ほしぞloveログ

天体観測始めました。

2025年08月

7月11日の連続波長シフトの記事のコメントでMakiさんから、Hαから波長をずらしてみると「Hαグレイン」というものが見えるかもしれないという情報がありました。今回はそれを発端にいろいろ試した話です。

Hαグレインとは?

Makiさんによると、太陽の下部の彩層にはたくさん『毛穴』みたいな穴があり、時により黒い『ゴマヒゲ』みたいなものが写るはずで、Hαから0.6Åほど短波長側で見え、3分から5分周期くらいで現れるとのことです。



このページの動画の±0.5~0.6Åの画像にもそれらしき『穴』がたくさん写っているとのことです。

興味が出たので、自分でも調べて見ました。天文学辞典によると
太陽の彩層に見られるネットワーク構造の内側にH𝛂線で観測される暗点。この暗点は、H𝛂線の中心波長から0.6Å程度だけ短波長側で観測されることから、音速が10 km s-1程度の彩層内を超音速で上昇する構造である。この暗点は、約3分の周期で強度が変化して現れたり消えたりする。この変化は、カルシウムのHK線で見える輝点の変動と同期している。光球下から発生した音波が彩層に伝播する際に衝撃波化し、この衝撃波によって彩層が加熱された結果としてHK線で輝点が観測されたと解釈されている。H𝛂グレインとカルシウム輝点の関係はまだよくわかっていない。
とのことです。他にもここに研究トピックスの形で、ここに学位論文のまとめの形で少し説明があります。「グレインという現象はまだ統一された定義があるわけではありませんが 、ここでは彩層の Hα 線のフィルターを通して観測した画像の中で、直径1∼2arcsec(1000km)ほどの黒い粒状の構造を指します。」とのことです。

今のFC-76とG3M678Mで空間分解能を計算すると、視直径31.47分(7月)の太陽が2780ピクセルで撮影されているので、シーイングなどを考えないものすごい単純計算で0.68秒/pixelくらいの分解能なので、うまくいくと数ピクセルの大きさの黒い点として見えることになりそうです。

残念ながら学位論文自身は電子化されていないようで、見つけることはできませんでしたが、学位論文の結果と思われるペーパーについては見つけることができました。ここにありますが、フリーアクセスのようなので興味のある方は読んでみるといいかと思います。

今回まずはHαのみで見てみますが、Ca II H線(3968.47Åで、3933.66ÅのCa II K (CaK) 線の近く)などとの相関も見られるということなので、いつか多波長の同時観測も視野に入れて複数台の機材を揃えれたらと思います。


本当に写っているのか?

最初に試したことが、7月11日の記事で示した画像で、0.091Å x 7ピクセル分 = +/-0.637Åずれたの2枚の画像の差分を取ってみることでした。模様はHα中心から対称に出ていて、その中でグレインが-0.6Åのみに出るのなら、それらしい点が写ってもおかしくないと思ったからです。差分画像をさらに輝度の高いところだけを強調してみると、確かにそれらしい点が写っています。
004_07_13_53-trimmed_0000_07_13_53-trimmed_autostretch_-7_00

わかりやすいように反転してみます。
004_07_13_53-trimmed_0000_07_13_53-trimmed_autostretch_-7_00_inv

わかりにくい場合はクリックして拡大してみると、細かい黒い点がたくさん残っているのがわかります。Hα中心から波長が長い側と短い側に、等間隔ずれたところを比較しているので、ドップラーシフトの差は出るかもしれませんが、基本的に正負の波長ずれに対して対称な模様となっているはずです。もしそこに差があると黒く出てくるということなので、このゴマのように見えるたくさんの黒い点は、少なくとも正負0.6Åずれたところで違いがあるということになります。

差分を見る前の、元の-0.6Å画像を下に示します。同じ黒い点の位置を見比べてみると、確かに黒い点があるのがわかります。
07_13_53-trimmed_0000_07_13_53-trimmed_autostretch_-6_00

でもこれが本当にグレインなのか、そもそもグレインがどれくらいの分布で広がっているのかよくわからないのと、長波長側の+0.6Åに写っているように見える黒い点もあることから、いまいち確証が持てません。


