CP+2024参加記です。機材についてはすでに多くの方のレポートがあるので、今回は「私のCP+」として私的なことを中心に書きたいと思います。機材レポートもしますが数はあまり多くはなく、そこで何か経験したこととか、そこでどう思ったかを中心に書きます。
CP+前の準備
CP+までにセミナーの準備をしておく必要があったのですが、CP+が始まる2月19日の週は月曜から仕事がものすごく忙しくて、ほとんど時間が取れませんでした。セミナーのための撮影は以前のブログ記事にあるように、前週までにほとんど終わっていて、ある程度の画像処理の方針までは立てていました。火曜日にこれも既にほとんど書いてあった最後のブログ記事はアップしましたが、肝心の画像処理に費やす時間が全然取れませんでした。
やっとまともな準備に入ったのが出発前日の木曜の夜のことです。パワーポイントでスライドの最後の仕上げと、あとははとにかく画像処理の練習です。スライドの方は方針は決まっていたのと、ある程度は事前に書いておいたので、ほとんど問題ありませんでした。問題は画像処理の方です。本番当日は持ち時間40分、その中に4通りか5通りの画像処理を詰め込もうと画策していたので、相当スムーズに進める必要があります。繰り返しの練習が必要です。
CP+会場へ向けて出発
移動日の金曜朝、富山からの新幹線がかなり席が埋まっていたので、朝早くの移動は諦め、ちょっとのんびりで午後の途中で会場に到着するくらいにしました。朝自宅で少し時間があったのと、新幹線の中でも時間があったので、練習を繰り返していました。
去年も同じことを書いてますが、北陸新幹線の東京方面行きはほとんど「ますとぶりのこばこ」を買って車内で食べています。ちょうど一人分で美味しいです。どちらかというとます(サケ)の方が好きなのですが、ますだけだと飽きてしまうので、2種類入っているのがちょうどいいです。
移動はスムーズで、13時半頃にはみなとみらい駅に到着。駅は今年もサイトロンの広告で溢れていました。
14時前にはパシフィコ横浜に到着。去年は快晴だった覚えがありますが、今年はあいにくの小雨です。でもほとんど屋根のあるところを通ってくるので、土砂降りでなければ傘がなくても特に問題ないです。
飯田ともき先生と会えた!
会場内に入るとすごい人です。去年より格段に人が多い印象でした。
会場に到着して早速、昨年お会いすることができなかった漫画家の飯田ともき先生のブースへ。スタッフの方に聞いてみると「15時頃にはいらっしゃる」とのこと。3年前のコロナ禍のCP+の電視観望のオンラインセミナーの様子を「カメラバカにつける薬」に載せていただいた経緯を説明し、ぜひお礼を言いたい旨をスタッフの方にお伝えしたところ「15時少し前に来てもらえれば時間を取れるかもしれない」とのことです。とりあえず、その場にあった「カメラバカにつける薬」の1巻と2巻を買って、特典の2冊セットで買った人用のシールと患者さんシールをもらって、15時までは別のところを回ることに。あ、実は1巻持っていることを忘れていて2冊とも買ってしまいました。なので今1巻は自宅に2冊あります(笑)。
その後、しばらく会場を回って15時ちょっと前に再びブースを訪れると、スタッフの方が案内してくれて、念願の飯田ともき先生にお会いすることができました。掲載された当時の「カメラバカにつける薬」をiPhoneに出しておいてお見せすると、ちょうどCP+でのことなので、「あー、あの時の」という感じですぐに思い出してくれたようです。私はカメラはあまり詳しくはないのですが、カメラバカにつける薬が連載開始した当時からのファンで、そんなマンガのコマの中に自分の電視観望機器が描かれていて、しかも掲載されたものを見て初めて知ったので、それはもう大喜びだったのです。今回、やっとそのことのお礼を、直接お伝えすることができました。サインの整理券を持っていなかったのですが、なんと「サインしましょうか?」と言ってくださり、単行本の第2巻にサインまでしていただきました。
しかもこの一連の出来事をXに投稿したら、先生からいいねをいただき、しかもフォローまでしていただきました。
今回のCP+でやっと3年越しの夢と、先生にお礼を言うという課題が達成できました。
