ほしぞloveログ

天体観測始めました。

2020年01月

先日、富山県天文学会で新年の例会がありました。そこで話すために昨年やったことを見直していたのですが、昨年もちょうどこの時期にやりたいことを書いています。




いい機会なので、それがどれくらい達成できたかの反省と、今年のやりたいことを書いていきたいと思います。いつものように長文です。読みにくくてごめんなさい。

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機材関連


とりあえず去年の目標を再度書き出してみます。
  1. FS-60Qにカメラを付けたままでしまえるケース
  2. MEAD 25cmシュミカセ用フードをヒーターに改造
  3. Vixen Portaの経緯台の評価と安定化
  4. α7sの入手
  5. 焦点距離100mmくらいの、いいカメラレンズを手に入れる
  6. FS-60Qより長焦点の撮影鏡筒を手に入れる
  7. 双眼鏡の性能がわかるようになる
パッとみても、うーん微妙です。まず、進んだことです。

 6. ここ最近で一番大きなことですが、つい最近TSA-120をとうとう手に入れてしまったことでしょうか。TwitterでTSA-120が来たときと購入までの経緯の記事の報告をしたときは、みなさん新しい機材の購入の喜びを知っているのでしょう、凄いおめでとうコメントの数でとても嬉しかったです。他にもゴールデンウィーク中にFC-76も手に入れてます。白濁したレンズの格安のものですが、作りは素晴らしく、マルチフラットナーとの組み合わせで撮影にも使えます。一方、さらなる長焦点としては夏にVISACもヤフオクで落札しましたが、おにぎり星像が解決されたのかまだ確証がなくて、こちらはさらに検証が必要です。

1. ケース関連はホームセンターで売っているプラスチックケースを利用するというのが大体定着しつつあります。TSA-120用にも、Twitterでりょーじんさんにアイリスオーヤマのケースでちょうどいい大きさだという情報をいただきました。私も同様のものを考えていたのですが、すでに使っていて実用的だという情報はありがたいです。

5. カメラレンズですが、最近PENTAXの中判の6x7レンズを集めています。すでに6本目を手に入れていて、当たり外れも多いですが、安価なので気軽に様々な焦点距離のものを試すことができます。いつかSIGMAのArtのような高級機にも手を出したいですが、しばらくはPENTAXで楽しむことにします。

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7. 双眼鏡はブログであまり報告していないですが、「星もと」で50年くらい前のJasonというクラシック双眼鏡を買っています。高級機というわけではないので、シビアな性能は求められないと思いますが、私の目には十分不満なく見えています。ということはあまり目が肥えたというわけではないのかもしれませんが、東京に行くたびに秋葉原のヨドバシに行って双眼鏡を見比べています。明るさとか収差とか周辺像とかは、多少見分けがつくようになってきました。ただ、星を見たわけではないので、星を見ながらじっくり比べてみたいと思っています。

双眼鏡での見え方もそうですがせっかくTSA-120を買ったので、眼視の方も少し真剣にやりたいと思っています。アイピースは実は最初の頃に買ったPENTAXとかもあるのですが、あまり活用できていなかったので、今後は使う機会を増やせるかと思います。


逆にあまり進まなかったことです。

2. ヒーター関連は完全にサボってます。材料とかはとっくに揃っていたのですが、昨年は天気が悪く撮影回数が少なかったことと、自宅の庭で撮影するのがほとんどで、曇りはあまり影響ありませんでした。加えてLambdaさんの放射冷却対策の話が出てきたので、そちらの方の材料も買っているのに、これもまだ未対策。あまり進展ないです。

3. 経緯台はSCOPETECHのZEROに期待しています。Vixen Portaの方持ち経緯台との比較とかしてみたいです。

4. α7sは結局購入に至っていません。その前にモノクロ冷却CMOSカメラを購入したいのですが、予算申請がまだ認められそうにありません。


以上を踏まえて、今年の目標です。
  1. モノクロ冷却CMOSカメラを手に入れる。
  2. TSA-120を利用した眼視体制の強化。
  3. PENTAX 6x7レンズをできるだけ試して星景、星野の向き不向きを判別し、焦点距離の抜けを補完する。
大物は1番目の一つですね。後は眼視もPENTAXレンズもそれほど大きな買い物にはならないかと思います。

屈折はTSA-120の購入でしばらく物欲は抑えられそうです。少なくともTOAが(予算も含めて)視界に入ってくるまでは何年もかかるでしょう。反射は飛騨コスモス天文台の振動が抑えられて星像がもう少しシャープになれば満足するかもしれません。さらにVISACもあるので、反射もしばらく物欲は抑えられそうです。赤道儀も今のCGEM IIとサブでAdvanced VX、お気楽でAZ-GTi(こちらは主に経緯台で使用)で特に不満はありません。

細かいものはTSA-120用のフラットナーとかレデューサー、他にもフォーカサーとか、ASIAIR Proとか他にも色々欲しいもはありますが、これからしばらくは子供にお金もかかりそうで、あまり無駄遣いはせず地道に行くことになりそうです。

庭撮りがうまくいっているので、気軽に撮影するために固定で設置できるドームとかも欲しいかなと少し思い始めていますが、これはさらなる長期計画でしょう。


撮影

去年の目標です。
  1. FS-60CBでのレデューサとマルチフラットナーを使った継続的な撮影
  2. AZ-GTiの赤道儀モードでのガイド撮影
  3. C8での太陽Hα撮影
  4. シュミカセのコマ収差の補正
  5. シュミカセを使ったラッキーイメージ法での遠方銀河の撮影
  6. 冷却CMOSカメラに慣れる
  7. モノクロでの天体撮影
  8. モノクロ冷却カメラの入手と撮影

こちらも進んだことから。

1. FS-60CB、FS-60Q、FC-76でのフラットナーやレデューサーを組み合わせての撮影は天気さえ良ければコンスタントに進んでいると思います。特にQBPを使った庭撮りが結構満足がいくレベルになってきていて、例えばFC-76とQBPで自宅で撮影したバラ星雲なんかは白濁レンズの影響を微塵も感じません。



でもとにかく去年は天気が悪かった。夏場から秋ははほとんどだめでした。秋の終わりから年末にかけて少し晴れて進んだくらいです。特に進んだのは、PENTAXレンズでの星野に近い広角での撮影でしょうか。



こちらはレンズを揃えると色々焦点距離を選択できるのではと思っています。

2. AZ-GTiの赤道儀モードでの2軸ガイドでの撮影は一応目処がつきました。600mmで5分露光で、85%以上の採用率なので結果としては十分でしょう。でもこれを常時使うかというと、結構設定も大変で、風に弱かったりもするので、車で重い赤道儀でも運べるならば、普通の赤道儀を使います。海外とか徒歩とか、制限された環境のためのテストだったと言えるでしょうか。

5. ラッキーイメージングは少しは試しました。結果としてあるのはMEADE25cmでの10秒露光x50枚のオリオン大星雲



が大した処理もせずにトラペジウムまで余裕で写っています。このとき0.1秒5000枚とかやりましたが、流石にノイズが大きく無理がありました。もう一つはVISACでのM57の中心星まではっきり見えたときのものくらいでしょうか。




次はできなかったことです。

4. MEADEは周辺像が悪く、コマ収差の補正のためにクローズアップレンズなども購入したのですが、まだ試せていません。コマ収差がいやでVISACを試したのに星像が三角になるなど、なかなか思い通りにいきません。

いずれにせよ、天気が悪いのと、平日は流石に時間も取りにくく、撮影回数が少なかったために、そもそも色々試す機会も少なく、他はほとんど成果が出ていません。

3. 太陽も昨年はほとんど成果がありませんでした。C8での20cmPSTの準備はしてますが、こちらも黒点が全然出ないのでなかなか盛り上がらず進んでいません。

6, 7, 8. 冷却、モノクロも全然です。


そんなことから今年の目標ですが、結構継続が多いですね。
  1. TSA-120での撮影確立
  2. 飛騨コスモス天文台での満足のいく撮影
  3. ラッキーイメージングでの高分解能の追求
  4. ナローバンド撮影
  5. 電視観望技術を利用した超お手軽撮影で、どこまで迫れるか
  6. 太陽黒点の高解像度撮影
  7. 太陽アニメーションを作る手法を編み出す

