ほしぞloveログ

天体観測始めました。

2025年07月

Xにはすでに投稿しましたが、2025年7月26日(土)の太陽です。Xだとどうしても残りにくいので、一応ブログの記事にしておこうと思います。


条件など

この記事は太陽観察記録になります。
  • 機材はいつものFC-76+SHG700+G3M678M+CGEM IIで、Hα線での分光撮影になります。
  • 10ショット撮影したうちの、一番ジャギーの少ない7時52分42秒のワンショットです。
  • パラメータは1ms、ゲイン200(=2倍 =6dB = ZWO換算で60)、3840x80ピクセルで16倍速12秒間、RAW16で465fpsでの撮影です。
  • JSol'Exのフルモードで処理しました。その際、ジャギーを軽減する実験的なオプションをオンにしています。
  • ドップラーシフト画像と高度情報画像だけは、別途ImageMathを使っています。
  • 出力された画像はそのまま使っていて、その後の処理などはしていません。

記録画像

出力された画像のうち、特徴的なものを載せておきます。

モノクロ:
07_52_42_0000_07_52_42_autostretch_0_00
 
モノクロ反転:
07_52_42_0000_07_52_42_negative_0_00

プロミネンス:
07_52_42_0000_07_52_42_protus_0_00

カラー:
07_52_42_0000_07_52_42_mix_0_00

活動領域:
07_52_42_0000_07_52_42_activeregions_0_00

緯度経度情報:
07_52_42_0000_07_52_42_card_0_00

高度情報:
07_52_42_0000_07_52_42_mix_0_00

ドップラーシフト:
07_52_42_0000_07_52_42_doppler


検討

実は、10枚撮影してからスタックしたものも作ったのですが、かなり苦労した割にうえのがぞうとほとんど変わりません。正確にいうと、ジャギー関してはスタックした方が少ないです。でも解像度は10枚程度ではあまり改善しませんでした。というのも、太陽表面でのジャギーが残ってしまい、解像度を出そうとするとそのジャギーが目立ってきてしまい、本来出したい模様をそこまできちんと出せないのです。なので苦労する割に、上の画像とそう違いがないという結果です。

できるだけ手間をかけないということで、今後は観察記録に関しては、画像処理が簡単な1枚撮りのみにしようと思います。上の画像はまだ多すぎるかもしれませんが、これくらいがぱっと出る精一杯なので、とりあえず今回は掲載しておきます。他にも連続波長のアニメもできますが、ちょっと手間なのでやめておこうと思います。あと(無理かもしれませんが)ブログ記事も簡潔にしようと思います。


まとめ

さてこの観察、どれだけ続くのか? 実際もうすでに少し飽きています。でももう何回かは続けようと思います。

2025年7月26日(土)、この日は朝は太陽撮影、少しお昼寝して、夕方から飛騨コスモス天文台の観望会と忙しい一日でした。

夕方から観望会

太陽はHαの通常観測モードなので別途また記事にします。朝早くから起きていたので、昼くらいには眠くなり、14時くらいからお昼寝してました。目が覚めて、夕方からの観望会の準備開始です。と言っても、暑くて暑くて、車に荷物を載せるだけで大変で、クーラーのついた部屋から荷物を運んで、車に積んだら一旦戻って涼んで、また運んで...というのを繰り返して、16時15分頃に自宅を出発しました。富山は結構晴れていたのですが、道すがら徐々に雲が多くなって来ました。

途中神岡町に寄って、いつもの「もりのや」で早めの夕食です。ちなみに、フードロスを避けるために夕食時は予約をしてくださいとのことです。今回頼んだのも、先月と同じ「飛騨牛の牛すじカレー」です。普通もりですが、量的には十分な大盛りクラスでお腹いっぱい。牛すじはトロトロで絶品、サラダもたっぷりついて、これで何と税込950円。かなり良心的な値段です。
IMG_1683

食べてる途中に、星友のかんたろうさんから電話がかかってきて「今神岡近くだけど、天気があまり良くなさそうなので今から伊吹山の観望会に行く」とのことです。確かに来る途中も雲が多かったので心配でしたが、とりあえず私は「飛騨コスモスの観望会に向かう」と伝えました。しばらくすると、またかんたろうさんから電話があって、「古川で晴れているので天気は回復しそう、なので飛騨コスモスに戻る」とのことです。後から聞いたら、伊吹山の観望会は人が多すぎて、夕方早々から車の入場規制がかかったそうです。「そのまま伊吹山に行ったら入れないところだった」とかんたろうさん。

私の方は、18時前に「もりのや」を出て、観望会会場の飛騨コスモス天文台に向かいます。


飛騨コスモス天文台

飛騨コスモスに着くとすでにかんたろうさんが到着してました。まだ雲はありますが、機材を出すことに。程なくしてスタッフの方達も到着。聞いたらちょっと前に雨が降ったらしくて、そのせいか東の低空にきれいな虹が出ていました。
IMG_1684

来てくれるお客さんの数は、その日の昼間から夕方の天気に大きく左右されます。この日はあまり天気が良くなかったので、今回の観望会の参加人数はそこまで多くなくて、せいぜい15人くらいだったでしょうか。それでも子連れの家族が何組か来てくれてました。あと、かんたろうさんのお知り合いで、以前長野県は宇宙県の講演でお会いした方がわざわざ愛知から来てくれました。なんでも、この日にこちらのほうで宇宙関連イベントのボランティアがあって、展示説明とかしてきたそのついでとのことです。


電視観望機材

先月の観望会ではトラブルだらけで失敗し、反省して前回記事でメンテナンスした電視観望機材ですが、今回は大成功だったと言っていいでしょう。今回用意したものは、
  1. メインの電視観望にFMA135+Uranus-C+トラバース
  2. 広角電視観望にNIKKOR 35mm F1.4レンズ+ASI294MC+自由雲台
  3. M1 MacのVMware上のArm WindowsでSharpCapを2つ立ち上げ、上記カメラ2台を同時接続
  4. 24インチモニター
  5. 星座ビノを8個
でした。スコープテック望遠鏡も用意しましたが、雲間も多かったことと、惑星や月がでていないので、結局使いませんでした。

夕方暗くなりかけるときに楽しいのは、一番星見つけ大会です。この時間帯はまだ雲が結構広い範囲にあったのであまり星もはっきり見えず、からなずしも明るい星が一番星になるとも限らず難しかったです。星座ビノを駆使したりで探すのですが、なかなか見つかりません。電視観望は流石に超高感度で、最初にドームの上の雲の合間の青空にある一番星を見つけました。時間と方角的にはいて座の星の一つだったように思います。星座ビノでもしばらくは見つかりませんでしたが、程なくして見えるようになり、その後さらにドームのすぐ近くに二番星、その後はデネブやベガ、北極星など次々と見え始め、肉眼でも確認できるようになってきました。

