ほしぞloveログ

天体観測始めました。

2022年01月

前回のSCA260でのトール兜星雲の撮影で、赤道儀を反転させると星像が大きく崩れてしまいました。



日曜の昼間をかけて光軸ズレの原因を探っていました。なかなか大変でしたがなんとか解決しました。


光軸の確認と副鏡の調整

天気は雪だったり曇りだったり時に晴れたりでコロコロ変わり、赤道儀を外に出すのは憚られたので 、少し狭いですが玄関で作業です。

まずは先日起きたことの再現です。

1. 鏡筒が西側に来て水平になるように、赤道儀を回転させます。接眼部にコリメータをつけて覗いてみると、そこそこセンターにいますが、少しだけズレています。
01_West_initial

2. 次に赤道儀を反転させ、今度は鏡筒が東側に来て水平になるようにします。再びコリメータを覗いてみると大きくズレています。縦方向にマーカーが下に落ちたようなずれかたです。これだけずれているなら、前回の赤道儀を反転させた時の星像のずれも十分説明ができるのかと思います。
02_West_low

3. 赤道儀を再反転し鏡筒を西側に戻し、再現性があるかどうかを確認します。マーカーがセンターにそこそこ来ることを確認し、反転時のズレよりはたいしたことないことがわかったので、十分再現性があると言っていいでしょう。
02_West_2nd

4. ここで、接眼部にガタがあることに気づきました。持ち上げるとカタンとずれます。原因は接眼部根本の回転部の3本のネジが緩かったことです。回転の滑り具合を調整し易くするために、元あったイモネジからキャップネジに変えています。その際、3本の固定ネジも調整したのですがゆる過ぎたようです。実際には接眼部を持ち上げてガタを取った時のズレが下の写真くらいです。これは反転したときに比べても大したズレではないので、無視して3本のネジをもう少し締めてガタをなくし、先に進みます。
04_West_2nd_focuser

5. ここで一度、大したズレではないですが一応副鏡を触って中心のマーカーがセンターで同心円になるようにします。 
05_West_center

6. 次に、何がずれているか確かめるために、鏡筒を東側にして、マーカーがズレた状態で副鏡二つのネジを90°程回して大きく調整し、センターに持ってきます。副鏡調整でマーカーをセンターにすることが可能だとわかったので、この時点でなんらかの理由で副鏡がずれていると判断しました。
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06_East_centering

7. 主鏡が少しズレているようなので(上の写真の一番黒いリングが、外のリングと同心円になっていない)、主鏡のネジを2つそれぞれ90°程度回転し、調整します。ですが、主鏡のズレはそれほど重要でないことが後でわかりました。

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上部アルミプレートを外したことの影響

次は、一番怪しいと思った上部プレートを取り付けて同じようなことを繰り返します。

1. この時点では上の一番最後の写真のように、鏡筒が東側にあって、マーカーがセンターに来ている状態です。

2. 作業しやすいように鏡筒をホームポジション(鏡筒が真上に来ていて北を向いている状態)に戻し、自分で取り付けた2つのハンドルを外し、もともとあったアルミのプレートを鏡筒上部に取り付けます。

3. 再び鏡筒を東側にして水平を取りますが、マーカーはほとんどずれていません。
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11_East_after_upperplate

4. 次に赤道儀を反転させ鏡筒を西側にしてコリメータを見てみます。これでズレてなければプレートを外したことが原因で鏡筒のたわみを引き起こし、副鏡がズレたことになります。果たして...ズレは???

12_West_after_upperplate

なんと、前回見た時と同じくマーカーが下に落ちたような状態でした。ズレ幅もほとんど変わりません。ということは、上のプレートは関係ない?言い換えると、鏡筒のたわみとかではない???


じゃあ原因は?

うーん、この時点で一時中断。いろいろ考えます。鏡筒を西側、東側どちらにおいて合わせても、反転するとマーカーが下に行く。ということは重力が関わっている可能性が高いです。

いろいろ考えながら鏡筒を見たり触ったりしていると、副鏡を触ったときに「カタッ」と音がなりました。鏡筒内に手を突っ込み、副鏡を下から持ち上げるようにするとなんとカタカタ動くではありませんか!どうやら副鏡周りのネジが緩んでいるようです。

ところが、副鏡調整の3本のネジを締めても、中央のネジをかなり締めてもまだ同じようにカタカタ動きます。副鏡がどうやって取り付けられているのかわからなかったので一旦外そうと試みますが、SCA260の副鏡はかなり大きくて、スパイダーの隙間から出てきそうにありません。スパイダーごと外すか迷ってネジに手をかけて緩めようとしてふと立ち止まりました。

もしやと思って、手をつっこんで副鏡を回転させてみると、なんと副鏡をネジを締める方向に回すとうまく固定できるではありませんか!実際、一回転以上の緩みとなっていて無視できないような量でした。

この緩みが最初からあったのか、途中からあったのかわわかりませんが、副鏡が緩んでガタつくことがあり得るということは心に留めておいた方が良さそうです。ちなみのこの副鏡のガタ、少し触ってくらいでは多分気づきません。鏡筒内に手を突っ込んで副鏡全体を手でつかんでわかるくらいです。


一難去って、また一難、真の原因は?

これで問題解決のはずなので、嬉々として鏡筒を東側と西側でそれぞれ水平にして念のためマーカの位置を確認します。さて、結果はというと....

13_submirror_screw

え、え、え???

ズレの量は3分の1くらいにはなりましたが、まだ有意にズレが残るようです。

念のため副鏡を揺らしてみると、それでもまだ少しカタカタ揺れるではありませんか!!!

