ほしぞloveログ

天体観測始めました。

2021年08月

前回の記事で主鏡止めマスクを作りました。



再び主鏡部を鏡筒に嵌め込み、ネジで固定したのですが、位置がいまいち確定しないので今回改めて光軸の取り直しです。


前回光軸調整の問題点

まず前回の光軸調整の反省です。前回は一度光軸調整が終わったと思って、カメラを180度回したら全くズレてしまったので、カメラにつけたCマウントレンズの光軸がずれていると考えました。そのためカメラをアダプタに押し付けながらクルクル回転させて画面の回転中心を求め、それがターゲットの副鏡固定ネジの穴の周りを回転するように、VISAC接眼部の角度を調整しました。ただ、カメラを回転させた時の中心を基準にするのであまり安定せず、この部分の誤差は大きかったはず。この誤差を小さくできないか考えてみました。


コリメータを有効利用

持っている機器で使えそうなものはレーザーを使わない一般的なタイプのコリメータです。覗き込む所の真ん中に小さな穴が開いているので、接眼部「中心から」のみ覗くことができます。また、内部に円柱の真ん中に穴を開けて斜め45度でカットしてある金属部があり、接眼部から覗いた時にこれが描く同心円から光軸調整ができるようになっています。

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また、コリメータの先端に十字のワイヤーが張ってあるので、覗いた先の方の中心もわかります。覗き口の中心と十字の中心が確定するので、軸が精度よく出るという仕組みです。よく考えてありますね。

これを接眼部に取り付けて、のぞき穴からカメラで見てみます。

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この方法の利点は、カメラで写った画像の中心点を全く気にしなくていいことです。前回は画像の中心点に、合わせたい対象の中心が来なかったことが精度を疑う要因になっていました。そのためカメラに取り付けたレンズの光軸がずれていると仮定しました。

今回の方法では、カメラで見ている「近く」と「遠く」の中心が確定するので、映っている画像の中心点は気にしなくていいです。その代わり、カメラが接眼部の「ある程度中心」から覗いているという保証が必要です。例えば極端な場合、カメラが鏡筒の横から見ていたらどうやっても十字ワイヤーと副鏡固定ネジ穴一致することはありません。これについては、コリメーターの覗き口の中心の「小さな穴」が保証してくれます。これがカメラの覗く方向をうまく制限してくれるというわけです。その証拠に、カメラのガタつきを利用して多少見ている角度を変えても、写っている画面での十字ワイヤーと副鏡固定ネジ穴の関係は全く変化なしでした。


接眼部の調整時の問題

いろいろ試したのですが、大きく分けて2つの合わせ方を検討する必要があると考えました。

 1. まず一つ目。VISACの接眼部ネジを調整して、
  • この十字ワイヤーの中心と、
  • 副鏡固定ネジの穴中心を
合わせるやり方。実際に合わせた結果が以下の写真になります。十字ワイヤーはわかりやすいように45度回転させてスパイダーとずらしています。

IMG_3260

確かに、十字ワイヤーが副鏡固定ネジの穴中心になるように合っていますが、これだと明らかにスパイダーの十字が左いずれていて、一番外側のバッフルの中心ともずれていることが分かります。


 2. もう一つの方法は、
  • 主鏡の先についている黒い筒(以下バッフルと呼びます)の先の円の中心と、
  • 副鏡固定ネジの穴中心が
重なればいいのではという考え方です。コリメータを使わない場合は、おそらくこの方法がよりどころになるはずです。この考えで合わせたのが下の写真になります。

IMG_3257


ところが、この合わせ方ではコリメーターについている十字ワイヤーがずれてしまうのです。中心のすぐ右にピントはボケていますが黒い線が見えているのがわかると思います。縦のスパイダーのすぐ右のところにもずれたワイヤーが見えています。


少し議論

上の二つの方法ですが、どちらが正しくて何がずれているのでしょうか?

ここでは、十字ワイヤーはかなり精度が出ていることが確認できていたので、バッフルの方がずれていると考えました。最初の1の方法が正しくて、2はずれたバッフルに合わせてしまっているというわけです。要するに、接眼部に対してバッフルが垂直に固定されていないかもしれないと考えたわけです。これは十分にあり得ます。単純に考えても、その垂直の精度よりも、十字ワイヤー ~ 幅鏡間の方が距離も長いので精度が出るでしょう。

写真では十字ワイヤーが副鏡固定ネジの穴中心に合っているように撮影していますが、十字ワイヤーの中心精度もそこまで正確ではなくて、コリメーターを回転させると十字の中心が円を描くので、実際には十字中心が描く円の中心が副鏡固定ネジの穴中心になるように合わせました。

ここまでさらっと書いていますが、もしこの実測が正しいならこれはバッフルの初期設置角度が十分でないというある意味驚愕の結果になります。いや、十分か不十分かどうかは星像を見て判断すべきです。オーバースペックの可能性もあります。いずれにせよ、ユーザーレベルでこれが認識できるというのは、おもしろいです。

というのは、今回はカメラを使って拡大して見ていますが、実際にはかなり小さな部分を見ているので、これを目で直接見た場合はこの二つの違いはほとんど認識できません。どちらの場合も十分あっていると判断してしまうと思います。カメラだけだと前回のように精度が出ませんでした。コリメータとカメラを併用して初めてよくわかるようになったということです。


副鏡の角度調整

次にやったことは、副興を取り付けてその角度を調整することです。これは写真を見ながら説明します。

IMG_3268

まず大前提ですが、上の写真に写っているものは全て副鏡面内に写っているものです。さらに上の写真は全て調整し終わった後のものです。調整前はいろいろとバラバラですが、写真を撮るのを忘れてしまいました。なのでちょっとややこしいですが、言葉で説明します。

副鏡に写っているものは何かというと
  1. 真ん中の黒丸がコリメータの中心の穴。
  2. その外のXになっている十字線がコリメータについているワイヤー。
  3. 十字の端にある線で書かれている円がコリメータの斜め45度にカットされている金属部分の外径。
  4. その円の外の狭い明るい部分が、コリメータのバッフル部分。
  5. 明るい部分の外側のしばらく黒くなっているところは接眼部から出ている筒、すなわちバッフルです。
この中で、最初4のところがしばらく正体がわかりませんでした。コリメータを外してよく確認してやっと理解できました。コリメータのお尻側から覗いて見てみると、筒の長い部分を見ているだとわかります。これを副鏡に反射させると実質遠くから見ていることになり、白い金属部分に比べて、いくつもの同心円に見えるつの部分がどんどん狭く見えて、4のように極僅かのエリアとして見えているということです。

IMG_3281_cut

でもこのエリアはすごく重要で、この4のことを理解していると副鏡をどう合わせたらいいかがわかってきます。

まず試しに、副鏡のネジを緩めてグラグラの状態で適当に動かしてみて、画面のどこが動くかよく見てみました。3と5の内側の相対的な位置が変わって4の面積が変わります。要するに、コリメータの筒に対して副鏡が垂直になっているかどうかが3と5の内側を見ることによってわかるというわけです。なので今回はこの3と5の内側が同心円になるように中心を合わせることにしました。

副鏡の調整が終わった段階では、5のバッフルの内側の円の中心と外側の円の中心はずれていましたが、最初にバッフルが接眼部に対して垂直についていないと考えたので、不思議はありません。ここではさらに外側のスパイダーの中心も、1とはずれています。


主鏡の調整

その後、主鏡の角度を調整すると、スパイダーの位置を移動することができるので、スパイダーの十字の中心が1と一致するようにします。これを終えたものが上の写真となります。

ここでもう一つの謎に気づきました。主鏡調整でスパイダーを合わせるとなぜか5のバッフルの外側の円の中心が自動的に1に一致し、全ての円が同心になるのです。バッフルが接眼部に対して垂直についていないと考えたのはどこにいってしまったのか?バッフルの外側の円はズレてもいいはずです。

この謎はもっと広角で手前から輝度を落として見ることで解決しました。 iPhoneで撮ったものですが、以下のように見えました。
IMG_3280_cut

明るい外の景色が写っている部分が、主鏡を副鏡の反射を通して見たものです。そこの外端の方にずれている円が見えると思いますが、これが接眼部から伸びるバッフルを(反射じゃなくて)直接見ているものです。これは結局バッフルの向きが接眼部と垂直でないことを表していて、ここだけは同心円にはなり得ませんでした。このことは最初に仮定したバッフルの向きが接眼部と垂直でないということに矛盾しません。

