ほしぞloveログ

天体観測始めました。

2025年03月

2025年3月30日、富山にある射水市新湊 (しんみなと) 博物館の「天空展」に行ってきました。これは私が所属するアマチュア天文グループの富山県天文学会(通称「県天」)の写真展で、私も2点ほど展示させて頂いています。

IMG_1097

IMG_1096


講演会を聞きに

この日は天空展の企画の一環で、同じ県天メンバーの方の講演があって、「星空に魅せられて」というタイトルでアマチュア天文家の天文愛を一般の方にとてもわかりやすく伝えていました。

IMG_1114_cut

来ていたお客さんは63人だったそうで、決して大きくない部屋に、最初立ち見で人が溢れていて、急きょ椅子を大量に出していて、ぎゅうぎゅう詰めでみんな座れたイメージです。その中で県天メンバーはせいぜい10人くらいだったので、基本的に一般の方が多くて、それに相応しい話の進め方で、とても参考になりました。


2つ目の展示室が面白い!

講演前に時間があったので、展示室を見学しました。

博物館は展示室が3つあって、1つ目がおそらく一般にある博物館のイメージの部屋で、射水市の歴史や文化などが展示されています。2つ目の部屋はテーマが測量で、和算を含めた数学的な展示が中心になっています。3つ目が天文関連です。博物館としては珍しく、何と2/3が理科系の展示になっています。

正直いうと、1つ目の部屋は私的にはあまりインパクトがなく、一番印象に残っているのはジオラマで、田んぼの間を船で移動するというような、日本昔ばなしのおとぎの国への合言葉が相応しいような風景でした。例えば射水市の内川という地区は日本のベニスと謳っているくらい、射水地域は昔から水と共に暮らし、水に悩まされてきた地域だそうです。

普通の見学のように一つ目の部屋を通り過ぎたのですが、2つ目の部屋は最初から興奮気味でした。(今回掲載した写真は、博物館のスタッフの許可をとって撮影し、ブログに載せることを了解していただいています。)

IMG_1108

最初は古地図だったのですが、今の富山でもよく知っている地名が所々に見られます。例えば国道41号線は富山の真ん中を突っ切っていて、今は名古屋まで通じているのですが、この道は私もよく通ります。古い地図を見ていると、今でも駅名クラスで残っているメジャーな地名と、地元の人くらいが知っている地名、消えてしまったようで私も知らない地名など、今と比べるととても面白いです。

入り口の地図のところを通り抜け、途中から本格的な測量の展示になります。
IMG_1110

越中の偉人として石黒信由という人がいて、江戸時代に有名な数学者の関孝和の関流に師事し、第六伝という免許皆伝に至った人の功績を紹介しています。石黒信由はこの博物館の場所からわずか何百メートルか離れたところの出身で、彼の功績を伝えるために地元に博物館を作ろうということで、この場所に建設されたとのことです。

石黒信由の人柄などを説明することもそうなのですが、むしろどんな数学やどんな測量をしてきたかという観点から展示されているのが、博物館らしくなくてとても面白いです。例えば下の写真の円と三角形の関係など、すでに三角関数を多用してきたこともわかります。この図を見てるだけでも、今の数学で残っている用語もあれば、消えてしまった用語もあります。なぜ消えてしまったのか、数学的な意味はどうあったのかなど、ここだけでもじっくり時間を過ごすことができます。
IMG_1112

江戸時代に正確な日本地図を作った伊能忠敬が富山に来た時には、石黒信由と実際に会っているとのことです。当時の石黒信由率いる富山の測量技術は伊能忠敬らの測量技術よりも優れたろこともあったと言われるほど高度だったようで、同じ道を目指す同士で相当語り合ったらしく、さぞかし盛り上がったのではないかと想像します。私も天文好きの人と話すとものすごく盛り上がるので、なんかよくわかる気がします。

展示物の中には、測量に使った車を再現したものが何気に展示されていたりします。話を聞くと、実際に当時使われた歯車だけを元に、現代に車型の測量器を再現してしまった人がいて、それが何と富山県天文学会の今の会長とのことです。

IMG_1116
歯車だけから再現した距離の測定器。手前の白い丸はカウンターです。

他にも、離れた場所の水平を測定するのに、木で作った水に浮かべる基準のようなものを再現したというのですが、残っている当時のものと同じものを作ると、木の上につけた部分が重くてそもそも水に浮かばないというのです。距離測定の車も歯車部分しか残ってなかったとのことなのですが、もしかしたらと言う時の技術が漏れないように、後に伝わっているものと当時の機器には違いがあるのかもしれません。そんな想像をするだけでも、いろいろ考えさせられます。

他にも、軸心磁石盤と呼ばれる銅でできた測定器が展示されているのですが、銅器製作が専門の方に依頼して分解したところ、中から銘が出てきて、今でも銅で有名な富山の高岡で製作されたことがわかったとのことです。

jikusin2_01
これは展示物とは違いますが、
職員の方が別途ヤフオクで落札した軸心磁石盤とのことです。

この銅の専門家というのも、県天メンバーとのことです。富山県天文学会はすごい人達がいるグループなのだと改めて実感しました。

地元の博物館で、地元のそれぞれの専門家が携わって検証していく話なんかは、地元にいないと絶対聞けないので、もう感心するやら感動するやらで、とても充実した見学になりました。

博物館の方に、今回あまりに面白かったことを興奮交じりに伝えたら、資料をいくつか頂くことができました。この資料も読み始めているのですが、かなり面白くて、今の数学と同じようなところもあれば、全く違った発想のところもあります。この頃の測量は天文学にも相当通じるところがあり、現代の観望会で子どもたちに話すネタにも繋げることができそうです。


