ほしぞloveログ

天体観測始めました。

2022年12月

2022年12月29日、かねてからかんたろうさんに誘われていた周参見(すさみ)に遠征に行ってきました。周参見は和歌山県のほぼ南端。富山からはかなり遠かったです。


富山を主発

前日の28日は休みを取ったので、午後から準備をします。きはらっちさんからSCA260見たいとリクエストがあり、頑張って積み込みました。というのも、予定していた荷物をたくさん積めるノアが急遽故障、仕方ないのでラクティスにします。SCA260にはCGX-Lもセットなので、後ろの座席も助手席もイッパイイッパイです。夜のうちに準備した荷物を朝車に積み込み、何とか出発できる状態に。

富山を朝9時に出て、実家の名古屋で少し用事を済まし、14時に名古屋を出発。どの経路で行くか迷いましたが、津市のアイベルに寄りたかったので、紀伊半島を東から回ることに。実家は名古屋の北区で、津までいくなら名二環から入るといいと教えてもらいました。途中工事で蟹江インター付近が少し渋滞していましたが、それ以外は順調でした。怖かったのは、カーナビが古くて新しい道ができているので、何箇所かJCTでどちらに行けばいいか迷い、しかも最近関西方面の地名に疎いので、ギリギリで判断するということがありました。あらかじめ調べておかないとダメですね。


久しぶりのアイベル

アイベルに着いたのは16時過ぎくらいだったでしょうか、11月に自宅に来てくれたEさんが、三重に引っ越すというのでアイベルに顔を出し、わざわざ私のためにVixenのカレンダーを頂いてきてくれました。そのお礼と、アイベルにはコロナ以前に数回行っただけなので、久しぶりに覗いてみたかったのです。




そういえば前回アイベルに行ったのも今回の初回集まりで、今見たら2017年ですね。もう5年ぶりになります。

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アイベルでは残念ながら何も買うものがなかったんのですが、店員さんと少しだけお話しさせていただきました。ε130が展示されていたので一応「売り物じゃないですよね?」と聞いてみたのですが、やはり展示用に借りているものだそうです。いま発注しても1年半待ちとのことなので、現物があれば欲しいと思っていたのですが、シリアル番号を見たら確かに「DEMO」と刻印が打たれていました。そういえば最近は細かいものも揃ってしまっているので、星まつりでもそうなのですがあまり買い物していません。店舗にいってもその場で欲しいと思うものに出会うことも減ってきてしまいました。ちょっと寂しいです。

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「これから周参見に行くんです」と話すと、「3時間はたっぷりかかる」とのこと。「何も購入できなくてすみません」と挨拶して、アイベルを17時前くらいに出発しました。


いざ周参見へ

そこからの道は迷うことはありませんでしたが、高速道路が尾鷲を通り越して熊野で終わりでした。これも全然調べてなかったのが悪いのですが、下道でまだ100km以上もあります。ここでかんたろうさんに電話をかけて「まだ2時間くらいかかりそうです」と話して、のんびり海岸沿いの道を進みます。熊野ってあの熊野古道の入口なんですね。途中熊野古道の看板があり実感したのですが、よく考えたら和歌山ってあまり来たことがなく、多分子供の頃に家族で行った紀伊長島が私にとって最南かと思います。今回は先っぽまで行くのですが、真っ暗な中での行き帰りなので一度時間をとって明るい時にじっくりこの辺りを回りたいと思いました。

熊野からは下道だけかと思ったのですが、途中新宮から10kmくらい、周参見の直前も10kmくらい、無料の高速道路?があって少し距離を稼げました。でもあとは普通の下道で、しかも海岸沿いの道なのでカーブも多くスピードも出せないので、安全運転で進みます。

結局周参見についたのは21時くらいだったでしょうか。途中コンビニで弁当を買って食べてたりもしましたが、アイベルから4時間はかかったことになります。

到着して皆さんと挨拶を交わす間もなく、すぐに天リフさんの生中継のインタビューを受けます。



動画開始から38分頃から出てきます。ライブビューでもそうですが現場でも、富山から遠く周参見まで来たことに驚かれたようです。現地ではヒロノさんの66cmを筆頭にドブが何本も並び、眼視が相当に盛り上がっていました。フラッシュなどたけなかったので写真はありませんが、天リフさんの動画でその雰囲気はわかるかと思います。

到着した頃はまだ月が出ていたのですが、月の反対側はすでにかなり星が見ていて、基本的に暗いのと透明度がいいのが実感できました。月が沈んでからは全方向かなり暗くなり、かなりいい環境で、皆さんが集まる場所だというのが理解できました。実際、今回声をかけたメンバーだけでなく、関西の常連さんが数多くいらしていました。聞くところによると、冬場は関西からだと比較的暖かい周参見がほぼ一択とのことです。スタッドレスタイヤをつけている車が少ないので、路面が凍結しないということが重要だということでした。実際、空は全方向かなり低空まで開けているし、カノープスが普通に見えたのにはちょっと驚きました。

私はとりあえずSCA260を出したのですが、結局風が強いのと、ミニワイヤレスルータの電源のUSB-Bケーブルが破損しかけていてうまくLANでStick PCに繋げなかったので、撮影は諦めてしまいました。一応、リクエストしてくれてきはらっちさんには見せることができたので、まあよしとしましょう。他の方も撮影した画像はかなりの率が風でブレてしまっていたそうです。


ACUTER自動導入経緯台のテスト

その一方で今回はもう一つ、新兵器のお披露目がありますです。小海でサイトロンさんからお借りした、まだ日本では未発売のACUTER社の自動導入、自動追尾の経緯台です。AZ-GTiと同じようにSynScanやSynScan Proで操作できるものですが、AZ-GTiよりもかなり小さくて軽いです。しかも単3電池3本で稼働するので、電源も気軽です。