これで調整は終わりとしました。いくつか途中の写真が撮り切れていないですが、いったん合わせた状態を崩したくないので、これで星像でのテストをしてみます。一番まともそうなVISAC調整のページのかなり最後の方で述べられているのですが、結局最後は微妙な調整が重要だとのことです。




まとめ

今回の記事はちょっとややこしくて申し訳ないです。色々紆余曲折していて、いくつか重要な写真を撮るのを忘れてしまっています。

それでも接眼部の調整は明らかに前回より精度は出ているはずで、バッフルの取り付け誤差を議論できるくらいになっています。副鏡の調整は最初かなり迷ったのですが、最終的にはきちんと理解できて、全体としてはかなりの精度で合わせ込みができたのかと思います。それでもやはり最後は星を見て調整することが必要です。

でも梅雨が終わってほんの少し晴れた以外、お盆以前から本当に晴れてくれません。予報ではまだしばらくグズつくようようです。さすがにそろそろ晴れて欲しいです。


蛇足1: レーザーコリメータについて

ちなみにレーザータイプのコリメータも持っています。こちらも悪くないですが、VISACに取り付けてコリメータを回転させると、レーザーの光が小さな円を描きます。よく見てみると出射光の形も円ではなくかなり細長い円弧形をしています。それよりは普通のコリメータの方が精度が出そうでしたので、今回はレーザーコリメータを使うことは諦めました。

でも回転させて描いた円の中心を真の中心と思えば、レーザーコリメーターも使うことができるはずです。本当は分解してレーザーダイオードの向きを調整できればいいのですが、これはまたいつかの機会に。


蛇足2: Cマウントレンズの光軸

前回の光軸調整で、Cマウントレンズの光軸がずれているのではと仮定しましたが、実際に簡易測定してみました。

VISACとは独立に、CMOSカメラに取り付けた50mmのCマウントレンズを窓についている網戸に向けます。

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ちょっとわかりにくいかもしれませんが、赤の十字線の真ん中だけ網戸に汚れがあって黒く目立っています。

この状態からカメラについているレンズのみを、ネジを緩めて180度回転させます。ガタガタするので、そのガタつきの範囲を見るために手で上下、左右いっぱいにずらしてみました。

cmountlens1

明らかに左にずれていることが分かります。左に2マス、下に0.75マス程度ずれていることが分かります。

さらにもう180度回転させて、合計360度一回転した状態にして同じことをします。
cmountlens2
左に0.25マス、下に0.6マス程度のズレになります。

ガタつきの誤差もあるのですが、180度の時と360度の時で有意に差があると言っていいと思います。今回はレンズのみを回転させてこのズレが出ているので、言い換えるとやはりレンズで光軸がずれていると言っていいと思います。

この赤丸で表されている範囲は、最初にやったVISACに取り付けてみている範囲(角度)と同じです。前回の光軸調整の時にずれた範囲と比較しても、横方向に主にずれていること、またずれている量もよく似ているので、やはりこのズレはレンズの光軸のズレからきていると言ってそれほどおかしくないと思います。



ちょっと前にVISACの光軸調整の記事を書きました。


そのちょっと前に、3つの主鏡止めが接眼側からバッチリ見えていることに気づいていたので、リングで隠してしまおうと思っていました。

IMG_2873
3っつの主鏡止めがはっきり写っていて、明らかに撮影に影響がありそうです。

程なくしてAmazonで頼んでおいた厚さ0.75mmの黒いプラスチックシートが届いたので、さっそくこの主鏡止隠しリングを製作します。あまり薄いと波打つ可能性があるのと、あまり厚いとサークルカッターで切るのに苦労します。




主鏡側を鏡筒部から外してみると、下の写真のようになっています。

IMG_3170

黒いところを反射している部分を見るとわかりますが、それにしてもこの主鏡汚いですね。以前分解した時に掃除したのですが、ついでなので再度掃除しました。

VISACの主鏡の直径を測ると200mmか201mm程度。これは中心の筒を固定するアダプターの外径をノギスで測り、筒の外から主鏡の端までを左右測定することで求めました。この測定の際気づいたのですが、実は筒の中心と主鏡の中心は1mmくらいのオーダーでずれていることがわかりました。でもアダプターのところに出っ張りがあって、かなりキツキツにハマっているようで、ずらして補正するようなことはできないようなので、放っておきました。

3つの主鏡止めはゴムでできていて、上部に薄い金属の板が被せてあります。この板はネジの力が均等にかかるようにするためでしょう。このゴムの部分のとっかかりが3mmほどあるので、これを隠すためのリングの内径は 200mm - 3mm x 2 = 194mm以下にすれば(主鏡止めは3つで120度おきにあって、円の180度反対側にあるわけではないので6mm引く必要がないが、)確実です。念の為、切りしろのことも考えてさらに1mm余裕をみて、内径は193mmとしました。

外径はどう留めるかによります。迷ったのですが、少しはみ出す202mmとして、主鏡止めと主鏡の間に置いて、主鏡ドメをネジ止めすることでリングを固定することにしました。外径を小さくしすぎると主鏡部分が外側ではみ出て迷光になる可能性があること、外径が大きすぎると主鏡止めのネジを締めるときにリングに力がかかり浮いてしまう可能性があります。

切り出しには下のようになサークルカッターを使います。出来上がり精度は、切りしろやら、刃をネジで占めて固定することなど、色々考慮に入れると0.5mmが厳しいくらい。サイズは上のように予備を入れてまあいい仕上がりになりそうなくらいです。

IMG_3272

出来上がったリングの写真を撮り忘れてしまいましたが、主鏡に取り付けてみると以下のようになります。

IMG_3171

まあいい感じです。とりあえず接眼部から覗いてやると、3つの主鏡止めは完全に見えなくなっています。

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でもこれを見るだけでもわかる通り、光軸が再びずれているので、次回の記事で光軸合わせについてもう少し補足しようと思います。

 


前回までの電視観望、うまくいきましたでしょうか?



今回は電視観望をリモートで楽しもうという記事です。


家の中からお気楽電視観望

夏は夜でも暑かったり、外だと蚊に悩まされます。冬は地方によっては夜はかなり寒くなります。そんな時は、家の中から快適リモート電視観望というのはいかがでしょうか?

自宅のテレビに大画面にリアルタイムで見える星雲などを映して、家族に楽しんでもらうこともできます。普段なかなか理解されない星の趣味をアピールするいい機会にもなるかもしれません。

今回の記事では、VIRTUOSO、電視観望をするPC、リモートで操作するPCのすべての機器を自宅のLANにWi-Fiに接続することで、安定したリモート電視観望を実現します。接続方法に関してはいろんなやり方があるかと思いますが、ここで示すような方法を参考に各自の環境に合わせて接続方法をカスタマイズしていくのがいいのかと思います。


準備

前回までの電視観望に加え、今回リモート電視観望を実現するために新たに必要なものを挙げておきます。天文関連の機材というよりは、主にPCやネットワーク関連です。
  • 家庭内LANと、望遠鏡周りでのWiFi接続環境。
  • もう一台自宅内でのPC。WindowsでもMacでもどちらでも大丈夫です。
  • 電視観望に使っているPCがWindows10「 Pro」であること。リモートデスクトップ環境のために必要です。ProでなければVNCなどの別途リモートデスクトップ環境。


前回までの確認

リモート電視観望に挑戦するには、前回までの電視観望ができていることが前提です。もしうまくいっていないなら、まずは鏡筒近くのリモートでない状態できちんと動作するようにして下さい。鏡筒の近くで試してもうまくいかないとすると、リモートだと更に難易度が上がります。

逆に言うと、通常の電視観望がきちんとできているなら、あとはネットワークの設定等の問題なので、リモート化はそれほど難しくありません。


自宅ネットワークの確認

最初のポイントはどうやって望遠鏡の近くに電視観望で使っているPCにアクセスするかです。

今回は、家庭にはネットワークがあってWiFi接続ができる状況にあるとし、電視観望用PCが自宅の近く、例えば庭とかで自宅のWiFiに接続できることとします。

これは重要なことなのですが、ネットワークは2.4GHzのみ、もしくは2.4GHzと5GHz両方あるのはかまいませんが、5GHzだけの場合はだめです。これはVIRUTOSOのネットワークが2.4GHzしか対応していないからです。もし5GHzしかない場合は、ルーターの設定で2.4GHzも有効化するか、5GHzしかないルーターの場合は、2.4GHzを持っているルーターを別途用意して、自宅の既存のネットワークに繋がるようにして下さい。