天体写真展の様子

そうそう、肝心な第3展示室の天体写真展のことを書くのを忘れていました。この展示室は2つに分かれていて、前半が常設展で、後半がイベント用の部屋となっているようで、今回の天空展は後半の部屋で開催されていました。県天メンバーが撮影した写真が壁にたくさん飾られています。彗星の写真に、星景写真、星雲などです。
IMG_1104

この中には、前会長が撮影した写真と、さらに前々会長が撮影した写真が展示されていました。お二人とも故人なのですが、ご家族の方がいらしていて少しお話しすることができました。私が星を始めてすぐのころに、地元の星見場所の牛岳というところで前会長に誘われて県天に入会しました。それがあって今ここにいるので、ご家族にも感謝とお礼を伝えることができました。前会長は晴れていれば必ず星見に出るような人で、家族にそのことを聞いたら、やはり全く同じ認識だったようです。博物館方の方に頂いた石黒信由の解説本の中に、西村太沖という天文学者が出てきて、加賀藩の天文学の講師の仕事をほったらかして故郷の城端(じょうはな)に帰って、自宅の屋上に天文台を作って毎晩天体観測をしていた人の話が出ていたのですが、江戸時代でも現代でも、好きなことにのめり込む人はいつの時代でも一緒だと、少し前会長と重ねてしまいました。

この「天空展」にはニュートリノ検出や重力波検出の展示も少しあり、近辺にある研究施設の地元で展示解説という位置付けなのかと思います。

今回の写真展のテーマは「面白い名前の天体」と聞いていたので、私は「イルカ星雲」と「スパゲティ星雲」を提供しました。写真的には他にも候補はあったのですが、今回はホントに名前だけで選びました。
Image17_ABE4_SPCC_BXTx3_HT_HT_back7_rot_half2_wall

Image22_DBE_SPCC_back_BXT_HT1_HT2_NXT_SCNRG6_cut

そうそう、この日は珍しく妻が一緒についてきて、普段あまり星に興味がないのに、講演も、その後の天体部屋の解説も面白そうに聞いていました。写真展では、私のスパゲティ星雲を見た時「心臓みたい」と呟いてました。なるほど、赤が動脈で青が静脈と考えると、形から言ってもスパゲティというよりはリアルな心臓に近いと私も妙に納得しました。ハート星雲の名前はこのSh2-240に譲るべきかもしれません。いや、ハートと言うとハートマークの印象の方が強いので、Heart星雲か、ズバリで心臓星雲でしょうか。

その後、妻は第2展示室の和算も面白いと言っていました。少なくとも妻が理系人間でないのは知っているので、何が面白いと思ったのかは私には理解できなかったのですが、理系に限らず文系寄りの人にも面白いと思える何かがあって、それが伝わるのかもしれません。


観光地射水・新湊

この新湊博物館は「カモンパーク新湊」という道の駅の一角にあります。ここのフードエリアの脇にあるファストフードカウンターの「白エビバーガー」が名物で、今時500円という良心的な値段です。他にも白エビを使った蕎麦や丼ものが、地元の人が普通に食べられる値段で提供されています。

博物館の見学が終わってから、この日も白エビバーガーを食べようと販売機の前に並んだのですが、何と私の一人前の人で最後で売り切れ。それ以降気分が乗らなかったので普通のカツ丼を食べたのですが、これも普通盛りでも十分な量があり、何と650円。

他にも、「かけ中」という名前で広まっている、うどんダシに中華麺(ラーメン)という組み合わせが、ここ射水・新湊地域のソウルフードらしくて、それを味わうこともできるとのことです。

道の駅からさらに足を伸ばして海の方まで行くと、海王丸バークという公園があり、帆船の中を見学することができます。帆船といってもかなり大型の船で、子供なんかは大喜びだと思います。パーク内にはラジコン用のサーキットがあり、休日などはラジコンマニアが走らせに来ていて、それを見ているのも結構面白いです。天文の前の趣味がラジコンで、私もこのサーキットにたまに走らせに来ていました。

天気のいい日なら、新湊大橋を渡ると立山が大迫力で見えるかもしれません。

惜しむらくは、車が無いといくつかの場所を回るのが辛いところでしょうか。これは富山観光の欠点の一つで、観光で来る場合はレンタカーを借りるか、富山近辺の知り合いをつかまえて車を出してもらうといいかと思います。

富山の人は是非とも新湊博物館に訪れてみてください。博物館のスタッフの方が「白エビバーガーが有名なので食べに来てくれるけど、その奥まではなかなか来てくれない」と嘆いていました。というか、富山在住で理科系が好きな方は、一度は行ってみてください。特に2部屋目の和算の部屋は、こんな人がいたから今の富山があるんだと、感動すること間違いなしです。



撮影記録

2018年:






2019年:





2020年:







ここから主に口径20cmのC8での撮影になります。解像度が一気に上がりました。




2021年:












2022年:







2023年:






2024年:



2025年:







ジェット関連






日食関連




画像一覧記事






最初に太陽望遠鏡を堪能できたのは2017年の福島のスターライトフェスティバスでした。ここで太陽の面白さに気づいたのだと思います。



PST改造第1期: 入手から10cmまで

 


いくら中古とはいえ、手に入れてからわずか2日後にはもう分解しています。




PSTは元々眼視用でカメラだとピントが合わないのですが、一部改造してやっと撮影に成功しました。




魔改造の開始です。最初は8cm。







10cmに手を出します。
IMG_4307










PST改造第2期: 20cmへの挑戦

IMG_4648





2025年のCP+のあと、太陽熱が再燃しました。改良とかいろいろ再開です。











太陽分光撮影

とうとうSHG700を使い、分光撮影に手を出しました。





撮影方法や画像処理など











_





太陽関連の解説など



主にエタロンの解説です。2025年のCP+で大体話したいことは話せました。





2025年のCP+では太陽望遠鏡フェニックスについて話しました。





3.5nm Hαフィルタのテスト






番外編






前記事ではPSTの調整などのことを書きましたが、同日の土曜と次の日の日曜に太陽に対応したPHD2で、実際の太陽オートガイドを試しました。

PHD2による太陽ガイドが開発されている

CP+の講演の中でPHD2の対応対応についてちらっとだけつぶやいたのですが、まだ日本ではほとんど認識されていなかったようで、一部の太陽マニアにはかなり響いたみたいです。その後、実際試された方が何人もいるようです。