グレインの時間変動

次に考えたのが、グレインの特徴の3-5分周期で出たり消えたりしているのかどうか、調べてみようと思いました。

そこで試したのが、前回の記事のタイムラプス映像です。

先に記事にはしましたが、このタイムラプス映像は元々はジェットを撮る目的などではなく、グレインの時間変化を見たくて連続撮影を試したというわけです。ジェットがたまたま撮れていたので、特徴的なドップラーシフトでの見え方の違いを動画で見せたのはあくまでおまけでした。

動画化する途中でも、グレインがどう見えるかは気にしていたのですが、まず位置合わせがしっかりしていないとどの点が数分間続いているのかさえよくわかりません。なので位置合わせはかなりの時間を割いて十分合わせられるようにパラメータ調整などの手法を工夫しました。

でも、位置が合ったとしても見分けるのはかなり困難です。3分から5分くらいの周期ということは、今回の動画で5-10コマで出てきて消えるわけです。しかも短波長側だけに出ているということで、長波長側に出ていないことも確認する必要があります。実際はっきり写るのは高々数コマになるので、先の動画の左右2つを見比べるだけでも大変で、繰り返し見ていてもいまいち確証が持てませんでした。行き詰まったところで、一旦グレインについてはストップして、先にジェットの方をまとめることにして、ブログ記事を公開しました。

ところが前回の記事公開後、Xの方でMASAさんから「このジェットのドップラーシフトを色付けして見てみると面白いのでは?」というコメントがありました。これまでドップラーシフトはJSol'Exを使って出していて、serファイルを処理した時のみドップラーシフトを出力できるだけなので、今回のように処理済みの波長のシフト画像から色付きのドップラーシフト画像を作るのはちょっと面倒だと思っていました。

でもMASAさんからさらに「アップした動画に擬似的に色をつけて見たら面白かった」とのコメントが入り、私も興味に勝てずに、結局処理済み画像から色付きのドップラーシフト画像を作るコードを書くことになってしまいました。

アルゴリズムはJSol'ExのImageMathのサンプルコードを見ることができたので、あとはpythonに落とし込むだけでした。+側をred、-側をblueとし、+側画像と-側画像の最小値をgreenとするのが一般的なようです。そうしてできた動画が以下になります。

rgb

噴き上がる時が赤で地球から遠ざかっていき、落ちる時が青で地球側に向かってくるということで、確かにジェットの速度が変わっていく様子が色付きでわかるので、かなりわかりやすくて面白いです。

と、この動画を見ていて思ったのが、あれ?これってグレインの可視化の方法としてはベストに近いのでは?ということでした。一つの画面だけを見ていて、青い点が出て消えるものを探せばいいのです。実際上の動画でもそれらしいものがすでに見えています。


確かにグレインっぽいものが時間変動している!

いくつかの場所を見てみましたが、青い点を目立たるようにして見たいということで、太陽の右側(西側)を見ることにしました。理由は、ドップラーシフトで背景が赤にシフトするので、波長が短い側にある青い点は見やすくなるからです。グレインは数ピクセルくらいのサイズになりそうなので、ある程度拡大しないと見えないのかと思います。上と同じように、右側下部を600x600ピクセルくらいの大きさで切り取ってみました。

rgb

これでもまだ変動が激しく、青が目立つと言っても小さな点なので、かなりわかりにくいです。

もう少しわかりやすくするために、青がある閾値以上で、ある大きさの範囲にあり、点状に近い形のものを自動で検出して、それが同じような位置に連続で出ているものをピックアップするようにしてみました。1画面だけ出ているものが灰色、2画面連続で出ているものが淡い青色、3画面以上出ているものを濃い青丸で囲んでみました。これらの処理はpythonで書きましたが、特に閾値などのパラメータ設定がかなり難しくて、ここまでピックアップするのに100回近くパラメータを調整しています。高画像版はYoutubeにアップしています。

rgb

やっとグレインらしきものが出て消えていく様子がはっきりと分かるようになったのかと思います。

3分周期とのことですが、
  • 一つのグレインが出たり入ったりを連続で繰り返すのが3分ごとなのか?
  • 一つのグレインが出始めて消えるの過程が3分間で、その位置では繰り返して出ることはないのか?
は今の所不明です。同じ位置で繰り返しているように見えるのがあるようにも思えますが、ほとんどは一度出たら消えています。そもそもグレインがどういうものなのかがあまりわかっていないようなので、今回見えたものが本当にグレインなのかどうかはわかりませんが、少なくともHα線から-0.6Åずれとところに3分くらいの周期で出たり消えたりするような点状の模様があるということは言えるのかと思います。


