ほしぞloveログ

天体観測始めました。

2020年10月


低ISOの方がいい!?

HIROPONさんが、画像処理まで含めたら低ISOの方がいいという記事を書かれました。



HIROPONさんは東京都心に住んでいるため、明るいところでの撮影を得意としています。確かに、都心のような超光害地ではHIROPONさんの言っていることは正しいと思いますし、HIROPONさん自身も光害地での撮影を前提に記事を書いているのかと思います。ただし、その「光害地での撮影」が前提であることを考慮せずに、低ISOが常に正しいと思い込んでしまう低ISO信者になってしまう人が出てくるのを少し心配しています。何事も鵜呑みにするのではなく、状況に応じて自ら考えることが大切なのかと思います。

HIROPONさんは、暗い場所でもさらに低ISOで露光時間を伸ばす方向に進めたいような発言もされてますが、光害地でISOが低いと不利になることの一つは、時間の制限があるからかと思います。無限に時間があるなら、低いISOで露光し続け、淡い天体まで出した方が得です。でも現実にはガイドずれや、人工衛星などの邪魔な光が入る可能性などがあるので、ある程度の時間で区切らざるを得ない。そんな時はISOを上げ、露光時間を制限した方が得になります。HIROPONさんもこのことをきちんと理解している旨の発言をしていますので、必ずしも全て低ISOがいいと言っているわけではないのかと思います。




高ISOの方がいいのか?

光害地での低ISOが有利な理由はHIROPONさんがすでに述べられているので、ここでは暗いところで高ISOが有利な理由を中心に述べていきたいと思います。

ISOを上げる一つの理由が、読み出しノイズよりも淡い天体を見たい場合です。読み出しノイズが加わる時点以前にゲインを上げることができるなら、より小さな信号を見ることができます。でもよく考えるとこれも先に挙げた露光時間を伸ばす代わりに時間制限があるのでISOを上げることと根は一緒ですね。

言うなれば、明るさ、時間という物理量に対して、露光時間、ISOというカメラ側の機能を駆使して、いかにカメラの持っている生のダイナミックレンジ(ファイルフォーマットでは16bit、一眼レフカメラは14ビット程度が多い)に入れ込むかという話に行き着きます。「明るさ」という物理量には、ターゲット天体の明るさ、背景光(+背景光ノイズ)、リードノイズ、その他ダークノイズ、ショットノイズなどがありますが、今回話題としているのはターゲット天体の明るさ、背景光なので、基本的にこれに絞り、必要ならノイズ(特にリードノイズ)を考えることにします。

2020/11/1 追記: Zoom会議で、やはり都心の超光害地で撮影されている方から、とにかく何も写らないのである程度滑らかにしておかないとダメ、だから天体からの光子数を少しでも稼げる低ISOがいいのではないかとの発言がありました。皆さん納得してましたし、私もその通りかと思います。


Twitte上での疑問

黒・天リフさんが今回のHIROPONさんの記事に対して、Twitter上で色々疑問を呈してくれています。勝手に引用してしまっているので申し訳なくて、まずかったらすぐに消しますが、折角の疑問なので、私(Sam)のわかる範囲で答えてみようと思います。私自身はノイズに関しては多少勉強はしてますが、センサーに関してはプロでもなんでもないので間違ったことを言っているかもません。なのでここで書いたことは正しいとは限らないですし、簡単に答えの出ないものもあるのかと思います。自分で考える発端になればいいかなと思っているくらいです。


黒・天リフさん
一番重要なのは、コンポジット前の1枚画像のヒストグラムが偏らない(いわゆる中央より右)ことではないか?根拠は一つ、それが一番限られたビット幅を有効に使えるであろうから。
反論)天体写真においてはヒストグラムの山から左は基本的にゴミデータ。ゆえに「意味のある階調のビット幅」は山から右端までの間になる。それなら山は左に寄せた方がより階調が広くなるのではないか?
反論の反論)・・・・・・「ヒストグラム山右寄せ」は多くの方が実践し好結果を得ているように思えます。私はチキンなのでいまだにヒストグラムを2/3より右にできませんが、人によってはびっくりするほど右寄せにされている模様。なぜ「右寄せの方がよりよい」のかが自分にとっては未解明。 

Sam
量子化ノイズの問題だと思います。左寄せはADCのLBS (量子化単位)に近くなっていくので損なはずです。階調不足と言った方がいいでしょうか。なので右寄せの方が好結果を得ているというのは正しいと思います。でも右寄せはダイナミックレンジを犠牲にしているので、当然恒星とかはサチりやすくなります。nagahiroさんがもっとわかりやすく説明してくれていて「見た目の明るさが2倍違う天体AとBを撮影したとして、ヒストグラムの左側を使っているとそれぞれ画像上の輝度値が5,10だったのが、右側を使うと50,100になって、後者のほうが諧調が豊か」ということです。

デジタルゲインでは階段上のまま増幅されるが、アナログでゲインを上げると階調豊かになる。


黒・天リフさん
天体の光は実際にはどのくらいの光子をセンサーに届けているのか?たとえばごく淡い分子雲を総露出120分で撮影したとき、1画素に分子雲の光子は「何個」届いているかです。これがもし「1」なら直感的には鑑賞写真では判別不能に思えますが、では何個なのかと。

Sam
天体を仮定して計算するのは大変なのですが、Unity gainがわかっているなら画像から逆に計算することができます。Unity gainは1つの光子が1ADCの単位(=1LBS、最小量子化単位)という意味なので、Unity gainで長時間露光して撮影した画像で天体が写っていたなら、そのカウント数を数えればそれがそのままま光子数となります。


黒・天リフさん
バイアスノイズ≠リードノイズ?バイアスはセンサーの輝度値の「ゲタ」と認識しているのですが、これは「リードノイズ」とは別物と考えていいのでしょうか。ゲインをかけて増幅した値を読み出す際のノイズがリードノイズ?

Sam
同じと考えていいのではないでしょうか?バイアス補正はするけれどもリードノイズ補正はしないし、メーカーのデータにはリードノイズは出てくるけれどもバイアスノイズは出てきません。リードノイズとはどれだけ光を無くしても、露光時間を短くしてダークノイズを減らしても、どうしても読み取り時に出てくるノイズです。最短露光時間にしてバイアスノイズを測れば時間に比例するダークノイズの効果は無視できるようになるので、それは定義から言ったらリードノイズになると思います。リードノイズもバイアスノイズもISO(ゲイン)に依存します。

2020/11/1 追記: Zoom会議中で出てきた結論は、バイアスとリードノイズは別物という意見が大半でした。素子レベルでのオフセットがバイアス。バイアスはオフセットであって、ノイズではないというもの。でも私はまだ少し納得ができてなくて、結局あるゲインでのバイアスフレームをとるとそれはそのままあるゲインでのリードノイズに一致するのではないかと思うからです。でないと他にリードノイズを測る方法がないです。概念としてバイアスがオフセットなので別物というのは理解ができます。
さらに新たに出た疑問として、バイアスの時間変化はあるのだろうか?とうのがありました。例えばSony α7S3では一定の期間でバイアスを取得して書き換えてると言うことです。あぷらなーとさんがバイアスに関してはかなり解析されてました。


黒・天リフさん

「ゲインをかけて増幅した値を読み出す際のノイズがリードノイズ」だとすると、「ISO100 15秒」と「 ISO1600 15秒」ではリードノイズの影響はISO1600の方が少ないことになると推測。現実にはCMOSセンサーのリードノイズは今やとても低いので大きな差にはならないのかも。 