もう副鏡はきちんとねじ込んであるのでしっかり固定されています。それでも微妙にどこかがカタカタ揺れるのです。

いろいろ触っていてわかったのですが、結論としては二方向あるスパイダーの片方の張り具合が十分ではありませんでした。鏡筒外側の大きなマイナスネジを両側で締め込み、十分なテンションを持たせることで、やっと揺すってもガタガタいうことは無くなりました。

IMG_4334

この時点で再び東西でマーカー位置を比べると、やっとどちら向きにしてもセンターに止まり、動かなくなりました!!!

おそらくですが、このスパイダーの緩みは上部プレートを外したことによって引き起こされた可能性が高いと思っています。上部プレートはそこそこの強度を保っていますが、スパイダーの張力と釣り合っていたはずで、プレートを外した瞬間にバランスが崩れたるんだのかと推測しています。この場合は完全に自己責任ですね。


結局プレートを外してもOK

その後、上部アルミプレートを再び外し、ハンドルに取り付け元に戻します。ここでも一応東西でマーカーのズレがないことを確認し、作業終了です。

プレートが原因でないことはかなり助かりました。プレートを再び取り付けなければならないとなると、また慣性モーメント激増で、揺れとの戦いに戻るからです。


まとめ

実際の原因は、予測したものと全然違っていました。むしろ予測よりもっと単純なものでした。でもこんなのでさえ、見つけるのは結構大変なんですよね。

今回2つの問題がありました。
  • 一つは、副鏡が回転してしまっていてきちんと固定されていなかったこと。
  • スパイダーの張りが十分でなかったこと。
これらがいつ発生したかは不明です。後者はおそらくプレートを外した時ですが、前者は一回転以上とかだったので、後から緩んだ量としてはちょっと多すぎるかと思います。M33とかでも赤道儀反転はしていましたが、天頂付近だったことと、まだ揺れとの戦いの最中だったので気づかなかったのかもしれません。実際、トール兜の一夜目の時もシーイングが悪いとこんなもんかと思っていました。

いずれにせよ、今回きちんと原因が確定して解決の方法もわかったので、今後SCA260での南天時の赤道儀反転も心置きなくできます。今後同様な問題が再び出たとしても、ここら辺を疑うことで回避できるのかと思います。

今回のように、マニア向けの天文機材の場合、問題が起きた場合や普段の調整なども含めて、ある程度自分で解決することが必要となります。これを不満と感じてしまうか、楽しいと感じるかは人それぞれかと思いますが、少なくとも私はこういったトラブル解決や改良などが楽しくてたまらなくて、天体趣味の大きな動機になっています。

次回撮影でどんな成果がでるか、とても楽しみです。


完璧ではないですが、やっと3分露光で満足のいく星像になってきました。でも深刻な問題が発覚です。

少し晴れたので撮り増し

この日は明るいうちからSCA260の光軸調整 。どうも光軸がずれている疑いがあったからです。

赤道儀に載せて遠くの南東方向にある山の上の鉄塔を導入し、常時取り付けてあるASI294MM Proの画像を見るのですが、像が結構ブレるのでやはり光軸があっていない様子。画面を見ながら副鏡を合わせようとしますが、結局どのネジをどの方向に回せばいいのか目処が立たず諦めました。

カメラをホイールとオフアキごと外して、アイピース口に付け替えコリメーターを挿します。こちらの光軸合わせはとても簡単で、マニュアル通りに副鏡と主鏡を合わせますが、5分とかかりません。コリメータで見る限り実際に結構ずれていて、副鏡とさらには主鏡も合わせ直してから再びカメラで同じ鉄塔を見てみると、かなり満足するくらいの像になっています。この像と比べると、やはり最初に触る前に見た像は常時ブレていてお世辞にもいいとは言えず、副鏡を触る前にすでに光軸がずれていたということかと思います。

ここまでの結果から、コリメータで合わせることで(少なくとも撮像を見て闇雲に調整するよりも)十分な光軸調整ができると結論づけていいかと思います。

この状態で夜を待ち、導入がてら調整時と同じ南東方向のリゲルを見ると、ディフラクションリングらしきものが見えます。光軸があったからなのか、シーイングがいいからなのか、いずれにせよ色々試せるチャンスです。リゲルBもきちんと写りました。ちなみにその後シリウスを見ましたが、シリウスBまでは見ることができませんでした。まだ低空だったこともあり、目で見ても少し瞬いて見えたので、劇的にシーイングがいいというわけではないと思いますが、そこまで悪くはないようです。

この状態で前回同様トール兜星雲をHαとOIIIで撮影します。撮影途中の画像を見ても、おそらく前回のよりもシャープに見えます。

スタック直後のHα画像です。
masterLight_BIN-2_EXPOSURE-180.00s_FILTER-HA_Mono
明らかに微恒星までシャープになっています。

前回と今回で比べてみましょう。切り出しはPixInsightのAberrationInspectorを使いました。

前回のHα: 恒星がボケボケといったところでしょうか
masterLight_FILTER_HA_Mono_integration_mosaic

今回のHα: 恒星が明らかに小さくシャープですが、その一方暗い星は透明度が悪かったせいか写っていません
masterLight_FILTER_HA_Mono_integration1_mosaic

この差が光軸のせいなのか、シーイングのせいなのかは切り分けは難しいですが、少なくともこの鏡筒は今回のレベルで星像を出せるポテンシャルがあるということがわかります。実際、今回のレベルで撮れればそこそこ満足です。

採択率もHα: 10枚/13枚 = 77%、OIII : 14枚/17枚 =  82%なので、 3分間露光での撮影はまあ合格と言っていいでしょう。

と、ここまでだけ見ると十分な結果なのですが、その後の撮影で深刻な問題があることが判明しました。


赤道儀を反転させると...