1のTSA-120は眼視と共に撮影は大きな目標の一つです。

2の飛騨コスモスは機材としては優れているはずです。振動を抑えることとコマ収差を抑えることで、撮影レベルで実用となればと思っています。

3、4は継続ですね。

5ですが、凝った撮影とは全く逆の方向です。いかに低予算、軽量で、初心者でも撮影できる方法がないかという検証です。電視観望の技術が応用できそうで、広角なカメラレンズ、経緯台、ソフトでの補正などでどこまで迫れるかといものです。制限をつけるところと、力を入れる所を緩急つけてみようと思っています。

6, 7は黒点が出ないとあまり面白くないですが、アニメーションを作るために太陽をきちんとガイドする方法を編み出したいです。色々アイデアはあるのですが、太陽自身が活動していないのでいまいち盛り上がっていません。太陽関連でもう一つ、3.5nmのHαフィルターをBF(ブロッキングフィルター)の代わりに使えないかという試みを考えていました。国際光器さんに提供して頂いたフィルターなのですが、すでに過去すでに2度試して結果がうまくいかなくて、結局お蔵入り状態の記事になっています。今一度確認して、結果をきちんと記事にしたいと思っています。

撮影はどうしても時間がかかります。仕事も忙しくて平日はなかなか時間が取れないので、休みの日くらいは晴れて欲しいと今年も願うのですが、まあ天気ばかりは仕方ないです。富山も今日からやっと雪がふっています。


画像処理

去年はFS-60CBに凝っていました。
  1. FS-60CB用+レデューサーの四隅の処理法
  2. FS-60CB用+マルチフラットナーの四隅の処理法
が昨年の目標になります。特にレデューサーは四隅が少し流れるのですが、そこまで不満かというと、許容範囲の気もするので、画像処理での補正もあまり進んでいません。というより、やはり少し不満だからレデューサーで撮影する機会も少ないので進まないというのもあります。

今年はそれよりも
  1. 恒星処理
を目標にします。一つだけです。

難しい光害があるような中でも、一番最初の目的の「天体写真を撮ってみたい」という観点からでは自分ではそこそこ満足するようになってきました。まだ分子雲の炙り出しとかありますが、ここからは時間、お金など全てをかけなければならない修羅の道になっていくはずです。私はまだそこまでの覚悟はできていません。

それでも最近の不満はやはり恒星で、これまで星雲の方ばかりに力を入れていて、恒星の方は少し軽視していました。目標としては画像処理で恒星が飛ばないこと、周りへの自然なつながりです。画像処理にあたっては最近はStarNet++を結構使うことも多いです。星雲と恒星に分けた後、再び合わせるときにどうしても恒星とのつなぎが不自然になってしまいます。今年はTSA-120も参戦するはずなので、そこらへんに気をつけながら画像処理ができればと思っています。

一方、PixInsightに流石に慣れてきて、もうこれなしでは画像処理ができなくなりつつあります。いまだに使いこなせていない機能もたくさんあるのですが、使っている機能だけでも相当強力です。特にフラットは私はiPadとかのLEDでサボってしまっているので、PixInsightのDBEに頼りっきりです。


電視観望

去年の目標は
  1. 季節ごとの電視観望に適した天体リストの作成
  2. 電視メシエマラソン
で全然進んでいないのですが、ある意味一番進んだのが電視観望かもしれません。 これは技術的にというよりは、普及という意味です。

このブログでも紹介していますが、昨年はCANP小海の星と自然のフェスタで、2度電視観望関連の講演をしています。 CANPは本当のマニアが来ているので聞く人は限られていますが、小海の方は一般の天文好きな人も自由に参加できます。

そもそもCANPでのんたさんが「電視観望の講演一番面白かった」と言ってくれて、星まつりでも話すことができないかと助言してくれました。KYOEIのMさんとも話が進み、合同で話すことになりました。そのときのスライドをここに公開しています。エッセンスを詰めたつもりなのでよかったらご覧ください。小海では講演に続いて夜に電視観望の実演までできて、多くの方に実際に見えてもらえたのはとても有意義でした。特に小海でいっしょだったシベットさんが、各種フィルターを使った電視観望の様々な試みを凄い勢いで進めてくれています。毎日に近い頻度で更新されていて、例えば今日の記事はこれですし、6ヶ月のまとめの記事なんかは秀逸です。



また、ネットを見ていると全国的に電視観望をやったという話が普通に出てきます。このブログを参考にして試されている方も多いようです。Twitterなんかでも、例えばどこかの大学の天文部の学生さんでしょうか、多分女の子だと思うのですが、「電視観望凄い」などと呟いてくれています。もう普通の人にも認識されそうな勢いです。これはとても嬉しいことです。以前KYOEIのMさんが言っていたのですが「電視観望をブームにしたくない」と。「ブームだと必ず落ち込みが来るので、じわじわと広まっていくような形で、観測手段の一つとして広まって欲しい」というようなことを言っていました。さすがハレー彗星の時の盛り上がりとその後を知っている方の意見です。電視観望は一般の人たちにも広まりつつあって、ちょうど今そんな感じにうまく広まっている最中なのかと思います。折しもMさんが今月発売の星ナビで電視観望について書いてくれているとのことです。まもなく発売なので、私も記事を楽しみにしています。

技術的にはシベットさんが進めているフィルター関連を追試して行きたいかなと思っています。撮影のところでも書きましたが、光害防止フィルターと安いレンズなど、安価で初心者でも気軽にトライできる電視観望を提案できたらと思っています。観望会で誰かがやっている電視観望で見たりするのも楽しいですが、やはり自分で星雲とか色付きでリアルタイムで見るのが一番楽しいはずです。

でもこうやって書いていると、基本的な技術はある程度確立してきているので、電視観望のタネを播くというのは終わりに近づきつつあるかなと思ってしまいます。シベットさんのように全国で新しいことを進めてくれる人がどんどん出てくるはずで、私個人では思いつかないようなアイデアがたくさん出てくることに期待したいです。電視観望で講演とかできるチャンスがあれば、普及につながると思いますので、頑張りたいと思います。なので、目標は
  1. 電視観望がさらに一般的な観測手段になっていくように努力する。
というのを今年の目標にしたいと思います。


考察、実験、評価など

昨年の目標は
  1. シュミカセの補正レンズの設計と簡単な試験
  2. FS-60CBの光学設計を理解、フラットナー、レデューサーでの星像の再現
  3. CMOSカメラのゲインの最適値の議論
でしたが、1,2のレンズ関連はほとんど進展ありません。クローズアップレンズなども関連するので、また興味が出たときに進めるつもりです。

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一方、昨年もまた興味の赴くままに、たくさんの考察や実験をしました。3に関連することでは、最近またMATLABで再開しましたが、結論出ずです。いや、実は結論出たと思って長い記事を書いたところで理解不足に気づき、一本記事がまるまるお蔵入りになっています。でもまだ諦めてはいません。

色々やっているので、何をやったか時系列で箇条書きでまとめておきます。
  1. リードノイズの温度依存性 (2019/1/27)
  2. リードノイズの実測 (2019/1/31)
  3. FS-60でのエクステンダー、フラットナー、レデューサの比較 (2019/2/9)
  4. コンバージョンファクターの実測 (2019/3/2)
  5. ラッキーイメージングでどこまで見えるか (2019/4/14)
  6. 星座ビノのレビュー (2019/4/27)
  7. 白濁レンズの眼視電視観望撮影画像処理への影響 (2019/5/11-6/29)
  8. 光学的分解能の考察とカメラの分解能の関係 (2019/8/17)
  9. 地面などの振動がどう星像に表れるかの考察 (2019/9/1)
  10. 光害下での電視観望でのQBPの効果の検証 (2019/9/15)
  11. 格安電視観望の試み (2019/11/4)
  12. アトムレンズの放射線測定 (2019/11/20)
  13. 顕微鏡でCMOSセンサー面を見る (2020/1/12)
書き切れないのもあるのですが、振り返るとまあ色々やっていますね。中にはくだらないのもありますが、これだけ楽めているのならこの趣味を選んだ甲斐があったというものでしょう。少しだけ補足です。

1,2. リードノイズ止まりで、結局まだ次のダークノイズの解析までたどり着いてもいません。
4. コンバージョンファクターはEOS 6Dのユニティーゲインを測定するのがいまだに目標です。
5. ラッキーイメージングもまだまだ入り口に立ったくらいです。
6. 星座ビノはすでに沼ですね。
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7. 白濁レンズは多分誰も欲しいとは思わないでしょうが、驚くほど全然使えます。
8. 分解能の検討はガイドカメラなどになってしまいあまり日の目を見なかった高解像度のASI178MCの再利用につながりました。
9. 地面振動は飛騨コスモスでの撮影につなげようと思っています。
13. 顕微鏡はすでにあぷらなーとさんが結果を出しているのですが、自分でもやってみようと思っています。