Sam
リードノイズはゲインに依存します。メーカー値を見てもそうですが、例えばSharpCapを使ってZWOのASIカメラとかで実測すると、その依存性が出て、高いゲインの方がリードノイズが小さくなると出ます。ただし、この「小さくなる」というのは入力換算での話で、ゲインで割った後のノイズの値が小さいという意味です。ゲインで割らないと当然ノイズもゲイン倍されて測定されるので、ゲインが高い方がノイズの値は大きくなるのはいうまでもありません。
そのため、露光時間が同じ場合、淡い天体を撮る場合にはISOが大きい方が得だと思います。でも当然ダイナミックレンジは犠牲になります。
でも少し疑問もあって、そもそもISOで上げるゲインはどこにあるのでしょうか?回路的にゲインを上げるならリードノイズ前で増幅するので高ISOが得をします。一方、読み取った後に計算機上でゲインを上げるなら、リードノイズは変わらず、むしろダイナミックレンジで損をします。一応データでリードノイズがゲインとともに下がるとでているので、前者が正しいのかと思っています。

2020/11/1 追記: 実際の天体からくる光子数をあぷらなーとさんが過去に計算してくれてます。
https://apranat.exblog.jp/27577057/

これによると、M27で1秒間に1ピクセルに0.7個だそうです。


黒・天リフさん
理想的なセンサーと完璧な背景光キャリブレーションがあれば、背景光の輝度に関係なく、同じ画像を得ることが可能。これって実現可能性はゼロに近いですが、論理としては間違ってませんよね?
常々、光害地と遠征地でのディープスカイの写りの差はもっと少なくできてもいいはずなのにと思うのですが、その根拠?となる仮説です。でも実感値としては全く間違ってるような気がしますね・・背景光の「揺らぎ」のレベルが違うのでしょうか。 

Sam
そもそも光の揺らぎも0ということはあり得ません。光子数のルートに比例する統計的な揺らぎが必ず存在します。なのでたとえ理想的なセンサーがあってもダメです。
信号が全て中央値だけのような統計的にばらつきのないものなら、背景光なども完全に引くことができるのですが、実際には(光子数、センサー読み取り値ともに)ノイズは必ずばらつきがあるので、完全に取り去ることはできません。背景光が明るければその分そこからくる(統計的に明るさのルートに比例した)ノイズも大きいです。なので、ゲインをあげて、背景光のノイズが効かない分解能が高いところでノイズを差っ引いた方が有利です。
HIROPONさんが画像処理が前提の場合はISOが高くても低くても差はほとんどないと発言されてるのですが、これも天リフさんと同じような仮定をしているからだと思います。画像処理が前提でも、ADCのレンジのどこに落とし込むかを考えないと、特に低ISOの場合は量子化ノイズに制限されることがあります。また画像処理にはノイズを差っ引くような処理が多いのですが、ノイズの平均値を差っ引くことはできますが、ノイズ(揺らぎ)そのものを差っ引くことはできないので、ゲインをあげてRead Noiseなどのゲインステージよりも前に入ってくる信号をあらかじめ増幅した方が得です。量子化ノイズ、リードノイズよりも天体の情報の方が十分大きく、量子化ノイズ、リードノイズが無視できる範囲で、かつADCのレンジ内に十分入るならば、画像処理を前提にすればHIROPONさんの言う通り、ISOに関係なく同じ結果になると思います。この場合は背景光の効きは同じになるので、ISOによって有利不利はありません。

2020/11/1 追記: Zoom会議中に黒・点リフさんはライトフレームをスタックした場合を想定していて、私はライトフレーム一枚を補正することを前提として考えていることが判明しました。ライトフレームを無限にスタックしていけば、信号である天体に比べて、無相関なランダムノイズは統計的に枚数のルートに比例して揺れが小さくなっていくので、原理的に消すことができます。でも現実的にはライトフレームの枚数を増やしていってもあるところで改善が見られれなくなると思います。どこかに時間的に相関があるノイズが支配的になったりしてしまうなどが理由と思います。


黒・天リフさん
短秒多数枚はリードノイズが枚数分だけ乗ってしまうのが弱点(のはず)。リードノイズの大きな冷却CCDではあり得なかった戦略。でもISOを上げればリードノイズの影響を減らせる?という気になっているのだが、そこが根拠レスなので知りたいところ。

Sam
ISOの効果がリードノイズが加算される以前で効いているなら正しいです。ただしデジタルゲインと呼ばれているような、ゲインがリードノイズ加算の後に適用されている場合は正しくないです。むしろダイナミックレンジを削るので不利になります。でもダイナミックレンジで不利というのも程度問題で、計算機上で無限の(例えば32ビットとか、64ビットの)レンジがあれば無視できる問題です。


2020/11/1 追記: Zoom会議中の質問など
  • 高いISOだと温度が上がったりしないか? -> 経験上あまりそういうことはない。
  • リードノイズが枚数を増やすことで消せない理由が知りたい。 -> たくさん重ねると確かに得するが、他のノイズに比べるとその効きが悪いのであまり得しない。詳しくはここの「読み出しノイズ」を参照。
  • PIはファイルを読み込んだ時にビット数拡張分を上に加えるだけなので、最初ものすごく暗く見える。その状態でスタックして加算「平均」して平均するところで割ってしまうと、狭いビットレンジのところに戻ってきてしまうので、階調が改善されないのではないか? -> 内部の計算が整数ならダメだが、不動小数点で計算しているなら大丈夫だろう。もしくはファイルに落とす時にビット数を選択できるくらいなので、計算機内部ではもっと情報量を保っているのではないか?ただし、ファイルに落とす時に、暗いままで、整数で、低ビットで保存すると情報が失われるので注意。
  • ヒストグラムは対数かリニアでみてるか?Steller Imageで縦軸を対数で見ると、何も信号がないと思っているところでも小さな信号が残っていることがわかる。また、横軸をリニアで見るとかなり暗く見えてしまっている場合があるがそれでも大丈夫なのか?-> 上と同じ理由で計算機内部で情報を保っていれば大丈夫なのでは?でも同様に、ファイルに落とすときは注意。
  • ISO側でなにか画像処理をしているのではないか? -> 少なくとも拡張感度というのはデジタルゲインで、さらに何か処理をしている可能性が高い。それだけでなく、常用感度でもなにか画像処理している可能性は否定できない。さらにRAWと言われているものでも、色々処理している可能性がある。例えば、オフセット、カットオフなどは触っている模様。でもカメラメーカーの裁量で決めていることで、情報としては出てこない。
  • さらに、CMOSカメラも色々複雑。例えばASI294なんかは、ゲイン120のところからリードノイズがガクンと良くなる。これはノイズの違うアンプを2つ使っているから。それぞれのアンプはアナログの可変ゲインアンプで、外部入力で単体でゲインが変わるアンプが各画素に入っている。なので、大きなゲインでリードノイズが改善される。でもASI294はゲイン391以上でデータが1ビット間引かれ、以後ゲイン60(2倍)ごとに1ビットずつ抜かれていく。センサーメーカーのデータがそもそもゲイン390以上ないので、ゲイン390より上はカメラメーカーの後付けでデジタルゲインではないだろうか?
  • 本来のハードウェアビニングは、リードノイズが効いてくる読み出し前に加算してしまうもの。昨今のCMOSセンサーのように、隣接ピクセルのリードノイズが加わった読み出した後の演算ではありません(それだとソフトウェアビニングになります。なんちゃってハードウェアビニングなどともよばれてます)。CCDとは異なり、CMOSの場合は原理的に読み出し前の加算が不可能らしい。それでリードノイズに違いが生じて、真のハードウェアビニングはリードノイズが4分の1になるのに、なんちゃっての方はそのルートで2分の1にしかならない。
  • ASI294MCとASI294MMはセンサーの型番がIMX294とIMX492と違いがあれ、ほぼ同様のものと推測。そもそも294の方もクワッドベイヤー配列で、ユーザーが見る1つの素子が実は4つの素子からなっている。そのために本来12bitのダイナミックレンジが、14ビットに拡張されているのでは?
  • サッポロポテト現象がASI294MCだと全く出ない。普通はほぼ全てのセンサーで出るので、これは驚異的。クワッドベイヤー配列の恩恵か。不思議なのはMMでも出ない。カラーベイヤーでフィルタリングしているのがサッポロポテト現象が出ない理由の一つのはずなので、MMで出ないのは不思議。理由は不明。