それまでは太陽のオートガイドには以前このブログでも紹介した、Lusol-Guideがよく使われていたようです。私も何度が試したのですが、
  • ソフトの開発が止まっていること。
  • 元々有料だったこと。 (当時Lusol-Guideに気づいたhiroさんが、ほぼ表舞台から遠ざかっていたと思われる作者まで奇跡的にたどり着いて、無料で使って構わないという確認をとってくれました。)
  • 自分で試した限り、ガイド精度が10ピクセル程度と、そこまでよくはないこと。
  • そもそもタイプラプスのために保存するser形式の動画ファイルが、HDDに対してかなり負担になること。
などから、その後Lusol-Guideというよりも太陽タイムラプス自体をあまり試すことはなくなっていました。

そんな折、PHD2の太陽版がリリースされたのは2024年の3月頃のことです。その後2024年8月にJun1Watanabeさんがラズパイで太陽の中心を星のように小さく表してPHD2に渡すという独自の太陽ガイドシステムを発表しています。ここ1年で、太陽ガイドに関していくつか選択できるまでになったというのは、とてもありがたいことです。

私はPhoenixが来てからPHD2を簡単に試しただけなのですが、使い勝手もPHD2と本質的に同じで、使いやすく本格的な制御にも対応していて、安定に動かすことができました。今の私 (わたし) 的な再太陽ブームにおける今回の目的は
  1. かなり拡大して撮影するC8で、タイプラプス映像が作れるくらい安定したガイドを構築すること。
  2. あわよくば、SharpCapでリアルタイムでスタックしてできた画像のみを保存することで、とんでもない大きさのraw形式での動画ファイルの保存を避けてディスク容量を節約できればいいかな。
くらいの2つを考えいます。


実際に太陽PHD2を試してみる

まず、現在の太陽用のPHD2はいまだに開発バージョンということで、自己責任の範囲で試すべきで、マニュアルやサポートなどは十分でないということを理解しておく必要があります。

2025年3月24日現在の最新バージョンはリリースノートによるとv2.6.13dev7とのことです。


インストール後、カメラや赤道儀などの接続は普通のPHD2と何ら変わりはありません。

ガイド鏡筒ですが、普通に撮影用に使うものを流用すればいいかと思います。太陽は非常明るく、集光した際のエネルギーも大きくなるので、カメラを焼いてしまう恐れがあります。そのため、太陽用のフィルターなどを別途鏡筒前に取り付けるなどして手当てしてやる必要があります。

ガイドカメラはカラーでもモノクロでも構いません。モノクロの方が分解能がいいですが、大きな太陽を円でフィッティングするので、どこまでカメラの分解能が効くかは、別途きちんと検討する必要があるかと思います。

裏技的になりますが、ガイド鏡やガイドカメラを別途用意しなくても、例えばCP+で話したようなPhoenixとApollo-M miniなどの組み合わせで太陽の全景が一度に画面内に入るなら、そのメインの画像をガイドに使うこともできます。ただし、撮影用とガイド用で設定を共有しなければならないなどの制限もあるので、注意が必要です。また、カメラを共有する場合、太陽が全面一度に見えている場合はいいのですが、バローを付けたり、センサー面積の小さいカメラを使って太陽の一部しか見えていない時は、うまくいきませんでした。今回のPHD2の太陽版は、オプションで特徴点を見つけてそれを基準にガイドする機能も持っているのですが、試した限り短時間ガイドはできるのですが、少なくとも安定して長時間稼働させることはできませんでした。

C8のように太陽をかなり拡大して見る場合は、当然全景を見ることはできないで、別途ガイド鏡を用意することにしました。今回とりあえず使ったものはEVOGUIDE 50ED IIとASI178MCです。焦点距離が200mmでカラーですがピクセルサイズが2.4μmなので、かなり分解能良く見えるはずです。

IMG_1081

以下、設定方法を書いておきます。

1. PHD2太陽版を立ち上げ、カメラと赤道儀を接続してから、露光を開始します。露光時間が長すぎて明るすぎる画面が見えると思います。

2. 最初にやることが、下の脳みそマークの右にある、太陽の設定ボタンを押します。すると別途設定画面が出てくるので、例えば下の画像のように設定します。この場合、2つ目のオプションがオフになっているので、太陽全体が見えている時の設定になります。

スクリーンショット 2025-03-22 121740_cut02

3. まずは露光時間とゲインを設定します。SharpCapできちんと見えるくらいの値にすればいいです。ここでは露光時間2msでゲイン0なので、かなり暗い設定ですが、これくらいでやっと飽和せずに黒点とかも見えました。ちなみに1msとゲイン0が設定できる最小の値なので、それ以上暗くしたいならフィルターを暗いものにするとかしないとダメです。飽和していてもうまく太陽の周りをフィッティングすることはでき、太陽中心はきちんと出るので、実際にはもう少し明るい設定にしても大丈夫です。

4. 太陽の形が見えたら、最小径と最大径を設定します。まずは100と2000とか極端な値を入れて、画面に円、もしくは半円が出るか試します。この円は、最小径もしくは最大径を変更するたびに、しばらくの間表示されます。
スクリーンショット 2025-03-23 081533
線が細くてわかりにくいですが、左上に設定した径の半円が出ています。

