ほしぞloveログ

天体観測始めました。

2023年07月

今回の目的はSWAgTi君を使って、ノータッチガイド撮影でディザーをすることです。

でも結論だけ言うと、現段階の環境でノータッチガイドで、ディーザーだけ追加というのは難しいと言うことがわかりました。どんなことを試したか、実際の撮影に即して書いておこうと思います。


たわみの影響

前回の記事で、極軸の精度について話しました。でも実際に撮影を始めてみると、合わせたはずの極軸精度よりも、一方向に大きく流れていってしまうことがわかりました。

原因の目処はついています。機材の撓み(たわみ)によるものです。ここで言う撓みとは、一般的なガイド撮影で問題となる「鏡筒とガイド鏡の相対的な撓み」のことではなく、「鏡筒、ガイド鏡、AZ-GTi、SWAT、三脚など、ありとあらゆるところで起きる撓み」のことで、影響は遥かに大きいです。

ガイド撮影の場合は、ガイド鏡で見た星の初期位置からのずれを赤道儀に返すことで、撮影鏡筒の向きがずれないよう補正します。それでも、ガイド鏡の固定が十分でなかったりすると、その撓みによってガイド鏡と撮影鏡筒の相対的なずれが発生して、撮影鏡筒での星像の流れに繋がります。でもこのズレは高々相対ズレに起因することなので、実用上はそこまで大きくはないです。それでも数時間とかに及ぶ長時間撮影では無視できない量になり、縞ノイズになることがあり、ディーザーを使い撮影途中で少し方向を変え、縞ノイズになる原因のホットピクセルやクールピクセルを散らしてやることにより、スタック画像ではほぼ影響がなくなります。

今回のノータッチガイドの場合の撓みは、撮影中に起きたどの場所で起きた機材の撓みもそのまま直結して星の流れになっていくので、遥かに影響が大きくなります。その大きさをざっくりですが見積もってみました。使ったのはSharpCapの曲軸調整機能です。

まず、使う機材を設置して、ガイド鏡を北に向けて、通常のように極軸調整をします。今回はFS-60CBの焦点距離が370mmと大して長くないことと、カメラがUranus-Cでそこそこセンサー面積が広いので、ガイド鏡を使わずに撮影鏡筒で直接極軸調整をしました。前回の記事でも書きましたが、微動雲台とか使わなくても、三脚の足の伸び縮みと水平方向の移動で、1分角程度の精度で合わせることは十分に可能です。調整の際に、赤道儀の赤経方向を90度程度傾けることで、カメラで見た製造の位置を比べ極軸方向とのずれを計算します。今回も下のように1分角以下程度、42秒角の精度で調整することができました。

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極軸調整が終わった直後は、最初の位置に比べて鏡筒が90度赤経方向に傾いた位置にあります。今回、この位置から再度極軸調整をスタートします。再びずれの計算のために90度赤経方向に回転し、元の位置に戻します。その結果が以下になります。

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本来、たわみなどなければ最初に調整した時と同じくらいの値の1分角以下程度が出なければなりません。今回は3分角程度のずれが出てしまっています。何度か試しましたが、毎回有意にこれくらいずれます。反対側に90度回転させて測定した場合は5分角位のズレになることもありました。これは90度赤経方向に回転した時の撓みの量相当のずれをそのまま表していることになるはずです。

というこうこは、撮影して赤経が回転していくにつれ、6時間で3分角から5分角はずれてしまうことになります。STAgTi君での撮影時間を仮に2時間としても、1-2分角位はずれてしまということです。前回計算したように、カメラの1ピクセルが1.6秒角に相当するので、40ピクセルから80ピクセルくらい、もし左右両方向の回転のずれを合わせると120ピクセルくらいずれる可能性があり、それくらいの長さの縞ノイズが出ても全くおかしくないことになります。

例えば2時間程度何もいじらずに撮影した実際の画像はライブスタック画像は以下のようになり、盛大な縞ノイズが出ていることがわかります。縦方向に典型的に120ピクセルくらいの縞ノイズになっていて、オーダー的には撓み起因のずれで縞ノイズになっていると考えておかしくなさそうです。

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この撓みがどこから来ているのか?三脚なのか、SWATの固定なのか、SWATとAZ-GTiの固定なのか、鏡筒の載せ方が悪いのか、はたまた全体で悪さをしているのか?今後調査して、弱いところが見つかったら補強していく方向になるかと思います。


撮影時のテクニック「DECモード」

ここで一つ、SWAgTiでの撮影し際してのテクニックです。ユニテックさんが前回の「ほしぞloveログ」の記事を紹介してくれた際に紹介してくれました。

SWATは電源ケーブルを繋ぐことですぐに動作体制に入りますが、その際赤経方向に一旦大きくズレ、やがて戻ってくるキックバックのようなことが起きます。元に戻るまで数十秒待つことになります。これを防ぐためには、あらかじめSWATの電源を入れておいて、その際に追尾モードを「DEC」に合わせておけば追尾をしないでそのまま止まってくれます。AZ-GTiの追尾をオフにする際に、この「DEC」を「STAR」にすれば、キックなしでスムーズに移行できるとのことです。

実際私も試してみましたが、撮影の際の画面を見る限りジャンプの様なものは全く見えずみ、スムーズに切り替えることが出来ました。


ディザーで縞ノイズを回避したい

今回の記事のメインの目的です。撮影する際にディザーを試してみます。

すでにSWATでの追尾にしてあり、AZ-GTiはSynScan ProとASCOM経由でSharpCapと接続されていますが追尾は止めてある状態から始めます。


1. SharpCap+AZ-GTi

SharpCapの設定でガイドのタブを選び、3つあるガイド検知方法のうちの一番下のASCOMを選びます。ちなみに1番上がphd2で、次がMGENです。3つ目を選ぶことで、ガイドソフトがなくてもディザーをすることができるようになります。

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SharpCap上でガイド(ガイドソフトが有り無しにかかわらず)をする場合はライブスタックモードにする必要があります。ここらへんがSharpCapがイマイチ撮影に対してはちょっと?なところなのですが、まあこういうコンセプトということでとりあえずはよしとしましょう。

さて、撮影開始という意味でライブスタックを始めますが、ここで問題発生です。なぜかAZ-GTiの自動恒星追尾が勝手にオンになるのです。なので、再度マニュアルでAZ-GTiの自動追尾をオフにして、ずれた位置を少し合わせ直して、ライブスタックをクリアして一から撮影を始めます。ディザーは3枚おきにする様に設定しました。SharpCapのライブスタック画面のガイドタブのステータスを見ていると、ディーザーをしようとしているように見えます。でも10枚ほど撮影してから画像をチェックしても、全然ディザーされてる様子が見えません。

いろいろ試してわかったことは、ライブスタックを始めるときに「ガイドをするように選択している」と、勝手にAZ-GTiの「自動追尾がオン」になること、それをマニュアルであえてオフにしたりして「自動追尾がオン」にならない限りディザー信号はAZ-GTi側に行かないことがわかりました。

言い換えると、SharpCapからSynScan Proに信号を送る限りでは、AZ-GTiの自動追尾をSWATに切り替えた状態で、ノータッチガイドでディザーをする方法はないということです。


2. PHD2を使い、カメラ赤道儀共にシミュレーター

気を取り直して、次の方法を考えます。返す先がSynScan Proでだめなら、他の場所にと考えPHD2を立ち上げました。この場合、SharpCapの設定でガイドのタブの3つあるガイド検知方法のうち、一番上のPHD2を選びます。

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ガイド鏡は使っていないので、PHD2は単なる擬似ガイダーとして使います。とりあえずはPHD2の設定でカメラも赤道儀もシミュレーターを選びます。SharpCapのディザー設定で、ディザーは3枚おきにするようにしました。3枚目になるとSharpCapはディザー信号をPHD2に送り、PHD2も反応していますが、AZ-GTiには信号が行かないようで、ディザー時にきちんと画角がずれている様子が全く確認できません。返す赤道儀がシミュレーターなので理解できる結果です。