南天時を超えて赤道儀を反転させた後です。そのまま撮影したのですが、画像を確認して愕然としました。星像が目に見えて崩れているのです。念のためピントを合わせ直しました。中央でピントを合わせても四隅がかなりずれてしまいます。

masterLight_FILTER_HA_Mono_integration_mosaic

一見揺れでブレたように見えますが、これが同じような星像で何枚も続くので、おそらくブレではなく光軸ずれかと思います。

その後、再度赤道儀を反転させ元の状態に戻して撮影してみると、完全ではないですがそこそこ星像は戻ります。なので少なくとも反転で光軸がズレているのはほぼ確定でしょう。


どこがずれたのか?

まだどこの部分がズレたのかは不明です。3つの可能性があるかと思います。
  1. 可能性が高いのが副鏡。以前コメントでタカsiさんが指摘してくれていたように、鏡筒上部のアルミのバーを外して強度的に不足している可能性があります。
  2. 主鏡自体の重量で支えきれていなくて傾いた可能性がもう一つ。
  3. 接眼部には対物側からEAF、オフアキ、フィルターホイール、冷却CMOSカメラとそこそこの重量が搭載されているので、ここで撓んでしまった可能性も否定できません。
最初に書いたように、コリメータを使うことで光軸のズレは明らかに判明します。明るいうちに赤道儀を交互に反転させて、コリメータで見ながらどこがズレているのかある程度わかるかと思います。
  1. もし上部プレートを外したことによる強度不足が問題になった場合にはいろいろと難しくなってきます。プレートを戻さずに赤道儀を反転するたびに光軸調整をするのか、
  2. プレートを戻してまた揺れと戦うことになるのか、
  3. プレートを戻してもっと強度のある赤道儀を真剣に考えるか
主鏡が問題の場合でも念のため上部プレートは戻して確認することになる思います。あまり無いとは思いますが、万が一接眼部だった場合はプレートは関係ないはずなので今のままで、接眼部の補強とかになるのかと思います。

明日の日曜の明るいうちに試そうと思います。実は最初テーブルの上で鏡筒を上下逆さにすることで試そうとも思ったのですが、赤道儀に載せて南天を見た場合左側、もしくは右側の片側が固定されて吊るされたような状況になるので、再現のためには赤道儀に乗せることは必須かと思います。今日土曜は小雨で赤道儀を外に出すことができませんでしたが、明日は曇りなのでなんとか外に出して検証してみるつもりです。

ずっとネタ不足でブログの更新が滞っていましたが、久しぶりの更新です。

シリウスB

北陸の冬は星好きには本当につらいです。もうほとんど晴れてくれません。

2022年1月22日(土)、天気予報では短時間の晴れだったのですが、この日は本当に久しぶりにしばらくの間快晴でした。21時頃でしょうか、外に出るとかなり雲が少なくなってきています。早速赤道儀を出します。鏡筒をどうするかは迷ってましたが、シンチレーションを見てあまり良くないのでSCAとしました。

と言うのも、シリウスBキャンペーンが始まっていて久しぶりに見たくなり、満月の少し前の日にTSA120でチャレンジしたのです。結果は惨敗。眼視ではリゲルBも見えなくて、カメラで撮ってスタックして炙り出してやっと見えたくらいです。当然シリウスBは影も形もなく、シリウスBキャンペーンはとりあえず2年近く前に撮影したもの投稿しました



当時の記事を読んでもわかりますが、少なくとも夜空を目で見てチカチカしているようでは小口径の場合は問題外ですね。

というわけで、この日は目で見てシリウスがチカチカしていたので普通にSCA260で撮影することにしたというわけです。 シンチレーションがよくないのでFS-60CBとかでもっと広角とかいう手もありますが、SCA260はまだまだ試したいことがたくさんあるのでこちらが優先です。


トール兜星雲

今回のターゲットはNGC2359: トール兜星雲です。おおいぬ座のシリウスの近く、カモメ星雲のすぐ下あたりにあります。2つの星がちょうど兜の目の様になっているのが特徴です。1月あたりだとちょうど日が落ちる頃に東から出てきて、ほぼ一晩中出ています。南天時で40度とそこまで高度が上がらないので、いい状態で撮れる時間はそれほど長くないかもしれません。

実は昨年12月2日にSCA260とEOS 6Dと DBPフィルターを使い、これまでで最長の3分露光でトール兜星雲を撮影していました。
masterLight_ABE_ABE_clone_cut.ajpg

たまたま地面振動の影響を見ようとして三脚の下に柔らかい防振シート(手で赤道儀を揺らすと全体が簡単に動くくらいの柔らかさ)を入れたのですが、風が強くてグワングワン揺れたみたいです。撮影時間はほぼ3時間なので、淡いところもそこそこ出ていますが、シンチレーションもかなり悪く、ピントを合わせきれなかったこともあるかと思いますが、見るも無惨な分解能で、SCA260の性能を全く引き出し切れていないのでお蔵入りです。今回の撮影はこれのリベンジの意味もあります。


今回の目的

今回のSCA260での撮影の目的は
  1. 3分露光で揺れの影響なく星がきちんと点像になるか確認すること
  2. SCAでナローバンド撮影(今回はAOO)を試すこと
  3. EAFの導入テスト
とします。

IMG_4285
雪を避けての撮影でした。

前回12月の6Dの撮影では防振シートの柔らかさと風で揺れ過ぎていたので、今回は防振シートを無くして、3分露光できちんと揺れずに撮影できるかを見ます。

さらに月夜なのでカメラをASI294MM ProにしてAOOのナローバンド撮影としました。


EAF

あとピント合わせの不定性をできるだけ無くしたいので、今回新たにZWOのEAF(Electronic Auto Focuser、電動フォーカサー)を導入しもう少し定量的にピント合わせができないか試しました。