元々のセットアップは三脚付きです。
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接続は3/8インチネジなので、普通のカメラ三脚なら大丈夫でしょう。なのでFMA135と合わせてこうしました。
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ちょっと暗くて見にくいですが、三脚もミニ三脚にして地面に直置きです。長年追い求めていた超コンパクト電視観望セットです。小さすぎてそこにあるのに気づかずに蹴飛ばされるのが心配なくらいです。実際、自分で一度蹴飛ばしてずらしてしまいました。見にきてくれた人もこの小ささと、実際に出てくる電視観望の画面のギャップにかなり驚いていたようです。

これまでの最小セットアップとして、FMA135と自由雲台を使ったセットは試したことがありますが、やはりお客さんがいる観望会だと導入に戸惑ってしまうので、できれば自動導入があったほうがいいです。

これくらいコンパクトだと、カバンの中に潜めておいて、特に観望会とか計画するでもなく機会があったときにパッと取り出し、その場で星雲とかを見せるができます!少し心配なのは、こういったマニアの所業が一般の人に果たして理解されるのか?白い目で見られないように気をつけながら、一度くらいはやってみたいと思っています。


ACUTERでの電視観望操作の実際

さて、実際の動作の具合です。スマホやタブレットのWiFiで繋ぐ必要がありますが、今回はiPhoneXで試しました。SSIDに「ACUTER」と表示されるので、すぐにわかるでしょう。設置はAZ-GTiと同じで、鏡筒を水平北向きに置きます。最初左中を間違えて、初期導入で鏡筒が下の方を向き始めてしまいました。どうやら北を向いた時に後ろから見て、鏡筒が左にACUTERを右に設置するのが正しいようです。ACUTER本体に水準器がついているのですが、今回の三脚は各脚の高さの微調整が難しく、水平方向がうまく出ないので、そこそこ合わせるくらいで試しました。鏡筒の水平方向も重要です。これまではFMA135にアルカスイス互換のぷれーとをつけて、Vixenアリガタとアルカスイス互換クランプへの変換アダプターを自分で組み合わせたものを使っていましたが、これさえも大きく感じてVixenアリガタの小さいものをFMA135に取り付けました。アルカスイス互換クランプには水準器が付いていたので鏡筒の水平も取れていたのですが、今回は水準器がないので鏡筒の水平も見た目でだいたいです。

とりあえずM42オリオン大星雲を見ようと思い、初期アラインメントはワンスターアラインメントにして、リゲルを導入しました。FMA135の焦点距離が短いのと、Uranus-Cのセンサー面積も1/1.2とそこそこ大きいので、ある程度の水平出しでもすぐに初期アラインメントのターゲットが入ってきます。その後、M42を入れてみますが、AZ-GTiのようにごくごく普通に導入が成功します。

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この時点で再び天リフさんがきてくれました。どうやら有線中継のようで、その場に中継機材を持って来れないようで、写真に写してからそれを中継してくれました。上にリンクを貼ってある天リフさんの動画の2時間15分くらいの頃から出てきます。

ACUTERについては、途中でモーターの特に水平方向の動きが止まらなくなるということが数回ありました。方向ボタンも効かなくなってしまいます。それでも接続は継続していて、一旦切ろうとしてSynScanを落としても動きは止まらず、その状態でSynScanで再接続はできるのに動きは止まりません、一旦こうなると、本体の電源を一旦切っても再び電源をつけるとまた動き出してしまいます。電源を切って電池を抜いてしばらく待って、電池を再び入れて電源を入れるとやっと止まりました。電源を切るだけでしばらく待つというのは、その場では思い付かずに試せませんでした。少なくともそれらしい動きが2回は確認できたので、何らかの不具合が存在するようですが、どこをどうしたら発動するかはまだ良くわかっていません。もしかしたら寒かったのと充電タイプの電池で試したので、電圧降下が不具合の原因はあります。これは今後もう少し使い込んで検証したいと思います。

トラブルがない時は普通に操作でき、その後何人かの方に電視観望を見てもらいました。他に電視観望をやられている方はいないようだったのですが、そもそもこういった有名遠征場所に行ったことがほとんどないので、どう振る舞えばいいのかあまりよくわかっていなくて、眼視が主なのであまり邪魔にならないように少し離れた場所に設置して、画面もあまり明るくならないように注意します。普段の撮影はほとんど一人が多く、観望会でも仲間内の場合が多いので、他の方に迷惑をかけていなければよかったのですが。

他には馬頭星雲と燃える木、あとプレアデス星団(スバル)を見てみました。さすがの周参見です。かなり環境が良く、馬頭星雲はものすごいコントラストです。

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スバルに至っては青い分子雲が余裕で見えています。

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電視観望でここまでM45の分子雲が出たのは初めてです。


眼視でM42に色が!

電視観望はせいぜいこれくらいで、滞在時間の多くはドブの方を見せてもらっていました。かんたろうさんには45cmでスバルとかトール兜とか見せてもらいました。特にトール兜は2本のつのまではっきり見えたのでビックリでした。OIIIをフィルターを入れてあるそうですが、フィルターなしの場合も見せてもらいました。フィルターなしでもかろうじて見えるのは面白かったです。周参見の空の暗さと45cmの威力でしょうか。

ヒロノさんの66cmでM42を見せてもらいましたが、今回初めてオリオン大星雲ではっきり色がついていることがわかりました。特にトラペジウムの辺りは私には青紫に見えました。これは気のせいでも、神の目も何でもなく、はっきり意識できた色でした。その一方、ウィングの部分は少しピンクに、M43のあたりは黄色がかって見えているようでしたが、これらはトラペジウム周りほどははっきり色がわかったわけではなく、気のせいの可能性もあります。少なくともトラペジウム周りと、M43あたりの色が確実に違うということはよくわかりました。さらに25cm、8cmでも同じM42を見せてもらいましたが、少し青い色は認識できましたが、改めて66cmを見せてもらうとやはり口径の効果でしょう、明らかに色づきは66cmが圧倒的でした。