2. PHD2を使い、カメラはシミュレーターだが、赤道儀はSynScan Proに設定

次に、カメラはシミュレーターで、赤道儀はSynScan Proを選び、実際にAZ-GTi信号を返すようにしてみます。確認ですが、ディザー信号だけ返したくて、SWATの精度を生かすためにガイド信号は返したくないです。

まず、PHD2の設定でガイド信号を返さないオプションを選んでみました。Advanced Setupの「guiding」タブの「Enable mount guide output」のチェックマークを外します。ですが、この状態だとSynScan Pro側に信号が全く行かないようで、ディザー信号も返すことができず、ディザー動作はしないようです。

次に、「Enable mount guide output」にチェックを入れ直して、ガイド信号を返すようにします。この場合も、ディザー信号のみ返してガイド信号は返したくないので、Agrを最初の0、MinMo(ズレがこの値を超えたら信号を赤道儀に返す)を最大の20、Hysを最小の10などとします。

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ダミーカメラでSynScan Proに返しているため、
何度かディザーをしたあとはターゲット星が全然ずれてしまいます。

これは短時間では一見うまくいきます。3枚撮影するごとにディザー信号のみSynScan Proに返すようにしたので、3枚おきにディザー信号がAZ-Gtiまで行き、実際に指定したピクセル(上の設定だと50ピクセル)分だけ動きます。目で見てその動きがリアルタイムでわかるので、やっとうまくいったと喜んでいました。問題はそのまま長時間撮影が続いた場合です。疑似カメラのターゲット星からのズレがまだ小さい場合はいいのですが、そのズレが何度かディーザーを繰り返しある程度大きくなると、最大時間まで待って(上のSharpCapの設定だと20秒間)再び3分露光が始まります。さらに、あまりにターゲット星とのズレが大きくなると、PHD2の方でガイドが始まってしまい、これは実際にSynScan Proに信号を返していくので、その後どんどんズレが大きくなり、カメラは疑似カメラのままでフィードバックされたことを検知しないので収束することなく、最後破綻します。

あと、この過程で気づいた最大の問題は、AZ-GTiの精度がSWATと比べると悪いために、ディザー信号をAZ-GTiに返すと大きく揺れ過ぎてしまうことです。そのため、十分な緩和時間を取る必要があるのですが、上の20秒とかでは短すぎるようで、分単位の緩和時間が必要そうな様子です。


今後どうすべきか

今回はここで詰みとなりました。PHD2のパラメータはもう少し探れば何か見つかるかもしれませんが、大原則でディザーだけ返すというのはダメそうでした。その後、2軸ガイドとかも試したのですが、これはまた機会があったら記事にします。

ここまで試した上で、必要なことを考えてみます。とにかく大事なことは、ガイド信号を返さずに、ディザー信号だけ返すようなソフト側の対応です。今のところ一番見込みがあるのが、ASCOM経由でSynScan Proに信号を送る方法です。SynScan Proの恒星時追尾だけオフにして、SharpCapからのディザー信号をSynScan Proが受け取って実際にAZ-GTiを動かすことですが、上述のように恒星追尾をオフにするとディザー信号は伝わらないようで、今のところこれはできません。それでもSharpCapの矢印ボタンには反応するので、この矢印ボタン相当のところに返すことができれば、今回の目的は達成できそうです。

PHD2は触ってみた限り、そもそも外部から来た信号とPHD2から出す信号の区別がつかないようで、ディザー信号だけAZ-GTiに出すというのは根本的に難しいようです。

それでも原理的にソフト側で解決できる問題ではあるので、今のところはいつか解決するのを期待することとします。


せっかくなので仕上げてみる

ディザーは諦めたのですが、3日ほどに渡ってM27を色々試しながら撮り溜めた画像があり、それぞれバラバラの位置で撮影しているので、ある意味ナチュラルディザー状態になっています。せっかくなので仕上げてみます。


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  • 撮影日: 2023年7月17日22時18分-23時16分、7月22日1時40分-2時6分、7月22日21時55分-23時39分
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: TAKAHASHI FS-60CB+マルチフラットナー(f370mm、F6.2)
  • フィルター: サイトロン Dual Band Pass (DBP)
  • 赤道儀: SWAT+AZ-GTi
  • カメラ: Player One Uranus-C(常温)
  • ガイド: なし
  • 撮影: SharpCap、bin1、Gain 200、露光時間3分x57で総露光時間2時間51分
  • Dark: Gain 200、露光時間3分、常温、64枚
  • Flat, Darkflat, Gain200、0.05秒、64枚
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC

ある程度長時間連続で位置をずらさずに撮影した分の縞ノイズは多少なりとも出てしまいますが、画像処理でなんとかできるレベルです。今回はM27の周りの淡い羽部分が少し見え始めるくらいまで出すことはできました。

今回の撮影は富山の住宅街での自宅撮影なので光害はそこそこあります。これ以上出したい場合は、もっと鋭いワンショットナローバンドフィルターを使う、ナローバンドとモノクロカメラで撮影する、口径を大きくする、露光時間を伸ばすなどの工夫が必要になってくると思います。また、ダークノイズに関しては非冷却カメラはどうしても不利で、特に夏場の暑い夜はかなりのノイズが出ていることが1枚ショットの画像を見るとよくわかります。冷却のためのケーブルは増えてしまいお気軽撮影からは少し遠くなりますが、夏場で淡い天体を撮影する場合は冷却カメラの恩恵は無視できないでしょう。

今のところオートでディザーをする方法は見つかっていないので、縞ノイズがどうしても気になる場合は、少し面倒ですが、適時LiveStackの露光を一時停止して、マニュアルでランダムに位置を少しずらしてやれば、気にならないレベルに持ってくることができると思います。

SWATとAZ-GTiの組み合わせのSWAgTiというお気楽撮影に、少しだけマニュアルディザーをするという工夫を加えるだけで、ここくらいまでは出すことができることがわかってきました。


まとめ

結論としては、今のところノータッチガイドで撮影すると、どうしても縞ノイズが出てしまいます。ディザーはソフト側の対応が必要そうです。あと、AZ-GTiとの精度差があるので、十分な緩和時間をとることです。

マニュアルディザーである程度回避できるのですが、何かもっと簡単な方法はないのか?どうなるSWAgTi...



寒冷地でのSWAT

ユニテックさんとやりとりしていて、また面白い情報を聞くことができました。もしかしたら興味があるかともいるかと思いますので、共有します。SWATの寒冷地での使用についてで、個別で対応してくれるかもと言うことです。以下、ユニテックさんのメールから抜粋です。

「ちなみにSWAT用のグリスは-50℃に対応したものを使っています。ただし-50℃対応はグリスメーカーの仕様書での値でSWATの動作を保証しているわけではないです(試したことがない)。公称してませんが、実用最低温度は-10℃程度(自分で試した値)としています(-20℃で動いたという報告はあります)。

ただしボールベアリングは汎用のシールド型なので、-20℃くらいが限界と思います。寒冷地仕様の場合は、開放型のボールベアリングにして、上の-50℃対応のグリスにします。金属の収縮率の違いもあるので、極低温動作を保証してトラブルになると大変なので…。

寒冷地仕様は各部クリアランスをわずかに大きくつける(熱収縮を考慮して)ので、遊びが大きくなるデメリットもあり、個別に希望した方のみの対応です。こういった小回りが効くのは手作りの弱小メーカーだからですね。(笑)」

とのことです。もし寒冷地で使うことを想定している場合は、個別に相談してみるのがいいのかと思います。





 
 
 
 
 


前回かなり反響のあったSWAT+AZ-GTiの組み合わせですが、その後さらに試してみました。今回は特に精度について少し議論します。あと、名前をつけてあげました。


命名

せっかくなのでこのSWATとAZ-GTiの組み合わせに名前を付けてあげようかと思います。

いろいろ考えたのですが、SWAT+AZ-GTiなので「SWAgTi」というのはどうでしょうか?ただしgは発音せず「スワッティ」と呼びます。

ユニテックの方もカッコイイと言ってくださいました。メーカーのお墨付き(?)ももらえたということで、これからはこの組み合わせ、「SWAgTi」と呼ぶことにしたいと思います。よろしくお願いします。


