ほしぞloveログ

天体観測始めました。

2023年09月

休日で晴れているので太陽撮影です。大きな目的は粒状班ですが、まずはHα画像から。


セットアップ

取り掛かったのは、がストのモーニングでのんびりして帰ってきてからの、ちょうど正午12時くらいからでしょうか。

まずはいつものC8とPSTです。まずPCの画面に写した段階で、そこまでシンチレーションは酷くはないですが、前回の9月10日の時よりも明らかに揺れています。もうこの時点で粒状班は諦めました。Hα画像も処理をしてみると分解能が明らかに劣っています。なのでこの日の画像は記録程度の意味しかありません。


Hα画像

結果だけ示します。真ん中ら辺に目立つ黒点が2つ出ていました。宇宙天気ニュースによると、大きい方からAR3435とAR3440だそうです。番号が小さいほうが先に出ていたもので、先に裏側に回り込みます。

AR3435
12_44_01_lapl4_ap485_IP


AR3440
12_31_29_lapl4_ap530_IP

シンチレーションがいいとImPPGのSigmaが小さい値でかなり細かい模様が残り、分解のがいいことがよくわかります。9月10日の画像は1.5とかせいぜい2でした。シンチレーションが悪くなると、Sigmaの値を大きくしてごまかすような形になります。今回は3とか4でしたので、やはり分解能がでないです。

プロミネンスもいくつか出ていましたが、一つだけ撮影しました。

12_15_48_lapl4_ap530_IP

撮影データです。
  • 撮影場所: 富山県富山市
  • 撮影時間: 2023年9月24日12時15分-12時44分
  • 鏡筒: Celestron C8、口径203mm、焦点距離2032mm、F10
  • エタロン: Coronado P.S.T.
  • 赤道儀: Celestron CGEM II
  • カメラ: ZWO ASI290MM
  • 撮影ソフト: SharpCap 4.1 (64bit)
  • 画像処理: AS3にてスタック、ImPPGで細部出し、PhotoshopCCで後処理


VISACでの粒状班撮影

シンチレーションが悪いので多分ダメなのはわかっているのですが、一応粒状班を撮影してみました。前回PowerMATEの2倍では拡大率が不十分だったので、今回はPowerMATEの4倍を使いました。

今回はC8だけでなく、VISACでも撮ってみました。もしかしたらC8に固有の問題があるかもしれないとも思ったからです。でも見た限りだと、C8もVISACもどちらも同様で劇的な違いはなく、どちらも全然ダメでした。

IMG_8604

撮影したものですが、結局画像処理をするとC8でとったものの方が少しだけよかったので、こちらを載せておきます。

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でもまだ分解能が全然足りていません。また休日に晴れていたら撮影してみます。


2023年9月17日から18日までの二日間、京都の南丹市で開催される「星をもとめて」、通称「星もと」に参加してきました。星もとは関西で行われるほぼ唯一の星まつりで、関西より以西の方にとっては貴重な場なのではないかと思います。ここだけで顔を合わせることができる方もたくさんいるので、私によっても貴重な星まつりです。


準備と出発

前日の16日の土曜日は、元々飛騨コスモス天文台で二胡という楽器の演奏会と天体観望会の予定だったので、星もとに行くのと同じような機材を用意していました。結局土曜は天気が良くなくて演奏会も観望会も次の日の日曜に延期になってしまったので、時間的にも余裕ができ、星もとへの準備もほぼできてしまっていたので、午後9時くらいには早々と寝てしまいました。そのせいもあるのか、日曜は朝4時には目が覚めてしまって、自宅で朝食もゆっくりとっても午前5時半頃に出発することができました。

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富山ICから北陸道に入り、敦賀JCTで舞鶴若狭自動車道へと向かいます。JCTすぐ手前の南条SAで朝ラーメンを食べたりで、結構のんびり運転していて、現場に着いたのは午前10時半頃です。着いてみたら駐車場が一杯でびっくりでした。別のイベント(子供の自転車レース?)が行われていて、ほとんど車を止める場所がありませんでした。私は今回ユニテックブースでお世話になるので、機材搬入もあるため近くに止めることができましたが、他の方の話を聞いているとかなり遠くに止めざるを得なかったようです。


機材搬入

現地到着してすぐにユニテックの方達も到着したので、そのまま機材搬入です。今回も胎内星まつりに引き続き、SWAT+AZ-GTi = 「SWAgTi」の展示がメインです。



ちょうど昼時でユニテックの方は昼食に出かけたので、一人で気楽に準備を続けます。下の写真のようにSWAgTiを目立つように展示して、あとは机の近くにC8とPSTを使った太陽電視観望をセットしました。明るい中で太陽Hα画像をモニターに映し出すために、モニターをテントの中の影のところに置きました。この日はとても暑くて私もバテてしまわないようにテントの日陰の中から操作です。黒点こそ少なかったですが、大きなプロミネンスやダークフィラメントがはっきり出ていて、見ていただいた方には喜んでもらえたようです。

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実際に昼間はかなり暑くて、ユニテックスタッフの方が暑さでダウンしてしまったようで帰って来れなくなってしまったとのことです。そのためずっと店番をしていたのですが、勝手に物を売るわけにもいかずに、あたふたしていました。お客さんの中にもユニテックの方の知り合いがたくさんいて、心配してか「大丈夫なのか?」と何度も声をかけられました。

午後1時には開会式が始まります。
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会場には太陽観望望遠鏡がいくつか出ていました。眼視でも十分迫力があるくらいのプロミネンスと光球面でした。何人かのスタッフの方には、ユニテックのところに設置した太陽電視観望も見てもらいました。

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今回はユニテックブースでデモに徹していたこともあり、あまり会場内を見ていません。恒例のKYOEIのジャンク市も自分の中であまり盛り上がらず、結局参加せずでした。なんと今回はこの星もとにおいて、買い物を一つもしていません!物欲を制御し切っています!というか、実際にはモノに関してはかなり落ち着いてきたのかと思います。