まとめと今後

今回はHαグレインらしきものが見えたというところで終わりとしたいと思います。アマチュアレベルの分光器でこんなものが見える可能性が出てきたということだけも、かなり面白い結果だと思います。

この後発展させていくとしたら、やはり2006年の論文にあるようなCaHとの相関を見ることでしょうか。これだと複数台のSHG700が欲しくなります。もしくは、Hαのグレインの3分周期をグラフ化して、同様にCaHもグラフ化するとかでしょうか。これだと1台でもなんとかなるかもしれません。

HαとCaHのみでなく、他の波長でももしかしたら同様のグレイン現象があるのかもしれません。他の波長ではまだ誰もやっていないようなので、もしかしたら科学的な成果につながっていくかもしれません。こんなことまで視野に入ってくるSHG700はこれからもいろんな可能性を秘めているのかと思います。


日記

お盆期間は忙しくて、天文関連の記事はHαグレインについてだけです。雨だったり、満月だったり、暑かったり、結局あまり休みにはならずに仕事が入ったりで、ほとんど撮影とかはできませんでした。

イベントとしては、8月7日に富山駅近くの環水公園で観望会がありました。雲が多く、夏の大三角とかと最後の方で月を見たくらいですが、多くの人が訪れてくれました。県天メンバーだけでなく、富山大、県立大の天文部も参加してくれていました。

他にも、8月12日には母校の高校の天文部の合宿に参加させてもらいました。こちらも天気が悪くて、見えた星はおそらくデネブだと思いますが、1個だけでした。ちょうどペルセウス座流星群が極大期で、部のメンバーが電波観測で流星群を捉えようとしていました。これまで学校でテストはしてたとのことですが、実際の観測は初めてみたいで、いくつか検出できていたようです。私はあまり詳しくなかったので、原理を少し調べてみましたが、結構面白そうです。機材も含めてそこまで大変ではなさそうです。天気に関わらず、雨の日でも検出できるというのはちょっと面白いかもしれません。ちょっと手を出してみてもいいかとも思いますが、観測というのが続くと思えないので、今回みたいな流星群の時にイベント的にやってみるのは、天気が悪い時の補足手段としてもいいのかもしれません。

分光は一度にたくさんのデータがとれて、いろいろ解析することがあります。お盆期間も結局はこの記事のための処理でほとんど費やしてしまいました。さらに、他にも撮影した大量のデータで未処理のものがあり、時間を結構かけていますが結果に結びついていません。しかも、今後機材の方にもう少し進歩がありそうな感じです。とにかく分光はこれまで手を出してこなかった分野で、とてつもなく奥が深いので、今後ももう少し踏み込んでいきたいと思います。




前回の記事から少し間が開きましたが、一連のSHG700の応用編になります。

太陽望遠鏡を使ったタイムラプス映像は、比較的挑戦しやすく動きも見えて楽しいかと思います。特に、Phoenixのような入門機クラスの太陽望遠鏡では全景を見ることに適していて、最近ではSharpCapの「太陽/月/惑星のライブスタッキングと強化」機能を使うことで、かなり簡単に安定にタイムラプス映像が撮影できるようになってきています。私も以前PSTで試した記事が以下になります。


その一方、最近ずっとテストを続けている分光撮影では、そもそも一回の撮影に赤道儀をスキャンする必要があるなど、手間と時間がかかり、更に撮影後の画像処理も結構手間なので、連続で撮影してタイムラプスかすることはあまりされていません。でも不可能ではないはずです。今回は、SHG700での分光撮影で実際どれくらいのペースで連続撮影ができるか試してみました。


連続撮影

まずは撮影です。撮影したのは7月21日。結構前になりますが、なんでこんなに前なのかというと、後述するようにタイムラプス化するための位置合わせにものすごく時間がかかったからです。