鏡筒をFS-60CB+マルチフラットナーに

実用度を上げるために、もう少し焦点距離を伸ばすことを考えました。具体的には鏡筒を前回の焦点距離135mmのFMA135から変更して、焦点距離370mmのFS-60CB+マルチフラットナーにしてみました。カメラはお手軽にということでそのままのUranus-Cで冷却は無しです。暑い夏なので、ダークノイズの処理をどうするかちょっと迷っています。この画角なら、選択肢となる天体もかなり増えるかと思います。焦点距離が長くなるので、ノータッチガイドだとより精度が要求されます。SWATがどこまで行けるのか?テストも兼ねています。

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鏡筒の変更に伴い、まだ大丈夫かと思うのですが一応ウェイトを付けました。どうしても鏡筒側が重たくなってしまって、回転ネジなどを緩めた際にガクンと落ちてしまうことを避ける意味です。ただし、手持ちの最軽のウェイトでも重すぎるので、ウェイト側に荷重がかかっていますが、それでも回転して鏡筒側がストンと落ちるよりはマシでしょう。

実はこの状態で最初に試した時、カメラを見たら星がグワングワン揺れていました。鏡筒を重くしただけでこれだけ揺れるのか???と一瞬思ったのですが、いろいろ触ってみるとSWATとAZ-GTiのねじ込みが全然十分ではありませんでした。しっかり締め込むと、FS-60CB程度の重量ではピクッともしないくらい、多少の風があろうが、揺れは全く気にならなくなりました。もし自分で試したセットアップで揺れが気になるようなら、各箇所のねじ込みをしっかり確認してみてください。

この状態でどのくらいの精度が必要なのか少し議論してみます。


必要な極軸精度

SWATの高精度の追尾性能を活かしてノータッチガイド撮影で露光時間を伸ばしたい場合、重要になるのが極軸調整の精度です。どれくらいの精度で合わせると、どれくらいドリフトで星像が流れる可能性があるのかというのは、以前簡単に評価したことがあって、



ざっくりですが「1分角の精度で極軸を合わせると、4分間で1秒角、星が流れる」ということです。これは星が最も早く動く、天の赤道上の星像での評価なので、最大これくらい流れると言う意味で、天の赤道から離れるとこのずれは小さくなっていきます。

例えば、前回のFMA135とUranus-Cだと焦点距離135mmとセンサーが11.2mm×6.3mmで3856×2180なので、このページなどを利用して計算すると



水平方向では約4.79度角(=17200秒角)の視野となり、横方向の3856ピクセルで割ると1ピクセルあたり約4.5秒角となります。これだと天の赤道上でも(4分x4.5秒角/1秒角=)18分露光くらいしてやっと1ピクセル以上流れ始めるので、相当余裕があることになります。

今回のFS-60CB+マルチフラットナーだと焦点距離が370mmになるので、水平方向で1.73度角の視野となり、1ピクセルあたり約1.6秒角となります。これでも天の赤道上で(4分x1.6秒角/1秒角=)6.4分くらいして1ピクセルのずれなので、前回試した3分間露光としても倍以上余裕があります。最も星像が流れていく天の赤道儀上でこれなので、逆に言うと今回は2分角くらいの精度で極軸をあわせれば十分と言うことになります。

ただ、何の手段もなく適当にやって2分角の精度はさすがに出ないので、私はSharpCapの極軸合わせ機能を使っています。この機能、SharpCapのかなり初期の頃から搭載されていますが、現在では有料版でしか使うことができません。もう8年位前の記事になりますが、詳しくはこちらを参照してください。



相当簡単に極軸の精度が出るので、この機能だけでもSharpCapを有料版にしてもいいくらいかと思います。

問題は、今回のセットアップのようにSWATの下に微動雲台がない場合です。以前井戸端さんの微動自由雲台を評価した時の様に、微動調整機構があればいいのですが、今回は三脚の足の伸び縮みと、三脚の足をずらして水平回転を調節しています。そこそこの微調整になるので、少しテクニックが必要ですが、なれれば1分角くらいまでなら何とかなります。あと、1分角くらいの精度になってくると、大気密度によるズレが問題になってくるので、SharpCapの環境設定の極軸設定タブのところで、きちんと緯度経度を設定して大気補正オプションをオンにするようにしてください。


SWATの精度

1ピクセルあたりの秒角が、SWATの精度を超えなければ、原理的には露光時間に制限はなくなります。例えば今回使っているSWAT350 V-spec PremiumではPECを使うとピリオディックモーションが+/-2.8秒程度ということなので、先ほど計算したFMA135の場合1ピクセルあたり 4.5秒角なので、SWATで発生する誤差は1ピクセルと同等か僅かに大きいくらいのレベルになります。FS-60CB+マルチフラットナーでは1ピクセルあたり 1.6秒角なので、SWAT起因の揺れが3ピクセル程度になります。

SWATの精度が、1ピクセルあたりの秒角を超えてしまうと、星像に歪みが出る可能性が出てきます。ピリオディックエラーは理想的にはSin波で表されるので、振幅が大きいところでは変化は小さく、振幅が小さいところでは変化は大きいです。そのためピリオディックモーションの周期よりも露光時間が長い場合にはピリオディックモーションの振幅が1ピクセルを超えると星像は伸びますが、短い場合には星像の伸び幅は、どのタイミングで撮影したかに依ってきます。撮影した画像が使えるか、使えないかはの歩留まりりつの評価は天リフさんのSA-GTi赤道儀の記事の最後の方での説明



が秀逸ですので、説明はそちらに譲りたいと思います。

現実的には、2ピクセルくらいまでの揺れは許容範囲であること、何よりシンチレーションや風の揺れなどで星像が乱されることも多く、SWAT単体での揺れがその範囲内に収まる場合には、SWATの精度は問題になりません。今回の撮影でも星像を見る限り、3分露光では370mmの焦点距離でも歩留まり率は100%でした。もちろん許容範囲は人にも寄りますが、ピリオディックモーションや特定方向に軟かくて揺れが出る時は一方向に揺れるのでスタックしても目立ちますが、シンチレーションなどの場合は星像が楕円になったとしても撮影ごとにランダムな方向になっているので、スタックすると目立ちにくかったりもします。


実際の星像

実際に3分露光と5分露光で比較してみます。

3分露光だと風とかの突発的な現象が起きない限り、星像の伸びはほぼないと言っていいでしょう。目で見ている限り、ピリオディックモーションによる星像の伸び縮みは確認できませんでした。突発的な伸び縮みは見られましたが、これはSWATの精度とは別で、ランダムな方向に出てくるので、スタックしてしまうとある程度平均化されるので、あまり目立つことはありません。

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3分露光の1枚撮り。

5分露光だと、少し星像が伸びてしまう画像が出てきます。下の画像はピリオディックモーションと思われる縦方向に周期的に伸び縮みする揺れの一番大きな振幅の時の典型的なものです。縦方向に少し伸びていることがわかります。

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実際にはこれ以上のランダムな方向の揺れが(5分露光の時にも、3分露光の時にも)存在するのですが、ピリオディックモーションは伸びる方向は決まっているので、スタックしても同じ方向の伸びが目立つことになります。

300秒露光で16枚撮影して、上と同程度の星像のものが4枚くらいありました。ちなみに、その4枚も含めて16枚をスタックしたものが以下になります。

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この程度だと他の上手く撮れているものと混ざるので結果としてはほとんど目立たないですが、必要によっては間引いた方が星像が丸に近くなります。よく見るとやはり若干縦方向に伸びてしまっていますでしょうか?これくらいなので、気になる人は気になるかもれませんが、実用上はほぼ問題がないくらいかと思います。


まとめ

まとめると、ノータッチガイドだと、370mmの焦点距離と2.9μmのピクセルサイズで、3分露光くらいだと十分に実用的、5分露光だとピリオディックモーションが影響し始めてくるといったところです。もちろん上で議論したように、焦点距離を短くしたり、ピクセルサイズの大きいカメラを使うなどで露光時間を改善できる可能性があります。