目標を立てるのは難しいです。その時その時で興味がわっと沸いて、結構短期間で終わらせています。ノイズの方の考察はもう少し実践に即したスカイノイズとかも考えてみたいです。


課外活動

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県天の資料でまとめたもののコピペです。

星まつり等参加
  • 6/15-16: CANP、電視観望の講演
  • 8/2-8/:4 原村星まつり、電視観望の実演
  • 8/24: 胎内星まつり
  • 9/22: 星をもとめて
  • 10/12-14: 星の村スターライトフェスティバル中止
  • 10/25-27: 小海星と自然のフェスタ、電視観望で講演と夜の実演

電視観望実演
  • 県天: 8/6山室、9/6富山駅前ゲリラ
  • 富山市科学博物館観望会: 3/9、3/16、3/24、5/25
  • 飛騨コスモス天文台観望会: 4/27、7/6、9/7星と二胡のコラボ、10/7、11/4
  • 名古屋名城公園観望会: 1/2、9/16、12/31、4/30
  • 牛岳: 4/12
  • 自宅観望会: 5/25星座ビノ、6/2白濁FC-76、8/17、 8/10法林寺、9/14QBP
 
天文ショップ訪問
  • KYOEI東京(5-6回)
  • スターベース東京(5-6回)
  • SCORPIO(名古屋: 5/11、9/21)
  • シュミット(東京: 3/30)
  • スターベース名古屋 (5/1閉店直前)
  • SKYBIRD(西国分寺: 1/11)
  • 三基光学館(相模原: 2/20)
  • CAT(春日部: 5/10)
  • ケンコートキナーサービスショップ(東京中野: 10/10)
  • ヨドバシカメラ秋葉原(5-6回)
  • キタムラ秋葉原店(5-6回)、東京駅八重洲口店(12/19)
  • トップカメラ(名古屋) (夏と冬)
もう毎年のことになりつつありますが、 結構いろんなところを飛び回っているのがわかります。よくもまあ飽きもせずと言ったところでしょうか。いや、もちろん全然飽きてないです。はい。


その他

その他、ソフト関連、工作や分解などもちょこちょこやってたみたいです。

AZ-GTiの不具合 (2019/1/6)
PythonとOpenCVを使った簡単な四隅切り出しプロブラム (2019/2/7) 
天文棚を2本作った (2019/8/10, 8/31)
電源内のバッテリー交換 (2019/12/24)

工作とかは好きなので、その場その場で必要なことをこれからもやっていくのかと思います。

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まとめ

ああ、また今回も記事が長くなってしまいました。今年の目標はブログを短くとかですかね(笑)。

目標は少し数を減らしました。数が多すぎてもやり切れなくて意味がないかなと反省しています。

昨年はなかなか忙しくて時間があまり取れませんでしたが、それでもまとめると色々やっていたことが実感できます。ブログの楽しみ方の一つが自分で書いた記事を読み返すことです。昔のことをずいぶん忘れていることに気づきます。なので、その時その時の気持ちだとか、他人には役立たないと思うので申し訳ないのですが、できるだけ細かく書いていこうと思っています。こうやって一年間のことをすぐにまとめることができるのも、こまめに記事を書いているかいあってのことなのだと思います。

今年も自分のできる範囲で、無理をせず、気をてらわず、気の向くままに突き進んでいきたいと思います。今後とも「ほしろloveログ」をよろしくお願いいたします。
 

この日はなんとも数奇な運命を感じる一日でした。


12月半ば、スターベース東京にて

少し時間をさかのぼり、12月半ばに戻ります。この日も東京出張で秋葉原に寄る機会があり、スターベースに顔を出しました。スターベースのWebページで得た情報によるとアウトレットページにいくつか魅力的な機材があり、TSA-120Nの展示品が販売されていることを知りました。店に入って見てみるとμ180などかなりお値打ちな機材がいくつか置いてあります。でもTSA-120Nの姿はなく、もう売れてしまったのかなとも思ったのですが、一応聞いてみると実際の物が奥においてあるといいます。見ることもできるというのでわざわざ出して見せてもらいました。展示品で鏡筒バンドもついているので通常よりはお値打ちです。ものすごく欲しかったのですが、その場は一旦冷静になってその日は帰宅。

TSA-120は悪い噂をほとんど聞くことがないくらい、ものすごく評判の良い鏡筒です。躊躇した理由は限定の廉価版のNモデルなので、フードが固定なこと。フード固定自身は別にいいのですが、フードが縮まない分全長が長くなってしまい、収納や持ち運びが大変そうです。アウトレットに出ていたものは鏡筒バンドがついていてその分お得なのですが、実は鏡筒バンドはK-ASTEC製のものを使いたかったので、鏡筒バンド無しでいいのであと少しで値段を追加して、Nでない通常のTSA-120にした方がいいのかなと思っていたりしました。

それでも屈折の眼視に関しては最強に近いTSA-120Nを割安で手に入れるチャンスです。家族とも相談し、散々迷いながら、その後しばらくは毎日webページをチェックしていました。でもでも意外に売れないのです。売れてしまったら縁がなかったとあきらめがつきます。なぜか1月に入ってもずっと残っていて、毎日TSA-120Nのことを考える日々が続きました。「これだけ残っているのならまだしばらくありそうだ、もし、もし次回東京出張まで残っていたら買おう」と決心。でもありがちなことに、そう思った矢先、1月半ばにとうとう在庫切れになってしまいました。

人間勝手な物で、在庫切れになると「あー、やっぱり迷ったりせず買っておけばよかった」と思ってしまうものなのです。でも同時に、少しホッとしている自分もいて「あー、なんとかやり過ごせた。やっと諦めがついた」と思っている自分もいます。


1月半ば、つい先日のスターベース東京にて

そして今回1月の出張で訪れたスターベース。その日会ったIさんも交えて、店長とS君と「TSA-120Nをやっとの思いで、幸か不幸か買い逃した」というこの一ヶ月の思いを語り、「FS-128がヤフオクで出てるみたいでそれも考えてる」とか言っていたら「たまたま今日中古のTSA-120が入ってきましたよ」とのこと。「見ます?」というので即答で「ハイ!」。しかも今回のものはラッキーなことに、最後にNが付かない通常モデルのフードが短くできる方のTSA-120です。2011年のモデルでしたが、とてもきれいで状態も全然悪くなく、もうほとんど迷いはありません。あとは値段のみです。

と思って値段を聞いたら、まだついさっき工場から送られてきたばかりで値段がついていないとのこと。ああ、スターベースでタカハシの中古を購入することの強みはここだなあと。中古といえどもしっかりメンテナンスしてから販売してくれます。値段がわかったら連絡してくれるとのことなので、ここでIさんとスターベースを退散して近くの居酒屋に移ることにしました。ここからの話は前半部分に書いています。


なぜTSA-120?

ちなみに、スターベースを出る直前にTSA-120を欲しいと思った理由をK君に聞かれました。実はこれ、かなりずっと考えていて、いくつかはその場で話したのですが、改めて列挙しておきます。
  • もともと、周辺像を気にしなくていいくらいの撮影レベルで使える、口径の大きい焦点距離の少し長めな素性のいい鏡筒を欲しいと思うようになっていた。
  • 屈折か反射にこだわりはなかったが、光状線があまり好きでないので屈折か、反射なら少し制限されてシュミット系などのスパイダーが無いものが良かった。
  • きっかけは12月のTSA-120Nのアウトレットで、これを見てTSA-120について色々調べて真剣に考え始めた。
  • これまで眼視をほとんどやってこなかったので、少し眼視での観測を真剣にやってみたかった。眼視ならTSA-120はもうほぼベストの選択。
  • 撮影ならTOAの方が有利そうだが、重くなるのと温度順応に時間がかかるかも。何より予算が...。
  • TSA-120はTOAに比べて相当軽い。気軽に使うにはこれくらいの軽さでも限界か。
  • 星像の鋭さの限界が、シンチレーションのせいなのか鏡筒のせいなのかをはっきりさせるために、しっかりした基準が欲しい。VISACの周辺までの点像は設計は素晴らしいが、やはり製造と調整の過程で不確定要素が入り込む可能性がある。
  • かなり調べてもTSA-120の悪い噂がほとんど出てこない。この鏡筒はタカハシの良心だとの意見も。
  • FS-60Qは星を始めて結構すぐに、その価値もわからずに手に入れてしまった。TOAの価値はまだ理解できないかもしれないが、今ならTSA-120の価値を一番享受できるのではないか。
  • 900mmの焦点距離は持っていないので楽しめそう。レデューサーをつけて670mmにしたら、FS-60QやFC-76+マルチフラットナーと比較できて楽しそう。
  • TSA-120で満足できなかったら、現行機ではもうあとはTOAくらいしか残っていない。かなり長い間、多分一生ものとして使うことができそう。
  • 稼働率まで考えたら今の時点ではベストの選択ではないか。
などです。やはり中古といえども高価な鏡筒。これくらいは考えてしまいます。

