと思いました。最初に処理した時はフラットが全然合わなかった(カメラの回転角が変わった)ので、今ブログを書いている日曜の昼間にフラットを全て取り直しました。いつものように、部屋の中の白い壁を撮影します。

ゲインのみ撮影時の100に合わせて、明るさは露光時間を変えて調整します。温度は下手に冷却すると結露とかして痛い目にあったことがあるので、常温のままです。フラットダークもフラット撮影時と温度を合わせるために必ず一緒に撮影するようにしています。撮影する時はLRGBAOSの全部を撮影するようにして、一度撮影したものを今後使い回します。カメラを外したり、動かしたりしない限り、フラット画像は使い回すことができると思っていいでしょう。

新たに撮影したフラット画像を使って処理したところ、なぜか迷光が全くわからなくなるレベルでうまく補正ができました。下はRをWPPで5枚スタックしてSTFの強度オートストレッチをかけたものです。WBPPでのフラット化で迷光は見事に消えています。

integration_ABE

この迷光には過去に散々悩まされていて、これまではここまでうまく補正できたことはありません。心当たりが一つあるとしたら、今回はフードをつけなかったことでしょうか。撮影場所はこれまでと一緒の自宅の庭。しかも位置までほとんど変わらないので、自宅や街灯の状況も同じだと思っていいでしょう。フィルターやカメラなども変えていないので、こちらも影響がないでしょう。まだ確定ではないですが、フードがフラット化にはむしろ悪影響を起こしていた可能性は否定できません。確定にはもう少し時間をかけたいと思います。

フラット化がここまでうまくいくと、その後の画像処理はかなり楽です。その一方、トータル露光時間がどちらのターゲットも1時間以下と短いので限界もあり、ノイズ処理などが重要になります。


魔女の横顔星雲

処理した順に結果を示します。まずは魔女の横顔星雲です。RGB画像で合成が楽なので、先に処理しました。RGBだとMGCがまともに使えるために、色合わせやフラット化が楽になります。露光時間が短いので多少ノイジーなのは仕方ありません。NXTなどを使いノイズ処理を丁寧にかけると、思ったより淡いところまで炙り出すことができました。

Image17_SPCC_MGC_HS_NXT_back_HT_SCNR2_cut_rotate
  • 撮影日: 2025年10月18日1時5分-2時8分
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: TAKAHASHI製 ε130D(f430mm、F3.3)
  • フィルター: ZWO製 R、G、B
  • 赤道儀: Celestron製 CGEM II
  • カメラ: ZWO製 ASI6200MM Pro (-10℃)
  • ガイド:  f120mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: NINA、bin2、Gain 100、露光時間5分、R: 4枚、G: 3枚、B: 4枚の計11枚で総露光時間55分
  • Dark: Gain 100、露光時間5分、温度-10℃、117枚
  • Flat, Darkflat: Gain100、露光時間 R: 0.03秒、G: 0.03秒、B: 0.03秒で全て64枚
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC

この露光時間で、しかも自宅での撮影でこの結果なら、もうあまり不満はありません。よく見ると、左右に横切る赤い構造が見えるので、Hαを別撮りして追加してもいいかもしれません。


過去画像との比較

以前魔女の横顔を撮影したのは2019年で、もう5年も前のことになります。その際の画像が以下です。

integration_DBE_DBE1_PCC_AS_SNP_mask_all2a_cut

その後、2020年に上の画像をDeNoiseで再処理したものが以下です。
integration_DBE_DBE1_PCC_AS_SNP_DN-denoise_cut

機材はFS-60CBとEOS6Dで、露光時間は1時間27分でした。もっと長く撮影したのかと思ってましたが、高々1時間半なので、5年の間に長時間撮影が普通になってしまったということでしょうか。その一方、今回の45分はもっと短いにも関わらず、より淡いところも細かい構造も圧倒的によく出ています。口径が大きくなったこと、カメラが高感度になったこと、画像処理ソフトが進化したことなどが原因かと思われます。