サイロトンブース
天文関連ブースで一番元気なのは、やはりサイトロンブースでしょうか。新製品や試作品など、見るものが目白押しです。また、CP+の天文民の居場所にもなっていた感があります。ここにいれば、誰かに会えるというやつです。実際知り合いにも、初めての方にも、何人も会うことができ、機材をネタにいろいろ盛り上がりました。
本当に点のスポットダイアグラム。
今回のサイトロンブースでの一番の注目は、胎内工場で作るという国内生産の屈折鏡筒でしょうか。(次の日の土曜日に)開発者の方と少しお話しさせていただきましたが、元々物理出身で太陽関連の研究をされていたとか。P社、V社と研鑽を積まれ、ある意味集大作のような鏡筒と言えるのかもしれません。とにかくスポットダイアグラムがすごいです。MTF曲線と合わせて、もうやりすぎかと思うくらいです。土曜日に新製品紹介で開発者の方のセミナーがあったのですが、
後に出てきたAskarの185mm APO屈折のスポットダイアグラムが、本来これ自身は決して悪くはないのに、比べてしまうと実際よりも大きい印象で見えてしまいます(笑)。
もちろん今の試作のスポットダイアグラムなどは全て設計値のはずです。実測でどれくらいになるのか期待していますとお伝えしました。あと、セミナーの中で「暗すぎず、明るすぎず」としてf5としたとのことですが、少し突っ込んでお聞きしてみました。S/Nの観点から、明るい方が有利なのはいうまでもなく、個人的には手持ちのε130とかの明るい鏡筒が好きなのですが、やはり明るくする方向は技術的に途端に難しくなるとのことです。いずれにせよ期待大で、あとは値段でしょうか。やはり試作品のVixenの70mmの小型VSDと性能、値段でどう住み分けができるのか、興味深いです。
と、こんな話を開発者の方としていると、(再びすみません、土曜のことです)たまたま大西さんがやってきて、今回のもう一つの目玉のステラグラスの話になりました。
後に出てきたAskarの185mm APO屈折のスポットダイアグラムが、本来これ自身は決して悪くはないのに、比べてしまうと実際よりも大きい印象で見えてしまいます(笑)。
天文でないと思われるカメラ女子がこれをみながら
「これで星とか撮るんだよね!?」とかキャーキャー言ってました。
「これで星とか撮るんだよね!?」とかキャーキャー言ってました。
もちろん今の試作のスポットダイアグラムなどは全て設計値のはずです。実測でどれくらいになるのか期待していますとお伝えしました。あと、セミナーの中で「暗すぎず、明るすぎず」としてf5としたとのことですが、少し突っ込んでお聞きしてみました。S/Nの観点から、明るい方が有利なのはいうまでもなく、個人的には手持ちのε130とかの明るい鏡筒が好きなのですが、やはり明るくする方向は技術的に途端に難しくなるとのことです。いずれにせよ期待大で、あとは値段でしょうか。やはり試作品のVixenの70mmの小型VSDと性能、値段でどう住み分けができるのか、興味深いです。
と、こんな話を開発者の方としていると、(再びすみません、土曜のことです)たまたま大西さんがやってきて、今回のもう一つの目玉のステラグラスの話になりました。
天リフさんの投稿でSNS上ですごい注目を集めているようですが、一部少し誤解をされているような記事も見られます。これはコーティングで光をどうこうするとかの、既存のクリアグラスの類のものとは全くコンセプトが違い、軽い補正レンズを、それもメガネの上からかけられるようにしたものです。暗い夜に星を見る場合、少しピントがずれるそうです。そのずれたピントを補正するのが目的で、結果星が見えやすくやすくなるというものです。メガネの上からかけることができるのもポイントで、観測中に付け替えの手間がないのがいいです。詳しいメカニズムは、日曜に行われた大西さんのセミナーを見るといいかと思います。
私は試作品を小海の星フェスで手に入れたのですが、コンセプトを聞いた時天才かと思いました。私の場合、そもそも今使っているメガネの度がだいぶ合わなくなってきているので、普段空を見上げてもあまり星が見えていないのですが、かといって度の強いレンズにすると普段の生活で目が疲れてしまいます。星を見るときだけ度を上げたいのですが、メガネを付け替えるのも結構面倒です。なので観望会の時などだけ、最初からメガネの上にかけられるこのグラスは、ものすごく便利なのです。実際に小海で見た時に、あからさまに星が見えるようになったのに驚き即買いでした。その後星を見る時は必ず使うようにしています。