その後かんたろうさんに再びスバルを見せてもらい、メローぺ周りに分子雲が見え、少し青紫の色が付いている気がしました。トラペジウム周りの色と似ていると思いましたが、やはりトラペジウムほど濃い色ではなく、やはりこちらも気のせいの可能性もあります。

いずれも他人様のドブソニアンでのけいけんになりますが、飛騨コスモスでのM57に次いで、今回とうとうM42も色がついて見えました。輝度の高い星雲はやはり色がつくようです。色が付くといっても暗い中での色なので、濃いかもしれませんが、鮮やかに見えるようなことはありません。それでも星雲の色が目で見て見えるというがわかるのは素晴らしい経験です。今回のM42のヒロノさん、夏のM57のかんたろうさん、どうもありがとうございました。

観望の途中、少し天リフ編集長と話しました。話題は天リフが採算ベースに乗るかとか、最近の仕事がどうかとか、アマチュア天文業界の発展とかです。中国の天文メーカーの台頭も大きですし、日本の天文メーカーが元気がなさそうな心配もあります。でも天文人口が増えて欲しいというのでは一致した意見でした。他にも動画編集の大変さや、ブログを続けることの悩みなど、情報を発信することの苦労とかも話せました。こういったことが話せるのはオンラインよりは、やはり面と向かってですね。

さて、集まったみんなで記念写真をとったり、いろんなところに顔を出したりで、午前1時頃になりました。その時点で風も強くて撮影はあきらめたので、撮影機材の方は片付け始めました。


眠かった

結局午前2時頃にはその場を出ました。参加メンバーの津村師には彗星は明け方間近がいいとアドバイスを受けましたが、残念ながらその時点で退散することにしました。その日に高校の同窓会があり、昼前にはちょっと体裁を整えて名古屋駅に行かなくてはならなかったからです。周参見から名古屋まで仮眠をとりながらだと思ったよりかかりそうです。

結局名古屋の実家に着いたのは午前9時過ぎ、シャワーを浴びて準備をしたらもう出発する時間でした。普通は星見から帰って朝から寝るのですが、この日はわずかな仮眠でほとんど寝ることもできず、同窓会の2次会が終わった頃にはもうヘロヘロでした。実家についてすぐ寝てしまい、結局14時間寝てやっと元気になりました。もういい歳なので、あまり無理はせずに星を続けるべきかと改めて思いました。

遠かったけど、とても楽しい観望会でした。誘ってくれたかんたろうさん、どうもありがとうございました。現地でお会い出たみなさんも、いろいろお世話になりました。どうもありがとうございました。年末で名古屋の実家に行くので参加できた周参見かと思います。来年も時間が許したらまた参加したいとおもいます。

 

一連の皆既月食記事の8本目。いい加減にそろそろ終わりにするつもりです。前回の記事はこちらから。



Hough変換

今回はHough変換を使ったサークル抽出で、月食中の月の位置合わせに挑戦です。FS-60CBで撮影した4時間分の広角の画像から月が画面中心に来るように位置変換をします。その後、タイムラプス映像にしてみます。

Hough変換は画像の中から特徴的な形を抽出するアルゴリズムで、その中に円を抽出する関数があります。Hough変換は色々な環境で使えますが、今回はOpenCVで用意されている関数をPythonで使うことにしました。検索するとサンプルプログラムなどたくさん出てくるのと、今回は対処療法で組んでいったのの積み重ねなので、あまりに汚いコードで人様に見せれるようなものではないです。なので、どうパラメータを取ったかだけの説明にとどめることにします。

基本的にはあるフォルダにある、月が映っているたくさんのファイルを順次読み込み、カラー画像をグレースケールに変換して、HoughCircles関数を呼び出すだけです。Hough関数は以下のようにしました。

HoughCircles(gray, cv2.HOUGH_GRADIENT, dp=1, minDist=1500, param1=30, param2=2, minRadius=350, maxRadius=400)

パラメータがいくつかありますが、少しだけコツを書いておきます。
  • HOUGH_GRADIENTとHOUGH_GRADIENT_ALTは両方試しましたが、ALT付きの方が誤検出が多かったのでALT無しの方にしました。
  • dpは1以下も試しましたが、位置精度に違いはあまりなかったです。大きな値にすると精度が悪くなりました。
  • 円を複数検出するわけではないので、minDistは1000とかの相当大きな値にしておきます。
  • param1は最終的に50程度にしました。大きすぎたり小さすぎたり値では検出できなかったりしますが、位置精度にはあまり影響ないようです。
  • param2は位置精度に影響があるようです。大きすぎると精度が悪くなりますが、5以下くらいだと精度はこれ以上変わらないようです。
  • minRadiusとmaxRadiusは、月の大きさは一定なのでその半径を挟むような値を取ると効率が良いでしょう。

とりあえず結果を示します。


結局出た精度はこれくらいです。もうちょっとビシーっと止まってくれればいいのですが、まだちょこちょこズレています。

実は精度を出そうとして色々試してみてます。Hough変換のパラメータをいじるのはもちろんなのですが、大きなものは
  • グレー化後に、あらためて画像の2値化
  • グレー化後に、あらためて輝度やコントラストをいじる
  • Adobe Premiereのブレ補正
  • 一旦Hough変換でラフに位置合わせして、少し大きめに切り抜いて、再度Hough変換
くらいでしょうか。でも結局どの方法も精度を劇的に上げることはできませんでした。Hough変換で目で見てもおかしいズレがあるので、そこだけでもずれが直ったらと思ったのですが、やはりダメなものはダメで、どうも苦手な画像があるようです。

