先日のパックマン星雲に引き続き、同じセットアップで、馬頭星雲と燃える木を撮影しました。撮影日的には近くて、10月9日がパックマン星雲、10月11日に馬頭星雲と燃える木という感じです。今回は時間的には大した枚数は撮影できませんでした。少し流れた画像があったので、それらを省くと1時間半ちょっとです。これでどれくらいまで出せるのかを見ます。
そもそも前回馬頭星雲と燃える木を撮影したのは2017年11月と、もう7年も前のことになります。EOS 6Dを手入れて初の天体撮影でした。
その後、初のマスクを使って再画像処理をした後、天体写真で使われ始めた初のAIノイズ処理ツールと言ってもいいDeNoise AIで同じ画像を再処理をしたのが2020年2月で、これももう4年近く前のことになります。この時は同じ元画像を使ったとは思えないほどノイズ処理が進化したのですが、同時にAIに対する不安感や否定的な意見が出たのも、当時のインパクトを思えばある意味当然だったのかもしれません。今ではBXTをはじめ、AI関連の画像処理も順当な進化をしています。まだ根強い偽構造を疑う声もありますが、今後もしばらくは天体画像処理においてもAI関連の進化が止まることはないと思います。
前回の処理が当時一気に進んだと言っても、元の画像が7年前とすでに古すぎるのと、AIツールも進化していて、今見るとかなりアラも見えます。画角的にもSWAgTiに積んであるRedCat51と Uranus-C Proに丁度いいので、自宅でε130Dで撮影していた横で、ついでに気軽に撮影してみたというような状況です。
フィルターもパックマン星雲のときのままで、DBPを付けています。SWAgTiの動作も軌道に乗ってきていて、もう普通の撮影プロセスで、あまり特筆すべきことはありません。普通にの撮影になっているということが、SWAgTiにとってはある意味、意味があることになっていますでしょうか。あ、すでに何回か前の記事で書きましたが、この撮影の時に初めてNINAでASTAPを使ってプレートソルブで天体を画面内に入れてみました。SharpCapでプレートソルブした後は、AZ-GTiとの接続が毎回不安定になっていたのですが、NINAのプレートソルブではそのようなことはなく、安定に撮影を続けることができました。もちろん撮影中にディザー信号をAZ-GTiに送って、ディザリングもずっと継続してできていました。
SWAgTiのお気軽セットアップ、お気軽撮影の基本を崩さないよう、画像処理も手軽にフラット補正も、ダーク補正も、バイアス補正も無しで進めます。パックマン星雲で一通り画像処理も進めているので、PixInsightのプロジェクトファイルがほぼそのまま使え、簡単にスタック済み画像とリニア処理、ストレッチまで進めることができます。
スタック直後の画像を見てみます。オートストレッチでない、マニュアルで超炙り出しをしてみると、少し縦横方向の線が残っているのがわかります。
自宅撮影で光害地ですが、DBPを使っているのでそこそこ暗くできる状況です。なので背景光はそこそこ暗いこと、また背景光でこの手のノイズは出にくいので、この縦横線は読み出しノイズかダークノイズだと思います。もう少し一枚あたりの露光時間を伸ばして読み出しノイズの効きを抑えるか、トータルの露光時間を伸ばしてノイズ全般を抑えるかしたほうが良かったかもしれません。まだオリオン座はシーズン初めなので、もしかしたら今後追加撮影して、ノイズを減らして再び画像処理するかもしれません。
ただし、ここで示した炙り出しは相当に強調したもので、実際の仕上げのところに出てくるノイズのレベルではないでしょう。画像処理もできるだけ簡単にということで、パックマン星雲と同じく、フラット、ダーク、バイアス補正は無しで進めたいと思います。
各種補正がないと、WBPPの処理時間も全然短くて楽です。その後、PixInsightでABEをかけたのですが、1次でも淡いモクモクが不自然になってしまったので、ABEなどもかけていません。ただし、トータル露光時間はそこまで長くないので、今回の撮影分ではやはりまだ少しノイジーです。淡いところを出すのに、画像処理で多少無理をしました。
結果は以下のようになります。先ほどの縦横の縞は全く気にならないレベルです。