ただ、まだ市民薄明から航海薄明くらいの明るさなのと、雲が多いので、電視観望といえど星雲や天の川を見るにはちょっときついです。そんな中、かんたろうさんから「M57入りましたー」と声が上がったので、私も導入してみると、淡いながらも十分に見ることができます。飛騨コスモスの観望会は45cmドブソニアンと電視観望で同じ天体を見比べることができるので、かなり面白いのかと思います。

スクリーンショット 2025-07-26 201746

この日の天文薄明終了は20時46分。上の画像は下の時計を見てもらえばわかりますが、20時17分でまだ暗く成りきっていません。それでも輝度の明るい天体は十分すぎるほど見えます。

実際にはもっと明るい20時前でも十分見えていました。自動保存されているM57の画像ファイルの一番早いタイムスタンプを見たら19時55分でした。いい例なので載せておきます。スタックなしの0.8秒露光の1枚画像なのでかなりノイジーですが、それでもM57の存在は十分わかります。
frame_00001_RGB_VNG_Preview01

その後は、部分的に曇ったり晴れたりをずっと繰り返していて、数少ない晴れ間の天体や、下の画像のような雲越しの天の川を見ていました。
スクリーンショット 2025-07-26 205008


電視観望、2セット1モニター体制

今回の電視観望のポイントは、1台のPCに2つのSharpCapを立ち上げ、それぞれ別のカメラを同時に2台接続しているところです。これは見せ方のバリエーションをかなり増やします。デスクトップ画面を2つ用意し、画面切り替えで広角天の川と高倍率天体画面をすぐに切り替えて比較しながらお客さんに見せることができます。今回は外部モニターを1台用意し、PCの画面をミラーリングすることで、私は手元のPC、お客さんは対面のモニターを見てもらいます。こうすることで、真向かいでお客さんと話しながら進めることができます。

しかもこれを、M1 Mac上の仮想のArm版Windowsで実行します。Macにした一番の理由はバッテリーの持ちです。今回4時間くらいフルで2台カメラを駆動しましたが、外部バッテリーに繋ぐこともなく、内部バッテリーのみで余裕でした。終わってから自宅に戻って確認したら、まだ半分近く電池容量が残っていました。丸々一晩とかでない限り、バッテリー容量的にはこれで十分です。観望会で充電用のモバイルバッテリーとケーブルを減らせるのは、トラブル回避という意味からも大きな価値があります。

その一方心配だったのは、仮想Windows上で2台もカメラを繋いで大丈夫か?ということでした。1台の安定性は前回の記事で散々検証したので問題無いことはわかっています。でも2台同時接続で試すのはほぼぶっつけ本番だったので、ちょっと心配してました。結論としては大丈夫だったのですが、いくつか課題も見つかりました。
  • まず、カメラが認識されない時がまれにあることです。VMwareでMacに繋ぐかWindowsに繋ぐか選択が出るのですが、Windowsを選んでピロンと鳴ってもSharpCapでカメラを認識しないことがありました。これは一旦ケーブルを抜いて差し直すときちんと認識されました。これが1度ありました。
  • 次に、カメラが認識されてSharpCapでカメラを選んでも画像が出てこないことです。どうもうまく接続されていなくて、すべてのフレームがドロップされているようです。SharpCap上でカメラを一旦切断し、再度接続すると直ります。この現象は3度ほどありました。ちなみに、SharpCap上のメニューで「カメラを再接続」というのがあるのですが、これでは直りませんでした。一旦確実に切断する必要があるようです。
  • もう少しマシなのですが似た事例で、接続して画面は出るのにフレームのドロップ数が異常に多い場合です。これは露光時間を伸ばすと解決する場合もありましたし、どこをどういじってもドロップ率は変わらない場合がありました。いずれも、切断と再接続で改善します。これは5度ほどありましたでしょうか。
以上のことは、一旦設定できてしまって安定すると、あとはカメラを切断しない限り大丈夫だったので、観望会前に準備をしっかりしておけば大丈夫そうです。とにかく調子が悪かったら一旦切断して戻してやればなんとかなります。でも、なぜこんなことが起こるのかは不明です。エラー判定までの待機時間がギリギリなのかもしれません。ここら辺が仮想OSの弱点なのでしょうか? 次回、SURFACEでも2台接続を一度試してみて違いがあるかどうか見てみたいと思います。

  • 最後の問題は、ASI294MCで露光時間を伸ばした時にフレームが更新されない現象です。例えば800msは大丈夫なのに倍の1.6sにするとダメな場合です。Uranus-Cではこんな現象はなかったので、ASI294MCの画素数が多いのが原因かと推測しますが、露光時間が短いと良くて長いとなぜダメになるのかはちょっとよくわかりません。こちらは今回はぱっと解決しなかったので諦めました。実際には天の川を見るくらいなら800msくらいで十分でした。
と、こんなトラブルもありましたが、一旦動き出せば無問題で、2つを切り替えて見せる手法のメリットの方がはるかに大きかったです。


電視観望のオペレーション

機材の方はかなり良かったのですが、天気の方は最初イマイチで、時折全面を雲が覆って何も見えなくなる時もあり、子供達が退屈しているようでした。こんな時は曇りの時の定番ネタで、50mmレンズとASI294MCを使って、周りの地上の景色を見ます。駐車場の車や、シートを引いている家族の顔まではっきりわかってしまうくらいの感度に、子供だけでなく大人も驚いています。露光時間を800ms程度にしてヒストグラムで持ち上げてやれば、そこそこ動いて色まではっきり見えるし、そこらへんの暗視カメラなんか問題にならないくらいの映像になります。

その後、徐々に晴れ間も多くなり、かんたろうさんのドブと見るものを合わせたりして、晴れている箇所を狙って次々と天体を入れていきます。

スクリーンショット 2025-07-26 211249
M27: 亜鈴状星雲。トータル2分46秒露光。

スクリーンショット 2025-07-26 212139
M8: 干潟星雲。トータル4分22秒露光。

スクリーンショット 2025-07-26 212708
M20: 三裂星雲。トータル57秒露光。

スクリーンショット 2025-07-26 213101
M17: オメガ星雲。トータル2分21秒露光。

面白かったのは、最後の方に見たM11でしょうか。この頃には全面的に晴れてきていて、かんたろうさんはドブソニアンでM11をいれ、私も電視観望でM11を導入し、その間にかんたろうさんがいて座のスタークラウドやバンビの横顔の説明をしてました。
スクリーンショット 2025-07-26 215931
M11。トータル12分29秒露光。

一方、広角電視観望でも南の天の川を広く見ることができるので、スラークラウドもバンビの横顔も全部入ります。M8、M20、M17、M16などの星雲も見えるので、どこに何があるかも全体を見ながら位置関係がよくわかります。下の画像の黄色の枠(後から書き込んだものです)が、上の画像で見ている範囲です。
スクリーンショット 2025-07-26 220949_frame