今回はFS-60CBで広角で撮ったものから抜き出しているので、解像度が良くないこと。さらに動画の中から最初の1枚だけを抜き出しているので、大気揺らぎなどで多少のブレがあります。もしかしたらスタックをすると平均化されるので、細かいブレは少なくなるのかもしれません。スタックしてから、Hough変換ではなく、特徴点を抜き出して合わせるとかいう処理をした方が精度が出るかも知れませんが、ちょっと力尽きたので、今回はここまでにします。

ついでに同じ位置合わせの手法で、いくつか画像を抜き出して天王星の潜入画像をつくってみました。位置合わせ後、比較明合成しただけです。これくらいの精度ではそこそこ合って見えるんですけど、やはり長時間のタイムラプスだときついかもです。

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まとめ

今回の皆既月食に関する記事はこれで一旦終わりにします。

撮影後、1ヶ月以上にわたって楽しむことができてかなり満足しました。その一方、そろそろ月も飽きてきました。ただ、まだ未処理ファイルが大量にあるので、気が向いたらもう少し追加で書くかもしれません。

先の記事でも書きましたが、今回は月食に関してはかなり満足して撮影できました。大きな課題は地球本影を位置補正することなく撮影することですが、次回月食ではこれ一本に絞ることにするかもしれません。

ここ数日、BlurXTerminatorがすごいことになっています。次は少しこちらの方に時間を費やそうかと思います。












まだまだ自分の中では皆既月食マイブーム状態です。今回は地球の影が止まるような位置をどう計算するかの一連の記事の、少し脱線するような記事になります。


「ほんのり光芒」さんとのコラボ? 

前回の記事でコメントをいただいた「ほんのり光芒」のみゃおさんがブログ記事の方で、地球本影の固定に関してかなり細かい検討をされています。


上記ページからリンクを辿れますが、かなり以前から考えられていたようで、私のようなにわか月食撮影とは歴史が全然違います。天リフさんのピックアップにも取り上げられていて、ほしぞloveログとのちょっとしたコラボのような様相を呈しています。




視野ズレの計算プログラム

前回までで、地球の自転による観測者の位置変化で視野に大きなずれができて、地球の影の形がひしゃげることを、多少定量的に見積もってみました。


大まかな見積もりと、実際にどれくらいずれるかは、少なくともオーダーレベルでは一致しているようなので、今回はもう少し精度良く計算できないかを考えてみます。といっても、自分だけで考えるのはそろそろ限界で、Webで少し検索してみました。すると老猫こてつさんという方が各種軌道計算などされて、その中で求めていた月の視野位置のずれそのものをpythonで計算してくれていることがわかりました。


プログラムのソースを公開してくれているので、そのまま計算することができ、とても助かります。ただし、それら計算式をどう求めているのかの記述はないので、そのプログラムの出典を調べるためにブログの過去記事を読んでいくと、どうやら中野主一さんの昔のBASICのコードをpythonに置き換えてくれているようです。


参考書籍

中野主一さんといえば、最近では小説「星になりたかった君と」で「長野秀一」という名前で出てきた重要な役割を担う老人のモデルとなった方。おそらく昔の天文少年にとっては憧れのアマチュア天文家で、多くの天文雑誌で連載をもち、アマチュアながら元国立天文台長の古在由秀先生から計算を依頼されるなど、軌道計算の大家です。私はその当時マイコン少年でしたが、大人になって天文を始めてから、昔使っていたマイコンで実用的な天体計算をしていたことを知って、とても感動したことを覚えています。実は中野主一さん、星を初めて少しした2018年に一度お会いして、お話しさせていただいたことがあります。私はかなり緊張していたのですが、気さくにお話ししていただきました。講演も聞かせてもらったのですが、当時どう計算を進めていたか、プロから依頼された当時の様子などのお話で、ユーモアたっぷりの講演で今でも心に残っています。

そんなわけで早速、サイトに載っていた参考文献を注文しました。長沢先生の「天体の位置計算」は以前から持っていたもので、まだ普通に販売されているようですが、他の3冊は流石に古本でかろうじて見つかるくらいでした。
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その中で一番古い「マイコン宇宙講座」は昭和55年の初出のもので、月の計算そのものの章があり、式の解説もあったので理解しやすかったです。

「マイコンが解く天体の謎」は昭和57年出版で、使われている言語はなんとF-BASICですよ。内容はプラネタリウムのようなものを実現することが中心ですが、実は私、中1の時にFM-NEW7を中古で買って、しゃぶり尽くした口です。その数年前に出た本のようなので、恐らくFM-7が出た時で、実際にはFM-8で組まれた時代のプログラムですね。

一番新しい「天体の軌道計算」は1992年なので、前の2さつからはかなり経っていて、プログラムも複雑になり、さらに精度を求めているような内容になっています。

とりあえずは、月の視野ズレの計算方法が載っている「マイコン宇宙講座」をもとに、老猫こてつさんのpythonコードを使わせていただいて計算を進めようと思います。

ただしこれはまだ、「月」の視野ズレを追いかけるプログラムで、一番求めたい月食中の「地球の本影」を追うものではありません。でもこれらの計算の延長上に、それもそう遠くないところに地球本影を求めることができるのではと期待しています。


赤道儀の制御

あともう一つ、仮に地球本影の視野ズレも含んだ位置を計算できたとして、それをどう赤道儀に伝えるかですが、彗星を追うメカトーフ法というのが応用できるかもしれません。ただし、地球の本影を追うというようなものは見つからなかったので、実際にどういう方法で赤道儀に伝えるのか、どういうデータ形式なのか、地球本影に応用できるかなど、もう少し調べる必要があります。

ガイドソフトのPHD2にもメカトーフに相当するような機能があるらしいのですが、どうも1次の傾きでガイド信号に補正信号を加えていくようなものらしいです。視野ズレのような複雑な動きはできないかもしれませんが、1次補正だけでも近似的にそこそこ地球の影の形はうまく出るのではと思います。もしくは撮影途中で何度か係数を変えるかとかでしょうか。