2時間弱の撮影ですが、燃える木の構造も細かいところまで出ていますし、馬頭の上の赤いところは縦の流れもそこそこ見えています。背景の淡いところも多少出ていますが、茶色にならずに赤色になってしまうのは、ナローバンドフィルターの宿命かと思います。きちんとした色で撮りたい場合は、暗い場所に行ってRGBで撮る必要があるのかと思います。アルニタクに少しハロっぽい円が出ていますが、これを消すのは至難の業でしょう。おそらくDBPが原因の一つかと思いますが、この程度で抑えているの、むしろ十分な性能なのかと思います。
お気軽撮影、お気軽画像処理ですが、それでもこれくらいは出てくれるので、個人的にはもう十分なのかと思います。天体写真の楽しさを気軽に味わえるという観点では、かなりポイントが高いです。
Annotationです。ちなみに、Sh2やLBN、LDNも追加してアノテートとすることができます。全部出しに近いですが、暗黒帯を含め、いろんな番号がついていて、かなり賑やかです。
前回の画像を示しておきます。遠目ではわかりにくいですが、拡大して比べると今回の画像で自己更新していることは間違いないことがわかります。
流石に画像で7年、処理で4年近くの進化の違いは有意に存在していると言えるでしょう。特に当時はStarNetも出た当初で、まだ使い方もよく理解していなくて、恒星処理がかなり苦手でした。また、DeNoise AIも効かせすぎでしょう。
機材も進化しているはずです。特にRedCat51の分解能は特筆すべきで、口径こそFS-60Qの60mmから51mmに減ったものの、焦点距離が600mmから250mmと短くなっているので、実質かなり明るくなっています。カメラは一眼レフのフルサイズの6Dから、センサー面積こそ1/1.2インチと小さくなっていますが、ノーアンプグロー、ホットピクセル除去機能のDPSがついた最新に近い CMOSカメラになっています。撮影時間は共に1時間40分台とほぼ同じなので、機材と画像処理の進歩と言っていいかと思います。
もう一つ、SCA260で撮影した馬頭星雲の拡大と比べてみます。これはなかなか面白いです。2022年3月に撮影したものです。
下は今回の画像を同じ画角で切り出したものです。
微細構造と微恒星の数はやはり圧倒的にSCA260です。口径が260mmと51mmと5倍違うとこれくらい差が出るということがよくわかる比較だと思います。星の数は口径というよりは、むしろ焦点距離の違いの1300mmと250mmが効いているかもしれません。恒星と背景のコントラスト比は、撮影の場合焦点距離のみで決まります。眼視では恒星と背景のコントラストが口径によらずに倍率のみで決まるのと同じ理由です。今回のような撮影の場合は、広角で撮影して背景を広げ切っていないので、恒星とのコントラストは上がらずに、その中心のみを狭い面積のカメラで一部切り取っているのと同じ状況なので、恒星の数は増えることはないということです。
それでも逆に、RedCat51もよくここまで頑張ったなとも思えます。かなりの拡大になってしまうわけですが、よく破綻せずにある程度の細部はきちんと描写してくれています。
今回の馬頭星雲と燃える木ですが、前回撮影がもう7年前だなんて、信じられないくらい月日が早くすぎてしまっていることに気付かされます。いつか撮り直そうと毎年思っていたのですが、SWAgTiで気楽に撮影できることで、やっと実現しました。新規天体でない場合はよほど改善の見込みがないと、モチベーションがどうしても低くなってしまいます。これがAdvanced VXだったら多分撮影してないです。最近Adbanced VXの出番がほとんどなくなってきています。
トータルの撮影結果としてはとしては十分満足です。空き時間に気軽に設置して、短時間でもこれくらい写ってしまうのは、私自身も少しびっくりで、今後もSWAgTiが活躍してくれそうです。というか、最近ε130Dより小さい鏡筒は、ほぼSWAgTi一択です。もしかしたらε130Dもいけるかも?SWAT350の対荷重は15kg、AZ-GTiは公式15kgですが撮影中はモーターが静止していることを考えると、ただのごついアダプターとも思えるので、多少重くても大丈夫な気がしています。いつか試すかもしれません。
今回の撮影は、10月初めでしたが、実はその頃少し晴れが続いたので結構大量に撮影していて、
これまでの馬頭星雲と燃える木
そもそも前回馬頭星雲と燃える木を撮影したのは2017年11月と、もう7年も前のことになります。EOS 6Dを手入れて初の天体撮影でした。