M11はたて座の上の方にあるのですが、目印となる赤い星が4つほぼ一列に並んでいて、その2つと2つの間にM11があります。下の画像はSharpCapで自動保存された露光時間6.4秒の1枚画像で、2枚上の拡大している画像の全域を表したものですが、M11をはさんで4つの星があるのがわかるかと思います。
frame_000012_RGB_VNG

拡大の度合いを変えながら、広域と狭い領域の関係を示していきます。
  • 広角電視観望で見る目印の星
  • 拡大電視観望で見る近くの目印の星とM11
  • ドブソニアンで眼視でみる針を突いたような点々のM11をそれぞれ見比べ
  • さらには肉眼で天の川を直接見て、「あー、あそこら辺だと」確認する
など、一つの天体をいろんな見方で見ることができ、私自身もかなり至福の時でした。ドブソニアンでのM11の個々の星の鋭さは素晴らしかったです。しかもこういったことが、何人もの人たちと話しながら、同時に確認できたりするのです。広角電視観望と高倍率拡大電視観望を瞬時に切り替えて見分けることで、見ている天体がお客さんに実際の空のどこら辺にあるかをわかってもらう強力な武器になることがわかりました。

その一方で、天の川を肉眼で見る際にはPCのモニターが明るすぎるのが欠点で、天の川だけ見たい時はモニターの電源を臨機応変に切ったりもしていました。今回のような暗い空では目が慣れるまで時間がかかったりするので致命的な問題になりかねませんが、街中のような比較的明るい場所で行われる観望会では問題はもう少し緩和されるはずです。

と、まだトラブルや問題点もありますが、メリットもはるかに大きいので、今後もこの手法を探っていきたいと思います。


片付け

最後の方はまた全面曇りだし、機材の片付けを始めました。でも天文あるあるで、片付けが終わる頃には低空以外は全面快晴になり、天の川が南から北まで天頂を一直線に走り、カシオペアに繋がるまではっきりと見えたのは見事でした。周りの全部の明かりを消してしばらくの間、最後まで残っていたかんたろうさんとスタッフの方と少し話しをながら、しばし天の川を楽しみました。ものの10分もするとまた曇りだしたので、ここで現地を後にします。車を出した時点で時計を見たら23時20分でした。

自宅に到着したのは0時半過ぎで、空を見上げると、めずらしく富山でも天の川がうっすら見えるほど透明度が良かったのです。でももう疲れていたのと、次の朝も太陽撮影があるかと思い、でパッとだけ片付けて寝てしまいました。


まとめ

晴れと曇りの振れ幅が大きく、状況がコロコロ変わるような天気でしたが、十分に楽しめた観望会でした。やはり、暗い空での観望会はものすごく充実します。子供連れの家族のお客さんはどうしても早めに帰ってしまうので、最後の方のいい空を見せてあげられなかったのが心残りです。

来月の飛騨コスモス天文台の観望会は、8月12日(火)のペルセウス流星群のお祭りです。平日ですが、夏休みでお盆期間なのでたくさんの人が来るかと思います。大きなシートを引いて、寝転びながらみんなで流星群を観察します。でも今年は月が明るく、あまり好条件ではありません。私は別件が入る可能性がありそうで、今のところ参加できるかは不明です。



最近ずっと太陽で少し疲れてきたので、たまには夜もと思い、少しメンテナンスも兼ねて電視観望関連のテストをしました。


メンテナンス

先月末の飛騨コスモス天文台での電視観望は散々な結果に終わりました。やはり普段から触っていないと、いざというときに使い物になりません。今回はちょっと反省して、きちんとメンテナンスすることにしました。


現在電視観望用としては3台のPCを運用しています。Windows SURFACEの7と8、M1 MacのVMware上で動くArm Windowsです。その中でメインはSURFACE 7で、予備がM1 Macだったりします。理由は仮想上でない普通のWindowsの方がなんだかんだ言って安定していることと、予備も含めてWindows PCを2台も持っていきたくないことです。SURFACE 7はSWAgTiなど撮影用にも使っていて環境を壊したくないので、いまだにWindows 10で、電視観望に用の環境も整っています。SURFACE 8はWindows 11で、太陽用に使っていたりでそこまで電視観望用の整備をしてませんでした。

今回いい機会なので、3台とも関連ソフトをアップデートをすることにします。想定ハードウェアはFMA135+Uranus-C+トラバースと、50mmレンズ+ASI294MC+自由雲台の広角電視観望の2種類です。そのための関連ソフトは最新のバージョン番号も書いておくと
となり、これらを3台のPCで全て最新版にアップデートしました。年単位でアップデートしていなかったものも結構あったので、いい機会となりました。

最新版にするにあたり設定も少し見直しました。特に以下の4点は、おまじないかもしれませんが、SharpCapとSynScan Proとの接続の不安定性の解決に効く可能性があります。
  • SynScan Proの「設定」「接続の設定」の「リードアウトタイム」をデフォルトの200msから1000msにしました。これで最初に接続に失敗することが少なくなります。
  • ファイヤーウォールでパブリックでの接続を許可しました。これは効果があるか不明ですが、プライベートだけだとダメだったことがあります。
  • SynScan Proの「設定」「観測値」の緯度、経度情報を自動ではなく手入力すること。
  • SharpCapのプレートソルブ設定の所の鏡筒の焦点距離をきちんと入力すること。
3台とも、ソフトアップデート後、上のような設定に気を付けてセットアップしましたが、どれもSharpCapとSynScan ProのWiFi接続も安定していて全く落ちることはなく、以前あったSharpCapのプレートソルブを3回実行すると必ずSynScan Proとの接続が落ちるという謎の現象も無くなりました。


ZWOカメラのArm Windows対応状況は1年たっても進展なし

広角電視観望ではできるだけ大きいセンサー面積が欲しいので、ASI294MCを使っています。手軽さ優先なので冷却は無しです。問題はM1 MacのArm版 Windowsです。カメラドライバーだけはArm版専用のものを必要とします。逆にカメラドライバー以外では今のところ大丈夫で、ASCOM用ドライバーなどカメラ以外の全てのドライバー、その他全てのアプリはArm用ではなく普通のWindowsのものがそのまま使えます。これは結構驚きでした。

カメラドライバーのインストールは以前かなり苦労しました。


その苦労もあり、PlayerOneのドライバーは安定して動いています。

問題はZWOカメラで、ドライバーをインストールはできて一応動くのですが、Windowsを再起動するたびに署名を無効にしなくてはならずに、そのためだけにWindowsをさらに2回再起動する必要があるなどかなり面倒です。しかもその署名無効方法があまり直感的でなく、覚えきるのが大変で、手順を間違えると深刻なことになる可能性もあり、毎回手順を確認しながら実行するようにしています。そのためやる気が大きく削がれてしまい、観望会においてM1 MacでASI294MCを稼働することはかなり稀な状況になってしまっています。