IMG_4289


EAFは現行バージョンではなく、2020年の福島のスターライトフェスティバルで特価で購入した旧バージョンで12V電源が別途に必要なものです。長い間塩漬けになっていました。

とりあえずはオートフォーカスとかではなく、単なるマニュアルでいいところを探します。でもオフセットをきちんと入れておかないと、バックラッシュが大きいのであまり精度よく合わせられないことに気づきました。とりあえず今回ドライバーレベルで100程度の値のオフセットを入れておきましたが、あまり真面目に合わせていないので、もっと大きい値になるかもしれません。精度的には50ステップくらいの差でピントが変わるのがわかります。そこそこは合っているはずなので、これで星像が出なければ赤道儀の揺れか、シンチレーションが原因ということになりそうです。

このEAF、ピントの精度が出るのはもちろんいいことなのですが、それよりもリモートでピントが合わせられるという事が私にははるかに大きなメリットでした。一旦取り付けると手でピント合わせをするのができなくなってしまうので、撮影専用鏡筒とするまでは取り付けるのを躊躇していたのですが、いもねじを緩めればマニュアルフォーカスも可能なので、現行機種にして数を増やしてもいい気がしています。

EAFを導入することで、撮影前の準備は極軸調整、初期アラインメント、カメラ視野回転を終えてしまえば寒いのでとっとと家の中に入ってしまうことができます。ピントは結構な頻度でチェックするので毎回外に出るのが辛かったのですが、今回はそれがなくなるだけで相当楽になりました。


撮影

実際に撮影した画像を、撮影途中で見てみると、何枚かが右斜め方向にずれていることがわかりました。風があるとやはり一方向にずれが出るようです。それでも点像になっているものもあるので、3分露光がなんとか実用といったレベルでしょうか。SCA260自身の軽量化が効いてきたようです。

一方向のずれとは別に、四隅のうち右上のみ放射方向に流れてしまっています。鏡筒の接岸部に(星を始めた頃に買った御三家クラスの格安の)オフアキとフィルターホイールが入っています。さらにねじ込みでオフアキ、ホイール、カメラの回転角を合わせるために、クリアファイルをサークルカッターでカットしたリングと厚さ微調整のためのセロテープなどを使ってあるので、もしかしたらカメラのスケアリングがずれている可能性もあります。

OIIIを10枚、Hαを10枚撮ったところで、少しSCA260の主鏡の向きを調整しました。これで右隅の流れはかなりマシになったのですが、光軸がすでにずれている可能性があるので一度見直す必要がありそうです。

オフアキは買い替えたいです。一応星は確認できるのですが、AS120MM miniの感度では星の数がかなり少なく、PHD2のマルチスターガイドではせいぜい2-3個しか認識してくれません。もう少しプリズムが大きい(幅広い)ものがよくて、ZWOのか、Askarからも新製品出るらしいので、それを見て良さそうな方を買ってみようと思います。

撮影中は月齢19日の月が出ていたので影響も気になりますが、冬の北陸で贅沢なことは言ってられません。晴れた日というだけで貴重で、月のことまで気にしていると本当に撮影日が冬の間中0になってしまいます。以前ノーフィルターで月夜でM78を写しましたが、今回はナローなのでまだマシでしょう。

結局2時間強の撮影時間でした。OIIIとHαを30分ごとに交互に撮影したので、枚数のバランスはそこまで悪くはありません。ここからどれだけ救い上げることができるかです。


画像処理

フラットとフラットダークはいつもの様に別の日に明るい壁を写しました。フラットフレームを見るとすごい数のホコリが存在することがわかりました。

masterFlat_BIN_2_FILTER_HA_Mono_integration_ABE

4次のABEをかけて強いオートストレッチで強調しているとはいえ、ひどいです。HαフィルターでもOIIIフィルターでも同じような位置に見えているのと、リングの大きさが同じなので、おそらくカメラの保護ガラス面かと思います。でもこのモノクロカメラまだそんなに使っていないのでここまで汚れているのが信じられないです。SCA260はF値が5程度なのであまり目立たないはずなのですが、もしかしたら別の理由で目立つような光学系なのかもしれません。これだけ目立つのに、撮影時のライトフレームのオートストレッチでは全く気づかなかったのでそれほど深刻ではないかと思います。さらに、フラット補正をしたスタックしたライト画像でも、たとえ強度に炙り出してもこれらのリングは一つも確認することができなかったので、とりあえずは大丈夫だとは思うのですが、一度チェックして必要なら清掃する必要がありそうです。

ダークは今回初めての3分露光なので、改めて撮影します。カメラのゲインは120が感度的にもダイナミックレンジ的にも有利なので、基本120を使うことにしています。露光時間は今後3分を最長とするとして、淡い天体の場合は今後ゲイン200(ゲイン0の10倍)とか、220(ゲイン120の3倍)とか、300(ゲイン0の30倍)とかキリいい値にする可能性がありますが、その際はそれぞれまたダークライブラリーを増やすことになります。ゲイン120のダークフレームは今後使うことも考え、少し多めの100枚ほど撮影しました。

結局使ったライトフレームは星像が流れているものなどを除いたHα17枚、OIII19枚の計36枚でした。全撮影枚数がHα23枚、OIII31枚の計54枚なので、採用率は67%となります。最初のころのブレブレのひどい星像から考えると、まあなんとかギリギリ実用範囲になったのかと思います。



画像処理はいつものようにPixInsightのWBPPです。

画像処理の過程で、まだいくつか問題がありました。一つはOIIIとHαを合成する時に、背景があまり合わなくてムラができることです。フラットがうまく撮れていない可能性があります。確かに部屋の中の壁だと窓側から光が一方向で入ってくるので、ライトフレームの背景に比べて1次の傾きのようなものが出ます。でもその傾きをABEで省いても、それより高次のムラが残ってしまいます。結局今回はHα画像とOIII画像がスタックされてすぐにAOO合成をした後、ABEを使わずにDBEで点をたくさん打ちムラを取りました。本当にムラなのか、それとも本当は大きな構造が存在するのか判断ができませんでした。