さらに、実は車の座席のところにいつも置いてあり、運転中もこれを使っています。ちょっと遠くの見えにくかった看板などの文字も読めるようになるので、もう普段使いで役に立っています。
さらに、実は車の座席のところにいつも置いてあり、運転中もこれを使っています。ちょっと遠くの見えにくかった看板などの文字も読めるようになるので、もう普段使いで役に立っています。
値段はまだわかりませんが、眼鏡業界関連の方の情報によるとかなりいいレンズを使っているとのことで、眼鏡屋さんが作るよりも廉価な値段設定になりそうと言う話をCP+会場で聞きました。実際に商品化されるとのことで、星を見る人の必須アイテムになりそうです。
ここで、最初の方の大西さんが入ってきた時の議論に戻るのですが、大西さんによると「このグラスでは星は見えるようになるが、天の川が見えにくくなる」と言うのです。理由は「そもそも人間の目は暗いものに対しては分解能が落ち、その落ちた分解能で度のオーダーの粗い面積を積分することで天の川として見える」と言うのです。確かにこれは、星座ビノでもよく似たことがあると思っていました。星座ビノを使うと星の数はあからさまに増えるのに、天の川は実はそれほど良く見えるようにならないのです。そんなことを大西さんと話しながら、なぜ人間の目は暗いところでは分解のが落ちるか、なぜ暗いところではピントがズレるか、色々話を聞くことができました。セミナーでも同様の話がされているので、興味のある方はぜひ配信動画を見てみるといいでしょう。
なのでこのステラグラス、星が見えるようになるのにはきちんとした根拠があり、どこかの意見であったような紛い物の類ではないかという根拠のない推測は、全く間違っています。
Vixenブース
Vixenさんは今回とても元気です。定番の90mmのVSDに加えて、70mm版のVSDの試作品や、ガイド用カメラをVixenブランドで出しています。
Vixenブースでいろいろ説明してくれたのは、2020年の福島のスターライトフェスティバルでわざわざ私を探して会いにきてくれたIさんです。当時はVixenに入ったばかりの新入社員さんに近くて、ずいぶん若い印象でした。もちろん今でも十分に若いのですが、今回お会いしたら、なんか自信に溢れているというか、貫禄が出てきていた気がしました。試作品を含めて、ここ最近の新製品にほとんど関わっているそうです。VSDの70mm版の説明に加えて、VSDよりもう少し安価な65mmの撮影用鏡筒も紹介してくれました。これが面白いのは、焦点合わせに2種類の鏡筒を作っていて、一つは普通の接岸側のフォーカサー、もう一つは鏡筒の中の対物レンズが前後するタイプです。
対物部分の写真を撮るのを忘れてしまいました。
本当に筒の中の対物レンズ部分が前後します。
本当に筒の中の対物レンズ部分が前後します。
他にも、以前60mmでクラウドファンディングで60mmの鏡筒を販売していましたが、それの後継にあたる72mmのものも紹介してくれました。
どうやらIさん、60mmの方のプロジェクトの成果で、新規開発の方にいろいろ関わるようになったとのことです。こうやって若い人をピックアップしてどんどん新製品に関わらせるというのは、Vixenなかなかやりますねという感じです。今年Vixenが元気な理由は、どうやらIさんが頑張っているからなのかもしれません。応援しいてるので、ぜひ今後もIさんには頑張ってもらって、Vixenを盛り上げていってほしいです。
電視観望
電視観望という観点からいくと、例えば同じVixenブースでCelestronのRASA6に相当する電視観望機器が展示されていました。本家RASAは8インチまでしかないのですが、6インチはこの電視観望セットのみにあります。まだ数日前にやっと日本に届いたということで早速の展示品でしたが。Celestronと、Celestronブランドを扱うVixenが電視観望に対してどういった方向性を見せていくのか、注目です。