今後

視野ズレの計算方法や赤道儀の制御など、まだ直接ではないですが答えにつながりそうな幾つかの見通しは出てきました。次回の日本での地球本影が見える月食は2023年10月23日の部分月食だそうです。1年近くあるので、じっくり準備したいと思います。


 
 
 
 
 
 
 
 

前回の記事で、赤道儀を太陽時に合わせ、月食を連続して撮影すると、月をスクリーンにして月食部分の形が地球の形を表すのでは?ということを書きました。



しかしながら結果は、影の形がひしゃげてしまい、位置合わせなしでは地球の形は再現できませんでした。なぜだったのでしょうか?今回はその点をもう少し詳しく議論してみたいと思います。


地球の影固定の座標系

まずは国立天文台のこの図から。
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まずこの座標ですが、地球の影が動かないような座標系を基準にしています。しかも上が真北です。

これが何を意味するかというと、まず太陽光源に対して地球の位置が動かないような太陽時に合わせた座標ということです。なおかつ、地球の影が真円近くになっているので、(これから書く)月食中の(地球の自転による)観測位置の変化による視野の差を無視したものになっているものと考えらえます。


月の公転軌道による移動量の見積もり

次に基準となる地球の影に対して月が動いていく理由は、月の公転運動が原因です。なんのことはない、月食そのものですね。一月で360度回るとすると、30日で割って1日あたり12度動きます。部分日食開始から部分日食終わりまで約4時間として、6分の1日なので、12度を6で割り、約2度動きます。月の視直径がやく30分(0.5度)なので、月の約4個分となります。上の図で確認すると、部分日食開始から部分日食終わりまで約4.5個分くらいでしょうか?少し誤差がありますが、まあそこそこ合っています。

さて、公転運動なので上の図において西から東へ横に動くのはよくわかります。ではなぜ南から北へ、上向の動きがあるのでしょうか?これは地球の地軸の傾きからきています。地軸に対して垂直な面と、月の公転軌道面に差があるために、地球の上にいる観測者から見ると月が上下に動いているように見えます。月食の時期は冬に近く、北極は一日中真っ暗で、南極は一日中明るいです。日本は北半球にあるので、月食開始の夕方にから夜中にかけて日本にいる観測者は自転により南側に沈み込んでいくような動きをします。月の公転軌道面を地球の公転軌道面に水平だと仮定すると(実際には +/-5度程度の範囲で周期的に動くのですが)、相対的に月は上に昇っていきます。月食4時間で横軸に約2度動くので、地軸の傾きが23.4度とすると、2度 x sin(23.4度)  = 0.8度 = 月の直径の1.6倍となります。上の図で部分食の始まりと部分色の終わりまでの移動距離を見ると、ちょうど説明できるくらいの量ですね。


なぜ太陽時だとズレるのか?

次の画像は、上の国立天文台の図の月の移動位置合わせて、撮影した月を位置合わせして合成したものです。

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左上と右上の枠のズレかたが各位置合わせの様子を示しています。

一方、赤道儀を太陽時に合わせて連続撮影し、位置合わせなしに重ねた図がこちらになります。
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縦に長く、横に短くなってしまっています。この違いはどこから出てくるのでしょうか?


視野のズレ

答えは前回の記事にも書きましたが、地球の自転によって観測者の位置が移動し、視点の位置がズレることによる視野の違いがこのズレの原因になります。と言っても定量的に評価しない限りは、きちんとこのズレを説明できるかどうかよくわからないので、ここで近似的にですが見積もってみます。

そもそも前回の記事で、
「地球の半径が約6400km、北緯36度くらいにで観察しているので、4時間の間に2 x π x 6400km x cos(46/180*π) x 6hour/24hour = 5400km程度、地球の時点により観測点が移動します。月と地球の距離が約38万kmなので、ざっくり1.4%になりますが、そこまで大きな影響ではなさそうです。」
と書きましたが、これは全くの見積り違いです。前回記事を書いている途中で気づいたのですが、実際そのように考えてもいたので、反省の念を込めて残しておきました。

まずは定性的な話からやり直します。地球から見て月の位置に、月の大きさよりはるかに大きなスクリーンがあると仮定します。赤道儀を用いて、無限遠にある恒星が視野の中で固定されるような追尾を恒星時に合わせた望遠鏡でそのスクリーンを見ているとします(太陽時とのズレは最後の方で議論します)。スクリーンには地球の影が投影されますが、 光源である太陽と地球の間の距離は地球と月の間の距離より十分に長いため、平行光線で投射していると仮定します。そのためスクリーンに当たっている影の大きさは地球の大きさをそのまま表します。

望遠鏡では無限遠の恒星を追尾しているため、望遠鏡の向いている角度は常に同じです。その一方、地球から見たスクリーンは無限遠に比べて十分に近いために、観測地点の位置ズレはそのままスクリーン上での位置ズレになります。すなわち、スクリーン上に映った地球の影を望遠鏡で見ていると、夕方から夜中にかけて時間と共に地球の自転で自分の位置がズレていくために、夕方見ていた地球の影は視野の中で自分の位置のズレと同じ量だけズレていくというわけです。今回の月食では、部分月食初めの頃には撮影画像の左の方にあった地球の影が、部分月食の終わりに頃には自分が地球上で移動したのと同じ分だけ、影の大きさが右にズレていくというわけです。

月は単なるスクリーンです。月食開始時には左の方にいる地球の影の右側を映し、月食終了近くには右の方に移動した地球の影の左側を映します。少なくとも地球の半径くらいのオーダーで観測者である自分は移動しているので、視野の中の地球の影もそのくらいの大きさでズレてしまい、位置合わせなしに重ねると縦長の影に見えてしまったというわけです。