あと、バーダーのHαとOIIIフィルターは何故か周辺減光が大きいです。同じバーダーでもRGBフィルターはそんなことはないので少し不思議です。この周辺減光はSNのかなりの低下を引き起こし、画像処理で取り切ることができる範囲を超えています。ナロー版とフィルターはフィルターフレームから取り外してホイールに取り付ける方がいいのかもしれません。また、上記のムラのことも考えると、ライトフレームの撮り方を根本的に考えた方がいいかもしれません。


格子模様ノイズ

画像処理をしている途中で、深刻な格子状のノイズが出てくることがわかりました。スッタクした直後は気づかなかったのですが、炙り出しの途中で目立つようになってきました。少し強調して画像を載せておきます。
Image07_DBE_DBE_ABE
わかりにくいかもしれないので、クリックして拡大してみてください。

以前もSCA260での撮影時に同様のノイズが出たことがあって、その際マスターフラットによく似た格子模様があったのでフラット撮影時の壁の模様が怪しいと睨んでいました。今回もフラットに格子状模様は見つかったので、フラットダークを無くした処理を試したり、フラットを撮り直すことを考えたりしましたが、結論としては原因は別にありました。

格子模様を見てみると、完全に水平垂直ではなく、少し斜めになっています。もしかしたら何か回転に関連することかと推測しました。結局原因はPixInsighのDynamicCropだったのです。前々回の記事でカメラの回転角を合わせる方法を書いたのですが、今回はそれをやるのをサボって光条線とSharpCapのクロスラインを合わせてしまい2°位の誤差が出ました。これを補正することと、フィルター径による周辺減光部分をカットしようとしてDynamicCropを初期のリニア処理の段階で使ったのですが、この影響が炙り出しで出てきてしまったようです。この過程を省くことで格子状ノイズを回避することができました。上と同様の処理をした画像を載せておきますが、格子模様は出てません。クロップしてないので、少し大きな範囲になっています。

Image28_DBE_DBE_ABE_norot

ただし、まだDynamicCropの何が悪いのか特定まではしていなくて、おそらくは拡大縮小よりは回転が原因かと推測しています。もう少し言うと、DynamicCropの回転とSCA260でのフラットの格子状ノイズ(こちらはどうやらflatdarkから、もっと言うとbiasフレームからきているように思われます)の複合要因の気がしています。これまでも回転は使ってきたことはあって、そこでは問題になった記憶がないからです。

今回はDynamicCropをストレッチが終わった後に適用することで回避しましたが、それでも強度の炙り出しでは少し出てきてしまいました。この件、もう少しつっこんで解析する必要がありそうです。


仕上げ

その後の画像処理は通常の様にASとHTでストレッチして、その後はPhotoshopに渡し炙り出します。

「NGC2539:トール兜星雲」

Image11_DBE_DBE_AS_HT_HT_crop7

  • 撮影日: 2022年1月22日22時2分-23日2時5分
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: SHARP STAR製 SCA260(f1300mm)
  • フィルター: Baader Hα:7nm、OIII:7nm
  • 赤道儀: Celestron CGEM II
  • カメラ: ZWO ASI294MM Pro (-10℃)
  • ガイド: オフアクシスガイダー + ASI120MM mini、PHD2によるマルチスターガイドでディザリング
  • 撮影: NINA、Gain 120、露光時間3分、Hα17枚、OIII19枚の計36枚で総露光時間1時間45分
  • Dark: Gain 120、露光時間3分、107枚
  • Flat, Darkflat: Gain 120、露光時間0.2秒、Hα、OIII各:128枚
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC
一応淡い部分もなんとか出ましたが、今回は撮影時間が1時間45分と短く、また月夜だったこともあり、かなりノイジーで、炙り出すのも限界があります。そのこと自身は露光時間を伸ばすことで解決できるのでいいのですが、不満なのが微恒星が全然シャープでないことです。この日はシーイングがかなり悪かったので、シーイングの良い時を狙って撮影し直してみたいです。というよりは、やっとシーイングについて議論できるくらいに揺れが収まったと言っていいのかと思います。

背景のに青カブリの残りも微妙です。撮り増しとフラットの見直しが必要かと思います。


まとめ

揺れに関しては3分露光でなんとかなりそうなので、ある程度解決しつつあると思います。EAFもかなりいいので、買い増しすることになるでしょう。オフアキも買い替えたいし、なかなか予算が追いつきません。細かいものでも数万はすぐにいってしまうので、計画的に進める必要がありそうです。

いずれにせよ、撮り増しして撮影時間を伸ばす必要がありそうですが、冬の登山の天気の悪さは如何ともしがたく、果たしていつになることやらといったところです。あせらず、気長に進めます。

SCA260の撮影時、右下に変な模様が出るので、接眼部を一旦バラして見てみました。これをきっかけに色々発見がありました。

変な模様の原因

天気が悪いなりにも、折を見て適時撮影を試しているのですが、何か変な右下に模様があることに気づきました。。
ASI290MMPro_dust

流石にこれだと画像処理にも困りそうなので、原因を探ります。
  1. まず、鏡筒先端にカバーをつけてダーク状態で模様が見えることを確認します。
  2. フォーカサー部分を丸ごと回転させてみます。SharpCap画面上で模様の位置が動かなかったので、原因はフォーカサーより後ろ(カメラ側)ということになります。
  3. 次に、カメラのみホイールとの接合ネジを緩めながら回転させてみます。それでも模様の位置が動かないのでカメラが原因ということになります。
  4. 一旦カメラを外して、キャップをつけセンサーに入る光を遮り模様が見えるか試します。ところがここで模様が消えてしまいました。
  5. この時点で少し迷いますが、キャップをつけて真っ暗になったら見えなくなったので、何か光に対する影で、センサー面に何かついているのではないかと考えました。少し光を入れるとやはり模様が出てきました。
  6. センサー面を見ると、かなり大きな繊維のようなものが付いていました。
  7. ブロアーで吹き飛ばして、再度画面から模様が消えたことを確認して完了です。