スクリーンショット 2025-07-21 082845

撮影は連続撮影なのでSharpCapのSHGスクリプトを利用します。ポイントは、SHGスクリプトの一番下の「Return to Center of Solar disk per Round」オプションをオンにすることです。これがオフだと、撮影回数と共に徐々に赤道儀の移動量がずれていってしまい、太陽本体がうまく撮影時間の中に収まらなくなってきます。どうも時間で判断して移動量を決めているようで、その見積もりが正確でないために毎回のズレ幅が大きくなったり、ズレが溜まって毎回シフトしたりしてしまいます。このオプションをオンにすると1回の撮影が終了したごとに必ず毎回初期位置に戻すので、時間の代わりに位置で管理されるようなことになり、全くズレなくなりました。さらに、こうすることで一回の撮影時間も絞ることができて、トータルのファイル容量も小さくすることができます。

さらに、撮影をForward onlyにします。これは復路でも撮影すると後の画像処理が往路と復路で分けてしなければならずに二度手間になります。また、上記オプションをオンにすることで、往路の1枚撮影後にすぐにセンターに戻るので、下手すると往復で撮影するよりも速いです。とりあえずですが、今回連続50回撮影することは余裕でした。

今回は32倍速で1撮影あたり6秒で録画しましたが、1本1本の撮影間隔は27秒から34秒で平均は31.22秒でした。やはり撮影間隔は完全には一定にならないようです。それでも約30秒で1枚撮影できるので、全景タイムラプス映像を作るには間隔的には十分速いでしょう。

実際50枚撮影した結果を処理してみると、そのうちの5枚目と8枚目の2枚がおかしかったです。2枚目はなぜかわからないけど画面全体が明るく写ってしまっていました。もう一枚の8枚目は赤道儀の移動量がおかしかったです。でもその次の動画ではきちんと正しい位置で撮影できていたので、やはり何かトラブルがあっても毎回初期位置に戻るというのでリカバーできるのかと思います。

赤道儀の移動量は、赤道儀のモーターがいかに一定速度で動くかが鍵なのですが、どうもこの安定性は温度に依存するようです。とにかく暑すぎです。別の日のことなのですが、あまりに暑いせいか赤道儀がギーギー言い出して、動きがカックンカックンとなり挙動が完全におかしくなったことがありました。その後はまた元に戻ったので、おそらく温度が高すぎてギヤの噛み合わせに問題が出たのでないかと推測しています。今回撮った50枚も、よく見ると撮影中に速度が一定だったとは言い難い画像が結構あり、処理をしても太陽の形が円から少しズレてしまったり、円に一件収まっているように見えても太陽表面の模様が部分的にズレているような画像がたくさんありました。分光撮影の原理上ある程度は仕方ないですが、温度を含めて赤道儀の問題を解決することで、もう少しマシになるのではと思います。というのも、下で書くように、位置合わせの処理があまりに大変すぎるからです。


Hα中心線画像のタイムラプス化

撮影した50枚の連続画像をJSol'Exで処理し、まずは単純にHα中心線をタイムラプス化してみます。撮影を失敗した2枚は省いています。概要をブログ上で示したいだけなので、縦横800ピクセルまで縮小してgif化しています。

Blink_600

見ればわかるように、ここで分光撮影の欠点が露呈してしまっています。1枚1枚の太陽位置、もしくは太陽表面内の模様の位置がぶれてしまうのです。

特徴的なポイントははっきり出ているので、これらを元に画面内で位置合わせしようとしましたが、どうしてもきちんとできるソフトは見つかりませんでした。探ったソフトは、
  • AutoStakkert!4
  • RegiStax6
  • AstroSurface V5
  • SharpCapの惑星/月/太陽スタック
  • PixInsightのFFTregistration
  • waveSharp2 (勘違いていて、そもそもスタック機能がなく、waveletで炙り出すためのソフトでした)
  • FIJI
などです。これらのソフトの元々の目的の「最終的にスタックする」場合は (十分かどうかはわかりませんが) ある程度の位置合わせができるようです。でもほとんどのソフトはそもそもスタック後の画像しか出力することができず、位置合わせした個々の画像を出力することがでず、確認する術もありません。結局PixInsightのFFTregistrationとFIJIのみが、位置合わせした後の個々の画像を保存することができたのですが、今回のように大きなズレを補正するには両方ともあまりに非力でした。