すでに記事がかなり長くなっているので、とりあえず、今回は実験的なことはここまでとします。次回は実際に長時間撮影してみてです。


あとおまけで、開発側のユニテックさんとやりとりした際、かなり面白い話を聞いたので、少し紹介します。

長期間の安定性にも有利とのこと

今回のSWAT+AZ-GTiの組み合わせをユニテックの方にお知らせしたところ、かなり興味を持って頂き、ユニテックのブログの方で紹介していただきました。



とても面白いと言うことで、胎内の星まつりでこのセットアップを展示したいとの提案がありました。どんどん盛り上がりの方向にいきそうで、期待してしまいます。その際のメールのやりとりの中で、いくつか非常に興味深い話を伺うことができました。他メーカーなどの話もあったので、そこらへんのところはうまくぼかしつつ、一般に有益かと思われる話を書いておこうと思います。

ユニテックでも以前2軸の制御を考えたそうです。2020年頃に実際SWATを2つ使い、2軸で制御するモデルが発表されました。いくつかテスト記事はありますが、今のホームページに「赤緯モード搭載」とあるのがおそらくその機能かと思うのですが、追尾スイッチを「DEC」モードに合わせることで追尾を止めることことで実現するものと思われます。あまりあらわに2軸とは書いてなくて、コスト的には不利になることは否めないのかと思います。

今回のアイデアで最も評価してもらえたのが、高速での粗動をAZ-GTiに、低速での微動をSWATに「分けた」ことでした。特に長期の安定性についてコメントして頂いたのですが、この視点は私は完全に欠落していたところです。メールからの一部引用になりますが紹介します。

「というのは、一つのウォームギアで超高精度の恒星時運転と高速にギュインギュイン回して自動導入を兼ねるのは高精度の維持という観点からかなり不安なんです。赤道儀の場合、数十倍速程度の低速運転だけなら長期間心配ないですが、自動導入対応の高速運転を長時間させると最悪焼き付きを起こすことも考えられなくはないです。SWATでも現構造のまま1万倍速で長時間試験したり、かなり無茶(実際の使い方なら100年分くらい?)な実験をしましたが、最終的に焼き付くことはありませんでした。ただウォームの歯面とメタル軸受けの摺動部に潤滑不足の摩耗が生じて歯面が傷だらけで、ハードな使用には何からの対策は必要でした。

解決策として、ウォームギアを2段に配置し、高精度追尾用と粗動用を分けようかというアイデアがあったのですが、大きく、しかも重くなり、それぞれに適したギアと駆動系が2セット必要になるなど、高価になりすぎて現実的ではないと即ボツになりました。

今回のAZ-GTi載せは、粗動と微動を分けることで、見事に上記の問題を解決してしまいました。
しかもAZ-GTiの高機能も満喫できます。私もやってみたくなりました。(笑)」

とのことです。長期間で考えると、ピリオディックモーションの補正に関しても影響があるかもとのことでしたが、こういったことも解決でき製品寿命も伸びるのではということです。メーカーの方からここまで言ってもらえるのは感無量です。




 
 
 
 
 

今年もサイトロンさんからのお誘いを受け、志賀高原においてセミナーを開くことができました。元々のテーマは電視観望なのですが、一般の方や天文初心者に向けて少し電視観望色を薄めて、一般的な星の話から入っていきます。さてさて、うまくいったのでしょうか?


今年も志賀高原に向けて出発

2023年7月16日、朝6時前から起きて志賀高原に向け出発です。セミナーの準備も前日23時頃には完了し、機材や1泊分の旅行の準備もほぼ前日にすませておいたので、朝はそこまでバタバタしません。それでも一旦車を走らせてから忘れ物に気づいて、一度自宅に戻ったりしたので、実質的には出発はほぼ午前7時。インター手前のコンビニで朝ごはんのおにぎりなど買い込み、富山インターへ。

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富山から志賀高原は距離にしても200kmを切っていて、思ったより近いです。北陸道から、上越JCTで上信越道に入り、中野インターで降りると後は下道を25kmほど。クネクネのすごい上り坂をずっと上がっていき、志賀高原エリアに入ります。途中から感じるのですが、気温が目に見えて下がっていきます。中野の市街地で33℃位だった温度が、高原エリアでは24℃くらいになり、10℃近く一気に下がりました。車の窓を開けると風が気持ちよく入ってきます。

志賀高原エリアの南部のそこそこ奥の方に今回の目的地の熊の湯があります。運転は比較的のんびりでしたが、それでも午前10時頃には到着しました。早速会場を見に行くと、今回の天空フェスの宣伝用のライブ中継をしているところでした。

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セミナーの宣伝もしてくれていたので、私も少しだけ出演しました。天空フェスは前日の土曜と、今日の日曜の二日間の開催になります。宿泊は近くの熊の湯ホテルがべんりですが、キャンプでテント泊の方もたくさんいます。

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夜に星を見るのならば、テントの方がいいかもしれません。昨晩は天リフ編集長のトークがあり、残念ながら実演の時と、ライブ中継の時は晴れなかったようですが、その後、雲間から天の川も見えたそうです。

この日は午前は青空でしたが、時間によっては曇りがちにもなってきました。地元のスタッフの方によると、夕方までくらいに一度雨が降って、その後晴れるのではとのことです。そういえば去年もそんな感じで夜は晴れてくれました。今年も夜は晴れてくれるといいのですが。


セミナー開始まで

セミナーの開始時間までは、このブログを書いたり、セミナースライドの最終調整をしたり、昼食を取ったりして過ごしました。その間、妻はハイキングに出かけるというので、少し先の木戸池まで車で送って行きました。妻は去年の山歩きで張り切って歩きすぎてしまい、脱水症状っぽくなってしまいました。せっかくあえて頼んだのホテルの夕食にほとんど箸をつけられなかったので、今年はあまり無理をしないで、平な湿地帯を歩く程度にしておくと言っていました。(私は歩いてないのですが)志賀高原はお散歩コースもたくさんあり、気軽にハイキングのように楽しめるのがいいみたいです。メインの道路の脇の小道の様なところもあり、疲れたらバスもそこそこ走っているので、それに乗って帰るとかもできるようです。

私の方はというと、午後に少し時間があったので熊の湯と反対側の、北側の焼額山まで車で行ってみました。途中の山の駅くらいまでは湿地というイメージですが、北の方は普通の山のようなイメージでした。途中の一ノ瀬あたりはスキー場が開けているのも見え、たくさんのホテルが並んでいました。学生の頃、スキーで志賀高原にも来たことがあるのですが、この辺りに泊まっていたはずです。さらに焼額山まで足を伸ばすと、その当時高くて泊まることができなかった志賀プリンスホテルは未だ健在。ホテルだけでもが3つの建物があって、真ん中のホテルからは直結でゴンドラが出てるなど、リゾートっぷりは圧巻です。ただし夏の間はホテル全体が休みのようでした。

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ちょっとしたドライブなので、ほぼそのままトンボ帰りです。帰りに山の駅でハイキングに出かけていた妻をピックアップ。送っていった木戸池から、山の駅まで2時間ほど歩いたそうです。湿地帯がすごく綺麗だったとのことですが、メインの道路が近くて車やバイクの音がうるさかったのが残念だったようです。泊まりで朝早く起きて、車がまだあまり走っていない涼しいうちに歩けばいいのではと言っていました。

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山の駅ではゴンドラが動いていて、その先の山の中腹のホテルなどが遠くに見えます。志賀高原の規模の大きさが分かります。

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昔のケーブルカーが展示されています。

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ゴンドラが向こうの山まで続いています。


再び会場にて準備

熊の湯ホテルに戻ってきてチェックインをすまし、少し時間があったので仮眠をとります。15時45分くらいに会場に移動しました。セミナー開始は16時なので、それまでに会場のチェックと、プロジェクターの接続テスト、機材の持ち込みなど準備を済ませます。

すでにイベントしては始まっていて、望遠鏡製作などの体験コーナーなどお客さんも入っていました。

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望遠鏡製作コーナー。

今写真を見て気づきました。ここに写っている子ですが、なんと親子3人で私のセミナーにも参加してくれていました。しかも実演も最後までいてくれて、望遠鏡操作をものすごく楽しんでいる様でした。実演の時の様子は後ほど書いています。