逆に心配だった点は
  • TSA-120Nだとフードが固定で全長が1メートル超え。ケースを探すのが大変なのと、トランクのスペースが厳しい。
  • TSA-120は撮影の作例があまりないこと。
  • レデューサーとエクステンダーのスポットダイアグラムがフラットナーと比較して少し周辺で崩れること。
くらいです。

  • 今回はTSA-120なので、フードが縮み約15cm短くなるので解決。
  • 撮影に関しては、スターベースブログにフラットナーと組み合わせたM31の作例が載っていました。実際にスターベース の店頭で印刷されたものも見せてもらいましたが、全く不満はありませんでした。撮影にも十分すぎるくらい使えると判断しました。
  • レデューサーとエクステンダーはフラットナーに比べて高価なので、将来少し余裕が出た時に試すことにするつもりです。
と、レデューサーとエクステンダー以外はすでに解決。最初にフラットナーを買ってみれば撮影は相当楽しめそうですし、眼視でまた違った世界がひらけそうです。


今回のTSA-120との不思議な縁

居酒屋での話は前半を見ていただくとして、20時半頃にお店を出てIさんと別れた後に乗った帰りの山手線、なぜか隣の席にKYOEIのMさんが。私は最初気づかなくてMさんから声をかけてくれたのですが、むしろMさんの方が何でこんなところにいるんですか!と驚いているようでした。しかもその日の午前に、たまたまスターベースのS君とも電話していたとか。「スターベースでTSA-120の中古がたまたま出ていてS君に見せてもらった、もしかしたら買うかも」というような相談をしたらもう大絶賛。とにかく全く悪いところのない、非常にいい鏡筒とのことです。KYOEIの方も同じように言うのですから、やはり評判は間違いなさそうです。

  • もし、12月の時点でNモデルの方に決めてしまっていたら、今回の話は全てなかったでしょう。
  • もし、Iさんがブログにコメントしてくれなかったら、多分この日のことはなかったでしょう。
  • もし、スターベースを待ち合わせ場所にしなかったら、たまたまこの日に入荷したばかりの中古TSA-120に出会わなかったでしょう。
  • もし、たまたま乗り込んだ山手線でMさんと会わなかったら購入相談もできなかったでしょう。
なんか色々運命的なことを感じてしまい、Mさんと話した時点でTSA-120の購入を決めました。

そうしてMさんと東京駅で別れ、富山への新幹線の切符を買って「はぁなんとか最終便に間に合った」とやっと落ち着いたところでメールを見てみたら、ちょうどスターベースのS君から「値段が出たので連絡が欲しい」とのこと。中古ということもあり、前回のNモデルの展示品よりも安くなっていました。

もうこのTSA-120は私に買ってもらうために
現れてくれたんだとしか思えず

即決で購入の連絡をしました。連絡のメールを入れたのは新幹線に乗り込んですぐのことでした。


とうとう到着!

翌日金曜日に支払いを済ませて、土曜日発送。そして今日、日曜日の夕方、とうとうタカハシから大きな箱が届きました。

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蓋を開けてみると、緑の文字が見えます。これだけでもう大興奮。すでにチラッとTSAの文字が。

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箱から出してみました。比較でEOS 6Dと並べてみます。

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6Dが小さく見えるくらいなので、相当太いです。でも長さはフードがたたまれているせいか、非常にコンパクトに感じます。

ファインダーもついているモデルで、タカハシ純正の鏡筒バンドも前オーナーのものが付いてきています。手持ちの赤道儀がCelestronのCGEM IIなので、VixenかLosmandy規格のアリガタに変換してやらなくてはいけません。とりあえず手持ちの機材で工夫して取り付けてみようと思います。

残念ながら今夜はどんどん曇ってきました。ファーストライトを試す様子は次回また書きます。乞うご期待。

年末のことです。事の発端はこのブログに来たコメント。以前書いたCMOSセンサーの撮影時のノイズのページのIさんからのコメントでの質問でした。ノイズについて詳しく知りたいとのこと。コメントで書くと大変そうなので、メールでやりとりすることになりました。


会ってみることに

何度かメールでやりとりをして
  • 子供の頃天文少年だったが、その後天文から離れていて、つい最近出戻りで電視観望を始めたこと。
  • 電視観望の露光時間の最適化をしたいこと。
  • 秋葉原に毎日通っているのにまだ天文ショップを覗いたことがないこと。
などがわかりました。かなり熱心な方のようで、というか逆に私も全然知らなかったSharpCapの作者のRobin Glover氏の講演のビデオとか、同じくRobin Glover氏のスカイノイズの導出の式の解説とか教えてもらいました。

そんな折、私の方が1月に東京出張で秋葉原に寄る機会があるので「ノイズに関する資料を渡すついでにもしよかったら食事でもご一緒しませんか?」と、懲りもせずにネットで知り合った人と積極的に会うことに。むしろ向こうから見たら怪しい誘いに見えなくもありません。子供に言わせたら絶対やっちゃダメなことだそうです。ちょっと意味が違うかもしれませんが、天文の人って会っていても暗い中なので顔を知らないとかよくありますからね。

せっかくなので待ち合わせ時間がずれてもひまを潰せるように、待ち合わせは天文ショップにしましょうと、スターベースで落ち合うことにしました。


キタムラでいつもの6x7レンズを物色

スターベースに寄る前にキタムラに行って、最近お気に入りのPENTAX6x7レンズを物色に。150mmから200mm位までのレンズを探していたのですが、ちょうど160mmというバッチリの長さのレンズがありました。明るさはf2.8で悪くありません。中古機器はホントに出会いです。

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帰りの新幹線の中でパシャリと撮影。

いつもの格安のf4のレンズとかよりは少し値が張りましたが、それでも十分安いです。ただ、裏キャップがついていなかったので少し迷いました。こんな古いキャップは単体ではもうどこにも売っていないので見つけるのが大変です。いっその事、その場に売っていた格安のペンタ6x7のコンバーターとかの裏キャップを代わりに使うかと思いました。でもよく考えたら、以前買った収差が酷すぎでお蔵入りの200mmの裏キャップを外して使えばいいのかと思いつき、結局今回も購入することに。当たり外れは試さない限り分からないので、早く晴れて星像テストしてみたいです。でも後からのことを考えたら今回は少し節約しておいたほうがよかったかもしれません。


スターベースで待ち合わせ

17時半頃、スターベースに到着してしばらくするとIさんらしき方がやって来ました。が、ずいぶん若く見えます。復帰組なのとメールのやり取りで、絶対私より年上だと思っていました。実際聞いてみたら「いくつに見えます?」というので、正直なところ40位、下手したら30代かと思ってしまいましたが、年齢を聞いたら自分より少しだけ上。ちょっとびっくりでしたが、やっと納得しました。

Iさんは仕事の関係で店の前はしょっちゅう通っているのに、スターベースはおろか天文ショップも初めてだというので、店の中で店長さんや仲のいいS君に紹介がてら、天文少年だった頃のこととか色々話しました。なんでも1980年くらい、当時小学5、6年生の頃に10cmの反赤だったというので、ずいぶんと理解のある親だったとのことです。中学くらいで天文から離れてしまったのですが、つい最近C8とレデューサーとASI294MC Proで電視観望に興味が出て復帰とのことです。色々調べた末、Cloudy NightsでのEAAのためのおすすめ機材らしく、復帰の経緯だけ聞いてもなんか期待大です。初期投資でちょっとかけてしまったので、タカハシは「いつかはタカハシ」とのことでなかなか店舗まで来る機会がないとのことでしたが、最近のスターベースはタカハシ以外にも他メーカーの入門機から太陽観測などまで、店に置いていある機器を見るだけでも楽しいです。