そういった意味ではBORGは今年はあからさまに電視観望と謳ってきていました。
去年までは「この鏡筒で電視観望もできますよ」という、口頭での説明くらいでした。実は今回説明してくれた女性のスタッフさんは去年と同じ方で、昨年は「これから私の電視観望のセミナーがあるので、もし興味があったらぜひ」と声をかけた方でした。私のことも覚えていてくれて、昨年のセミナーも聞いてくれて、さらには過去のCP+の動画も全部見てくれたとのこと。「今回もまたセミナーやりますよ。画像処理についてですよ。よかったらぜひ!」とお伝えし、セミナーの時間を知らせておきました。BORGが電視観望を推すようになっているのも、もしかしたら私のセミナーの影響が少しはあるのかもしれません。そうだとしたらとても嬉しいです。あ、せっかくのBORGブースなので、去年も「いまだに中川さんと会ったことないんです」という話をしたのですが、昨年一年間もまだ会えていなくて、今年もまた「まだ中川さんと会えてないんです」という話をしました。今回はちょうど前日に来ていらしたらしいのですが、またすれ違ってしまいました。いつかお会いしたいです。
電視観望といえば、ZWOはSeeStarが盛況で、2台展示してありました。社長のSam氏とも少しだけ話すことができました。
でもここで注目したのは中判サイズのCMOSカメラです。すでに以前から販売はされていますが、実物を見たのは初めてです。やはりかなり大きいセンサーです。値段もまあそれなりにというか、なかなか個人では買えないような値段なのですが、いつか使ってみたいです。でも性能を引き出すためには鏡筒を選ぶはずなので、カメラだけではダメでトータルで考えなければダメですね。
でもここで注目したのは中判サイズのCMOSカメラです。すでに以前から販売はされていますが、実物を見たのは初めてです。やはりかなり大きいセンサーです。値段もまあそれなりにというか、なかなか個人では買えないような値段なのですが、いつか使ってみたいです。でも性能を引き出すためには鏡筒を選ぶはずなので、カメラだけではダメでトータルで考えなければダメですね。
David Shen氏のセミナー
土曜日のメインイベントは、サイトロンブースでのSkyWatcherのオーナーのDavid Shen氏のセミナーでしょうか。氏が若い頃から苦労して光学機器を作り続け、現在は観望会や教育などにも力を入れているという内容でした。光学機器製作の技術を積み上げ、SkyWatcherという自社ブランドを立ち上げ、高価だった天文機器を廉価に販売し、天文という文化を世界中に広めたいという思いを、実際に実現しているというのは並大抵の努力ではないはずです。もし自分が天文機材を作る立場になったらと想像すると、とてつもなく大変で、到底できないことだと思ってしまいます。
SkyWatcherは廉価な機器が中心と言いながらも、AZ-GTiや今回の重量級積載重量を誇るシンプルな構造の赤道儀、太陽望遠鏡など、非常に面白い機器を提案してくれる会社です。今後も我々天文マニアが泣いて喜ぶような面白いアイデアと機器をどんどん出してほしいと期待します。
以前2年前のCP+で紹介したNEWTONYが今回金ピカになって展示されていました。
NEWTONYは元々教育用鏡筒で、筒の中を見ることができます。残念ながら金ピカモデルは中を見ることはできないようでしたが、DIYモデルがあるように、Shen氏の教育にも力を入れたいという思いが実現したのかと思います。
明日はどうなる?
他にもいくつかのブースは回りましたし、上の記事には次の日の土曜日に回ったブースの話も一部入っています。残りのいくつかのブースの話は次の記事で、そして土曜日のセミナー本番の様子も次の記事で書きたいと思います。
この日のCP+は18時で終了です。帰り道で横浜の夜景を撮りました。富山の田舎から見ると横浜の都会っぷりが目に沁みます。この日は素直にホテルに帰って、もう少し次の日のセミナーの練習です。
この日のCP+は18時で終了です。帰り道で横浜の夜景を撮りました。富山の田舎から見ると横浜の都会っぷりが目に沁みます。この日は素直にホテルに帰って、もう少し次の日のセミナーの練習です。