自宅W-Fiのネットワーク名(SSID)と接続するためのパスワードはあらかじめ確認しておいて下さい。これも必ず2.4GHzのものを選ぶようにして下さい。


VIRTUOSOの自宅ネットへの接続

VIRTUOSOの電源をオンにして、前回までのように一旦はスマホなどで接続します。スマホ上のSynScan Proの初期画面から「設定」 ->「SynScan Wi-Fi」に行き、下の画面のように「ステーションを変更する」を押してから、「ステーションモード」のところをクリックしてステーションモードを有効化します。先に調べておいた自宅W-Fiのネットワーク名(SSID)を入力し、ネットワークに繋ぐパスワードを入力します。
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その後、右上の「適用」を押し、出てくるグルグルマークを押します。ごくまれに、ここから元の画面に戻らないことがあるので、その場合「キャンセル」などを押します。

自動的に上の画面に戻って、うまくWi-Fiに接続されるていると、先ほど入力したSSID名が「SSID」の所に表示されているはずです。この名前が表示されていない場合は自宅Wi-Fiには接続されていません。SSID名やパスワードを再度確認してみて下さい。どうしてもつながらない場合は、そのSSIDが5GHzでないか疑ってみて下さい。私は(5GHzはつながらないことを知っていても、その場になると忘れるとかで)ここで過去に何度かハマっています。
 
うまくいったらVIRTUOSOの設定はおしまいです。次は電視観望をしているWindows PCの接続設定です。
 

リモートデスクトップでの接続

今回はWindowsに付属のリモートデスクトップを使うことにします。星などの暗くてノイズと見分けがつきにくい画面は、ネットワーク越しだと綺麗に見えないことがあります。Windows付属のリモートデスクトップ機能は画面転送の圧縮が上手くて、星や星雲を見るのに適しています。

まずはサーバー側の設定です。電視観望に使っている鏡筒近くのPC上で、「スタート」->「設定」 ->「システム」->「リモート デスクトップ」の順に選択し、「リモート デスクトップを有効にする」をオンにして、サーバー機能を有効にしておきます。

この際の注意なのですがWindows 10の「Home」エディションだとこのリモートデスクトップ機能を使うことができません。リモートデスクトップを使う場合は、Windows 10の「Pro」を使って下さい。Proかどうか確認するには、[スタート] 、 [設定] 、 [システム]、 [バージョン情報]の順に移動し、[エディション]を探します。

もしProでない場合は、VNCや、最近流行りのChrome リモートデスクトップなど、別途リモート環境を探してみて下さい。

もしくはWindowsに付属のリモートデスクトップを使うために、あえて安価なStick PCなどを買ってしまうのも一つの手です。Stick PCは値段のわりに何故かWindows Proを採用していることも多く、実際私は



をリモート電視観望に使っています。電源、キーボード、マウス、モニターなどがセットアップ時には必要ですが、一旦リモート接続ができればあとはStick PCと電源だけでいいので、非常にコンパクトなシステムを構築することができます。初期アラインメントなどするときも、ノートPCを鏡筒近くに持っていって、その場でこのStick PCにリモートで接続して操作したりしています。

もう一つ、鏡筒近くに置くPCがWi-Fiに接続される時にIPアドレスがいつも同じになるように設定しておくと便利です。これはWindowsの方の設定ではなく、ルーターの方の設定になります。設定方法はルーターの機種によりますが、自宅LANに繋がっているPCから、ウェブブラウザを立ち上げ、アドレスのところに通常は192.168.XX.1(XXは繋がっているPCのIPアドレスを調べるとわかります。)などと打ち込んでルーターにアクセスします。
net
左に見える「DHCP固定割り当て設定」とかいうのを選び、電視観望に使っているPCのWi-FiアダプターのMACアドレスと、適当な固定したいIPアドレスを打ち込み関連づけます。PCのWi-FiアダプターのMACアドレスは「スタート」->「設定」 ->「ネットワークとインターネット」->「ネットワークのプロパティを表示」の順に選択し、「物理アドレス(MAC)」のところを見ます。

ここまでの接続の確認は昼間でもできるので、あらかじめ夜になる前にテストしておくといいでしょう。


実際の接続

さて、ここまできたらあとは夜を待って実際に電視観望を始めるだけです。
  1. 初回はやはりその場でピントなども合わせる必要があるので、まずはターゲット天体を導入しSharpCapの画面に表示するところまでは、前回までのように済ませておきましょう。
  2. 次に、VIRTUOSOがきちんと自宅のWi-Fiに繋がっているか確認しましょう。
  3. 電視観望をしているPCも自宅Wi-Fiに繋ぎましょう。
  4. 電視観望をしているPCでSynScan Proを立ち上げて、自宅Wi-Fi経由でVIRTUOSOに接続しましょう。
  5. 自宅に入り、部屋の中のPCから電視観望をしているリモート先のPCにリモートデスクトップで接続します。クライアントはWindowsでもMacでもどちらでも大丈夫です。

Windowsなら「スタート」->「Windowsアクセサリ」->「リモートデスクトップ接続」を立ち上げ、そこに先に指定したIPアドレスを書き込み「接続」を押します。

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私はMacを使っているので、Mac版のMicrosoft Remote Desktopを使用しています。

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上の写真のように、先に指定したIPアドレスで登録しておきましょう。そうすると次回以降の起動が楽です。

リモート先の画面は出てきましたでしょうか?

IMG_3186
このように部屋の中からリモート先の画面が出て
操作することができるようになります。

うまく接続できると、画面を通してすべての操作ができます。自動導入などもできますので、自宅からいろいろ楽しんでみて下さい。


まとめ

リモート接続の実践編どうでしたでしょうか?アイデア次第ではYouTubeやZoomでの中継など、いろいろ活用法があるかと思います。家の中なら家族も見てくれると思うので、もしかしたら天体趣味の株が上がるかもしれません。

でも本当は星は外で見るのが一番です。今回はVIRTUOSOという望遠鏡込みの自動導入経緯台で星空観察をしましたが、自分の目で空を仰いで星を見るのは望遠鏡とは違った楽しみ方になるはずです。せっかく星に興味を持ったのです、もしまだ体験していなければですが、月のない真っ暗な場所で、満天の星を見上げて宇宙の中に生きているんだということもぜひとも実感してみて下さい。

次は応用篇。主に導入の補助についてです。
 



連載記事:VIRTUOSOを使いこなそう

 

 

 

 

 
 
 

今回の記事は

からの続きになります。


いよいよ電視観望

前回は基本に忠実に、アイピースでの眼視で天体を見てみました。

今回は、VIRTUOSOとCMOSカメラを使った電視観望に挑戦してみましょう。電視観望とは、高感度のカメラを使って、その場で淡い星雲などを色付きで見ることができる手法です。

初心者の方で期待している方も多いかと思いますので、できるだけ詳しく説明します。


準備

今回新たに必要なものを挙げておきます。
  • CMOSカメラ
  • ノートPCなど
  • USBケーブル
  • SharpCap 
  • テーブル
くらいでしょうか。

ノートPCは最新のものでなくても構いません。PCが無い方は、中古などで安く見つけることもできます。Windows10が走るくらいなら十分でしょう。もしできるならでが、次にやるリモート電視観望のことを考えておくと、Windows10のProを選んでおくとリモートデスクトップが使えるのでいいかもしれません。

PCを地面に置いたりすると、操作が大変になります。特に慣れないうちは、楽な体勢を取るためにも、PCを置くテーブルと座って操作できる椅子があるといいかもしれません。

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SharpCapはあらかじめダウンロードして、PCにインストールしておいて下さい。対応カメラが多いことや、メニューなどが日本語化されていることなどもあり、バージョン4.0以降がいいでしょう。




CMOSカメラ

まず、電視観望用に試用するカメラです。電視観望に適したカメラは何種類もありますが、ここでは入門用で比較的新しい、Player OneのNEPTUNE-C IIを使ってみましょう。これはIMX464という入門用としては少し大きめのセンサーを使っていて、赤外の感度が高いカメラです。



前回は鏡筒の接眼部にアイピースを差し込みましたが、今回はアイピースに代えてカメラを差し込みます。カメラにはアイピース口に合う付属のアダプターをつけて下さい。

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最初のターゲットはM57

最初は例として、こと座にある「リング状星雲」とか「惑星状星雲」と呼ばれるM57を狙います。小さいですがカラフルで、輝度が高くて比較的見やすい星雲です。

前回と同様に、SynScan Proを使って初期アラインメントをすまします。カメラ画像を見ながらの初期アラインメントをするのは少し大変なので、慣れないうちは25mmのアイピースを使い、うまく導入できてたのを確認してからカメラに交換すると良いでしょう。また、初期アラインメントはM57近くの明るい星、ベガを狙うと良いと思います。もしベガが天頂付近に来ていて、初期アラインメントの候補リストに出てこない場合は、次に近くの明るい天体、例えばデネブやアルタイルを選択して下さい。その後、ベガを自動導入し、きちんと入るかアイピースで見るといいでしょう。