余り他を見てませんが、それでもたくさんの方に会うことができました。
  • 2017年だったでしょうか、星もとのスタッフとして参加していた女子学生で、娘とともに当時色々お話しさせてもらった方が、私のことを覚えていてくれて、わざわざ挨拶に来てくれました。高校の時に天文部を立ち上げたり、星もとでも展示や講演をするような活発な学生さんで、卒業後一旦教師になったことは風の便りに聞いていたのですが、その後プラネタリウムで解説をするという、見事天文関連の職についたとのことです。
  • 昨年小海で会って、自宅にまで来てくれた石川のOさん一家の、6年生の男の子が大成長してました。ご両親を完全に後ろに置いていってしまうくらいの天文っ子になっています。
  • 以前星もとでお会いした、雑兵Aさん親子にも再会できました。お子さんが小さかったイメージなのですが、すっかり大きくなっていて全然印象が違いました。プラネタリウムの解説をされたとのことですが、行けなくて申し訳ありません。ちょっと疲れ果ててました。
  • 短時間でしたが今年も迷人会の方に会うことができました。こたろうさん、ええじさん、井戸端さんなど皆さん相変わらずの盛り上がりで、とても楽しそうでした。
  • 久しぶりにあぷらなーとさんにも会うことができました。迷人会ブースで行われていた霧箱電視観望がずいぶん盛り上がったとのこと。見たかったです。
他にも書ききれませんが、たくさんの方にお会いすることができました。

午後4時頃でしょうか、雨が少しだけぱらついたときがあり、ここで太陽望遠鏡は片付けました。夕方になってやっとユニテックの方が復活され、ブースで商品販売なども始まりました。ちょっとほっとしました。


広域電視観望

18時位からでしょうか、ユニテックブースの前でデモの準備を始めます。タカハシさんのブースが隣で、望遠鏡を多数展開していたので、それに邪魔にならないように少し離してテーブルを設置しました。お客さんにも見やすいように、24インチ程度の別モニターを用意して、PCと対面にして置きます。

まずはテストで広域電視観望で天の川を見せます。この日の天文薄明終了が19時半頃でしたが、19時にはすでにかなり綺麗な天の川を映し出すことができていました。天の川は一般の人にもかなり受けるので、みなさん注目してくれます。

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下からM8、M20、M16、M17がはっきり見えています。天文に詳しいお客さんも多く、お客さん同士で解説してくれていました。

天文に興味のある人は機材にも注目してくれます。技術的なところはこのページを見ていただくとして、レンズとCMOSカメラを繋ぐアダプターについて何人かの方から質問を受けました。私は古いNIKKORレンズを使っているので、アマゾンなどでNIKON FレンズからCanon EFマウントへ変化するアダプターを使っています。私が買ったものはすでに廃盤ですが、代替品はいくつも見つかると思います。そのあとはZWOのEFマウントからASIカメラのT2への変換アダプターを使っています。ただし私が持っているのは旧版で、アダプターで長さ調整ができるものでしたが、今のバージョンは長さ固定になっているようです。基本的にはこれでピントが出るはずです。他にも「カメラレンズ 望遠鏡」などで検索すると、レンズからアイピース差し込み口に変換するようなアダプターをいくつか見つけることができます。CMOSカメラに標準添付のアイピース口用のノーズアダプターをつけると、これらも使うことができるはずなので、探してみてもいいかもしれません。


今回のSWAgTiデモの目標

テストのつもりだった広域電視観望が好評で、なかなかメインのSWAgTiのデモに移れません。結局19時半頃に半ば強引に天の川表示を止めて、SWAgTiにつけてあるEOS  6DをSharpCapから接続します。

今回の目標は
  1. 6Dの画僧を使い極軸調整をして
  2. 同じく6Dの画像を使いプレートソルブをしてAZ-GTiで自動導入し
  3. 自動追尾をSWATに切り替えて、ガイドなしで焦点距離370mmで3分露光で星像を点にすること
です。


最初は全然ダメ

まずは6Dを使った極軸調整です。今回は自宅で事前にきちんと試していたので問題ないはずと思っていたのですが、全然うまくいきませんでした。星の認識の時点でまったくだめそうなので、結局1度くらいずれている状態で初期アラインメントに移りました。一発目から狙いのアルタイルが画面の端に入ってきたのですが、肝心のプレートソルブはなぜかうまくいかず。焦って余裕もなかったのでそのままマニュアルで初期アラインメントを完了しました。次に自動導入ですが、対象は比べやすいように胎内の時と同じM27としました。AZ-GTiでの自動導入は問題なく動きます。とりあえず撮影と称して、30秒、1分、3分と順に長く露光していきましたが、極軸が合っていない現状では3分では予想通り大きく星像が流れてしまいました。

これでは流石にだめなので、ここで再度極軸調整をやり直すことを決意し、一から始めることにしました。


2回目の挑戦

ところが、2回目はさらにダメでした。まず、ASCOM経由で6Dに接続することさえできません。カメラ電源を入れ直したり、USBケーブルを繋ぎ直したり何度かやってもエラーが出でしまいます。こういうときは焦るのが一番ダメです。「焦るな、焦るな」と自分言い聞かせて、PCを再起動することにしました。お客さんを待たせるとになりますが、こういうときは再起動以外大抵ダメなのはこれまでも経験しています。お客さんに「申し訳ありません、飽きたら他のところでも見ていてください」とお断りするのですが、それでも何人かの方はずっと見ていてくれています。とてもありがたかったです。

やり直した甲斐はあり、PC再起動の後はかなり順調で無事に6Dも認識され、極軸調整に移ります。今回、なぜ極軸調整がうまくいかないか、問題点がわかってきました。今後の記録も兼ねて、記述として残しておきます。


極軸調整の問題点

6Dの場合、通常のスナップショットでの撮影と、極軸調整時の連続撮影で、少し違いがあることに気づきました。極軸撮影の場合、ヒストグラムを見ていると余分なノイズが入り込み、線状に表れるためにオートストレッチで変な設定になってしまうことです。極軸調整時の星はストレッチ込みで星が認識されるのですが、うまく星が認識できないために位置特定ができないようです。

これを回避するためには、一度あえてスナップショットでオートストレッチして、その設定状況を何も変えない状態で極軸調整に持ち込むことです。画面を見ると、変な明るさや変な色に見えるかもしれませんが、正しく位置認識できるようです。画面がなんかおかしいと思ってストレッチを手でいじったりオートストレッチすると、それ以降全く位置認識ができないということに気づきました。