他にもいくつかブースが出ていました。

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コーヒーショップ。
妻がおいしかったと言ってました。

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キラキラペン作りができるようです。

シュミットブースではセミナーで興味を持ってもらった商品をそのまま購入することもできます。セミナーで星座ビノの話をしたので、そのままStella Scanを購入して、暗くなってからの実演時に、私の手持ちの星座ビノと比較している方もいらっしゃいました。

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セミナー開始

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会場は満席で、熱気にあふれていました。

セミナーは予約の段階で満席だったそうです。当日キャンセルが出たようで、あせとあみのふぇんさんが飛び入りで参加できたようで、その様子をブログにまとめてくれています。

今回はセミナー参加料が実質400円と昨年よりかなり安くなっているので、もしかしたら子供も来るかもと思い、初心者もできるだけ楽しめるようにという思いがありました。セミナーはもともと電視観望がテーマだったのですが、タイトルにあえて「電視観望」の文字は入れませんでした。その代わりに普通に夜空を見上げることから話を始めました。さらに途中で、クイズを入れています。クイズといってもいつも観望会で出すようなものです。
  1. 星が動くのはなぜ?
  2. 太陽はどちらから昇ってどちらに沈む?
  3. では月はどちらから昇ってどちらに沈む?
とかです。一番聞きたいのは3つ目で、当然月も東から昇って西に沈むのですが、観望会とかで聞くと大人も含めてほとんど答えることができません。今回のセミナーでは小学5年生の男の子が参加していましたが、どうして月だとわからないか聞いてみたら、期待通りの答えで「習ってないから」とのこと。

セミナーの中でも話しましたが、せっかく宇宙に興味を持ったのなら、できれば自分で色々考えて欲しいのです。星が動くのは地球が回っているからで、太陽も自分が動いているわけでなく地球が回っているから動くわけで、東から昇ってきます。ここまでわかっていたら、月だろうと、ベガだろうと、アルタイルだろうと東から昇って、西に沈むことは考えたらあまりに当たり前のこととなるはずです。でもこの当たり前のことにたどり着く人は意外に少なく、今回もすぐにわかると手を上げてくれた人は4−5人で、わからないと手を上げてくれた方の方がはるかに多かったです。

目で星を見る話、星座ビノを使うと星座がよく見える話、天の川がどう見えるかという話など、途中いくつかクイズなどを織り交ぜて話しました。その後、星雲や星団、銀河を目で望遠鏡で見るととどう見えるか、電視観望だとどう見えるかなど、いつもの話に持っていきました。1時間半フルで話したので、質問時間がほとんどなくなってしまいましたが、その後質問がある人は個別に受け答えることにして、一旦は解散。その場でいくつかの質問にも答え、実演でもいろいろ聞いてくださいと伝え、私も片付けを終えて食事に向かいます。次は19時半から実演です。

食事はお弁当が出ていたのでそれを受け取り、そういえば妻がホテルの豪華な夕食を取っていることを思い出し、お裾分けをもらいにホテルの食堂へ。「弁当」+「妻が食べきれないおかず」で豪華な夕食となりました。


電視観望実演

19時過ぎには会場に戻り、建物のすぐ前で実演の準備をします。今回は機材がよく見えるよう、多少高さが欲しかったので、トラバースの小さいセットアップよりも、AZ-GTiにして、三脚の足も十分に伸ばしました。鏡筒はFMA135、カメラはUranus-Cでいつもの組み合わせですが、当日のセミナーで紹介したサイトロン開発中の0.72倍のレデューサを初めて使ってみることにしました。なので焦点距離は100mmほどになります。このセミナー結構すごいらしいので、またじっくり試してブログで取り上げたいと思います。

さて天気ですが、午前中の晴れ渡った空とは打って変わり、実演時にはどうも会場自身が雲の中に入ってしまったようで、霧のようは状態です。空も全面曇っているようで星が全く見えないので、せめて電視観望の操作だけでもと、SharpCapを立ち上げて説明することにしました。今回はAC電源バッテリーに24インチのモニターをHDMIでつないで反対側に向けて正面に置き、対面で操作がわかるようにしました。20人くらいは常時いたと思いますが、結構な人数だったのでこの対面スタイルで正解でした。モニターが大きいので少し荷物は増えますが、今後この方式にしようと思います。この対面式、操作を見るのにはかなり好評だったようです。どうせ星は見えなくて時間はあるので、質問も気軽にしてもらえますし、座学だけではわかりにくいところを、実操作で見ると随分とよくわかると言われました。

今回、子供が来た時のためにSCORPTECHの屈折望遠鏡を置いておきました。望遠鏡製作をして、セミナーにも参加してくれた小学5年生の子がいたのですが、両親に話を聞くと今日のセミナーもほんの興味で申し込んだとのことで、少し難しかったとのこと。流石に申し訳ないので、せめて望遠鏡でも触ってもらおうと思いました。ただ電視観望操作で忙しかったので、「どなたか詳しい人が教えてもらえれば」と聞いてみたら、大鹿村から来てくれていたKさんがボランティアで手を挙げてくださいました。「いつもこんなことをやっているから」とのことで、頼もしいお言葉です。

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Kさんのおかけでしょうか、この男の子望遠鏡を自分で操作することが随分と気に入ったみたいで、そのうち星が見えてくると「うわーっ」とか、この子の叫び声が聞こえてきます。実演時間の最後までずーっと望遠鏡を触っていました。

あと、Kさんにはお土産に地元のブルーベリーもいただきました。家に帰ってから家族でいただきましたが、とてもおいしかったです。今回は、本当にありがとうございました。

さて、電視観望ですが、途中から星が少しづつ見え始め、いくつかの天体を見せることがきました。今回はいつものようにワンスターアラインメントで導入したのですが、セミナーでも話した通りAZ-GTiでの水平を結構真面目に出したので、北から南までほぼ全ての導入で一発でほとんど真ん中まで導入出来ました。レデューサでいつもより画角が大きくなっていたことも影響していたかもしれません。

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全体に四隅が流れてますが、これはセミナーで見せたレデューサーを入れっぱなしで、バックフォーカスを全く合わせずに使ってしまったからです。バックフォーカスを合わせると、これまでの汎用レデューサーと比べてほとんど星像が乱れないと聞いているので、後できちんと検証したいと思います。

サイトロンのスタッフの方もプロジェクターと大型スクリーンを使い、電視観望で天体を映し出していて大迫力でした。

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星が見え始めてから星座ビノもいくつか出して、見比べなどしてもらいました。シュミットのブースで2倍のStellaScanを購入した方は、私がもっていた3倍のものと比較していて、見え方の違いをよく理解され、かなり楽しんでいる様でした。

私は大抵「星座の形をあまり覚えていない初心者は2倍がよくて、星座の形がある程度頭の中に入っている人は3倍がいい」と言っています。でも「2台買ってもそこまで大した値段にはならず、むしろ見比べができるとか、他の人と一緒に見ることができるなど、2台もっていることでより楽しむこともできるので、もし予算的に余裕があるなら2台持つといい」と言っています。

この方も2倍と3倍の比較の楽しさがわかったみたいなので、いずれ3倍も買うことになるのではないでしょうか。

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今年は残念ながらメインイベントのリフトが機材の不具合のため動かなかったので、盛り上がるかどうか心配していました。セミナーも、電視観望実演も含めて、かなりの人数に参加して頂き、質問も頻繁にあり、十分盛り上がって大成功だったのかと思います。

あと天文あるあるですが、実演が終わってから片付けの途中空を見上げると晴れ渡っていて、天の川もしっかりと見えていました。あと、1時間か、せめて30分でも早かったら...。


エピローグ

片付けが終わり、ホテルの部屋に戻り「うまくいったよ!」と言いながら少し妻と話したのですが、こっそり来て見ていたそうです。私が忙しそうにしたので声をかけなかったそうですが、場内会場のほうでコーヒーを飲みながら、中から外の様子を見ていたとのこと。21時頃までいたみたいで、途中から星も少し見えたと言っていたので、私は全く気づかなかったのですが、多分本当に来ていたのでしょう。