とまあ、ここまでは特に何のことはないホコリ取りだけです。


光漏れの最大原因

でもふと我に返って思いました。

「あれ?なんで鏡筒カバーしてるのに
光が入ってるんだろう?」

そもそもホコリは光が入っていないと見えません。一番最初に書いた「鏡筒先端にカバーをかけてダーク状態を作り出した」というのは全く嘘だったようです。

そもそもこの作業は昼間の明るい部屋の窓際で行いました。最初のダークだと思っていた状態で窓のカーテンを開け閉めすると、SharpCapでの画面の明るさが思いっきり変わります。明らかに鏡筒のどこかで光が漏れています。具体的には画面の真ん中に丸い明るい領域がドカンと居座ります。

次に試したことが、再びカメラを外してキャップをします。鏡筒につけている時より遥かに暗くなり、バイアスノイズらしきものが見えてきます。でもこれでも真っ暗ではないようで、太陽光をカメラに当てた時と、カーテンの影に置いた時でSharpCapでの画面の明るさが変わります。ただし、変わるといっても微々たるもので、カメラを鏡筒につけていた時から見たら誤差の範囲です。

再びカメラを鏡筒に取り付けます。カメラ単体よりもやはり遥かに明るいです。色々試しながらどこから光が漏れているか確認していきました。途中最も怪しいと思ったところがオフアキの継ぎ目でした。下の写真で見てもわかるように、アダプターに3箇所切れ目が入っていていかにも光が漏れそうです。パーマセルテープなどをつけたりして確認しましたが、どうもここが原因なような、原因でないような?

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結論を言うと、オフアキ部は白で光漏れは確認できませんでした。

本当の原因はフォーカサー。下の写真のようにフォーカサーを一番短くすると光の漏れはかなり小さくなります。
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逆にフォーカサーを一番伸ばすと、相当量の漏れになります。
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真ん中に明るい丸い部分が出てくるのがわかります。漏れ光の量はフォーカサーの引き出し量に比例します。

フォーカサーを最大限引き出しても、隙間にパーマセルテープを貼り付けるとかなりマシになり、最も縮めた場合と同程度となります。
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SCA260_forcuser_longest3

これはフォーカサー固有の問題なので、おそらくSCA260だけのことではなく、同様の形のフォーカサーにかなり一般に言えるのかと思います。なので、

もし撮影画像の真ん中が
明るくなるようなことがあったら
フォーカサー部からの光漏れを
疑った方がいいかも

ということが言えそうです。今回はこのことが言いたくて記事を書いています。特に、カメラを代えたら突然真ん中に明るい丸が出たとか言う場合は、カメラが原因ではなくて焦点位置が変わったためフォカサーを引き出して光が漏れるようになったことが原因とかかもしれません。


その他の光漏れ

では漏れに関してはフォーカサーさえきちんと対処すれば完璧かというと、まだそうではありません。よくよく調べると、ファンのところからも光が漏れていることがわかりました。SCA260には鏡筒内の温度を外気温と早く同等にするために、接岸側に3つのファンがついています。

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ここは穴のようなもので、光がどうも鏡筒内に漏れ入るようで、ここを塞ぐと明らかにSharpCapの画面の明るさが変わります。それでもフォーカサーでの漏れ光と比べると誤差の範囲になってきます。さらに先にも書きましたが、カメラ単体にも漏れ光があります。比較すると

フォーカサー >> ファン > カメラ

といったところでしょうか。

これは明るいところで比べたので漏れ光としてSharpCapで確認できましたが、DSOなどの撮影時は鏡筒周りは十分暗くなるはずなので漏れ光は理想的には問題にならないはずです。ですが実際には光害があったり、赤道儀やバッテリーのLED、様子を見るためのヘッドライトなどの光、遠征地ではたまに来る車のライトなど、必ずしも真っ暗ではないことも多いです。このような環境下では漏れ光は十分に問題になることもあるでしょう。大原則は一番漏れるところを抑えること。今回の結果ではフォーカサー部です。最短状態に縮めて使えればいいのですが、そんなことは稀なので、光を通さないパーマセルテープや適当なカバーなどでフォーカサーの可動部の継ぎ目を塞ぐといいのかと思います。

現実的には、実際の撮影時に真ん中に明らかに明るい部分がある場合、もしくはフォーカサーを縮めた状態から撮影する位置まで伸ばした時に、SharpCapで見て明るくなるかどうかで判断すればいいのかと思います。

あと鏡筒先端につけるSCA260付属のカバーですが、柔らかいものでいささか心許ないと思っていたのですが、遮光性はバッチリでカーテンの開け閉めでも漏れ光は確認できませんでした。


他の鏡筒との比較 

かなり以前、MEADE 25cmで撮影した際に真ん中に明るい部分が出たことがあります。その時は原因がわからなかったのですが、実はこの時も同タイプのフォーカサーを使っていたことを思い出しました。今となっては確かめられませんが、フォーカサーが原因だったのかもしれません。

SCA260が設計時に参考にしたと言われているタカハシのCCA250ですが、このようなタイプのフォーカサーは使っていません(持ってないので実際には見てないですが)。代わりに、モーターで副鏡を移動させることで焦点を変える方式を採用しています。何でそんな面倒なことをするのかと思っていたのですが、もしかしたら設計時にフォーカサーの欠点を把握していたとかかもしれません。


まとめ

ちょっとしたホコリ対策から光漏れを調べる事になってしまいましたが、これまでそんなことは全然気にしていませんでした。何事も当たり前と思わずに、常に何が正しいか、疑いを持つくらいで進めた方がいいのかと思います。特に私は自宅撮影が多いので明るい場合も多く、これまでも光漏れとかもあったのかもしれません。



せっかくの素晴らしい画像なのに回転角がずれてる!?