今回約1年以上たって状況が改善されていることも期待したのですが、調べた限りは状況は全く変わっていないようで、相駆らわず今も署名オフが必要なようです。これは結構残念でした。VMwarewを落とさないか、レジューム機能でWindowsを停止状態にしておけば復帰後もカメラドライバーが生きているので、観望会前は事前に一度認識させておくのがいいのかもしれません。


SynMatrixでのカメラの認識

M1 Macで電視観望を控えるもう一つの理由が、SynScan Appのプレートソルブ「SynMatrix AutoAlign」でUranus-Cが認識されないことでした。SURFACE 7ではきちんと認識されているのに、なぜかM1 MacのArm Windowsでは認識されていないのです。この問題、SynMatrixが必要になるときは結局SURFACE 7を使ってしまって、M1 Macのほうでは長らく解決せずという状態が続いていました。

今回は少し気合を入れて調べてみます。まず、SynMatrixでPlayerOneカメラを認識しているのがSURFACE 7のみ、しかもよく見てみるとZWOカメラもSURFACE 7のみでしか認識されていません。M1 Macだけでなく、今回SynScan ProをアップデートしてSynMatrixが使えるようになったSURFACE 8の方もカメラを全く認識していません。どうやらArm Windowsだからという問題ではないようで、Armが悪いというのは単なる思い込みだったようです。

結局この問題はかなり単純で、少し調べると、SynMatrixがリリースされた時のどこかのコメントに、カメラ用のASCOMドライバーが必要だという記述がありました。まずSURFACE 8に、ZWOカメラ用のASCMOMドライバーと、PlayerOne用のASCMOドライバーをインストールしたら、無事に両カメラとも認識され実際に画像を取り込むことができました。特に、PlayerOneの方はASCOM platformの6.5を必要とすると書いてあったので心配でしたが、7.0.2でも普通に動くようです。

さて問題のM1 Mac上のArm Windowsですが、こちらもZWOとPlayerOneの ASCMOドライバーをインストールしてみました。すると何の問題もなくSynMatrixで両カメラとも認識され、(ZWOの方は署名をオフにしてから)無事に画像を取得することができました。

これで3台ともSynScan Proでのプレートソルブ、SharpCapでのプレートソルブ、安定なSharpCapとSynScan Proの接続が実現され、今後の観望会での電視観望運用に目処をつけることができました。


フィルターなしの広角電視観望で見る天の川

広角電視観望で、カメラレンズとZWOカメラを接続するアダプターをAmazonで見つけた安物にしたところ、飛騨コスモス天文台の観望会でピントが出なかったという致命的な欠点がありました。その時は時間がなかったので結局諦めたのですが、あらためて見直してみました。

まず一番の原因が、QBPが入っていて、それが薄型のT2と1.25インチフィルターをつけるアダプターでカメラにねじ込んで取り付けてあったので、接続アダプターのねじ込みが足りなかったことが問題でした。薄型といっても厚さが数mmはあるので、影響があるみたいです。

まず、フィルターをねじ込みアダプターごと外して、接続アダプターを一番奥までねじ込んで試してみると、ギリギリですがなんとかピントが出ます。このテスト自宅でやっていたのですが、ここでちょっと驚きました。この状態で見る天の川があまりにはっきりしているのです。これまで天の川電視観望は何度もやってきましたが、いずれもCBPやQBPを入れた状態で試していました。これは同時に主に赤い星雲を見るためなのですが、天の川自身の見え方はかなり犠牲にしていたようです。

wde_nofilter2

ただし、当然ですが星雲の見え方はかなり犠牲になります。上の画像は天の川の一番濃いところらへんで、M8干潟星雲などが映り込んでいるのですが、どこにあるかわかりますでしょうか?

この写りだと星雲を見てもらうにはちょっと厳しいので、試しに何とか元々使っていたQBPを入れてなんとかピントが出ないか試してみることにしました。結局、カメラ側に取り付けるのではなく、接続アダプターとレンズの間の隙間に、ねじ込むことをせずにポンと置くだけのような形で入れ込みました。

IMG_1609

揺らすとちょっとカタカタ鳴りますが、T2アダプターが防波堤になってレンズを傷つけるとかもなさそうなので、実用上は問題ないでしょう。

QBPを通して見た天の川ですが、上と同じような画角で見るとこうなります。
wide_QBP

今度はM8、M20、M17、M16など星雲がはっきりとわかりますが、逆に天の川が随分と淡くなります。

見栄えがかなり違うので比較してみるのが面白いかと思います。なので、できるならフィルターの取り外しがすぐにできるといいのですが、これは今後の課題としたいと思います。


SharpCapの新機能

SharpCapのアップデートに伴い、ライブスタックで恒星の色合わせを実現する機能が追加されていました。調べたら6月30日のバージョン4.1.13447.0で搭載されたようなので、まだ出来立てホヤホヤみたいです。どの星の色かを特定するために、プレートソルブと合わせて働く機能のようです。
スクリーンショット 2025-07-25 220910

それに合わせて、背景を自動で調整する機能も搭載されたようです。
スクリーンショット 2025-07-25 220910_cut

各色の上にある白いマーカーの左側をずらすことで、マニュアルでどれだけ引くか調整することもできるようです。

これまでも色バランスと輝度のストレッチなどを駆使して恒星の色を調整するとかはできることはできたのですが、今回はPixInsightのPCCみたいに、より客観的に、安定して色をそろえることができるようになったということかと思います。


まとめ

以上久しぶりの電視観望ネタでしたが、先月あったトラブルはメンテナンスでかなり状況は改善されたと思います。3台体制で、どれも機能に差がなく、同様の動作が期待できます。

今週末にまた飛騨コスモス天文台で観望会があることと、夏休みで8月にも何度か観望会の予定があるのでこれでちょっと安心です。さらに、今回試したノーフィルター天の川も含めて来てくれたお客さんに披露できればと思います。



FC-76+SHG700+G3M567Mでの太陽分光撮影で、Hα線は毎回テストがてら撮影していて、その日のうちか、せいぜい次の日にはXで報告しています。でもブログ記事にはしていないものが少したまっているので、SHG700の応用編は今回はお休みで、観察記録で記事にしてみようと思います。

7月13日のHα画像

He-D3画像を撮影した7月13日(日)、実は機材を出してまず最初にHα画像を撮影しています。初めにHαで撮影して大きな問題がないことを確認してから、新しいことに挑戦するようにしていること、機材を出した日はできるだけHα線で撮影して変化などを見ていこうという意図です。