いずれにせよ、明るい星が見えたら、それをできる限り視野の真ん中に持ってきておいて下さい。


SharpCapで撮影画像を確認 

この時点で、カメラの画像をチェックしてみましょう。

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焦らずに、順番に確認しながら進めます。まずはカメラの取り付けと、PCとの接続です。
  1. 鏡筒の接眼部についているアイピース を取り外し、代わりにカメラを接眼部に差し込みます。
  2. 次にUSBケーブルを使ってカメラとPCを接続します。
  3. PCを立ち上げ、先にインストールしておいたSharpCapを立ち上げます。
  4. SharpCapの上部のメニューから「カメラ」を選んで、手持ちのカメラ、今回の場合は「Neptune-C II」を選びます。ここで手持ちのカメラ名が出てこない場合は何かおかしいです。ケーブル接続や、ShapCapが対応しているカメラかどうか確認してみて下さい。特にNeptune-C IIはSharpCapのバージョンが4.0以降でないと、うまく認識されません。
camera

カメラとの接続がうまくいくと、カメラに映った画面がSharpCapに表示されます。さて、画面には何か表示されていますでしょうか?見ている方向や、SharpCapの設定とピントの状態によっては何も出てこないかもしれません。とりあえず気にせずにSharpCapの設定に移ります。
  1. SharpCapの右側パネルの「カメラコントロール」の「露出時間」を「400ms」程度にして下さい。もし露出時間の設定項目などが画面に出ていなければ「カメラコントロール」の左下向き矢印のボタンを押してタブを展開します。この400msはで0.4秒ごとに画面が更新されます。あまり短いと暗いものが映りません。逆にあまり長いと更新されるまで時間がかかるので変化するものが見にくくなります。
  2. さらに、その下の「アナログゲイン」は「450」とかのある程度高いところにします。これは400msという短い露出時間でも暗いものが十分に見えるようにするためです。
  3. これで星が何も見えなければピントがずれているので、SharpCapの画面を見ながら接眼部横のつまみを回して何か光るものが見えるか確認します。これで星が見えたら、星が一番小さくなるところに合わせます。もしそれでも明るくならなければ、空が曇っていないか、鏡筒に蓋がついたままになっていないかなど調べてみて下さい。
うまくいっているなら、この時点でベガが他の星に比べて圧倒的に明るく輝いているはずです。


いよいよM57を導入

ここまできたら、次はいよいよ星雲です。
  1. この状態から、SynScan Proの初期画面で「ディープスカイ」を押し、「メシエ」の右に「057」と打ち込みます。
  2. するとすぐ下に「こと座環状星雲」と出てくると思います。
  3. その状態ですぐ下の「導入」を押します。
  4. すると鏡筒が動き出すので、M57を向くまで10秒ほどで待ちます。
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導入が完了したら、真ん中の横長のボタンを押して導入を完了します。

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おそらくもうこの時点でM57が画面に入っているはずです。既に画面上にそれらしきものが見えているかもしれません。でも興奮して焦ったりせず、落ち着いて次の設定に進みます。


SharpCapのヒストグラムであぶり出し

さてここからが勝負です。

まずはあぶり出し前の下準備です。
  1. SharpCapの「露出時間」を「800ms」程度にして下さい。これは画面に天体が見えている時に短すぎて暗すぎず、長すぎて反応が遅すぎずという値です。
  2. さらに右側パネルの「画像情報」のホワイトバランスをR、G、Bそれぞれ「自動」ボタンを押してカラーバランスを整えます。
  3. その結果は「ヒストグラムストレッチ」で確認できます。ヒストグラムにはR(red、赤)、G(green、緑)、B(bllue、青)の3つの曲線があると思いますが、左の方の山の頂上の位置が3つとも一致しているならホワイトバランスが取れています。
  4. これが確認できたら先ほどのホワイトバランスの「自動」ボタンをもう一度押して解除して下さい。

次に、ヒストグラム画面を弄ります。ここからブワッと出てくるので期待して下さい。
  1. 黄色い縦の点線が左、真ん中、右と見えると思います。まずは左の点線を山のすぐ左側まで持ってきます。点線のあたりにカーソルを合わせて左クリックして押したまま選択状態にして、右に移動し、山の左側に持ってきます。
  2. 同様に、真ん中の点線を山の右側まで持ってきます。
  3. これでM57があらわに画面上に出てきます。
ちなみに、SharpCapの有料版を使っている方は、ヒストグラムの右にある雷マークのようなボタンを押すと、上の1-3の操作が全て自動で行われます。オートストレッチ機能と言います。有料版は年間10ポンド、日本円にして1500円程度です。このオートストレッチ機能だけでも有料版にする価値があるくらいと思います。PayPalですぐに支払いができますので、もし電視観望を続けたい方は早いうちに有料版にしたほうが圧倒的に楽になります。

さて、実際にM57はうまく画面上で見えましたでしょうか?うまくいくと下のような画像になると思います。この時点でももう形がはっきり見えるくらいになっているはずです。

02_M57_in

もしここでそれらしいものが見えなかったら、自動導入があまりうまく行ってないのかもしれません。SynScan Proの矢印で、スピードを7くらいにして画面を上下左右に動かしてみて下さい。ベガにきちんと初期アラインメントがされているなら、そう遠く無いところにいるはずです。

形が見えたら、あとはSynScan Proの矢印でうまくM57を画面の真ん中くらいまで持ってきて下さい。


ライブスタックでノイズを落とそう

最後の仕上げはライブスタックという機能を使いノイズを落とすことです。上の画面はまだざらざらしていてノイジーなのですが、これから画面を何枚も重ね合わせることで、背景のノイズを落としていきます。
  1. 「ツール」の「ライブスタック」を選びます。
  2. すると画面下にヒストグラムが出てきます。
  3. 真ん中の黄色の点線が最初から少し左に行っています。これを真ん中まで持っていって、斜めに走る曲線が真っ直ぐになるようにします。
  4. しばらく待っているとLive stackエリアの左の「Over view」内の「Frames Stacked」の数が増えていきます。これが重なった枚数で、その枚数が増えるほどにノイズが少なくなっていくことがわかります。
  5. 右パネルのヒストグラムの黄色い点線を微調整して、見やすくなるところを探して見て下さい。
01_M57_Stacked

うまくいくと上のようなノイズが少ない画像になります。

下のように画面の中で少し拡大しても見やすくなります。右上の「拡大」のところを適当な値にして見て下さい。

02_M57

もう一つコツです。右パネルの小さなヒストグラムでやったあぶり出しの方法は、ライブスタックの中の大きなヒストグラムでもそのまま適用できます。画面が大きいので、こちらの方が調整しやすいかもしれません。

上の写真を見てもわかりますが、ライブスタックの中のヒストグラムであぶり出した結果が右パネルのヒストグラムに適用されます。なので、ライブスタックの中のヒストグラムであぶり出した場合は右パネルのヒストグラムの斜めの線はできるだけまっすぐになるようにしておいて下さい。ここでもあぶり出しをしてしまうと、過剰な画像処理になります。逆にこの機能を利用することで、ライブスタックのヒストグラムで大まかなあぶり出しをして、その結果をさらに右パネルのヒストグラムで微調整するというようなこともできます。


ライブスタックでいろいろ見てみよう

うまく見えましたでしょうか?一通り自分でやってみると、ある程度コツも掴めてくると思います。さてさて、せっかくのライブスタックで星雲が綺麗に見えるようになったわけです。自動導入でどんどん天体を導入して見ましょう。

M27: 亜鈴状星雲
まずはM27、亜鈴状星雲と呼ばれているもので、形が鉄アレイに似ているからです。ダンベルの方がわかりやすいでしょうか。英語では Dumbbell Nebulaとか、 Apple Core Nebulaなどと呼ばれているそうです。

いったんライブスタックを解除します。Live Stack画面の右上のxを押すか、メニューの「ツール」からライブスタックをもう一度選択するか、メニュー下の真ん中らへんの「ライブスタック」ボタンを押して下さい。そしてSynScan ProからM57を導入した時と同様にM27と入れて導入します。