回路との比較

これらのことは回路のことを少し知っていると理解しやすいかもしれません。

光害地で背景光が大きい状態は、回路でDCオフセットが大きすぎて信号が見えにくい状況に似ています。例えばオシロで10Vレンジで1mVの振幅の揺れは見えないようなものです。

高いISOで淡い星雲を見やすくすることは、回路でサチらない範囲で適度にゲインを上げてSN比を上げることに相当します。

実際の回路でノイズのことを学ぶのは、役に立つと思います。例えば「計測のためのアナログ回路設計―OPアンプの実践回路から微小信号の扱いまで」の最初の方はものすごくわかりやすくノイズについて書いてくれています。実際にこれをみながら低雑音オペアンプを作ってみると、ノイズについてよくわかるかもしれません。

これらの電気信号を計算機に取り込む必要があり、こちらはまた別の話になります。量子化ノイズについては、ADCについてもよく理解しておく必要があります。

センサーの個々のピクセルに関しては回路の話になるのですが、多数のピクセルが集まったセンサー全体の話になると、また特有の事情が出てきます。conversiion factorなんかはたくさんのピクセルの統計的な振る舞いから求める典型で、初めて学んだ時は眼から鱗でした。

画像処理まで考えるとさらに複雑ですね。天体画像処理には、ターゲット天体の情報を持つヒストグラムの極範囲の狭い領域を、可視全域まで広げるという特殊な事情があります。逆に言えば、この領域を生かすような撮影方法を考えるべきで、あとはむしろ外に追いやってしまうような手法がセンサーに近い側で確立されると、もっと得すると思います。でも今の市場規模だと大変なのと、やはりRAW出力を求めるので、なかなかとっぴなことは難しいと思います。


まとめ

すみません、黒・天リフさんの疑問が散らばっていたので勝手にまとめてしまいました。まずかったら消しますので言ってください。

とりあえずバババッと短時間で答えてみましたが、どこまで合っていることか。色々疑問もあると思いますので、コメントとかTwitter上でもまた議論してもらえればと思います。

ノイズに関しては昔色々書いています。





でもよく考えたらADCの量子化ノイズについて言及したのは今回が初めてかもしれません。

こういった話も天体写真の別の面白い一面だと思います。これからも続けて議論していければと思います。


ノイズネタを肴にしたZoom飲み会開催のお知らせ

追記です。10月31日午後21時から、ノイズをネタにZoom飲み会を開催しようと思います。

Zoomに始めて参加される方はアプリが自動でインストールされるはずです。Windows、Mac、Linux、アンドロイド、タブレット、iPhone、iPadなど各種対応しています。発現する場合はマイクが必要です。顔出しOKの方はビデオカメラもあるといいかと。

たくさんの質問をTwitterに投稿していただいた黒・天リフさんも参加されるとのことです。他にも大物ゲストが来るかもしれません。

めんどくさい込み入った話になるかもしれないので、聞いているだけでも構いません。たくさんの方のご参加お待ちしています。



新月期、天気が良かったので平日ですが、自宅で撮影しました。ターゲットは季節柄、M31アンドロメダ銀河としました。アンドロメダ銀河の撮影は、なんと4年ぶりとなります。4年でやっと最初に戻った感じでしょうか。


そろそろ2巡目

4年前当初は、まだ星を始めたばかりで、初めてオートガイドが成功したと喜んでいた頃でした。当時はすごくうまく出てきたと思っていたアンドロメダも、流石に色褪せて見えてきました。そろそろこれまで撮影したメジャー天体の再撮影をしてもいい時期なのかもしれません。

今回の撮影の目的は2つあります。
  • 一つは、4年経ってどれくらい進歩したのかをみること。
  • もう一つは、4年前の撮影が数河高原と環境が格段良かったのに対し、今回は自宅で数段劣る空でも銀河撮影に耐えうる環境なのかを見極めること。
機材も画像処理の技術も進歩したはずです。少なくともカメラはAPS-CのEOS 60DからフルサイズのEOS 6D、鏡筒はFS-60CBから、FC-76と少し口径アップです。ですがこのFC-76、レンズが白濁してるやつです。果たして上手く写るのか?まあ、これまでHαはうまく出てるので、なんとかなるでしょう。

自宅なので空の環境が4年前より悪い代わりに、平日にもかかわらず撮影時間は朝まで気にしないで長時間できることはメリットになります。これがどこまで有利に働くか?うまく撮影できるなら、休日前に遠征に行くか、平日でも自宅で撮るかで、おそらく後者の方が圧倒的に撮れるチャンスは増えるはずです。


撮影開始

セットアップは順調で、19時半頃には撮影を開始できました。ちなみにフィルターは無し。最初CBPを入れてテスト撮影しましたが、流石に銀河部分もかなり暗くなるので、CBPは外しました。カメラが6Dなので、フィルターは鏡筒のフォーカサー付近につけるしかなく、この大きさで他に使えるフィルターもないため、今回はフィルター無しでの撮影としました。後の結果を見ると、フィルターなしでも十分戦えそうです。

でも後で見てみると、低空で北向に近い19時台と20時台は背景が明るすぎたので、ばっさり捨てました。富山の北は街明かりでかなり厳しいです。天頂付近と比べて明るさが倍以上違います。最初3分露光のISO1600でヒストグラムのピーク位置が半分くらいまできてたのでISO下げるか迷ったのですが、下げなくて良かったです。一番暗い時はピーク位置で25%以下にまでなってました。

19時の撮って出しJPG:
M31_LIGHT_180s_ISO1600_+22c_20201020-19h36m14s797ms
最初これを見た時、あー自宅はやっぱりダメだなと思いました。流石に淡すぎる気がします。

PHD2でのガイドは極めて安定でした。RMSで1秒程度、ピークでも数秒です。
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今回は6Dでの撮影なのでBackYardEOS(BYE)を使いましたが、途中3回くらい停止しました。PHD2からのDitherが始まるか終わるかするところで泊まるみたいです。どうもPCの負荷と関係あるようで、プロセスを見るとなぜか「System」が異常に高いCPUパワーを食っていました。後日、なにもUSBに繋げずに立ち上げ直した時はそんな負荷はなかったので、何か撮影時につないでいるものが悪さをしているようです。6DでもNINAに乗り換えた方がいいのかもしれません。