少なくとも今回、現場でこのことに気づいてから、2度目の極軸調整では位置認識は問題なくできるようになりました。


三脚が大きかった

位置特定さえできれがあとは実際に赤道儀部の方向を合わせるだけなのですが、次の問題点はいつもと違った三脚を使っていたことでした。普段は写真のような、バサルトという素材でできたGitzo製の小さい三脚を、足を一番短くして、しかも足を開いてできるだけ安定な状態で使っています。

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今回はユニテックさんにお借りした、背の高いカーボン三脚を使いました。脚を3段階で伸ばすことができます。高い三脚はデモで人に見てもらうのにはとても適しています。胎内では、フルに脚を伸ばしていたのですが、安定性を考え今回は1段脚を縮めて、2段階伸ばした状態で使用しました。それでも、やはりまだ物として大きく、手で三脚を水平方向に少しだけ回して極軸の水平方向を合わせるとか、三脚の脚を少しだけ伸び縮みさせて極軸の垂直方向を合わせるとかするには、かなり精度的に厳しかったです。

いつもの小さい三脚なら多分できていたのですが、今回の大きな三脚には微動自由雲台を使うべきでした。もしくは、水平だけならまだなんとかなったので、垂直方向だけなら三脚アジャスターを使ってもよかったのかもしれません。


なんとか極軸あわせ完了

結局最後は、気合で極軸調整で4分角程度まで合わせ込むことができました。実際にはこれ以上触ると悪くなりそうなので、ここで止めたというのが正直なところです。それでもここまで合わせれば黄道上の最も動くところでも4分間で4秒角程度のズレなので、十分な精度です。

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4分角まで合わせましたが、背景の色が暗くておかしいのがわかると思います。
またヒストグラムを見ても背景のピーク以外に何本もピークがが立っているのがわかります。 

この精度で試しに2分間の露光でM27を撮影したところ、見事に点像になったので、やっと一安心できました。

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ガイドなしで2分間の露光ですが、星像は流れていないのがわかります。
上下バーとサイドバーをみるとわかりますが、星像の流れを確認するためにかなり拡大しています。

これで撮影開始と思って、ライブスタックを開始したのですが、なぜか2枚目以降スタックされません。「何ででしょうか?」とボヤいていたら、お客さんの一人が「雲じゃないですか?」と教えてくれて、実際空を見たらかなり雲に覆われていました。

結局ここでデモも終わりとなりましたが、今回はトラブルが延々と続いていたので、見ていた方に本当に申し訳なかったです。それでも、胎内では「やる」と宣言していた6Dにそもそも辿りつかなくて、結局CMOSカメラを使ってしまい、しかも極軸調整もできなくて、30秒露光でギリギリ星が流れない程度でした。

今回は6Dを使って、なんとか極軸調整には辿り着き、プレートソルブこそできませんでしたが、2分露光で星が点像になったので、かなりの進歩と言えるでしょう。自宅で試した時はスムーズにできていたのですが、人に見せるデモで同じことをするのがいかに難しいか、痛感しました。総合としては60点くらいでしょうか。

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やっと撮影に入って、ホットして写真を撮ることができました。

トラブルも含めてかなり長い時間見てくれていた方もいらっしゃいます。グダグダだったにもかかわらず、本当に感謝です。何が問題だったかも分かってきたので、次回チャンスがある時はもう少しスムーズにいければと思います。

22時頃には片付けも終わり、会場をあとにしました。この日は車で30分くらいのところに宿を取ってあって、星まつりとしては珍しくゆっくりと夜に眠ることができました。晴れていたら少し後ろ髪を引かれたかもしれませんが、曇りだったので、会場の他の方も早めに退散しているようでした。


二日目

二日目の朝はホテルで朝食を取り、その後再び「星もと」会場に向かいました。二日目は店舗ブースも数軒しか空いていませんでしたが、お目当ては国際光器さんです。

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二日目朝の様子。スタッフの方が後片付けをしています。
奥に見える国際光器さんが目当てです。

実は一日目に国際光器さんのところに48mmのOIIIフィルターの訳あり特価品がおいてあり、ちょっと迷っていたので後で買おうと思っていたら、すっかり忘れてしまっていました。もしかしたら二日目もまだ残っているかもと思って見にきたというわけです。国際光器さんのブースが空いていることは確信していました。どの星まつりでも、いつも朝イチから一番遅くまでブースを開けてくれているので、国際光器さんには本当に頭が下がります。素晴らしい姿勢だと思います。残念ながらお目当てのフィルターは売れてしまっていましたが、店長さんといろいろ話すことができました。特にε130Dのフラット補正について興味深く聞いていただきました。バーダーのズームアイピースと、ハーシャルプリズムの特価品に後ろ髪を引かれましたが、今月少し費いすぎているので、グッと我慢しました。

朝の会場には、石川のOさん一家が二日目もいらしていて、ご家族としばらく話していました。子供が今6年生とのことですが、すでに天文検定4級はうかったとのことで、次は3級に挑戦するとのことです。話していても普通の大人のかなりのマニアと話をしているみたいで、将来がとても楽しみです。

その後、抽選会が始まったので参加したところ、タカハシのTシャツとクリアファイルを頂きました。午前11時に終了の宣言があり、そのまま帰路につきました。

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途中の南條SAで昼食を取ろうと立ち寄ったら、またOさん一家にお会いしました。同じような時間に出たのと、立ち寄るとしたらこのSAなので、ある意味必然だったのかもしれません。次の小海での再会を約束し、ここで本当のお別れとなりました。


帰宅とまとめ

結局自宅に着いたのは夕方の17時過ぎでした。金沢から富山間がずっと工事続きで、北陸道としては珍しく連続渋滞でした。二日とも暑かったせいもあってか、軽く夕食を食べてから19時頃には疲れて寝てしまい、結局朝まで起きられなかったです。胎内の時も昼前くらいに自宅に着いてそのまま夕方まで寝て、さらに夜も朝まで寝ても疲れが取れなかったので、暑い時はできるだけ無理しないようにすることが大事かと思います。