5. 出てきた円と太陽の大きさを比べて、ある程度太陽の大きさが範囲に含まれるように絞り込みます。

6. 径がそこそこ決まったら、ここで左下の「露光開始ボタン」の右隣の、「認識ボタン」を押します。
緑の円が太陽の周りにフィットされるはずです。うまくフィットされない場合は、最小径と最大径の設定を見直してください。
スクリーンショット 2025-03-23 082057

7. さらに「認識ボタン」の右隣の「ガイド開始ボタン」を押すと、初めての場合はキャリブレーションが始まります。キャリブレーションがうまく開始されない場合は、シフトキーを押しながら、マウスで左クリックしてください。

8. キャリブレーションが終了すると、自動的にガイドが始まります。


太陽を使って昼間の極軸調整

1日のうちで最初にPHD2を走らせた時は、ここで一旦ストップボタンを押して、極軸調整をするといいでしょう。

昼間は北極星は当然見えないので、極軸を合わせるのは普通は困難なはずです。PHD2にはドリフトアラインメントという機能があり、これで極軸を合わせることができます。この太陽バージョンのPHD2は、星の代わりに太陽を使ってドリフトを測定し、極軸調整ができるというわけです。ただし、太陽を使うということで、通常の星と違い少しクセがあります。

1. 露光して太陽中心を認識している状態で、PHD2のメニューの「ツール」から「ドリフトアラインメント」を選びます。

2. 「ドリフト」ボタンを押すと、ガイドをしない状態で太陽の中心位置が赤経、赤緯別に下に表示される時系列グラフに記録されていきます。その線が真っ直ぐになればいいのですが、極軸があっていないと上下どちらかに斜めに動いていきます。
スクリーンショット 2025-03-22 160853

3. 動く方向が確認できたら「調整」ボタンを押してから、まずは赤道儀の土台に付いている横方向のネジ(モーターを動かしてはダメです)をどちらか一方に、例えば半回転回してみます。

4. 再び「ドリフト」ボタンを押して、グラフがどう移動していくのか見ます。

5. 先ほどよりもグラフが真っ直ぐになったら、ネジを正しい方向に回した方ことになります。傾きが急になったのなら、間違った方向に回したことになります。

6. 傾きに変化が見えない場合は、再び「調整」を押し、ネジを同じ方向にさらに大きく、例えば今度は1回転回してまた「ドリフト」を押します。傾きが変わったと認識できるまでこれを繰り返します。

7. グラフが真っ直ぐになり、赤道儀の横方向があってきたら「次へ」ボタンを押して、今度は赤道儀の縦方向のネジを同様に調整します。

8. グラフが平らになってくると、太陽の中心周りにどれくらいの精度であっているかのマジェンタ色の円が表示されます。これが十分小さくなるまで合わせ込みます。
スクリーンショット 2025-03-23 083325


太陽極軸合わせのクセ 1:
問題は、ネジを回したときに、太陽の位置がずれてしまい、ガイド鏡で見ている範囲から外れてしまうと、それ以上何も進まなくなってしまうことです。こうなる前に、赤道儀の(今度はネジではなく)モーターで太陽が画面内に入るように調整します。ここが星を使う場合と最も違う点でしょうか。

太陽極軸合わせのクセ 2:
もう一つ問題があります。本来、赤道儀の横方向の設定は、ガイド鏡を南中方向に向けて赤緯のグラフを見るべきです。一旦それがあってから、さらに次にガイド鏡を東か西の方向を向け、今度は赤道儀の縦方向のネジを調整します。でも太陽は一つしかなくて、その時にある太陽の方向しかガイド鏡で見ることができません。なので、見ている方向によっては横方向もしくは縦方向の感度が良くなくて、うまく合わせられないことがあることに注意してください。


太陽ドリフトアラインメントの精度の例

昼間にドリフトアラインメントで太陽でそこそこ合わせた後に、実際夜になって北極星を使って、改めてSharpCapの極軸調整で精度を見てみました。すると、4分角程度のズレがありました。

これまでドリフトガイドを使わずに、昼間の赤道儀をどうやって合わせてきたかというと、
  1. 赤道儀の水平をできるだけ合わせる。
  2. さらに赤道儀に付いている赤経赤緯の位置を表す矢印などのインデックスを見ながら、ホームポジションにできるだけ精度よく合わせる。
  3. 赤道儀の内部時計の時刻もできるだけ正確に合わせる。
  4. その状態で、赤道着の初期アラインメントで太陽を自動導入すると、本来極軸があっていたなら鏡筒はきちんと太陽の方向を向くはず。
  5. 鏡筒につけたカメラ映像で見ながら、実際に見ている方向と、太陽方向とのずれがなくなるように(赤道儀のモーターは使わずに)土台の調整ネジだけを使って、鏡筒が太陽の方向に向くように(カメラの映像内に太陽が入ってくるように)合わせる。

というような手順です。この方法での精度はせいぜい1度角程度でしょう。このように考えると、ドリフトアラインメントを使った場合は4分角(=0.067度)、ザックリですが10倍程度は精度が上がると思っていいのでしょう。

一方、夜に北極星を基準にSharpCapで極軸調整するときは1分角以下は余裕で、例えば30秒角くらいまで合わせることができると考えると、太陽を使った昼間のドリフトアラインメントでの極軸精度は、夜の場合のザックリ10分の1くらいでしょうか。そもそも、ドリフトアラインメントではある程度調整を絞り込んでいくと、ピリオディックモーションの影響も無視できなくなってくるので、原理的に精度がそこまで出ないので、まあ妥当な結果かと思います。

それでも闇雲に合わせるよりは遥かに精度が上がるので、太陽やたぶん昼間の月でもできるかもしれないので、これを利用しない手はないと思います。昼間の極軸合わせはとても大変で、太陽撮影でもそうですが、例えば明るいうちから彗星や金星などを追尾したい場合や、昼間の明るい恒星観測などの際の自動導入など、応用範囲も広いのかと思います。