結局画像処理使ったのはBYEが止まってたのを復帰させたあとの21時半頃から、翌日の午前3時半頃までの、91枚。3分露光なので273分で、4時間半ちょっと分です。

0時頃、天頂付近の撮って出しJPG:
M31_LIGHT_180s_ISO1600_+17c_20201020-23h59m04s734ms
時間が経つにつれかなりマシになっていきました。まあこれならなんとかなるかもと思い始めました。あとは長時間で枚数を稼ぐのがどれだけ効いてくるか?ちょっと楽しみになってきました。


画像処理と結果

画像処理はいつも通りPIで、途中からPSに渡します。
  • ライトフレームが3分で91枚。
  • 後日同様の時刻に外で鏡筒に蓋をして撮影したダーク66枚。
  • フラットを障子越しに同じISOの1600で1/400秒で100枚。
  • 今回はWBPを使ったのでフラットダークも撮影しました。こちらもフラット撮影の時間が短いので簡単で、フラット撮影後そのまま蓋を閉じ、暗いところにもっていって同様の設定で撮影するだけです。
  • バイアスは以前撮ったものを流用。
全部をPIのWBPに放り込み、しばらく待ちます。1時間もかからなかったでしょうか、できた画像をとりあえずオートストレッチだけしてみます。

masterLight-BINNING_1-FILTER_NoFilter-EXPTIME_180.5

うん、悪く無いですね。

画像処理の手順は
  1. フラットで補正し切れてない所をDBEで滑らかに
  2. PCCで色合わせ
  3. 恒星の色を出したいので今回はArcsinhStretchでストレッチ
  4. StarNetで恒星部と分けて
  5. あとはPSで炙り出し
  6. DeNoiseでノイズ除去
くらいです。出来上がりは下のようになりました。色はタカsiさんのM31があまりに綺麗だったので、参考にさせてもらいました。

「M31アンドロメダ銀河」
masterLight_DBE1_PCC_AS_all4
  • 撮影日: 2020年10月19日21時37分-20日3時40分
  • 撮影場所: 富山市自宅
  • 鏡筒: タカハシ FC-76 (口径76mm, 焦点距離600mm) + FC/FSマルチフラットナー(x1.04)
  • 赤道儀: Celestron CGEM II
  • センサー: Canon EOS 6D HKIR改造
  • ガイド: PHD2 + f=120mmガイド鏡 + ASI290MMによるディザリング
  • 撮影: BackYard EOS, ISO1600,  露光時間: 300秒 x 91枚 = 4時間35分
  • 画像処理: PixInsight、Photoshop CC, DeNoise

ついでにAnnotationです。
masterLight_DBE1_PCC_AS_all4_Annotated

どうでしょうか、タカsiさんのと比べるとまだまだ全然ですが、自宅でFC-76(しかも白濁で格安)でここまで撮れたのなら、私的にはまあ満足です。恒星の色もきちんと出ています。4年前の撮影より空は格段に劣るにもかかわらず、ありとあらゆるところで更新できたと思います。画像処理の技術もそうですが、5時間近くを平気で撮影できるようになったというのも自分の技術の進歩かと思います。やはり4年は大きいですね。

反省点としては、赤ポチがやはり出ないところでしょうか。これはHαだけ別撮りして足すとかしないとダメなのかもしれません。

ちなみに4年前のはこんな感じ。アラもたくさんあるのは当たり前ですが、画像処理も含めて随分頑張っていたことを思い出します。

b6f6ef8a

あと、今回の画像処理はすごく楽でした。5時間近くの露光になるとやはりスタックされた画像はかなりのクォリティーになるのでしょうか、あまりいじったり強調したりすることなく、無理なく細部も出てきます。これなら個人で撮影して喜んでいる分には十分です。一晩を目処に自宅で、というのをしばらく続けてみたいと思います。

実はもう少し、初期の頃に撮ったM42とかをTSA-120と6Dで真面目に撮り直してみたいです。でもまたしばらく天気が悪く、回復するのは上弦の月くらいのようです。


Stick PCの小ネタです。

先日AmazonでPCのHDMI出力をUSBに変換するアダプターを注文しました。



私が買った時は700円以下。安いですが9月20日頃に発注し、つい何日かまえに届いたので一ヶ月位かかりました。 開けてみるとコネクタのことろがカタカタします。ネジを外すと、基板とコネクタが一体で、ケースにはコネクタ用に開けた穴のみで固定されてました。基板の長さがケース内部より少しだけ短いためにカタカタしてたので、基板にパーマせるテープを重ね貼りして少しだけ長さを増したらいい具合にカタカタが収まりました。

もともと電視観望用に一眼レフカメラのHDMI出力をPCに取り込み、SharpCapでスタックできないかと思って試験用に買いました。でもそちらの用途はSharpCap自身が対応してくれたので既にあまり動機はなく、それよりも長年探していたPCをモニターがわりにする機材そのものであることに気づきました。というのは、Stick PCを使うときに遠征先でトラブルがあることを考えるとどうしても小さいながらもモニターを余分に持って行かざるを得ないのです。でもこれがあるとPCの大きなが画面をモニターとして使えるはずで、余分なモニターを持っていかなくて良くなります。

さて実際のテストですが、ごく普通に使えます。PCからはWebカメラとして認識されます。Windowsだと標準のカメラアプリから、MacだとQuick Timeで新規ムービー収録を選べば共に標準ソフトで画面が見えてしまいます。下は、Stick PCの画面をHDMI出力から今回のアダプターでMacのQuick Timeで出しているところです。

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マウスの反応は少し遅れますが、遠征先で緊急事態に使う分には実用の範囲でしょう。普通はマウスの遅れとか無いリモートデスクトップで使えばいいのです。

今回は一番安い小さいタイプを買いましたが、もう少し高いものでUSB端子がケーブルでつながっているフレキシブルなタイプがありますが、こちらの方がいいかもしれません。理由は特にTypeCなどに変換するアダプタを使っていると、万が一StickPCを引っ張り上げたりしてしまうとコネクタ部分が曲がってしまうからです。ここにケーブルの柔らかい部分があるとコネクタの破損を防ぐことができます。

これで余分なモニターをいつも持っておく必要がなくなりますし、モニターの破損とかに気を使わなくて済むようになります。
 

プロローグ

前の日の土曜日、富山市科学博物館で8ヶ月ぶりに再会した小学5年生の女の子。ものすごく熱心な子で、その日は雲が多くて目的のアンドロメダ銀河もなかなか見えなかったので、よかったらうちで見ますかと親子でお誘いしたら、早速次の日、日曜日の夜に来てくれることに。




準備を張り切りすぎて

到着は19時頃になるとのこと。なので夕方17時くらいからゆっくり準備を始めます。でもちょっと張り切りすぎて、惑星用にMEADE25cm、広角電視観望で50mmレンズ、FS-60CBでもう1組電視観望。あと、すばる用に双眼鏡を2つ、星座ビノを5個くらいと、なんかフルコースになってしまいました

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19時過ぎに電話が。しかも、お互いに知り合いのU一家も一緒に誘ってきてくれました。なのでIさん一家がMちゃん(今日ようやく名前を聞きました)とお母さん、あとUさん一家が小4女の子、中1男の子と両親の、2家族。計6人のお客さんでした。


皆さん自宅に到着

ちょうど木星を導入しているときに到着。早速見てもらいましたが、やはり温度順応がまだまだでいまいちシャープさに欠けます。実は夜中に火星を撮影しようと思っていたのでMEADEにしたのですが、観望会のことだけを考えてC8のほうが良かったかもしれません。