今回は昼も夜もデモが中心になってしまい、会場を回ることがあまりできませんでしたが、それでもかなり楽しかったです。特にトラブル続きのデモも、飽きることなく真剣に見てくれた方がたくさんいて、とても感謝しています。以前星もとでお会いして、今回久しぶりに会えた方も何人かいました。また来年会えるのが今からとても楽しみです。


今年の夏は殺人的な暑さでした。9月に入ってやっと少しだけ暑さが和らいだのと、休日と晴れが重なったので、久しぶりに太陽撮影を試みました。2023/9/10の撮影分になります。前回の太陽撮影はゴールデンウィークの頃なので、もう4ヶ月も前のことになります。


今回の主な目的は2台のPSTを比較して2台目の方が良像範囲が広いと判断した5月の検証を再度確かめることです。




黒点

黒点群AR3423です。この日はシンチレーションも悪くなく、そこそこ細部まで出たのかと思います。

10_02_58_lapl4_ap530_cut
  • 撮影場所: 富山県富山市
  • 撮影時間: 2023年9月10日10時2分
  • 鏡筒: Celestron C8、口径203mm、焦点距離2032mm、F10
  • エタロン: Coronado P.S.T.
  • 赤道儀: Celestron CGEM II
  • カメラ: ZWO ASI290MM
  • 撮影ソフト: SharpCap 4.1 (64bit)
  • 画像処理: AS3にてスタック、ImPPGで細部出し、PhotoshopCCで後処理

元のモノクロのカット前の画像が下になります。

10_02_58_lapl4_ap530_mono

左側がのっぺりしているのがわかると思います。これを見る限り良像範囲は8割程度でしょうか。前のPSTが3-4割といったところだったので、かなり使える範囲が増えたのかと思います。 細部もそこそこでているので、今後も2台目PSTでそのまま継続できるかと思います。

一つ心配なのが、真ん中から右にかけてなぜかピントがずれたように見えます。もっと右に行くと大丈夫そうなのですが、少し謎です。再発するようなら原因を探ってみます。


プロミネンス

この日はプロミネンスもたくさん出ていました。目立つものをいくつか載せておきます。画像処理はあまり気合が入っていません。

まずは、かなり広い範囲に渡ったプロミネンスですが、手前側の光球面上に広がっている様子もわかります。プロミネンス越しでは光球面の細部が出にくくなっているのがわかると思います。
10_05_35_lapl4_ap539_cut

こちらも下部からプロミネンスが伸びて繋がっているのがわかります。やっとここら辺を出せるようになってきました。
10_07_34_lapl4_ap539_cut

スピキュールがピンピンしてますね。こんなときはシーイングがいい日だということがわかります。
10_07_50_lapl4_ap539_cut


粒状斑

前回C8にアルミシートを巻いて、少し熱流対策をしました。その効果かわかりませんが、2倍のPowerMATEで少し粒状斑が出ました。

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でもまだ動画の時点ではっきり出ているとは言い難いので、まだシーイングがかなりいいとは言えないでしょう。太陽撮影は休日に限られてしまうのでタイミングが難しいのですが、できるだけシーイングがいい日を探して継続していきたいと思っています。


まとめ

やっと昼間に太陽を見る気になるような気温になってきました。忙しくてブログをまとめてなかったのですが、明日から日曜、月曜と連休を利用しての京都の「星をもとめて」なので、それまでにまとめておこうと画像処理も含めて記事を書き上げました。

今日の夜は飛騨コスモス天文台で観望会、でも天気は微妙です。明日は朝から京都「星もと」へ移動です。星もとでは胎内に引き続いて、ユニテックブースでSWAT+AZ-GTI=SWAgTiの展示とデモをする予定です。関西の星仲間に会えるのを楽しみにしています。


プレートソルブトラブル解決集の続報です。今回はある意味決定版になっています。前回あやふやにし解決できなかったことが、かなり確実に解決できるようになりました。




SynScan Proの最新版

2023/9/2にSynScan Proの最新版(v2.4.5)がリリースされました。リリースノートによると、今回のバージョンアップでプレートソルブ関連で以下のような改善をしています。
  • Re-enabled PAE, where were disabled from 2.3.4 to 2.3.9
  • Replaced "Align with Sync" page with "Sync samples" page.
  • Multi-star alignment, where performing any of the following adds a sync sample:
  • Using one of the alignment methods from the Alignment page
  • Centering on a celestial object at the prompt after any catalog object GOTO
  • Receiving a `SyncTo` command from ASCOM with a plate-solving software
これは2022年9月にバージョン1台からバージョン2台になって以来、初めてのプレートソルブ関連の大きな改善です。バージョン2以降では、上に書いてある2.3.4でPAE(調べるとPointing Accuracy Enhancementとのことです)をオフにしたことが唯一の変更で、それも今回戻してあるということなので、それを含めて初の大きな改善となるということです。

現実に、バージョン1台でそこそこ安定だったプレートソルブ関連は、バージョン2台で不安定になりがちでした。そのため、プレートソルブを試す際は、まずは手持ちのSynScan Proを現段階で最新のv2.4.5以降にすることをお勧めします。実際に、今回かなり安定な状況を実現できています。

また、最新のSynScan ProではPCに接続されたゲームコントローラーでAZ-GTiが動かせるそうです。私はまだ試していませんが、Xbox互換、PS3互換のものが使えるそうなので、興味がある方は一緒に試してみるのもいいかもしれません。

あと、SynScan Proではなく、ただのSynScanもアップデートされていますが、こちらはProを単に機能制限しただけのようなものです。その機能制限の中にはワンスターアラインメントなどあって然るべき機能も含まれて制限されてしまっているので、私は今はProの方しか使っていません。SNS上には、Proでない方でどうしても解決しなかったトラブルが、ショップの方の助言でProにしただけで一発で解決したという例もあるみたいなので、何か理由がない限りPro版を使う方がいいのかと思います。


接続の確認

今回の動作条件は、AZ-GTiを使ったプレートソルブをするために、PCにSynScan ProとSharpCapがインストールされていて、それぞれをASCOM環境で接続するためにASCOMプラットフォームがインストールされていることとします。プレートソルブはASTAPもしくはASPSを使います。最新のSharpCapではPlatesolve3もサポートしているので使えるかもしれません(私はまだ未検証)。