Masa@MasaAstroPhotoさんの超長時間露光の北アメリカ画像を開いたときに、何度かカメラの回転角を合わせた形跡がありました。

masterLight_BIN-1_EXPOSURE-180.00s_462

スタックされた画像を解析してみると、約9.5度南北からズレていることがわかりました。Annotationで赤経、赤緯の線を入れるとはっきりしますね。

masterLight_clone_Annotated

私は「天体写真は必ず北を上にしなければならない」とか言う暗黙のルールは特にこだわる必要がないと思っていて、例えどの方向が上でも、さらに東西南北以外の任意の角度が上でも全然構わないと思っています。ただし、今回のように露光ごとに角度が変わっているのは、場所によって露光時間が変わってしまい、均等な画像処理がしにくくなり、出来上がり精度も変わってくるので、もったいないと思います。

今回もあえて10度位ずらしたというなら全然問題ないのですが、途中でずれているところを見るときちんと合わせきれなくてずれてしまったのではないかと推測します。もし本当にそうだとしたら、ここまで丁寧に撮影した画像から言ったらちょっとした悲劇です。

なので今回の記事では、カメラの回転角を簡単に合わせる方法を記しておきたいと思います。


カメラ回転角を合わせる方法

私がこれまで処理した画像はよくAnnotationで赤経赤緯度の線を入れるのですが、画像処理の時に回転で合わせているのではなく、撮影時に合わせてしまっています。ほとんど1度以下くらいの精度であっていると思います。これくらいの精度では簡単に合わせることができます。

といっても新しい方法ではなく、やっている人は普通にやっていると思います。私はFacebookでSさんの書き込みから学びました。

カメラの回転角を合わせるのはいろんな方法があると思います。カメラに水準器を貼り付けているのも一つの方法ですね。鏡筒のスパイダーがきちんと縦横に向いているのなら、それが縦横に向くように合わせるのも一つの方法ですが、これは屈折だと使えないですね。

今回示す方法は至って簡単です。
  1. 赤道儀、鏡筒をセットし、カメラを取り付けその映像を見える状態にする。
  2. 赤道儀を適当に動かして目立つ星を導入して、画面に映す。
  3. 赤緯を一方向に動かして、その時の星の動きをPCの画面などで見る。
  4. この時、星がぴったり水平、もしくはぴったり垂直に動くならカメラの回転角は合っています。SharpCapなら同心円のレチクルを画面上に出しておくと縦横の線が出るのでわかりやすいでしょう。
  5. もし赤緯をモーターなどで動かして、星がこの線に沿って動かないなら、カメラの回転角を調整してください。
これだけです。私の場合さらに具体的には、
  1. SharpCapで縦横の線を出し、
  2. ターゲットの星がその交点に来るように赤道儀で導入して、
  3. そこから赤緯を一方向に星が画面の端に来るまで動かし、
  4. カメラの回転角を動かしてその星が十字線の上に来るように
調整します。

この方法はCMOSカメラとPCを前提としていますが、一眼レフカメラでもライブビュー画像を見ることができるなら十分可能です。私はEOS 6DをBackYardEOSでPC上にライブビューを映して合わせたりして同様の方法で調整しています。


星を使わなくても、昼間でも調整できる!

基本はこれだけなのですが、ここからはちょっとオリジナルなアイデアです。といっても同じような考えを思いついた方もたくさんいらっしゃると思いますが。

この方法をよく考えると色々応用が効きます。例えば目印にするのは星にこだわる必要はないのです。要するに、赤緯の動きに対してカメラで映した画像が斜めに動かないようにすればいいので、星以外、例えば何か目立つライトとかでもいいのです。

もっと言うと、わざわざ夜を待って合わせる必要もありません。明るいうちに何か遠くの目立つものにピントを合わせて、それが赤緯モーターの動きに合わせて、垂直か水平に動けばいいので、なんと昼間のうちにカメラ回転角が調整できてしまうのです。

以前Twitterでこの方法に言及したときに一番敏感に反応してくれたのがあぷらなーとさんでした。みなさんご存知の通り、何本もの鏡筒を同時に赤道儀に載せて撮影しているあのあぷらなーとさんです。「複数鏡筒のカメラの回転角を、昼間のうちに正確に合わせることができるのでかなり時間を短縮できる」というようなことをおっしゃっていたかと思います。


まとめ

私は毎回このような方法でカメラの回転角を合わせています。極軸を合わせたついでとかでしょうか。短時間でできて、画像処理で角度を合わせ直す必要がないくらいの精度で合わせることができるので、かなり便利です。

新しい方法というわけではないですが、これまで知らなかった方はぜひ一度試してみて頂けたらと思います。

2022年の初記事ですね。皆様、あけましておめでとうございます。

年末からずっと天気が悪くてほとんど何もできなかったのですが、1月8、9、10日の連休中は北陸としては意外なほど天気が良かったです。ただしシーイングや風など色々問題もあって、結果としてはどれもイマイチでした。記録がわりに簡単に書いておきます。