近頃はネットで天文機器を購入することが主流なのでしょうが、せっかく東京などの都会に来たら(どうせ明るくて星は見えないので)天文ショップに来て店員さんと話しながらいろんな機材を実際に見るというのが都会での天門の楽しみ方の一つだと思います。初心者にもおすすめですし、私みたいな田舎で天文ショップがあまりないところに住んでいる天文マニアには特におすすめです。

この日のスターベースにはアルバイトのK君がいなかったのが残念でした。K君に頼まれていたCMOSセンサー面の顕微鏡撮影の話をしたかったからです。でもIさん、このほしぞloveログを相当読み込んでいてくれてるようで「あ、こちらがブログによく出てくるS君のことで、今話していた方がK君のことですね。」とか、すぐに話が通ります。ここで色々盛り上がるのですがそこは後半で詳しく話します。


居酒屋へ移動

私の方が今日中に富山に帰らなければならず、あまり時間もないことなので、ここでIさんと一緒にスターベースを退散して近くの居酒屋に移ることにしました。お店はスターベース から秋葉原方面に歩いてすぐのところ。Iさんに選んでおいていただいたお店で、職場で利用したことがあるとのことです。平日で二人なので予約なしで入ることができました。私は帰りに運転があるのとIさんもお酒はそれほどというので、二人ともソフトドリンクでした。頼んだメニューは刺身盛り合わせとぶりかま、タコ唐、サラダくらいでしょうか。3人とか4人分が目安みたいで、頼みすぎなほど量がありました。刺身も新鮮で美味しかったです。ぶりかまもその大きさに驚きました。写真撮っておけばよかったです。

でも今日のメインはお話。よくよく聞いてみると元々物理出身で、もうその時点で話がすぐに合います。物性理論専攻で、今は画像処理関連のソフトウェアエンジニア屋さん。ある意味天文に直結しそうなスキルを持っているのかと思います。昔は超天文少年で、観望会でたまにいるような異常に詳しいような子だったみたいです。天文ではないですが、中学の頃はPC8801を安く譲ってもらったそうで、マイコン時代の話でも盛り上がりました。ちなみに私はPC6001mkIIが最初のマイコンです。

もちろん天文の話でも盛り上がりました。天文は子供の頃以来遠ざかっていて、残りの人生を考えた時に天文に復帰することにしたとのことです。その時に電視観望に興味が出てこの「ほしぞloveログ」も見てくれてコメントをくれたとのことです。さすが理論物理出身だけあって、ノイズの観点から電視観望での最適な露光時間を求めてみたいというのが一番興味があるところのようです。びっくりしたのは、専用のノートを用意してあって、手書きで何ページにも渡り式が並んでいることです。しかもすでに数値条件も入っていて、時間まで具体的に出ています。さすがに居酒屋で式は追えませんでしたが「これブログにしたら興味持ってくれる人いるんじゃないですか?」とかいう話をしたので、もしかしたらそのうち公開してくれるかもしれません。天文趣味の人で理論物理出身の人はあまりいないと思うので、色々解析とか進めてくれるはずです。ちょっと期待してしまいました。

復帰間も無いのに、多分調べたり吸収する速度が相当速いのでしょう。最近のアマチュア天文業界にも詳しくて、今の日本の天文機材メーカーと中国メーカーの勢いの比較とかの話も盛り上がります。多分ソフト業界で機械学習とかの分野の事情もあり色々海外事情も詳しいのかと思います。他にも機械学習を天文でどう利用できるかとか、AZ-GTiみたいにソフトをうまく組み合わせた新しい機材のアイデアとか、色々盛り上がりました。最終電車の関係で20時半前にはお店を出る必要があったのですが、全然話し足りないくらいでした。秋葉原駅まで歩いてそこで別れましたが、星まつりとかも面白いですよと誘っておいたので、またすぐに会うことはできそうです。多分これからどんどん沼にはまっていくのかと思いますが、末長く議論を交わしていきたいです。


山手線で偶然の出会い

秋葉原から東京駅まで乗った帰りの山手線、偶然乗った車両の、偶然座った席の隣になぜかKYOEIのMさんが!「いままで今日初めて会った天文仲間と居酒屋にいたんですよ」とか話したら「相変わらず活発でね」と、感心されたんだか呆れられたんだか。

さて、この話はこの日あったもう一つの大きなことにつながっています。長くなるので、それはまた後半で。

あぷらなーとさんはじめ何人かの方がMatlabを購入し画像処理に活用し始めましたようです。



私もMatlabは学生の頃から使っていて、今調べてみたら一番古いファイルは1998年でした。なので20年以上使っていることになりますが、 これまで画像処理に使ったことはありませんでした。

あぷらなーとさんが指摘しているように、確かにMatlabは行列を容易に扱えるので、2次元が基本の画像処理は向いているはずです。最近過去のコードをpython化したりしてるのですが、pythonは2次元だと必ず繰り返し処理が入るので、コードが冗長になりがちです。私も少し試してみたのですが、どうやら画像処理に関してはMatlabの方がコードがかなりシンプルになり見通しが良くなるので、有利というのは正しそうです。とうわけで、遅ればせながら私もMatlab画像処理に参画します。

Matlabを使ってまず手始めに試したのが、昨年3月依頼謎が解けなくて止まってしまっているASI294MC Proのノイズ解析の続きです。

 


最初にごめんなさいと謝っておきます。今回の記事はかなり細かくてめんどくさい話で、ほとんどの人には役に立たないです。しかもうまくいかなかったという結果なので、ほんとに興味のある方だけ読んでみてください。

Matlabで画像処理を始めてみたいという人がいたら、もしかしたらコードが参考になるかもしれません。


以前のおさらい 

ざっとおさらいしてみます。ZWO社のASIシリーズは性能を示すデータを公開してくれています。例えば広いセンサー面積を利用した電視観望や、撮影にも十分に使うことができるASI294MC Proのページを見ていくと、下の方にいくつかグラフが出てきます。このグラフ、一見分かりそうで分かりにくいところもあるので、以前その読み方を解説しました。



上のページでも解説している通り、SharpCapを使うとZWOのページにあるようなデータを測定することができます。冷却バージョンのProも



で実際に測定した記事を書いています。特にGain[e/ADU]の値はコンバージョンファクターとも呼ばれて、設定gainが0の時のコンバージョンファクターはユニティーゲインなどにも直結するような非常に重要な値になります。少しコツは必要ですが、SharpCapのスクリプトでCMOSカメラの特性を実測すると、ZWOにあるような値に非常に近いものを測定することができます。2つのツールで同様のデータが取れているということはかなり信頼が置けるはずです。さらにもう一歩進めて、このようなツールでのスクリプトでなく、実際に自分でノイズを撮影して解析してみようと試したのが、昨年3月までの一連の記事になります。

ところが、実際に撮影して解析してみるとどうしてもZWOのデータやSharpCapでの解析結果と合いません。

SharpCapで撮影した時の撮影条件は限りなく再現させたと思っています。具体的には撮影対象の明るさ、カメラのゲイン、露光時間です。明るさは同等のものが撮れているので、撮影に関しては問題ないと思います。問題はノイズです。明るさとノイズの関係からコンバージョンファクターを求めるのですが、撮影された画像の明るさのばらつきが、想定していたものよりかなり大きいと出てしまいます。

具体的には標準偏差を用いるとノイズが大きすぎると出てしまい、苦肉の策で(ノイズが小さいとでる)平均偏差を使うと、大体ZWOとSharpCapの測定と一致するという結果でした。

ヒントになるかと思いモノクロのASI290MMで測定したら、標準偏差で計算してもZWOやSharpCapと一致した結果を得ることができました。ということはやはりカラーの場合も平均偏差などを使わずに標準偏差を用いるのが正しいのではと推測することができます。

そんな折、あぷらなーとさんがRGGBを一素子づつ解析したCFA(Color Filtr Array)で評価した場合と、RGBにdebayerした場合では、debayerの方が標準偏差で考えて0.75倍とか0.79倍程度に小さくなることを示してくれました。



それでもdebayerで計算してもまだZWOやSharpCapでのノイズの少なさには辿りつきません。

いろいろやっていて結局行き着いたところはこの画面で、

IMG_6436

小さいと思われるRGBの標準偏差よりも、Lの標準偏差の方がなぜかさらに小さいことがSharpCapの一枚の撮影で出てしまっていることです。いまだにSharpCapが内部でどうやって計算しているのかよくわかりません。このLの標準偏差を仮定するとノイズはかなりZWOもしくはSharpCapのスクリプトで測定した結果に一致します。言い換えると、これくらい小さい標準偏差くらいのばらつきになっていないと結果は一致しないということです。