当時の記事を読み返していると、DeNoiseのインパクトが相当大きかったことがわかります。今はその役割をBXTとNXTが担っていると言っていいでしょうか。特にNXTは今年の2月のアップデートでカラーノイズに対応したので、かなり使える範囲が増え、DeNoiseやPhotoshopのカラーノイズ軽減に頼らなくても良くなったと言えます。


サドルから三日月星雲

サドル付近はHαが支配的なため、AOO撮影が簡単で面白いのですが、ナローバンド撮影ではMGCなどをきちんと使うことができないため、ちょっと面倒です。Hα画像のS/Nは1枚でもかなりよく、全体に迫力が出ます。下は1枚撮りにPIのABEの4次をかけて、STFで強度にオートストレッチした画像ですが、画面全体に複雑な構造が広がっています。

Image01_ABE

AOO合成そもそも2色しかないものを無理やり3色にするので、のっぺり画面になりがちなのです。下は3枚のOIII画像をスタックしたものですが、同じくPIのABEの4次をかけて、STFで強度にオートストレッチしたものです。今回はOIIIにも多少構造は含まれているようなので、多少は色の階調が出そうです。

integration_ABE

AOO合成をして処理したものが以下になります。
Image10_SPCC_MGC_NXT_BXT_GHSx3_HT_NXT_back_LHT_SCNR2
  • 撮影日: 2025年10月17日21時43分-23時51分
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: TAKAHASHI製 ε130D(f430mm、F3.3)
  • フィルター: Baader製 Hα 6.5nm、OIII 6.5nm
  • 赤道儀: Celestron製 CGEM II
  • カメラ: ZWO製 ASI6200MM Pro (-10℃)
  • ガイド:  f120mmガイド鏡 + ASI290MM、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: NINA、bin2、Gain 100、露光時間5分、Hα: 5枚、OIII: 3枚の計8枚で総露光時間40分
  • Dark: Gain 100、露光時間5分、温度-10℃、117枚
  • Flat, Darkflat: Gain100、露光時間 Hα: 0.5秒、OIII: 0.5秒で全て64枚
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC
Gに割当てたOIIと、Bに割当てたOIIで少し処理に差をつけることで、構造がよりはっきりとして多少面白い画像になります。本来はRGBで撮影した画像を使って色付けをしたいところですが、今回は曇りで露光時間がとれなかったので、できることといってもこれくらいになってしまいます。

この領域は三日月星雲を個別に個別に撮ったりはしていますが、広角で電視観望で見たりはしていますが、広角で撮影までするのは初めてです。

広角で撮ったのは、三日月星雲の少し下にバブル状の惑星星雲があるという話で、それを見たかったのですが、流石にこの露光時間では厳しかったようです。上の画像からその部分を切り出して、少しノイズを落とし、彩度をあげた画像を示します。

Image10_SPCC_MGC_NXT_BXT_GHSx3_HT_NXT_back_LHT_SCNR2_buble_cut

右下の半円の盛り上がっているところのてっぺんに少しだけその片鱗が見えます。もっと露光時間をかけて出すことができればと思います。それよりも、これだけ拡大してもあまり大きく破綻せずに、そこそこ見えてしまう方が驚きです。枚数を稼いでいないのでdrizzleとかもできていません。2倍のdrizzleをかけるとさらに解像度も増すのかと思います。ε130Dおそるべしです。


Annotation

恒例のAnnotationです。まずは魔女の横顔から。この領域もすごい数の銀河があります。

Image01_Annotated

続いてサドル付近です。こちらもSh2天体とかが含まれていて、かなり豪華な領域です。
Image01_Annotated


まとめ

やっと夜の撮影に復帰しました。仕事は忙しいし、たまの休みも雨が続いて太陽撮影は全然進まないしで、少しヤキモキしていましたが、久しぶりにストレス解消になりました。半年ぶりの撮影も画像処理も、太陽とはまた違って、懐かしかったです。