土曜の太陽

そもそも今週は水曜、木曜と2日連続で、夕方からSCA260を出し、極軸をとり、カメラ回転角とピントを合わせ、撮影準備完了とともに曇って片付けるという空振り続きだったので、かなり不満が溜まっていました。連休初日の土曜日は朝から快晴。午前中はCostcoで買い物に付き合い午後から久しぶりに太陽撮影です。黒点も派手に出ているようです。ただしシーイングが相当悪かったので、結果だけ示します。

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AR2924群ですが、2つの大きな黒点と小さなたくさんの黒点がリングを作っています。問題は今のPSTだとHαの中心波長がきちんと見える範囲が画面の3−4割と一部のみで、今回のように複数の黒点が広い範囲に広がると、模様が均一に見えないことです。しかも右の黒点がピンボケのようになってしまいました。画面内でピントがずれるのはあまりないはずなのでちょっと不思議ですが、シーイングが悪かったのであまり議論しても意味がないのかもしれません。

プロミネンスもたくさん出ていましたが、一番大きなものを一つだけ処理しました。こちらもシーイングがよくないので、あまり気合が入っていません。
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土曜の月

そのまま星が見え出した夕方になだれ込み、SCA260に載せ替えて極軸を取り直しますが、徐々に雲が出始めました。まだ月がでているので、試しにSCA260とASI294MM Pro(常温)で、BIN1(ピクセルサイズ2.3μm)で高解像を狙い、RGBフィルターでカラー化してみました。撮影は星雲撮影のセットアップなのでStickPCを使っています。USBでの取り込み速度が速くないのですが、さらに間違えてfitsで保存していました。そのため0.1fpsくらいのスピードしか出なかったので、RGB各20枚のみの撮影です。serにしていたらもう少し速度が出たのかと思います。

画像処理はなかなか面倒で、まずRGB別々にAS!3でスタックします。BIN1で画素数が多いため、Regisgtaxは使えないので、ImPPGで細部出しをします。ImPPGは全面ごちゃごちゃしている太陽だといいのですが、平面がいくつかある月だとDenoise機能がないため細部にノイズが残ってしまいます。

更に問題がRGB合成です。最初PIで位置合わせしようとしましたが、星が写っていないため不可。ImPPGで位置合わせをしました。ただし、スタック時に画面を歪ませて位置合わせしているはずなので、RGBで本当に合っているかどうかよくわかりません。今回はシーイングが悪くて分解能的にも意味がなく、全くやる気無しだったので手を抜きましたが、根本的にやり方を考えた方が良さそうです。

一応画像だけ貼っておきます。

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その後、月が沈むに伴いトール兜星雲を狙っていたのですが、風がビューゴー言い出して星がすごい勢いてブレていて、やがて雲が空全面を覆ったので、あきらめて撤収しました。


Masaさんの北アメリカ星雲

連休2日目の日曜は天気が悪くほとんど何も成果がありません。Masa@MasaAstroPhotoさんからTwitterのDMで長時間撮影した北アメリカ星雲のファイルを公開するので処理してほしいとの依頼がありました。Twitterを見るとすでに何人かの方が画像をアップされています。

画像を実際に見てみると3つあって、一番短い時間のものでも23時間とものすごい露光時間です。Masaさんに了解との返事をして、夕方くらいから画像処理を始めました。あまり詳しいことは書きませんが、
  1. まずxisfフォーマットを開き明るい方でリジェクトされた画像を見ると、どうも何度か画像が回転しているようです。実際の画像は測定すると9.5度程度回転しています。そのためまずは南北を揃えて、はみ出した部分をトリミングします。
  2. 左側の緑カブリがひどかったのですが、DBEを暗い部分に3点打ちして1回、さらに4点打ちしてもう一回かけることで除去できました。
  3. PCCで恒星の色を合わせますが、QBP IIを使っているとのことなので、見た目を合わせる程度にしかならないでしょう。やはりオレンジは出にくいです。
  4. ストレッチはASSで色を保ち、かつ赤がサチらないようにHTで。
  5. あとはStarNetで星マスクを作ります。
  6. ストレッチ後の画像とマスク画像をPSに引き渡して、炙り出しです。QBP IIだと赤がのっぺりしてしまいます。そのため星雲部の青を少し出します。
  7. 超長時間露光のためでしょう、ノイズらしいものはほとんど目立たないため、思う存分あぶり出すことができます。ノイズ処理は何も必要ありませんでした。
出来上がった画像です。北アメリカ星雲真ん中の透明感を重視してみました。
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ついでにAnnotationです。
masterLight_PCC_clone_DBE_DBE_PCC_AS2_HT5_Annotated

一言で言うと、非常に楽な処理でした。長時間撮影でノイズが少ないのもそうですが、元の3枚の画像を見比べてみても、星像などんほとんど差がなく、とても丁寧に撮影したことがわかります。長時間撮影自信がそもそも大変だと思うのですが、ノイズのことを考えたら明るい星雲でもこれくらいの長時間撮影をするのがいいのかもしれません。

他の方も色々特徴的な画像処理をされています。Masaが比較検討動画を作るとのことなので結果が楽しみです。


月曜は再び太陽撮影

3日目の月曜は朝から快晴です。期待しながら太陽撮影の用意をしますが、実際に見てみるとやはりシーイングが全くダメです。午前に黒点とプロミネンスを何ショットか撮影しました。午後に少しだけシーイングがいい時間があったので少し撮影し直し、その後に雲で撤収です。

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ピントがずれているかもと思い、カメラの傾きを緩めたらニュートンリングが出てしまいました。それでもまだ右上の黒点は少しピントがずれている気がします。傾きは後で戻しておきました。

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まとめ

3日間の結果としては全く冴えなかったですが、それでも晴れ間があっただけまだマシです。久しぶりでちょっと満足しました。 

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