次に考えたのが、自分で位置合わせプログラムを書く方法です。調べていくとどうやら画面内の特徴点の情報を元に画面を歪ませるDeformable registrationという分野があるらしく、医療関連の画像の位置合わせで発展しているようです。医療用のソフトも使ってみたのですが、フォーマットが合わなかったり、使い勝手が悪かったりで、結局はpythonにライブラリが揃っていたので、結局は自分で書いてみました。

今回使ったものはSimpleITKというライブラリのDemonsRegistrationFilterです。でも思ったより時間がかかってしまい、かなり試行錯誤して結局2週間近く費やしてしまいました。重要なパラメータが2つあって、繰り返し回数を指示するdemons.SetNumberOfIterationsと、どこまで細かさを見るかというdemons.SetStandardDeviationsで結果を調整します。

例では繰り返しが100と細かさ1から始めるといいなどとありますが、これでは全然ダメで、繰り返し回数は500回ほど、細かさは荒い方向に4くらいまで増やしました。繰り返し回数500だと、50枚の処理で一回あたり計算時間が数時間かかるので、なかなか大変です。特に細かさは3以下だと太陽表面の模様がまるでタイルみたいになってしまうようです。繰り返し回数も時には500回で足りなくて、最後は変化の激しい画像は別個に1200とかまで増やしてやっとパッと見でわかるズレがなくなりました。他にもImPPGやPIのFFTregistration、自分で書いた輝度合わせのpythonコードなどを併用し、仕上げています。

最終的にそこそこ満足したのが以下の動画になります。とりあえずYoutubeにアップロードしましたが、かなり高解像度なので、拡大して見て頂ければと思います。ただし、Youtubeの仕様か、拡大しての繰り返し撮影が手間なので、毎回元のサイズに戻して繰り返しボタンを押す必要があるようです。もう少しいいアップロード先を考えた方がいいかもしれません。


よく見ると、さすがに細かいところは動いていますし、まだうまく位置合わせしきれていないところもあるように見えます。でもここまでできたなら、概要として全景を見る分にはかなりマシなのかと思います。太陽全景で高々25分間なので基本的にあまり動きはないのですが、たまたまラッキーなことに右上の方に何か吹き出しているのが見えています。これだけの短時間で大きく速くうごいているので、ジェットなのかと思われます。


ジェットをタイムラプスで

拡大してみます。拡大といっても、上の全景の動画はJSol'Exのautostretchで出力したものなので、出力の時点ですでに多少加工済み、さらにImPPGなどで細部出しをしています。でも、これ以降はあらかじめJSol'Exのdisk画像(RAW出力に相当)から一部を切り取って、その後に位置合わせをしているだけで、余分な画像処理はしないようにしています。見た目よりも、客観的に判断できるということを優先しています。とりあえずサイズ的にgifでアップロードできる範囲なので、gifフォーマットでまずは示します。

Blink_600

これを見ると、最初にバッと噴き出して、その後は拡散してしまったようにも見えます。ジェット自体もそこそこ珍しいので面白いのですが、果たしてこの描像は十分な情報を与えてくれているのでしょうか? -> 2025/8/9:追記 その後Xでジェットはプラズマで、プラズマは荷電粒子と考えるとローレンツ力が働いて、磁場に直行する成分は回転に変換されてしまうからという答えを得られました。


ドップラーシフトで見るジェット

ここからが、分光撮影の特徴をうまく生かすような、今回の記事で本当に書きたかったことになります。

このジェット、Hα中心線では実はまだ見えていない部分があります。ここであえて波長をHα線から+/-0.6Å程度ずらしてやることで一気に面白くなります。動画で見てみましょう。左がHαから+0.64Åずらしたもの、真ん中がHαピッタリ、右がHαから-0.64Åずらしたものになります。