雲があったので、実際に使えた枚数は少なかったのですが、露光時間の割には十分細部まで出るのはかなり楽しいです。ε130Dの明るさと、ASI6200MMのbin2での明るい撮影が効いているのだと思います。自宅のような光害地でも十分なS/Nを稼げます。

平日でもいいので晴れが続いてくれるなら、もう少し同じ領域で撮り増しするかもしれません。


前回、SHG700を使ってPSTエタロンの応答を測定しました。今回は、透過幅6Å程度と言われているBF(Blocking Filter)及び、ERF (Energy Rejection Filter) 相当に普段使っている透過幅7nmのHαフィルターの応答を測定し、PST全体の応答を検証して見ます。


BFの測定

まずはBFです。実はBFについては、前回の測定の時にすでに測定していました。でも中心波長がHα線の6553Åから全然ずれてしまっていて、隣のピーク近くまでいってしまっていたので、測定自身を疑っていました。今回はHα波長と比較しながら測定してみます。

この日の測定もやはり曇りの日です。太陽の散乱光をSHG700を使ってフラウンホーファー線を映し出します。これが波長のキャリブレーションになるので、正確に見えるようにピントや回折格子の回転角を合わせます。特に今回は、Hα中心波長からのズレをすぐに判断したいので、SharpCapの画面上レチクリ機能を利用して、レチクル線に合うように回折格子を調整しました。具体的には下の画面のようになります。上下のちょうど中心の赤線がHαぴったりになるので、これからする測定もすぐに判断できるはずです。
スクリーンショット 2025-10-05 130303

そして一連の測定後に再度フラウンホーファー線を見て、最初の位置からズレていないことを確認すれば、時間的な波長のズレや、測定で間違って回折格子をズラしてしまったとかがないことも担保されるでしょう。

さて、実際のBFを測定してみました。BFは2つ持っているので、前回測定したもの(実はこちらがスペアのもの)と、普段使っているものも(本当は常用しているものはできるだけ崩したくないのですが)新たに外して測定してみました。ところが何と、前回中心から全然ズレていたものが今回かなり中心に来て、普段常用で使っている正しいはずのものが中心波長から全然ズレています。やはりHαの中心にこないんですよね。

流石にこれはおかしいと思い、いろいろ触ってみました。わかったことは入射光に対してものすごい角度依存性があるということです。例えばズレている時の測定状況は以下のような感じ、上下中心の赤い線から中心がズレるどころか、ほとんどBFの透過範囲にさえ入っていません。
スクリーンショット 2025-10-05 131358

今の段階では精度良く角度を調整できるような機構はないので、LEDの角度を手で微調整します。そうすると下の画像のように、あれだけズレていた透過範囲の中心を赤線の上、すなわちHα線の中心に持ってくることができてしまいます。
スクリーンショット 2025-10-05 132001

本来ならこの時点で入射光の角度依存性を丁寧に測定すべきなのですが、そのためには光源と分光器をきちんと固定して、角度を正確にずらすことができるような機構が必要になってきます。今はそのようなものはないのと、ちょっと大変そうなので、もしかしたら次は望遠鏡にSHG700を取り付けて、直接太陽を見て測定するとかにするかもしれません。角度調整はBFは無理ですが、エタロンは波長調整のための回転部を回すと角度が変わるはずなので、その関係を見るのも面白いかと思います。これらは今後の課題としたいと思います。

話を戻して、BFの透過特性をHα線を中心に持って来た状態で測ってみました。Hα線の周りを拡大したものになっています。グラフのオレンジの点線がフラウンフォーファー線から求めたHα線の位置になります。以下のようになります。
BF

まずここからわかることは、全然左右対称でないこと、ピーク位置は裾野に比べて中心には位置していないことです。。

ピーク位置での測定された最大透過光を1として、左右の光量が0.5になるところの波長を読み取り、その差から波長幅を読み取ったものがFWHM (Full WIdth Half Maximum) になります。今回は6.2Å程度でした。これは一般的に言われている6Å程度というのにかなり近い値です。