まずはライブスタックなしで導入したばかりの場合: 
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M57と比べて大きいですが、かなり淡いのがわかります。これをライブスタックして1分くらい重ね合わせると
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ノイズが少なくなって見やすくなります。

ちなみに、ライブスタック画面に前のM57が残っているかもしれません。そんな時は左の方の「Actions」の「Clear」ボタンを押すと、また初めからライブスタックが開始されます。


M31:アンドロメダ銀河
この日は深夜0時頃から晴れたので、このとき既に午前1時くらい。既に秋の銀河が登ってきています。M31アンドロメダ銀河を入れてみました。

M31_01

鏡筒の焦点距離600mmで、Neptune-C IIの1/1.8インチサイズだと、アンドロメダ銀河は大きすぎて画面からはみ出してしまいます。それでも少しだけですが腕の構造が見えています。


M33: さんかく座銀河
M31アンドロメダ銀河近くにあるM33さんかく座銀河です。淡い銀河ですが、電視観望だと腕の構造も十分見ることができます。淡いので露出時間を3.2秒とM57に比べて4倍にしました。淡くて醜い時は、ゲインをあげるよりも露出時間を伸ばすことが効果があります。

この写真はライブスタックもかけてあります。わずか3.2秒露出の52枚、3分弱のスタックです。
M33_04_stacked

ちなみにライブスタックをしないと3.2秒露出で下の画像くらいでとても淡いです。
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なので、最初のうちはM57などの輝度の高いもので十分慣れてから、このような淡い天体に挑戦するといいでしょう。

本当は夏の星雲M8やM20も見たかったのですが、始めるのが遅かったので既に隣の家の屋根に沈んでいってしまいました。夏は他にもたくさんの魅力的な天体があります。一度コツを掴めたら簡単ですので、どんどんチャレンジしてみて下さい。


せっかくなので惑星も

電視観望からは少し脱線しますが、同じCMOSカメラを使った手法の一つに、惑星撮影があります。

前回のアイピースでの眼視の時に、ブログの記事用にと思って惑星をスマホで撮影しました。土星はかろうじて形が分かったので載せましたが、木星は形のみで縞も写らなかったので掲載しませんでした。いったいどれくらいだったかというと、
IMG_3161
というように、見るも無残ですね。

これでも少しでも大きく写るように10mmのアイピースと、ぶれないようにスマホ用の撮影ホルダーを使ったのですが、使ったスマホのカメラがiPhone10と特別感度の良いカメラというわけでも無いのと、分解能も足りていなかったりで、全くうまく写せませんでした。

今回せっかくNeptune-C IIという高感度のCMOSカメラがあるので、少しだけ惑星も撮影してみましょう。まずは木星です。惑星は明るいので、露光を相当落とします。露出時間は5ms、ゲインは100です。

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それでも視野が大きすぎて木星はほんの一部にしか写っていません。これを切り出したものが下になります。
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一枚撮りですが、縞も十分に写っています。

次に土星です。これも切り出しています。
Capture_00001 01_18_34_WithDisplayStretch_cut

比率は木星と同じなので、木星よりも小さく写っていることがわかります。小さいですが、輪の形もなんとか分かります。

これだけでもCMOSカメラの優位性がよくわかり、木星も土星も、スマホで写した時よりはるかにきれいに写っていることがわかります。さらに今回、詳しく説明はしませんが、同じカメラを使ってSharpCap上で動画で惑星を撮影し、1000枚程度を重ね合わせることでさらに細かい模様を出すことができることも示しておきます。上の1枚画像と比べても圧倒的に解像度が上がっていることがわかります。

Jupitar2

Satan

VIRTUOSOの鏡筒付きの一番安価な13cmニュートン反射モデルですが、CMOSカメラを使うとここまで詳細に惑星を捉えることができます。画像処理などのテクニックは必要になってきますが、こんな楽しみ方もできるというわけです。


まとめ

どうでしたでしょうか?電視観望では星雲や星団、銀河などをかなりはっきりと見ることができます。カメラで見ている時にアイピース に戻して、星雲や星団が目とカメラでどう違って見えるか見比べてみるのも楽しいかと思います。最後、少し電視観望から脱線してしまいましたが、惑星の撮影も楽しいかもしれません。

このようにCMOSカメラを手に入れるだけで、VIRTUOSOの楽しみ方がはるかに広がります。興味がある方はぜひ検討してみて下さい。

さて、次回はいよいよリモート電視観望です。
 




連載記事:VIRTUOSOを使いこなそう

 

 

 

 

 
 

今回の記事は




からの続きになります。


いざ夜の世界へ

さて、前回までの記事で明るいところでの準備ができたので、夜を待ってさっそく外に持ち出しましょう。

持ち運ぶ時は、経緯台の一番下のプレートを両手で持つようにしてください。上の可動部は精度が必要なところになりますので、この部分を手で持って持ち上げると、変な力がかかってしまい、ずれなどが発生する可能性があります。せっかく手に入れた機器です。長く使うことになると思います。大切に扱ってあげたいものです。

外に出て、空が開けた場所を見つけてください。地面がアスファルトなどある程度固いところの方がいいでしょう。土や草の上だと、使っているうちに傾いてしまって見ている天体がズレていってしまう可能性があります。適当な場所が見つかったら、そこにVIRTUOSOを置きます。


水平合わせは大事

この時大事なことが、水平をきちんと合わせること。経緯台のところに水準器が付いています。この泡が黒丸の中央に来るようにします。もし泡がズレていたら、泡の寄っている方向が高く、反対側が低く傾いているいということになります。薄い板のようなものを何枚か用意して、低い方向の足の下にその板を入れて、水準器中の泡が真ん中に来るように調整してください。

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この例だと、泡が右に行っているので、左側が低いということになります。
低い方向の足に用意した板を入れます。

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板を足の下に入れると、泡の位置がほぼ真ん中になりました。


この水平取りはこれからやる初期アラインメントの精度に大きく関わります。ここをサボると天体を導入するのにものすごく苦労することになるので、この水平出しは省略したりせず、きちんとやって下さい。

ついでに、鏡筒の水平出しもやってしまいましょう。パネル上のネジを緩めて鏡筒をある程度水平に設置します。左右どちらに倒すか迷うかもしれませんが、鏡筒を水平にしたときに接眼部が上に向くような向きが正しい向きです。ここで別途用意した水準器を鏡筒の上に置きます。

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水準器の泡が線と線のまんなかになるように、鏡筒の水平方向の傾きを微調整します。これも初期アラインメントの精度に関わるので、必ずやっておいた方がいいでしょう。

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次は鏡筒の先を北に向けます。経緯台下の真ん中にある大きな手回しネジを緩めて、経緯台の上部を鏡筒ごと回転させて、鏡筒を北に向けます。この際、スマホの方位磁石を使うと楽かもしれません。ただし、磁石が差す北と、本当の北はずれているので注意です。場所にもよりますが、例えばここ富山なら7度ほどずれています。スマホなどは設定で本当の北を指すようにする機能があるかもしれないので、チェックしてみてください。方位磁針などが無い場合は、北極星を目印に北に向けてください。これまでの設置で水平を精度よく取ってあれば、この時点で多少北の向きが違っていても怖いことはありません


SynScan Proと接続

最後の準備は、VIRTUOSOとスマホやタブレットを接続することです。まずはVIRTUOSOの電源を入れます。パネルのところにスイッチがあるのですぐにわかるでしょう。オンにするとWi-FiのLEDが赤く点滅します。

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ここで、スマホやタブレットを使います。ネットワークの設定で、Wi-Fiの接続先をVIRTUOSOにして下さい。これを忘れて次のSynScan  ProでVIRUTOSOに接続できないと焦る場合があるので、まずはWiFiレベルでできちんとVIRTUOSOに接続することを忘れないでください。

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Wi-Fiの接続がきちんとできたことを確認して、あらかじめインストールしておいたSynScan Proを立ち上げます。立ち上がったら上の「接続する」を押します。
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すると検索中という画面になり、

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5秒もすればVIRTUOSOが見つかり、

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接続完了になります。これでやっと準備完了です。


初期アラインメントで天体導入

それでは早速天体を導入してみましょう。初期画面から「アラインメント」を選び、次に「1スターアラインメント」を選んでみます。アラインメント方法はいくつかありますが、慣れないうちは1スターアラインメントが一番楽です。

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そのときに出ているわかりやすい天体を選びます。今回試した時は実際の空に土星が見えていたので、一覧の中から土星を選びます。

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ここで「アラインメントをはじめる」を押すと、VIRTUOSOが動き出します。