左右と真ん中を見比べてみると
  • ジェットが出る時は左の画面に主に写っているので波長が長い方にずれているのがわかります。
  • 下降していく時には主に右側のに写っているので、波長が短い方にずれているのがよくわかります。
  • ちょうど上昇と加工をが切り替わる時くらいに、真ん中のHα中心が一番濃くなる。
などがわかります。最初、なぜ下降の時に波長が短くなるのか?逆ではないのか?と思いましたが、右画面の右下の方に出ているプロミネンスを見ると明らかに太陽の自転より速く手前側 (地球側) に移動していて、それは左画面に写っていないことから、右が波長が短くなっていることは間違っていないはずです。

ということは、噴出の時には太陽の自転と同じ方向に出ていって、戻る時は重力に引かれて下に落ちるとかではなく、自転方向と反対に、出てきた場所に戻っていくような動きだと推測できます。なぜ元いた位置に戻るのか、重力よりも大きな別の何かが働いているのか、かなり興味深いです。


ドップラーシフトタイムラプスのカラー化

上の画像動画をカラー化してみました。JSol'ExのImageMathのコードを参考にして+側をred、-側をblueとし、+側画像と-側画像の最小値をgreenにしました。色が付くとわかりやすくて面白いです。しかも色付き動画で見るこの手法、次に確かめたかったHα grainにもそのまま繋がりそうです。

  • 撮影日: 2025年7月21日9時17分-9時47分
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: Takahashi FC-76(f600mm、F7.9) 
  • 分光器: SHG700
  • 赤道儀: Celestrn CGEM II
  • カメラ: ToupTek G3M678M
  • 撮影: SharpCap Gain 200 (=6dB)、露光時間200ms、ROI: 3840x80、466fps
  • 画像処理: JSol'Ex、ImPPG、自作位置合わせPythonプログラム

念願のジェットのドップラーシフト撮影ができた!

このように、分光撮影で波長をずらしたものを一緒に撮影できるというのは、これまでエタロンタイプの太陽望遠鏡でなかなか見えなかった様子を、顕にしてくれるので、非常に興味深いです。

ジェットについては2019年に初めて撮影できていて、その頃からの大きな課題の一つでした。


その後、昨年2024年5月にも撮影できて


その後の記事でドップラーシフトにも言及しています。


この時いろいろ調べていて、この現象がサージまたはジェットと呼ばれるもので間違いなさそうだとわかってきました。


ジェットはかなりのスピードで変化する現象なので、原理的にはエタロンで波長のズレも見ることはできるはずです。いつか手持ちのエタロンを使ってドップラーシフトの評価に挑戦しようとも思っていました。でもジェットは狙って取れるものでもないことと、そのために最初から波長をずらして待ち構えていることもあまり現実的ではないので、あまり進展は期待できていませんした。

そこに分光撮影という手段が舞い降りました。これなら以前までの分光で出にくかった解像度もSHG700なら十分出そうなので、うまくすればジェットの様子もはっきり見ることができるかもしれないということで、SHG700購入の動機の一つとなりました。でも実際やってみると、分光特有のジャギーや、撮影ごとのブレに悩まされました。

今回ある程度そのブレに見通しがつき、たまたま撮影した連続画像にジェットらしきものが写っているという幸運にも恵まれまれたというわけです。一つ大きな課題がやっと達成されたことになり、分光に手を出した価値を十分に味わせてもらうことができました。アマチュア天文の範囲でこんなことまでできるなんて、現代はとても幸せな時代なのかと感謝しています。


まとめ

やっと念願のジェットのドップラーシフトを、波長別に、しかも時間変化をタイムラプス動画としてとらえることができました。これは分光で連続撮影に挑戦した結果なのかと思います。

でも実はこの連続撮影、元々はジェットを撮影する目的ではなく、もう一つ全然別のことを確かめたくて始めたものです。こちらの話も少しづつ進んでいますが、もう少し時間がかかりそうです。うまく結果が出たら、また記事にしようかと思っています。


今年も高岡市の「おとぎの森公園」で開催される観望会に参加しました。

昨年に続いて

といっても、この観望会は去年が初参加で、しかも去年は天気が悪く結局ほぼ何も見えないに等しい状況だったので、ブログの記事にもしていません。でもこの観望会って、すごい人数が来るんですよね。去年は星の何もないのに、もしかして見えるかもという期待で、私の周りだけで常時30人くらいいた気がします。ただ待ってもらうのも悪いので、天文に関するいろんな話や、いつもやってるクイズを出したりしてしました。高感度カメラで見る暗闇も子供達には大人気でした。