まずは静止画

3月23日ですが、上のガイドの作業をする前に、まずはガイド無しでいつものように一通り朝イチで撮影したので、紹介しておきます。黒点周りが2枚と、プロミネンスです。特にプロミネンスは見事でした。

  • 午前8時40分14秒: AR4030
08_40_14_lapl3_ap551

解像度は前日に負けます。シーイングは1日の中でも時間によって大きく変わるので、この時はあまり良くなかったです。風が強くてそれで画面が揺れるので、シーイングの良し悪しまであまり判断することができませんでした。

  • 午前8時48分43秒: AR4036
08_48_43_lapl3_ap399

一方、こちらの黒点は下のプロミネンス3枚を撮影した後に、さらに追加で撮影したもので、上のAR4030を撮影したよりもシーイングは良かったようです。わずか8分でもシーイングは結構変わります。


ここからプロミネンスを3枚です。結構大きなものが出ていました。かなり分解能よく撮れているようです。スピキュールもピンピコ見えていて、シーイングもそこそこだったことがわかります。
  • 午前8時42分50秒
08_42_50_lapl3_ap359

  • 午前8時43分57秒
08_43_57_lapl3_ap305


  • 午前8時44分43秒
08_44_43_lapl3_ap369



PHD2ガイドでタイムラプス撮影

オートガイドが活躍するのは長時間撮影の場合です。太陽だとタイムラプス映像にして、プロミネンスやフレアなどが時間ごとに変化する様子を、位置を変えずに撮影できるのが最も有効な活用方法かと思います。

SharpCapは電視観望で良く使われているように、ライブスタックが有名ですが、これは速くても秒ごとくらいでのスタックになります。最近のSharpCapでは、惑星や月や太陽をミリ秒単位でリアルタイムでスタックすることができ、さらにリアルタイムでWavelet変換して細部の炙り出しをするという、驚異的な進化を遂げています。Phoenixで太陽の全景を見ながら試した場合では、非常にうまく処理できていて、もう後処理が必要ないくらいのレベルになっています。具体的な様子は、CP+の太陽セミナー配信の41分30秒あたりからをご覧ください。

一方今回は、太陽全体が見えないようなC8で拡大した画像ををうまくリアルタイム処理できるか試してみました。

結論を言うと、ある程度は処理できます。ある程度というのは、プロミネンスはそこそこ細部まで炙り出すことができ、黒点周りなどの表面のHαの模様も、うまくパラメータを設定すればある程度の細部は出すことはできます。それでもプロミネンスもですが、特に表面の模様は、別途動画を撮影して後から処理したものとは仕上がり具合にどうしても差があります。決定的なのは、何かの拍子で位置が多少ズレた場合に、一気にリアルタイム処理での画像がボケたようになって、しばらく回復しないことです。これはPHD2の問題というよりは、SharpCapのリアルタイム位置合わせの問題のようで、うまくガイドができている時にも10分とか20分とかに一回程度発生します。これが発生した時は、素直にリアルタイムスタックのリセットボタンを押した方が回復が早いです。いじれるパラメータを全て触りましたが、完全に回避する方法は今回は見つけられませんでした。

なので全景が入らない場合は、.serの動画で撮影せざるを得ないというのが、今の所の結論です。

今回は2つのタイムラプス例を紹介します。実際プロミネンスは5種くらい、黒点周りは2種くらい撮影したのですが、どれも長続きしませんでした。結局SharpCapでリアルタイム処理で20分くらい撮影できたものと、個別に動画を撮影して日が沈むまで1時間くらい最後に撮ったものくらいしか、見る価値がありませんでした。

最初にSharpCapのリアルタイム処理でうまくいったと思ったものです。撮り始めてから1時間くらい自宅の中にいて、どれどれと思って見てみたのですが、途中からボケボケになって、さらに曇ってしまっていました。でも最初の方はプロミネンスの活発な動きが映っています。大きな動きの途中からしか撮影開始できなかったので、もう少し早くから始めればと、もたもたしていたのをちょっと後悔しました。

output-palette

上の画像はShapCapで保存されたtifファイルを、ffmpegを使ってmp4にして、さらにffmpegでgif化してます。コマンドは

ffmpeg -i Blink.mp4 -filter_complex "[0:v] fps=10,scale=640:-1,split [a][b];[a] palettegen [p];[b][p] paletteuse" output-palette.gif

としました。グローバルパレットを使うことで、解像度とファイルの小ささを両立しています。

このあとは同じようにプロミネンスの撮影を開始して、Costcoに買い物に行ってしまいました。2時間ほどして戻ってきてから見てみると、やはり10分も持たずにボケボケ画像になってしまっています。ここからどんな時にボケボケになるか見ていると、例えば雲が通り過ぎた時、風で大きく揺れた時など、結構頻繁に起こることがわかりました。

そもそもこの時点で、ガイド渋滞がいい時でも+/-4秒くらいで、ジャンプもそこそこあります。
スクリーンショット 2025-03-22 121740_cut1

ここで、ガイド鏡をEVOGUIDEからいつもDSOで使っているものに変えました。
IMG_1088

焦点距離は200mmから120mmになること、カメラがASI290MMでピクセルサイズは2.9μmと少し大きくなりますが、モノクロになるので実質ピクセルサイズは小さくなったことになります。実質の解像度はほとんど同じでしょう。

やはり安定度は大きく違いました。EVOGUIDEは2つのスコープリングで固定しているために微調整はしやすいですが、固定の安定度という意味ではまだまだです。普段使っているバイクに取り付けるための金具を使ったガイド鏡はガチガチに固定することができます。


これに変えてから、一気に+/-2秒程度の誤差に抑えることができるようになりました。短時間の揺れもそうですが、長時間のたわみも影響するはずなので、やはりガイド鏡の固定は堅固なものに越したことはありません。
スクリーンショット 2025-03-23 164529