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しばらく待ってから動きが止まると、すでにある程度は土星の方向を向いているはずですが、おそらくまだ完全に捉えきれていないと思います。こんなときにはスコープファインダーを使います。

まずは空を見てどこに土星があるのか大体の位置に検討をつけます。鏡筒が向いている方向の空を目で見て、明るい星を見つけます。おそらくそれが今回の場合土星です。その位置が確認できたら、両目を使って、片側は空、片側はスコープファインダーを覗き込むと、スコープファインダーに天体が入っているかどうかが分かりやすいと思います。

スコープファインダー中の天体を見ながら、スコープファインダーの右側にある回転するスイッチをカチッと入れます。その状態でスコープファインダーを覗き込むと赤い光が見えます。この光が結構明るいので、ターゲット天体が見えにくいので、スイッチを入れたり切ったりして光を無くしてみるとわかりやすいかと思います。

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赤い光と天体がずれていたら、それが重なるように、SynScan Proの矢印を使って鏡筒の向きを調整します。
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もし、スコープファインダーの中の天体が全然動かないと感じるなら、スピードが遅いので、上の画面の方向キーの上の方の左右にある右向きの矢印を押して見てください。真ん中の数字が5から増えていきます。この数字は鏡筒の移動スピードを表していて、スコープファインダーを覗いている時は7程度の方がいいかと思います。

スコープファインダーのスイッチは、見終わったら必ず切るようにしてください。ボタン電池なので、すぐになくなってしまいます。


ここでアイピース を覗いてみよう!何か見えるかな?

鏡筒の向きを調整して、赤い光と天体が重なったら、この時点で、アイピースを除くと目標天体はそこそこ入っているはずです。

目で見るとこんなのが見えるかと思います。
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うまく見えましたでしょうか?もしはっきりした形になってないけど、何か明るいものが見えたら、ピントが合っていないのかもしれません。接眼部横のつまみをゆっくり回転させてピントをあわて見てください。

上の写真はスマホでその場でカメラをアイピース に合わせて撮影しただけなので、かろうじて土星の形がわかるくらいですが、自分の目で見ると、小さいですがもっとくっきり見えるはずです。


うまく見えてたら、SynScan Proの矢印を使って、天体を真ん中に持ってきましょう。鏡筒の移動速度を再び5とか4位まで落として、天体が視野の真ん中に来るようにします。アイピース を覗きながらなので少し大変かもしれませんが、矢印を押すと見ている天体が動くことを確認しながら、一つ一つボタンを押していきます。

うまく天体が視野の真ん中にきたら、上の画面の真ん中の星とチェックマークがある横長のボタンを押します。ただし、画面の上向の矢印のように、1つもしくは2つの矢印が点滅している場合は、それを押して点滅を無くし、その後真ん中の横長ボタンを押します。これで初期アラインメントは完了です。

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アイピースの交換

うまく真ん中にきたら、今度はアイピース を交換してみましょう。

今使っているのが25mmのアイピースです。今回使っている鏡筒の焦点距離が650mmなので、650/25=26倍の倍率で見ていることになります。

これを、付属しているもう一つの10mmのアイピースに交換します。すると650/10=65倍の倍率で見ることになります。アイピースを交換したらピントを合わせ直すことを忘れないでください。うまく見えましたでしょうか?先ほどより大きく見えますね。

もし10mmのアイピースに交換して見えなくなるようなら、今一度25mmのものに戻してください。そしてターゲット天体が真ん中にきていることを今一度確認してください。きちんと真ん中にきていれば、アイピースを10mmのものに変えてもきちんと視野の中に入っているはずです。


椅子があると便利

ちょっと脱線します。アイピースや、特にスコープファインダーを覗いたりする際、地面に近いかなり低いところを覗くことになります。足腰が強い方はいいかもしれませんが、それでもなかなか辛い体制になるので、安定して見るためには座面の低い椅子があった方がいいかもしれません。私は下の写真のような椅子を使っています。

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高さを調整できるので、低い位置にして座れば安定してアイピース を覗くことができ、あまり疲れることはありません。少し値ははりますが、天体観測にはこれ一つあるとものすごく快適になります。


次の天体を!

土星外見えていれば、木星もそれほど遠くないとことにいるはずです。次は木星を自動導入してみてみましょう。まずは一旦、アイピース を25mmに戻してください。倍率を下げて広い範囲を見た方が自動導入の成功率が上がります。

次にSynScan Proで左上にある「戻る」を何度か押して、初期画面に戻ります。そこで「天体」を押し、下の画面に行きます。

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木星は太陽系内の惑星なので、ここでは「太陽系」を押します。

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「木星」が見えていますね。ここに表れているということは、空に出てると言う意味です。そのまま「木星」を押します。

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さらに「導入」を押します。すると下のような導入中の画面になります。

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しばらく待って鏡筒の動きが止まったら、アイピースをのぞいてみてください。今回の場合初期アラインメントで土星を合わせ、そこから遠くない木星を導入したので、ほとんどアイピースの中に木星が入っているはずです。もし視野に木星が入っていない場合は、最初に設置したときに水平をうまく取れていない可能性があります。設置時の水平取りの精度はこんなところにも効いてきますので、できるだけ丁寧に設置するようにしてください。もしうまくアイピース 内に入らない場合は、土星の初期アラインメントの時のようにスコープファインダーを使うといいでしょう。

木星が視野に入っていたら、あとはSynScan Proの矢印で真ん中に持ってくるだけです。その後、画面真ん中の横長ボタンを押すと、下のように「導入成功」と出ます。

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ここまでが自動導入の手順です。見たい天体があったら、今のようなことを繰り返します。


ちょうど月が出てきたぞ

この日はちょうどこの時点で月が地平線から昇って見えるようになってきました。最後に月を導入してみましょう。

木星の時と同様に、初期画面から「天体」「太陽系」と押していき、「月」を押します。月は明るく大きいので、土星や木星より遥かに簡単に導入できるはずです。うまくアイピース に入りましたか?もし入らないようならアイピースが25mmのものになっているか確認してみてください。繰り返しになりますが、導入時は焦点距離が長い25mmの方が視野に入りやすいです。それでも入ってなかったらスコープファインダーを使ってみてください。

もし空に最初から月が出ているなら、土星や木星よりも、最初は月で練習するのがいいかもしれません。月で慣れてから、木星、土星といく方が簡単順序としては楽かと思います。

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うまく入っていたら、矢印で適当に真ん中に持ってきて、横長ボタンを押し、導入を完了させましょう。


スマホでパシャリ

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上の写真もスマホのカメラレンズのところをアイピース にくっつけて撮っただけです。この日は少し曇っていたので、雲越しのお月様が写りました。実際には月の上の雲がどんどん流れていく様子が見えます。こんなのが見えるのも、望遠鏡ならではですね。

この後どんどん曇ってきたので、この日はここで終了です。次回もお楽しみに。

 





連載記事:VIRTUOSOを使いこなそう

 

 

 

 

 
 

ASI294MM Proで試したかった高解像度撮影です。対象はM57です。


とうとうモノクロ撮影に

実は今回が初のまともなモノクロセンサーを使った撮影になります。一応ASI290MMは持っていて、太陽とかはもちろん本当のモノクロ撮影なのですが、モノクロセンサーにフィルターというので最後のカラー化まで仕上げたのは今回が初めてです。

ASI294MMProを使いたかった理由の一つが、ピクセルサイズの小ささです。Bin1モードのピクセルサイズ2.3μmは、これまで持っていた最小のASI178MCの2.4μmよりも小さく、しかもモノクロなので単純にはさらに半分のピクセルサイズと同等。ASI294MC Proから見たらBin1モードとモノクロで一辺4分の1、面積にしたら16分の1のピクセルサイズと同等です。手持ちのASI290MMのピクセルサイズ2.9μmと比べてもまだ有利になりそうです。

その一方、今回はM57と小さい惑星上星雲なので、広視野はあまり得をしませんが、それでもASI290MMのセンサーサイズの1/2.8インチと比べると、一辺で約4倍、面積で約16倍(実際は13.9倍)です。これくらいあると比較的大きな天体まで狙えることになります。小さな天体はROIで撮影時にカットしてしまえばいいので、こちらは大は小を兼ねるになっています。

その代わりBin1モードはダイナミックレンジと感度は落ちるので、そこをどううまく回避していくか、適材適所で使う必要があります。


小さなM57を綺麗に出したい

実はM57ですが、随分以前から分解のベンチマークとも言える挑戦を続けています。今までの最高がVISACとASI178MCでの撮影で、もう2年ほど前のことになります。