この日でHαの撮影は4回目、スタックは3回目になりますでしょうか。もう手慣れたもので、かなり安定に撮影できています。以下の画像は20枚をスタックしたものになります。20枚も重ねると、分光撮影特有のジャギーもほとんどわからなくなります。モノクロ、モノクロ反転、カラー、カラー反転画像を載せておきます。

all_11am_lapl2_ap23039_IP2

all_11am_lapl2_ap23039_IP_inv

all_11am_lapl2_ap23039_IP2_color

all_11am_lapl2_ap23039_IP_inv_color

このくらいの画像がコンスタントに撮れるなら、全景はもうSHG700で十分かなと思います。波長幅的にはエタロンよりも圧倒的に有利です。モザイクなしで一度に取るということを考えると、最後はカメラのピクセル数で限界が来て、これ以上はセンサーサイズを大きくすることになってくるので、ここら辺が一番バランスが取れているのかと思います。弱点は、撮影と画像処理がエタロンの一発撮影に比べるとだいぶん面倒というのと、分光特有のジャギーが出ることでしょうか。今の分光撮影のペースでは一番速くて1ショットあたり30秒ちょっとかかり、1回の撮影のファイルサイズも大きいので、連続撮影は多少難しくなります。

実はこの日、午前7時半頃と、午前11時半頃にHα線を撮影しています。上の画像は午前11時の画像を処理しています。というのも、7時の画像はかなりジャギーがひどく、11時の画像は1枚だけでもジャギーが目立ちません。あまりハッキリ覚えてはいないのですが、7時の時よりも11時の時のほうが風があった気がしていたので、11時の画像が綺麗すぎるのは意外でした。可能性の一つが、正午近くになり鏡筒が天頂近くに向き、SHG700が一番下側にきます。今の機材の一番弱い部分は鏡筒とSHG700の接合のところで、ここで一番揺れるはずです。鏡筒部分を赤道儀で支えて、SHG700が鏡筒接眼側に付いていて揺れるとすると、鏡筒が水平の場合と垂直の場合では、垂直になっていた方が揺れが小さい気がします。でもこれが本当なのかどうか、もう少し実験も含めていつか検証してみようと思います。


太陽画面内での距離の測定

この日の太陽は、北東方向位に大きなプロミネンスが出ていました。このプロミネンスの高さを測ってみましょう。

JSol'Exを使うと、太陽画面内で太陽表面からの高度や距離を測ることができます。一度seeファイルを処理した状態で、出来上がった画面内で右クリックして「Measure distance」を選ぶか、画面の上のアイコン群の右端の天秤みたいなボタンを押します。すると以下のような高度を加えた画面になります。

height

ここで、画面のどこかをダブルクリックすると、そこを起点にして赤い線が出て距離が測れます。終点もダブルクリックです。下の画面は、距離に、さらにImage Mathのdraw_earthコマンドを使って、地球の大きさを書き込んでいます。今回のプロミネンスは6万km越えの高さで、地球の直径12756km5個分くらいになります。

earth_cut2


7月20日のHα画像

続いて、1週間後の7月20日(日)の撮影です。午前8時29分から8時37分の間に撮影した10枚をスタックしています。1週間前に比べて、東側にあった黒点群が西の端の方に来ています。

disk_lapl2_ap2924_IP_ST_mono

disk_lapl2_ap2924_IP_inv_ST

disk_lapl2_ap2924_IP_ST_color.2jpg

disk_lapl2_ap2924_IP_inv_ST_color2

うーん、記録として残すのだと反転画像はいらない気がしてきました。それよりも黒点の情報を載せておいた方がいい気がします。 というわけで自転軸の角度P角を含む、緯度経度情報とともに黒点番号がちょうど付くので、JSol'Exでcardと呼ばれる画像も残してみます。ただしこれはスタックしたものではなくて、1枚画像になります。最盛期は2024年の10月くらいだったと言われてましたが、なんかまた黒点の数が増えているみたいですね。

08_35_05_0000_08_35_05_card_0_00


7月21日のHα画像

さらに翌日の、連休3日目の7月21日(月)の画像です。この日は撮影の最後にHαに移りました。9時50分から10時くらいに撮影しました。あまりに暑いので、この撮影直後に片づけて家の中に退散しています。

合計20ショット撮影して、その後スタックしようと思ったのですが、その中の1枚だけが分光特有のジャギーがほぼ皆無だったので、そのまま載せることにします。JSol’Exでの出力そのままで、その後の画像処理は何もしてなくてもここまで出ます。たまたまシーイングがいい瞬間だったのかと思いますが、明らかに上のスタック後の画像よりも分解能が出ています。

これには一つ理由があって、この撮影より前までは32倍速の6秒で撮影してましたが、この撮影は16倍速の12秒で撮影しています。32倍速でもいいかと思っていたのですが、550fpsだと撮影できるコマ数は高々3000コマ程度、その中で太陽が写っているのは4秒程度なので、2000コマになります。1コマの中の1pixel分の線が出来上がり画像の一本の縦線になるので、出来上がり画像の太陽が写っている部分の横幅の3000pixelを2000本の線で無理やり引き延ばして表現していることになります。16倍速にすると、約6000コマ撮影して、その内4000コマを超えるくらいに太陽が写っています。これだと少なくとも動画のコマ数が分解能を制限することはなくなるので、今後はファイルサイズは少し大きくなりますが、16倍速にしようかと思います。

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最後のドップラーシフトは記録を続けるのに意味があるかどうかまだよくわかっていません。あまり意味がないようならやめるかもしれません。

この日のみたいに、コンスタントな記録の場合はできるだけ手軽になるように、省ける手間は省いた方が長く続くのかと思うので、今後もジャギーが少なかった場合は1ショットスタックなしで載せていきたいと思います。


まとめ

Hαはもうテスト段階は終わって、コンスタントな観察段階になってきました。この画質レベルで記録が続けられるなら満足なのです。

でも逆にこうやって安定してしまうと性格的に急速に興味を失う可能性が高いので、この観察がいつまで続くかちょっと心配です。


以前書いた「HG700応用編 (その1): 各種波長を撮影してみる」の時に、あまりに淡いと言って諦めたHe-D3線ですが、今回はその撮影に挑戦してみました。普通に処理しようとするとかなり大変なのですが、JSol'Exを使うと拍子抜けするほど簡単になります。




He-D3線

5875.62ÅのHe-D3線ですが、改めてSpectrum browserで確かめても線がはっきりしません。

スクリーンショット 2025-07-05 090320

実際にSharpCapで見た時も、全然わかりませんでした。それもそのはずで、He-D3線は吸収線ではなくて、輝線とのことです。

確認方法の一つが、太陽のリム(rim、縁(へり))の方に持っていって太陽表面の明るさの影響が少ない状況で見てみるとわかるとのことなので、実際やってみました。下の画面のように赤道儀のカーソルで端の方に持っていきます。画面内の明るい部分の上の方に左右に僅かにはみ出ている明るい線があって、どうやらこれがHe-D3線のようです。確かに輝線として光っていることがわかります。

スクリーンショット 2025-07-13 081754_cut
明るいところが太陽表面の縁です。
その縁の上部(波長が低い方)に飛び出ている線がHe D3の輝線になります。
下の方の黒い太い線がNa-D2線になります。

なのでこの場合は、近くにある5883.82ÅのFe-I線とか、5889.95ÅのNa-D2線を一緒に撮影して、その吸収線のところの波長を元に、He-D3線の波長までをオフセットとしてずらして処理するというわけです。