ERF

次は、ERF代わりに使っている7nmの天体撮影用のHαフィルターです。

本来はPSTには、BFで取りこぼして透過してしまう、短波長側と長波長側 (実際にはBFは短波長には漏れていないみたいなので、主に長波長側のみ) をカットするフィルターがあります。直接中を見ると枠にITF (Induced Transmission Filter) と書かれているものです。ところがこのフィルターの透過範囲が広すぎて(ここCoronado Blockfilter BF15 , Filter zum ObjektivによるとFWHMで100nm程度)、今のSHG700では一度に測定することができません。今の私のシステム(SHG700+G3M678M)だと測定範囲は18nm程度なので、端の方まで測ろうとすると10回くらい移動しなくてはいけません。面倒なことと、今回はHαの基準を真ん中に合わせたのを崩したくないこと、実際にもうERFとしてITFは使っていなくて、代わりに天体撮影用のHαフィルターを使っているので、今回はITFは諦めることにしてHαフィルターの方を測定します。

測定したHαフィルターは、手元にあるサイトロン製の透過幅7nmのアメリカンサイズのものです。サイトロンジャパンオリジナルと謳っていて、日本で作っていて、合成石英ガラスを採用しているとのことです。ただ、シュミットの販売ページを見ると現在は「在庫なし」となっているようです。これをPSTのアイピース側に入れて実際に使っています。

測定結果です。
HA

左右対称にはなっていませんが、BFに比べて大きな透過幅なので大きな問題ではないでしょう。こちらも一番透過する値の半分の所の左右の波長を読んで、その差をとってやると6.45nmと出ました。公称の7nmを満たしています。


PST全体の性能評価

今回測定したBFとERF(の代わり)を、さらにこちらも改めて実測したエタロンも合わせて表示してみます。エタロンもBFもHαフィルターも真ん中がちょうどHα線になるように、それぞれLEDライトの光の入射角を調整しています。なので、ここでは中心波長からどれだけずれているかなどの議論はできません。
all_wide

特に、興味のあるHα周りを拡大してみます。
all_narrow

BFの透過の端のところが左右の隣のエタロンのピークに少しかかっていることがわかります。狭い範囲なので、Hαフィルターはほぼフラットになります。

これ以降は平らなHαフィルターは省きます。まず、エタロンとBFのを合わせた透過率がどれくらいになるのか、その積を見てみましょう。
sum_eta_BF

確かにエタロンの隣のピークのところの透過率が少し盛り上がっていますが、5%以下なので大した問題ではなさそうです。

でもここで、さらに実測した太陽のスペクトルをかけたものを示します。
sum_eta_BF_spe

元々太陽の吸収線であるHαの暗いところを見ようとしているのですが、それ以外の波長のところは全然明るいわけです。エタロンの隣のピークのところもHα線からはるかに離れているので、当然明るいです。

それを考慮するとHαの中心波長位置に比べて、隣のピーク位置でそれぞれ15%程度の「明るさ」のピークになります。両側にあるので、合わせて30%程度になるでしょうか。実際の明るさは波長で積分したものになるので、Hα線周りの裾野も大きく、そこまで影響はないかもしれませんが、太陽スペクトルと一緒に考えると、そもそもそのHα周りの裾野の影響も相当大きいということを認識しておくべきでしょう。これらの影響はコントラスト低下につながります。そのため、
  • よりフィネスが高い、狭帯域のエタロン
  • 鏡の間の距離がより長い、FSRの大きいエタロン
  • 狭帯域のBF
などが求められるわけです。

その一方、コントラストの影響は眼視には直結しますが、撮影では一定の明るさの光はオフセットとして差し引くことができるので、影響は眼視ほど大きくはありません。もちろん、明るいということはショットノイズも大きいということなので、ノイズとしての影響は当然でます。