1. SynScan ProとAZ-ZTiの接続

まずはSynScan ProとAZ-ZTiの接続がきちんと確立されているか確認します。接続方法はデフォルトのWiFiを使っても、オプションのケーブルを使った有線でも、どちらでも構いません。プレートソルブをするためには「PC上の」SynScan ProとAZ-GTiを接続することが必要で、最初はスマホやタブレットのSynScan Proでの接続でも構いませんが、プレートソルブ時、より正確にいうとSharpCapと接続する時にはPC上で動いているSynScan Proとの接続が必要になります。

経緯台モードか赤道儀モードかはどちらでも構いません。自分が設置している状態に合わせてください、どちらのモードでも正しくプレートソルブができます。

一つ重要なことが、緯度経度情報が正しく入っているかです。SynScan Pro上で「設定」から「位置情報」を見て、きちんと緯度経度が入力されている確認します。

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PCはGPSを持っていないので、位置情報を自動的には取得できないことが多いです。GPSを持っていなくてもインターネットから位置情報を獲得することもできますが、正しい位置にならない場合もありますので、自分で数値で確認するのが確実です。ここが大きく間違っていると、プレートソルブも初期アラインメントも全然違った方向に行ってしまいます。関連した注意ですが、最初スマホやタブレットのSynScan Proに接続して正しい位置情報が入っていると思っても、PCに切り替えた時にはその情報は引き継がれません。なので、PC上のSynScan Proで位置情報を確かめるようにしてください。


2. SharpCapとSynScan Proの接続

次にSharpCapとSynScan ProをASCOM経由で接続します。ASCOMプラットフォームはASCOMのページから、SynScanアプリ用のASCOMドライバー(2023/9/11現在、2023/9/3のv1.4.0が最新)はSkyWatcherのページからダウンロードしてインストールしてあるとします。

SharpCapの「設定」の「ハードウェア」から「SynScan App driver」を選び、メイン画面右の「望遠鏡制御」の「接続済み」をオンにします。正しく接続されると、AZ-GTiが向いている方向などの数値が出てきます。一つ確認しておくといいのは、その数値が時間と共に動いているか、PC上のSynScan  Proの「ユーティリティ」の「情報」を見て、その数値と合っているかを見ることで、きちんと接続されているかがわかります。実際、以前のバージョンでは数値が動かなかったり、全部0だったりして、接続できたように見えてもうまく接続できていないことが何度かありました。今のところ、最新バージョンのSynScan Proでは接続に失敗したことはありません。


SharpCapのプレートソルブの設定

接続がきちんとできていたら、次はプレートソルブの設定の確認です。まず、SharpCapの「設定」「プレートソルブ」画面を見ます。

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ASTAPもしくはASPS、もしくはその両方がインストールされているでしょうか?インストールされている場倍は、上の画面のように下の方にFoundとかでますが、まだインストールされていない場合は、どちらか、もしくは両方ともインストールしてください。「プレートソルブアプリケーションの選択」で選択することも忘れないでください。お勧めはASTAPですが、たまにASTAPだと解決できなくて、ASPSだと解決できることがあります。でもASPSは遅いので私は普段使いはASTAP、どうしてもダメな時はASPSとしています。

重要なことの一つ目は、焦点距離がきちんとあっているかです。これが実際の鏡筒と大きく間違っていると、どうやってもプレートソルブで位置解決ができません。

重要なことの二つ目は、下の画像のようにSynScanとの同期方法を4つ目の「マウント位置をオフセットして、天体位置を中央に配置する」を選ぶことです。これまでは2つ目の「マウントを同期し、天体を中央に再配置する」にしてたのですが、SysScan Proが反応せずAZ-GTiが動かないことがありました。4つ目のオプションは今のところほとんどの場合AZ-GTiをきちんと動かせています。

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初期アラインメント

準備ができたら、初期アランメントの最中にプレートソルブを試してみましょう。まずはSynScan Proから「アラインメント」を選びます。1スターアラインメントで十分でしょう。出てきたリストの中から、今見えているわかりやすい星を選び、そのまま導入します。今回は木星を選びました。

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SynScan Proがターゲット天体に向くまでに、ターゲットまでの差が角度で表示され、数字がどんどん小さくなっていきます。SynScan Proがターゲットの方向に向いたと思い込んだ時に下のような画面になります。

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ここで、SharpCapの画面にターゲットの星が出て来ればいいですが、出てこない場合はプレートソルブの出番です。上の画面で書いてある「マニュアルで中心に」というのの代わりに、「プレートソルブで中心に」持って行ってやるという意味です。なのでこの時点ではまだ、完了をSynScan Proに知らせる真ん中の「星印の横長ボタン」を押してはいけません


プレートソルブの実行

プレートソルブはSharpCapのメニューの「ツール」から「プレートソルブ後再同期」を選ぶか、右側パネルの「望遠鏡制御」の方向矢印の左下の方角マークのようなアイコンを押します。

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うまくプレートソルブが下位を見つけると、どれだけずれていたかの表示が角度で緑色のバーのところに表示され、自動的にターゲット天体が真ん中に来るようにAZ-GTi下に信号が送られて、下の画面のように実際にターゲット天体が導入されます。

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問題はこうならない時です。いろんなケースがあります。まず、以下のようにNo solution foundと出る場合です。2つの原因が考えられます。もし下の画面のように望遠鏡接続のところの数値が明らかにおかしい場合は、SharpCapとSynScan Proとの接続がうまくいっていません。再度接続しなおしてください。再接続でエラーなど出る場合は、SynScan Proをいったん閉じて再度開いてから、SharpCapから接続してみてください。

スクリーンショット 2023-06-21 204001

接続がうまくいっているはずなのにこのエラー場出る場合は、あまり追求せずにターゲット天体を変えてみてください。一度この状態でできる限りのことをやったことがあるのですが、結局どの試みも失敗し、最後あきらめがてらターゲット天体を変えたら、今までの苦労は何だったのかというくらい、一発でプレートソルブが成功しました。なので最近はこのエラーが出たら無駄なことはせずに、素直にターゲット天体を変えるようにしています。