JSol'Exのマニュアルを見ると、serファイルを解析して手作業で波長ラインをクリックしていって、オフセットを加えて処理するような方法が載っていますが、どうもそれも今は昔の話で、今では自動的に処理ができるようです。


撮影

撮影は2025年7月13日になります。少し雲もでてますが、おおむね快晴でした。赤道儀や鏡筒などの機材をセットアップ後、回折格子の回転角をHe-D3線に合わせて、カメラレンズ、コリメーターレンズ、鏡筒のピント合わせをして早速撮影開始です。

ROIサイズですがが、今回は少し広めの上下幅をとって、3200x250ピクセルとしました。最近の撮影は1枚だけの場合でも、SharpCapで動くあまりに便利すぎな「SHGスクリプト」を使っています。撮影時間が32倍速で8秒と、かなり短くできるようになってきたのと、横幅は元の3840ピクセルから少し攻めて3200ピクセル、縦幅もHαとかの単線なら80ピクセルで十分となり、ファイルサイズが元の10GBから2GB程度になってかなり小さく撮影することができています。出せるフレームレートはROIサイズなどによりますが、小さいサイズにすると450fpsから570fpsくらい出ます。これくらいのフレームレートだと32倍速で大丈夫そうで、実際に処理しても今の所問題は見えていません。今回はHe D3を含む複数の線をまとめて撮影するので3200x250ピクセルと少し太目のため、450fpsでの撮影になりました。


He-D3の自動処理

多波長撮影の記事にコメントをくれたhasyamaさんによると「Jsol'ExのWavelengthの設定をAutodetectにして処理すれば、自動でHe-D3画像を生成してくれるはず」とのことなので、早速やってみました。基本的にはQuick modeで処理すればいいみたいです。でもどうやら、うまくできるときとできないときがあるみたいです。うまくいくときは、そのままHe-D3線が自動で認識され、黒いもやもやのような特徴的な画像が出力されます。

うまくいかない場合ですが、原因を探るとprofileタブのスペクトルのフィッティングを見てわかりました。He-D3線の処理はかなり特殊で、撮影したHe-D3線の近くの吸収線(Na-D2やFe-I)を元に、JSol'Exが持っている参照スペクトルと比較してフィッティングなどし、吸収線周りの波長の値と、1ピクセルあたりが何Åにあたるのかかを決めます。そのNa-D2やFe-Iの情報を元にして、He-D3の波長は既知なので、何ピクセルずらして処理すればいいかを計算します。ところがうまくいかないときにprofileを見てみると、実測で番暗いNa-D2が参照データの吸収線と合っていなくて、波長が全然ズレたものになっていました。その場合、serファイル処理の際のQuick modeでの波長設定をAutodetectではなく、あえてNa-D2線をにして再処理すると、うまくフィッティングできるようです。もしNa-D2線が撮影されてなくて、もう少しHe-D3線に近いFe-I線だけが入っているなら、波長設定をFe-I線を選んで同じserファイルを処理しても大丈夫でした。

とにかく、Autodetectを選択しても、Fe-IやNa-D2選択しても、撮影した動画にHe-D3が含まれていれば勝手に認識してHe-D3画像を生成してくれるようになっているようです。

ちなみに、Image Mathのサンプルスクリプトにもヘリウム処理があるのですが、多分Image Math自身のバグで、処理中に変数での画像の受け渡しがうまくいかなくて、表面が一色に塗りつぶされてしまうようです。スクリプトを書き換えて一度Quick modeで出た画像を出してやってから元に戻してやると、きちんとしたHe-D3を出せたりするのですが、どうも再現性があまりないようで、今の所あきらめてます。というのも、処理時にHe-D3線画像から連続光画像を引くことで明るさに隠れているHe-D3線が見えるようにしているのですが、この引き算処理がブラックボックスで、処理ごとに引きすぎで暗くなったり、うまく引けなくて明るくなりすぎたりして、出てきた画像にばらつきがあります。今回は初めてなのでとりあえず自動処理で済ませることにしますが、そのうち調整できるようになったら色々処理過程で試してみようと思います。


できたHe-D3画像

出来上がり画像です。今回は10ショット撮影し、4ショットを使いました。6ショットも捨てたわけは、上で書いたように自動処理で明るくなったり暗くなったり、どうも画像が安定にならないからです。その中で最も似通った4枚を使いました。モノクロとカラー化した画像を示しておきます。

helium_all_lapl2_ap4441_ST_mono

helium_all_lapl2_ap4441_ST
  • 撮影日: 2025年7月13日8時50分-9時1分
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: Takahashi FC-76(f600mm、F7.9) 
  • 分光器: SHG700
  • 赤道儀: Celestrn CGEM II
  • カメラ: ToupTek G3M678M
  • 撮影: SharpCap Gain 200 (=6dB)、露光時間0.75ms、ROI: 3840x248、平均181fps
  • 画像処理: JSol'Ex、PixInsight

ただ、明るいオフセットを引いた差分の画像なんて初めてで、処理の匙加減がよくわかりません。上の画像は一見反転しているように見えますが、実際には反転なんてしていなくて、明るいHe-D3輝線画像から連続光画像を引いているために黒い部分がでてくるようです。黒い部分はあまり諧調が残っていないのですが、マニュアルで処理過程を調整できるならもう少しマシになるのかもしれません。表面のモヤモヤ具合もどれがHe D3に特徴的なものかよくわからないので、シャープにした方がいいのか、もっとかすんでいるようなのがいいのか全然わかりません。ネット上にもあまり手本がないので、とりあえず今回はImPPGも無しなど、最低限の処理に抑えることにしました。

それでもこうやって見てみると、メジャー2強のHαとCaKを除くと、他のどの波長よりもHe-D3画像は特徴的と言えるでしょう。吸収線でないところの輝線というのも面白くて、少し離れた波長の明るい画像をさっ引くという処理方法の工夫で模様が出てくるところも面白いです。


ついでのNa-D2とFe-I線画像

He-D3線が目的だったのですが、撮影の際に暗線のNa-D2線とFe-I線も撮影せざるを得ないので、ついでに処理して画像にしてみました。

まずはNa-D2線です。波長がHe-D3線とほぼ同じなので、似たような色にしました。多少ですが、表面に特徴のあるひび割れみたいなものが出ています。
IP_aligned_lapl2_ap5066_ST_color

次はFe-I線ですが、こちらはかなり地味です。それでも少しだけ模様が見えます。
Fe_I_disk_all_lapl2_ap2877_ST_color

やはり特徴的なHe-D3線に比べると、白色光に似ていてそこまで面白味はなさそうです。


まとめ

以前諦めたHe-D3に挑戦してみました。最初は大変だと思っていていろいろ調べてたのですが、ほぼ自動でできてしまったので、ちょっと拍子抜けでした。

SHG700に関して、このセットアップで太陽に限っていうと、だいぶやりたかったことはできてきていて、ネタとしてはあと数個といったところでしょうか。でも、このセットアップを外してまだやってみたいこともたくさんあるので、もう少し分光熱は続きそうです。