Uさんのところはお父さんが天文好きで、この日もBORGの70mmくらいのを持ってきてました。Uさんのところの子供二人も多分星は好きなのでしょう。でも今回はMちゃんに圧倒されてしまいます。


もう興味津々

まず一番最初から、Mちゃんだけは赤道儀のCGEM IIに興味津々。「自分で導入してみる?」と言って、コントローラーを渡したら「わーっ!いいんですか?」とすごく嬉しそう。土星の導入をしてもらったのですが、やり方は一度言うだけで完璧に覚えてしまいます。「じゃあ次は火星導入してみたら」とかいうと、もう勝手にどんどん進めていきます。

すごいのは、火星の自動導入時は鏡筒が大きく動くのですが、きちんとケーブルが噛まないかとかさりげなく気を使ってることです。もちろん私は何も言ってませんよ。こんな子なら安心して機材も触ってもらえます。

でも初期アラインメントを木星一つしか合わせてないため、離れているる火星の導入はずれてしまいました。そうしたら「これファインダーってどこにあるんですか?」と聞いてきます。普段私はあまりファインダーを使っていないことを反省して、急遽ファインダーを付けます。もう一度木星に入れてもらって(もう完全にMちゃんに任せてます)、ファインダーの調整もMちゃんにやってもらいます。ファインダーも最初Vixenのものと違うので少し戸惑ってましたが、すぐに慣れて自分できちんと合わせてました。その後、火星も勝手に導入してしばらくすると「入った」と。そのときに基準星の置き換え方法を教えたら、これも次のベガとかで自分で置き換えもやろうとしてました。



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MEADEはミラーシフトが大きいので、KASAIのフォーカサーでピントを合わせてもらいましたが、これも戸惑っていたのは最初だけ。子午線越えの場合アイピースの上下が逆になったりしてしまいますが、アイピースを上に向けるためにフォーカサーを回転するときに必ず落とさないように手を添えるとか、基本がきちんとできています。おそらく自分で経験してどこが大事か知っているためか、ホントにほんの一言言うだけで、あとは物凄く丁寧に気をつけて、考えながら操作してます。多分かなり自分で星を見てポルタを使い込んでいるからだと思いますが、危ない操作を避けることも、自分で何度か機材を落として学んだのではないかと思います。なんかもう、お手本のような子です。

MEADEでM57を導入しようとしていたので「まずベガで基準星を置き換えるといいよ」と言うと、もう手慣れたものできちんとやっていました。面白いのは、ハンドコントローラーのボタンの英語が読めないのです。ここら辺はさすがに小学生で、なんか可愛かったです(笑)。結局、どのボタンがどの機能か覚えてしまったみたいで、今度は「DEEP SKY」ボタンを使ってM57も導入してました。見えた時の喜び具合もすごい反応で、他の子や大人の星雲を見たときの反応は結構一般の人に近い「ふーん」というのに対し、もう大興奮で一人キャーキャー叫んでました。


Mちゃんのポルタ

さて、だんだん木星と土星が低くなってきたので、MちゃんのポルタIIを出してもらって、自分の望遠鏡でも見てもらいました。聞いてみると、持っているアイピースは6.3mmと20mm。もう手慣れたもので、惑星の導入は一瞬。しかも最初っから6.3mmで導入までしてしまうみたいです。せっかくなので、私の部屋で少し機材を見てもらい、ついでにポルタに付いてこない10mmと40mmのアイピースをあげることに。昔星まつりで安く買ったものですが、私が使うよりMちゃんに使ってもらった方が遥かに役に立ちそうです。

外に戻ると早速40mmのアイピースを使って、M31を導入しはじめてました。実は、昨日科学館の観望会で一緒だった県天のメンバーのKさんが自宅のすぐ前に住んでいて、今日のことも聞いていたので顔を出してくれて、いろいろMちゃんに教えてくれていたようです。M31は恒星とか惑星は違って、導入するのはなかなか大変です。Mちゃんも最初相当苦労してましたが、Kさんの教え方がうまいのか、じきに自分で導入できるようになり、あっという間に慣れてしまったようです。初めてM31が導入できた時の喜びようはもうすごくて、こんなに喜んでくれるならアイピースの何本でも惜しくないと本気で思いました。


電視観望と眼視での比較

眼視もある程度見たので、次は電視観望です。最初広角電視観望から始め、北アメリカ星雲とかサドル付近を見てもらいました。

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ついでにM31を50mmの広角電視観望で見てもらいました。前日の科学館で雲であまり見えなかったので、少なくとも晴れていて光害も少ない場所でのM31は形もわかって好評でした。

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そんなこんなで、あっという間にUさん一家が帰宅する時間になりました。せっかくなので、M57だけでも見てもらおうと、FS-60CBでの電視観望にASI294MCを付け替え、画面に映し出します。先ほどのMEADEでの眼視と比べて明らかにカラフルなので、今度は皆さん「きれーい!」。

再びMEADEでも導入し直し、改めてみんなで眼視で比べて見てみます。見比べはやはり面白くて、特に眼視のモノクロと比べると電視観望での色が映えます。でも「眼視のいいところもあるんです」とキチンと両方のいいところを説明しました。

さらに帰ろうとしているUさん一家を引き留め、M27亜鈴状星雲を電視観望でもMEADEでも導入し、再び比較。眼視の方はM57よりさらに淡くなるので、見るのが難しい人もいたみたいです。

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ちょうど21時頃でしょうか、ここで明日の月曜に学校があるUさん一家が帰宅。Mちゃんの勢いがすごすぎて、Uさんのところの子供2人が乗り切れてなかった気がしたので、少し心配でしたが、家族みんなでお礼を言ってくれました。

あ、そうそう、うちの妻を含めてお母さん同士は3人でずーっと何か話してました。あとで妻から聞いたら、最近Uさんのところの上の子も中1でなかなか家族のお出かけに着いて来なくなったとのこと。そういえば確かに、しきりに上の子の方が「もう帰ろう」と言っていました。うちの子もそうですが、だんだんと自分の世界を作っていくので、しかたないのかなあと思います。


Mちゃん格言

その後もMちゃん、独走体制で一人でハンドコントローラーに入っている天体を片っ端から導入していきます。私とKさんは横で微笑ましく見ていました。詳しい人はもうわかると思いますが、ハンドコントローラーに登録されているほとんどの天体、特にDSOはこんな街中では見えません。途中でMちゃんもそのことに気づいたみたいで、少し話しているとしみじみとした口調で「最近、自分の望遠鏡だと見えないものが多いことがわかった」とのこと。もうポルタと経緯台だと限界なのかもしれません。

あと、本も紹介しました。聞いてみると持っているのは星の図鑑くらいだそうです。興味を持ち始めたのがわずか1年前、仕方ありません。それでこの進化はすごいです。でも私も逆に、小学生で読めそうなものがなかなかありません。とりあえず誠文堂新光社の「メシエ天体&NGC天体ビジュアルガイド」を見せると爛々と目を輝かせています。「貸してあげるからいつか返してくれればいいよ」というと、「お母さんにスマホで表紙の写真撮っておいてもらう。自分で買う。」とのこと。その時ボソッとつぶやいたのが「メシエ全部覚えられそう...」。うーん、楽しみな子です。

最後にFS-60CBの電視観望でM31を見てみました。すでに少し薄雲がかかってきていましたが、それでも構造まで見えるM31に親子共々びっくりしてたようで「図鑑と一緒だ」と叫んで、スマホで画面を映して待ち受け画面にしていました。ここら辺は普通の子供っぽくてかわいいものです。