上の問題が解決した時に、次によく出るエラーが、下の画面のような星が「多すぎる」とか「少なすぎる」とかいうものです。でもこのエラー、SynScan Proを最新版にしてから「多すぎる」というのは見なくなりました。今のところだけかもしれませんが、改善されたのかもしれません。星が「少なすぎる」というのは、プレートソルブをうまくやろうとしているが、取得した画像のクオリティが悪い場合に出てきます。雲が多い、空が明るすぎて星がよく見えないなどです。この場合は露光時間を延ばすとうまくいくケースが多いです。

スクリーンショット 2023-06-21 204001

ただし逆に、露光時間を延ばしすぎてうまくいかないこともあります。例えば星が流れてしまう場合です。私は5秒程度が最もうまくいっています。どれだけ星が流れるかは、AZ-GTiの水平出しの精度、見ている方向などによりますので、取得した画面で星が明らかに流れていないか確認してみてください。星が流れない限りは、露光時間は長いほうが有利です。

このエラーが回避されれば、あとはうまくいくでしょう。自動的にAZ-GTiが動き出し、ターゲット天体が画面真ん中近くに来るはずです。


初期アラインメントの完了と、次の天体の自動導入

プレートソルブがうまくいったら、初期アラインメントのマニュアルで中心へもっていくことが完了したことになります。SynScan Proに残っていた初期アラインメント画面の真ん中の星印バーを押すのを忘れないでください。これでプレートソルブを利用した初期アラインメントは完了です。実際に見てみたい天体をSynScan Proから自動導入してみてください。

さて、初期アラインメントで導入したターゲット天体の近くの天体を自動導入する場合は、特に問題なく画面真ん中らへんに来るかと思います。

ところが、遠くの天体を自動導入する場合は画面内に入らないこともあるかと思いますが、その場合もプレートソルブをしてみてください。設定などはうまくいっているはずなので、今度は特に問題なく真ん中に導入されるはずです。ただし自動導入でプレートソルブをしたとしても、AZ-GTiが認識している(遠くに移動した誤差のために間違って認識されている)位置がアップデートされるわけではないです。そのため、次の天体がもし今導入したものの近くにあったとしても、同じような誤差のために画面内に入ってこなくて、再度プレートソルブをする必要があるかと思います。そんな場合はSynScan Proでアラインメントを選んで、今見ている方向の近くにある星でアラインメントを取り直してみてください。同じように「マニュアルで中心に」と出たところで再びプレートソルブをして、うまく導入されたら初期アランメントを完了して、SynScan Proが認識している位置をアップデートしてみてください。こうすることで、その付近の天体の自動導入できちんと画面内に入るようになるはずです。


トラバースの場合

今回AZ-GTiだけでなく、少し前に発表されたSynScan仲間のトラバースもじっくり試してみました。



上の記事でも少し書いていますが、この記事で試した次の日の観望会でも接続やプレートソルブにトラブルがありました。その後自宅などでも何度か試していたのですが、うまくいく時とうまくいかない時の差がかなりあり、観望会本番で使うのは少し怖いという印象でした。少なくともAZ-GTiと比べると安定度の差はあったかと思います。

ところが、今回SynScan Proのバージョンを最新のものにアップデートしてからは、トラバースで以前経験したようなトラブルは今のところ一切なくなっています。少なくとも、もうAZ-GTiとの差は感じられないレベルの安定度です。

まだ何度か検証する必要はあるかと思いますが、観望会での実戦投入も含めて、実際に使っていけるレベルかと思いますので、今後どんどん活用していきたいと思います。


これ以降は、古いバージョンのSynScan Proで試したことも含めた補足記事です。ほとんど役に立たないと思いますが、参考がてら載せておきます。

Device Hubは関係なさそう

(古いSynScan Proで)AZ-GTiとトラバースを交互に使用するなど、複数台からの接続がうまくいかない場合、ASCOMのDevice Hubを使うといいという情報を得ました。Device Hubは複数の各機器のASCOMドライバーを管理し、接続を制御するという中間的なハブの役割をするものです。ダウンロード場所が分かりにくかったのですがここになります。



前回不安定だった状況を再現し、それがDevice Hubで解決するか試しましたが、残念ながらSharpCap上でASCOM Driver for SynScan Appに直接つなぐ方法と、Device Hubを通してSharpCap上でASCOM Driver for SynScan Appにつなぐ場合では、明確な違いを見ることはできませんでした。


SynScan Proのバージョン

PC上のSynScan Proですが、最新より少し前の2.3.9と(私が持っている古い)1.9.20では明確な違いがありました。今回のSynScan Proの最新版で再びオンにしたというちょっと謎のPAEに関連するかもしれません。 SharpCapから接続してAZ-GTiを動かすことまでは両方とも問題なくできます。ですが、プレートソルブになると2.3.9でAZ-GTiにフィードバックしようとするところまでは行きますが、どうやってもAZ-GTiが反応しないことがありました。それを1.9.20にしたところ、何の問題もなく動くことが何度かありました。1.9.20の方がどうも安定に動くのは確かなようです。

このことは、私だけでなくほかの方も同様の指摘をされていたので、偶然とかではないと思います。最新のSynScan Proのリリースノートにあったように、PAEをバージョン2台のどこかでオフにして再び最新版でオンにしているというので、もしかしたらこれがバージョン1台とバージョン2台の安定性の違いに関係していたのかもしれません


プレートソルブトラブルの振る舞い

もう一つ気づいたことがあります。プレートソルブの最初の段階ですぐに「星が多すぎるのでは」とかのエラーが出て全く動かないときですが、どうも探索範囲が毎回15度程度で止まってしまいこのエラーが出ます。うまくいかない時は、SharpCap上で認識されている鏡筒の向きと、撮影した画像が実際に向いている向きとで大きな違いがあるときに、このエラーが出るようです。問題は、実際にはSynScan Pro上では目標天体の近くを向いていると認識されていても、SharpCapがSynScan Proとうまく接続できていなくて、SharpCap上では全然違う方向を向いていると認識された場合は、このエラーが出るようです。

このエラー、SharpCapのメニューからプレートソルブ実行時に選択できる2つのうちの2つめの「同期までしようとする」とすぐに出るのに、一つ目の「同期せずにプレートソルブだけ試す」と出ないこともあるので、どうも同期までしようとすると15度までの探索とかの制限がかかっているからのかもしれません。