さらに、これは明るさだけの問題ではなくて、以前調べたように波長ごとに像そのものが大きく変わるので、コントラストの問題というよりは、どの波長を見るかという波長域の問題になります。



以前検討してみたメーカーの違うエタロンのダブルスタックは眼視という観点では主にコントラストに効き、撮影という観点では主に波長域に効くと考えると、いずれにせよかなり効果的なのかと思います。


まとめと今後

エタロン、BF、ERFと、やっとPSTの性能の実測ができました。ただし、入射光の角度依存性があることは分かりましたが、きちんとした検証は今後の課題です。

このPSTの透過曲線に、太陽スペクルを掛け合わせると、さらにいろいろ検討できることもわかりました。これまで考えてきたことが少しづつつながって、どんどん謎解きが進みます。アマチュア天文の醍醐味ですね。

さてとりあえずの次の目標ですが、手持ちのナローバンドフィルターをそれぞれ測定してみたいと思っています。せっかく手に入れた測定手段なので、まだまだ続きます。


最近は休日に全然晴れません。この日は久しぶりの晴れの予報でした。でも結局、朝は曇りで、昼頃に少し晴れただけでした。その晴れ間に撮ったHα画像です。


スリット部を改造

SHG700のスリットは、その台座のところで斜めになって取り付けられています。反射光を光軸から逃すためだと思いますが、その斜めになっていることが理由で、一部の測定で太陽像のゴーストが出てしまうことがわかっています。その斜めになっている台座の固定ネジの下側に、ワッシャーを挟むことで台座を斜めに傾けて、スリットを水平に近づけるようにしてみました。今日の午前中はその作業に時間を費やしました。

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その作業の効果や、どんな用途で使うかはまたそのうちに説明するとして、作業後の撮影復帰が大変だったというのが今日の話です。そもそも、スリットを触ったのはこの日が初めてです。その結果、問題点が二つ起きてました。

一つは作業でスリット表面にホコリのようなものがついてしまい、撮影時に黒い固定線が入り込んでしまったことです。これは、MLastroで推奨されていないブロアーでしつこく吹き飛ばすことで何とか解決しました。ブロアーはまだましかもしれませんが、少なくともスリットを何かで拭くようなことは絶対にしない方がいいとのことです。

もう一つの問題は、スリット位置をそこそこ正確に取り付け直さないと撮影範囲がずれてしまい、スリットの端がカメラの画角内に入らなくなってしまうことです。最初は鏡筒からSHG700を外して調整し、取り付けて太陽で画角を確認して、また外して調整というのを繰り返していました。これは結構な手間です。でもよく考えたら、散乱光でもスリットの端が見えるということに気づき、鏡筒から外して画面を見ながら調整することでうまく合わせることができました。位置合わせについては今回の調整で様子がわかったのですが、スリットの回転角が撮像にどう影響するかがまだよくわかっていません。

実はちょっと前に、長さが7mmから10mmになった新しいスリットがMLastroからリリースされて、リリース後すぐに発注していのがやっと最近届いたので、今回はその交換練習も兼ねていたのですが、本番の交換前にもう少し理解を深めておいた方が良さそうです。

さて、スリットをうまく付け直して、やっと撮影です。ピントはいつものようにコリメートレンズとカメラレンズと鏡筒の焦点の3自由度を合わせることで、うまくいきました。撮影している途中でちょうど正午くらいになり、連続撮影のSHGで毎回初期位置に戻すように設定していたのが原因で赤道儀が勝手に反転したのにはちょっとびっくりしました。反転後は、ウェイトバランスが悪さをして、また像が伸びてしまいました。ウェイトの位置を調整して、やっときちんと取れるようになったかと思ったら曇り出してしまいました。結局この日取れたのは5ショットのみ。その結果です。