その後、再びSharpCapでリアルタイムのスタックに挑戦しますが、やはりあまり長続きせず、途中何かの拍子にボケボケになってしまいます。夕方16時を過ぎたあたりでとうとうリアルタイムスタックはあきらめて、動画のserファイルも併用して保存することにしました。

結局のところ、C8のように長焦点で拡大した太陽Hαは、SharpCapでのリアルタイム処理で長時間安定に撮影するのはまだちょっと厳しいという結論です。気軽に見るだけとか、短時間ならまだ使えるのかと思います。

撮影は30秒おきに100フレーム撮影し、それを99本撮りましたが、最後のほうは夕方でかなり暗くなったので、そのうち60本を使いました。高々100フレームに抑えたのですが、これだけでも総ファイル量は40GB程度になってしまいます。

こちらの動画ファイルをAutoStakkart4!、ImPPGのバッチ処理をして、Fijiで位置合わせをしたものが以下になります。位置合わせは他にもいろいろ試しましたが、結局Fijiに勝てるものはなかったです。


タイムラプス化は、PixInsightのBlinkで一連の画像のチェックがてらjpgに変換し、その後別途ffmpegを使いました。コントラストが勝手に変わって彩層面の模様がサチるようなことがあったので、以下のオプションを使いました。
ffmpeg -y -r 15 -i Blink%05d_r.jpg -c:v libx265 -crf 15 -tag:v hvc1 Blink.mp4

また、X用には以下のコマンドで変換することでアップロードできるようになりました。
ffmpeg -i Blink.mp4 -vf "scale=1600:-1" -vcodec libx264 -pix_fmt yuv420p -strict -2 -acodec aac output.mp4

最後の最後で動画を撮影し始めたので、半分あきらめてのテスト撮影のような感じでしたが、出来上がったタイムラプス映像のプロミネンスの動きにはもうびっくりです! 高々30分と思っていましたが、こんなに激しく動いてるんですね。

でも今回注目してほしいのは彩層面のほうです。PHD2でのガイドがよほど効いていたのか、模様の再現性がかなりあることがわかります。位置合わせもここまでうまくいくとは思っていませんでした。よく見ると彩層面も30分の間に動いていて、プロミネンスのようなもの (彩層面上だからダークフィラメントといったほうがいいのでしょうか) が出てくる様子もわかります。これだけ安定なら、次回は黒点周りとかをガイド+動画で撮影してみようかと思います。


まとめ

ガイドの効果はかなり大きいことがわかりました。以前試したLusol-Guideもきちんと動きましたが、精度はPHD2のほうが圧倒的にいいでしょう。制御系もDSOで実績があるので、状況に応じて安定したパラメータを探ることができます。

SharpCapでのタイムラプス撮影は、今回C8では厳しかったですが、Phoenixの時のように全体が見えているのならまた安定度も違ってくるのかもしれません。C8での撮影でも、これまでのようにserで保存すれば、PHD2のガイドの安定度と相まって彩層面の細かい模様まで長時間にわたって安定して再現できることがわかりました。これはかなり大きな成果なので、今後黒点周りなどに挑戦していきたいと思います。

年明けからCP+での講演のためにでPhoenixに付き合って以来、太陽熱が再燃しています。でもPhoenixはもう返してしまったので、手持ちのPSTで楽しもうと思います。
IMG_1078


CP+が太陽熱再燃のきっかけに

昨年度の振り返りでも太陽にはほとんど触れなかったことからもわかるのですが、ここしばらく太陽から離れてしまっていました。たまに撮影とかするのですが、あまり進展がないのでイマイチ盛り上がっていませんでした。理由としては
  • 粒状斑が一向に分解能よく見えてこない。
  • C8は焦点距離が長いので、PSTでみると良像範囲がどうしても限られてしまい、画面の中で分解能がいいところと悪いところに差ができてしまう。
  • 良像のところは満足だが、結果がシンチレーションに依ってしまい、機材ではもうこれ以上伸ばすのはあまり簡単ではない。
などでしょうか。何か機材などで進化したことを撮影で確認するというのが一番楽しくて、進化がないのに撮影を続けるのは結構苦痛になってしまうのです。

太陽が盛り上がってきた理由はいろいろあります。例えば、
  • 今太陽活動の最盛期か少し過ぎたくらいなのに、この時期を楽しまないのは勿体無い。
  • Phoenixのエタロンの精度がかなり良かったので、PSTエタロンをもう少し活用できないか考えたくなった。
  • CP+のサイトロンブースでのフォトコンの裏側の話で、選考には残らなかった画像の中に、ものすごい分解能の粒状斑を写した画像が紹介されていた。
など、CP+のスライドを作っていた時とか、CP+で聞いたセミナーがきっかけだったりします。


良像範囲の検討

良像範囲がどんなメカニズムで決まっているかを確認するために、普段使っているASI290MMよりもセンサー面積の大きいApollo-M miniで見てみました。どうやら光がセンサーまで届く範囲はそこまで大きくはなく、円状になっているのがわかります。右と左では、左の方がより暗くなっているようです。

09_38_44_Sun_00001 09_38_44_WithDisplayStretch

さらに、エタロンの良像範囲はリング状に分布していることがわかりました。上のそこそこエタロンの回転角があっている場合から、エタロンの回転角を変えていきます。
09_38_56_Sun_00001 09_38_55_WithDisplayStretch

09_39_04_Sun_00001 09_39_04_WithDisplayStretch

どんどん中心が明るくなって、同心円状に広がっていく様子がわかります。明るくなっているところは波長がずれているところにあたります。

現在2台のPSTを所有していて、以前良像範囲については一度検討しています。1台目はリング状に、2台目は線上に良像範囲が変化すると書いてありますが、どうもこれは見ている場所が違うだけで、結局は2台ともリング状に変化すると思って良さそうです。