定量的な評価

では実際にどれくらいズレたかざっくり見積もってみましょう。 簡単のためにズレを横(東西)と縦(南北)に分けて考えます。

まずは横ズレ。月食の4時間の間に地球は約60度自転します。スクリーン上への投影は、地球からスクリーンへの方向を自転0度とした時に、部分月食開始から部分月食終了までに19度から79度まで自転します。その時にスクリーン上に投影される移動距離は、赤道上で見ているなら4900km、北極で見ているなら0です。観測点が北緯36度だとすると、移動距離は約4000kmで地球の半径の3分の2くらいになります。地球の影を固定するためにずらして重ねた画像の枠のズレ量の横成分を見てみると、ちょうど地球の影の半径の3分の2くらいになっているので、うまく説明できそうです。

縦ズレはもう少し複雑で、地軸の傾き23.4度を考慮してやる必要があります。自転による上記の横ズレが起きる間に、地軸が傾いている場合地球の公転軌道面と並行な面に対して自転でどれだけ落ち込むかを計算してやればいいはずです。北緯36度にいることも考慮すると、約1600kmとなります。横ズレの半分以下くらいですね。これもずらして重ねた画像の枠のズレ量の横成分を見てみると、ちょうど横ズレの半分以下くらいなのでうまく説明できそうです。

さらに、横ズレは最初夕方近くなので、観測者はスクリーンに対して垂直に動くためゆっくり動き徐々に速くなっていく。縦ズレは最初激しく落ち込み、月が天頂付近に来ると落ち込みが止まることから、落ち込みスピードが遅くなります。枠のズレを見ていると、横ズレのスピードは徐々に速くなり、縦ズレのスピードは徐々に遅くなっていることから、これらのことも説明できそうです。

というわけで、今回の撮影結果と影固定での座標系とのズレは視野のズレというので定量的にも説明できそうなことがわかりました。


太陽時追尾の意味

ところで、今回は赤道儀の追尾設定を恒星時ではなくあえて頑張って太陽時に設定したのですが、はたして意味はあったのでしょうか? 

そもそも、赤道儀の太陽時とは、太陽を観測する際に視野の中にいる太陽が移動していかないようなついビスピーにするということです。太陽は正午に南中するので、閏秒を無視すれば、1日に赤道儀がぴったり1回転するというスピードです。一方、恒星時は1年で一回転する星空の分を補正して追尾するようなスピードです。いつものざっくり計算ですが、1年約360日で360度補正するとすると、1日で太陽時から1度ズレていく計算です。今回の月食の4時間では約15分角ズレます。月の視直径が30分角とすると、月の半径くらいはズレていく計算になり、今回の2つの比較画像でさらにこの補正を入れなくてはならなくなっていたでしょう。

少なくとも光源である太陽のを追尾していたので、ズレを視野角だけに落とし込むことができたという意味では、太陽時追尾にしていたということの意味はあったという結論でいいのかと思います。 


その他誤差

他にもまだ無視できない変化が残っているのか、ここまでの説明でばばっちり動かない影を再現できるのか?細かいところでは例えば、太陽光は実際には平行光でないので影の大きさは地球の大きさより小さくなること、スクリーンである月までの距離が観測者から変わることなど、細かいズレがあるはずです。

これらの誤差は無視できるのかできないのか、それらを含めてこの視野の補正を赤道儀にどう伝えるかを考えて実装し、その後の月食で本当に影が動かなくなるのか検証することになるのかと思います。長々期的な計画ですね。うーん、やっぱり現実的には難しいかな...?


まとめ

最初Twitterの議論で視野による誤差があると聞いて、あまり理解できていなかったのですが、自分で改めて考えることでだいぶん理解できたのかと思います。

やっていることは特に難しいことではなく、それこそ頑張れば中学生くらいでも理解できるようなことなのですが、できる限り文献や資料は見ないで、シンプルに太陽と地球と月の位置関係と、地軸と月の公転軌道だけから、自分頭の中で考えることで色々理解できてくるのはとても楽しいです。しかも実際に撮影したものと正しいと思われる月の見た目の位置関係の比較から、そのズレが計算値とかなり一致し、そのズレ方もうまく説明できたというのは過去の偉人たちの足跡を辿るようで、なんとも言えないいい気分です。

うーん、これだから天文趣味はやめられません。
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 

皆既月食の一連の結果です。前回の天王星食の記事からの続きです。


皆既月食の記事も佳境となってきました。メインの結果は今回で最後です。今回は、FS-60CBで赤道儀の追尾レートを太陽時で撮影した、4時間分の大量の画像です。


地球の形を位置合わせなしで

今回は一連の皆既月食の記事の中でも、目玉に相当るする回です。赤道儀の追尾レートを太陽時にして、月食の光源である太陽の移動速度に合わせることにより、地球による影を固定するように追尾します。影を映すスクリーンは公転運動で動いていく月です。月食の間の約4時間の間、1分に1枚撮影することで、うまくすると撮れた画像の位置合わせを一切することなく、影の形がそのまま地球の形になると期待しての撮影です。

実はこの位置合わせせずに地球の形を出す方法、昨年の限りなく皆既に近い月食の時から考えていて、太陽時に合わせればいいのではとの考えに至りました。でもシミュレーションしてみると、撮影中に月が上の方に移動していきます。上に移動していく理由は先の記事で書いていますが、一言で言うと地球の地軸の傾きのためで、地球の自転軸に垂直な面とと月の公転軌道面に差があるからです。赤道儀は赤経のみが追尾するので、赤緯を動かさない限り上下移動には対応しきれないのです。

Stellariumでのシミュレーションの結果から、画面の横方向にで2度角程度、縦方向でも2度角程度移動するようです。月の視直径が30分角程度なので、月が最低4個分、できれば6個分くらい入るような画角になります。左右だけでなく、上下にも十分な画角で撮影する必要があるため、今回は焦点距離の短い鏡筒FS-60CBを選びました。