 

ブログの記事にはしてませんが、その後もちょくちょく、2020年にはTSA120やVISAC、ASI178MCやASI290MM+RGBフィルターなどを色々組み合わせて撮影を続けてました。2021年の今年に入ってからも5月と6月にVISACとNeptune-CIIやASI294MM Pro+RGBフィルターで撮影していたのですが、いずれもシンチレーション が悪かったり、雲が途中から出てRGB全部撮れなかったりで、すべてボツになっていました。たとえ仕上げたとしても2年前のものを全く超えられそうになかったのです。

梅雨が明けてからしばらく、かなりシンチレーションがいい日が続いていて、これは分解能をためすまたとないチャンスです。鏡筒はVISAC。ただしやはりこの鏡筒はじゃじゃ馬の呼び声高く、星像がどうしても落ち着きません。


撮影

撮影の様子は7月17日の記事に書いてあります。重なるところもありますが、改めて書いておきます。

今回は初のモノクロ撮影ということで、RGBフィルターで試してみることにしました。もう何年も前にKYOEI Tokyoで特価で売っていたBarderのRGBフィルターをずっと持っていたのですが、やっと日の目を見ることができました。あと、ZWOの1.25インチフィルターが5枚入る電動ホイールもかなり前にKYOEI Tokyoの店舗で買ったものです。もう東京にしばらく行っていなくて最近はネットでの注文ばかりですが、たまにはやはり店舗で色々話ながら購入したくて、懐かしくなってしまいます。

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写真にはオフアキ用にASI178MCが付いていますが、これはまだ試していなくてとりあえず付けてあるだけです。

今回はL画像は撮影せずにRGBだけにしてみました。Lは全波長入ってくるので、この解像度だと色収差と大気収差が気になる可能性があるからです。



このように収差に関してもモノクロセンサーは有利になるはずです。これもASI294MM Proを試したかった理由の一つです。

今回は分解能狙いなので、露光時間10秒のラッキーイメージライクにしてみます。実際に撮影時の画像を何枚も見ていると、10秒露光でさえもいい時と悪い時が相当変わるので、シンチレーションの影響が効いているのでしょう。この中から比較的星像が小さくキリッとしているものを後で選ぶことになります。

これまでの結果から、短時間露光では星像が多少は小さくなること、その代わり長時間露光に比べて微光星の写りが悪くなり暗い星が写りにくくなることがわかっています。



なので今回は分解能は出ても、淡いところは長時間露光にかなわないため、M57のさらに周りの淡い部分や、近くにあるIC1296は難しいと思います。

露光時間はR、G、Bそれぞれ30分。その中からいいものを選ぶのでトータルでは1時間半を切ることになり、そこまで長い撮影とはならないです。それでも10秒と短いので各色180枚、トータル480枚となってそこそこの枚数と容量になります。その代わり、ASI294MM Proのフルサイズで撮影するのではなく、ROIで一辺を2分の1にしたので、画像サイズとしては4分の1になります。

撮影にテストで見てみると、Rはキリッと出ても、Gは結構ぼやける、Bはさらにぼてっとするようです。ピント位置のせいかと思い合わせ直したりもしましたが、劇的な改善はしなかったので、今回はRでピントを合わせて、GとBのピント位置はそのままいじらずに撮影しました。そもそもフィルターが同じ厚さなのでピント位置はそのままでいいのか、鏡筒に色収差が多少なりともあるはずなので、やはり合わせ直した方がいいのか、今後もう少し検証する必要があるかと思います。

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後日、 flatやdarkの撮影

撮影後、日を置いてflat、flatdark、darkの各フレームを撮影しました。

flatはフィルターがRGBとそれぞれ違うので、それぞれに128枚撮影しました。ただ、少し失敗してしまい、ゲインを220で撮影時と同じにして、露光時間を明るさによってRが20ms、GとBが50msとしたのですが、GとBの露光時間がflatdarkの露光時間と違ってしまい、PixInsightで最初flatdarkが当たらないというトラブルがありました。一応あらわにflatdarkを指定してやることでことなきを得ていますが、もしかしたらflatdarkも別個に撮った方がいいのかもしれません。

そんなこともありflatdarkはゲイン220、(気づかずに)20msで共通で128枚です。さらにですが、もしかしたらflatdarkの枚数が少なかったかもしれません。flatのトータルが384枚なので、せめて倍の256枚か、512枚の方が良かったかもです。

darkはlightと同じ設定、ゲイン220、露光時間10秒、温度-10度で256枚です。最初少しでも暗いところと思い、箱の中に突っ込んでおいたら熱くなったので、再度もう1セット取り直しました。256枚でも1時間弱なので、楽勝です。


初めてのRGB画像処理

RGBの画像処理も初めてです。実際には去年ASI290MMでM57を撮影した時に少しだけ試したのですが、その時はまだテスト撮影みたいなもので、なぜか色バランスが無茶苦茶になったなど仕上げる価値なしと判断しました。なので、まともなRGBでの画像処理は今回が初めてになります。

各lightフレームはPixInsightのBlinkで読み込んで、見た目でだめそうなものを弾きました。SubFrameSelectorもかけたのですが、ある程度は見た目と結果が一致するのですが、明らかに目で見てだめなのに、数値で見るとよく見えてしまうものなどがあったからです。でもこれからするWeighted Batch Preprocessing(WBPP)ですが、処理中に内部でSubFrameSelectorを呼び出してウェイトをつけて判断しているみたいです。もしかしたらきちんと注意してみてやらないとダメなのかもしれません。

実際のWeighted Batch Preprocessing(WBPP)ですが、RGBをいっぺんに放り込んでも処理してくれるものなのでしょうか?まあわからなかったので最初はR、G、Bをそれぞれ処理することにしました。


スタック時の位置決めがうまくいかない!?

まず困ったのが、しょっぱなのRの処理の時から位置合わせがうまくいきません。3枚くらいしか位置合わせできないとエラーを吐かれました。

原因はおそらく星の数が少ないことと、星像が丸ではないことです。過去のVISACの撮影の時も同様なことがありました。今後もこのままだと使い物にならないので、別途StarAlingmentを走らせて、回避する方法を探りました。

この問題2つに分かれます。

1. まずは星を星として認識にない場合。
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のようなエラーが出ます。この場合はStarAlingmentの中の「Log(sensitivity)」を-2.00とかまで下げます。もしくは「Peak response」を0.9とか1.0まで上げると効果的です。

2. 次にうまく位置が認識されない場合は
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のようなエラーが出ます。ここは「Star Matching」の「RANSAC tolerance」の歪許容量を上げることが効果的です。

でも難しいのはここからで、位置が認識されないエラーがでる場合でも、どうも星自身が認識されていないことが原因の場合がある時です。こんな時は「Star Detection」の「Noise reduction」が劇的に効くことがあります。ここを1または2くらいまであげてください。また、「Detection scale」が効くこともあります。こうやって考えると、位置決めの時も星がきちんと星として認識されているかどうかが重要であるのがわかります。むしろ、位置決めがうまくいかないと最初から出た場合、RANSAC toleranceをいじるよりもNoise reductionを増やした方が解決になることも多いです。まずはこちらを試すのがいいのではと思います。

その他のパラメータは色々試しましたが、ほとんど効かないか、効いてもごく僅かでした。

これらのStarAlignmentでの経験をWBPPに反映させます。いじるのは「Lights」タブの「Image Registration」です。StarAlignmentとよく似たパラメータがありますが、StarAlingmentほど細かくありません。とりあえずは一番効果のあるNoise reductionを増やします。これで一応Rは全て位置合わせができてスタックまで完了しました。

ところがです、G(緑)がまだダメなんですよね。Gでは結局WBPPのNoise reductionを2、Detection scaleを6、Log(sensitivity)を-2.00、Peak responseを0.9までして、やっと全枚数スタックされました。

さらにところがです、B(青)はWBPPでは全然ダメなんです。どうパラメータをいじっても数枚しかスタックされませんでした。ところが、StarAlignmentではRANSAC toleranceをあげることができ、そうするとうまく位置決めができます。今回は結局WBPPでは諦めました。WBPPでどうしてもダメでもStarAlignmentの方がもう少し足掻くことができるということは覚えておいてもいいのかもしれません。


縞ノイズ(縮緬ノイズ)が出てる!? 