Matlabでの画像処理の実際

やっと前振りが終わりましたが、今回Matlabで以前のpythonコードを書き直すかたらわら、どうしたら一致した結果を出せるか、なぜSharpCapのLがノイズが小さく出ているかを念頭に置きながらいろいろ試してみました。

Matlabを初めて使う人が一番面食らうのは、配列の表記法かと思います。これが独特なのですが、この独特な表記によりコードがシンプルになるので避けるわけにもいきません。私が書くよりももっといい説明がたくさんあるかと思いますが、今回の画像処理に必要な最低限だけ書いておきます。

まず2次元の配列、Matlabだと行列といっていますが、例えば2行x3列の配列Aを

>> A=[1 2 3;4 5 6;]

A =
     1     2     3
     4     5     6

と作ります。例えば第2行,第1列成分を見たい場合には

>>A(2,1)

と打つだけです。答えは

ans = 4

と出ます。これは至って普通です。独特なのは:(コロン)の使い方で、例えばAの1行目すべてを見たい場合は

>>A(1,:)

と打ちます。答えは 1 2 3となります。:はどこからどこまでを意味し、

>>A(1,1:2)

だと

ans =     1     2

となります。:(コロン)だけだとその次元の最初から最後まで全部という意味です。これがMatlabで絶対理解しておかなければならない表記法の一つです。

今回は画像を扱うのに4次元の配列を使っています。1、2次にy座標とx座標。左上からyは向かって下に、xは右に移動していきます。3次目はRGBやCFAのインデックス。RGBなら3つ、CFAなら4つとっています。 4次目は何枚目の画像かを表しています。今回8枚の画像を使っていますが、その何枚目かを表します。あと成分を表す数字は1から始まることにも注意です。0からではありません。 

例えば、AにRGBで別れた画像が8枚入っているとすると、5枚目のG画像を表す時は

A(:, :, 2, 5)

と表します。:が2つあるのはy、x座標それぞれ全部を表しています。"2"はRGBの2番目と言う意味です。Bなら3ですね。"5"は5枚目と言うことです。

例えばサンプルコードの最初の方にある

 Raw(:, :, i) = fitsread(ファイル名);

はi番目の画像にfitsファイルを読み込んで、1次目にy座標のデータ、2次目にx座標のデータを全部入れていきなさいと言うのをわずか1行で表記したものです。

これらの表式は慣れるしかないのですが、ここらへんを感覚的に理解できるとコードもすらすら読めて、シンプルなコードを書くことができるようになるのかと思います。


モノクロセンサーASI290MMの場合

とりあえずMatlabでやってみた画像処理を説明していきます。まずはモノクロのASI290MMの結果です。

ASI290MM
このグラフを出したMatlabのソースコードをアップロードしておきます。使用した画像も(サイズを切り詰めるために中心部のみ切り取ったものですが)一緒に入れておきましたので、すぐに走らせることができると思います。もしMatlabを持っていて興味があったら走らせてみてください。

ASI290MM.zip 


結果は前述したとおり、平均偏差ではなく一般的な標準偏差を使っています。メーカー値はコンバージョンファクターが3.6程度、ユニティーゲインが110程度ですので、グラフ内の数値と比較してみるとそこそこ一致していることがわかります。なので、カラーでも標準偏差を用いる方向を探りたいと思います。

また、以前pythonで書いたコードと比較して同等の結果を出すことできています。

Conversion_Factor_ASI290MM_std

Maltabでもこれまでと同様のことができることがわかり、かつ遥かにシンプルに書けることがわかりました。


カラー版ASI294MC Proの場合: CFAで解析 

さて、Matlabでの画像処理にも慣れたところで問題のカラーのASI294MC Proの解析です。

結論から言うと、結局今回も謎は解けずじまいでした。

まずはシンプルなCFAの方から。RAW画像からCFAへ分離するところはビルトインの関数とかはないようなので自分で書いてみました。以前は平均偏差(mad)で無理やり答えを合わせましたが、今回ASI290MMの結果なども含めていろいろ考えた末に、結局諦めて標準偏差(std)を使うことにしました。

ASI294MCPro_CFA

各測定点はそのまま解析した結果を表示していますが、フィッティングは無理やり合うように補正してます。考え方としては、謎な部分をunknown factorとしてフィッティングするところで無理やり補正するというやりかたです。今回のCFAの場合、unknown factorはノイズ(標準偏差の2乗)を2分の1とすることでZWO、SharpCapの結果と一致することがわかりました。

ちなみにメーカー値はコンバージョンファクターが3.9程度、ユニティーゲインが117程度です。繰り返しますが、CFAで測定されたノイズを無理やり半分にすることでメーカー値に近くなります。

先に説明したように、SharpCapでLのノイズが小さく出ている理由がわからなかったので、もうこのように無理やり合わせてしまうしかなかったという苦肉の策です。これはあぷらなーとさんが示してくれた、CFAとRGBで標準偏差で0.75倍違うというのを考慮してもまだ少し足りません。

まあ、このやり方に言いたいことはたくさんあるかと思いますが、とりあえず先に進むことにします。


カラー版ASI294MC Proの場合: RGBで解析

次はRGBでの解析です。

最初はMatabビルトインのdemozaicという関数を使ったのですが、これだと中で何か変に処理しているのかノイズが話にならないくらい大きくなりすぎました。仕方ないので自分でRGBに落とすコードを書いています。そこそこまともそうな値は出たのですが、ただしこのコードまだ未完成です。なぜかというと、センサーアレイはRGGBなのでG(グリーン)が二つあるのですが、その応答が少し違うことに起因します。Gを2つ使って求めると強度の山が2つでできてしまい、ばらつきが大きくなりすぎるからです。そのため今回は2つあるG素子のうち1つだけを使うことにしました。

ASI294MCPro_RGB

RGBになりあぷらなーとさんが示してくれた通り、CFAの時よりもばらつきは少なくなることがわかりました。それでもまだノイズが大きすぎるのでCFAの時と同様にunknown factorとしてフィッティングするところに無理やり入れました。RGBの場合、unknown factorはノイズ(標準偏差の2乗)をルート2で割ってやることでZWO、SharpCapの結果とかなり一致することがわかりました。


考察

ASI294MC Proで使ったファイルもアップロードしておきます。よかったら参考にしてください。

ASI294MCPro.zip 

今回はまだ苦肉の策で、無理やり答えを合わせるように測定結果を割っているだけなので、考察と呼べるようなものにはなりません。CFAの場合出てきたノイズを半分に、RGBの場合ルート2でわってやるとSharpCapやZWOの結果とかなり近い結果になりましたが、その理由は全然わかっていません。

前回のpythonコードを使った時はCFAやRGBの変換はPixInsightを使いました。でも今回はRAWファイルから直接計算してCFAもRGBも取り出しています。ここら辺はMatlabに移ったことでやりやすくなったところだと思います。このように今回はかなり噛み砕いてブラックボックスがないように進めてきたつもりです。撮影した画像はSharpCapのスクリプトで撮影したものと同等と仮定していいかと思います。これでも結果が一致しないということは、
  • ZWOもSharpCapも何か特殊なことをやっているか
  • もしくはまだ私が馬鹿なミスを犯しているか
です。とにかく怪しいのがZWOのLのノイズが小さく出過ぎていること。この謎が解けない限り進展がない気がします。


まとめ

週末を結構な時間費やしましたが、コンバージョンファクターに関しては結局昨年から進展がなかったので疲れてしまいました。それでも得られた成果としては、
  • Matlabでの画像解析の手法に慣れることができた。
  • あぷらなーとさんが出してくれた、debayerの方がCFAよりもノイズが0.8倍程度と小さくなることを確かめることができた。
ことくらいでしょうか。でも全然だめですね。これ以上は時間の無駄になりそうなので、一旦ここで打ち切ることにします。

それでもMatlabが使いやすいことは分かったので、今後の画像解析はMatlabで進められそうな目処はついたと思います。

元々この解析はダークノイズ解析につなげたいとか、EOS 6Dのユニティーゲインを測定したいとかで始めたのですが、なかなか進みません。いつ実現できるのかまだまだ未定ですが、諦めることはしたくないのでまたいつか再開する予定です。

私は物理屋さんで、化学と生物はど素人です。しかも物理といっても物性屋さんでもないのでこれまで顕微鏡をまともに使ったことはほとんどありませんでした。前回CMOSセンサー面を生物顕微鏡で見て興味が出たので調べてみたのですが、顕微鏡の世界も面白いです。今回はそんなお話です。

あ、普段から顕微鏡を触っている人にとっては、なんでこんな当たり前のことをと思われるかもしれませんが、どうかご容赦ください。私にとっては新しいことだらけで、間違ったことを書いているかもしれません。何か気づいたらご指摘願います。


手持ちの顕微鏡は?