一方今年はというと、もしかしたら最悪雨かもと思っていた天気は、夕方には快晴に近くなり、多くの星が見えました。


街中での観望会

少し時間を戻します。

観望会会場のおとぎの森公園は、高岡市の街中にも近く、歩いて行ける距離に北陸新幹線の駅やイオンモールがあります。なので買い物がてらで、珍しく妻がついてきます。私もどうせどこかで夕食はとる必要があるので、早めの16時半頃にイオンモールに着いて、フードコートで妻と外食とすることにしました。その後は私も本屋とかに少し寄って、18時前には私だけイオンを出て観望会会場に向かいます。妻はそのままお買い物で、観望会が終わったらまたイオンに行き拾っていきます。観望会終わりが21時なので、それまでたっぷり余裕があり、お互いを気にせずに妻は買い物、私は観望会で、結構都合がいいのです。

実は去年も全く同じパターンでした。街中の観望会は明るいのですが、便利というメリットがあるので、それはそれでまた楽しいです。


機材設置

さて、夕方18時ぴったりくらいに会場に着くと、すでにもういくつかの望遠鏡が出ています。中には大きなドブソニアンも出ています。

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私も準備を始めます。この日の機材は先週の飛騨コスモス天文台で試した
  • メインの電視観望にFMA135+Uranus-C+トラバース
  • 広角電視観望にNIKKOR 35mm F1.4レンズ+ASI294MC+自由雲台
  • SCOPETECHの2穴ファイダーの屈折
になります。
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これらを、M1 MacのVMware上のArm WindowsでSharpCapを2つ立ち上げ、上記カメラ2台を同時接続し、1台の24インチモニターに繋げます。星座ビノをは5個出しましたが、使えたのは最初の頃と最後の頃の人が少ない時だけでした。人が多すぎると貸し出しは収拾がつかなくなってしまいます。


観望会開始

SCOPETECHの2穴ファイダーの屈折が月を見るのに大活躍でした。明るいうちから月が出ていたので、来てくれた人たちに望遠鏡を勝手に操作してもらいます。小学校の高学年ならすぐに月の導入や、低学年の子でもセンターに持ってこれるようになります。多くの方が家族で来ているので、お父さんお母さんにも触ってもらいます。今回、金沢星の会のNさんが来てくれていて、望遠鏡の操作の説明を随分と手伝っていただき、とても助かりました。どうもありがとうございました。

あえて赤道儀にせずに、簡単な二つ穴ファインダーの入門用機材にするのは、望遠鏡を自分で触ってもらいたいからです。できれば導入を自分でしてもらい、天体が入った時の喜びを感じてほしいこと、お客さん同士で操作方法の伝搬とかのコミュニケーションをとって欲しいことなどがあります。高価な機材ではないので、子供に使い倒してもらって全然大丈夫で、「壊れてもいいので思う存分使ってください」と言って安心して使ってもらうようにしています。

月は明るいうちから見えるですが、徐々に暗くなってくると星が見え始めます。一番星がベガ、二番星がアークトゥルスでしょうか。広角電視観望だと、この時点でこと座の形がはっきりとわかるので、今回は星座の話から入り、七夕の話、夏の大三角に進みました。でも流石に市街地に近いことと、上弦
の明るい月が出ていたこともあり、この場所では暗くなってからでも見える星の数を数えても20個くらいでしょうか。2等星の明るいものくらいまでしか見えません。ものすごく頑張って北斗七星が5個か6個くらいです。

もちろん広角電視観望だと、星座の形がわかるくらいの広い範囲と、数えきれないくらいの星の数が画面いっぱいに広がるので、色々楽しめます。今回は画面と実際の空を見比べて、はくちょう座の形と、さそり座の形を理解してもらいました。白鳥座は目では全く見えず、さそり座は3つの手の一つがかろうじて見えるくらいでした。