ペンタプリズムの位置調整

実は先々週、1台目のPSTの箱の部分の蓋を開け、ペンタプリズムの位置を動かしていろいろ調整してみました。
IMG_1031

元々こんな風ペンタプリズムは組み込まれています、下に見えるバネ付きの棒が焦点合わせのつまみで、これが回転することでペンタプリズムが載っている台が前後します。上の黒い塊はただの押さえで、さらに上に貼り付けられたフェルト生地で箱の上蓋に接していて、フェルトで滑りやすくなっています。

これをはずして、下の台座からプリズムをカッターナイフを使って外しました。
IMG_1030

上の良像範囲の画像で見た、画面の左側の方が暗いのを、左右均等にしようとかしたのですが、ペンタプリズムの位置をどう変えても、この状況を大きく変更することはできませんでした。光が当たる範囲を上下させることはできるのですが、左右に変化させることはほとんどできません。どうやら、光がペンタプリズムの厚みで制限されてしまっていることが原因とわかってきました。

IMG_1024
手前から光がペンタプリズムに入射し、奥の面、右側の面と2回反射し、左側に抜けていきます。左の黒い壁に投影されている光を見ると、ペンタプリズムの厚みで上下がカットされているのがよくわかると思います。

1台目のPSTのペンタプリズムの位置をある程度最適化すると、2台目のPSTの見え方にかなり近くなりました。左側がどうしても欠けること、エタロンの回転角でリング状に良像範囲が変わることは2台ともほぼ同じです。なのでこの見え方はPSTにある程度固有のものと捉えて、今回はこれ以上は諦めることにしました。


2つのピント合わせの使い分け

今週になってもう一つ、C8でのピント合わせと、PSTでのピント合わせのどちらが得かを検討してみました。

結論としては「PSTのネジを締め込んで、C8でピント合わせした方が良像範囲が多少広がる」ということがわかりました。
  • PSTのネジを引き出して、C8でピント合わせ: PST内での光路長が長い場合
09_58_52_Sun_00001 09_58_52_WithDisplayStretch_pst_long

  • PSTのネジを締め切って、C8でピント合わせ: PST内での光路長が短い場合
09_57_02_Sun_00001 09_57_01_WithDisplayStretch_pst_short

画像を見比べると、明らかに下の方が両像範囲が大きいです。例えば、わかりやすいところでは、四隅の黒い部分は下の方が小さくなっています。

理由を考えてみます。PSTのネジを締め込むということはペンタプリズムがよりアイピース口に近づくということになります。PSTのピント合わせがどんな位置にあるにせよ、C8の焦点調整範囲ははるかに広くてセンサー面に焦点をあわせることができます。最終的にピントが合った状態では焦点位置はセンサー面で固定すると考えると、PSTの焦点つまみをいじることは「C8の副鏡からセンサー位置の間のどこにペンタプリズムを置くか」ということに他なりません。すなわち、PSTの焦点つまみを締めることはペンタプリズムをより光の径の小さい焦点側に寄せるということになります。上でも書いたように、ペンタプリズムの厚みで光がカットされていると思われるので、そのカットをできるだけ小さくするためにペンタプリズムを焦点側に寄せると、より良像範囲が広がるということで、ある程度納得できます。


カメラセンサーの位置

さらにもう一つ試したことが、カメラをアイピース口にの奥まで差し込んだ方がいいのか、抜き気味で遠くで固定した方がいいのかです。

現在一番径が小さいところはBF部分です。直径5mmほどでしょうか。ここで焦点になれば一番得なはずなので、最終的に焦点が合うはずのセンサー面がBFに近い方がいいと予測しました。でもどうも結果は逆で、センサー面を遠くに置いた方が良像範囲が広がるようなのです。
  • カメラをアイピース口の奥まで押し込んだ場合
09_51_38_Sun_00001 09_51_38_WithDisplayStretch_camera_near

  • カメラをアイピース口で少し浮かせて固定した場合
09_50_07_Sun_00001 09_50_07_WithDisplayStretch_camera_far

わかりにくいですが、下のカメラを離して固定した帆が、特に画面右側の広がりが明るくなっています。

画像を見てピントが合った状態にしてから、カメラとBFとERFを外して、PSTの出射口から出てくる光に手を当ててみると、どうも径が一番小さいところはセンサー面が元にあった位置ではなく、もっとPST寄りに見えます。例えばここの図にもあるように、確かにセンサー面である広がりを持つので、最小径はその手前ですね。

というわけで、今回の場合はカメラはある程度離した方がいいことがわかります。必要なら、もっと積極的にBFに焦点を持ってくるようにきちんと計算して距離を決めてもいいかもしれません。


エタロンの良像範囲

いずれにせよ、以前よりも良像範囲が少し広がったというのが、先々週と今週でやったことの成果です。良像範囲という言葉を適当に使ってしまっていますが、今回改善した良像範囲はあくまで光の欠けが小さくなった部分のことで、エタロン起因の波長のズレによる良像は何ら改善していないです。

エタロンの像がどうしてリング状になるのか少し考えてみました。

元々PSTのエタロンはF10を仮定して前後にレンズが置かれています。このF10の傾きに合わない光線ならリング状に波長ズレが起こってもおかしくないです。でもC8はF10で大丈夫なはずと思っていましたが、よく考えたらC8はカセグレン系鏡筒です。主鏡と副鏡の組み合わせで短い距離でF10を実現しているだけなので、F10とは名ばかりで光線の収束具合は違うはずです。最初コレか!と思ってレンズを用意する必要があると思ってC8の設計を調べたのですが、このページにある8インチのシュミカセの典型的なデザインを見ると、副鏡から焦点までの距離が127+240+127~500mmで光の半径が24mm (~直径50mm)になるので、副鏡より後ろはF10と思って良さそうです。このデザインがC8と同じかはわかりませんが、あまり変な設計にするとは思えないので、とりあえずエタロンが入る位置でのF10相当の傾きは正しいと思うことにします。