望遠鏡マニアの数はまだたくさんいると思うのですが、顕微鏡マニアというのはそれよりもかなり数が少ないのではと思いました。そもそも店があまり無い。天文ショップの数も少ないですが、顕微鏡ショップの数はさらに少ないみたいです。多分顕微鏡は、教育用と研究用の別れ方が顕著なせいなのかと思いました。

IMG_9095


まず、手持ちの顕微鏡がどの程度のものなのか調べてみました。MIZARと書いてますが、星まつりのいつものあのショップで購入したものなので、メーカー名はあまり意味がないのかと思います。Googleの画像検索で調べてみると、形状からヤガミというところのYMシリーズ YM-400というのが同等品の様です。



学校で使われているとか書いてあるので、せいぜい小中学校の理科教材クラスのものと思われます。実売3万円程度です。私は1万円くらいで購入したので、市価の3分の1程度だったことがわかります。でも付属のレンズが通常は4倍、10倍、40倍の様なのですが、手持ちのものは40倍の代わりに100倍のものがついていました。

機能を見てみます。
  • 上部が360度回転し、どの方向からでもみることができます。接眼レンズは10倍と15倍のものが付いていました。
  • 対物レンズを3本取り付けることができます。レンズは上で書いたように4倍、10倍、100倍が付属してました。
  • ステージは粗動と微動の2段回で動かすことができます。
  • プレパラートを照らすライトは無く、反射鏡が下についています。これはLED灯などに取り替えることができそうです。
  • ステージは下に絞りがついていて、光量を調整することができます。

光学性能は別にして、値段は機能の多さに比例する様なので、最低限の機能がついたシンプルな分安価なのかと思われます。


対物レンズ

IMG_9102


対物レンズを少し詳しくみます。3本のレンズにはそれぞれ
  • 4/0.1 160/0.17
  • 10/0.25 160/0.17
  • 100/1.25 OIL 160/0.17
と書いてあります。最初意味がわからなかったのですが、調べてみるとアクロマートとかアポクロマートではない普通のレンズで、最初の数字が倍率、次の数字が開口数NA(Numerical Aparture)、160は鏡筒長160mm用、0.17が0.17mmの厚さのカバーガラスに対応という意味のようです。

ここで重要なのは最初の倍率と、次の開口数です。顕微鏡の原理的な分解能を表す式は何種類かあるのですが、天文関係の人にも馴染みが深いレイリーの式だと

δ=0.61 x λ / NA

となります。分解能はざっくりと波長λのオーダー、これは光を使ってみるのでまあ当たり前です。NAは開口数といいます。開口数は見たい試料までの距離とレンズ径で決まるような数で、鏡筒で言うF値の逆数のような数です。開口数が小さいと分解能は悪くなり、開口数が大きいと分解能は良くなります。開口数はレンズと試料までの間の屈折率にも依存するため、大きな開口率をとるために空気よりも屈折率の高いオイルをレンズと試料の間に満たす場合もあるとのことです。

というわけで、手持ちの100倍のところにある「OIL」というのは開口数を上げるために対物レンズ筒がオイルで満たされているイマージョンオイルと呼ばれる専用のオイルを試料に垂らして(点着すると言うそうです)レンズをそこに浸して使うための表記ということがわかります。詳しくはオリンパスのこちらのページ参照。さらに、100倍のものはスプリングと呼ばれる機構がついていることがわかりました。これはレンズの先が試料に当たると、試料を破壊することがないようにレンズ先がバネで凹むようになっています。

他に重要なパラメータとして、収差をどう補正しているかがあるようです。屈折鏡筒で言うアクロマートとか、アポクロマートとかのことです。それとは別に「プラン」と呼ぶのがあるらしくて、像面湾曲収差を補正してあることを意味するらしいです。手持ちのものはこれらは何も書いていないので、安価なノーマルなものということが分かります。

それでも、一応性能を辿るくらいの事はできるので、対物レンズもおもちゃクラスではないようです。やはり教育用の最低限の入門レベルといったところでしょうか。

対物レンズについてはオリンパスのこのページが詳しいです。


実際のレンズ探し

今回の目的ですが、CMOSセンセー面を見るのに手持ちの対物レンズの100倍だと倍率が高過ぎ、10倍は低過ぎというので、

40倍程度の対物レンズがあればいい

というところからいろいろ調べています。40倍で対物レンズを探すと、新品やヤフオクの中古品、格安から研究用の超ハイエンドまで、値段で言うと数百円からはては百万超えまであります。怖い世界の一端を見た気がします。

ここで豪華コースに行くのか、格安コースに行くのかで別れます。

少なくとも今回分かったのは、そもそもCMOSセンサー面のような基板とかを見るのは生物顕微鏡の目的からは外れているということ。だって、対物レンズの最後の0.17という数字はプレパラートにかぶせるカバーガラスの厚みに応じて球面収差を補正していると言う意味で、CMOSセンサーにカバーグラスは関係ないのです。さらにカバーガラスの厚みも実際にはばらつきがあるので、高価な対物レンズにはそれを補正する機能もついているようです。こういった機能も今回の目的では無駄になってしまいます。

ちなみに、対物レンズの取り付けネジの径ですが、生物用では20.32mm、ネジピッチ36山/インチが昔から一般的のようで、手持ちのものもこの径でした。これはRMS(Royal Microscopical Society, 英国王立顕微鏡協会)ねじとよばれるもので、この径にあっているものであれば取り付けることはできるようです。ですが、正しい倍率や性能が出ないこともあるので、注意が必要とのことです。

アクロとかアポとかプランとかの収差補正は、天文マニアにはどうしても魅力的に聞こえてしまいます。実際、センサーを見た時も中心に像を合わせると周辺の歪みが確かに気になりました。そうは言っても、まあ今のところ顕微鏡にはそこまでこだわってはいないので、実用上は問題なさそうです。

というのも、今議論している対物レンズは全て生物顕微鏡用で、そもそも基板とかをみる場合には、金属顕微鏡とかいう類の上から光を当てる顕微鏡を使うそうです。生物顕微鏡は下から光を当ててみるものですが、CMOSセンサーは基板にくっついていて当然光を通さないので、上から光を落とす反射型とか落射型とかいう範疇の顕微鏡を使うのだと、やっと分かってきました。実体顕微鏡もその仲間になるのかもしれません。でも実体顕微鏡に高倍率のものはあまり無く、そもそも金属顕微鏡自体の種類が生物顕微鏡に比べると圧倒的に少ないので、手に入れようとしても割高になってしまいそうです。

というわけで、実はもう少しいい顕微鏡を中古ででも手に入れることも考えていましたが、生物顕微鏡くらいで無いと手が出ないこともわかってきました。なので今回は諦めて格安の対物レンズだけを手に入れる方向でいくことにします。

今回の勝因は、顕微鏡ポートに差し込めるT2アダプターを買っておいたことです。高価な研究レベルの顕微鏡は撮影用の専用ポートがあり、そこにカメラを固定できるようなのです。でもこのアダプターさえあれば、手持ちの顕微鏡でもASI178MCを接眼部に取り付けることもできるので、少なくとも今の目的にはとりあえず十分です。研究のように毎日使うものでも無ければ、撮影のセットアップに手間は少しかかりますが全く問題ないでしょう。

で、ヤフオクとかも考えましたが、結局アマゾンで安い対物レンズを注文してみました。到着したら今一度、今度はできればASI294MCのセンサー面をもう少し拡大してみたいと思います。

こんな安いのを買うまでにどれだけ時間をかけているのか。 でもやっと納得して買うことができました。もしこれで不満だったら顕微鏡本体も含めて一から考え直します。

 

連休ですが、富山は相変わらず天気はよくありません。こんな時はたまっていた課題を片付けます。


CMOSセンサーを顕微鏡で見るとどうなる?


事の発端は、小海の星と自然のフェスタでスタベのアルバイトのK君がASI294のセンサー面を実体顕微鏡で見てみたいと言った事です。ASI294は電視観望用に持っていますが、うちにはたまたま実体顕微鏡もあります。下の子Sukeの自由研究のために2017年の原村星まつりで買ったものです。これならなんとかなりそうです。

ところがシベットさんからコメントで実体顕微鏡では倍率が低すぎるのではという指摘がありました。なぜかうちには倍率の高い生物顕微鏡もあります。これも同じく下のSukeの自由研究のために2016年の原村星まつりで購入しています。というわけで、必要なものはそろっているので実際に見ることにしました。果たして何が見えるのか?