機材

今回の機材は皆既月食で4つ出した機材のうちの一つで、これまで紹介してきた3つに続き最後になります。
  • FS-60CB + マルチフラットナー + ASI294MC + Advanced VX
です。SharpCapで撮影します。他の機材同様に、皆既月食時に合わせた長い露光時間と、満月時に合わせた短い露光時間の2種類をSharpCapのシーケンサーを使い30秒ごとに切り替えて撮影します。一つはグキの明るい部分用で、5msでゲイン120、もう一つは月食部分用で500msでゲイン240です。明るさの差は露光時間で100倍、ゲインで120 =12dB=4倍で、合わせて400倍になります。一つ一つは5秒程度の動画で撮影し、.serファイルに保存しました。

実際の撮影ですが、最初の頃は雲が少しあって極軸調整がなかなかとれなかったので、撮影開始が遅くなってしまい、結局部分月食が始まった直後の18時13分からになってしまいました。撮影は一旦始まってしまえば、あとはひたすら触らずに放っておくだけです。それでも最初と最後、あと皆既中のちょうど真ん中あたりで雲が多くなり、暗い画像になってしまったものが何枚かあります。


画像処理

撮影した画像を見ると480個の.serファイルと膨大な数になります。HDDの容量をみると400GB超えでした。

本当はそれぞれ動画で撮影した.serファイルをきちんとスタックしたいのですが、出来上がり画像の大きさがバラバラになったり、雲が多かった場合などはスタックがうまくいかない率が高かったので、1枚画像のみの方がマシだという結論に至りました。ただ、1枚ファイルを取り出す方法に苦労しました。例えばserplayerを使ってマニュアルで1枚づつ書き出すことはできますが、全部で480ファイルあるので、あまりに手間がかかります。いろいろ考えて、結局AutoStakkert!3で「Number of frames to stack」を1にして、スタックなしで書き出すことで、.serファイルから1枚のみを抜き出すことにしました。

もう一つの問題が、暗い画像を.serで保存すると、その暗さによって諧調が16bitと認識されず、15bitやそれ以下、たとえば雲がかかってほとんど真っ暗に近いファイルは10bitなどと認識されるようです。認識というのはSer Playerでもそうですし、AutoStakkert!3でもそう認識されるので、どうも保存時にどこかで判断され、そのような情報として記録されるようです。でも実際のファイルは16bitで保存されているので、(間違った情報をもとに)表示が強制的に10bitとかになってしまうと、全面(ある色で)飛んだように表示されてしまいます。上の過程で1枚だけ取り出そうとしても色が飛んでしまった画像が取り出されるので少し困ったのですが、AutoStakkert!3の解析後のAPを打つ時に「Scaling(Fit/Ser)」のところの「Auto」のチェックを外し、「Range」をあからさまに「16bit」と指示してやることで、この問題を回避できることがわかりました。

出来上がった240枚x2セットのファイルを、前々回の記事で書いたようなPixInsightのImageContainerとHistgramTransformationを使って、適当な明るさにします。その後、Blinkを使って連番のjpegファイルに落とし、ffmpegでタイムラプスに仕上げます。当然ですが、位置合わせなどは一切しません。


タイムラプス 

まずは、満月時に合わせた露光時間が短い暗い映像と、月食時に合わせた露光時間が長いものを繋いだ動画です。切り替わりの前後10コマを、露光時間の違う2枚から不透明度を段階的に変えて合成することで、なめらかな切り替わりにしています。
影の形がほとんど動かないことがわかるかと思います。

影の形は、下の露光時間の長いものの方がわかりやすいかもしれません。
影の形は地球の形を表しています。動く月をスクリーンに、地球の形が再現されるわけです。こうやってみると、太陽と地球と月の関係が一度に見え、月食の仕組みがよくわかります。これが今回やりたかったことです。


静止画

次に、タイムラプス映像の中から何枚かを抜き出して、そのまま比較合成します。皆既時のものだけは上から被せています。

mix4_cut

でもこれを見るとやっぱり今回の作戦は失敗なのです。影の形が円になっていません。もう少しわかりやすい画像です。

output_comp_cut
月が上に昇っていったことにより、影の形が縦長になってしまっています。月が上に上がっていくのは地球の地軸が月の公転面に対して傾いているためで、地球の影を固定するという考えからは、やはりなんとかしてキャンセルしたい動きと言えます。

赤道儀で「月に追尾」とすると月が上に移動していくのを追っていく赤道儀があるらしい(Vixenのスターブックテン系列や、SkyWatcherでも動かなかったという報告がTwitterのほうでありました)のですが、実際にやりたいことは追尾レートを太陽時に合わせて、しかも月の上下の移動をなくしたいので、おそらく既存の赤道儀ではかなり難しいと思われます。

さらに、地球が自転していることによる視点の位置の移動も影響するという指摘がTwitter上の議論でありました。地球の半径が約6400km、北緯36度くらいにで観察しているので、4時間の間に2 x π x 6400km x cos(46/180*π) x 6hour/24hour = 5400km程度、地球の時点により観測点が移動します。月と地球の距離が約38万kmなので、ざっくり1.4%になりますが、そこまで大きな影響ではなさそうです。

もう仕方ないので、本来の目的からは外れてしまいますが、月が上に移動しないように位置合わせした場合を、Photoshopで各画像の上下移動だけさせて、横一直線に並べます。

mix4_cut

あれあれあれ?でもやっぱり今度も影の形がひしゃげてしまいました。ここでちょっとヘルプで国立天文台のページを見てみました。


国立天文台のクレジットが入っていればWebやSNSなどでも画像を使ってもいいそうなので、ここにも貼っておきます。赤道儀を使っていてカメラの向きも赤経移動が水平になるように合わせ込んであるので、撮影画像の上下左右と、この図の北南西東は十分一致しているはずです。とすると、この図を見る限りやはり月は時間とと共に上に移動していくのが正しいようです。

topics02-2-l

ここからはとても悔しいのですが、この図に従って時間と位置を合わせることにより合成したものが次の画像になります。あ、でも単に画像で合わせただけなので、そこまでの精度はありません。
topics02-2-l_all_cut