その時やらかしたのですが、SynScan Proの緯度軽度情報を間違っていたり、前回の情報が残っていたりで鏡筒のホームポジションがずれていた場合など、そもそもSynScan Proの方が実際の向きと大きく乖離していると、同じ状況に陥ります。色々触っていると、意外に何度かSynScan Proの段階で間違っていることがありました。この場合、SharpCapといくらうまく接続できていてもダメみたいです。このことの自戒も含めて、今回の記事では注意事項にそのようなことを入れています。


まとめ

今回のSynScan Proのアップデートは、AZ-GTiのプレートソルブに関してかなりの改善がなされたように思います。実際、セレストロン系の赤道儀でこれまでプレートソルブで不安定だったことは一度もなかったので、やはりこれはSynScan系のソフト的な問題だった可能性が高いと思っています。

あと、ASCOMドライバーに関してはアップデートに気づかなくて一つ前の1.3.1を使い続けていましたが、特に不具合は感じませんでした。更新日がSynScan Proとも近いので、もしかしたらアップデートした方がより安定になる可能性もあるかと思います。

あと、これまでのプレートソルブに関するトラブルは、SkyWatcherの代理店であるシュミットさんの方にも何度か報告させていただいていて、今回SynScanおよびSynScan Proがアップデートされた際には、いち早くプレートソルブ関連が改善された可能性があるので試してみて欲しいとの連絡を受けました。私からの報告が実際にフィードバックされたかどうかはわからないのですが、現実にアプリが改善され、連絡までしてもらえたのはとてもうれしく、ショップとしての真摯な対応に感謝したいと思います。また、実際に最新バージョンを試してから記事にするまでに、少し時間がかかってしまったことをお詫びします。

さて、これでAZ-GTiだけでなく、トラバースでのプレートソルブまで実用レベルに達したようなので、カバンの中に余裕で入るミニマムセットでの電視観望をどんどんやっていきたいと思います。

本記事は、一連のSWAT+AZ-GTi=SWAgTi (「スワッティ」gは発音せず) の関連記事になります。




目的

今回は、
  1. SharpCapの極軸調整を一眼レフカメラでやれるかどうか?
  2. プレートソルブを一眼レフカメラでできるかどうか?
という2つのことに挑戦したいと思います。

元々の動機は「SWATユーザーには一眼レフカメラを使って撮影している人が多い」という、開発元のユニテックさんからの情報です。せっかくAZ-GTiで自動導入ができるので、一眼レフカメラでもプレートソルブができないかと考えたことが始まりです。ついでにプレートソルブができるなら極軸合わせもできるのではないかと考えました。

本当は、胎内星まつりのSWAgTiの実演でEOS 6Dで試すところを披露したかったのですが、そこまで全く辿り着かず、いつもやっているCMOSカメラでさえ極軸調整がうまくいかなかったので、その後自宅に帰ってからやっと試すことができたというわけです。胎内で期待されていた方がいましたら、申し訳ありませんでした。この記事で代替とさせてください。


セットアップ

実際のセットアップです。鏡筒はFS-60CBにマルチフラットナーで、鏡筒とフラットナーの間にサイトロンのDBP(Dual Band Pass)フィルターを入れています。そのため恒星が多少暗くなり、極軸調整でもプレートソルブでも影響があるかもしれません。それでも簡単のために撮影時の設定を崩したくないので、今回はフィルターを外したりせずにそのまま試すことにしました。一眼レフカメラとしては天体改造済みのEOS 6Dです。これらをSWAT+AZ-GTiのSWAgTiに載せます。SWAgTiはいつものようにGitzo製のバサルトのミニ三脚に載せます。

鏡筒とカメラである程度重くなっているので、ホームセンターで買った12mmのネジが切ってある金属棒をAZ-GTiにつけ、そこにウェイトをつけています。胎内でユニテックさんにデモを見せてもらったように、SWATの回転方向のバランスをきちんと取らないとSWATのギヤに大きな負担がかかることを学んだので、今後はウェイトを使って赤経方向のバランスを取ることを心がけるようになりました。CMOSカメラの時はウェイト側が重過ぎてバランスが取りきれていなかったのですが、一眼レフカメラになってちょどバランスが取れる範囲になりました。

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極軸合わせ

まずはSharpCapで6Dを認識させることからです。今のSharpCapはASCOM経由で一眼レフカメラのかなりの機種を接続することができます。



ポイントは、SharpCapで一眼レフ用のASCOMドライバーを立ち上げる際には、カメラをケーブルで接続をしない状態で行うか、ケーブルで接続をしてもカメラの電源を入れないことです。こうすることで、エラーなど出ずに下の画面のように設定画面でカメラの設定をすることができます。

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ISOですが、設定画面で設定しものが反映されないことがあるようなので、その場合は一度接続ケーブルを外し、カメラ本体側で操作できるようにしてから設定します。

設定が完了したらカメラを接続して、さらにカメラの電源を入れて、上記設定画面の「OK」ボタンを押します。「カシャーン」とシャッターが上がる音がして動作開始です。おそらく初めて繋ぐときはライブビューモードになっているので、自動的にSharpCapでカメラからの撮影画面が出ますが、これだとシャッターを切り続けてしまい落ち着かないので、すかさず画面右上の「ライブビュー」ボタンを押して以下の画面のようなスティルモードにしてシャッターを切り続けるのを止めます。

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露光時間を設定しますが、今回は16秒で試してみました。シャッター回数が増え過ぎず、一つの動作をあまり待たないくらいの時間という意味です。

ここからはSharpCap上で普通に極軸調整をします。どうやら極軸調整を選ぶと自動的にライブビューモードに切り替わるようです。なので、少なくともここに来るまでに適した露光時間にしておいてください。

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極軸合わせでは自動的にライブビューモードになるようです。