その後、初のマスクを使って再画像処理をした後、天体写真で使われ始めた初のAIノイズ処理ツールと言ってもいいDeNoise AIで同じ画像を再処理をしたのが2020年2月で、これももう4年近く前のことになります。この時は同じ元画像を使ったとは思えないほどノイズ処理が進化したのですが、同時にAIに対する不安感や否定的な意見が出たのも、当時のインパクトを思えばある意味当然だったのかもしれません。今ではBXTをはじめ、AI関連の画像処理も順当な進化をしています。まだ根強い偽構造を疑う声もありますが、今後もしばらくは天体画像処理においてもAI関連の進化が止まることはないと思います。
NINAによるSWAgTiでの撮影
前回の処理が当時一気に進んだと言っても、元の画像が7年前とすでに古すぎるのと、AIツールも進化していて、今見るとかなりアラも見えます。画角的にもSWAgTiに積んであるRedCat51と Uranus-C Proに丁度いいので、自宅でε130Dで撮影していた横で、ついでに気軽に撮影してみたというような状況です。
フィルターもパックマン星雲のときのままで、DBPを付けています。SWAgTiの動作も軌道に乗ってきていて、もう普通の撮影プロセスで、あまり特筆すべきことはありません。普通にの撮影になっているということが、SWAgTiにとってはある意味、意味があることになっていますでしょうか。あ、すでに何回か前の記事で書きましたが、この撮影の時に初めてNINAでASTAPを使ってプレートソルブで天体を画面内に入れてみました。SharpCapでプレートソルブした後は、AZ-GTiとの接続が毎回不安定になっていたのですが、NINAのプレートソルブではそのようなことはなく、安定に撮影を続けることができました。もちろん撮影中にディザー信号をAZ-GTiに送って、ディザリングもずっと継続してできていました。
お手軽画像処理
SWAgTiのお気軽セットアップ、お気軽撮影の基本を崩さないよう、画像処理も手軽にフラット補正も、ダーク補正も、バイアス補正も無しで進めます。パックマン星雲で一通り画像処理も進めているので、PixInsightのプロジェクトファイルがほぼそのまま使え、簡単にスタック済み画像とリニア処理、ストレッチまで進めることができます。
スタック直後の画像を見てみます。オートストレッチでない、マニュアルで超炙り出しをしてみると、少し縦横方向の線が残っているのがわかります。
自宅撮影で光害地ですが、DBPを使っているのでそこそこ暗くできる状況です。なので背景光はそこそこ暗いこと、また背景光でこの手のノイズは出にくいので、この縦横線は読み出しノイズかダークノイズだと思います。もう少し一枚あたりの露光時間を伸ばして読み出しノイズの効きを抑えるか、トータルの露光時間を伸ばしてノイズ全般を抑えるかしたほうが良かったかもしれません。まだオリオン座はシーズン初めなので、もしかしたら今後追加撮影して、ノイズを減らして再び画像処理するかもしれません。
ただし、ここで示した炙り出しは相当に強調したもので、実際の仕上げのところに出てくるノイズのレベルではないでしょう。画像処理もできるだけ簡単にということで、パックマン星雲と同じく、フラット、ダーク、バイアス補正は無しで進めたいと思います。
各種補正がないと、WBPPの処理時間も全然短くて楽です。その後、PixInsightでABEをかけたのですが、1次でも淡いモクモクが不自然になってしまったので、ABEなどもかけていません。ただし、トータル露光時間はそこまで長くないので、今回の撮影分ではやはりまだ少しノイジーです。淡いところを出すのに、画像処理で多少無理をしました。
結果
結果は以下のようになります。先ほどの縦横の縞は全く気にならないレベルです。
「IC434: 馬頭星雲と、NGC2024: 燃える木」
- 撮影日: 2024年10月12日2時29分-4時45分
- 撮影場所: 富山県富山市自宅
- 鏡筒: William Optics RedCat51(f250mm、F4.9)
- フィルター: サイトロンDBP
- 赤道儀: SWAgTi (SWAT-350V-spec Premium + AZ-GTi)
- カメラ: PlayerOne Uranus-C Pro (-10℃)
- ガイド: なし
- 撮影: NINA、Gain 100、露光時間3分 x 36枚 = 108分 = 1時間48分
- Dark, Flat: なし
- 画像処理: PixInsight、Photoshop CC