週末にやっと撮影できましたが、まだ手持ちの画像でもう少し確かめたいことがあります。今回は、高波長分解能の分光器でエタロンで見たHα画像を再現してみます。


太陽分光撮影でHαエタロンのFWHMの差を再現してみる

今回の比較は、SHG700を手に入れる前からやってみたいと思っていたことの一つです。エタロンの透過波長幅(FWHM)の性能差によってどう見え方が変わるのかを、きちんと比較してみたかったのです。これは、今後新たなエタロンを選ぶ際の、重要な指標になっていくのかと考えています。

これまでにHα線での太陽はPSTが2台と、今年に入ってPhoenixを少しの期間触って撮影してきました。PSTのエタロンの波長透過特性はFWHM (Full Width Half Maxmum、半値全幅)で1Å、Phoenixのエタロンは0.6Å以下というのが公称値です。さらに、CP+での講演の時にも比較したのですが、京都大学飛騨天文台SMARTはFWHM0.25ÅでHαの中心波長と+/-0.5Åずらして撮影した画像を公開してくれています。

手元にあるPSTエタロンの透過特性はいずれ直接測ってみたいのですが、SHG700で撮影したもっと細かい波長分解の画像がすでにあるので、これだけでも何かできそうです。そこで今回は、これまで撮影したPSTの全景画像とPhoenixの画像、飛騨天文台SMARTの画像を、それらのFWHMの値の情報と共に、今回のSHG700で撮影した画像を同波長幅相当にした画像を生成し比較してみたいと思います。

見たいのは、波長透過幅によってどんな画像になるかの比較検証です。これまで撮影したもののうち、中心波長を比較してみます。波長分解能がいい順です。


1. SMART

SMART: 2025/1/18 (Phonenixで撮影したものと同じ日)のHαで波長幅は0.25Åです。

ポイントは、波長分解能が市販エタロンよりも数倍いいこと、そのため太陽表面に淡い白いモヤモヤした筋のようなものが随所に見えていることです。

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これをSHG700で再現してみます。SHG700の波長分解能は分光された光を撮影する際の1ピクセル幅で考えて0.091Åとします。中心波長とその前後の画像で上の画像に迫れるかを見ます。下は中心画像に+/-1枚の計3枚を平均化したものです。単純計算で、波長幅は3枚の間の2つ分と、両端の画像の半分が2枚分なので、合計で分光撮影の3ピクセル分と考え、0.091 x 3 = 0.273Åになります。上の画像と比べると、白いモヤモヤも含めて、そこそこ再現できているのではないでしょうか?

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少し条件だけ書いておきます。SMARTにアップロードされている画像は、jpgファイルの場合は輝度などの多少の画像処理はされているようです。でも解像度が低く細部比較にあまり適していないと思われたので、fitsファイルを落として自分で画像処理をしました。fitsファイルはRAWに近いようで、ストレッチも含めて何も画像処理をしていないようでした。ただしノイズがかなり多かったので、ノイズ処理が影響して空間分解能が犠牲になってしまっったかもしれません。また、画像処理の度合いによってはコントラストを変えることなどで見栄えが大幅に変わることもあるのですが、SHG700の画像をJSol'Exでっ標準的に処理したものに合わせました。画像処理の影響は少なくないのですが、面白いのは表面の淡い白いモヤモヤだけは出方が画像処理とはかなり独立に波長に依存しているようなので、この見え方が似ているということは、そこそこうまく再現できているのではと考えています。


2. Phoenix

次はPhoenixで1月18日に撮影した画像です。Hαで波長幅0.6Å以下というのが公称値です。

SMART画像に比べて、太陽表面の白い淡いモヤモヤは明らかに薄くなっています。これは明らかに波長透過幅の違いによるものと考えていいでしょう。そうは言っても、市販エタロンでHαでこの白いモヤモヤが出ること自体がすごいことなのかと思います。
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上の画像をSHG700での再現してみます。Hα中心画像に+/-3枚の計7枚を平均化したものです。波長幅は7枚の間の6つ分と、両端の画像の半分が2枚分なので、合計で分光撮影の7ピクセル分と考え、0.091 x 7 = 0.637Åになります。分光の1枚画像なのと、JSol'Ex標準のストレッチだけでその後の加工はしていないので、空間分解能はPhoenixの方が上になりますが、白いモヤモヤはそこそこ再現できているのかと思います。
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ここまでの結果を見るに、実写の場合にはエタロンの透過波長幅によって表面の白いモヤモヤの見え方には違いがあって、分光でシミュレーション的に透過波長幅を再現した時にも同様の傾向が見られるので、やはりこの白いモヤモヤの出方が透過波長幅に影響を受けていることは明らかであると言えそうです。言い換えると、この白いモヤモヤの出方を見ることで、エタロンの性能をかなり直感的に判断することができるのかもしれません。


PST

さらに透過波長幅が広いPSTで2025年5月18日に撮影した画像です。Hαで波長幅1Åが公称値ですが、エタロンの個体差でかなり見え方が違うと言われているので、この値がどこまで正しいかは別途検証する必要があるかと思います。
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再現のためのSHG700の画像に合わせて、リンク先のページの実写PST画像から輝度などを少しいじっていることに注意です。

パッと見でPSTが、SMARTやPhoenixとは見え方が大きく違うのがわかるかと思います。白いモヤモヤは全く見えなくなり、代わりに表面の模様というか、ガタガタが多くなり、SMARTやPhoenixでのちょっとのっぺりとした印象とは変わって、いい意味で賑やかになっている気がします。これらの違いは画像処理で差が埋まるレベルではなく、エタロンの透過波長幅の影響が大きく出ているのかと思われます。

また、同一画像内の違う場所でエタロンの性能の違いが出てしまってるようです。中心部分は明るいためFWHMが大きくなってしまい性能が悪く見えてしまっているようで、模様もより大きな構造になっていて、荒々しく見えます。

これをSHG700で再現してみます。中心画像に+/-5枚の計11枚を平均化したものです。波長幅は11枚の間の10個分と、両端の画像の半分が2枚分なので、合計で分光撮影の11ピクセル分と考え、0.091 x 11 = 1.001Åになります。白いモヤモヤはほぼ何も見えず、ガタガタの模様もよく再現されていると思います。その一方、SHG700では画面内の波長透過幅の差はないので、PSTでの上の実写のような中心だけが明るくなるような画像は再現できません。

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SHG700単体での中心波長からのズレの比較

最後に、SHG700で撮影した中心波長のみの、0.091Åの透過波長幅の画像を載せておきます。
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SMART画像ともやはり違いがあります。これはHα吸収線の底の暗い部分で見ることができることが効いていると思われ、白いモヤモヤは太陽面全体に存在しますし、ダークフィラメントがより色濃く出ることがわかります。ダークフィラメントのコントラストについては、撮影では画像処理で誤魔化すことはできますが、眼視ではこのエタロンの性能差はより明確な違いとなって見えるのかと思います。よく「半値幅の小さいエタロンは模様がよりハッキリ見える」とかというのは、このダークフィラメントだけとっても正しいのかと思います。