その後、名物のものすごく味のある温泉に入ったあと、昨年同様夜の反省会です。天リフ編集長とスタッフの一部の方と一緒に飲み会が始まりました。天文ネタの業界話や裏話で盛り上がる盛り上がる。結局午前2時頃まで飲んでいて、次の日の運転に影響あるからと、やっと解散となりました。あまりこういう機会はないので、とても楽しかったです。

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次の日は7時過ぎには目が覚めて、ホテルの朝食に。バイキング形式で朝からがっつり食べました。食べ物を取るときに、手袋を使わずにプラスチックの箸を一人一人使うのはいいアイデアだと思いました。食べ物をとったらすぐに箸を回収しています。箸なら多少たくさんあっても洗うことはそこまで大変でないと思います。実際に食べるときは割り箸なので、使い回しとかにならず衛生的です。

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朝からガッツリ食べました。

朝、ホテルを出発するときにサイトロンのブラックパンダさんにお会いすることができました。土曜には会場にいたとのことですが、日曜の朝に用事があって移動してしまったとのことでした。戻ってくるかもとは聞いていたのですが、ギリギリお会いして直接話せたのでよかったです。

帰り道、下道で白馬経由で糸魚川まで抜けてから富山に帰ろうと思い、中野ICでは高速に乗らずに通り越しました。目的は、昔行ったリゾートホテルの物凄くおいしかったレストランのランチです。でも途中電話で聞いたらランチ営業がなくなってしまったということがわかり、しかも結構渋滞で二人とも意気消沈。結局須佐長野東ICで高速に戻り、一瞬で中野ICを通過し、14時頃には自宅に到着しました。とても充実していた 3連休でしたが、セミナーが連続してあったりして疲れてしまっていたようです。少し寝ようと思ったら、夜までぐっすり寝てしまいました。


一般の人(妻)の意見

最後に、妻の感想です。星にはほとんど興味がない一般の人の意見なので、相変わらずズケズケいいますが、結構的を得ていることもあります。
  • 全般的には去年よりかなりよくなっていた。
  • スクリーンが大きいので、遠くから見ても何をやっているかわかっていい。
  • キャンプ場があるので、キャンプグッズ販売などがあってもいいのでは?ハンモックはよかった。
  • コーヒーが美味しかった。
  • 外のトーチはよかった。
  • 去年来たときは、夏休みだったが金曜で平日だったので人が少なかった。今回は土曜で休日なので人がたくさん来ていてよかった。
  • 場内会場は人がパラパラと居たくらいだったので、少し寂しかった。
  • アンケートを取るといい。答えたらシールとか配る。飛騨コスモスで配っているカード(写真)とかでもいい。
とのことでした。

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スウェーデントーチ作りの様子。


多分ここからは昨年行った小海のイメージかと思うのですが、
  • 地元のアクセサリとかのショップをもっと呼ぶといいかも。
  • 地元のハンドメイドの作家とかも呼ぶといいかも。
  • 地元の名産をお土産でおいてもいい。
  • 星に因んだワークショップが(今回もあったが)もっとあるといい。
  • フリーマーケットみたいにして参加者を増やしたらどうか?
  • 占星占い師とかいると面白いかも。
  • 食べ物、キッチンカー
夜以外だと
  • ハイキングツアーや朝の野鳥観察とかがあるなら参加してみたい。
  • 太陽を見るのはどうか?(太陽が見えることを知らない人が多いのでは)

などなど言ってましたが、今のように夕方からだと時間的にも厳しいかもしれません。

そういえば、リフトのことはほとんど何も言ってなかったのですが、どうもリフトがなくてもあまり気にならなかったようです。多分ですが、どんな状況でも一般のお客さん、特に都心の方から来ていて天の川とか余り見たことがない場合は、満天の星が見えれば満足してくれるはずです。暗い空が志賀高原の武器だと思います。今回曇ってましたが、少しだけでも星が見えたのでまだよかったのかと思います。天気頼みですが、全く星が見えないとするとだいぶん印象が違うと思います。

そういったことも踏まえて、天気が悪くてもそこそこ満足できるように、来年以降もうまく続いてくれればいいなあと思います。


昨年に引き続き、今年も話します!

来週末の7月15、16日に開催される

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において

を開きます。

セミナーの日時は7月16日の日曜日16時30分

です。みなさん、よろしければ奮ってご参加ください。

今年のタイトルは



としました。これまで星雲とか星団、銀河などを見たことがない人に来ていただきたいです。星に興味があるけど、どんなものが見えるかわからないという人が周りにいましたら、ぜひともお誘い合わせの上、ご参加ください。

星空を見上げた場合、星座ビノを使った場合、双眼鏡や望遠鏡で見ると何が見えるか、さらに電視観望と呼ばれる最新の技術でを使うと見えてくる深宇宙など、宇宙の魅力をどうやって味わえば良いのか、順を追って話していこうと思っています。

セミナー終了後、晴れていたら19時30分から望遠鏡や星座ビノ、電視観望の実演をする予定です。

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昨年の電視観望の実践の様子。


会場は長野県の志賀高原の熊の湯キャンプ場(〒381-0401 長野県下高井郡山ノ内町平穏7148)になります。

  • 天空フェスはリフトで標高1,960mの山頂へ行き、『熊テラス』から眼下に広がる夜景と綺麗な夜空を堪能できる星イベントです。夏休みの行事として、ご家族連れで参加されても楽しいかと思います。 残念ながら機材不調でリフト運行が中止とのことです。「リフト運行に変わり、車で片道10分のとってとき星空スポットへの送迎(概ね18:00〜21:00)」とのことで、入場料も500円引きに。セミナーに申し込まれた方も現地で500円の返金があるそうです。
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山頂の「熊テラス」です。
晴れていれば、夜にはここから満天の星がみえるはずです。


申し込みはこちらの専用ページからになります。

 

  • 有料講座になりますが、セミナー参加料2900円の中にイベント入場料2500円が含まれていますので、実質400円が受講料になります。(当日会場で別途入場料を支払う必要はありません。)
  • セミナーと実践の間に1時間30分の休憩時間を設けます。その間に、お食事やナイトリフト等、他アトラクションをお楽しみください。 
  • 実践は屋外で行うため、セミナー参加者以外の方と同じ環境になります。予めご了承ください。また、曇天、雨天時は屋外での実践ができない場合ありますので、こちらも予めご了承ください。

昨年のセミナーは平日の金曜で都合がつかなかった方も多いと思いますが、今年のセミナーは月曜まで連休の間の日曜日の開催になります。定員20名ですので、興味がある方はお早めにお申し込みください。


なお、前日土曜の7月15日は16時30分から

『実践星空撮影講座〜撮れ高と
満足度をアップさせる7つのアドバイス』
講師:山口千宗(天文リフレクションズ)

も開催されます。こちらも合わせて、皆様のご参加を是非お待ちしています。

カバンからおもむろに取り出して「実はこれ望遠鏡なんですよ」とか言いたいわけです。小ささにびっくりして欲しいわけです。星雲を見て感動してもらいたいのです。そう、たとえ変な人とか、マニアだと思われようとも。

今回はそんな切なる思い(?)を実現してくれる機器「トラバース」の詳細レビュー記事です。

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見よこの極小組み合わせセット!