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21時過ぎくらいでしょうか、一瞬で空が曇ってきて、電視観望もM31ももう中心だけがボヤーっと見えているだけ。「これがさっきのアンドロメダ銀河...?」となんだかガッカリして寂しそうでした。

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なんでもこの日の午前が授業参観か何かで、明日は月曜でも学校はお休み。このまま晴れていたらオリオン座が上がってくる0時頃まで居座ってそうでした。うちは全然いいのですが、流石に天気はどうしようもなくここで解散。この時でしょうか、「オリオン大星雲は緑に見えるくらい」とさりげなく言うのですが、私はいまだにM42に色がついて見えたことがありません。「赤とかピンクとかは?」と聞くと「それは見えたことがない」とのこと。一緒に見てたお母さんも色はついて見えないと言っています。子供の方がやはり目の感度がいいのでしょうか?なんともうらやましいです。

後片付けをしながら「キャップがなくなったー」とか騒いでずっと探していました。結局見つからなかったのですが、多分ポケットの何処かから出てくる気がします。道具を大切にするのはとてもいいことだと思います。とにかく、とても楽しかったらしく、「科学館より凄かった」とのこと。科学館の方には少し申し訳ないですが、それよりも私の方が楽しませてもらった気がします。Mちゃんの反応や星に対する純粋さを見ていると、ほんとに嬉しくなってきます。「またいつでも来ていいからね」と言って見送りましたが、ほんとにいつ来てもらってもいいくらいです。これからどんどん成長していくのか、そのうち飽きてしまうのか、もちろん本人次第ですが、やる気がある限り応援してあげたいと思います。


お菓子美味しかったです

あ、そういえばIさんのところからも、Uさんのところからもお土産いただきました。でも私の家族、気を使ってもらうのが苦手で、実は手土産とか無しの方がいいんです。なので「今度からは手ぶらで気楽に来てください」と伝えました。でも困ったことに、富山の「手ぶらで来てください」は「何か持ってきてね」と同義らしいのです。うちはアメリカ暮らしが長かったので、手土産を持っていく文化に慣れてないので、もしうちに来ることがある場合は、本当に手ぶらで来てください。星仲間として来て欲しくて招待してるので、気兼ねすることなく何度も来て欲しいのです。

でもなんでこんな話を珍しく書いたかというと、Iさんのところが実はケーキ屋さんらしいのです。最初「自前のお菓子を持ってきた」と言うので、見てみたら絶対どこかで買ってきたもの。それでよくよく聞いてみるとケーキ屋で「あ、確かに自前だ」というオチだったのです。うちからも近いので、今度お店の方にも行ってみようと思います。こうやって関係ができていくのは、逆に狭い富山のいいところですかね。

どれも美味しかったです。でもUさんの持ってきてくれた「カイコのふん入りコーヒー」、インパクト強すぎて、まだ誰も飲んでいません。私もちょっと様子見です。いや、もちろん美味しいとは思いますが...。


昼間に少し富山市科学博物館に用事があったのですが、ついでに最近の観望会の様子を聞いてみたら、コロナ禍の中でも再開して頑張って毎週土曜日に続けているとか。せっかくなので、是非ともお手伝いにということで、久しぶりに参加してきました。前回参加した観望会が2月だったので、約8ヶ月ぶり、本当に久しぶりです。

現在、科博の観望会は完全予約制になっていて、毎週土曜日なのは変わりませんが、定員20人を2回、各1時間で、18時半から20時半まで、2ローテーションまわすのみとのことです。今回のテーマは「アンドロメダ銀河」。SCWでは19時くらいから晴れそうなのですが、18時過ぎではほとんど雲に覆われています。18時半になっても、ごく一部所々に隙間があるくらいで、街中のこともあり、目で見ててもほとんど星は見えません。ときおり明るい木星や火星、最初の頃にアークトゥルスが、たまに天頂付近のベガやデネブが見えたくらいでしょうか。こんな日は観測は難しく、ほとんどお話だけになってしまいます。実際の観望はMEADEの25cmがあり、そこに木星や火星を入れるのですが、なかなか見えなくて順番待ちになってしまいます。

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私の方は、一応50mmのレンズとASI294MC Proで広角電視観望をセットして、もし何か見えたらくらいに思ってました。でもアンドロメダ方向はかなり雲がかかっています。

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ごくごく稀にアンドロメダが薄雲越しに見えて、一部のお客さんにはみてもらいましたが、薄雲の中なのでなかなか形まで分かりません。ボーッとしてるのが銀河ではっきりした恒星とは違って見えますが、一般のお客さんには恒星と銀河の違いはなかなかわからないかと思います。それでもお話の中で他の星の配置とアンドロメダ銀河の位置を聞いていたのか、認識はしてくれてほとんどの方が喜んでくれていたのが幸いでした。

今回一番嬉しかったのは、2月に観望会で会った星ガールと今回再び会えたことです。「次回の観望会で」と再会を約束したのですが、その後すぐにコロナで観望会がずっと中止。もしかして今回来てるかもと思って、約束していたポルタ用の微動ハンドルを一応持っていきました。科博のスタッフの方に聞いてみたら、2グループ目にちょうど来てるとのこと。前回会った時は2月で4年生でしたが、もう5年生になっていました。「余っていた微動ハンドルなのでどうぞ使ってください」と言って渡すと、相変わらずのテンションマックスで大喜びです。分解しようとしてお母さんに怒られてました。全く星に飽きていないみたいで、しょっちゅう望遠鏡を出しているそうす。以前は科博の観望会に持ってこれてた自分のポルタⅡも、コロナ禍では持ってくることも叶わず、その代わり自宅で見ることが多くなったそうです。でも駐車場で見てると、コロナだからあまり大っぴらに見ることができないとか。少人数で見ている分には構わないと思うのですが。

結局、この子とお母さんとずっと話していたら空が結構晴れてきてました。デネブ方向にレンズを向けると、街中にもかかわらず北アメリカ星雲がバッチリ見え、ものすごく喜んでいました。それでも天頂付近もまた雲に隠れてしまったので、次にM27を探したのですが、固定三脚でアンタレスとベガの間のそれらしい方向に向けるのですが残念ながら見つからず。その後、アンドロメダ銀河に戻ってると、こちらはバッチリ見えます。もう、キャーキャー言いながら喜んでいます。機材にも興味津々で、カメラと小さなレンズだけでこれだけ見えるのをすごく不思議がっていました。レンズは古いものなのでまだしも、カメラはやはり小学生には高価すぎますし、PCも必要なので大変です。それよりも「きちんとアイピースを使って、星の色とか自分の目で見ることが大事だよ」と伝えました。でもこれだけ喜んでくれるとこちらも嬉しくなって色々見せてあげたくなってきます。

明日の日曜晴れそうなので、もしよかったら自宅に来て、夜に望遠鏡見ますかと誘ったら、19時頃に自分のポルタIIを持って来てくれることになりました。しかも色々聞いていると、ちょっと前にペルセウス座流星群の時の夜に偶然会ったUさん一家と仲がいいとか。Uさん一家はうちの妻とも仲がいいので、もうウェルカムです。結構こういう星とかに興味がある子達は、みなさん近い関係にあるのかと思いました。もしかしたらUさん一家も誘ってくるとかで、明日の晩は賑やかになるかもしれません。