透過半値幅が小さいと淡いダークフィラメントまでよりコントラストよく見えるようになるので、1年ほど前の太陽活動が最も活発だった頃には、分光撮影でダークフィラメントが太陽全体をぶった斬っているような画像を得ることができていたようです。SHG700をもう少し早く始めたかったです。これは次回の太陽最活動期の10年後くらいの目標でしょうか。


比較のまとめ

3つの比較で分かったことをまとめます。
  • SMARTの画像は太陽表面内に白い淡いモヤモヤが一番多いです。
  • PhoenixでもSMARTほどではないですが、白いモヤが多少見えています。透過波長幅が狭くなるほどこの白いモヤが見えてくるので、このモヤがどれくらい出るのかがエタロンの性能の指標の一つになるとも言えます。
  • 白いモヤモヤが一体何なのか?少なくとも私はまだ特定できていません。
  • 日付が違うので、細かい違いについては大したことは言えませんが、それを差し引いてもPSTの見え方は全然違っています。まず、白いモヤは全く見えません。波長透過幅が大きいからだと思われます。その代わりにもっと粗いガタガタの構造の模様が全面に見えます。
  • PSTと比べると、SMARTもPhoenixも、ガタガタが全然見えなくて、むしろ印象としてはのっぺりしています。
  • 以前は、PSTで見えているようなガタガタが見えるのがいいと思っていました。これはむしろ中心波長から少しズレたところに出てくる模様のようです。ただ、このガタガタがあった方が賑やかで逆に見栄え良く見えるのではという印象も捨てることができません。実際、JSol’Exのスクリプトを見ていると、あえて中心波長回りの複数枚を平均化している例があります。あまりに狭すぎる透過波長幅だと見栄えがいまいちというのは、太陽分光関連の方たちの共通の認識なのかもしれません。
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さらに、SHG700の中心画像と比べると
  • SHG700単体の透過波長幅が0.091ÅとSMARTに比べても2.5分の1程度まで行くので、白いモヤモヤはより表れるし、ダークフィラメントがよりハッキリ見える。

なぜこんな比較をしてみたか?

そもそもなぜこんなことをしたかですが、SHG700を手に入れる前に、次の太陽機材をPhoenixとSHG700のどちらにするか迷っていました。Phoenixはすでに触った経験もあり様子もわかっていたので、最初は単純にPhoenixにしようと思っていました。Phoenixのエタロンは、透過波長幅においても、面内の均一性においても、製品のばらつきにおいても、世代が完全に代わったと思わせるほど素晴らしいものになっています。

でもここで一つ疑問がありました。太陽光のHα周りのスペクトルをみると吸収線になっていて、Hαの中心波長のところが一番暗くなっています。周りの波長の明るさに邪魔されないために、Hα吸収線の底にある太陽そのものの模様が見えると解釈することができます。もしこの解釈が正しいなら、周りの邪魔な明るさだけが問題なので、例えば光害で埋もれる淡い星雲を炙り出すように、DC的な光のオフセットを除いてやれば太陽本来の模様がもっと見えてくるはずです。明るさだけの問題なら、本当にそれだけのことで、PSLエタロンの画面の不均一性の問題は残りますが、透過波長幅の問題はもしかしたらなんとかなるのではという淡い期待がありました。

でも今回の比較結果から見てみると、透過波長幅が大きくなると、もっと言い換えると、Hαの中心波長から0.5Åも上下にズレてしまうと、明るさの変化だけでは全く説明できないレベルで見かけの模様が変わってしまうことがわかりました。このことを考えると、Hα吸収線の底でHαで別途輝線として輝いている別の明るさがあると考えたほうが自然です。

実はこのことは、以前太陽のジェットを見た際に調べた時に答えは出ていて、その時の言葉では「採光面からの水素に照らされて吸収と放射を繰り返し、Hαで輝く輝線となる」と書いています。要するに、Hαで見える模様は、吸収線であり輝線である結果出てくるものということがわかります。輝線でもあると考えると、Hαの中心線からズレることによって見える模様が変わってくることは納得できます。今回はそれを改めて確かめてみたということになります。

以上のことから、結論としてはエタロンの透過波長幅が狭いもので見えてくる輝線の模様は、透過波長幅の広いものでは決して見ることができないと言えるのかと思います。性能のいいエタロンは何者にも代え難いということです。

でもですね、まだ少し疑問が残っているのです。C8とPSTエタロンでものすごくシーイングがいい時に見た黒点周りなどの模様と、シーイングが悪い時に見た黒点周りの模様は、前者がまるで透過波長幅の狭いエタロンで見たような感じで、後者はまるで透過波長幅の悪いエタロンで見たような模様に酷似しています。シーシングの良さ悪さでボケ具合が変わるのだけで説明するのはちょっと無理があるくらいの違いになります。この違いを、いまだにうまく説明することができません。

もうちょっとだけあがいてみます。上のPST相当のSHG700の再現画像を、画像処理だけで無理やり明るいところを抑えて、さらに大きな構造を抑えることで、どこまで中心波長近辺の画像に迫れるかやってみました。等価透過波長幅は同じ1.001ÅでPST相当の広いままです。

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どうでしょうか?大分印象が変わったかと思います。白い淡いところも少し見えるようになるし、太陽表面も似たような感じにすることはできます。ただしこれ、PSTの実撮影画像でやろうとしたら全然できませんでした。PSTの実写画像ではこのようになってしまいます。
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理由は、画面内でエタロンの不均一性が出てしまっていて、特に中心が明るすぎるなど、画面内輝度差が目立ってしまい、うまくいかないのです。フラット化とかまでやってみましたが、それでもいまいちでした。なのでFWHMだけならなんとか誤魔化せるが、画像内の透過波長の平坦性は如何ともしがたく、むしろそちらの方が重要な気がしています。

でもまあいずれにせよ、「良いエタロンは良い」というのは代え難い事実っぽいので、次はPhoenixに走るのかもしれません。


まとめ

今回はSHG700で分光撮影したHα周りの画像を元に、これまで触ったエタロンで得た画像などで、いろいろ比較検討してみました。波長分解能が細かいと、それより粗い波長分解能で撮影した画像はそこそこ再現できるようです。今後のエタロン選択の指標になりそうです。

撮影用途に限るならまだしばらくは手持ちのPSTで誤魔化して使えないかなとも思ってましたが、やはりいいエタロンが欲しくなってしまいました。ただ、シーイングのいい時のC8のPST画像はそこまで不満ではないので、もう少し様子見です。だって新しいエタロンを手に入れたら、どうせすぐに改造の餌食になることは目に見えてるからです。

次回は、週末に撮影した画像を処理してみます。

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