そうすると他の可能性ですが、例えば熱レンズ効果でしょうか?エタロン手前にUV/IRカットフィルターが入れてあるとはいえ、エネルギーの半分くらいを占める可視光はそのままエタロンに入り得るので、そこそこの光量になります。エタロンでは櫛状に入ってきた光が10回程度のオーダーで折り返されるので、もしエタロンにロスがあったら中心部が温まりエタロンに温度勾配ができる可能性があります。温度勾配はレンズと同じ効果をもつので、平行光にならずにリング状のモードが見えてもおかしくはありません。

これを確かめるために、エタロンに入る光量を下げてみました。具体的にはUV/IRカットフィルターの後にMarumiの赤いR2フィルターを追加しました。そうです、以前熱で割れてしまったものと同じフィルターです。波長域で考えると少なくとも光量は4分の1くらいにはなるはずなので、もしこの熱レンズ効果が犯人なら何らかの違いが見えることでしょう。でも結果はほとんど違いは分からず。どうやら熱が原因ではないようです。

ちなみに今回は手前にUV/IRカットフィルターがあるためにR2フィルターはほとんど熱くもならず、そのまま入れておいても問題なさそうなので、入れっぱなしで残しておきました。やはりUV/IRカットフィルターだけでもかなりの効果があり、そこの反射光を実際に見てみると、十分に広がって対物側に返ってきていることもわかりました。集光はほぼされていないので、たとえ仮に目に入ったとしても、太陽を直接見るよりもエネルギーは小さいはずです。

IMG_1025
ちょっとわかりにくいですが、C8の対物側のカバーの裏に鏡筒内からの
反射光を当てています。右に見える半円の明るい部分が鏡筒内の
UV/IRカットフィルターで反射された光です。

というわけで、エタロン部の改善は引き続き課題なのですが、もうこうなってくると本当にエタロンの精度そのものが悪いという結論にもなってきます。この件、今後もう少し調べます。


とりあえずの撮影結果

先々週の3月9日と、今週3月22日に、調整作業のついでにC8で太陽撮影しました。9日はシーイングがボロボロでしたが、22日ものは多少見ることができそうなので、ここに載せておきます。

黒点AR4030まわりです。
10_15_36_lapl3_ap530_IP._cut_brighter

カラー版です。
10_15_36_lapl3_ap530_IP._colorpsd._cutjpg

上の画像はトリミングしているのでそこそこ解像度が出ているのかと思いますが、元の画像を見るとやはり全面一様というよりは、中心以外はかなり粗く、ボケているのがわかります。
10_15_36_lapl3_ap530_IP
これでも良像範囲の調整はしたあとなので、以前よりは多少マシになっています。

その後、次の日の3月23と合わせてPHD2のガイドなども試しましたが、これは次の記事で書くことにします。

つい先日仕上げた勾玉星雲ですが、赤が強いのが気に入らなかったので再処理しました。


RGB画像の見直し

WBPPまでは同じですが、そこからはかなり方針を変えています。元々はAOOにRGBの恒星を加えたようなものでした。Hαはよく撮影できているので、この階調の豊かさを残したかったのです。問題はOIIIで、星雲本体の際中心部以外にはほとんど構造を持っていなくて、結局は背景を含むほとんどの場所が赤一色になってしまい、もうどうしようもないです。

そこで改めてRGB画像を見てみました。自宅撮影で背景光が明るくて、スカイノイズが支配的なためにノイジーなのですが、強炙り出ししてみるとそこそこ階調が残っていることがわかります。例えばHαとR画像を比較すると、

Hα画像:
MGC2048_5_10_better_BXT_HT_NXT_back_LHE_A_s

R画像:
Image22_R_s
と、Hα画像に比べてR画像はノイジーですが、同じような形の模様が見えています。

ところがOIIIとB画像を比べてみると

OIII画像:
integration_O_ABE2_SPFC_BXT_back_LHE_OIII_s

B画像:
Image22_B_s
B画像の方が当然ノイジーなのですが、より広い領域にわたり青成分が広がっているのがわかります。

ちなみにG画像は以下のようになり、これもOIII画像より構造を含んでいます。
Image22_G_s

というわけで、方針としてはRGB画像のRをHαと入れ替え、GとBは少しきつめのノイズ軽減をしてきちんと使い、OIIIは最初から使わないという方向でいきます。


比較

結果は
Image26_HT4_cut_s

となり、赤の諧調をそこそこ残しつつ、星雲本体の中心以外はほぼ赤一辺倒だったものから脱却し、多少なりともBとかGを生かすことができました。前回はMGCで頑張って調整したRGBをほぼ全く生かせてなかったのですが、これでMGCの結果も生かせたことになります。

ちなみにAOOベースのものはこれだったので、やはりかなり赤だけが相当強いのがわかります。
Image03_AOO2_s_brighter_cut

ただ、こうやってAOOベースと比べるとRGBベースはどうしてもノイジー感が出てしまいます。これは痛し痒しで、まあ彩度とノイズレスのどちらを取るかなので、仕方ないですね。


MARSデータベースのアップデート

3月21日にこの記事を書いているのですが、画像処理は昨日のうちに終えています。ちょうど今朝、新しいMARSデータベースがリリースされたとアナウンスされました。なんとOIIIデータが含まれたらしいです。これでAOOは可能になり、SAOもRをSに適用することで簡易的に可能となったとのことです。あと、オリオンのデータの露光時間が68分から11時間と約10倍になったとのことですが、もうオリオンも季節終わりなので、実際に使えるのは来シーズンでしょうか。

今回のRGB+Aでの画像処理ですが、せっかくのMARSアップデートなので、今一度OIIIを復活させて再再処理してみてもいいかもしれません。

このページのトップヘ