明日は木星、土星、火星と惑星フルコース、しかも新月期なので電視観望で星雲も期待できます。うまく見せてあげられるといいなあ。


少し前に書いた電視観望の入門記事ですが、



記事公開当時はまだ未発売だったCMOSカメラ、つい先日サイトロンからSV305-SJという型番で正式発表されました。今回は正式販売開始記念として、もう少し突っ込んでみようと思います。

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背景

そもそもは、シュミットさんからCMOSカメラをレビューして欲しいという依頼が全ての始まりです。特に、初心者に向けてこのカメラで電視観望入門という形にしてもらえればという要望でした。

このブログでは、宇宙の深淵を覗くことの魅力を知ってもらいたくて、電視観望がその一役を担えないかというので、電視観望技術の普及をこれまでずっと目指してきています。天文人口が増えてくれればという思いで、初めて挑戦する方にもできるだけその敷居が下がるように、私のできる範囲で試したことをできる限りわかりやすくというのを目標に前回の記事を書いてみました。しかしながら、前回の記事ではこのカメラでどこまでできるかという可能性を示す目的で書いた意味もあったので、ほとんどトラブルのようなことは書いていません。

でも実はこのカメラ使ってみると分かりますが、かなりのクセがあります。初心者が前回の記事を見て始めると、いくつか迷う点が出てくると思います。今回の記事は前回の記事の続編という形で、実際に電視観望を始めたときに助けとなるように、より突っ込んだ内容にしようと思います。

シュミットさんからは、トラブルや問題点もきちんと書いて下さいという許可も取ってあるので、遠慮なくいきます


最近のサイトロンの対応はすごい

加えてもう一つ、どうしても書いておきたいことがあります。以前ブラックパンダさんとのTwitter上でのやりとりで、できるだけ初めての人が電視観望を試しやすくする商品を開発してくれると発言してくれました。この時とても嬉しくて心強く思い、そして有言実行で、例えばAZ-GTeシリーズで多くのラインアップを展開してくれているのも、その一環なのかと信じています。

初心者が電視観望を始めるときに、価格で一番引っかかる部分がカメラだと思います。今回のカメラの販売もブラックパンダさんが自分が発言したことを責任を持って守ってくれたのかと思っています。その考えに賛同して、シュミットさん経由で今回のカメラを評価して欲しいという依頼があったとき、喜んで引き受けました。

もちろん、今回の依頼も突然というわけではなく、過去にはQBPのアメリカンサイズを私のTwitteでの何気ないつぶやきから作っていただいたり、愛用しているAZ-GTiのレビュー(間もなくSkyWatcherのカタログが配布されると聞いています)を頼まれたりもしてきたので、今回も二つ返事で引き受けました。

また最近も、QBPの赤外領域をカットしたフィルターを作ってれると、これもユーザーのTwitter上での発言を元に約束してくれています。このように、ユーザーの意見に真摯に耳を傾けてくれる姿勢は、非常に好感が持てます。

今回も含めていろいろ頼まれたりはしてますが、私はやはりユーザー目線で記事を書いているつもりです。ユーザー目線で見た場合、最近のサイトロンさんの対応はすごいと思います。こんなことを書くとプレッシャーになってしまうかもしれませんが、無理をしない範囲で、これからもユーザーの意見に真摯に対応してもらえるととても嬉しく思います。


SV305-SJ

肝心のCMOSカメラはSONYのIMX290センサーを使用したカラーカメラで、つい先日サイトロンジャパンから正式発表されたものです。販売ページも既にできていて、



私が受け取った時はまだ型番もついて無かったですが、SV305-SJとなったようです。SJはSIGHTRON JAPANの頭文字とのこと。

これを聞いてピンと来た方も多いと思いますが、前回出したカメラ本体の写真を見てもわかるように、SVBONYのSV305と同等品です。SV305は初心者でも購入しやすい価格設定のため、電視観望でのCMOSカメラの裾野を広げるかと思われていましたが、保護ガラスが赤外線カットフィルターを兼ねていて、Hαの赤色がなかなか出てくれないようです。ここから考えると、どうやらこのカメラのターゲットは星雲というよりは惑星のようです。そのため、保護ガラスを外してHαを感度良く出しているユーザーが何人もいます。この場合はもちろん保証外になってしまいますし、ガラスが接着されているので上記リンク先にもあるように割れてしまうこともあるようです。

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SV305-SJで見た月。
明るい月や惑星は本質的に得意なようです。
特別な設定をするでもなく、十分きれいに見えます。 

今回発表のSV305-SJは、保護ガラスが赤外カットをしていないクリアなものとのことで、電視観望のことも考えてくれているとのこと。Hαで輝いている星雲に期待できそうです。また、UV/IRカットフィルターは付属で、惑星などの撮影にはこちらを使うと余分な赤外領域などをカットしてくれるようになります。


センサー面積と鏡筒の焦点距離

前の記事のコメント欄でも書いたのですが、ガイド鏡の使用を初心者に勧めていいものかすごく迷いました。しかしながら、センサー面積が小さいSV305-SJでは、焦点距離の長い鏡筒では狭い範囲しか見ることができなくなるため、特に導入時に苦労することが予測され、初心者にとっては大きな負担になってしまいます。ところが、適した短焦点距離の鏡筒を探そうとすると意外なほど選択肢がなくて、しかもどれも結構な値段で、なかなか初心者に勧めることができるものがなく、結局最後ガイド鏡に行きつくことになりました。

実は短焦点距離というので、最初一眼レフカメラのレンズも考えました。しかしながら手持ちのアダプターではどうしても解がなかったのです。一応カメラレンズにアメリカンサイズのアイピース口を取り付けるなどして、カメラを固定することはできます。それでもバックフォーカスが長すぎるために、焦点をとることができません。でも仮になんとかできたとしても、これでは初心者には敷居が高すぎます。

次に考えたことは、ガイド鏡を使うことでした。昨年の胎内星まつりで、ブラックパンダさんのお店で購入したガイド鏡(いまでもシュミットで扱っているようですが、2020/10/12現在欠品中のようです。)で試してみようと思うとシュミット店長さんに相談したところ、EVO GUIDE50EDのアイデアを出してくレました。



なので、今回のセットアップができたのはシュミットの店長さんのおかげです。

結果として、これはかなり面白い試みとなりました。特に初心者にとっては、税込でも2万5千円を切っていて、値段的にもかなりこなれています。しかもガイド鏡と言って、もさすがEVOと謳っているだけあって、SV305-SJの小さなセンサー面積で中央を見ている限りは、四隅の星像も相当シャープです。

しかも最近SkyWatcherから専用のフラットナーも発売されたようです。



あまり知られていないようですが、実はEVO GUIDE50ED用の専用フラットナーがSTARIZONA社からも販売されていて、



たかがガイド鏡に各社訳のわからない力の入れようですが、なんか期待できてしまいます。もうこれで超コンパクト鏡筒として、電視観望だけでなく真面目な長時間撮影までするのも楽しいのかもしれません。

その際ですが「ぜひとも足の部分をそのままAZ-GTiなどに取り付けられるように、鏡筒バンドとアリガタを改良してくれるとさらに良かったりします」という話をシュミットさんにしたら、現在足の部分を変更する部品を実際に考えているそうです。こちらも期待したいと思います。


SharpCapでの操作

次に、SV305-SJをSharpCapで使う時に幾つか気づいたことです。

SharpCapのバージョン:
まず現在のバージョンでは必ず32bit版を使ってください。64bit版は対応していません。バージョン3.3βになると64bit版でも対応していますが、いずれにせよ注意が必要です。