IMG_9068


まずは実体顕微鏡

手持ちの実体顕微鏡は対物レンズが4倍、接眼レンズが10倍で、40倍のものです。ここにASI294を置いてやればいいのですが、カメラ本体が大きすぎでレンズに近づき過ぎてしまいピントが出ません。仕方ないので、今回はもっと奥行きの短いASI224MCで試すことにします。K君、ごめんなさい。

ASI224MCのセンサーサイズは4.8×3.6mm、解像度は1304×976で一素子のサイズは3.75×3.75ミクロンとのことです。

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センサーは思ったより小さく、周りに金色の線がたくさんつながっています。これを40倍の実体顕微鏡で見てみました。とりあえずiPhoneのカメラで撮ってみます。

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よく見えていますが、センサー面はのっぺりしているだけでやはり全然倍率が足りないことがわかります。

でも実体顕微鏡は簡単には倍率を変えることができません。いろいろ考えて、手持ちのアイピースを利用することにしてみました。接眼レンズを片方外します。31.7mmのアメリカンサイズは径が大き過ぎたので、昔の1インチタイプのものを使いました。手持ちは20mmと12.5mmと9mmの3つ。

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最初に20mmのもので見てみます。1インチサイズだと今度は径が小さすぎるので、とりあえず固定せずに穴に入れるだけです。

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もともとついていた10倍のレンズより少しだけ大きく見えます。

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10倍レンズは焦点距離25mmとか30mmくらいなのかと思います。この時点で50倍とか60倍相当かと思います。当然これだけだとまだ倍率は不十分なので、さらに倍率を上げるために12.5mmレンズを取り付けます。

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これも穴に入れただけで固定していませんが、まあとりあえずそこそこ安定して見えるものです。像はというと、

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接続線は大きく見えてきましたが、センサー面はほとんど変化なしです。最後9mmを試します。

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ここでiPadのLEDで光を当てたこともあり、基板のパターンが見えてきました。しかもピントを調整してセンサーの端をよく見ると目盛りのようなものが見えます。

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小さな目盛り10個につき大きな目盛りがあり、大きな目盛りを数えると長辺で14個、短辺で10個程度あります。センサーサイズが4.8×3.6mmなので、大きな目盛り2個で1mmはないくらいということがわかります。上2枚の写真のセンサーの枠の太さは同じなので、遡っていくと全体サイズまで直接比較することができると思います。

これで倍率は手持ちの1インチアイピースでは限界です。最終倍率は120倍程度かと思われますが、それでもセンサー面の構造は全く見えてきません。やはりもっと倍率の高い生物顕微鏡が必要なようです。


生物顕微鏡なら見えるか?

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さて、生物顕微鏡に移ったのですが、ここで問題が発生しました。ASI224MCでも奥行きがあり過ぎて、ステージを一番下に下げても対物レンズの間に入らないのです。

IMG_9093


最初はセンサーがついている基板を外そうかと思いました。

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ですが、基板の右側についているコネクタをうまく外すことがどうしてもできなくて、泣く泣く諦めることにしました。ちなみに左上についている赤い検品シールは触るとすぐに崩れるタイプで、ネジを緩めるとシールが簡単にとれてしまいます。改造したかどうかのチェックを兼ねている様です。なのでこのカメラはもうメーカーのサポートは受けることができないと思っておいたほうがよさそうです。もし個人で分解する際は気をつけてください。

結局今回は仕方ないので、下の写真の様に顕微鏡のステージを取り外すことにしました。

IMG_9076

ステージに置くことができないので、CMOSカメラを手で持ちながら見ることになります。バランスが悪いのですが、何度か撮影すればいい位置とピントで写ることもあり、何とかなりそうです。

倍率は対物レンズが4倍、10倍、100倍。接眼レンズが10倍と15倍のものがあります。

とりあえず対物4倍と接眼15倍で目で見てみます。明かりがもっと欲しかったので、先日中身を取り替えたパワータンクの強力LEDで照らすことにしました。この状態で目で見てみると、手でカメラを押さえながらですが、何とか見ることができます。

ここで秘密兵器登場。今回の撮影のために、SVBONYの顕微鏡の差込口に挿すことができるアダプターを買っておきました。

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これはT2ネジが切ってあるので直接ZWOのASIカメラに取り付けることができます。

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これを生物顕微鏡の接眼レンズの代わりに取り付け、直焦点撮影をします。

最初はASI294MC Proを撮影用のカメラとして使いました。まずは最低倍率の4倍の対物レンズで撮影します。撮影はMacのASICAPを使いました。

2020-01-12-0626_0-CapObj_0001

すでに先ほどより大きく写り、遥かに精細に写っています。だんだん楽しくなってきました。

対物レンズの倍率を4倍のものから10倍のものに上げます。

2020-01-12-0607_4-CapObj_0000

おお!とうとうセンサー面の構造が見えてきました。

もっと倍率をあげたいのですが、100倍の対物レンズはセンサー面に相当近づけなければならなく、保護カバーを外さなければピントが合わなさそうです。さらに、かなり暗くなることがわかっているのであまりやりたくありません。いろいろ考えて、ASI294MCよりも一素子のサイズが小さくて分解能の高いASI178MCを使ってみることにしました。その結果がこちらです。

もうセンサー面の構造もはっきりと見えます。

2020-01-12-0634_3-CapObj_0000

でも構造は見えますが、RGBフィルターとかの影響がわかりません。目盛りがついているところから少し中に進むと紫のエリアがなくなる境目があるのですが、わかるのはこれくらいです。この頃になるとカメラの固定方法の工夫でかなりピントも合わせやすくなってきました。下はピントや撮影カメラのゲインを相当合わせ込んだ場合です。

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かなりはっきり見えて、センサー10素子で目盛りが一つ進むこともわかります。なので目盛りはセンサーの数を表していたんですね。でも、これでも全部同じ素子のように見えてしまっています。

どうやっても進展がないので、ここでかなり悩みました。最後にとった方法が、わざとカメラを回転させて素子を45度傾けてみること。理由ははっきりとわかりませんが、これでやっとうまく見ることができました。最終結果です。

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見事にRGGBフィルターの配列を見ることができます。これを見て改めて思うのですが、これだけの微細構造を作る技術は見事なものです。これが民生レベルで安価に購入できるというのはなんと幸せな世の中なのでしょう。

最後に、その時の撮影風景です。

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考察

とりあえずセンサー面の構造とRGGBフィルターの存在を確認することができました。対物レンズの倍率を上げ、十分な灯りを用意することができれば、もっと微細な構造を見ることができるかもしれません。

RGGBフィルターがかかっている部分と、かかっていない部分の境目もはっきりとわかります。RGGBフィルターは全面にかかっているわけではなく、センサーの端の方はフィルターはないことがわかります。


問題はここから何を引き出すかです。K君と話した時、サッポロポテト現象を解明したというようなことを言っていた気がします。サッポロポテト現象はあぷらなーとさんも困っているようです



サッポロポテト現象は各素子についているマイクロレンズ効果が原因のようですが、はっきりとした解決策はあまりないようです。今回はやっとCMOSセンサーの素子の構造が見えたくらいなので、まだゴールまでは程遠いと思います。

今回の結果をどう活かすのかが今後の課題でしょう。


まとめ

こんなふうに工夫でどんどん見えてくるような実験は超面白くて大好きです。

とりあえず今回分かったことは、
  • 実体顕微鏡ではCMOSセンサーの構造を見るには倍率が低すぎる。
  • 生物顕微鏡を使うことでCMOSセンサー面の構造、RGBフィルターの様子を見ることができる。
  • センサー1素子そのものを十分な解像度で見るには至らなかったが、まだ拡大率を上げる手は残されているので、1素子をもう少しはっきり見ることもできるかもしれない。

課題としては
  • センサーを置く架台をしっかりしたほうがいい。
  • センサー面についている保護ガラスを外して、高倍率で撮影してみる。
  • 動画撮影でスタックするとさらに解像度が上がるかもしれない。
  • ASI294MCのセンサー面を見てみる。
ことくらいでしょうか。あー、今回も面白かった。


K君、遅くなってすみませんでした。やっとなんか見えるくらいにはなってきました。

K君、次は何を見てみたいですか?


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