さらにそこに国立天文台の図と同じ位置に地球の形をいれてみると...
topics02-2-l_all_circle_cut
こんどは実際に撮影した影の形がひしゃげるようなことは全くなく、ものの見事に地球の形を再現していることがわかります。

でもこの図を作るためにどれだけ位置をずらしたかを種明かしすると
topics02-2-l_all_frames
枠の欠け具合を見てもらえればわかりますが、上下だけでなく、左右にもかなりの量をずらす必要がありました。ただ、ずれの具合を見るとなんらかの規則性はあるようで、なぜこのようなずれが起きたのか、定性的に、定量的に考える必要がありそうです。

この図ができた後にいろいろ考えてみて、定性的には視野のずれで説明できることはほぼわかってきました。ただそれが定量的にどこまで合うのか、これだけで丸々一つの記事になりそうなので、後日改めて書きたいと思います。


昨年からの進歩

まだまだ課題は残るものの、昨年の地球の形の再現は月の明るい部分は全部サチっていたので、今回は2段露光で明るい部分の月の模様も出ていて、大きな進歩かと思います。あらためて並べておきます。

all_cut
2021年11月19日の皆既に限りなく近い月食。

topics02-2-l_all_cut
2022年11月8日の皆既月食。部分月食時の月の模様が出た!


まとめ

前回の記事をアップし終えた後、電気スタンドがメインのPCのモニター落下して割れてしまい使用不能に。データを吸い出してたり、さらに体調を崩したりと、色々トラブルがあり記事の更新が遅れてしまいました。やっとデータ復旧も終わり、なんとか記事を書ける状態になりました。

そろそろ自分でも気づいてきたのですが、今回の皆既月食は撮影の時から張り切りすぎで、データ量が溢れていて全然処理が追いついていません。もう少し機材を控えてもよかったですし、もう少しデータ処理の手を抜いてもいいのかもしれません。でも今回の位置合わせみたいに、謎を解いていくのが楽しくて楽しくて仕方ありません。できるだけ資料を「見ずに」、できるだけ人に「聞かずに」、自分の頭の中で考えて、自分で計算します。実測と計算が合ったときの快感は何ものにも変え難かったりします。

膨大なファイルの処理は大変ですが、皆既最中の赤銅色など、これまで天気などの影響でなかなか完璧に撮影できなかった貴重な画像を、今回は余裕を持って撮ることができました。雲が少しあったのでそれが惜しいくらいで、もう皆既月食に関してはかなり満足して撮影できました。残る課題もありますが、ここまでの経緯から位置合わせをせずに地球の影を完全い映し出すのは、おそらく相当敷居が高いです。何か制御方法を根本的に変える必要がありそうで、今後の大きな目標でしょうか。

月食関連の記事ですが、もう少し、多分あと2回くらいは続きます。


 
 
 
 
 
 
 
 

皆既月食の一連の結果です。前回の広角撮影の記事からの続きです。


今回の記事は天王星食です。

機材

天王星食は2つの機材で臨みました。一つはその2で示した、TSA120 + ASI294MC Pro (常温) + CGEM IIでの自由撮影です。もう一つは、拡大撮影にと思って、他3つの機材の設置が終わってから準備したVISAC (VC200L) + Uranus C + CGX-Lです。

でもVISACの方は結局失敗でした。調整がものすごく難しくて恒星がおにぎり型になりやすく、天王星を見たらツノがピンピン立っていました。このことは天王星を見た直後に気付いた(思い出した)のですが、時すでに遅しで、一応撮影はしましたがあまり公開するに値しません。

TSA-120の方は焦点距離が900mmとそこまで長くないので分解能が心配でしたが、まあさすがのタカハシです、下手な大口径長焦点よりもはるかに結像してくれます。潜入の瞬間と出現の瞬間は動画で撮影し、.ser形式で保存しました。ただし、フルの解像度だとフレームレートが10以下になってしまうので、ROIでクロップしてフレームレートが20以上になる範囲で一番広い画面(3104x2116)になるように設定しました。


潜入時

まずは潜入時です。


できればクリックして画面一杯で見ると迫力があります。いやホント、すごいです。何度見ていても飽きないです。

その中の800x600ピクセルを切り出して拡大したものです。


まるで天王星が月にめり込んでいくみたいです。ピントはかなり気をつけたと思いますが、もしかしたらめり込んで見えるのはピントがずれていたせいなのでしょうか?空気の揺らぎもあるので、多少はこのように見えるのは仕方ないのかもしれません。それとも一般的にはこれがまともな見え方でいいのでしょうか?


出現時

続いて出現時です。全体像は明るい部分が多すぎて少し見にくいのですが、最下部より少し右に天王星が出てくるのがわかるかと思います。

拡大版です。こちらもあまりコントラストがよくないですが、出現時の様子がわかるかと思います。




VISACは没

ちなみにVISACで撮ったものはというと...、動画から1枚だけ抜き出した画像を示しますが、よく見ると天王星に角が立ってしまっています。
_2022_11_08_1136_1_RGB_VNG
Uranus-Cで天王星(Uranus)を撮ったので使いたかったのですが、残念ながらお蔵入りです。


そのうちに追加

まだ未処理画像がたくさんあるのですが、ちょっと時間が足りなくて未消化気味です。時間のある時にもう少し処理を進めて、適時追加していきます。



 
 
 
 
 
 
 
 


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