出来上がったR画像を見てやると、縦方向に縞ノイズが入っています。縮緬ノイズとも言われているやつです。

integration

よくよく調べると、WBPPの振る舞いが少し変わったようで、そのままだとbiasが使われない設定になっていました。理由はdark frameにflat frameにもbiasが含まれてるので撮影したbias frameは使わなくてもいいということのようです。

私はこれが気に入らなくて、master flatを作る際にbiasを使うようにしました。これはイコールflatdarkを使わないということになります。これが問題だったようです。以前flat補正をする際に縞ノイズが乗っかるのはフラットが何かしらで汚くなる(その時は撮影時間が短くてノイズが載るという理由だった)というのを示したことがありますが、flat frameのダーク補正をしないと、残ったダークノイズが縞ノイズを作るということが今回改めて示されました。こたろうさんが以前この件について言及されていたと思います。

というわけで、biasの代わりにflatdarkを使うと次の写真のように縞ノイズは無くなりました。


RGBの合成前の画像

RGB合成前の画像を示しておきます。

まずはR。かなり鋭い星像となっています。縮緬ノイズも消えているのがわかります。
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Greenは以下のようになりますが、Rに比べると明らかに暗い星が少なく、星像も甘いです。
masterLight_BIN-1_EXPOSURE-10.00s_FILTER-Green_Mono

Bはさらにその傾向が強く、星像もかなり大きくなっていて、明らかに星の数も少ないです。
integration

このような傾向は普通のことなのでしょうか?それともピントがずれているのでしょうか?でもテストで画面を見ていた限り、ピントをどう合わせてもRがいつも鋭くてBは散々でした。

また、これらのズレは画像処理に影響がないのでしょうか?


Linear Pattern Subtraction

さて、上の画像をみると、横縞が結構多く残っているので、WBPPの新機能のLinear Pattern Subtractionを試しました。結果だけ言うと、あまりうまくいきませんでした。いくつかの横縞は目だたなくなるのですが、下のようによりハッキリした横縞となぜか縦縞が余分に加えられてしまうようです。

masterLight_BIN-1_EXPOSURE-10.00s_FILTER-Red_Mono_c3

今回はまだあまり試していないですが、一旦ここではLinear Pattern Subtractionを使わないで、次に進みます。


RGB合成とBanding noise除去

これでやっとR,G,Bのスタックしたものが出来上がりました。ただ、これらをそのままChannelCombinationなのでRGB合成しても星の位置がずれてしまいます。そのため、StarAlignmentで改めてこの3枚を位置合わせしました。これでやっとカラー画像が出来上がりました。

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でもR画像で見たときのように、やはり横の線が気になります。なので今回はRGB合成後、ScriptのUtilitiesからCanonBabdingReductionを使いました。これはかなりよかったです。いくつかパラメータを試しましたが、Active Previewはほとんど役に立ちませんでした。値を変えて何度か試した方が良さそうです。デフォルトの1でもほとんど大丈夫でした。0.2だとノイズが消しきれません。また、2だとノイズが加えられるような感じです。0.5と比べると1の場合は少し黒い部分が残っている感じがしました。結局最後0.7としました。要するに大きすぎても小さすぎてもダメなので、いくつか試すといいということです。結果は以下のようになります。

Image04_clipped_banding

かなり良くなりました。


ここからはカラーでの画像処理

ここまで来れば、あとはこれまでのカラーの画像処理と同じです。

まずカラーバランスが滅茶苦茶なので、念のためDBEで少しカブリをとってからPCCでカラーバランスを整えます。PCCで恒星の色はそこそこまともになりました。ただ、鋭さがR>G>Bの順でかなり差があるので、鋭いRとボケたBの差で、赤が強いところは赤ハロが、青が広がってしまっているところは青ハロがあるようにも見えます。逆に言えば恒星の色がよく出ているようにも見えます。

その一方、PCCをかけてもどうしても背景が青く見えます。これはヒストグラムを見て理由がわかりました。背景のノイズが青が一番多いのです。おそらくRGBの感度に差があり、Rが一番感度がいいためノイズが少なく、次がG、Bは感度が低いためノイズが大きくなるのかなと推測していますが、実際のところはよくわかりません。もう少し検証が必要かと思います。

いずれにせよ今回はPhotoshopに持っていった際に、背景のRGBのヒストグラムを合わせる事でカラーバランスを整えることにします。


星像に苦労

あとは、ArcsineStretchなどでストレッチしてPhotoshopに渡すのですが、よく見ると星像がガタガタです。

特に短時間露光の場合に多いのですが、VISACの星像にはいつも苦労します。今回はなぜか4方向に尖って見えます。しかもスパイダーの方向ではなくて、なぜか45度傾いた方向です。MophologicalTransformationで少し整えますが、星マスクが必要です。

この星マスクも苦労しました。ストレッチ後、StarNetで恒星と背景を分離しようとしても、星の3割ほどしか分離できません。分離できない理由は、星像が汚い、中心のピークが出ていない、明るすぎる、暗すぎるなどです。きちんと丸になっていて、中心がサチり気味の方がうまく分離できるようです。そのため、今回は
  1. ストレッチ前のカラー画像をL画像にしてから
  2. いったんSTFでオートストレッチして
  3. HistgramTansformationで適用、
  4. その後ExpornentialTransformationでPIPのOrderを1.5にして適用、
  5. STFで真ん中の三角をを右に移動して暗くする
とい過程を取りました。4、5は2回繰り返しました。これにStarNetをかけることでM57の中にある以外の恒星は全て救い上げることができました。M57の内部にあるいくつかの恒星は分離できませんでしたが、こちらは別途RangeSelectionでうまく分離します。

こうしてできた星マスクを適用して、MophologicalTransformationで十字型にDilationで伸ばし、X字型にErosionで縮めることで円に近づけていきます。これでやっとPhotoshopに引き渡しです。


Photoshopでの仕上げと結果

今回はPhotoshopではほとんどたいしたことはしていません。ノイズ処理もなしです。ノイズ処理をすると背景がボテボテになり、星像の鋭さと合わなくなってしまうからです。

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  • 撮影日: 2021年日7月17日1時16分-2時51分
  • 撮影場所: 富山県富山市自宅
  • 鏡筒: Vixen VC200L
  • フィルター: Bardar RGBP
  • 赤道儀: Celestron CGEM II
  • カメラ:  ZWO AIR294MM Pro -10℃
  • ガイド: なし
  • Light: SharpCap、Gain220、 露光時間: 10秒 x 461枚(R:163、G129、B169 x 19枚) = 1時間16分50秒
  • Dark: Gain220、10秒 x 256枚
  • Flat: Gain220、R:20ms x 128枚、G:50ms x 128枚、B:50ms x 128枚
  • Flat Dark: 20ms x 128枚
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC

2年前のVISACとASI178MCで撮ったものと比べます。左が以前のもの、右が今回のものです。

comp

今回は自己ベストかと思ったのですが、分解能だけ見たらもしかしたら以前の方がいいかもしれません。いやこれは画像処理のやりかたのせいで、見栄えをよくしようとした前の方が一見よく見えているだけかも。

もし以前の方がいいというなら、機材は今回の方が圧倒的に有利なので、これは完全にシンチレーション勝負になると思います。2年前の時はよほどシンチレーションがよかったのを覚えています。その他星の色、星雲の自然さ、背景の素直さなどは今回の方が格段に上でしょうか。

そういえば、この撮影の後になってVISACの光軸調整をしたのでした。その結果は反映されてないので、今一度シンチレーション のいい日を狙うとかでしょうか。


まとめ

初のRGBフィルターでの撮影と画像処理。いろんな新しいことがあってブログ記事が長くなってしまいまた。次回はもう少し早く処理できそうです。

分解能に関しては、やっぱり最後はシンチレーション なのでしょうか。リアルタイムで露光時間を1秒以下にして見てても、明らかに揺らいでいて、10秒ではこれくらいになってしまいます。次は揺れない日を狙うことになるのかと思います。

どうやらM57はAOOでもそこそこ色が出るみたいなので、次はナローのもしかしたら逆に長時間露光で、淡いところに挑戦するかもしれません。


おまけ

もう一つ、PixInsightの細かいテクです。projectファイルを保存して、ファイルのフォルダ名を変えたり、ファイルの場所を変えたりした時に、WBPPのインスタンスを右クリックして「Excecute in the global context」から再度開こうとすると、以下のようなエラーが出ることがあります。

IMG_2922

この場合、WBPのインスタンスををダブルクリックして出てきたMD5 checksumを消してやって、再びインスタンスをPI内で保存。それを右クリックのExcecute in the global contextで開くと普通に開けるようになります。

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