Hα画像

まずモノクロ画像ですが、これは5ショットをスタックしました。1枚1枚の解像度がイマイチだったからです。
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条件がいい時の1枚画像のほうがいいのか、スタックした方がいいのかはまだ迷っています。少なくとも、30分とかの長時間で撮影した多数枚のスタックでは、逆に像が甘くなってしまうようです。それでも今回は5枚スタックでもはっきりしません。基本的には午前撮影の方がいいみたいです。

モノクロ以外は、一枚画像です。

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CaKなど、もう少し撮影したくて夕方まで待っていましたが、結局晴れず。この日は諦めました。


今年の夏から秋にかけて、県天  (私の所属する富山県天文学会、ただし学会といってもアマチュア天文家が集まる地域のグループです) の行事の一環で、いくつか観望会がありました。高岡での観望会以降、観望会当日の天気があまり良くなかったこともあり、あまり記事にしてこなかったのですが、ここで一度まとめておこうと思います。


8月8日(金): とやまスターウォッチングat富岩運河環水公園

毎年恒例になっている、環水公園での観望会です。富山県の主催になります。県天はその中の協力団体として参加しています。下は昨年の様子です。


今年はというと、天気がかなりイマイチでした。暗くなりかけの最初の頃はまだ晴れていて、一番星見つけごっこや、月も見えていて、まだ明るいうちからM57を入れて見せたりしていましたが、程なくかなり曇りだして、あまり見えなくなりました。途中雲間から月が時々見えたりしたくらいで、あまり書くことがなく、記事化も見送っていました。

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それでもこの観望会は、環水公園という駅近くで、駐車場も無料で、比較的お客さん、特に子供が多く参加してくれます。富山は基本的に車生活なので、駐車場がないと子供連れではなかなか参加できないのかと思います。富山大学や富山県立大学の天文部などの学生が望遠鏡を出してくれるのも特徴です。地元で若い天文好きの人と交流できる数少ない機会なので、必ず話しかけるようにしています。毎年電視観望を見るのを楽しみにしてくれる学生もいます。もう少し天気が良ければと思ったのですが、これもまた観望会あるあるで、終了時間が来て片付け終わって空を見たら、広い範囲で晴れ渡ってていました。でも22時になると駐車場が閉鎖されて出られなくなってしまうので、21時半頃には退散となりました。また来年に期待したいと思います。


8月30日(土) 高岡での地域観望会

県天主催ではないのですが、県天メンバーの一人が主催となって、地域で開催した観望会になります。主催のメンバーから直接、お手伝いを頼まれたので、参加してきました。場所は高岡のちょっと山に入ったところです。山間部にいくつか集落が点在していて、主催の方もそこで生まれ育ったとのことです。お客さんは、集落の方、主催者の知り合いの方、子供も多く参加していました。子供達の多くは集落の子というわけではなくて、街の方でも宣伝したのでおそらく街の方から来ているとのことです。

この日は天気も良く、望遠鏡は大型のドブソニアンをはじめ、5−6台は出ていましたでしょうか。私はいつもの電視観望と、眼視でスコープテックを自由にいじってもらいました。街からそれほど離れてはいないのですが、天の川がうっすら見えているので、多くの人が集まる観望会としてかなり好条件なのかと思います。この観望会はこれまで継続して開催されてものかと思っていたのですが、なんと今回が初めてとのことでした。主催の方がこの地域で顔が利くらしく、いろいろなツテを辿って今回の開催にこぎつけたとのことです。県天の中では私の後に入った比較的新しい方なのですが、こうやって熱心に活動しているのを見ると私も刺激を受けます。

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参加者は老若男女、たくさん来てくれていた印象です。空がそこそこ暗いのでドブソニアンでも見栄えがしたはずで、皆さん楽しめたのではないかと思います。私も電視観望で天の川の形を見せたり、M13、M31アンドロメダ銀河、M27亜鈴状星雲、網状星雲などを見せることができました。