ゲイン:
このカメラは思ったよりゲインが取れません。まずSharpCapで表されてるGainの数値はそのまま数値倍になります。最小値の1に対して、例えば2なら2倍、4なら4倍。最高は30なので30倍までとなります。同じIMX290センサーを使ったASI290MM(手持ちはモノクロしか持ってないのでこちらで比較します)はSharpCapの値で570まで出ます。これは57dBということなので(60-3)dBということで、1000/1.4 = 715倍程度になり、SV305-SJの30倍に比べるとASI290MMはさらに24倍くらいゲインを上げることができるということになります。なので電視観望などをしようとした場合に、ゲインがあげられない代わりに露光時間を伸ばすなどの必要性が出てきます。


Black Level:
次に、実際の電視観望をする際のコツです。カメラに入る光を遮断したときのヒストグラムに注目します。本来ノイズを表すある広がりを持ったピークが見えるはずなのですが、ピークの左側が画面の左端から出たような状態になってしまうことがよくありあます。あるレベル以下の信号を0としてしまっているのですが、これだと暗いところの諧調をきちんと表現することができません。まずは画面右の「Camera Controls」タブの「Black Level」を100とか150くらいまで持ち上げて、きちんとヒストグラム左端の暗い信号情報を取りこぼさないようにします。淡い星雲などを扱う場合の第一歩です。


露光時間:
そもそも、電視観望ではリアルタイム性を求めるために露光時間をできるだけ短くします。そのため、ヒストグラムのピークがもともとずいぶん左に寄っている状態で操作することが多いです。有料版のSharpCapだと、この状態で雷ボタンのオートストレッチを押すと、淡い天体を適度に見やすい状態にあぶり出してくれるので非常に便利です。この機能を使うためだけでも有料版にする価値があるかと思います。無料版の場合は、ヒストグラムのピークを左と真ん中にある黄色い点線で挟むようにして、淡い部分をあぶり出すようにしてみて下さい。

でも有料版の値段は年間高々10ポンド、日本円にして千数百円。高価なことが多い天体機材と比べたら誤差のような値段で、使い勝手は何万円もする機材を買うより、はるかによくなるかもしれません。もし使い続けるなら迷わず有料版にすることをお勧めします。有料版の場合、ヒストグラムのピークが左端に行かない範囲では、何か設定を変えるたびに雷ボタンのオートストレッチを毎回押せばいいので、かなり楽です。


GammaとContrast:
問題は、この状態でのSharpCapの「Gamma」と「Contrast」の振る舞いです。実際に試してみるとわかるのですが、両方共少し値を変えただけで真っ暗になってしまったり、飛んでしまったりでほとんど役に立ちません。なのでこれらの機能は少なくとも電視観望では使わないと思っておいてください。もちろん月や惑星などの明るい天体など、オートストレッチなどであぶり出したりせずに使う分にはこれらの機能はきちんと目的通りに働きます。十分な光を得ることができる、月や惑星の撮影を中心にテストしたのではと推測できます。淡い星雲を見るためにはこのようにユーザーの方で一工夫(さわらないということ)する必要があると思って下さい。


LiveStack:
さらに、ノイズを下げたい場合のLiveStackですが、1秒以下とかの短時間露光だとノイズが多いせいかAlign機能がうまく働かず、スタックできないことがよくあります。数秒以上の露光時間にするか、もしくはDigital gainを上げるとうまくいくと思います。これもゲインを大きく上げることができないので、全体的に暗くなって、暗い恒星が認識できなくしまうことが原因です。特にDigital gainはこのような暗い画面の時に絶大な改善効果があることが多いので覚えておくといいでしょう。


その他、細かいバグ:
さらに、まだSV305用のドライバーがこなれていないせいか、SharpCapで操作する場合はバグも多いです。
  • 例えば、Colour Spaceを変えると真っ暗になることがあります。これはExposureを適当に変えると戻ることが多いです。
  • また、ゲインに100とか150とか50の倍数以外を手入力すると何故か1減った数になってしまったりしますが、こちらはまあ気にしなければ実害はないです。。 


ノイズについて

さらにノイズに関することです。どんどんいきましょう。

ノイズのピークが細い:
ヒストグラムを見るとノイズが細く見えます。これはノイズが少ないことを意味しますが、実際の画面を見るとノイズ、特に結構大きな縞構造のノイズが多いです。そのため、このピークに合わせてSharpCapであぶり出しを攻め過ぎると、画面上にノイズが非常に多いという印象を持ってしまいます。どうもこのカメラは、炙り出しを攻めすぎない方がノイズが少なく見え、かつターゲット天体もそこそこ見えるということに気づきました。

例えば、M57を2つの場合で見比べます。これは一番最初にSV305-SJを触ったときに気づいたことで、鏡筒はまだFS-60CBを使っていて、QBPも使っています。

まずは、無理にあぶり出さない場合:
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次にかなり炙り出した場合:
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見えているノイズが全然多いことがわかります。

比較して欲しいのは、LiveStackでのヒストグラムの攻め具合です。上のノイズが少ないものは、2本の黄色い線をそこまでピークに近くしていません。逆に下のノイズが多いものは、2本の黄色い線をかなりピークに近づけています。実際に無理に炙り出さなくても、天体は十分に見えることが多いので、やはりこのカメラはあまり攻めすぎて炙り出すのは控えたほうがいいのかと思います。

ついでに、前回見せることができなかったM27亜鈴状星雲も載せておきます。こちらもSV305-SJを使った初日に試したもので、FS-60CBにQBPをつけています。

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ダーク補正もしていなくて、まだ暑い夏の時期なので、ホットピクセルも目立っていますが、M27がうまく出ています。


QBPと相性が悪い

これまでの経験からこのSV305-SJですが、どうも同じサイトロンから発売されている光害防止フィルターのQBPと相性が悪い気がしています。最初QBPを使っていたのですが、前回の入門記事は全てあえてQBPを外しました。きちんと定量的に検証できているわけではないので、あくまで印象からくる推測ですが、理由はおそらく感度もしくは最大ゲインが足りなくて、QBPをつけると暗くなり過ぎるのではないかと思っています。

EOS X5をSharpCapで電視観望で試した時
も同じような感触でした。シベットさんの以前のフィルター比較記事で、短時間露光だとQBPが不利で、長時間露光になってくるとQBPが有利になってくるという結果がありましたが、そこら辺につながるのかと思っています。



暗くなりすぎると、一回の露光時間が短いと効いてくるリードノイズが相対的に大きくなっているのではないかと思っています。もしSV305-SJでQBPを使いたい場合は、露光時間を長めにとるといいのかと思います。


まとめと今後の期待

今回はSV305-SJを実際に使う際に、注意すべき点などを思うままに書いてみました。でも読み返してみると、本当にサイトロンさんから怒られないかちょっと心配になってきました(笑)。

確かにこのカメラはまだ成熟し切れていないところがあるのは事実です。ですが元のモデルのSV305を出したSVbonyにとって、このCMOSカメラはまだわずか3機種目のものです。一番最初のSV105を少しだけ触ったことがありますが、最長露光時間が500ミリ秒と、月や惑星以外にはほとんど使えませんでした。そこから見ると大した進歩です。ほぼ最安でCMOSカメラを提供してくれるというのはそれだけで大きな貢献です。これから育っていくメーカーだと思いますので、温かい目で見ながら、ユーザー側からの提案をどんどんしていくのが大事な時期なのかと思います。


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