天の川がメインに

徐々に暗くなってくると、こんな街中でも広角電視観望だと天の川が見えてきます。天の川が見え始めるとモニターの周りに人だかりができ始めました。

スクリーンショット 2025-08-02 202853

「天の川を見たことがある人?」と聞くと、今回は一人か二人だったでしょうか、富山といえど普段街中でほとんどの人は見たことがないようです。暗くなると天の川の形がわかるくらいに見えてくるので、みなさんびっくりしてました。

でも、子供達が夢中なのは天の川よりも人工衛星です。電視観望は感度が良いので、かなり暗い人工衛星もはっきりと見えてしまいます。ひどい時は1画面に7つの人工衛星が見えていました。子供達は人工衛星がすれ違うときにぶつからないかに興味津々で「ぶつかったら爆発するの?」とか心配しているようです。

時折とびきり明るい人工衛星が画面内に現れると、その方向の空を見上げてもらい目で人工衛星を探してもらいます。目のいい方はすぐに見つけられるようです。私は2個ほど実際の空で見つけましたが、星座ビノを使わないと見えなかったようなものも平気で簡単に見つける人がいて驚きました。


今回のトラブル

今回の一番の失敗はトラバースです。最初うまく繋がって導入まで進めていたのですが、すぐに繋がらなくなってしまいました。電池が切れたかと思い電池を変えても症状は同じで、全くつながりません。SSIDは時折見えたり、見えなかったりです。その代わりにSSIDで見えていたのは他のスマート望遠鏡のものがズラーっと。どうもトラバースの電波は弱いのか、他の機器に食われてしまうようです。

今回もMacで接続したのですが、大きな観望会でWiFiが混戦するような場合はWindows PCにしてBuletoothで繋いだ方が良さそうです。以前はトラバースのBluetooth接続はちょっと変則的な繋ぎ方でしたできなかったのですが、先日自宅でメンテナンスがてら色々試したときにちょっとだけBluetoothでの接続も試していて、現在ではなんの問題もなく接続できることがわかりました。SharpCapからASCOM経由で接続できるかはまだ不明ですが、ASCOMドライバーはSynScan Proと接続しているだけで、SynScan Proとトラバースの接続がBluetoothになろうがお構いないはずなので、うまくいくのかと思います。また機会があるときに試してみます。

結局、トラバースが使えるようになったのはスマート望遠鏡の数が減ってきた20時台の後半で、もう観望会が終了するちょっと前でした。M1 Mac上でのArm Windowsだと2台接続の時のカメラのコマ落ちの問題もあったので、バッテリーの持ちは惜しいのですが、やはり生のWindows PCににした方がいいのかもしれません。結局つながってから月とM27だけ最後に少数のお客さんに見せるにとどまりました。月の露光時間を増やして、影になって隠れているところを出すのが受けていました。

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終盤と片付け

すごくたくさんの人がいて、広角電視観望での天の川とか、星座とか、人工衛星の受けがすごく良くて、その説明をずっとしている状態だったので結構手一杯だったので、トラブルがあってもちょうどいいくらいだったのかもしれません。というか、予備という意味でも2系統用意することの重要さを実感しました。今回は多人数が対象で、画面を見ての説明が多かったので、クイズとかはあまり出すことができませんでしたが、多人数の時は多人数なりの面白さがあります。

そんな中でも、一人、小学5-6年生くらいでしょうか、男の子が屈折望遠鏡が面白いみたいで、観望会終了直前の頃には最後自分でアンタレスとか導入していました。この頃になると人も少なくなってきていて、星座ビノを再び貸し出して、その子も一緒にさそりの手とか見つけたりしていました。こんな子が一人でもいると、やっぱり触ってもらえる望遠鏡を出して良かったと思えます。

21時を過ぎた頃に観望会終了のアナウンスがありました。片付けは大したことはないので、21時半前には車を出し、妻を迎えに再びイオンモールに向かいました。自宅までは山側の道を通り30分強くらいでしょうか。外でまだまだ暑く汗をかいたので、シャワーだけ浴びて昨晩途中まで見ていた金曜ロードショーのサマーウォーズを見終えて、そのまま寝てしまいました。


まとめ

夏休みのこともあり、観望会シーズンです。来週もまた別の観望会があります。観望会で星を見せることも、趣味としての楽しさの一つでもあるので、今年も都合がつく限りいろいろ参加したいと思います。



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