祝!トラバース正式発売

サイトロンからとうとう発表されましたACUTERの「トラバース」!!! 2023年7月4日に日本で発売開始、

発売記念キャンペーン価格で7月31日(月)23:59まで27,182円 (税込 29,900円)

とのことです。最小、最安の自動導入経緯台。これまで最小だったAZ-GTiよりもさらに小さいです。

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一昨年前、2021年の小海の星フェスでトラバースのサンプルを見て、そのときから惚れ込んでいました。2022年の小海の星フェスでフリマスペースのブラックパンダさんのところでとうとうサンプルを手に入れ、周参見で初お披露目。まだ正式版になる前のもので少し不安定でしたが、先日とうとう正式版ができたので是非テストしてみてくださいと連絡が入りました。すでにこれまでにテストで何度か使っていて、ブログにも少し登場してきましたが、今回は満を辞しての詳細レポートです。

箱の中身ですが、以下の様なものが入っています。特にバッグが以前の試用版から大きく変わっていて、以前はペラペラのものだったのですが、クッション性のある素材になり、しかもトップが膨らんだ形なので、上に大きなものがくるのにピッタリ合ってます。トラバースは三脚を変更してちいさくしてつかいたいので、このバッグはSWAT+AZ-GTi+Gitzo三脚の方を入れるのに使おうと思ってます。バッグに肩掛けベルトをつけるフックがついていますが、ベルトは入っていませんでした。もしかしたら福島で箱を開けた時とかに落としてしまったのかもしれません。

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箱の中にはトラバース本体が三脚に取り付けられていて、
付属品とマニュアル、専用のバッグが入っていました。


トラバースを選ぶ理由

そもそも、なんでそこまでトラバースに惚れ込んているかです。

これまでずっと電視観望を試してきました。その中で、小口径鏡筒でも電視観望を十分に楽しむことができるとわかってきて、最近は口径わずか3cmのFMA135が主力機となっています。これを最小最軽量「だった」 AZ-GTiに載せて運用していました。最軽量のはずのAZ-GTiですが、370gのFMA135と比べると圧倒的に重いんですよね。今使っているノートPCでさえ900gです。カメラがUranus-Cで180g、三脚も250gくらいの小型のものが使えるので、カバンの中に入れるともう1.3kgのAZ-GTiの重量が目立って重くなってしまい、しかもそこそこの体積なのでカバンの中で大きなスペースをとってしまうのです。

この1.3kgのAZ-GTiがトラバースの650gまで小さくなるのは、カバン(リュクタイプ)に入れて持ち運ぶのに劇的な違いが生じます。というか、これでやっとリュックタイプのカバンに入れようとする気になります。冒頭のようにおもむろにカバンから出す!これがトラバースを待ち望んでいた理由です。

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バラすとカバンの中にコンパクトに収まります。


三脚の交換

さて、トラーバースセットを順に見ていきましょう。まず、今回発売のセットには三脚が標準で付いてきます。あとは望遠鏡を載せるだけでつかうことができるので便利です。でもここは、トラバース本体の小ささを生かすために、三脚を取り替ることにします。付属三脚とトラバース本体は、1本のネジで固定されています。

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「あれ?3本のネジが見える」と思う人もいるかもしれません。本体下面に見えている3本のネジは、どうも水平調整ネジに相当するようで、イモネジタイプで本体に当たって止まっているだけです。3本とも少しだけ緩めて、あとは本体を回転させると三脚から外すことができます。

今回使用した三脚は、Amazonで何年か前に買ったものですが、80kgの荷重まで耐えられるという「本当か」と突っ込みたくなるものです。実際かなりの荷重をかけることができるのは確かですが、上に重いものを載せると先にバランスの方が崩れてくるので、倒れないかが心配になります。転倒防止として、使うときは赤いリングを回して足が180度開くようにします。リングが固いので、どう回るのかがちょっと分かりにくいのですが、力を入れるときちんと回ります。

この三脚ですが、今でも現行であるみたいです。でもよく見ると2種類合って、違いは上部の接続ネジのところです。私が持っているのは、1/4インチと3/8のどちらでも使える便利なもので、外側の3/8インチのネジはバネじかけになっていて、押し込めることができ、中の1/4インチネジでも固定できる仕様です。

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もう一種類のは普通に1/4インチネジがあって、外側にアダプター的に3/8インチをつけるよくあるやつです。バネ式の方が実用上は圧倒的に便利なので、もしこの三脚に興味がある場合はバネ式のものをおススメします。




私のオリジナルアイデアなのですが、この三脚、足にインチネジ用の穴がいくつか空けてあって、端の穴にちょっと長めのネジをはめると、水平出しの微調ができるようになります。TRAVERSEに水準器がついているので、それを見ながらネジを締めたり緩めたりして水平を合わせることができます。ネジは3本つけてもいいですが、2本でも十分実用的です。

一見M6ネジが合うように見えますが、途中ですぐに入って行かなくなります。インチネジが必要なことにだけ注意です。

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トラバース本体

トラバース本体は、単3電池4本で動きます。AZ-GTiでは単3が8本必要だったので、ここだけでも軽量化になりますし、8本用意するのはちょっと大変だったので、4本だと大分楽になります。みなさん興味があるのが、充電式の電池で使えるかどうかなのですが、エネループで試したところ、特に問題なく使えています。どのくらいの時間持つかなどはもう少し検証が必要ですが、2−3時間の使用ではまだまだ全然余裕でした。

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裏側にも電池を入れるところがあり、合計4本で稼働します。

さらに、電池横の電源確認用LEDのすぐ上にUSB-C端子があり、ここを利用してモバイルバッテリーなどから電源を取ることもできます。

積載可能重量は2.5kgということで、AZ-GTiの半分になります。そのため大きな鏡筒は載せることはできません。自分の手持ちだと、FMA135、EVOGUIDE 50ED、FS-60CBくらいでしょうか。FS-60Qだと2.4kgなのでギリギリで、カメラなどをつけると厳しくなってくるかもしれません。しかもバランスウェイトをつけることができないので、重い鏡筒になってくると倒れないように注意が必要になってきます。付属の三脚を一番短く使ったとしても、倒れてしまうとダメージは避けられないので、積載重量には従分な余裕を持って運用した方が良さそうです。

Vixen規格のアリガタを固定するネジと、すぐ横にもう一つネジがついています。こちらは垂直方向の回転を固定するためのネジです。その一方、水平方向の回転はネジなどはなく固定されていてフリーで動かすことはできず、モーターを動かして回転するしかないようです。

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垂直回転台の下に、黒い大きめのギヤが見えます。2021年の小海で初めて見たときはこのギヤが付いていたのですが、2022年のテストモデルではこのギヤの部分は外されていました。製品版では復活したようです。これはタイムラプス用のアダプターを取り付けるときに使うギヤで、平行移動のために使われるのかと思われます。日本では夏に発売されるとのことです。


SynScan系アプリでの接続

操作するためのアプリはSynScan系のものが使えます。SynScan、SynScan Pro、SynScan用ASCOMドライバーなどです。SynScanは動作に制限も多いので、最初からSynScan Proの方を使うこととお勧めします。電視観望で使う際は、SharpCapを使うことが多く、ASCOMでSynScan Proに接続して、プレートソルブなどを使用することが可能になります。



上のリンクのように、SynScan Proを使っての操作などはこれまで何度もこのブログで書いてきたので、ここでは詳しくは書きませんが、一つだけ注意です。

今回SynScan ProとASCOMを使い電視観望を試しましたが、最初は何の問題もなく動きました。しかし次の日、観望会で使おうとしたらプレートソルブまで全然辿り着きませんでした。最初トラバースのトラブルかと思ったのですが、これまで安定に動いていたAZ-GTiに戻してもうまく動きません。どうやらASCOMとSynScan Proの間の接続の不安定性からきていたようで、複数台をつなぐとトリガー的に不安定になるようです。

何度か接続をし直したり、ASCOMドライバーやSynScan Proのバージョンを変えることで最終的にはトラバースでもAZ-GTiでもうまく動いたのですが、どうもSynScan Proの方が複数からの接続にうまく対応できるように設計されていないという情報を聞きました。私自身はまだ未確認なのですが、ASCOMのDeviceHubを使うことで複数台にうまく対応できるという話を聞きましたので、もし新たにトラバースを接続して不安定になるような現象に見舞われた時は、DeviceHubを使うといいかもしれません。私の方でも、梅雨が明けて天気が回復したら試してみたいと思います。


新アプリ「Acuter SKY」

トラバース専用で、Acuter SKYというアプリが開発されています。iOS用Android用があるようです。眼視が前提のアプリのようなのですが、なかなか面白いです。

まず、Wi-FiだけでなくBluetoothでもつながります。これは何を意味するかというと、スマホの場合インターネットに繋ぎながら操作ができることになります。SynScan ProのようにWi-Fiで繋いでしまうと、スマホで携帯電波につながっていたとしてもインターネットはWi-Fiが優先されてしまうために、実際にはインターネットにつなげなくなります。これが改善されているのは大きいです。