2時間弱の撮影ですが、燃える木の構造も細かいところまで出ていますし、馬頭の上の赤いところは縦の流れもそこそこ見えています。背景の淡いところも多少出ていますが、茶色にならずに赤色になってしまうのは、ナローバンドフィルターの宿命かと思います。きちんとした色で撮りたい場合は、暗い場所に行ってRGBで撮る必要があるのかと思います。アルニタクに少しハロっぽい円が出ていますが、これを消すのは至難の業でしょう。おそらくDBPが原因の一つかと思いますが、この程度で抑えているの、むしろ十分な性能なのかと思います。
お気軽撮影、お気軽画像処理ですが、それでもこれくらいは出てくれるので、個人的にはもう十分なのかと思います。天体写真の楽しさを気軽に味わえるという観点では、かなりポイントが高いです。
Annotation
Annotationです。ちなみに、Sh2やLBN、LDNも追加してアノテートとすることができます。全部出しに近いですが、暗黒帯を含め、いろんな番号がついていて、かなり賑やかです。
前回画像から
前回の画像を示しておきます。遠目ではわかりにくいですが、拡大して比べると今回の画像で自己更新していることは間違いないことがわかります。
流石に画像で7年、処理で4年近くの進化の違いは有意に存在していると言えるでしょう。特に当時はStarNetも出た当初で、まだ使い方もよく理解していなくて、恒星処理がかなり苦手でした。また、DeNoise AIも効かせすぎでしょう。
機材も進化しているはずです。特にRedCat51の分解能は特筆すべきで、口径こそFS-60Qの60mmから51mmに減ったものの、焦点距離が600mmから250mmと短くなっているので、実質かなり明るくなっています。カメラは一眼レフのフルサイズの6Dから、センサー面積こそ1/1.2インチと小さくなっていますが、ノーアンプグロー、ホットピクセル除去機能のDPSがついた最新に近い CMOSカメラになっています。撮影時間は共に1時間40分台とほぼ同じなので、機材と画像処理の進歩と言っていいかと思います。
馬頭星雲の拡大
もう一つ、SCA260で撮影した馬頭星雲の拡大と比べてみます。これはなかなか面白いです。2022年3月に撮影したものです。
下は今回の画像を同じ画角で切り出したものです。
微細構造と微恒星の数はやはり圧倒的にSCA260です。口径が260mmと51mmと5倍違うとこれくらい差が出るということがよくわかる比較だと思います。星の数は口径というよりは、むしろ焦点距離の違いの1300mmと250mmが効いているかもしれません。恒星と背景のコントラスト比は、撮影の場合焦点距離のみで決まります。眼視では恒星と背景のコントラストが口径によらずに倍率のみで決まるのと同じ理由です。今回のような撮影の場合は、広角で撮影して背景を広げ切っていないので、恒星とのコントラストは上がらずに、その中心のみを狭い面積のカメラで一部切り取っているのと同じ状況なので、恒星の数は増えることはないということです。
それでも逆に、RedCat51もよくここまで頑張ったなとも思えます。かなりの拡大になってしまうわけですが、よく破綻せずにある程度の細部はきちんと描写してくれています。
まとめ
今回の馬頭星雲と燃える木ですが、前回撮影がもう7年前だなんて、信じられないくらい月日が早くすぎてしまっていることに気付かされます。いつか撮り直そうと毎年思っていたのですが、SWAgTiで気楽に撮影できることで、やっと実現しました。新規天体でない場合はよほど改善の見込みがないと、モチベーションがどうしても低くなってしまいます。これがAdvanced VXだったら多分撮影してないです。最近Adbanced VXの出番がほとんどなくなってきています。
トータルの撮影結果としてはとしては十分満足です。空き時間に気軽に設置して、短時間でもこれくらい写ってしまうのは、私自身も少しびっくりで、今後もSWAgTiが活躍してくれそうです。というか、最近ε130Dより小さい鏡筒は、ほぼSWAgTi一択です。もしかしたらε130Dもいけるかも?SWAT350の対荷重は15kg、AZ-GTiは公式15kgですが撮影中はモーターが静止していることを考えると、ただのごついアダプターとも思えるので、多少重くても大丈夫な気がしています。いつか試すかもしれません。
今回の撮影は、10月初めでしたが、実はその頃少し晴れが続いたので結構大量に撮影していて、
- 10月9日にε130Dで前半に網状星雲の撮り増し、後半に勾玉星雲、同日並行で一晩SWAgTiでパックマン星雲
- 10月11日後半にε130Dで勾玉星雲、並行でSWAgTiで馬頭星雲と燃える木
- 10月12日後半にε130Dでアンドロメダ銀河のHα、並行でSWAgTiで同じくアンドロメダ銀河をカラーで