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途中土星が上がってきたので、各種望遠鏡で見比べることもできました。私の持ってきたスコープテックは口径も小さく、手動導入の経緯台のシンプルな構成ですが、二つ穴ファインダーを使って小さな子でも「自分で操作できる」という特徴があります。「自分で導入して見る」土星は、実際操作してくれた子にとってはまた格別なのではないかと思います。


9月20日(土) 県天例会と富山市科学博物館での観望会

県天の例会が、富山市科学博物館の会議室で夕方から開催されました。この形式の例会は今年度から始まったのですが、土曜日にしたのは理由があって、夜に科学博物館主催の観望会が毎週あり、例会終了後に、県天メンバーがそのままボランティアで観望会を手伝えるようにするためです。

例会は、出席した会員の近況報告が主です。私は最近ずっとやっている太陽分光について報告しました。「用事があるので途中で抜ける」と言っていたメンバーの一人が、学生の頃に銀河を分光で見ていたそうで抜け出る時間を遥かに越してしまって、急いで出て行きました。「面白すぎて抜けられなかった」とのことです。

例会終了後は観望会でしたが、外を見ると雷鳴が轟く雨でした。それでも毎回来るというお客さんが4-5組ほど来ていていました。こんな日は観望ではなく、室内で学芸員さんがその時期に相応しい話をしてくれます。この回は「秋分の日」についてでした。日の出と日の入りの違いや、それで昼間と夜の時間のバランスが崩れ、ぴったり12時間ごとにならないなど、普段あまり気づかない話をしてくれました。メインで来ている小学生くらいの子供には少し難しいのではと思いましたが、子供達はそれぞれ自分なりに反応していて、ワーワー騒ぎながらもきちんと話を聞いていました。やっぱりこういうことが好きな子は、こういうところで育つのだと、改めて思いました。

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県天としては、科学博物館の毎週の観望会にボランティアでの参加を長年続けています。今後も続けていくことになるかと思います。地域住民への貢献の一環としてとてもいい取り組みだと思います。私も時間のある時は今後も参加しようと思っています。


9月26日(金) 富山ブールバールプレミアムナイト

富山駅北口にブールバールという通りがあり、毎月月末にプレミアムナイトというイベントが行われています。イベントの主催者の方が県天メンバーと知り合いで、イベントに望遠鏡を出せないかと依頼があったそうです。今回初めて頼まれたということで、あまり参加者がいなくて特に電視観望を希望ということだったので参加してきました。

駅前の大通りで、とても明るく、周りのビルが高いこともあり視界もあまり広くないので、決していい場所ではありません。それでも土星も出始めてますし、夏なら天頂近くに電視観望で見やすい星雲などもあるので、天気さえ良ければ十分楽しめるはずです。でも、天気予報が冴えなかったこともあり、県天からは結局Sさん、Yさんと私の3人が参加しただけでした。実際最初から曇りで、途中雨もパラパラと降り、機材にカバーをかけて待っていたりという状況でした。

途中、時間を持て余しているので、せっかくのイベントということでたくさん出ているキッチンカーで適当に買い込んで夕食です。というのも、富山でこういったイベントに参加するという数少ないチャンスで、妻も仕事終わりに立ち寄ってくれました。わざわざ外飲みするためにバスで通勤して、帰りは私の車に乗っていくという寸法らしいです。同じテントで隣のテーブルに座った人たちと話したり、途中向かいのキッチンカーの店長さんが望遠鏡を見にきて、その間に来ていたお客さんに「おーい、ここだよー」と気づいて急いで駆けていくとか、イベント自体を楽しむこともできました。

空はほとんどだめで、途中雲の隙間から何度か星は見えたのですが、せいぜいそれくらいでした。東の空は比較的晴れて、イベントの終わりの方で土星が見え始めました。21時の終了の20分前くらいになってやっと天頂方向も晴れ、最後にM27亜鈴状星雲を入れて、少しだけ見てもらい、その日は終了となりました。
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10月3日(金) 富山駅前ゲリラ観望会