その一方、SynScan Proでインターネット接続と併用させるには、別途ルーターなどが必要で、「ステーションモード」で接続するなどの工夫が必要になります。詳しくはここを見てもらうとして、少なくともAcuter SKYでBluetoothで接続できる様になったために、単独でインターネット接続までできる様になることは大きいです。

また、Acuter SKYでは接続までのヘルプが充実していることも特徴でしょう。以下のような項目があり、それぞれ選ぶと、絵のみで一切文字のないヘルプ画面が現れます。

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例えば一例が以下の画像です。これは「望遠鏡の取り付け」を選ぶと出てくる絵の一部で、取付だけで10枚の絵で説明されています。三脚の設置から望遠鏡の取り付けまで、一切の文章なく絵だけで説明しているのはとても分かりやすいです。

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本体に添付されている紙のマニュアルにも同じような絵が掲載されているので、まずはマニュアルを見てみるのも良いでしょう。ただし、アプリは日本語対応ですが、添付されていたマニュアルは英語版でした。

ヘルプの後にある、特に最後の「素調整又はやり直し」はかなり特徴ある調整方法になっています。スマホを鏡筒に載せて、スマホの上側が鏡筒が向いている方向と同じようにします。この時にスマホの角度センサーを使って、今どちらの方角とどの位の高度を望遠鏡が向いているかを測定し、その情報をトラバース本体に送って初期アラインメントをするのです。精度はせいぜい数度程度と思われますが、これまでにない新しい試みで、面白いアイデアだと思います。


簡易StarSense Explorer?

初期アラインメント機能と同じような原理なのですが、もう一つ「スカイビュー」という機能が一番面白かったです。眼視の導入補助としてスマホの方向センサーを利用して、ターゲット天体までの方向のずれを示してくれます。言ってみればStarSense Explorerの簡易版みたいなものでしょうか?

Acuter SKYを立ち上げてから「空の探索」を押して、次に何か天体を選び、その後「確認」を押すとその「スカイビュー」モードになります。矢印の長さと方向で、天体までどれくらいずれているかが分かります。天体の方向に向くと画面に大きな丸がでます。

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実際使ってみての精度は、これもせいぜい数度くらいかと思うので、ファインダー導入支援といったレベルくらいかもしれません。重要なことは、ACUTER製品に接続とかしなくてもこの機能は使うことができるようなので、任意の赤道儀や経緯台に載った望遠鏡にくっつけたり上手く固定すれば、画面の矢印に従ってラフな天体導入ができるのかと思います。興味がある方はぜひ試して見てください。

このACUTER SKY、惜しむらくはスマホだけのアプリで、PC用ではないので、当然ASCOMには対応していないために、SharpCapからプレートソルブして同期などはできないところでしょうか。
 

トラバースを使った電視観望

今回の目的、実際に電視観望で稼働してみた様子をレポートします。既に福島星まつりでも試していますが、改めて自宅で試したのが2023年6月16日で半月ほど前になります。

設置ですが、三脚もトラバース自身も小さいことから、置き場所に困ることがあります。小さすぎて暗いところでは目立たないので、間違えて蹴飛ばしてしまう可能性があるからです。

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机の下に置くとか、ライトを横に置いて目立つようにするなどの工夫が必要でした。テーブルの上に置いてもいいのですが、PCを操作するたびに揺れてしまい、星像がブレてしまいます。石やブロックの上など、これ位されたものの上におく方がいいでしょう。

まず、SynScan  Proとは何の問題もなく接続できました。ただし、接続後ネットワーク設定の画面にたどり着けなかったので、ネットワーク設定はデフォルトのままです。観望会などで複数台で使うと混乱する可能性があるので、今後の改善を待ちたいと思います。今のところはネットワーク設定はAcuter SKYを使うことで可能になるようです。

SynScan Proから初期アラインメントをすると、トラバース本体が回転し出しますが、AZ-GTiに比べると全然静かで、これならば夜中にマンションのベランダなどで駆動してもほとんど迷惑にならないレベルかと思います。

初期アラインメントでの最初の導入の位置合わせがすでに面倒だったので、ここですでにSharpCapから ASCOM経由で、PC上で立ち上げたSynScan Proに接続し、プレートソルブを実行しました。

一つ注意は、PCで立ち上げたSynScan Proでトラバースに接続するためには、当然PCをトラバースのWi-Fiに繋げる必要があることと、もう一つこれは忘れがちなのですが、初めてPC上のSynScan Proでトラバースに繋いだときには緯度経度情報が正しく設定されていません。デフォルトでは「位置情報を使用する」がオンになっていてGPSからの緯度経度を自動的に取得するようになっていますが、ほとんどのPCにはGPSユニットが付いていないので、そのままでは緯度経度情報が何も入っていないことになります。これをオフにして、きちんとマニュアルで入力するようにしてください。その際の自分のいる位置の緯度経度ですが、スマホのコンパスアプリなどを利用すると、値を知ることができます。

プレートソルブがうまくいくと、画面中心近くに指定した天体が入ってきます。もちろん、プレートソルブなどしなくても、SynScan Proの方向ボタンを押して指定天体を真ん中に持ってきても構いません。

初期アラインメントがうまくいったら、次は見てみたい目標天体を自動導入します。最初はM27: 亜鈴状星雲です。

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全く問題なく導入できます。もしうまく導入されない場合は、トラバースの水平度が出ていない可能性があります。その場合でも再度プレートソルブを実行すれば導入されると思いますが、水平度が大きくずれていると毎回プレートソルブをする必要があるかもしれません。その際は、水平度を見直した方が効率が良いかと思います。

次は北アメリカ星雲です。
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続いて、少し離れたところのM8: 干潟星雲です。
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さて、トラバースの導入精度はどれくらいかというと、電視観望程度ならもう十分で、AZ-GTiとほとんど変わらないような実感です。

少し気になったのは、トラバース本体の水平方向を力を入れて揺らすと少しガタがありました。それでも稼働中にずれるようなゆるいガタではないので、実用上問題になることはないでしょう。基本的には精度は十分満足です。

最後、三日月星雲です。
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電視観望2台体制

さてこの後、長時間露光でどこまで点像が保てるか試してみました。上と同じ三日月星雲ですが、30秒露光で以下の画像のようになってしまい、既に星が流れてしまっているのがわかります。
スクリーンショット 2023-06-17 002610

経緯台モードとはいえ、わずか30秒で流れてしまうとすると、流石に本格撮影とはいかず、電視観望的な短時間露光で枚数を稼ぐ撮影しかできないのがわかります。トラバースではなくAZ-GTiを使い、赤道儀モードにすればもう少し状況は改善されるかと思いますが、実はこのことがSWATとAZ-GTiを使っての長時間露光のアイデアにつながっていきました。



SWAT+AZ-GTiでもFMA135とUranus-Cを使いましたが、もう少し長焦点でもノータッチガイドで点像が保てそうなので、こちらはFS-60などを使った撮影になるかと思います。もちろん電視観望でも使えますので、
  1. トラバースでFM135
  2. SWAT+AZ-GTiでFS-60
など、電視観望で2台体制、そのうち一台は撮影も兼ねてという体制になるのかなと思っています。


まとめ

福島の星まつりで今話題のZWOのSeestarを見てきました。かなり積極的な値段設定なので、特に電視観望入門機として相当売れるのではないかと思います。それでも意外に大きいなとも思ったのも事実で、流石にリュックに入れて簡単に持ち運びというほどではなかったです。コンパクトさだけでいうなら今回のトラバース+FMA135に軍配が上がると思いました。値段は太刀打ちできませんが...。

それでもこのトラバースは、自動導入できる架台としては最安値で、実際かなりのコストパフォーマンスだと思います。

今回のトラバース、積載荷重、値段、なによりコンパクトさが必要かどうかが購入の決め手になるかと思います。電車やバスを使って移動しての街中での電視観望、車を使わないキャンプでの電視観望など、荷物量に制限がある場合は相当大きなメリットになるかと思います。

さて、この最小電視観望セットをカバンの中に入れて出かけ、夜におもむろに取り出して、見ている人に驚いてもらうことにしましょうか(笑)。


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