ここからは単に、一コマ一コマに16秒かかる極軸調整になるだけです。星の認識も問題なくできます。
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通常通りNextを押して途中SWAT側で赤経つまみを緩めて90度回転し、どれだけずれているか計算してもらいます。下の画面は2度くらいずれてますね。
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あとは三脚の足の伸び縮みと、三脚をずらしての水平方向の回転で調整します。今回は下のように、30秒角程度まで合わせこむことができました。ここまで合わせると、ずれは4分間かかっても0.3秒程度になるので、今回ターゲットとしている3分間程度の露光では極軸のずれによる星像の流れは完全に無視できるレベルです。おそらく機材のたわみによるズレの方が支配的になってくると思われます。

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でも露光時間が長いので合わせこむ回数にどうしても制限ができてしまいます。あまり突き詰めなくても、3分角程度まで合わすことができれば十分でしょう。これでも最大で4分間で3秒角程度ずれていく程度なので、SWATの精度と同等くらいになります。


極軸合わせのまとめですが、試してみた結果、露光時間が長いので少し時間はかかりますが、それ以外はCMOSカメラでの極軸合わせと何ら変わりはなく、一眼レフカメラでも十分に極軸を合わせられることがわかりました。

ちなみに、最初はASCOMドライバーでライブビューモードを選び、動画モードで極軸合わせができればと考えていたのですが、感度が全く足りませんでした。そもそも動画レベルなので露光時間が1秒より遥かに短くしか撮れていないことが原因です。1等星クラスの明るい星なら見えるかもしれませんが、ほとんどの星はSharpCapの画面上で見ることができません。

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ライブビューモードは使い物になりませんでした。 


プレートソル

極軸合わせでうまくいったので、気を良くして次はAZ-GTiでの初期アラインメントです。ここではちょっと冒険をしてAZ-GTiを使ったプレートソルブを試してみます。

SharpCapからAZ-GTiまでの接続ですが、まずAZ-GTiはSWATの上に乗っかっていて、PC上で立ち上げたSynScan Proから WiFiで接続されています。接続時には赤道儀モードを選んでいます。SharpCapからはASCOMドライバーを介してSynScan Proに繋げます。

この際気を付けることは、SharpCapとSynScan Proがきちんと接続されているか確認することです。きちんと接続されると、SharpCapのコントローラ部に今どちらの方向を向いているかの数字が表示され、その数字が時間とともに動いている様子が見えます。数字が動いていなかったり、0付近になっているとか実際に向いている方向と明らかに違う数字が出ている場合はうまく接続されていません。この場合は、PC上のSynScan Proを一旦閉じて、再度立ち上げてから繋ぐとうまく接続できるかと思います。うまくいかない場合は、PC上のSynScan Proの緯度経度情報を確かめてみてください。スマホやタブレットで繋いだときはGPSがあるので自動的に緯度経度情報は取得できますが、PCは通常GPSがないので緯度経度情報がうまく設定されていないかもしれません。

プレートソルブの設定はSharpCapの設定画面のプレートソルブタブから行います。

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私はASTAPとAll Sky Plate Solver(ASPS)を併用していますが、普段はほとんどASTAPです。まれにASTAPでうまく解決できなくてASPSだとうまくいくことがありますが、ASPSのほうが少し余分に時間がかかります。あと注意は、焦点距離をきちんと入れておくことでしょうか。自分の機材にあった焦点距離を大体でいいので入力しておきます。ここが大きくずれているとどうやってもプレートソルブはうまくいかないです。

設定画面には、ズレを計算した後にどうやってAZ-GTiに返すかですが、4つのオプションがあります。以前は2つ目のオプションのきちんと同期するところまでやっていたのですが、最後のAZ-GTiに返すところでうまく動いてくれないことも多くて、最近は4つ目のオプションの「マウント位置をオフセットして、天体を中央に配置する」を選ぶことが多くなりました。

とりあえず実際にプレートソルブをやってみましょう。まずはPC上のSynScan Proから初期アラインメントをします。赤道儀の極軸がかなり合っているので、ワンスターアラインメントで十分でしょう。適当に星を選びます。今回はアルタイルで試しました。一番最初に初期アラインメントで自動導入した後、下のように「マニュアルで中心に」と出ますので、この時にマニュアルで合わせる代わりに上で書いた「4つ目のオプションをえらんで」プレートソルブを使います。

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うまくいくと、赤道儀が見ていると思っている方向と、実際に今見ている画面から計算した方向のずれが角どで上の緑のバーのところに表示されます。
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その後、自動的にターゲットの星が真ん中に来ます。
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このようにターゲット星が真ん中に来て、赤道儀が見ていると思っている方向と、実際に今見ている方向が一致している状態で、SynScan Proの初期アラインメントを完了してください。これで同期が完了し、これ以降は、(SWATの水平出しに依りますが)自動導入でターゲット天体がほぼ正しい位置に来るはずです。


うまくいかない時:
実は今回、初期アラインメントのテストにあたり、一番最初アルタイルでなくベガを選びました。実際初期導入すると、すでにベガが画面の端の方に入ってきました。ところが真ん中に持っていこうとプレートソルブをかけますが、なぜか全然位置を解決できません。ASTAPもASPSも両方ともダメです。一眼レフカメラなので何か弊害があるかと思い、露光時間、ISO、その他各種設定を色々いじっても全くダメです。もしかしたら本当にダメなのか...と、諦めかけていたのですが、ターゲットをベガからアルタイルに変えたら、一発で解決しました。しかも露光時間など多少設定を変えても全部きちんと解決してくれます。もしプレートソルブがうまくいかない場合は、早々に諦めてべつのターゲットにしてみるというのも手なのかと思います。


まとめ

この日は月も明るく、平日だったので、プレートソルブのテストまでで、撮影は敢行しませんでした。極軸調整もプレートソルブも、SharpCapを一眼レフカメラで使う時特有の、ライブビューモードとスティルモードをきちんと意識して使い分けることで、CMOSカメラと比べてもほとんど遜色なく使うことができるとわかりました。この際、露光時間を16秒としたのですが、やはりこのくらいが適当かと思います。短かすぎると操作性はよくなりますが、シャッターを切りまくるのでメカニカルシャッターの寿命が気になりますし、長すぎると操作性が悪くなるかと思います。

次は実際の撮影をどうするかですが、月のない天気の良い日を待ちたいと思います。SharpCapで撮影すべきか、これまで通りBackYardEOSを使うべきか、それともソフトなど使わずにシャッターを切るだけにするか。まだちょっと迷っています。


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