前週のブールバード観望会とは反対側の、富山駅の南口で開催れたゲリラ観望会です。「ゲリラ」の名のごとく、アナウンスなどは全くなし(笑)で、突如開催されます。

ターゲットは駅を利用する人たちで、特に星に興味があるわけではない一般の方たちです。金曜夜なので、サラリーマンや学生、観光で富山に来ている人などもいます。外国人が結構多いのも特徴です。南口は大きなバスターミナルがあり、富山で随一の人通りの多い場所です。駅前で当然明るい場所なので不利なのですが、多くの人に見てもらう目的で毎年開催していて、かなり好評なので昨年から春と秋の年2回開催しています。

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春のゲリラ観望会は桜が綺麗でした。

そういえば、今年の春のゲリラ観望会は天気が悪くてブログ記事にしていませんでした。曇りでほとんど何も見えなかったので、星に関してはほとんど記憶に残っていないのですが、その場でiPhoneでネットに繋ぎ、このブログから画像をダウンロードしてスライドを作り、それを24インチモニターで見せていた覚えがあります。
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スラドイドを流し始めてからはあまりやることがなくて、おなかも空いたので駅のセブンイレブンに行って最後ひとつ残っていた肉まんを買いました。観望会会場に戻っていざ食べようとしたら、会場で少し話していた小学生の女の子が私の肉まんを見て、お母さんに「わたしも肉まん食べたい!」と言い出しました。「え、でもこれ最後の一個だったよ」と何気なく言ったのですが、どうしても食べたかったらしく、よほど悔しかったのか、私は「肉まんの人」と認識されてしまったらしいです。

その子が今回の秋のゲリラ観望会にもきてくれていて、私自身ほとんど忘れていた「肉まん」のことを教えてくれました。食べ物の恨みは恐ろしいということです(笑)。

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実はその女の子は、今回ゲリラ観望会を企画した県天メンバーSさんの知り合いで、この子が通っているバイオリン教室の先生に、今回ゲリラ観望会会場でのバイオリンの生演奏をお願いして、演奏会と観望会のコラボと相成りました。天気はずっと曇りで、星も月も何も見えなかったのですが、この演奏会とのコラボは大成功で、多くの人が足を止めてくれました。

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この日は、何日か前の予報では一日中快晴、当日朝の予報でも北陸地方は晴れとなっていたのですが、実際は朝からずっと曇りで、雨こそ降りませんでしたが、観望会会場に着いても全面が雲で全く晴れそうな気配はありませんでした。Sさんから「天気がダメそうなので、前回のスライドを流してもらえませんか?」と頼まれました。私の方も一応天気が悪かった時用に24インチモニターを用意してスライドを見せればいいかと思っていましたが、Sさんから「プロジェクターがあるので、それに表示しましょう」という提案がありました。これは大成功で、小さなモニターよりも全然迫力があり、多くのお客さんに写真を見てもらうことができました。

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このスクリーンは裏からもみることができます。
両側からアピールできるのでかなりいいです。
ただし文字が裏返るので、文字は少なくしたほうがいいかもしれません。

19時からの生演奏が始まってからも、そのままスライドは流していて、大きなスクリーンでの天体画像は、素晴らしい演奏とバランスも取れていて、会場全体がいい雰囲気になっていたのかと思います。演奏ではかなりの曲数を弾いてくれて、その後一旦休憩をとり、2回目の講演までありました。演奏が始まると多くのお客さんが足を止めてくれます。演奏終了後も望遠鏡や天体画像に興味を持ってくれる人もいて、天気は全然ダメでしたが、人通りが多く明るい場所ではこんな形態も十分ぶんアリではないのかと思いました。

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そういった意味では天気に関わらず大成功だったのかと思います。でも、本来見えるはずの月や土星や星雲など、本当に見たかったと残念そうにしているかたもたくさんいて、次回こそは天気に期待したいです。


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